人生において、じつは「きっかけ」というものが、目には見えない重要な推進力となっている。私たちは毎日何百というきっかけを受け取っているが、そのほとんどを意識していない。信号が青になれば、アクセルを踏む。スーパーでチーズの試食を差し出されたら、口に入れる。パソコン画面に新着メールの通知が来たら、クリックしてメールを開く。自然界に存在するきっかけもある——腕に雨粒が落ちてきたら傘を開く。自分で設定するきっかけもある——煙警報器が鳴ったら、オーブンの扉を開け、忘れていたピザをあわてて取り出す。きっかけは自然のものでも、人為的なものでも、「すぐにこれをして!」と要求してくる。そしてきわめて重要なことだが、あらゆる行動は、きっかけがなければ起こらない。ただし、私たちが確実にきっかけに反応するのは、モチベーションと能力がそろっているときだけだ。そのような状態にあれば、タイミングのいいきっかけには即効性がある。オンライン広告の宣伝文句を考えるコピーライターや、スマホアプリを手掛けるデザイナーたちは、この性質を巧みに利用している。アプリの画面に小さな数字が赤く表示されたら、誰だってクリックせずにはいられない。ソーシャルメディアの仕掛け人たちは、モチベーションを高める何らかの方策(クリックして報酬をもらおう!)ときっかけを組み合わせれば、望ましい反応が得られる可能性が高まると知っている。一方で、きっかけがなければ、高いモチベーションと能力があっても行動は起こらない。たとえば、瞑想アプリを使ってみようとダウンロードしても、その週に何のきっかけもなかったら、忘れてしまうだけかもしれない。人生にはあまりに多くの迷惑なきっかけがあるが、必要なきっかけもたくさんある。ところが多くの人は、一方では無意識にきっかけにうながされて行動しつつ、他方では忘れてしまうのがわかりきっている行動を何とか覚えていようと苦労している。もしあなたが、デスクに付箋をたくさん貼って、スマホからもしょっちゅう通知が来るのに、やるべきことができていないなら、いまこそきっかけを取り戻そう。この章では、あなたの人生に必要なきっかけを取り入れ、望ましくないきっかけを排除する方法を説明する。自分にふさわしい行動をマッチさせ、それを実行しやすくするプロセスは完了したので、次の段階として、あなたが望む行動に適したきっかけをデザインしよう。きっかけは行動デザインにおいてとても重要なので、成り行きまかせにしてはいけない。「効果的なきっかけ」を見つける——行動デザインのステップ5行動デザインのステップステップ1:「願望」を明確にするステップ2:「行動の選択肢」を挙げるステップ3:「自分に合った行動」を選ぶステップ4:小さく始めるステップ5:「効果的なきっかけ」を見つけるモチベーションと能力はレベルに幅がある。これに対して、行動モデルのもうひとつの要素であるきっかけは、白か黒か、つまり「気づく」か「気づかない」かのどちらかしかない。きっかけに気づかないとき、あるいはタイミングが悪いときは行動は起こらない。したがって、行動を起こすためには、適切なきっかけの存在が不可欠である。効果的なきっかけをデザインすることは、「相手がしたいと思っていることをできるよう助ける」という「フォッグの格言1」を守るためのカギになる。わかっているのに「後回し」にしてしまうこの重要な格言を学んだ人物の1人に、私の友人で同僚のエイミーがいる。7年ほど前、彼女は3人の子どもを育てつつ、教育メディアのフリーライターとして多忙な日々を過ごしていた。彼女は医師や病院向けに患者教育の教材を提供する仕事にやりがいを感じていた。しかし、事業を成長させるための行動は取れていなかった。もともとは楽天的な性格のエイミーだが、このころは将来の不安に駆られていた。夜はよく眠れず、振り払うことのできない嫌な予感につきまとわれていた。事業主なら誰もが経営状態に神経をとがらせるものだが、エイミーの不安を掻き立てていたのは、仕事がうまくいかないことや顧客を失うことより、はるかに厄介なことだった。彼女が本当に恐れていたのは、子どもたちを失うことだった。エイミーと夫の不仲は何年も続いていたが、その当時は耐えられないほどになっていた。ケンカがエスカレートして、子どもたちにとってよくない環境であることは明らかだった。彼女はなんとかしたかったが、夫は同じ考えではなさそうだった。離婚を持ち出すと彼がどんな態度に出るか不安だった。子どもたちを争いに巻き込む可能性もあり、安定した収入がない状態で、エイミーは親権を失いかねない恐怖におびえていた。思いつく唯一の対処法は、離婚手続きが始まる前に経済状況を改善し、弁護士を雇うことだった。ところがビジネスを拡大する方法がわからず、行き詰まっていた。破綻しかけた結婚生活への不安と、3人の子どもを育てる日々のストレスから、エイミーは仕事に集中するのが難しくなっていた。折り返しの電話をかける、仕事を段取り順に片づける、集中して執筆する……こうしたことが中断されるのは仕方なかったが、彼女は大切なことに取りかかることさえできていなかった。毎朝仕事に向かおうとしても、洗濯物を畳み、キッチンを片づけ、やることリストを書き直したり並べ直したりしているうちに一日が終わり、家族を養う収入につながる行動が後回しになっていた。リストを見てはいたが、たいていは「あまり大事ではない簡単なこと」をこなすだけで日々が過ぎていく。
考えすぎなのか要領が悪いのか、いずれにしても仕事は進まなかった。銀行の残高を増やし、将来子どもたちと安定した生活ができる状態には少しも近づいていなかった。すでにやっている「日課」に結びつけるそんなエイミーだったが、行動デザインとタイニー・ハビットを学んで、解決の糸口を見つけた。毎朝その日にすべきいちばん大事なことを1つ、付箋に書くようにしたのだ。ただそれだけだった。それが彼女の新しい習慣だ。エイミーはこれならできると自信を持ち、前向きになれた。付箋に書いたことは実行できなくても気にしない。ただ書くだけでいい。じつにシンプルだ。能力のダイヤルを調整して、行動を実行しやすくした結果である。だが、この習慣を身につけられたのは、モチベーションのおかげでも、能力のおかげでもない。効果的なきっかけをデザインしたことが功を奏したのだ。習慣を日課のどこに配置するかによって、実行できるかできないか、成功するかどうかは決まる。幸いにもエイミーは最初からうまくいった。新しい習慣の種をもっとも適した場所にまいたからだ。流れはこんな具合だ。エイミーは毎朝、車で娘のレイチェルを幼稚園に連れていく。レイチェルに手を振って別れると、車のドアを閉める。この瞬間がエイミーにとってのきっかけだ。彼女は近くの学校の駐車場まですぐに移動し、そこで習慣に取りかかる。付箋にその日の最重要課題を書いて、ダッシュボードに貼り、自分のために一度だけ手をパチンと打ち合わせ、「これでよし!」と言う。この習慣を1週間続けたところ、エイミーは無意識に難なくできるようになったという。彼女は日課の中で、新しい習慣が自然と落ち着く場所を見つけたのだ。仕事に関するその日最初の作業として、やるべきことを付箋に書く習慣を手にした彼女は、レイチェルを車で送っているあいだに考えすぎることも、気が散ることもなくなった。