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CHOICE12 経営情報を「独占する」か「共有する」か

オイルショック後の会社の立て直しのとき、実は組織マネジメントの考え方を180度転換しました。徹底的に社員と情報共有するようにしたのです。

経営の基本は、社長が明確な目的・目標を掲げ、それを社員と共有し、チームワークを高めること。

なぜそれが基本かというと「うちの社長は頑張っているけれど、俺たちとは関係ない」と社員がそっぽを向いている組織は、とても力が弱いからです。

スポーツでもそうでしょう。監督の側からすれば、うまい選手を集めて野球がしたいし、サッカーがしたい。

でも、「監督が何を考えているのかよく分からない」と選手の気持ちがバラバラのチームでは、試合に勝てません。

個々はあまりうまくなくても、一丸となった組織のほうが、絶対に強いチームが出来上がる。私も、社長になりたての頃は「俺が、俺が」と独りよがりでした。

自分で製品を開発し、自分で売り、製造機械も自分で考えた。「俺がいなければ、この会社は回らない」とさえ思った。でも、それでは社員は付いてこない。

そこで先述のように、ご飯を一緒に食べながら社員といろいろな話をし、心を通わせるようにすると「社長のために頑張ってやるか」と思ってくれる社員が1人、2人と増えました。

ただ、社員が50人くらいまでならこの方法だけで何とかなりますが、それ以上になると難しいのです。

拠点が2つ、3つと広がると、社長は自分の考えていることがどこまで社員に正確に伝わっているのか、不安になります。

業績が伸びていても、社員の心までは分からない。それまでの私は開発、営業、経理などを一人で見ていましたが、その結果が経営危機でした。

目次

会社を下支えした「幹部研修会」

そこで私は、自分の思いを社員に伝える場を増やしました。「こんな会社をつくりたいから、君たちはこう働いてほしい」──。

朝礼の内容を紙に書き起こして全拠点に配ったり、管理職全員を集めて研修会を始めたり、いろいろな取り組みをしました。

特に、会社の変革期を支えるベースになったのが、リストラの翌1979年から始めた「幹部研修会」です。

最初の参加者は8人でした。幹部研修会では四半期ごとに泊まりがけで幹部と徹底的に議論します。ユーザーインの経営に変えるため、何をしなければいけないのか。

現状を分析し、課題解決のプランを策定し、それを3カ月後に検証する。これを繰り返しました。議論のテーマは多岐にわたります。

売り上げの増やし方、技術のこと、設備のこと、人材のこと、組織のこと。会社の一部分だけを変えるだけでは、ちぐはぐになってしまう。

私は本気で、会社を丸ごとつくり直そうとしたのです。幹部研修会の効果はてきめんでした。幹部の目線が上がり、先を見据えた判断ができるようになりました。この体験を通し、一つの確信を持ちます。

「幹部が育たない」と多くの社長が嘆きますが、それは単に情報量の差によるものだということです。

一般に営業部門の幹部は営業の情報、生産部門の幹部は生産の情報に詳しいという偏りがあるため、個別最適で動きがちです。

しかし、社内の全情報を与えれば、その幹部たちも全体最適で判断します。社長の目線が高いのは、社内の情報を独占しているからにすぎないのです。

幹部を育てるには情報を共有し、社長と幹部が共にレベルアップしていくことが大事です。アイリスにとって、その場が幹部研修会でした。

1回目をスタートしてから41年間、現在までに164回の幹部研修会を続けています。1、4、7、10月に開催し、一度も欠かしていません。東日本大震災の翌月、2011年4月も実施しました。今は総勢700人ほどの管理職が研修会に参加します。

東北エリアは角田工場、関東エリアは埼玉工場、関西エリアは三田工場、九州エリアは鳥栖工場に、それぞれ約150人が集まります。

後方の席に座る人の参加意識が薄れないように、前列から後列に向けてせり上がった階段式の会議室を利用します。

プレゼン会議でも使う階段式の会議室は、幹部研修会のためにわざわざ各工場に作ったのです。

会議室には、60インチの大型テレビを12台設置しています。1拠点を3台のカメラで撮影し、それを他拠点で映します。後方席にいる社員の顔も画面を通してよく見える。

腕を組んでいたら「○○君、人の話を腕組んで聞くな」とすかさず叱ります。

上場企業では、重要戦略を社員に話すとインサイダー取引のリスクにつながるのではないかという懸念も出てくるかもしれませんが、アイリスは未上場企業ですから、その点心配はない。

