実務のまとめとして、ここで本書に登場した会社の中から優秀な三社を選んで、その後の
計画づくりの一端をご紹介しておこう。実在の会社だから、数字について多少の修正を加え
させていただいたが、読者の勉強に不都合がないのでご了承いただきたい。
さてE建設は、申告所得でわたしの会社を追い抜いたと、本書の第一章にご紹介した会社
である。
順調に事業を伸ばしてきたE建設の社長は、いわゆるバブル経済にさしかかって、「どう
も異常だ、このままの状態が永久に続くわけはない。急上昇したものは必ず急降下する、長
期計画を練り直そう」と判断した。当時は、どんなお粗末な経営でも利益の出る、未曾有の
好況に日本中が沸いているようなころであった。
「異常な人手不足と資材の高騰で建設コストが上がっている。これはブームが過ぎれば相
場も下がるだろうが、それまで待てない。短期間でコストダウン策を真剣に考えないと、い
ずれ利益率にもろに響いてくるだろう。また土地の取引規制が予想され、建設需要の首都圏
集中傾向など経営環境は厳しくなる」。E社長の経営環境判断に、浮わついた要素は一切な
かった。「先生から、悪くなって当たり前、良くなったら儲けものと徹底的に教えられまし
たからね」と実に冷静であった。その結果まとめられた中期三年計画の骨子は、次のような
ものとなった。
(運営基本方針)
①現在の付加価値分配率はほぼ理想的なので、今後三年間は、現在の分配率を維持して
いくこと。なお将来の変動に備え、蓄積分配率は一四%、二〇億円を確保する。
②付加価値率を下げない。そのため有望な○○住宅の増産によリコストダウンを図り、
現在より毎年一%ずつ増やし目標年度に二三%とする。
③首都圏拡販を強化するが、人員については、現状人員の配転で吸収する。
C設備投資は、この三年間に土地二〇億円、その他四五億円の枠を設定、再生産配分比
率は、五%を目標とする。
⑤運転資金増加は、金融調達に依存せず、買掛債務と前受金の増加で調達する。
⑥目標年度の売上を六二〇億円とし、売上の五〇%を首都圏売上とする。
実に手堅い計画である。第32
表は、運営基本計画であるが、実績を見ていただくとお分か
りのように、バブルが崩壊しても、当初の目標どおりの数値を達成して、内部留保も二〇億
円を超えているのだ。見事なまでの先見経営である。
第33
表は初年度と目標年度の実績とを比較したバランスシートであるが、資金面での方針
も見事に守られており、よその会社が多額の借金負担に大慌てしていた背景を考えると、E
社長の経営の充実ぶりがよく分かるのではないか。
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