また、この「初めの一歩」は集中モードに入るうえでも効果的だった。車のドアを閉める。頭を仕事モードに切り替える。車を停め、その日にすべきいちばん重要なことを考えて書き留める。以上(そして歓声を上げる!)。これがすんなりと彼女の朝の一部になったのは、すでに日課になっていた動作に結びつけたからだ。レイチェルを幼稚園に連れていくのにメールやカレンダーの通知は必要ない。わざわざそれを思い出すために付箋にメモをする必要もなかった。エイミーは確実なきっかけをデザインしたのだ。このシンプルな習慣によって、エイミーは自分の日々に明晰さがもたらされたことを喜んだ。もちろん、これは小さな行動であり、彼女もそれを承知しているが、集中と成功を得た感覚はより大きな行動へとつながった。付箋に書くという最初の習慣を土台にして、ほかの習慣も身につけていった。レイチェルを送って家に戻ると仕事部屋に直行し、デスクの前の壁に付箋を貼るようになった。ときには重要な課題を実行できない日もあったが、たいていはできた。誇らしさと達成感が高まった勢いに乗ってやるべき事柄を次々と拾い出し、この「黄金の行動」を習慣としてしっかり根づかせることができた。そのおかげで、エイミーは自分でも想像できなかったほど生産的になった。いつの間にか不安は和らいだ。あるとき彼女は声に出して自分に言った。「すごい、本当にやってる。できてるじゃない!」そして彼女はそれを継続した。「思いつき」で決めてはいけない!1枚の付箋から始まったことが、あふれるような生産性につながった。エイミーは自分の中に大きな願望があることに気づいた。事業を自分だけのものではなく、数人のスタッフを擁するコンサルティング会社に飛躍させたいという願いだ。ひとたび適切なきっかけが見つかると、彼女を押しとどめていた何かが取り払われ、野心がみなぎった。彼女は計画していた執筆作業を終えると、新たな企画書を書き上げた。大手医療会社から100万ドル規模のプロジェクトについて企画書を提出してほしいと依頼されたときも、エイミーはひるまなかった。実行するには人を雇うことになるが、数か月間うまくやってこられたので、自信のなさは消えていた。半年後、エイミーは離婚した。収入は4倍に増えていた。子どもたちの親権を勝ち取り、夜はぐっすり眠れるようになっていた。1つのシンプルな新しい習慣がさらなる習慣を育み、それがはるか遠くまで広がった。エイミーの場合、成功の決め手は適切なきっかけだった。まったく新しい習慣をデザインするときも、継続できない習慣を修正するときも、それを実行するきっかけが必要であり、行動デザインのメソッドは、あなたにふさわしい答えを見つけるシステムを提供する。だが、きっかけを思いつきで決めてはいけない!あなたは気づいていないかもしれないが、自分でもすでに何度もきっかけをデザインした経験があるはずだ。「チェックリストを作成する」「誰かにあとで声をかけてもらうように頼む」「スマホのカレンダーの通知機能をセットする」など。いずれの場合も、行動を確実にするためのきっかけを設定している。だが往々にして、それらのきっかけはうまくデザインされていない。あなたが朝起きるのに目覚ましのスヌーズボタンを6回も押しているなら、この意味がわかるだろう(スマホのアラームの中には、スヌーズボタンのほうが停止ボタンより大きくて押しやすいものもある。奇妙にも、私たちはデザインによってスヌーズボタンを押すように仕組まれているようだ)。適切なきっかけをデザインしたいなら、すでに付箋だらけのパソコンにもう1枚加えても効果はない。手にメモを書く方法も、職場ではあまり有能そうな印象を与えないだろう。誰もが習慣を身につける達人になれる。ただし、効果的なきっかけと、そうでないきっかけを区別するには、少しばかり訓練が必要だ。きっかけをデザインするのは、学習して磨くことのできるスキルにほかならない。きっかけの「3つのパターン」——それぞれの種類と性質
きっかけにはどのような種類があり、どのような性質があるのか。これを理解すれば、きっかけを成り行きや他人まかせにするのをやめ、新しい習慣を豊かな土壌に植えられるようになる。ふたたびPACパーソンのモデルに登場してもらおう。私たちの生活には3種類のきっかけがある。「人」によるきっかけ、「状況」によるきっかけ、「行為」によるきっかけだ。「しっかり覚えておこう」は失敗する——「人」によるきっかけまずは人によるきっかけから説明しよう。人によるきっかけとは、自分の中の感覚に頼ったものだ。なかでももっとも自然発生的な例が肉体的衝動だ。人間の体には、食事や睡眠など、生存に必要な行動を思い出させる仕組みがある。膀胱に感じる圧力だってきっかけだ。お腹が鳴るのは?これもきっかけだ。こうした信頼性の高いきっかけは、進化の過程で獲得された。ところが生存とは関係のない行動については、人によるきっかけは賢明な解決策ではない。私たちの記憶はまるであてにならないからだ。もちろん、たまには奇跡的にお母さんの誕生日を思い出すこともあるが、人によるきっかけに頼っていたら忘れることのほうが多いだろう。
数年前、私は近所に越してきたばかりのボブとワンダと知り合った。ワンダは退職したインテルの元重役で、ボブは元エンジニア。彼らは、私とデニーを夕食に誘ってくれた。私たちは招待に感謝し、それではサラダを持って約束の日の夕方6時きっかりに伺いますと約束した。2週間後の午後6時42分、電話が鳴った。私は締め切り間近の仕事で手いっぱいなうえ、番号に心当たりがなかった。そこで留守番電話でメッセージを確認した。ワンダの声が聞こえた瞬間、後悔の波に襲われた。「こんばんは、BJ。パスタが冷めて台無しよ。全部手づくりしたから取っておけなくて。6時の約束だったと思ったけど。これから来るの?来ないならまたにするわ。じゃあね」そう。私は大失態をしでかしたのだ。私はワンダに電話してひたすら謝るしかなく、どうしようもなく恥ずかしい思いだった。引っ越してきたばかりの隣人に対して、ひどい歓迎ぶりだ。これは私にとって最高の出来事ではないが、人に頼ったきっかけは行動デザインとして避けるべきだということを示す最高の例ではある。このことは、ディナーパーティへの出席といった一度限りの行動だけでなく、習慣化しようとする行動にもあてはまる。毎日の新しい習慣を自分の力に頼って実行しようとしても、うまくいかない。他人に習慣を身につけさせたい場合も同様だ。たとえばあなたは、毎晩1時間も電話している娘に宿題をさせたいと思っているとしよう。そんなとき、「毎晩、宿題をするのを忘れないように」と諭すのはいい作戦ではない。人によるきっかけは信頼できないのだから。次は状況によるきっかけに移ろう!週一の行動に効果的——「状況」によるきっかけ状況によるきっかけとは、あなたの周囲の環境の中に存在して、行動をうながすもののことだ。付箋やアプリの通知、電話の着信音、同僚からの会議の確認などがこれに含まれる。状況によるきっかけは、学習によってうまくデザインできるようになる。もし私が夕食の約束が通知されるようにスマホのカレンダーを設定していたら、デニーと私はサラダを持って6時に訪問できただろう。この設定には20秒もかからない。しかし、もし私がやることリストに「ワンダとボブのところへ夕食に行く」と入力していたとすると、やはり失態は避けられなかった。私は仕事に集中しているときは、やることリストを見ないからだ。状況によるきっかけの効果的なデザインはスキルである。このスキルを習得するには訓練が必要だ。
