Chapter7アルバイトがイキイキ動く指示の出し方
アルバイトは所詮アルバイト
アルバイトスタッフへの指示の出し方を具体的に説明する前に、前提として意識してほしいことがあります。それは、「アルバイトは所詮アルバイト」だということです。
もちろん、アルバイトスタッフは大切にしなければいけません。ただし、指示を出すときには、所詮アルバイトであるという意識を持ってほしいのです。
どんなに優秀なアルバイトスタッフであっても、理解力、作業能力、判断力、コミュニケーション能力など、あらゆる仕事の能力において、それまで仕事一筋で頑張ってきた皆さんよりも優秀であるわけがないのです。
新入社員と接してきたことがある方はよくおわかりだと思いますが、どんなに優秀な新人でも、はじめからみなさん以上に仕事ができる人はいなかったはずです。
素質のある若手社員は、みなさんの地道な指導があってはじめて、頭角を現していったのではないでしょうか。ましてやアルバイトスタッフです。
一を聞いて十を知ってくれる人はいません。一を聞いて二分の一を知る人だけだと思って接する必要があります。相手がアルバイトスタッフであることを再認識して、相手に合わせた指示を考えてください。
マネージャーであれば、部下のミスは自分の責任です。社員であれば、アルバイトスタッフのミスは社員の責任です。ミスを起こさないためには、より細かく丁寧でわかりやすく、しつこいくらいの確認が必要なのです。
お金はかかりませんが、時間と根気のいる作業です。それでも、相手がアルバイトであるということを意識して、きめ細かな指示を出しましょう。
また、ここでも優秀なアルバイトスタッフであるかどうかを見極めていることを忘れないでください。アルバイトスタッフの人選はすべてコミュニケーションで行われます。
そして、あなたが信頼できると判断したときに、あなたが今までやっていた仕事を任せるのです。もし、一を聞いて十を知るアルバイトがいれば、すぐにでも仕事を任せても良いでしょう。
ただし、社員と同じ責任を求めても、アルバイトであるということを意識した指示の仕方を忘れないでください。
男女別にコミュニケーション方法を使い分ける
男女によって指示の出し方を変える方が良いかという質問をもらうことがあります。結論から言うと、指示の出し方は基本的に一緒です。
しかし、相手によって変えるべきです。指示を出すというのは、コミュニケーションの中の1つの動作だと考えてください。
それでは、まずは大枠である男女別のコミュニケーションについてお話しします。アルバイトスタッフがたくさんいる中で、意外と配慮が必要なのが女性とのコミュニケーションです。
私が男だからかと思っていたのですが、意外なことに女性社員も男性より女性アルバイトの方が気を遣うらしいのです。そこで、男性と女性とのコミュニケーションの違いを考えてみたいと思います。
我々の仕事では、アルバイトリーダーがコンパニオンを管理することが少なくありません。コンパニオンとは、展示会の企業ブースなどで働いている女性をイメージしてください。彼女たちもほとんどがアルバイトスタッフです。
フリーランスとしてプロ意識をもって働いているコンパニオンはとても多いですが、一方で、プロ意識のかけらもなく働いているコンパニオンがいるのも事実です。
このようなコンパニオンが来たときは最悪です。暑い、寒いは当たり前、立っているから足が痛いという信じられないことまで言ってくるコンパニオンまでいます。
自分の会社のコンパニオンであれば、事前に業務内容や環境を伝えていなかった場合、会社の責任もあるかもしれません。必要であれば注意が必要ですし、改善が見られないときには、メンバーの差し替えもしなくてはなりません。
しかし、ほとんどの場合は他社のコンパニオンであることが多く、そう簡単にメンバー変更とはいかないのです。そこで、非常に有効だったのが、敬語を使うというテクニックでした。
距離感をつくるためです。程よい距離感をあえてつくるのです。特に同世代の人に女性は甘えやすいものです。仲が良くなるほどその傾向が強く表れるので、あえて距離感をつくることで甘えにくい環境をつくりました。
すると、甘えと思える発言がなくなったのです。また、距離感をつくることは女性にとっても大きなメリットがあります。職場になれなれしい男性がいると、仕事がしにくいとか、セクハラまがいの発言があるなど問題になることがあります。
それは実は、男性本人に悪気があるのではなく、距離を縮めるために良かれと思ってやっていることがほとんどなのです。敬語を使うと決めることで、こうした誤解を避けられるようにもなりました。
これはアルバイトスタッフだけに限りませんが、男女の距離が近づくと、女性は甘えてくる、男性は下心が出てくるというのはよくあることです。
