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CHAPTER06「忙しいだけの仕事」を捨てる

3章の「7つの原則」で「一事に集中する」そして「コミットメントと興味を区別する」というお話をしました。制限なく仕事を引き受けると、大切な仕事に悪影響が出ます。

仕事の数は少なくても確実に仕上げる方が、たくさんの仕事がどれも中途半端なままより、ずっとよいはずです。

目次

仕事をこなすか?目標に向けて行動するか?

確実に仕上げるべき仕事はどう選べばよいのでしょうか?答えは簡単です。新しい仕事が出てきたら、まずは既存の仕事への影響を考えることです。

すでに毎日の仕事があるはずですから、新しい仕事を入れるには、他の仕事に費やす時間を振り替える必要があるはずです。

「のんびりテレビを見る時間」を新しい仕事に振り替えられるなら問題ありません。プロジェクトが終わって、余裕ができた場合もよいでしょう。問題になるのは、すでに予定がいっぱいの場合です。

コミットメントとは「私はこの仕事に集中する」という宣言。嵐の海のような混乱の中で、一筋の光を放つ灯台なのです。あなたは何としても、その光に向けて船を進めねばなりません。

仕事も同じです。単に「仕事をこなす」ことと「目標に向けて行動する」ことは違います。

つまり、毎日忙しく、たくさんの仕事をこなしている人が「よい仕事をしている」とは限らないのです。

「忙しいだけの仕事」が「本当の仕事」を遠ざける

私がおすすめしたいのは「本当の仕事」と「忙しいだけの仕事」を区別することです。「本当の仕事」とは、目標に近づくための仕事です。

そのためには、あなたの能力すべてを使わなければなりません。つらい困難にぶつかることもあるし、限界にチャレンジする必要もあります。

ときには「もう嫌だ」と思うこともあるでしょう。そして、「本当の仕事」には、綿密な計画と入念な思考の時間が必要です。

しかし、そのせいで「忙しいだけの仕事」の方が仕事らしく見えるのです。

あちこち飛び回って、慌ただしくしている人の方が、静かに座って計画を練る人より忙しそうに見えませんか?あなたの上司や同僚はもちろん、あなた自身も自分に対してそんな誤解をしがちです。

しかし、はっきり言ってしまえば「忙しいだけの仕事」は「本当の仕事」をしない口実に過ぎません。

また、「忙しいだけの仕事」は、人、立場それぞれで違います。ある人には「本当の仕事」でも、別の人には「忙しいだけの仕事」だということもあります。

例えば、アシスタントに任せるべき仕事を自分でした場合、それは「忙しいだけの仕事」をしたに過ぎません。

そして、アシスタントの方は「本当の仕事」をするチャンスを逃したことになります。あなたの仕事のうち、どれが「本当の仕事」なのかを明確にしてください。

見極めるべきは仕事だけではなく、あなたの人生でも同じです。「本当の仕事」だけが、あなたの人生に直接かかわることになるのです。

すぐやると「忙しいだけの仕事」ばかりが進む

人気のあるタイム・マネジメント手法の1つに「すぐやる」というメソッドがあります。

これは数分程度の短時間で終わる仕事なら、TODOリストに書くまでもなく、その場ですぐに片づけてしまうという方法です。

しかし、この方法には大きな問題があります。それは、「本当の仕事」を忘れて「忙しいだけの仕事」に飛びつく元凶になってしまうということです。

もちろん「すぐやる」は、場合によってはとても優れた手法です。私の例でお話しすると、クルマの給油がまさにそうです。

ガソリンが空に近づいていても、「まだ大丈夫」とスタンドには立ち寄らず「もう走れないかも」という状況になって初めて、必死にスタンドを探します。

実際、本当にガソリンがなくなったこともありました。ですから、今は警告ランプが点灯したら「今すぐ」最寄りのスタンドで給油することにしています。

つまり「すぐやる」が優れた手法になるのは「ガソリンが少なければ給油をする」といったケースのように、次に何をするかが明確である場合だけです。ですから、この手法は次にやることが決まっていない状況では使えません。