10年ほど前、私は「週に一度だけすべき行動」というものがあることに気づいた。観葉植物への水やり、各種料金の支払い、パソコンの再起動、など。最初はスマホのアラームをセットする方法を試してみた。土曜日午前10時、水やりを知らせるアラームが鳴る。ふつうはこれでいいが、スーパーで買い物をしているときなどは実行できる能力はゼロになる。行動曲線を下回る状態だ(次の図参照)。また、課題をすでにすませていてもアラームは鳴るので、わずかながら時間が無駄になるというデメリットもある。
私はこの問題の解決策を模索し、こんな答えを見つけた。まず、繰り返し使えるフィルムタイプの付箋に、週末の課題を1つずつ書く。それをすべて、「週末の課題」と書いたシートに貼る。このシートをキッチンカウンターに置くことを土曜の朝の決まりごとにした。週末用のチェックリストのできあがりだ。週末には課題をすませるごとに1枚ずつ付箋をシートの裏側に移していき、残っている課題だけが目に入るようにする。日曜日に最後の課題を終えたら、シートを裏返し、最後の付箋を(意気揚々と!)そこに貼る。そして来週までそのまましまっておく。私にとって、この週末のチェックリストは大きな変化をもたらした。私はようやく、冷蔵庫の掃除や植物への水やりといったことを確実にできるようになった。活躍している人たちの「きっかけ」あなたもきっと、「状況」によるきっかけをデザインする必要に迫られるときがあるだろう。このタイプのきっかけは、一度限りの行動(病院に予約を入れる)にはうってつけだ。ただし、習慣を手に入れるには最適とは言えない。私はビジネスの世界で活躍する人々に指導するとき、各自が実践しているもっとも効果的な、状況によるきっかけを教えてもらうことにしている。ありふれたものや当たり前な例もあるが、驚くような回答もある。いくつか紹介しよう。・「指輪」をいつもとちがう指にはめる。・自分に「メール」を送る。・「家具の位置」を変えて違和感を生み出す。・「音声アシスタント」でアラームをセットする。・「冷蔵庫」の中にメモを貼る。・「子ども」に念を押してくれるように頼む。・「スマホの画面」に付箋を貼る。状況によるきっかけは一度限りの行動の役には立つが、日常的な習慣に使うと、失敗やストレスの原因にもなりかねない。日々の生活の中に上手にきっかけを配置するのは、多くの人にとって最大の課題のひとつだ。しかも、状況によるきっかけを過剰に設定すると、かえって逆効果になってしまう。感覚が鈍り、きっかけに注意を払わなくなるのだ。やがて通知音が鳴っても気づかず、付箋のメモも見なくなる。線路の近くで暮らすと騒音への敏感さを失うようなものだ。最初は列車が通過する音が轟音に聞こえるが、しばらくすると……まるで気にならなくなる。私の仕事部屋には大きなホワイトボードがあり、プロジェクトごとに別の色を使って、すべきことを何十項目も書き出している。そう、かなり多い。そこで私は視覚的にも、心理的にも圧倒されるこの光景に対処するため、「その日にすべきこと」だけが視界に入るようにした。ボードの両端にカーテンを取りつけ、それ以外は覆うことにしたのだ。私は関係のないきっかけを覆うと気持ちが落ち着くことを学んだ。そのほうが集中力も高まる。将来の「膨大な時間ロス」をいまカットする状況によるきっかけをつくって効果がなかったとしても、あなたには何の落ち度もない。おそらく、モチベーションや意志の力が足りないわけではない。だから、自分を責めるのではなく、きっかけのデザインを見直そう。自分にとって効果的なきっかけを見つけるのだ。現代社会では他人など外部から、状況によるきっかけが次々とやってくる。メールによるさまざまな依頼、スマートウォッチは長く座りすぎていると立ち上がるようにアドバイスしてくる、SNSは新しいメッセージを受信するとアイコンに赤いマークがつく、リンクトインは「今週は233人があなたのプロフィールを閲覧しています。相手が誰か確認しませんか」と持ちかけてくる。あなたはそんなきっかけなんていらないはずだ。でも好奇心も湧いてくる。スパムメールの問題はさらにわかりやすい。それはあなたから日々膨大な時間を奪っている。私たちはクリックして読み、視聴し、評価やシェアや返信をする。テック企業のビジネスはあなたのそうした行動に立脚しているので、インターネットを遮断でもしない限りそんなきっかけを排除することはできない。人間は、有能なデザイナーやコンピュータの強力なアルゴリズムを相手にして、ほとんどなす術がない。しかし、状況によるきっかけを手なずける方法もある。将来の時間とエネルギーを無駄にしないように、少しだけ労力を費やすことをお勧めする。このデザインは、すぐ簡単に終わることも多い。私は最近、ある業界で活躍する人物から、ショートメールを受け取った。彼のチームメンバーに向けてプレゼンテーションをしてほしいという。面白そうなので引き受けたいと思った。だが、彼の依頼は手段がよくなかった。そこで私はこう返信した。「こんにちは!検討したいのですが、依頼はメールで送信してもらえますか(ショートメールは家族とプライベート専用にしています)。よろしくお願いします!」翌朝メールをチェックすると、「すみません。これからはメールを使います」と返事が届いていた。私はたった30秒ほどで、今後何度もスマホに届き、集中を妨げてくるきっかけから身を守ったのだ。とはいえ、テック企業から届くきっかけや、あなたのまわりの善意の人々や同僚による中断を完全にコントロールすることはできない。状況によるきっかけがなくなることはないのだ。そこで、自分や他人のためにきっかけをデザインする場合は、状況によるきっかけよりもよい選択肢を考慮すべきだ。3番目の、そして私のお気に入りでもあるきっかけは、「行為によるきっかけ」である。もっとも忘れにくいきっかけ——「行為」によるきっかけ行為によるきっかけとは、すでに生活に組み込まれた行動の中で、新たに身につけようとする行動を喚起してくれるものである。行為によるきっかけは、タイニー・ハビットの効果を最大限に引き出す決め手となる。たとえば、歯を磨くという既存の習慣は、フロスという新たな習慣のきっかけとしてぴったりだ。コーヒーメーカーのスイッチを押すことは、キッチンカウンターを使ったストレッチの習慣を身につけるきっかけになるかもしれない。あなたにはすでに多くの日課があり、そのすべてが新たな習慣をうながすきっかけになり得る。
