Chapter4優秀なアルバイトを育てるトレーニング
トレーニングが良い仕事を引き出す
面接が終わると、次はトレーニングです。アルバイトスタッフにはトレーニングのない企業もあるかもしれません。その場合は、簡単なトレーニング(研修)制度を導入した方が良いでしょう。
「すぐにでも人が必要だから、早速お店に出てもらいます」と、すぐに現場に立ってもらわなければならない事情も理解はできます。
しかし、トレーニングもせずにお客様の前にアルバイトスタッフを立たせるリスクは、冷静に考えると相当なものです。デスクワークなどお客様の前に立たない仕事の場合でも同じです。
トラブルやミスの発生率がまったく違います。最低でも、次の内容の共有はしておくのが理想的でしょう。
①作業の留意点
②作業の目的
③作業の重要性
④報連相の徹底
⑤企業理念、行動指針の説明
実は、アルバイト側の立場から考えても、細かくしっかりと教えてほしいという気持ちが強いのです。トレーニングといえば、アルバイトスタッフにしてみれば面倒なものだと考えられがちですが、それは大きな誤解です。
当社ではスタッフ評価や現状の把握のためにアンケートをとることが多いのですが、「一番働きにくい現場は?」という質問に対して多かったのが、説明が少なく、何をして良いかわからない現場というものでした。
事細かく指示を出し、目的を共有するような少しうるさく感じる現場は、アルバイトスタッフにとっては実は働きやすい現場なのです。
また、〝細かい〟というプレッシャーは現場において緊張感を出すためにも大切です。これは、現場だけでなく会社にも当てはまります。
アルバイトにとって働きやすい環境は、すでにトレーニングから始まっているのです。1時間でも2時間でも良いので、まずはトレーニングの時間をつくってみてください。特に今まで実施をしていない企業には、大きな変化があると思います。
研修でアルバイトのやる気とスキルをアップする
◆研修時間は小分けにする
みなさんの会社の新人研修の時間はどのくらいでしょうか。私のまわりでは、1時間程度という短い会社から、1週間みっちりやるところまで様々でした。アルバイトスタッフに対してじっくり時間をかける傾向は、大きい企業の方が強いようです。
予算的に余裕がある場合は、じっくり時間をかけるのは良いと思います。なるべく多くの教育を入れていくことは、人材教育にとって重要です。
中小企業のようにあまりアルバイトスタッフの人材教育に予算も時間も使えない場合は、最長2時間の研修をお勧めします。1日かかるような研修内容の場合も、1日あたり2時間程度の内容に小分けにして、日数をかけることをお勧めします。
予算も時間もほとんど変わらず実施できるはずです。研修に同じだけ時間を費やすのなら、数回に分けて改めて顔を合わせる回数を重ね、じっくりと接点を増やしていく方が、1日で一気に行う研修より、より人間関係を構築しやすく、結果として効果的な研修となるからです。
1日かかる研修プログラムを考えるよりも、数回に分け、1日あたり最長2時間を目安の研修を行うことをお勧めします。研修内容はもちろん大切なのですが、ここで重要視したいのが、アルバイトスタッフとの人間関係の構築です。
◆研修は2次面接の場
通常、新人研修は新たなアルバイトに業務内容や業務の目的を伝える大切なものです。そこに当社では、もう1つの大切な目的を作っています。
研修は「2次面接の場」であるということです。研修の場で、優秀なアルバイトスタッフを選抜しているのです。
私の会社ではディレクターと呼ばれるアルバイトリーダーが必要であるため、再度ここで人材のチェックをしているのですが、みなさんの会社においても、より優秀な人材を見極めておくことは、「アルバイトだけでまわるチーム」をつくるための必須事項となります。
研修でチームのリーダー候補を再度チェックするのです。繰り返しになりますが、アルバイトスタッフに求めるものは「責任感」と「素直さ」です。研修でこれらを見極めるためにチェックすべきポイントが、話を聞く姿勢です。
おそらく、多くの企業での研修内容には、「そんなの知っているよ」とアルバイトが当たり前に思うことも多いはずです。しかし、当たり前のことを伝え、確認するのが重要なのです。
大切なことほど当たり前なことも多いですし、当たり前なことほど大切であることも多々あります。言わずとも知っているような当たり前だけど大切な話を、どのように聞いているかを観察するのです。