どんな仕事にも、たくさんの選択肢があり、「すぐやる」が、どのケースでも機能すると考えることには無理があるのです。

さらに「すぐやる」ことで「忙しいだけの仕事」を増やしているなら、それこそが問題でしょう。

まず「ノー」と言ってしまう

「本当の仕事」を見極め、目標に近づく極意とは何でしょうか?1つ提案するなら「できない『イエス』は言わない」こと。もっと簡単に言えば「まず『ノー』と言ってしまう」ことです。

基本はこれだけです。しかし「ノー」と言う技術が身についていなければ、仕事がいくらできるようになっても「忙しいだけの仕事」が増えるだけです。

仕事の効率がよくなって時間の余裕ができると、そこには必ず新しい仕事が押し寄せてきます。

そこに「忙しいだけの仕事」を入れて、それをテキパキと片づけたところで、「本当の仕事」には何の影響もありません。

さらに注意すべきは、無意識のうちに「忙しいだけの仕事」の出現を願い、それを「本当の仕事」をしない言い訳にしてしまうことです。

ビジネスでもプライベートでも、予定がいっぱいという状況は、まず間違いなく「忙しいだけの仕事」を言い訳にして「本当の仕事」を避けているという状態です。

「なぜ、私はいつも忙しいのか?」をよく考え、逃避行動のメカニズムを知ることが、生産性の低い忙しさから脱出する第一歩です。

「ノー」が上手に言える人になる

ある仕事が、あなたにとってどれだけの価値を持つか─これを決めるのはあなた自身です。

もし「忙しいだけの仕事」ばかりに時間を割いているのなら、その原因は、とりあえず「イエス」と言って上司に見せかけの忠誠心を示したり、どうやって「ノー」と言うのかわからなくて差し出された仕事をすべて引き受けていたり、そこにある仕事を勝手に「私の仕事だ」と思い込んでいたりといった状況でしょう。

あるいは「本当の仕事」から逃げるために「忙しいだけの仕事」の陰に隠れている可能性もあります。

新しい仕事が来たら、引き受ける前に必ず「この仕事は、既存の仕事より価値があるか?」をまず自分に問いかけることです。

すでに、毎日はやるべき仕事で埋め尽くされていることを忘れてはいけません。それでも引き受けるなら、抱えている仕事をどれかあきらめる必要があります。

誰にでも、何かを頼まれて反射的に「イエス」と答えてしまい、後悔する傾向があります。こうして「忙しいだけの仕事」が増えていくわけです。この傾向を絶ち切るには、「ノー」と言える人になる必要があります。

そのためには、何か頼まれた時のとりあえずの反応を「イエス」から「ノー」に変えることです。これから「ノー」と言うコツを紹介します。このやり方で、1日に何度「ノー」が言えるか試してください。

■ヒント1落ち着いた声と態度を保つ

「ノー」と言う時は、落ち着いたトーンでの発声を意識してください。嫌な素振りをしてはいけません。反対に、弱気になったり、悩んだりするのは禁物です。

■ヒント2言い訳しない

弁解してはダメです。あなたの価値観に基づいて、理由を説明してください。

例えば「クルマがないから行けない」と言うのではなく「娘と過ごす時間を増やしたいので行かない」とあなたの価値観を伝えましょう。

■ヒント3考え込まず、当たり前のように

「頼んでくれるのはうれしいけれど、今、引き受けられる状況じゃないんだ」と気軽に言ってみてください。深く考える必要はありません。

「そこを何とか」などと食い下がられても、同じ調子でくり返し答えることです。「今、仕事の仕上げに集中している」といった理由もよいでしょう。当たり前の説明であればあるほど、相手が要求をくり返す可能性は少なくなります。

■ヒント4現状を説明し、仕事を選択してもらう

もし、仕事を頼んだのがあなたの上司なら「今の仕事の大切さを考えると、新しい仕事は難しいと思います。

期限を延ばしていい仕事があるでしょうか?そうすれば、この仕事に取りかかれると思います」とあなたの現状を説明しましょう。ここでも、ニュートラルな発声を忘れずに。

■ヒント5引き受けるなら、自分の意思で

「ノー」と言った後で気持ちが変わり、やはりその仕事を引き受けると決めるならば、それは問題ありません。その仕事がしたいから引き受けるのであって、義務感だけで仕事をしてはいけません。