朝起きて床に足を下ろす、紅茶のお湯を沸かす、コーヒーメーカーのスイッチを入れる、トイレの水を流す、子どもを学校に送り届ける、帰宅時に戸口でコートを掛ける、毎晩枕に頭を乗せる、など。こうした行為は、すでに生活に溶け込んでおり、改めて意識する必要がない。そしてその特性のおかげで、これらの行為は素晴らしいきっかけになる。それらをいかにうまく活用できるか、考えてみよう。行為によるきっかけは、人によるきっかけや状況によるきっかけと比べて、はるかに効果的だ。生活の中ですでに安定して固定されているから、私はこれを錨になぞらえて説明することが多い。考え方はきわめてシンプルだ。身につけたい習慣があれば、現在行っている日課の中で、その習慣を喚起するきっかけとなる最適なアンカーを探すのだ。私がアンカーという言葉を選んだのは、新しい習慣を固定されたものに結びつけて安定させるからだ。新たな習慣の実行を思い出すのにアンカーを使うアイデアは、もう何年も前にシャワーを浴びたあと、突然ひらめいた(シャワーの最中に画期的なことを思いつくという話はよく聞くが、「シャワーのあと」にひらめいたのは私くらいだろう)。ある晩私はシャワーを浴びると、何も考えず、シャワールームから出て体をふき、タオルを巻いて寝室へ移動した。下着の引き出しを開けて、はっと気づいた。キーワードは「あと」なのだと。シャワーのあとは、かならず体をふく。体をふいたあとは、かならずベッドルームに行く。ベッドルームに行ったあとは、かならず下着の引き出しを開ける。そうか!新しい習慣を身につけるには、どの行動の「あと」にするかを考えるべきだ。たとえば、歯を磨いたあとにフロスをしたいなら、歯磨きは新しいフロスの習慣にとって素晴らしいきっかけになる。下着の引き出しを開けたまま、私は答えが見つかったことを確信した。「何のあとに何がくるのか」を考えるだけでいいのだ。ついにわかった!私はいまではこれを、プログラミングのプロセスのように捉えている。この行動の次にはこの行動がきて、その次はこの行動、そしてその次と、アルゴリズムを正確に組み立てていけば、確実な成果が得られるのだ。
何の「あと」にするかを考えるだけ新しい習慣を既存の習慣と組み合わせることができれば、あまり努力せずに日常に取り入れられるだろう。そして容易に拡張できる。既存の習慣にしっかり固定されている限り、何度失敗してもかまわない。思い出すことを自分や他人に依存していないので、人によるきっかけや状況によるきっかけのときのような失敗も避けられる。自然な行動がきっかけになるので、きっかけを気にしすぎて圧倒される心配もない。このうえなくシンプルだ。私はすぐに試してみた。選んだのは、人間の行動の中でもとくに基本的で確実なもの、「トイレに行く」というきっかけだ。私は「トイレを終えるたびに腕立て伏せを2回する」ことにした。
奇妙に聞こえるかもしれないが、当時はほとんど家で仕事をしていたので、難なくできた。この習慣が揺るぎないものになるのに時間はかからなかった。トイレのあとの腕立て伏せは間もなく、毎日何度か行うことになった。7年が過ぎたいま、私は相変わらずこの習慣を実践している。日によっては50回以上も腕立て伏せをすることもある(水をどれだけ飲んだかによる!)。アンカーを使うのは、きっかけをデザインするうえで誰にでもできる優れたアプローチだ。新たな習慣をうながすのに特別な時計も、高度なアプリも必要ない。そんなものがなくても効果があるし、シンプルなデザインによる解決策がどれほど強力か実感できるだろう。キーワードは「あと」だ。その力は魔法というより化学に近い。適切な行動を最適な順序で配置する。たったそれだけで新しい習慣のできあがりだ。「レシピ」をつくる——○○をしたら、××をするここまで読んできた中で、あなたは自分の生活に組み込みたいと願う習慣を少なくとも1つは選択したはずだ。自分に適した行動を見つけ、簡単に実行できるように縮小し、そこにきっかけを加える段階までやってきた。この章を読み終えれば、タイニー・ハビットのレシピを完成させるのに必要なものをすべて手に入れることになる。そして、そのレシピはこんなかたちになる。○○をしたら、××をする・トイレを終えたら、腕立て伏せを2回する。・車を停めたら、その日のいちばん大事な課題を書く。・歯を磨いたら、歯を1本だけフロスする。新しい習慣を行う正しい時と場所を決めるにはちょっとした工夫が必要だが、最終的にはシンプルなレシピができる。サンプルをたくさん知りたければ、巻末の付録に「タイニー・ハビットの『300のレシピ』」を掲載しているので確認してほしい。アンカーを「特定」する——あなたの一日には「使える日課」が大量にあるアンカーとなるものは、あなたの生活の中で「確実に起きること」でなくてはならない。世の中には、確実な日課がいくつもある規則正しい生活をしている人もいれば、あまり予測の立たない生活をしている人もいる。だが、たとえどんなに不規則に見える日々でも、あなたには欠かさず行っている日課が数多くあり、それらはアンカーとして利用できる。私はタイニー・ハビットを構築する数年前に行った研究で、通常は朝の時間帯にもっとも多くの日課があることを知った。つまり、新たな習慣を育むうえで、朝は肥沃な土壌なのだ。多くの人は、一日の中で遅い時間帯になると日課をこなすのが難しくなると報告している。そしてある日課が滞ると、その後の日課も実行できなくなる。会議が遅れたせいで保育園へのお迎えが遅くなる。そうなると大変だった一日の疲れから、夕食をつくるのはやめてピザですませることになる。そういうわけで、朝がいちばん行動を予測しやすい時間帯ではあるが、午後や夜にも効果的なアンカーはたくさんある。時間帯ごとに、アンカーとなる典型的な行動をいくつか紹介しよう。朝の日課・朝起きて床に足をつけたら、××をする。・ベッドの上で体を起こしたら、××をする。・アラームを止めたら、××をする。・シャワーの栓をひねったら、××をする。・歯を磨いたら、××をする。・髪をとかしたら、××をする。・ベッドを整えたら、××をする。・靴のひもを結んだら、××をする。・コーヒーメーカーのスイッチを押したら、××をする。・コーヒーをカップに注いだら、××をする。・食器を食洗機に入れたら、××をする。・犬にエサをあげたら、××をする。・車のキーを差し込んだら、××をする。日中(またはあらゆる時間帯)の日課・電話が鳴ったら、××をする。・電話を切ったら、××をする。・コーヒーを飲んだら、××をする。・受信トレイを空にしたら、××をする。・トイレを終えたら、××をする。夜の日課・仕事から帰って家に入ったら、××をする。・カギをいつもの場所にしまったら、××をする。・バッグを置いたら、××をする。