幹部にはすべての情報・戦略を公開します。3カ月ごとに現状分析と課題解決を繰り返すという実践研修スタイルは、今も変わりません。

参加者が数十人の頃と違い、700人ともなれば、全員で議論するというのは限界がありますが、同じ時間、同じ場にいて、経営情報を共有することで幹部は育ち、「よし、皆で頑張ろう」と気持ちがそろう。

この幹部研修会こそが、倒産の危機に直面していたアイリスを蘇らせ、その後大きく発展する土台になった仕組みなのです。

会議欠席は厳禁

毎週月曜の「プレゼン会議」は、主要部署の幹部が勢ぞろいして、ユーザーインの観点で新製品案件をブラッシュアップする場でした。

目的もメンバーも違いますが、幹部研修会も対象となる全員が同じ場を共有します。アイリスのマネジメントでは「情報・意識共有の同時性」に重きを置いています。

同時にするほうが時間の無駄がないし、伝言ゲームではないので共感度が深く、一人ひとりの理解のスピードが速いと考えるからです。

これらの会議は、情報に加え、目的や目標、理念を共有するための大切な場ですから、欠席は厳禁。その点はうるさく言います。

例えば、社員が「取引先の周年パーティーに出席したい」と言ってきたら、あなたはどう答えますか。

「それなら仕方ない。後日、会議の内容を確認しておいてくれ」と言うかもしれません。私は違います。大事な取引先に関わることでも、会議の欠席は認めない。

全員で考えを共有しようというときに、一人でも欠席者がいたら意味がない。だから、パーティーには代役を送る。やむを得ない事情で欠席するときは、社長の決裁を取ってもらう。

アイリスでは、仕事の中で最も優先度が高いのが、会議や朝礼など皆で集まる場に出席することだと言ってもいいでしょう。

「何も、そこまで徹底しなくても」と思うかもしれませんが、企業が持続的に発展するには、情報共有の仕組みづくりが不可欠なのです。

アイリスの情報共有に対する力の入れ方は生半可ではありません。もちろん、目的はいかなる時代環境においても利益を出せる会社にするためです。

1つ、2つのヒット商品を当てるだけなら、社長1人の力でも可能かもしれません。

しかし、利益を出し続けるためには、社長の「分身」として役員、社員が主体的に思考し、行動することが必要です。

新製品のアイデアが出るのは、中堅中小企業の場合、社長であることがほとんどです。これはなぜでしょうか。

新しいアイデアを考えることに社長が長けているから?責任感や危機感が組織の中で一番強く、死に物狂いでアイデアを出すから?どちらも正解でしょうが、私は多くの社長が優秀なアイデアを出し、的確な判断を下せるのは、社長が社内情報を独占する立場にあるからだと思います。

世の中の社長が偉そうにしているのは、往々にして情報をたくさん持っているからです。

社長を社長たらしめるものは「社長と社員の情報格差」です。階層が上になるほど、多くの情報、重要な情報が集まるのが組織というもの。

組織を強くするためには、そこに切り込み、できる限り、ブラックボックスをなくす必要があります。

「この開発にゴーサインが出た理由は?」「新製品の損益と課題は?」「他部署は何を考え、どんな仕事をしているのか?」アイリスでは、社内の多くの情報をほぼ全員が、ほぼ同じタイミングで知ることができます。

LED照明などの新製品を次々に市場に投入できたのも結局、情報共有によるものです。アイリスの本質的な強さは情報共有力にあると言っていいでしょう。

仕事が属人的でないのが、アイリスの組織の特徴です。強いリーダーシップで伸びてきた会社と見られがちですが、違う。

仕組みで組織の力を結集したから、一介の町工場が7000億円企業に化けたのです。

毎週月曜の大山家の食事会幹部研修会のほかに、どんな情報共有の場があるか、詳しく説明していきましょう。

まず、一族の情報共有から。私たちは「三役昼食会」と呼ぶ食事会を毎週月曜に開いています。場所は、宮城県角田市の本拠地の一室。メンバーはまず大山3兄弟。

長男の私、営業を担当している三男の富生、開発担当の四男の繁生です。そして、2017年に新社長に就いた私の長男・晃弘を加えた4人が、それぞれ多忙ですが、取締役会とは別に毎週1時間、必ず集まる。