くり返しますが、大切なのは、まず「ノー」と言ってしまうことです。

しかたなく引き受けたり「悪いなあ」と思いつつ断るのではなく、「心から『イエス』と言えるか?」を自分に問いかけてみてください。

答えが「ノー」ならやはり断るべきです。

「僕は、コミットできない仕事は断るのをルールにしています。この仕事を責任を持って引き受けることはできません」と伝えることです。

いいかげんな仕事をしても、相手に迷惑をかけるだけです。あなたも引き受けたことを後悔することになるでしょう。

EXERCISE「本当の仕事」を見極める

次のそれぞれの職業において「本当の仕事」とは、どんな仕事でしょうか?

<Q1>小さな会社のオーナーの「本当の仕事」とは?

<A1>オーナーの「本当の仕事」とは「オーナーにしかできない仕事」です。会社の方針の決定や戦略立案がそれに当たります。

日常業務に入り込みすぎて「本当の仕事」を忘れているオーナーが、実際には多いのではないでしょうか。

<Q2>教育機材を売るメーカーの営業の「本当の仕事」とは?

<A2>「製品を売ること」と言いたくなりますが、少し違います。正解は「販売に結びつく行動」をすること。何が販売に結びつくのかを見つけることも「本当の仕事」です。

「電話をかける」ことが販売につながるのなら、電話をやめたら「本当の仕事」を放棄したことになります。

<Q3>大企業の社長のアシスタントの「本当の仕事」とは?

<A3>社長が「社長の本当の仕事」に専念できる時間を増やすことです。

<Q4>ライフコーチの「本当の仕事」とは?<A4>ここでは、この事業の本質を理解することが大切です。肩書きはコーチでも、実際の仕事の重要な部分はコーチングという商品を売ることです。

つまり、セールスやマーケティングに取り組んでいなければ「本当の仕事」をしていないことになります。

最高のモチベーションは何から生まれるか?

さて、ここでもう1つ問題です。

仕事をしていて、一番やる気が出るのはどんな時でしょうか?答えは「仕事が予定どおり進んでいる」と実感する時です。

意外に思われる方が多いでしょう。

多くの方は「目標が明確な時」「熱意を感じる時」「好きな仕事をしている時」といった答えを予想されたかもしれません。

しかし、どんな仕事でも、予定どおり進んでいることで一番力が湧くのです。ただし、そうなるには「本当の仕事」と「忙しいだけの仕事」の見極めが必須です。そのためには明確な目標がなくてはなりません。

「本当の仕事」を見極められれば、あなたの仕事は「これでまたゴールに一歩近づく」と実感できる仕事だけになり、やる気はどんどん高まります。

そんな仕事のためにスキルと能力のすべてを絞り尽くせるなら、結局はそれがあなたの人生を豊かにしてくれるはずです。

新しいアイデアをチャンスと見て、ぱっと飛びつく人がいますが、それでは力を分散させてしまいます。事業でも、利益を上げたいなら、焦点を絞るのが王道。

「本当の仕事」を見極めてコミットし、確実にやり遂げることです。

個人事業主や企業のオーナーなら問題は少ないのですが、どんどん思いつきで仕事を割り振る上司の下にいたら大変です。

その場合でも「無能な上司だ」と言いたくなる気持ちを抑えて、管理と仕事の配分が上司の仕事だと理解してあげるように努めましょう。

そして、部下であるあなた自身の現状を伝えることも、部下の責任であることを忘れてはいけません。

CHAPTER06まとめ

●新しい仕事ができたら、すぐに飛びつかず、既存の仕事への影響を考えた上で「本当の仕事」と「忙しいだけの仕事」を区別する。

●「すぐやる」というタイム・マネジメント手法では「忙しいだけの仕事」ばかりに偏りやすくなる。「本当の仕事」を見極めてコミットし、それを確実にやり遂げる。

●目標に近づくための極意は「まず『ノー』と言う」こと。

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