その話に対して、こちらに目線を合わせて、「目を使ってしっかりと聞く姿勢」がまずは必要。そして、程よく目線をそらすことも重要です。その行為が自然とできている若者は期待できます。
この時点で優秀と言いきるのは時期尚早かもしれませんが、この話の聞き方ができる人にこそ、優秀なアルバイトになるための要素である「責任感」と「素直さ」を兼ね備えた性格を期待できるのです。
「そんなの知っているよ」と露骨に態度に出てしまっている人は、素直という言葉からかけ離れています。どんな内容でも、話し手が気持ちよく話せるような「聞き方」ができることが重要です。
若者の場合は経験から培って意識しているというより、自然とやっていることがほとんどです。特に、面接ではなく、研修という採用が決定した安心感のある場所なのでなおさらです。
話が少し反れますが、私の会社の新人社員にはディズニーランドのキャスト出身者がいます。さすが、ディズニー出身と思える優秀な新人です。
また、スタッフにも多くのディズニーランドのキャスト出身者がいます。彼らにディズニーランドの教育の話を聞くと、口をそろえて言うのが、伝え方が上手であることです。
研修すべてにワクワクするような要素があり、飽きることなく学べるということでした。その方法を聞いてみると、なかなか我々には真似をすることが難しそうです。
テキストや映像にミッキーなどのキャラクターが登場し、ディズニーランドの裏側が見られる内容は、聞くものすべての興味を惹きつける魅力があるようです。
しかし、我々もなるべく聞く側が飽きないように、話し方や内容を工夫したほうが良いことは言うまでもないでしょう。
アルバイトのコミュニケーション能力を鍛える
私の会社の場合、まず最初に求めるスキルがコミュニケーション能力です。コミュニケーションには「バーバル・コミュニケーション」と「ノンバーバル・コミュニケーション」の2つがあります。
アルバイトには飲食店に代表されるようにお客様と接する仕事が多くあるため、アルバイトスタッフには文字や言葉によるバーバル・コミュニケーションのスキルが求められるものと思われがちです。
確かに話すスキルも大切ではありますが、実は文字や言葉によらない、ノンバーバル・コミュケーションの方がより重要なのです。ノンバーバル・コミュニケーションにおいて大事なのは2つ、「聞くスキル」と「身だしなみ」です。
ではなぜノンバーバル・コミュニケーションを重視すべきなのか。アルバイトという立場である以上、話す機会、伝える機会よりも、指示や説明、注文を聞く機会の方が圧倒的に多いからです。
また、私たちのようなイベント会社では、クライアントやお客様、そしてスタッフ、その日に会う人みんなが初対面ということが多いのですが、はじめて会った人とのコミュニケーションで重要なのが第一印象です。
会った瞬間に「この人は安心できそうだ」と良い印象を与えた場合と「この人大丈夫かな?」と悪い印象を与えた場合では、その後の仕事に大きな差が出てきます。
第一印象の9割はノンバーバル・コミュニケーションで決まると言われており、言葉を使わず無意識にメッセージを発しているので、誤解されてしまうことも多いのが特徴です。
また、チーム作りの視点においてもノンバーバル・コミュニケーションは重要です。
本人の機嫌は良いのにも関わらず、相手の目を見ず挨拶をすることや、暗い顔をしているだけで、何かあったのかな?怒っているのかな?と勝手な勘違いが起きてしまい、チームの空気が悪くなることもありえます。
それが毎日のことだと、その負の空気はボディーブローのように効いてきます。特にリーダーと呼ばれる人たちの影響は大きいものです。リーダーたるもの、常にまわりに良い空気を創り出すことが大きな役割なのです。
では、良い空気を作り出すためにはどうすればいいのか。その対処方法は非常に簡単です。意識すればいいだけです。
ノンバーバル・コミュニケーションが劣っている場合、それは無意識であることがほとんどなので、その重要性と目的を伝えれば簡単に治ります。
時間が経てば必ず意識することを忘れてしまうことが多いので、管理する側がコミュニケーションをとりつつ、チェックを続ける必要があるでしょう。
通常の会話の中で常に意識するようにさせ、忘れているなと思った時に軽く注意してあげる。この程度で十分な効果を発揮します。注意する側の根気が大切です。また、その違いを体感してもらうことも効果的です。
当社の場合、研修やセミナーなどがあるときに、自己紹介をする機会があります。その自己紹介の半分の時間を、聞く側にはあえて横柄な態度で聞いてもらうのです。その後、今度は聞く態度を精一杯に意識して聞いてもらいます。