それを防ぐためにも、お互いの立場を理解し、距離を置いたコミュニケーションをとることが有効です。異性との関係では、程よい距離感を意識してみてください。
また、男性と女性の関係だけでなく、女性と女性の場合も含めた女性とのコミュニケーションで意識すると、良いこともあります。
女性の方が冷静に物事を分析する傾向があります。男性は「ノリ」でついてくることも多いのですが、女性はしっかり納得しないとついてきません。
そのため、先が見えないと前には進めない女性には、目的とプロセスと具体例を明確にして指示を出すと良いでしょう。また、話すコミュニケーションだけではなく、聞くコミュニケーションも大切です。
気持ちに浮き沈みがあり、仕事に支障が出てしまうタイプは女性の方が圧倒的に多いです。しかし、そのシグナルにこちらが気づき、聞いてあげることが、友好な人間関係をつくるきっかけになることも多いのです。
先ほどの距離感を保った上でのコミュニケーションが前提ですが、女性が色々と話してくれるようになってきたら、コミュニケーションの方向性は正しいと判断して良いでしょう。
冷静で分析力の高い女性たちは、話す相手をしっかり判断して話しているからです。一方、男性へのコミュニケーションはどうでしょうか。
私の場合、男性とのコミュニケーションでは、女性とは反対に「ノリ」を大切にしています。部活の「ノリ」のイメージです。私の会社のある女性社員は彼らのお母さんをイメージしていると話していました。
つまり、女性とのコミュニケーションでは、一緒に考え、話を聞くような「同じ目線」のコミュニケーションが有効で、男性の場合はついてこいというような「ノリ」や、母親が叱るような「上から目線」のコミュニケーションが有効だということです。
しかし、中性的な男性が増え、昔ほど大きな差がなくなってきた傾向もあります。先ほどの女性に対するコミュニケーションで書いたような明確な目的やプロセスの説明を必要とする男性も増えてきています。
指示の出し方は男女共通と考え、性別を意識したコミュニケーションをとるのがベストです。それでは、上手な指示の出し方をするアルバイトスタッフが実践している方法を、具体的にご説明します。
「とりあえずやっておいて」では通じない
5W1Hが指示出しの基本と言われます。5W1Hとは、WHY(なぜ)、WHAT(何を)、WHO(誰が)、WHEN(いつ)、WHERE(どこで)、HOW(どのように)のことです。
しかし、こうした指示が良いと知りつつも、なかなか5W1Hを基本とした指示が出せていないのが正直なところです。私のように記憶力がない人にとっては、恥ずかしながら5W1Hの意味がすぐに思い浮かばないのです。
アルバイトに忘れずに意識させるには、可能な限りシンプルにした方が良いことは前述しました。どんなに素晴らしいことであっても、実際に使ってもらえなければ意味がないからです。
彼らが使いやすく、そして覚えやすくしなくては、忘れられてしまいます。そこで、私が特に大切にしているのが、1W、WHY(なぜ)です。なぜやるのかという目的や理由を忘れずに伝えるようにしています。
アルバイトスタッフに指示をさせる場合も同じです。他のアルバイトスタッフには、とにかく丁寧に指示を出すことを意識しようと話しています。
大雑把な指示に聞こえてしまうかもしれませんが、できる限り丁寧な指示をすることで、結果的に5W1Hすべて兼ね備えた指示になれば、それで良いと思いますし、1Wの「なぜ」を強調するだけで、上手な指示になっているものです。
- 5W1Hを意識した指示をしてください
- とにかく丁寧な指示を心がけ、必ず目的を強調して伝えるようにしてください
どちらが、覚えやすく使いやすい指示でしょうか。
アルバイトスタッフの理解度に合わせなければ、どんなに良い指示であっても忘れられてしまいます。これを意識して、相手の立場を考慮した指示を心がけることが大切です。
◆自分が納得してから指示をする
私の会社では、仕事によって担当者が違うため、自分がよく知らない仕事についてもアルバイトスタッフに指示を出すことが多々あります。
そこで、よく知らない仕事についてアルバイトスタッフに上手に指示を出している新入社員に聞いてみました。「私は自分が納得してから伝えるようにしています」当たり前に聞こえてしまう言葉かもしれません。
しかし、多くの人が意外とできていないことなのです。例えば上司から、とある指示を出しておいてくれと頼まれたとします。そのとき、深く考えずに、伝言ゲームのように言葉だけメモをして指示をしている人が意外と多いのです。
そのため、アルバイトスタッフが実際に行動するときに、意図や目的が不明で、曖昧な指示になってしまうことがあるのです。