・犬のリードをもとに戻したら、××をする。・食卓についたら、××をする。・夕食の食器を食洗機に入れたら、××をする。・食洗機のスイッチを入れたら、××をする。・テレビを消したら、××をする。・枕に頭を乗せたら、××をする。これらの例はどれもきわめて具体的だ。漠然としたアンカー(「食事のあと」とか「ストレスを感じるたびに」など)は機能しない。できるだけ具体的になるように工夫しよう。アンカーについて考える効果的な方法は、「アンカーの瞬間」という表現を意識することだ。要点を理解したところで、この章の最後に掲載した小さなエクササイズを使って、自分だけのアンカーのリストを作成しよう。リストができたら、あなたが身につけたいと思っている新しい習慣をよく検討し、その習慣にもっとも適したアンカーを組み合わせる。「何のあと」にするかを決める——「どこがいちばん自然に収まる?」と自問するこれまで数千人に対して新しい習慣にふさわしいアンカーの見つけ方を教えてきた経験から、考慮すべきことが3点あるとわかった。❶「場所」をマッチさせるまず、新しい習慣を物理的にどこで行うのか考える。そして、そこですでに行っている日課を探す。身につけたい習慣がキッチンテーブルをふくことなら、キッチンでいつも行っていることがアンカーとして適切だ。アンカーと新しい習慣は実行する場所が異ならないようにしよう。私の研究によると、場所が異なるとめったにうまくいかない。アンカーと新しい習慣を組み合わせるとき、場所がもっとも重要な要因になる。❷「頻度」をマッチさせる次に、既存の日課を選ぶにあたって、新しい習慣をどのくらいの頻度で行いたいのか確認する。1日1回なら、1日1回行うアンカーのあとに行うようにする。1日4回行いたいなら、やはり1日4回行っているアンカーのあとに行う。私は腕立て伏せを1日を通してしたかったので、用を足したあとに位置づけたのは(変わってはいるが)名案だった。❸「テーマ」をマッチさせる先の2つよりは重要性が低いが、理想的なアンカーには、新しい習慣と同じテーマや目的があるものだ。たとえばあなたが、コーヒーを飲むのを「生産性を高める手段」と捉えているなら、それを「タスク管理のアプリを開く」という新たな習慣のアンカーにするのにぴったりだ。だが、あなたにとって朝のコーヒーが「一人でリラックスする」手段であれば、タスク管理アプリはそぐわない。むしろ、「コーヒーを入れたら、日記帳を開く」といったレシピにするのがよさそうだ。「レシピ」を書いてみるたとえば、「歯を磨いたら、ガレージを掃除する」というレシピでは、習慣化はできないだろう。場所も頻度もテーマも一致しない。「毎週土曜日にガレージの掃除をしたい」のであれば、土曜日に家で(できればガレージで)いつもしていることを探し、アンカーとして利用しよう。新しい習慣をデザインするときは、完璧なレシピをつくろうと悩みすぎてはいけない。気に入らなければ変えればいい。これは私が「レシピ」という表現を使う理由でもある。自分のつくったレシピがアンカーと習慣でも、じゃがいものグレイビーソースがけでも、修正するのは自由だ。上のレシピカードは、私がタイニー・ハビットのレシピをデザインしやすいようにつくったフォーマットだ。この形式で、自分のレシピを書いてみよう。
このレシピカードは、あなたがこれから長い時間をかけてつくっていく、さまざまな習慣のレシピの1つだ。カードは箱などに保管してもいい。そして必要に応じ、カードに直接新しい案を書き込んで修正していってもいい。アンカーの「実験」をする——試行錯誤で「効くもの」を発見するこれでタイニー・ハビットを実践する準備はすべて整った。人生は複雑でそれぞれの事情があるので、もちろん自分に合わせた調整は必要だ。習慣をどこに組み込むべきか、迷う余地がないケースもある。たとえばフロスをするなら、歯磨きのあと以上に合理的なタイミングはない。だが、習慣によっては調整に時間がかかる場合もある。試行錯誤の期間となる最初の数日もしくは数週間は、新しい習慣をするタイミングが何度も移動するかもしれないが、それでよい。むしろ素晴らしいことだ。そうした試行錯誤によって、あなたはアンカーと小さい行動を組み合わせるスキルを向上させていくことができる。アンカーと習慣の相性が合わないと感じたら、もっと合いそうな習慣に置き換えてみるといい。たとえば私にとって「枕に頭を乗せたあと」は、「3回、深呼吸しながら瞑想する」のにぴったりなタイミングだと思われた。それなりにうまくいったが、劇的な効果は得られなかった。その習慣が自然と成長することはなく、無意味に感じることさえあった。私は自分を責めず、「ほかにどんな習慣を組み合わせられるだろう」と好奇心を覚えた。以前から、もっと感謝の気持ちを持ちたいと思っていたので、枕に頭を乗せたら、「その日に起きた感謝すべきことを1つ思い浮かべる」ことにした。最初に試したとき、頭の中にちょっとした幸福感が生まれ、しっくりくるマッチングが見つかったと実感した。習慣の形成は試行錯誤することで、スキルを磨いていくことができる。練習を重ねるにしたがって習慣を身につけるのがうまくなり、願望を実現しやすくなっていく。ほとんどの場合、必要なスキルは「最適なアンカーを見つけ、それを適切な小さい行動と組み合わせること」だ。そのスキルを手にすれば、日常生活において変化をデザインするのが簡単になる。数年前、私は素晴らしいレストランで食事をしていたが、おいしいメインディッシュを食べきれなかった。これは初めての経験ではなかった。理由はわかっていた。私はそれまでにパンを食べすぎていたのだ。焼き立てのパンを勧められるままに食べてしまうと、メインを最後まで食べられなくなる。そこで、タイニー・ハビットの手法で解決できないかと考え、自分にぴったりな解決策を見つけた。私が考えたレシピはこうだ。「ウェイターにパンを勧められたら、『ありがとう。でも結構です』と言う」この一言によって、私は求めていた結果をすぐに手に入れた。私はもうパンだけでお腹をふくらましたりせず、メインをしっかりと楽しんでいる。
もちろん、この新しい習慣を私の人生に組み込むには(そして同席者の反応をうまくかわすには)少しばかり練習が必要だったが、いまでは自然とこの言葉が出てくる。しかるべき場面でちょっとした言葉を口にするだけで、私は自分の計画をしっかり守ることができている。アンカーの「最後尾」を見つける——その行動の最後の最後は?アンカーの瞬間は、日課の中でとりわけ具体的な場面を選ぶことが秘訣である。私は「トイレを終えたら」というアンカーを設定して腕立て伏せを2回できるようになった。私の場合、それ以上に具体化する必要はなかった。だが、もしそれでうまくいっていなかったら、アンカーとなる行動をさらに詳しく観察し、私が「最後尾」と呼ぶ瞬間を探していただろう。つまり、ある行動の「最後の最後にくる動作」に着目するのだ。私にとって、用を足すときの最後の動作はトイレの水を流すことだ。そこで私のレシピは「トイレの水を流したら、腕立て伏せを2回する」と改良できる。アンカーをじっくり観察し、最後の動作を確認してみよう。この確認は曖昧さのあるアンカーについてはとくに重要だ。アンカーの瞬間をピンポイントで捉え、その最後尾をレシピに設定する。こうすることで習慣は身につきやすくなる。例をいくつか紹介しよう。「朝食を食べたら」というアンカーには曖昧さがあるので、最後尾に着目して「食洗機のボタンを押したら」と改良する。「仕事を終えて帰宅したら」なら、「リュックを長椅子に置いたら」と言い換えたほうが具体的だ。私が教えたエレナという女性は、キッチンカウンターをふく習慣を身につけようとしていた。彼女のレシピは「朝食の食器をシンクに移したら、カウンターを1か所ふく」となっていて、一見するとそのアンカーは具体的だった。問題なさそうではないか?ところがこれはうまくいかず、習慣は身につかなかった。そこでエレナは「最後尾」を探すことで問題を解決した。「朝食の食器をシンクに移す」という一連の行動の最後尾は、シリアルボウルを軽くすすいで水を止めることだった。つまり彼女にとっては、水を止めることがアンカーの終点だった。調整された習慣のレシピは、「水を止めたら、カウンターを1か所ふく」となった。結果はどうなっただろう?成功だ。エレナが新しい習慣を生活に組み込むには、最後尾を発見するだけでよかった。蛇口を締める感覚と水が急に止まる音は感覚に訴えかけるので、きっかけがより明確で気づきやすいものになった。キッチンカウンターをふくのは些細な作業のようだが、彼女にとっては夫婦間の緊張が高まる朝の一大事だった(夫はカウンターが汚れているのが何よりも我慢ならなかった)。それがたった1つのシンプルな習慣を日課に組み込んだことで、二人で過ごす朝の雰囲気が変わったのだ。具体的な最後尾によって、曖昧なアンカーを修正した例を、さらにいくつか上に挙げておく。
