01自信を持たせる「教育のしくみ」をつくる
ディズニーのトレーニングは「マンツーマン」が鉄則!
新人に対して職場業務のトレーニングを行うとき、職場規模にもよるでしょうが、「トレーナー1人対トレーニングを受ける新人数人」というケースが一般的です。いうまでもなく、そのほうが時間的・人的コストを減らすことができると思われているからです。
しかし、ディズニーでは、あえて職場業務のトレーニングを「トレーナー1人対新人キャスト1人」で行います。ディズニーの新人採用人数規模を考えると、信じられないかもしれませんが、ディズニーでは、この原則が貫かれています。
では、なぜ、ディズニーでは、このようなトレーニングのしくみを採用しているのでしょうか。それは、次のようなメリットがあるからです。
ディズニー式「マンツーマン」トレーニングのメリット
[メリット1]親密な人間関係ができ、退職率が下がる
「1対1」の場合、当然、「1対複数」の場合よりも、お互いの人間関係が深まります。また、トレーナーと新人キャストは、2~4日のトレーニング期間中ずっと一緒に行動するので、トレーナーがほかのキャストに、「今、トレーニング中の○○くんだ、オレの教え子だよ」といった調子で紹介してくれます。
ですから、トレーニング期間中に、どんどん顔見知りの先輩キャストが増えていきます。また、トレーナーは、アルバイトのなかでもリーダー格なので、ほかのキャストたちは「オレが守っているんだ。仲良くしてくれ」というトレーナーの思いを感じ取ります。
一方、新人キャストは「守られている」という意識を持つので、安心して先輩キャストに接することができます。このように、「1対1」によるトレーニングは、良好な人間関係を築くうえで大いにメリットがあります。さらに、人間関係がよいと、退職率が低下するメリットも出てきます。
[メリット2]より高いレベルの技術が身につく
「1対1」の場合は、当然、「1対複数」の場合よりも濃密なトレーニングを行うことができるので、新人キャストは、より高いレベルの作業がこなせるようになります。
当然、より高い作業レベルの仕事がこなせれば、新人キャストはそれだけ仕事に対して自信を持つことができます。また、仕事に自信が持てると、[メリット1]のケース同様、退職率が下がります。
たとえば、同じ作業レベルに到達させるには「1対複数」の場合よりも「1対1」のほうが断然早い、つまり時間的コストが少なくてすむ、作業ミスも少ない、あるいは退職率が低ければそれだけ採用コストが抑えられることなどを考えれば、必ずしも「1対複数」のほうがコスト的に有利だとはいえないでしょう。
このような点も踏まえ、ディズニーでは「1人対1人」のトレーニングシステムを採用しているのです。
トレーニング・研修の成果を「最終テスト」で確認する
東京ディズニーランドの研修やトレーニングを終えたアルバイトに、「研修やトレーニングを受講して、よかったと思いますか」と質問すると、8割以上のアルバイトが「イエス」と回答します。
それは、ディズニーの研修やプログラムを受け、次図のような最後に実施されたテストに合格したからです。つまり、研修やトレーニングで習得した知識や技術がたしかに自分の身についていることを確認できたからです。ただ合格した後のフォローも大切です。
たとえば、ディズニーでは、テストに合格した新人キャストに手作りの〝修了証書〟を渡す職場もあります。新人キャストは、最終テストに合格したことで自信がつき、さらにかたちにして力を証明してもらえれば、嬉しいのはもちろん、誇らしくもあるでしょう。
また、ディズニーでは、最終テストとは別に、トムソーヤ島いかだのトレーニングが全部終わると手作りの免許証がもらえたり、カストーディアルでは技術に応じた段位の示されたシールがもらえ、それを箒に張ったりすることができます。
このようなあまりお金がかからないユニークな方法でも、キャストに自信をつけさせることができます。
ところで、あなたの職場には、研修の最後にテストはありますか。もし、なければ、
●作業技術・知識の最終確認をさせる(品質維持につながる)
●振り返りで学習促進を図り、自信をつけさせる(新人育成につながる)
ためにも、最終テストを導入してはいかがでしょうか。もちろん、そのことで、マネジメントリーダーとして安堵・安心を得る効果も期待できるはずです。
部下が自信を持つことのメリット
私が強調したいのは、研修やトレーニングは、単に作業をするための知識や技術を伝えるだけではなく、部下に自信をつけさせることも重要な狙いのひとつだということです。
マネジメントリーダーには、自社の研修やトレーニングがその狙いを確実に実現させるものであるかどうかをチェックすることが求められます。