両方とも事実は聞いているにも関わらず、話す側が感じる大きなギャップを感じてもらうことで、ノンバーバル・コミュニケーションの重要性を理解してもらうのです。
次に「聞くスキル」のチェック項目を記しておきますので、役立ててください。
当社における具体的な「聞くスキル」のチェック内容
□相手の目をしっかり見ているか
□話の内容に合わせて表情をつくっているか
□程よく(10秒に1回程度)目線をずらしているか
□程よく相づちをしているか。毎回の相づちは逆効果
□声と頭の両方を使って相づちができているか
□メモをとっているか
□復唱しているか。
相手の認識とのズレを確認
□自分に求められていることとその他不明な点を質問できているか
以上、「聞くスキル」のすべてのチェック項目は、実際のミスを事前に防ぐことと同時に、相手に安心感を与える目的があることを忘れてはいけません。
◆教える立場から学ばせる
研修の内容次第では、アルバイトスタッフが講師を務めることもお勧めします。
2次面接としての役割をしている新人研修では難しいですが、作業内容を教えるような研修では大きな効果を発揮します。
ディズニーランドやスターバックスでも、アルバイトスタッフが講師となって新人研修を行なっているのをご存知ですか?どこが始めたのかはわかりませんが、実は意外と多くの企業が実施している手法です。これも会社の大きさは関係なく、有効な手法になります。
やはり仕事を一番知っているスタッフが教えることで、現場の状況を加味した細かい内容になります。教え方は下手かもしれません。しかし、研修を繰り返すうちに必ず教えることもうまくなります。
そして気がつくと、その仕事のエキスパートに育っていることをお約束します。何度も言いますが、アウトプットすることで人は成長するのです。
また、教育を通して相手が成長していくことに、間違いなくやりがいを感じます。教える側には、これも大きな成長のきっかけとなるのです。
また、良好な人間関係も生まれます。一番のコミュニケーションになるからです。ただし、はじめは上手な教え方を伝えてあげなければなりません。
ここは任せきりにすることなく、教える姿をチェックすることも大切です。
教えるときに意識することは一点です。「できるだけ丁寧に教える」ことです。それだけで大丈夫なのかと言われてしまうかもしれませんね。
もちろん他にも意識したほうが良いことはあります。
しかし、伝えることは可能な限りシンプルにするのを心がけてください。
どんなに良いことも、相手に使いこなせなければ意味がありません。
そのためにも、アルバイト教育では、なるべく一番伝えたいことを一点にしぼって伝えるようにする方が効果的です。
あれもこれもというよりも、ここだけは覚えてほしいということで良いのです。
話を戻しますが、人に教える際には、教える姿を実際に見せてあげるのが良いでしょう。
丁寧さの度合いも人によって認識が違うからです。
お互いの認識のズレを修正することを意識してあげてください。
仕事への「想い」を語ること
みなさんの会社の研修では、「想い」について語っていますか?みなさんの会社の社員が、「想い」について語ればアルバイトスタッフからも会社に対する愛情が生まれます。
社員が不満を語れば、アルバイトスタッフからも不満が出てきます。
当然のことです。
だから、研修の場でも必ず「想い」について語ることが重要です。
具体的には、企業理念が「想い」としてふさわしいでしょう。
もし企業理念がなければつくることをお勧めしますが、社長の「想い」でも良いですし、社員の「想い」でも構いません。
ディズニーランドのアルバイトマニュアルでも、一番はじめのページに「私たちが目指すもの」として理念が記載されています。
ディズニーランドのような大企業も我々みたいな中小企業も、理念の重要性についての違いはありません。
「グッドウェーブ(私の会社)のスタッフとして、しっかりやります」「グッドウェーブのスタッフとして、負けないように頑張ってきます!」こんなうれしい言葉が聞けるようになったのは、アルバイトスタッフにも理念を浸透させてみようとチャレンジし始めてからのことです。
理念を共有することで愛社精神が生まれるのです。
企業理念を浸透させる、十分な時間も予算もありませんでしたが、可能な限りやってみようと試みてみたところ、アルバイトの風土に明らかに変化が見られるようになったのです。