その場合は、先ほど述べた1W「なぜ」なども、質問しないとわからないことも多いはずです。当たり前すぎて見落としがちですが、自分自身が納得をしてから指示を出すことは大切なのです。
もしも、指示のときに「とりあえず」や「多分」などと言ってしまったら、相手を不安にさせてしまう可能性があります。どんな細かな指示出しも、自分自身がその意図や目的を理解しているのかを再確認してください。意外な見落としがあるかもしれません。
指示と一緒に期待を添える
社内でアルバイトスタッフに指示を出している社員を見ていて、上手だなと感じる人には必ず共通点があります。上手な指示出しをしている人たちは、細かい指示に必ず期待をプラスして指示を出すのです。
同じ指示を出すのでも、期待を伝えて相手のモチベーションを上げることは可能です。
例えばパソコンで資料作成をお願いするとしましょう。その資料をつくる目的を、スピードではなく、正確さを優先することを伝える場面です。
「会議で使う大切な資料なので、いつものように正確に頼むね」「会議で使う大切な資料なので、正確に頼むね」何でもない指示なのですが、どちらの指示をもらった方がうれしいですか。
「いつものように」があるだけで、期待が追加されていませんか。「いつものように」+「ポジティブな指示」で受け取る側の印象は大きく変わります。
いつものように上手に、いつものように素敵な笑顔で。いつものように完璧に。指示出しが上手な人は、何気ない会話の中に意識して人を褒める要素を入れているものです。
それも、いかにも褒めているという言葉でなくて、さりげない言葉を使って褒めているのです。
「いつものように」という言葉が使えない状況もありますが、そのときは、指示と一緒に期待を添えることをイメージするだけで大きく変わるので実践してみてください。
自分の状況に合った、他のさりげない褒め言葉が見つかるかもしれません。
また、「いつものように」という言葉には、もう1つ大きな役割があります。それは、具体的な過去の成功のイメージを共有して、こちらの指示と相手の理解の方向性を共有するという役割です。
前回と同じ状態を理想とするのか、今回は違うのかによって、指示の出し方は大きく変わるはずです。もし、新たなイメージを持ってほしい場合は、具体的な成功事例を提示する必要があるでしょう。
スタッフのレベルで変わる指示の出し方
先ほどは、アルバイトスタッフには特に丁寧な指示出しが必要だと話しました。しかし、相手の成長段階に応じた指示出しも非常に大切です。相手に合った指示出しは、効果的な教育に繋がります。私はアルバイトの成長を次の4段階で考えています。
- 第1段階新人スタッフ
- 第2段階ベテランスタッフ
- 第3段階新人ディレクター
- 第4段階ベテランディレクター
これは、私の会社のアルバイトスタッフの役割を新人とベテランに分けただけのものです。
アルバイトの成長を最低でも4段階に分けることをお勧めします。
この4段階は、教育される側である第1段階と第2段階と、教育する側である第3段階と第4段階に大きく分けられます。
◆第1段階(新人スタッフ)
まず、第1段階では、先ほどお話ししたように事細かな指示出しが有効です。ここでは、とにかく作業的なミスを防ぐことが優先されます。そのためには、価値観のすり合わせが大切になります。
こちらの基準とアルバイトスタッフの基準を統一化することです。我々の常識は、彼らの常識ではありません。そのため、これを意識して一つ一つを丁寧に説明する必要があります。
丁寧な指示出しが、良質なコミュニケーションにもつながり、不安を取り除くことになります。したがって、あまり精神的なケアの必要性がない時期とも言えます。その代わり、こまめな声がけをしてください。
◆第2段階(ベテランスタッフ)
第2段階では、経験でカバーできるため丁寧な指示はさほど必要ありません。その結果、こちらの指示の出し方が雑になる傾向があります。こちらが甘え始めると、コミュニケーションが減り、モチベーションを下げてしまうことが多くなります。
仕事を任せるのは良いのですが、モチベーション管理に注意が必要となる段階だと言えます。指示出しのイメージとしては、期待をプラスすることを常に意識することが大切です。
また、そろそろ自分のことだけでなく、自分がまわりの人に与える影響を意識させる必要があります。常にまわりを意識させるような指示を出すことで、教育にも興味を持ち始めるのです。
◆第3段階(新人ディレクター)
次の第3段階では、再び丁寧な指示を意識します。ここでの指示内容は、アルバイトスタッフ自身が指示をする内容やその方法、人の扱い方など、管理者としての内容が主となります。
ここでも、丁寧な指示を通じてコミュニケーションをとり、アルバイトスタッフの上に立って仕事をこなすモチベーションをサポートすることが大事です。