研修やトレーニングによって、部下が自信を持つと、積極的に仕事に取り組むようになり、生産性も上がります。
さらに、研修やトレーニングをしてくれた組織や先輩たちに感謝する気持ちが生まれ、職場への愛着も生まれます。
その結果、繰り返しになりますが、退職率も下がります。同時に、部下の成長はマネジメントリーダーであるあなた自身の成長につながります。
成長した優秀な部下に刺激されモチベーションがアップする、部下のユニークな提案に触れることで視野が広がるといった理由で、あなた自身も成長する可能性がグンと高くなるのです。
新人キャストを職場に配置するときの3つのポイント
ディズニーのマネジメントリーダーは、新人が職場でのトレーニングを終えた後もさまざまな配慮をします。
たとえば、新人キャストを各ポジションに配置する際も、トレーニングや研修でのキャストの状況や希望などを踏まえ、次の3つのポイントに配慮して配置を考えます。
[ポイント1]キャストの特性を活かす
人には得手・不得手があります。いきなり、不得手なポジションに就かせると、自信を失う可能性があります。まず得意なポジションに配置し、だんだんと苦手なポジションに異動させます。
[ポイント2]ゲストから感謝の言葉がたくさんもらえる
「ありがとう」という感謝の言葉をいただけるポジションに配置します。ジャングルクルーズであれば、やはりスキッパーです。寄港した後に、ゲストから感謝の言葉をかけられたり拍手をされたりすると、仕事に対する自信が生まれてきます。
また、ゲストに感謝されることによって、「もっとゲストに喜んでいただきたい」という気持ちになり、ホスピタリティマインドが成長していきます。
[ポイント3]近くに面倒見のいい先輩キャストがいる
面倒見のいい、日頃から的確に仕事をこなしている先輩キャストの近くに配置します。その先輩を見て新人は育ちます。もし、自分のことしか考えない先輩や、いい加減な仕事をしそうな先輩の近くに配置されたらどうなるでしょうか。新人が育つ人的環境を整えることもマネジメントリーダーには必要なことです。
ディズニーでは、キャストの経験・成長に応じて対応する
ベテランのアルバイトリーダーたちに対して、ディズニーのマネジメントリーダーは、一目置き、自分の考えを押しつけないと前述しましたが、ディズニーでは、キャストの経験・成長に応じて対応・指導するしくみが整えられています。
1977年に、ブランチャード(K.H.Blanchard)らが提唱した「状況適応型リーダーシップ」という有名なリーダーシップ理論があります。
この理論をもとに作成したのが199ページの図表です(※こちらを参照)。横軸は「指示・命令」的行動を表し、右にいくほど指示・命令が多くなります。縦軸は「援助」的行動を表し、上にいくほど援助が多くなります。
この横軸と縦軸に、部下の成長レベル、仕事への意欲レベルを組み合わせることで、図表のような4つの窓をつくることができます。
ディズニーでもこの理論を応用していると思われる人材育成をしているので、この理論・窓を参考に、マネジメントリーダーとしてどのように指導していけばよいか、ご紹介しましょう。
「入社後6カ月未満のキャスト」への対応は?
[この時期のキャストの特徴]
①は、入社して6カ月くらいまでの新人キャストが該当する窓です。この時期は、なかなか仕事が覚えられない時期です。ですから、援助するまでには至らず、どうしても指示・命令を多くせざるを得ません。
[対応のポイント]
ディズニーの場合も、この時期は、社会人としての当たり前のマナーやディズニーのルールを守るなど、基本的な指示や命令を徹底して伝えます。
たとえば、現場の業務中、「元気のいい挨拶をしなさい」「入り口では、妊婦のゲストに安全性についてスピールしなさい」「船は9分15秒で回りなさい。遅すぎても速すぎても問題のあるバッドショーだよ」というように、すぐにフィードバックを行い指導する(機会指導)ことが中心になります。
この期間こそ、ディズニーの精神や伝統・哲学を身につけさせる最も大切な時期です。
ただ、すでに守られているルールに関することや、しっかりとできている作業分野については、指示・命令を繰り返さないことが大切です。指示・命令が時間の経過とともに少なくなっていけば、それが自信につながっていく時期だからです。
ちなみに、「OJT(OntheJobTraining)」とは「職場でのトレーニング」のことですが、ディズニーでは、この6カ月間がOJT期間に相当します。
というのも、ディズニーでは、トレーニングによって知識や技術を覚えるだけではなく、「キャストに自信をつけさせてはじめてOJTが終了する」と考えているからです。
「入社後6カ月~1年のキャスト」への対応は?