いつかは辞めていくであろうアルバイトスタッフにまで企業理念を浸透させる必要はないと思われるかもしれませんが、会社の隅々にまで企業理念が広まっていることが理想的な状態であると私は思っています。
価値観を共有することができるのも、「想い」を伝えることを勧める理由の1つです。
私もフリーターだったときに、愛社精神を持つことができる会社と、持てない会社がありました。
その違いは作業内容や業種だけではありません。
自分の好きな社員や、自分のお世話になっている社員から、会社の「想い」である理念や、その社員の仕事への「想い」を聞いていたことが、愛社精神に非常に大きく左右していたのです。
人は人の「想い」を大切にします。
年齢や立場は関係ありません。
その「想い」を共有することで、人の「想い」を大切にする風土が生まれるのです。
人の「想い」は、なかなか軽視できないものです。
当然、批判や不満も少なくなります。
可能な限り、というのが時間も予算もない中小企業での実施のコツにはなりますが、やるのとやらないのとでは大きな差となることを覚えておいてください。
もう1つ大切なのが「行動指針」です。
私の会社にいる元ディズニーランドのキャストの社員やスタッフも、この行動指針の大切さを語っていました。
このように、辞めたアルバイトも語れるほどの明確な行動指針を浸透させていることが、ディズニーランドの教育の強みの1つです。
3・11の震災のときの、ディズニーランドの映像を観た方も多いのではないでしょうか。
キャストが混乱せずに的確にお客様を誘導していたのが印象的です。
ディズニーランドの行動指針の中で最優先とされている「安全性」に則って行動していたのです。
我々のような企業でも、行動指針をつくる大切さに変わりはありません。
これが浸透していれば、いかなるときも社員もアルバイトスタッフも同じ方向に向かって行動できるからです。
そのために、あなたの会社の考える大切なことの優先順位をはっきりさせておくのです。
社員やアルバイトスタッフに何を意識して行動してほしいのかを考え、優先順位をつけるのです。
そして理念と一緒に可能な限りアウトプットしてみてください。
まずは研修でその時間をつくることから始めましょう。
アルバイトのための目標のつくり方
これは研修のときにできる作業ではないのですが、理念や行動指針に関係することなので、ここで書かせていただきます。
どんなに理念や行動指針が素晴らしくても、理解してもらえなければアルバイトスタッフの行動は変わりません。
そのため、理念や行動指針に結びついたアルバイトスタッフのための目標づくりは有効です。
具体的には、まず彼らの働く目的を明らかにします。
目的と目標の違いはご存知でしょうか。
意外と目的と目標を混同してしまっている方が多いかもしれません。
○目的:最終的に到達したい地点。何のためか
○目標:目的に向かうための具体的な状態目的は、「何のため」に置き換えることができます。
あなたの働く目的は何ですか?この問いに対して、「家族を守るため」「お客様の笑顔のため」「世の中を良くするため」「生活のため」等、様々な答えがあり、どれも納得できます。
もちろん目的意識が高いに越したことはありませんが、はじめから意識の高い答えをもつ若いアルバイトスタッフはめったにいません。
彼らの目的は、おおまかに2つに分かれます。
①やりたいこと、なりたいことがあるため(留学、学校に通う、役者になる、etc)
②お金、生活のため
これらはまったく異なっていますが、こちらが伝えるべきことは1つです。
目的のため、今どうすべきかということです。目的が何であろうと、今やるべきことに変わりはないのです。彼らがアルバイトで一生懸命に働くことに損はありません。
役者になりたいのであれば、このアルバイトでお客さまに笑顔や感動を与えることができた方が良いですし、たとえお金のためでも、たくさんお金を稼ぎたいなら一生懸命に働いて、今学べることは吸収した方が彼らにとって得なのです。
どんな答えが返ってこようが、すべて答えは一緒です。すべてが彼らのためになるということは事実だからです。非常に重要なことが別にあります。
彼ら各々の目的を理解した上で、各々に目標の設定をしてあげることです。答えは一緒でも、彼らの目的について織り交ぜながら話すことで、理解度や納得度が大きく変わります。
深く自分を理解してくれている人から、目標設定される場合と、自分の働く目的すら知らない人に目標設定をされるのとではどれだけ違うでしょうか?