逆にアンカーから始めるさて、ここで少しひねりを加えてみよう。効果的なタイニー・ハビットのレシピづくりは、アンカーから始めることもできる。基本的には、これまでに説明してきた手順を反対にすればいい。身につけたい習慣を出発点にしてそれが収まるべき場所を探すのではなく、すでにある日課を出発点として、それと相性がよさそうな新たな習慣を探すのだ。毎朝かならず食洗機の食器を片づけているなら、その直後にどんな習慣を加えられるだろう?ふきんを畳む?カウンターを片づける?車に乗ってシートベルトを締めたあとはどうか?リラックスのため深呼吸の習慣を加えてみてはどうだろう?あるいは、毎朝かならず職場のデスクにコーヒーカップを置くとしたら、そのあとにぴったりの習慣は何か?たとえば、やることリストに目を通すといったことがいいかもしれない。確実な日課から始めれば、そのあとにふさわしい小さい行動がきっとあるはずだ。意欲旺盛なタイプの人は、すでにいくつもの習慣を身につけながら、この手法を使って、一日の中でさらに習慣を増やす機会はないかと模索している。一方で、やはり望ましい習慣を起点にしたいという人もいるだろう。タイニー・ハビットのレシピをつくるとき、自由に使える戦略は1つだけではないのだ。「合間の習慣」の驚くべき力——スキマ時間を集めれば山となる既存の日課をよく観察すると、新しい習慣を行うのにぴったりな、ちょっとしたスキマ時間があることに気づくだろう。たとえばシャワーを浴びるとき、最初のうちは冷たい水が出る。温かいお湯が出るまでいつも20秒ほど待たなければならない。そしてこの待ち時間こそチャンスになる。「シャワーをひねったあと(お湯を待っているあいだに)、××をする」私はこのタイプの習慣を「合間の習慣」と呼んでいる。私はシャワーが温かくなるのを待っているあいだ、体について感謝すべきことを1つ考えるようにしている。肩こりがないことや、擦り傷に対する体の治癒力など、毎日新たに感謝すべきことを見つけている。こうしたスキマ時間は誰にでもある。赤信号で立ち止まったあとや、スーパーのレジに並んだあと、ベランダの植物に水やりを始めたあと。私たちには選択肢がある。このような時間を不機嫌に、あるいはぼんやりと過ごすこともできれば、待ち時間を新しい習慣のアンカーとして利用することもできる。このタイプの習慣は小さく始め、その後も小さいままだろう。シャワーの水が温かくなるまでの待ち時間は20秒しかない。だが、「合間の時間」の力を過小評価してはいけない。小さい行動を確実に実践することが大きなちがいを生むのだ。毎日体に感謝する習慣が身につけば、自分の肉体という素晴らしい創造物をもっと大切にしようというモチベーションが高まるだろう。合間の習慣のほとんどは小さいままだが、成長させたいと願う習慣にふさわしい大きなスキマ時間が見つかることもある。5人の子どもを育てながら働いているブリタニーは、いつもベッドサイドに10冊以上の本を積み上げていた。読みたい本がどんどん増えていくのを眺めるのはストレスだった。タイニー・ハビットのコーチの資格を持つ彼女は、毎晩欠かさず読書する習慣をデザインしたが、その時間では彼女が学びたい本をすべて読むには足りなかった。そこで彼女は、生活の中でオーディオブックを自然と取り入れられるタイミングを探した。しばらく試行錯誤してから、こんなレシピによって合間の習慣を身につけた。「シートベルトを締めたら、オーディオブックの『再生』ボタンを押す」シートベルトを締めてから会社に着くまでの時間が、それまではまるまるスキマ時間として空いていたのだ。以来、ずっと通勤時間に本の朗読を聞いている。ブリタニーは「合間の習慣」のおかげで、少なくとも月に5冊の本を吸収し、ベッドサイドの本の山がストレスの源になることはなくなった。「他人の行動を変える」最高の方法——顧客の行動変化を生む新常識ビジネスの世界でもきっかけは重要だ。あなたの仕事がスマホアプリの開発でも、寄付金集めでも、マグネシウムのサプリメントのマーケティングでも、顧客の行動変化に依存しない商品やサービスは皆無といっていい。きっかけがなければ行動は起きない。ヒット商品を生むには、顧客に対して絶妙なタイミングできっかけを与える必要がある。アプリやメール、ソーシャルメディアが普及した近年、消費者はさまざまな産業から「状況によるきっかけ」(通知、DMなど)を大量に受け取っている。従来からある、郵便物や電話によるきっかけもまだ廃れてはいない。ここまでは、あなたも実感しているはずだ。だが、私がこれから述べることは、大半の人にとっては初耳だろう。私の考えでは、状況によるきっかけはしだいに効果を失っていく。なぜか?将来、状況によるきっかけは適切なタイミングで顧客に届かなくなるか、届く前にフィルターで取り除かれてしまうからだ。また、状況によるきっかけが届いたとしても、テレビの視聴者が、録画した番組のコマーシャルをスキップするように、無視できるようになるだろう(最近の学生には番組の録画と言ってもピンとこないかもしれないが)。状況によるきっかけが効果を失いつつある以上、ビジネスを成功させるには、顧客にきっかけを与えるよりよい方法を確立しなければならなくなる。そこで頼りになるのが、「行為(既存の日課)によるきっかけ」だ。現在、ビジネスの世界では、行為によるきっかけはほとんど使われていないが、将来はもっとも優れた手法になると私は信じている。商品やサービスがヒットするには、顧客が行為によるきっかけを得られるように設計すべきだ。具体的に説明しよう。