そこで何を話しているのか、気になりますよね。でも、世間話なのです。「先週はこんなことがあった」と年の若い順に話します。

例えば、「オランダの工場はキャパシティーがいっぱいになってきそうだ。メインマーケットがフランスなので、工場を増設して物流費をかけて運ぶくらいならパリに工場を造ったほうがいい。でも、フランスは労働者の権利主張が激しいから大丈夫か」といった話をしながら、考え方を擦り合わせていくこともある。

工場の話は役員会でももちろん話題に上りますが、ここは本音レベルというか、意識の統一というか、そういう感じです。

そうかと思ったら、ゴルフのスコアの話をしたり、娘が学校を卒業したなど家族の話をしたりもする。

何でもあり、というのが面白いと思います。テーマは決めていません。オーナー家でご飯を食べながら、ありとあらゆることを共有するのが目的です。

大山家はかくあるべし、アイリスはかくあるべし、という深いテーマになることもない。取締役会は案件を決める場ですが、昼食会は情報共有に徹しています。

これを通して、みんながやっていることが分かりますし、誰が何を考えているかも分かります。昼食会が始まったのは1995年頃。発案者は私です。当たり前ですが、兄弟でも意見は異なります。会社を良くしたいという思いは同じでも、立場が違うし、年を取ると我が出ますからね。

そこで、「一緒にご飯を食べようや」と持ちかけました。兄弟経営は役割分担と情報共有がしっかりできていれば強い力を生みますが、互いの不信が募ると経営の根幹を揺るがしかねない。

ちょっとした考え方の違いにふたをすれば、次第にひずみが大きくなり、対立を生むのです。深い対立を防ぐためには、早い段階で対立の芽を摘むことが大事です。

それにしても、毎週ですからね。コミュニケーションを目的に、そこまで頻繁に同族が集まる例は少ないでしょう。

私たち一族の間には特にルールはありませんが、唯一のルールがこの昼食会への参加です。情報共有の同時性という意味では、アイリスは朝礼をとても重視しています。

毎週月曜の朝9時から20分間が朝礼の時間。冒頭、社長が壇上に立ち、その時々で考えていることを率直に伝えます。

当初は、朝礼で話した内容を秘書が紙にまとめ、遅くとも翌日には、離れた営業所や工場にファクスしていました。

それを職場で回覧し、全社員に必ず目を通させたのです。

その後、ファクスからメールへと伝達手段が変わり、今ではテレビ会議システムで時差のある海外の一部を除いて全拠点をつないでいます。

テレビ会議なら、社員は社長の表情を見ながら、細かなニュアンスを感じ取ることができます。

私は、会社が小さな頃は、朝礼で全社員と顔と顔、目と目をじかに合わせながら「昨日はこんなことがあり、私はこう考えました。

今日はこういう仕事をしましょう」と話をしました。「毎日」「じかに」が意思疎通の基本です。市場をどう攻めるのか、会社をどのように経営していくのか。社長は自分が考えていることを社員に伝える義務がある。

「くどくど話さなくても、社員はそれぞれ自分の役割を理解し、働いてくれる」という見方は間違いです。

社長は社員の心に火をつけるためにも、社員に向けて繰り返し自分の思いを話さなければならない。「話すのが億劫」という人に社長は務まりません。

社員と思いを共有できないと嘆く社長は、おそらく社員に話す量が圧倒的に不足しているのだと思います。

会社が小さなうちは社員とよく話していたのに、社員数が増え、あちこちに拠点ができると、こう考える社長が出てきます。

「自分の考えを社員一人ひとりにしっかり伝えることは大切だが、この規模では限界だ」──。でも、私は伝えることを絶対に諦めませんでした。

社員の数が多くなった分、そして、遠隔地の社員もテレビ会議で聞くことができるようになった分、朝礼の内容をどう腹落ちさせるかという仕組みが重要です。

そこでアイリスでは、1995年からは毎年末に1年分の朝礼の話をまとめた「朝礼集」を作り、全社員に配布しています。

正月休みにじっくり読んでもらうためです。5年分が溜まると、さらに「総集編」として1冊にします。

5年分を単純にまとめると1300ページほどになるので、400ページほどに編集し、製本します。たかが朝礼、されど朝礼。

朝礼にここまで力を入れている企業は珍しいかもしれません。後で本にまとめると分かっていると、社長もさすがに同じ話をするわけにはいきません。

以前と同じテーマで話すときも、具体例を変えて説明するなど、創意工夫を凝らしています。そこまでしても、多くの場合、社長の話は右の耳から左の耳に抜けるのが現実です。

これは社長が悪いというよりも、聞く側というのはそういうものだと理解しています。そこで私は「言いっぱなし」にならないよう、主任以上には年に一度、朝礼を題材にした論文を書いてもらう。