彼らの目的を理解した上で、会社の目的である理念や行動指針に結びつけて話をするのです。そこで具体的な目標を設定してあげることで、やってやろうという気になるものなのです。具体的な目標を設定する際に、必ずスモールステップを意識してください。
例えば、接客時の笑顔。
まずは「1日笑顔を絶やさないで仕事してみよう!」と目標を設定します。当たり前の約束事を目標とするのです。そこで同意をしてもらうことが、最低限の約束事に変わり、その小さな一歩がアルバイトスタッフの自信に変わるのです。
また、掲げる目的を見誤らないように注意しなければなりません。そのための良い方法があります。「なぜ問答」と私が呼んでいる方法です。
例えば、お金のために働いていると言うアルバイトがいます。そこで「なぜ?」と繰り返し聞くのです。
「なぜ、お金が欲しいの?」「お金をためて、起業したいからです」「なぜ、起業したいの?」「○○を通してたくさんの人たちに、笑顔を届けたいからです」となると、目的はお金ではなく人のためであることに気づくのです。
「なぜ留学するの?」「なぜ歌手になりたいの?」なぜ問答で見えてくるものも多いのです。アルバイトの意外な志が見つかるかもしれません。
その志が高ければ応援したくなるかもしれませんね。ぜひ彼らの働く目的を聞いてみてください。
「褒める」ワーク
私の会社では新人研修の最後に、その日一緒に研修を受けた仲間を「褒める」というワークを行っています。
これは相手を喜ばせることで、自分自身が味わえる喜びを実感してもらうためのワークです。
お客様に喜んでもらうことで自分も幸せな気持ちになることを実感してもらうのが狙いですが、相手のどこを褒めるかによって優秀なアルバイトスタッフとしての資質を見ることができます。
資質は次の3つのタイプに分かれます。
❶ビジュアルを褒めるタイプ
このタイプが駄目なアルバイトスタッフだというわけではありません。しかし、ビジュアルはその場で判断でき、誰でも簡単に褒めることができます。相手(お客様)に対する情報アンテナが強くないタイプとも言えます。
❷言動にフォーカスして褒めるタイプ
「研修の際に発表されていた◯◯さんの▲▲に関するお話がとても誠実に感じました」「ジェスチャーや表情が豊かで、説明がわかりやすかったです」等、研修の間で得た情報や言動にフォーカスして褒めるタイプです。
このタイプは、パッと見てわかるビジュアルよりもう一歩深いレベルで、相手の「発言」や「行動」を記憶にとどめています。
まわりの環境に対してアンテナを張ることができるタイプです。仕事でもよく気づいて行動できるタイプの可能性があり、加点対象となります。
❸褒める+感謝の気持ちを伝えるタイプ
褒めるだけではなく、相手に感謝の気持ちも伝えるというタイプもいます。「◯◯さんはとても優しい方でした。面接前にお話をしてくれたおかげで緊張がほぐれました。ありがとうございます」「◯◯さんとご一緒できて楽しかったです。たくさん笑わせてもらいました。ありがとうございます」等です。
このタイプは、人に感謝の気持ちをもつことができる「人柄」と、感謝の気持ちを伝えることができる「素直さ」を持っています。
また、研修終了時までの間で既に他人と関わっているというコミュニケーション能力を持ち合わせているという面でも加点対象です。
このタイプは人と接する上で大切なことは何かを知っていて、優秀なアルバイトとしての資質があります。この「褒める」ワークでもう1つ注目してほしいポイントがあります。
褒めている側の表情です。
褒めている本人の表情が笑顔であればあるほど良いのですが、「褒める」という行為にもかかわらず表情が乏しい、笑顔がない人がまれにいます。
うれしい気持ちや気恥ずかしい気持ち、どちらであっても褒めることで出てくる表情は笑顔です。ここで笑顔が出てこない人はコミュニケーションがうまくないタイプである可能性が高いのです。面接では緊張で笑顔が出ないことも考えられます。
しかし、研修最後のこの場面で笑顔がないパターンは、コミュニケーション能力を必要とする仕事で活躍することは難しいのかもしれません。
再度じっくりと話してみた方が良いと思います。
名刺・秘密・責任を与える
私が新人のアルバイトスタッフに研修を実施していたときに使っていたテクニックです。
◆名刺を与える
面接から目をつけていて、研修においても「聞くスキル」が非常に高いアルバイトを必ず最後に残します。理由としては「少し話したいことがあるので残ってください」程度で十分。その他の全員が帰ってから切り出します。