[この時期のキャストの特徴]
②は、入社後6カ月から1年くらいのキャストが該当する窓です。この時期に入ると、仕事にも慣れ、ある程度仕事ができるようになります。
しかし、仕事にマンネリを感じ始めるのもこの時期です。そのため、仕事に対する意欲は低下しています。
[対応のポイント]
この時期は、事故を起こしやすい最も危険な時期です。ですから、この時期は、仕事に対する指示と援助が多くなります。
たとえば、間違った行動をとったときは、「マニュアルと違うぞ。ルールは変えるなと教えたろ」頑張っていたら、「この前より、感情を込めてスピールできるようになったな」というように、メリハリをつけて指導・援助します。
ディズニーでは、やる気が低下しているこの時期に、ディズニー哲学などの基本をもう一度確認する研修を受けさせます。
マネジメントリーダーにとっては、最もモニターを強化しなければならない、すなわちリーダー格のアルバイトから頻繁に情報収集したり情報交換したりすることが必要となる時期です。
また、トレーナーにはまだなれませんが、この時期になると、後輩のアルバイトキャストも増えてくるため、後輩キャストの面倒を見させます。これにより責任感が生まれ、後輩から慕われることでモチベーションが高まっていきます。
「入社後1~3年のキャスト」への対応は?
[この時期のキャストの特徴]
③は、入社後1年から3年くらいのキャストが該当する窓です。この時期のキャストは仕事ができる一方で、目標が定まってないと将来に不安を覚えることがあります。そのため、何か具体的な目標を設定しようとします。
たとえば、トレーナーを目指す、あるいは手話キャストの認定試験の合格や、英会話可能キャストの認定試験の合格などを目指します。また、気分にバラツキが見られるキャストが出てくるのも、この時期の特徴のひとつです。
[対応のポイント]
この時期のキャストは、仕事はできますから、いちいち指示・命令を出していたら反発されます。
そこで、マネジメントリーダーには、「今回のキャストイベントを一緒に考えてみないか」「このマニュアル(手順)をもっと効率的にするにはどうすればいいと思う?」というように、共に考えたり、提案を聞いたりする姿勢が求められます。
ディズニーでは、英語の認定試験合格などの目標を目指すキャストを組織的にバックアップします。費用は会社が補助し、勤務時間外に英会話教室などのクラスを準備しています。
気分にバラツキが見られるキャストに対しては、マネジメントリーダーは、1対1の面談などを行い親身になって相談にのるなど、精神的ケアに努める必要があります。
「入社後3年以上のキャスト」への対応は?