前述の人事評価に絡む論文が、これです。論文執筆を通して、社員は成長します。社長の考えと自分の考えをすり合わせることで、自分自身を一段高い所から眺められるからです。

話すだけでなく、話した内容をメールで送り、論文を書かせて、しつこく理解を求める。規模が大きくなったとか拠点が増えたとか、そんなことを言い訳にせず、徹底的に社長の考えを伝える。

私はこれを「善意の強制」と呼んでいます。多少は強制しないと、社員は社長の考えを吸収してくれません。「私の話を聞いてくれ」と言うだけでは、ほとんど効果はないのです。

日報にして、日報にあらず

このようにアイリスではさまざまなかたちで情報共有の場を設けており、それが社員の思考力や状況判断力、パフォーマンスを高めています。

ただ、アイリスで最大の情報共有ツールといえば、「ICジャーナル」です。従来、外部にほとんど話してこなかったのは、このシステムがアイリスの「頭脳」だからです。

これは、分かりやすくいえば日報です。しかし、日報とは似て非なるものです。

アイリスにはグループを含め国内外に1万9400人の社員がいますが、ICジャーナルの対象は現場作業を担う社員を除く、約1万人の社員。

営業部門や開発部門などの各持ち場で得た情報を、1万人の社員がパソコンやスマートフォンで毎日、ICジャーナルのシステムに入力して、1万人全員で情報共有します。

そこに役職や部門の壁はありません。さらに通常の日報と異なるのは、入力する中身が1日の行動の羅列ではない点です。

一般的な日報は、上司による部下の行動管理が主目的で、1日の経過を部下が書き、上司がそれをチェックします。

一方、情報共有を目的とするICジャーナルの場合、事実の列挙は厳禁。日々の仕事の中で得た情報を基に、各社員が自らの「意思」を伝えるように書く。

新聞・雑誌記者と同じです。知り得た情報を基に何を考えたか。そこにどのような意味があるか。それを経営者や全社員に向けて報道をしてもらうのです。

だから日報ではなく、ジャーナル(定期刊行物)と呼びます。イメージとしては、こんな具合です。

「製品Aの拡販を狙って、ホームセンターBのバイヤーのC様に商談に出向いたところ、競合のD製品のほうが、○○の機能で人気が高いと聞いた。

私は○○の機能を改善し、内部機構を見直して、価格低減の上、再提案したい」どんな意図を持って相手と会っているか、そこで得た情報をもとに自分が何をすべきか提案までする。

ここまで主体的に社員が考えて入力するから、集まった情報が生きるのです。ICジャーナルの内容は顧客ニーズの変化や新しいトレンドの兆し、競合の動向など幅広い。

また、開発担当者は自分が作った製品名で検索すれば、営業担当者の商談状況などそれに関連する情報をリアルタイムで細かく見ることができます。

開発担当者にとっては、どのような機能がどんな顧客に受けているのか、あるいは受けていないのかという情報を、営業の最前線とほぼ同時に得られれば、より多くのユーザーに受け入れてもらうためにはどういった改良を加えればいいのかが遅滞なく分かります。

あるいは、これから新しく作ろうとしている製品について、開発の方法に行き詰まっているならば、過去に同種の苦労を経験している開発担当者の次のような発言が見つかれば、ヒントになるでしょう。

「開発中の製品Eの原価削減に難航していたが、今日、○○県にある中堅機械メーカーの切削マシンを使って、駆動部の加工を試したらうまくいった。

まだまだ検証が必要だが、量産にまで持っていけるかもしれない」決まった人のジャーナルを選択して「フォロー」する機能もあります。

例えば品質管理を担当する社員が、自分の担当製品でクレームがあったという情報を、フォローしている営業社員からリアルタイムで受け取れば、いち早く改善処理に着手できます。

ICジャーナルは役員も見ますし、社員のICジャーナルであればその上司が必ず見ている。

有益な情報をほったらかしにする役員や部課長はいませんし、もしいたとしたら、他部門の人から「君の部下のジャーナルにその指摘があったじゃないか」と注意されます。

全社員が情報共有しているから、書く側も見る側も真剣です。社員が入力・閲覧する具体的な項目は次の通りです。

【入力画面】●入力した日付●入力者の名前

●情報の分類(商談、プランナー向け情報、競合情報、クレームなどの選択)