そのアルバイトスタッフへの率直な評価、ここでは褒めることになりますが、素直に評価を伝えた上で自分の名刺を差し出すのです。
なぜ名刺?と思われるかもしれませんね。
20代を真面目に社会で働いてきた方には理解しにくいかもしれませんが、アルバイトスタッフにとって名刺をもらうことはうれしいことなのです。
これは学生でもフリーターでも一緒です。思い出してみてください。
学生時代に社会人に名刺をもらったとき、少し大人になれた気がして、うれしくなったことはありませんでしたか?フリーターも同じで、社会から少し距離感を感じてしまっているフリーターには、名刺をもらうということが、社会人として認めてもらったような気がしてうれしいのです。
私もフリーターだったときにもらった名刺を今でも大切に保管しているくらいです。名刺を渡す瞬間に彼らを一社会人として扱おうという気持ちになってもらえれば、より効果的だと思います。
◆秘密を与える
そして、次に与えるのが秘密です。ここで与える秘密は「えこひいき」になるものです。お金でも条件でも、何でも構いません。他の人には秘密にしておくべき内容であれば、何でも良いのです。
私の場合は、この場面でのお金や条件でのえこひいきはマイナスに働くこともあると思っているので、「期待」というえこひいきを使っていました。
「君には期待してもいいかな?普通はディレクターになるまで半年くらいかかるんだけど、頑張ってくれれば、すぐにでもディレクターをしてもらうつもりでいます。そのつもりで頑張ってもらっても良いかな。一応、他の人の目もあるから、このことは内緒にしておいてね」
自分がアルバイトスタッフの立場であれば、「軽い気持ちで働いてきたけど、ちょっと本気でやってみようかな」という気持ちになりませんか?言葉は悪いかもしれませんが、ここでも彼らを試しています。
優秀なアルバイトの選別はここでも続いているということを忘れないでください。この期待に乗ってくるかどうかをしっかり見極めてほしいのです。期待を負担と思う人に責任感を求めることはやめたほうが良いでしょう。逆にその期待に乗ってくるアルバイトスタッフであれば見込みは大です。
◆責任を与える
ここで最後に与えるのが「責任」になります。「成長に必要なものは責任である。あらゆるものがそこから始まる」これは、経営学者ピーター・ドラッカーの言葉です。
私もアルバイト教育を経験してきたため、深く共感できる言葉です。責任を与えなければ人の成長は100%ありえないのです。言い換えると、成長をしたから責任を与えるのではなく、責任を与えるから成長するのです。
ここまで面接、研修と、優秀なアルバイトになる可能性を見極めてきました。相手はアルバイト。責任ある仕事を与えることに心配はあります。
アルバイトに仕事を任せて大丈夫だろうか?彼らを信用できるのだろうか?色々な心配が出てくると思います。それでも責任を与えなくては人は成長しません。
そこでまず必要なのが、責任を与えるのではなく、今ある責任に気づかせることです。今、あなたの会社におけるアルバイトスタッフの役割をしっかり分析してみてください。
意外と重要なポジションを任せていることが多いのではないでしょうか。前述したように、店舗運営であればお客様と直接やりとりしているアルバイトスタッフ。
彼らがお客様に価値を提供できずに不快な思いをさせてしまったのであれば、お客様は二度と来てくれません。
私たちの仕事で言えば、新商品のプロモーションイベントでアルバイトが発した一言のせいで、二度とそのお客様にその企業の商品を買っていただけなくなるかもしれません。
そのためにクライアントからの仕事がなくなり、何千万、何億もの損失になる可能性も大いにあります。実際に当社の場合は一億円の損失が出たこともあります。
工場作業で言えば、そのミスのせいでラインが止まってしまい、大きな損失になってしまうこともあるのです。そして何より、お金では取り返せない、たくさんの人の想いを裏切ってしまうことになるかもしれないのです。
この責任に気づかせることで、大きな責任を与えることになるのです。当たり前だと思って伝えないことと、当たり前のこととして毎日のように伝えること。
どちらが責任に対して深く感じてもらえるかを考えれば、やることは見えてくるでしょう。今あるアルバイトスタッフが負う責任をしっかり伝え続けてください。地味な作業ですが、非常に重要な作業になります。