[この時期のキャストの特徴]
④は、入社後3年以上の仕事へのモチベーションの高いキャストが該当する窓です。この時期のキャストは、仕事はなんでもできます。
運営上の仕事レベルに限れば、ユニットマネージャーやスーパーバイザー以上です。ディズニーに限らず、このレベルの社員、アルバイトが多い組織は強くなります。
ここまできた社員やアルバイトは、どんどんホスピタリティを発揮して、新しいサービスを積極的に生み出してくれます。
[対応のポイント]
この時期のキャストには、当然、仕事を任せることができます。
また、「どうしたら、もっとジャングルクルーズをよくできるか、考えて提案して」「キャストのモチベーションをどう高める?」というように、どんどん提案をしてもらうこともできます。
また、このようなキャストを、たとえば社員参加型プログラムなどの委員にすると、後輩キャストたちが積極的にプログラムに参加するようになります。
職場のキャストを導く力にも優れているからです。マネジメントリーダーも、このような部下が多いと、年間計画を立てたり、予算の効果的な活用方法を考えたり、人材育成のシステムを考えたりする重要な業務に時間を費やす余裕も生まれるでしょう。
また、この時期になると、正社員を希望するアルバイトキャストも少なくありません。「正社員になりたい!」と申し出があった場合、マネジメントリーダーは面接の練習をしたり会議の仕方やイベントの組み方などについて教えたりと、最大限の援助をします。
03「やる気が出るしくみ」をつくる
ディズニーの表彰は投票数では決まらない
「社員表彰制度」は社員のモチベーションを上げるうえで、大変有効です。東京ディズニーリゾートにも「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」という表彰制度があります。ご存じの読者も多いことでしょう。
この表彰制度は、キャストが「頑張っている!素晴らしい!」と認めた同僚キャストの名前と、「ここが素晴らしい!」という内容のメッセージを記した専用シートを投票し、その投票結果にもとづいて選出されたキャストを表彰する制度です。
この表彰制度がユニークなのは、投票数の多さで表彰されるキャストが決定されるのではないことです。
むしろ、投票数よりも、メッセージの内容が重視され、メッセージの内容から「素晴らしい!」と選出委員会に認められたキャストが表彰されます。
選出されたキャストには「スピリット・アワードピン」と呼ばれる記念のピンが贈られます。この制度により表彰されるキャストの人数は、年度により違いますが、300~500人程度です。
実は、この表彰人数にも〝ヒミツ〟があります。表彰者が少なすぎると選ばれなかったキャストは「自分には関係ない」と思うし、多すぎると表彰の権威が落ちます。
「自分も頑張れば表彰されるかもしれない」と思える人数のキャストを表彰するよう気配りされているのです。
なかなか浸透しなかったディズニーの表彰制度
「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」には、選考基準があります。その選考基準と照らし合わせて、キャストが「素晴らしい!」と認めた同僚に票を入れます。では、その選考基準がどのようにして決まるのか見ていきましょう。
まず、主としてキャストの教育を担当するユニバーシティ課が、東京ディズニーリゾート全体のゲスト向けのキャンペーン内容を全キャスト版に落とし込んだ目標をつくります。
次に、そこで決まった目標を各部の委員会に持っていき、自分たちの部に合った目標や活動方針に落とし込みます。
そして、それを、運営部であればそれぞれのアトラクション施設、たとえばジャングルクルーズやカヌーといったレベルにまで落とし込み、それぞれの施設に応じた目標や活動方針などを定めます。
たとえば、ユニバーシティ課でつくった全体目標が、「ゲストにワンランク上のハピネスを提供しよう!」であれば、運営部では自分たちの部門の特性に合った、「ゲストとの積極的な会話から感動を生み出そう」と一歩踏み込んだ目標にし、アトラクションでは、「自分の施設のバックグラウンドストーリーを積極的にお伝えしよう」などと目標を決めていきます。
そして、その目標や活動方針を基準に、キャストが「素晴らしい!」と認める同僚キャストを選び、メッセージを記して投票することになります。
ただ、今では、東京リゾートの内外を問わず、すっかり有名になったこの表彰制度も、最初の頃は、現場のアルバイトのキャストにはなかなか浸透しませんでした。
現場に浸透しなければ、いくら最も素晴らしいキャストとして表彰しても、「彼(彼女)は、すごいね」で終わってしまい、表彰されたキャストのモチベーションだけが上がる効果しか期待できません。
そこで、次のような対策が講じられました。
表彰制度を浸透させた3つの対策
[対策1]正社員だけだった委員会にアルバイトを参加させた