「取り入れやすいタイミング」を教えるたとえば、あなたが勤務する病院では、毎日1回、血圧を測るよう患者に求めているとする。従来から「人によるきっかけ」(自分で覚えておく)に頼ってきたが、あまり成果はあがらなかった。そこであなたは状況によるきっかけを多用する。メールを送信したり、アプリで通知するようにしたり、看護師から患者に電話をかけたり。だが、これらのきっかけは時間が経つにつれて効果が薄れていく。患者にとっては、受け取るきっかけの数が多すぎるからだ。そこで状況によるきっかけで強化するのはやめ、行為によるきっかけに移行することになる。行為によるきっかけを効果的に設定するには、まず調査が必要だ。血圧をきちんと測って報告している模範的な患者を200人くらい探し、質問する。「ふだん血圧を測るのは、一日の行動の中でどのタイミングですか?」それから回答を集計し、傾向を分析する。こんな結果だったとしよう。26パーセントは「コーヒーを用意して、新聞を読むためソファに座ったあと」に測ると答えた。21パーセントは「ペットにエサをあげたあと」。17パーセントは「いつも見ている朝のテレビ番組が始まったあと」。残りの36パーセントの回答内容はさまざまで、これといった共通項はない。これで患者にとって効果的なタイミングがわかってくる。血圧測定という習慣について、どんな日課が役立つのかに関するデータが手に入ったのだ。患者たちに、しっかり血圧を測定できている患者の多くが、この習慣を3つのタイミングのいずれかで実践していることを説明して、こう問いかける。「あなたにとって、これらのタイミングのうち、どれがいちばん効果的だと思いますか?」こうした働きかけによって、患者が新しい習慣を自然と生活に取り入れられる場面を発見できるようにサポートできるだろう。患者たちが新しい習慣を取り入れるのに最適なアンカーを見つければ、こちらは、この習慣づけについて患者本人が覚えておくことをあてにせずにすむ。たくさんの通知を送りつけて患者をわずらわせることもない。行動デザインとアンカーの力を利用すれば、患者の行動変化を支援できるのだ。このように説明しても、現時点では違和感があるかもしれないが、やがて欠くことのできない常識になると私は考えている。顧客が習慣を身につけるのをサポートする事業者は、それを実践しない同業者よりかなり優位に立つだろう。「真珠の習慣」でイヤな気分を消す——苛立ちから美を生む方法自分にとって苦痛な状況から脱出したいなら、きっかけをデザインしては必要に応じて修正していくスキルは非常に有益だ。私にとっては、十分な睡眠を取ることが長年の課題だった。睡眠の重要性はわかっていながら、睡眠不足が深刻な悩みの種になっていた。寝室内の音が気になって真夜中に目が覚めるのが原因のひとつだった。エアコンの送風機能のオンとオフが切り替わるたびに、カチッと音がするのだ。私は性能のいいエアコンに取り替えようと思っていたが、もっと手っ取り早くて簡単な解決策があった。ある晩、目が覚めて、またカチッと音がすると身構えていたとき、この音を「顔と首をリラックスさせる」ためのアンカーにしようとひらめいたのだ。そこで「カチッという音を聞いたら、顔と首をリラックスさせる」というレシピができた。これはすぐに習慣になった。いまではカチッという音を聞くとリラックスする。このノイズが聞こえるとむしろ幸せな気分に包まれるようになった。よく眠れるようにリラックスしなさいと忠告してくれているのだから。私はこれを「真珠の習慣」と呼んでいる。最初は苛立たしかったきっかけが、やがて美しいものに変化したのだ。
「イヤなこと」を生かす私の例はあっと驚くようなものではないが、最近になって、友人のエイミーもこれを独創的な状況で利用し、同じような効果を得たことを知った。エイミーが取り組んだ問題ははるかに難しいものだったが、彼女はその中で見事な真珠の習慣を身につけた。エイミーは夫と別れたあと、親権についてはようやく合意に至ったが、元夫は依然として彼女に腹を立てていて、顔を合わせるのが苦痛だった。それでも、まったく会わないわけにもいかない。数か月後、エイミーはあるパターンに気づいた。元夫と不快なやりとりをすると、そのあと彼女はそれを一日中頭の中で繰り返し、苛立ちや怒り、罪悪感に何度も苦しめられるのだ。彼女はこの状況に手を打つことにした。元夫が彼女に投げかける言葉や、会話の展開をコントロールすることはできない。彼の攻撃は悪天候と同じで、荒れ模様が予測できることもあるが、何の前触れもないこともある。だがその後、自分の気分が悪くなることは、はっきりしている。だから、それを変えることにした。目標は「元夫について考えないようにすること」。エイミーは夫の行動をきっかけとして利用し、こんな計画を立てた。元夫に言い負かされたり攻撃されたと感じたら、すぐに自分にとって心地よいことをする。お気に入りのバンドのニューアルバムを聴く、時間がなくて聴けずにいたオーディオブックを聴くといったことだ。ときにはスターバックスまで車を飛ばし、大好きなコーヒーを飲むこともあった。その日のうちに自分のために貴重な時間を少しだけ確保するようになって、エイミーはこの習慣が二重の恩恵をもたらすことに気づいた。彼女は自制心を取り戻すと同時に、自分に心地よいこともできるようになったのだ。「侮辱されたと感じたら、自分のために心地よいことをする」これが彼女にとって功を奏した習慣のレシピだ。
相手ではなく「自分」をコントロールするこのレシピを実践するようになって、彼女は元夫に侮辱的な言葉を返すことも、攻撃されたと感じることもなくなった。代わりに心の中でこうつぶやくのだ。「また侮辱だ。ずっと観たかったあの映画を観れるわ」彼女は夫に反論せず、別れの言葉を告げたら自分のことに集中し、その夜の計画を立てた。おかげで一日が台無しになることはなくなった。いつの間にか、元夫とのやりとりを頭の中で繰り返すことがなくなり、彼の侮辱が思いがけない贈り物のように思えてきた。何といっても、自分を労るきっかけを与えてくれるのが彼なのだから。おかしな理屈だとわかっているが、厳しい状況をできるだけおおらかに考えるのは、困難を切り抜けるのに役立った。できることなら、エイミーは自分にこんな思いをさせる相手とは関わりたくなかっただろう。しかし私たちは、ストレスをもたらす相手や状況のすべてを人生から排除できるわけではない。ときには不公平な扱いをする相手や神経を逆なでする相手、態度の悪い相手にも我慢しなくてはならない。だが、私たちは自分自身についてはコントロールできる。エイミーはそれをうまく実現した。他者の行動が自分を傷つけるようなものでも、それをあえて健康的な反応を引き出すきっかけとして用いるのは素晴らしいアイデアだ。自分が無力だと感じる多くの状況で効果を期待できる。さらに、エイミーは前向きな影響が、自分が思っていたよりはるか遠くまで波及したことにも気づいた。週に一度、父親と会うことになっていた子どもたちが、顔を合わせた両親の言い争いに巻き込まれずにすむようになり、ストレスが和らいだようだった。また彼女が得た心の平穏は、元夫にも変化をもたらした。まるで彼の怒りの詰まった風船から空気を抜いたような感じだった。嫌みを言われることもあったが、もうそれほど辛辣ではなかった。彼女は久しぶりに、いつか友だちになれる日が来ればと願った。あるいはせめて、共同養育者としてうまくつき合えるようになりたいと思った。人は「心地よさ」によって行動を変える最近、あるプロジェクトを手伝ってもらおうと彼女に電話したところ、末娘の卒業パーティを元夫と一緒に開いたばかりだと教えてくれた。素晴らしいことだけど、それは驚きだと言うと、彼女は少し笑って言った。「真面目な話、私たちがいちばんびっくりしてるのよ」いったいどうしてそうなったのかと聞くと、彼女は思いやりと関係があると答えた。