私の場合は必ずしている価値の話があります。
当社のプロモーション事業部では無料のサンプルを扱うことも多いのですが、このサンプルは無料ということから昔は軽く扱われてしまうことがありました。
軽い気持ちで持って帰ってしまおう、軽い気持ちで適当に配ってしまおう、そんなことを防ぐために気づかなくてはいけないのが、2つの価値になります。
サンプルの金銭的価値は売り物ではないので、確かに0円かもしれません。
ただし、サンプルには想いという大きな価値があるのです。
商品を開発した人の想い、制作した人の想い、販売している人の想い、そこに値段があろうが無かろうが、必ずその仕事に携わっている沢山の想いという価値があるということです。
そして、その人たちの後ろには応援している家族や友人がいるのです。
その沢山の想いをお客様に届けるのが私たちの仕事であると考えると、仕事の責任の重さに気付けるのではないでしょうか。
そして、さらに大きな責任を預けてみてください。今までは社員にしかさせていなかった作業をあえて、アルバイトスタッフに任せるのです。任せてみなければできるようにならないからです。
まずはマニュアル作成でも良いかもしれません。お金の管理をさせてみるのも良いかもしれません。アルバイトリーダーとして、アルバイト管理を任せるのも良いかもしれません。
採用の面接を担当させるのも良いかもしれません。某会社では、アルバイトを採用するための面接にアルバイトを面接官として参加させています。
この方法を知ったときには本当に驚いたのと同時に、非常に感心したのを覚えています。彼らの意見が新人アルバイトの合否を左右することになり、大きな責任を感じるのです。
この会社は、年間を通して様々なおもしろいプロモーションを仕掛けている会社ですが、現場の視点を大事にしたプロモーションが、この不景気に右肩上がりで業績を上げている理由なのかもしれません。
また当社では、POP研究会という研修を定期的に実施しています。
アルバイトを集めて、店頭販促に使うPOP(店頭で商品アピールに使用する小さなポスターのようなもの)を手書きで作成させます。
手書きで温もりのあるPOPが作成できることも大きいのですが、何より自分たちの作成したPOPが店舗に掲示されるので、アルバイトにとっても大きなモチベーションアップに繋がります。
会社に対するロイヤリティー(忠誠心)も高くなり、彼らは働くことに対して本気になるのです。
最初から優秀すぎるアルバイトは、80%の確率ですぐ辞める
OJT(オンザジョブトレーニング)を採用している会社は多いことでしょう。実際の現場でトレーニングをすることですが、この現場で注意が必要なことがあります。
我々のデータによると、この研修の場で優秀すぎる評価を出すアルバイトには注意が必要だということです。かなりの高確率ですぐ辞めていきます。80%というところでしょうか。
おそらく〝優秀すぎる〟というのが問題になっているのではないかと私は思っています。もちろん、ここで言う優秀というのは学力という意味ではありません。
作業、サービス、立ち居振る舞い、すべての点で優秀だという意味です。優秀なアルバイトスタッフ、特にこの場合は学生スタッフであるパターンがほとんどです。
彼らは優秀なだけあり、はじめての仕事もそつなくこなします。仕事の大切さや責任を感じなくても仕事をうまくこなしてしまいます。
そのため、アルバイトスタッフの業務に物足りなさを感じ、さらに指導する若い社員を彼らが下に見てしまう傾向があるようです。
そのため、会社に対する忠誠心が生まれないのではないでしょうか。成長する余白を残したまだまだ未完成な人を採用した方がいいのではないかということです。優秀すぎるアルバイトスタッフには少し気をつけましょう。
また、OJTでは、アルバイトスタッフのユニフォームの片づけ方をチェックしてください。教わることもなくユニフォームをキレイにたたんで片づけるアルバイトスタッフは有望です。
人から借りたものを大切に扱う気質がはじめから身についていると言えます。教われば誰にでもできることですが、はじめからできる人は無意識にどんな場面でも物を大切に扱える傾向があるのです。
ここも親のしつけに影響されていることだと思います。
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