前述の選考基準となる目標や活動方針などを部レベルで決める委員会は、最初は正社員で占められていましたが、キャスト全体になかなか浸透しないので、その構成をスーパーバイザー(正社員)とアルバイト2~3人の構成に変えることから改善策がスタートしました。アルバイトも参画したことで、彼らの関心も高まりました。
[対策2]トレーナーに朝礼でキャンペーン内容(選考基準)を発表させた
さらに、それぞれの職場の朝礼で、施設の目標や活動方針にもとづいてつくったキャンペーンの内容を発表してもらいました。
キャンペーン内容は、ディズニートレーナー(アルバイト)が考えるケースが多かったようですが、トレーナーはアルバイトのリーダー格でもあるので、みんなトレーナーの言うことには熱心に耳を傾けるようになりました。
[対策3]マネジメントリーダーがフォローし続けた
マネジメントリーダーも、先頭に立って雰囲気を盛り上げたり、委員に選ばれたアルバイトに対して時間を惜しむことなく送り出したりしました。
それが、素晴らしいキャストとして選ばれる、あるいは素晴らしいキャストを選ぶことへのアルバイトの関心やモチベーションを高める大きな力になりました。
このような過程を経て、ようやく、最も優秀なキャストが自分たちの職場から選出された場合には、朝礼で紹介し、全キャストでお祝いするようになったのです。
全キャストに、この表彰制度が浸透するまで3年くらいかかりましたが、私が在籍した当時には、約1カ月ほどの投票期間にもかかわらず、延べ投票数が10万通以上にまで達しました。
さらに年々増えていったと聞きます。
このことこそ、まさに全キャストに「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」という表彰制度が浸透していった証拠といってもよいでしょう。
表彰制度をつくるときの注意点
表彰制度をつくるときに、マネジメントリーダーは、次の点に注意する必要があります。
●全員が対象となるような表彰制度であること
●一般の従業員もプロジェクトに参加させ、できる限り任せること
●選考過程の透明性を高めること(どのように選出されるか公開すること。特に人気投票ではないことを理解させることが重要です)
ここで注意したいのは、特定部署の社員だけを対象にした表彰制度では、社員全体のモチベーションは上がらないということです。
たとえば後輩社員への指導ぶりが素晴らしい、ほかの社員へのサポートぶりが素晴らしいなど、営業利益的な成果だけを対象にするのではなく、すべての社員に共通する視点に立って表彰制度をつくる必要があります。
いずれにしても、表彰制度が浸透するまでには時間がかかるので、すぐに効果が出ることを期待せず、継続させることを前提に取り組むことが大切です。
その意味では、マネジメントリーダーには忍耐力も必要です。
04疎外感を抱かせない「情報のしくみ」をつくる
トップ情報もアルバイトに伝える
組織において部下が疎外感を感じないような、また、全員が知識として持ちお客様に提供できるような情報のしくみをつくることが大切です。ディズニーでは、毎日15分、朝礼と終礼を勤務時間中に行います。いずれも、キャストが情報を共有する大切な役目を果たしています。
たとえば、ディズニーには、オップスワン(運営部)、サムワン(保安関係)と呼ばれる各部の当日の現場の最高責任者がいます。ただ、責任者といっても「人」をいうのではなく、「役」といったほうが正しいでしょう。
各部のユニットマネージャーの1人が、当日の現場の最高責任者である「ワン」役を務めるのです。ですから、たとえば、運営部のユニットマネージャーには、オップスワンを務める人が複数います。
この「ワン」たちが集合して行う全体朝礼で得た情報を、各部の「ワン」は自分が所属する部に持ち帰り、まずスーパーバイザーに伝えます。
そして、スーパーバイザーが、その情報を各施設のキャストに伝えます。ディズニーでは、このように情報を流すしくみが整備されています。
また、情報を伝達する際は、情報を受け取る側に自前の手帳を用意させ、必ずメモをとらせます。いうまでもなく、情報のすべてをきちんと把握し、忘れないようにするためです。
1人のアルバイトの現場情報を全員で共有する
1人のアルバイトキャストが現場で得た情報も、朝礼や終礼を利用して、すべてのキャストに伝えられます。
マネジメントリーダーが重要と判断した情報は、すぐに同僚、そして、さらに上のマネジメントリーダーへ伝えられ、情報によっては経営陣まで伝えられます。
朝礼や終礼以外においても、たとえば、オフィスにはキャストが自由に情報を書き込めるノートなどが置かれ、キャストが自由に目を通し、情報を共有できるようになっています。
また、ゲストからよくある質問情報に関しても、キャストに朝礼を通じて伝えられ、すべての施設のキャストが共有しています。ディズニーに限らず、マネジメントリーダーには、すべての部下が情報を共有するしくみをつくることが求められます。
退職する仲間の労をねぎらうキャストたち