彼の否定的な行動を前向きな行動を取るきっかけにしたことで、彼女は前より幸せになり、相手を思いやる心の余裕が生まれたのだ。屈辱と落胆にまみれた世界から抜け出すと、物事を明晰に考えられるようになった。そして、元夫が彼女とちがって人づきあいのスキルをあまり磨いてこなかったことに気づいた。結婚しているあいだは、彼が他人とうまくつき合えるように彼女があいだに立っていた。ところが離婚後はすべて自分でどうにかするしかなかった。それが彼にとって難しいことだとわかったので、エイミーは彼を思いやるようになったのだ。私たちは、相手がはっきり意思表示しなくても、自分がどう思われているのかわかるものだ。エイミーは元夫が彼女の態度の変化と、その背後にある思いやりの気持ちを感じ取り、彼自身も変わり始めたのではないかと考えている。また彼女によると、これはまったく予期せぬことだった。自分を労る習慣を身につけたときの彼女は、ただ自分自身を守り、ひどい状況を変えようとしていただけだったのだから。これはスキルを磨き、試行錯誤を重ねたあとに起きることだ。エイミーがきっかけを利用して問題を解決し、夫の行動を大きく変えたのは、まれに見る独創的なアプローチだった。だが、こうした前向きな習慣が他人や自分自身の人生にさらなる連鎖反応をもたらすというのは、エイミーに限ったことではない。習慣はときとして、これほどにも前向きに波及する。これはタイニー・ハビットの本質にも関係している。つまり、人は不快さではなく、心地よさを感じたときにもっとも望ましい方向に変われるのだ。エイミーは熟慮を重ね、きっかけを利用して変化をデザインし、成功を手に入れた。変化が起きたのは、彼女がもともとそれを望んでいたからだ。ではどうして、それほどうまくいったのか?それは心地よく感じたからだ。心地よいからこそ、彼女はその感情を追いかけ、自分にはデザインによって人生をよい方向に修正する力があるという自信が深まった。ただし、エイミーが大きな成功をつかんだ理由はもうひとつある。彼女は最後に、さらに心地よい感情を生む工夫をした。彼女はタイニー・ハビットで学んだテクニックを用い、その場ですぐに前向きな感情が生まれるようにした。自分をほめたのである。そしてこれが次のテーマだ。次の章では、習慣を素早く簡単に身につける力を得られるように、頭を切り替えるテクニックを指南する。
「きっかけを見つける」ための小さなエクササイズエクササイズ1「アンカー」を見つける毎日実践している日課のリストをつくると、貴重な材料になる。ここでリストに挙げる確実な日課は、新しい習慣のきっかけ、つまりアンカーとして利用できる。ステップ1:職場に到着するまでにしている、朝の時間の日課をすべて書き出す。ステップ2:毎日、昼までにしている日課をすべて書き出す。ステップ3:昼食時にしている日課をすべて書き出す。ステップ4:昼食のすぐあとにしている日課をすべて書き出す(一般に、昼過ぎには確実な日課はあまりないかもしれない。それはそれでかまわない)。ステップ5:職場で仕事を終えるときにしている日課をすべて書き出す(少ししかないかもしれないが、新しい習慣のためにはよいアンカーになる)。ステップ6:職場をあとにしてからの日課をすべて書き出す(帰宅後の日課も含む)。ステップ7:ベッドに入る直前の日課をすべて書き出す。ステップ8:リストを保存して、次のエクササイズで利用する。エクササイズ2リストから「レシピ」をつくる新しい習慣を身につける効果的な方法の1つは、まず既存の日課に着目し、そのあとに無理なく実行できる習慣を探すことだ。先ほどのエクササイズでは既存の日課の包括的なリストをつくった。そのリストを活用して次のエクササイズに進もう。ステップ1:リストから、あなたが絶対に忘れない確実な日課を1つ選ぶ。ステップ2:その日課のあとに無理なく実行できそうな新しい習慣を考える。いくつか候補を挙げる。ステップ3:ステップ2の新しい習慣から「いちばん好きなもの」を選ぶ。「○○をしたら、××をする」という書式でレシピを書く。ステップ4:リストから、既存の日課をさらに2つ選び、ステップ1〜3を繰り返してレシピをさらに2つ用意する(一度に3つの習慣に取り組むことで、より多くのことを学べる)。ステップ5:新しい習慣を始める(あまり大げさに考えず、神経質にならない。とにかく始めて楽しもう)。エクササイズ3「真珠の習慣」を身につけるこのエクササイズでは、「苛立たしい」ことから「有益なこと」を生み出す。ステップ1:あなたの身によく起こる、苛立たしいことを少なくとも10個書き出す。ステップ2:リストの中でもっともよく起こる、苛立たしいことを選ぶ。ステップ3:イライラしたあとにできそうな、新しい有益な習慣を考える。少なくとも5つは候補を挙げる。ステップ4:ステップ3から「最良の選択肢」を選び、「○○をしたら、××をする」のレシピをつくる(例「列に並ばないといけなくなったら、左右の足で順番に片足立ちの練習をする」)。ステップ5:真珠の習慣を始める(そして苛立たしさの程度がどうなるか観察する)。
リンダは冷蔵庫に、子どもたちが描いた絵と並べて白黒の絵はがきを飾っている。絵はがきの写真は、1950年代の主婦が電話でおしゃべりをしている場面だ。髪をきちっとセットした女性の頭上には、こんな吹き出しがある。「5時になっても子どもたちが生きてたら、私は仕事をちゃんとやったってこと」この写真を初めて見たとき、リンダは大笑いした。だが、笑ったあとで考え込んだ。写真はありのままの自分を受け入れる姿勢を表現している。これは頭では納得できるけれど、そんな境地にはなかなかなれない。だから、冷蔵庫にはがきを貼ったのだ。帰宅した夫ははがきを見ると、その皮肉めいた言葉に戸惑った様子を見せた。「励みになるのよ」とリンダはため息交じりに言った。当時、リンダは13歳に満たない6人の子どもを育てる専業主婦だった。子どもたちと家で過ごすのは大好きなので、それについては何の不満もないが、いつも忙しいせいで、押しつぶされそうな感覚に悩まされていた。毎晩ベッドに入って思い浮かぶのは、その日にできなかったことだ。昼間の光景が頭の中で渦巻く。車のシートに散乱したシリアル(掃除機をかけるべきだった)、畳めなかった洗濯物の山(畳んでしまうべきだった)、妹を小突いた兄をきつく叱ったときの落ち込んだ顔(もっと辛抱強く接するべきだった)、洗い物が山積みのシンク(私の母ならあんなふうに放っておかないのに)……。タスクのちょっとした積み残しが次第に大きく育っていき、ひどい状況を招いていた。できなかったことがひとつずつ頭に浮かび、自分は母として、妻として、そして人として至らないという思いがふくれあがるのだった。リンダは夕方、冷蔵庫の前に立つと、はがきの主婦にさえあきれられている気がすることもあった。5時を迎えて母親としての務めを果たしたことにほっとするどころか、がんばった自分を認めることもできなかった。冷蔵庫のはがきは励みにならず、むしろ「こんなふうに自分を受け入れる心境にはなれない」と痛感するのだった。
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