このとき、彼らは気持ちだけが空回りして、失敗に悩むことが多い時期になりますので、指示出しと合わせて必ずメンタルケアを行いフォローしましょう。
◆第4段階(ベテランディレクター)
そして、最終段階では大きく路線変更をします。この段階の人に対しては、丁寧な指示をするのではなく、最低限の指示以外は、任せるようにするのです。
この段階では、目的とゴールを伝えるだけで、やり方をすべて任せるようにします。決して「放任」ではありません。「任せること」と「放任すること」は違いますので、その点を理解して任せるようにしてください。
当然、管理を放棄してはいけません。失敗したときも自分の責任であることを忘れてはいけません。プレーヤーとしての作業の権限を委譲しますが、責任は委譲できないのです。
そして何より、なぜ、丸投げするかを伝えることが大切になります。丸投げするのは、任せられるだけ相手が優秀だからです。安心できる相手でないと、丸投げすることはできません。
これを必ず相手に伝えることが、良好な人間関係を強固にしていくのです。仕事を任せられる喜びを感じてもらうことができるでしょう。
伝達ミスをなくす方法
私の会社では、毎日たくさんのアルバイトスタッフに指示を出しています。多いときでは朝から晩まで、100人以上のアルバイトスタッフにたくさんの指示を伝え続けることもあります。
そのため、伝達ミスが起こらないように非常に細かな取り組みがなされています。そこで非常に大事にしているのが、ミスがあったときに責任の所在をはっきりとさせることです。
そのために、当社では誰が誰に指示をしたかが確実にわかるように仕組みがつくられています。そして万が一、伝達ミスが起きてしまった場合には、叱られる人もすでに決まっています。
必ず指示を出した側が叱られるのです。一般的によくあるトラブルは、伝達事項を伝えた、伝えていないかで食い違いが起きてしまうことです。
当社ではそこはまったく気にしません。重要なのは、伝えたかではなく、伝わっているかどうかという事実だけです。伝わっていなければ、伝えたことになりません。当然、責任は伝えた側が負うことになるのです。
それが浸透しているので、業務内容の伝達ミスはほとんど起きなくなりました。指示を出す側が、丁寧な指示出しを自分の責任として認識するようになったからです。
確実な指示を浸透させるためには、責任の所在をはっきりと決め、共有することが大切です。これにより、指示を出す側がどうすれば指示が伝わるのかを考え始めます。
伝え方、伝達方法、話し方、本人の業務の理解度も大きく変わるのです。責任を与えることで人が変わることを顕著に感じることができると思いますので、ぜひ試してみてください。
指示が上手な人の共通点
上手な指示の出し方をする人の共通点は、相手の立場に立って物事を考えられることです。また、「自分にとって」ではなく「あなたにとって」という言い方をする人が多いのです。
もし、指示不足でミスが起きてしまったときは、逆にチャンスです。その相手と、じっくりと、どうすればミスが起きないのかを話し合えるからです。
これはアルバイトスタッフに限りませんが、ミスが起きて反省しているとき、人は最も聞く態度になっています。この機会を最大限に利用して、相手の考えていることを聞き出し、すぐに活かすと良いでしょう。
上手な指示出しとは、相手の状況や心情に配慮した指示を出すということです。また、指示を出す人は最終的には自分で考えて指示を出すようにならなくてはいけません。
そのためにはじめは、具体的な指示を心がけて身体で覚えさせるので十分です。なぜならば、彼らに答えを求めても、経験が少ないうちは答えを導き出すことも、導く方法すらも知らないからです。
それが経験を積むことで、次第に体験となって彼らの脳に焼きつくようになります。最終的には、相手の成長を見ながら彼らの体験の中からその後どうやって育成していくべきかの答えを引き出してください。基礎の上にしか個性を築くことはできないからです。
そして、もう一つだけ意識してもらいたいことがあります。それは、自分自身の指示出しを改善するだけではなく、周囲にも改善してもらえるようにすることです。
あくまでも本書は、この本を読んでくださっているみなさんが所属する「チーム」が成長していくことを目的としているからです。
まわりの人が大きく変わり始めたとしたら、みなさんの指示出しは素晴らしいということですし、変わらなければ改善が必要なのです。自分だけではなく、まわりを巻き込んで、どんどんトライしてみてください。行動なしでは変化は起きません。
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