ディズニーには、たくさんの学生アルバイトがいます。卒業シーズンになると、多くの学生アルバイトがディズニーを退職していきます。
そのため、このシーズンには、多くの職場で、退職していく学生アルバイトに手作りの〝卒業証書〟や寄せ書きの色紙を贈るシーンが見られます。
オンステージやバックステージでキャスト同士が写真を撮ることは禁止されているので、なかには、休み日のキャストがゲストとして入園し、退職するキャストが働いているところを写真に納め、色紙の中央に貼ったり、朝礼のときなどに手渡したりしているようです。
私のいたジャングルクルーズでは、毎年、1月か2月に居酒屋で〝卒業式〟を開くのが慣例になっています。〝卒業式〟にはOBも駆けつけ、身も心も温まる〝卒業式〟がにぎやかに挙行されます。
ある年には、海外勤務の先輩卒業生が、「ビデオレター」で後輩の卒業生の労をねぎらったこともありました。また、この〝卒業式〟では、入社してから2カ月程度で退職するキャストであっても、10年以上働いて卒業するキャストと同様に卒業生として送り出します。
短い期間であっても、素晴らしいディズニーの思い出として、そのキャストの記憶に残ることでしょう。
05部下を「癒すしくみ」をつくる
部下にサービスを提供する方法
「部下に対するサービスのしくみ」というと、組織レベルの福利厚生の問題ととらえがちですが、どのマネジメントリーダーレベルでも、十分部下にサービスを提供することができます。
たとえば、疲れていそうな部下に多めの休憩時間をとらせる、あるいは、同じ仕事ばかりでは飽きるので、ときには違った仕事を担当させるなど、いろいろな方法が考えられます。
マネジメントリーダーが自分なりに考えて部下へのサービスを提供すれば、部下の心と体にもよい影響を与え、部下に感謝され信頼感も増すでしょう。
また、職場の人間関係をよくすることにもつながるでしょう。もちろん、職場への帰属意識も強まり、生産性がアップする可能性もあります。厳しさが〝売り〟のマネジメントリーダーも、ときには大いにサービス精神を発揮してください。
06今すぐ職場状況をチェックしよう!
問題点があれば、今すぐ改善しよう
最後に、部下のモチベーションと特に関係の深い226ページ(※こちらを参照)の項目についてチェックしてみましょう。あなたの職場はどのような状態にあるでしょうか。
問題が多い職場のマネジメントリーダーは、できることからでよいので、今すぐ改善のために行動しましょう。もちろん、この本でご紹介した点を踏まえて部下をリードすれば、より大きな成果を得られると信じています。
おわりに
「最近の若者は、コミュニケーションが苦手」と言う人がいます。ただし、その部分だけがクローズアップされすぎているようです。
私がディズニーでの体験や、現在のコンサルタントの仕事などを通して感じるのは、上司や仲間と力を合わせて、何かを成し遂げる(協働して成果を出す)ことに関しては、若者のほうが中高年世代よりも優れていることです。
ただ、その力を引き出してあげるためには、マネジメントリーダーが部下個人に働きかけたり、力を合わせる場を創っていくことが必要です。
私が30年以上、ディズニーを見て、さらには自ら体験して思うのは、ディズニーはこの協働して成果を出すことに長けていることです。
さまざまなリーダーシップの考え方がありますが、この本では、まさに協働して成果を生み出すチームワークをリーダーがどう創るのかを、ディズニーでの実話を折り込み書き綴っています。
お金は大事です。権力や名誉が大切な人もいるでしょう。
私は、この本をお読みいただいた方が、そのお金や権力、名誉などを得るために、この本の内容を実践していこうとお考えになってもいいと思っています。
なぜなら、この本の内容を実践することで、人と人が力を合わせ生み出す成果を体験したリーダーは、部下から感謝の言葉をもらったり、部下の生き生きとした仕事ぶりを見て、いずれ真の喜びを手にすると思うからです。
つまり、人からの〝信頼〟という最も貴重な財産を手に入れたことに気づき、人から信頼されることに力を注ぐようになると予想されるからです。
マネジメントリーダーであれば、拙著・第2弾『9割がバイトでも最高の感動が生まれるディズニーのホスピタリティ』でもご紹介したように、フロントラインのキャスト(最前線で働いているキャスト)個人のホスピタリティ能力を引き上げることが要求されます。
それとともに、仲間を結集させ最大限の成果を生み出すことも要求されます。組織というより、自分が真の喜びを感じるために、マネジメントリーダー力を高めてください。
それが、組織、職場を強くさせることを信じて。そうなることを願いながら、本書のまとめとさせていただきます。
最後に、この本の執筆中、鹿児島県の医療法人三愛会の川村理事長をはじめ、三愛会の
皆様に応援・フォローしていただいたことに感謝いたします。
ありがとうございました。
2013年9月吉日福島文二郎
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