●テーマ(何についてか)

●具体的内容(200字以内)

●共有レベル(全社員閲覧可能、特定対象者のみ閲覧などの選択)【閲覧条件】

●日付

●部署・氏名

●テーマ・得意先

●言語・翻訳

●内容

入力画面では日付と名前を入れ、クレームや競合状況など、伝える情報の分類を選ぶ。続けてテーマを明示し、内容を200字以内で記します。文字数を絞るのは、簡潔にして読みやすくするためです。

閲覧画面は検索機能が充実しており、例えば、製品別、部署別に誰がいつ、どんなテーマで何を書いたのかを見ることができます。

中国語や英語にも対応しており、翻訳機能まで付いています。運用ルールは厳しい。公平性を保つため、自分が入力しないと、ほかの社員の情報が見られなくなります。全員の情報の共有がベースだからです。

私自身、ICジャーナルを熟読します。1日3回、キーパーソン約100人の内容に毎日目を通す。朝、自宅のパソコンで40分、昼休みや夕方にオフィスなどでそれぞれ30分を割く。

移動時間にもこまめにチェックして情報収集します。

社員の日報を1日3回も見る経営者は珍しいと言われることもありますが、これはただの日報ではありませんから、目的が違う。

書いてある内容の質が悪いと、「おまえのジャーナルはつまらん!」と本人に直接言います。トップが細かく関わるから、仕組みが形骸化せずに習慣化するのです。

個々の製品の商談の状況も手に取るように分かります。部門長などに「ジャーナルにこんなことが書いてあったやないか。そこからしっかり考えろ」と会議でよく注意します。

新製品のアイデアの元に

ICジャーナルの最大の利点は経営陣と現場社員との情報格差がなくなり、生の情報をもとに、すぐ対策を練ることができることです。

武漢での新型コロナウイルスの情報も中国社員のICジャーナルから入り、いち早く対応ができました。

顧客ニーズに即応するには、経営陣と現場がコミュニケーションを密にして情報を共有することが不可欠です。そうしないと、動きがバラバラになるからです。

社員がトップの考えを正確に理解し、それに沿って主体的に行動する。規律の取れた組織をつくる上でICジャーナルのような仕組みは必須です。

社員のほうも「なぜ」「どうして」「どうすれば」と自分の考えを毎日発信し、上司からチェック・助言を受けていれば、目線は自然に高くなります。

新製品のアイデアの元にもなります。何もないところから思いつくアイデアは基本的にはありません。

ある営業社員が「ホームセンターでこんなものが売れています」という話をICジャーナルに書いていたり、展示会で面白い製品を見つけたりと、そういう情報の集積が、ある瞬間にアイデアとして形になる。

このICジャーナルの原型が生まれたのは、1990年頃です。当時、営業担当の弟・富生と意見がぶつかるようになりました。

営業の責任者を任せたことで、私にも意見を主張するようになったからです。社員の前でも意見が対立することが相次いだため、「また兄弟げんかが始まった」と社員から言われる始末。

「意見が合わないのは、持っている情報が違うからではないか」。

そう考えた富生が、営業社員のリポートを私に読んでもらおうと考えたのが、そもそもの始まりです。読むと確かに参考になる。

それがきっかけで、もっと多くの現場情報、もっと生きた情報を求めるようになり、全社的な仕組みに発展させたのです。

2015年までは「ICデイリーリポート」と呼んでいましたが、2016年から「ICジャーナル」に名称変更。

一人ひとりがジャーナリストとしての役割を果たしてほしいというメッセージをより明確にするためです。部下が壁にぶつかったとき、上司が的確にアドバイスできるのもメリットです。

ICジャーナルの内容を毎日追っていると、社員がどのような点で苦戦しているのかが手に取るように分かります。

掲載されている他人の言動を参考に、自身の仕事のやり方を見直すこともできます。

自分が発信した情報が新規事業など会社全体の方向性を変えるかもしれないので、経営への当事者意識も高まる。

適時適切に多様な情報を共有し、それぞれが有機的に結びつくICジャーナルの機能は、仕組み至上主義を掲げるアイリスの真骨頂といえます。

意思決定そのものは上意下達ですが、情報の流れは上から下、下から上へと自由自在。獲物を求めて敏しょうに動く生命体のような組織体をつくっています。

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