はじめにいちばん大切なことなのに「段取りの教科書」がない「仕事が遅い」「段取りが悪い」「チームがまとまらない」もしあなたがそんなお悩みをおもちなら、この本は役に立つはずです。ぼくは「クリエイティブディレクター」という仕事をしています。かんたんに言えば「企業や商品のブランディングをデザインでサポートする仕事」でしょうか。これまで、中川政七商店、くまモンを生み出した「くまもとサプライズ」、イオンの「ホームコーディ(HÓMECÓORDY)」、相模鉄道グループや茅乃舎のブランディングなど、さまざまなプロジェクトをお手伝いさせていただきました。仕事はかなり多いほうだと思います。おかげさまで、多くのご依頼をいただきますし、今でも同時に何十件も仕事が並行して進んでいます。また、プロジェクトごとに、関わる人の職種や業種、立場もさまざまです。役所、飲食、アパレル、鉄道、雑貨、家具、いろんな世界の仕事をしています。これだけ多くの仕事を日々進め、ありとあらゆる関係者とコミュニケーションをとりますが、ぼく自身にストレスはありません。仕事はスムーズにどんどん進んでいきますし、チームも円滑に動いています。それはなぜか?決して、ぼくがワンマンで勝手気ままに動いているからではありません。そんなことをしたら、すぐに仕事は崩壊してしまいます。ストレスなく仕事が順調に進むのは、きちんと「段取り」をしているからです。「段取り」という言葉は少し古くさいかもしれません。それでも、仕事においてとても大切なことです。仕事の目的を定め、きちんと計画し、あらゆる突発的なことも先回りしながら、時間どおりに実現させる。段取りがなければ、いつもバタバタして、日々トラブルが起き、プロジェクトは糸の切れた凧のようにどこに飛んでいくかわかりません。段取りは、仕事の「超基本」です。しかし、なぜか「段取りはこうするんだよ」と学校でも会社でも教えてくれません。ならば「段取りの教科書」をつくろう、と思ったのがこの本を書きはじめたきっかけになりました。「段取り」とは「ルーティン化する」ということ本編で詳しくご紹介しますが、ぼくが大切にしているのは「ルーティン化」です。どんな仕事もぜんぶ「同じ」だと思っているのです。「いやいや、文房具のデザインと服のデザインだとぜんぜん違うじゃないか」「鉄道のブランディングとロゴの作成だとさすがに違うでしょう」そんな声も聞こえてきそうですが、どんなに異なるプロジェクトであっても、ベースはほぼ同じです。表面上は違って見えても、仕事の骨格、本質はすべて同じだと考えています。肩書に「クリエイティブ」という言葉が入っているので誤解されるのですが、ぼくは毎日が新しいことの連続だなんて思ってはいません。実は「新しいこと」なんてそうそう起きないのです。もちろん突発的なことは起きますが、それも想定内です。あらゆることを「ルーティン」にしていれば、毎日が平穏に進みます。目の前のやるべきことを淡々とこなしていくだけだから、仕事もどんどん進みます。「そんなやっつけ仕事のように進めているのか?」という声も聞こえてきそうですが、違います。むしろ逆です。毎回の仕事をルーティンで進めるからこそ「よりいいもの」「よりおもしろいアイデア」が生まれるのです。「段取り」とは「ルーティン化」と言い換えることもできるかもしれません。段取りによって仕事をルーティン化し、ベースをきちんとしておくことで、仕事のアウトプットのレベルが上がるのです。逆に段取りをしていなければ、毎回が「新しいこと」なので、現場は混乱します。頭の中も整理されていないし、正解が何かもわからないので、仕事は出たとこ勝負。それこそ「やっつけ」になってしまいます。段取りをきちんとするからこそ、仕事のベースを固めることができる。だから、よりいい仕事ができるようになるのです。仕事を「やりとげる」ために段取りをしよう
もうひとつ、段取りをする理由は、仕事を「やりとげる」ためです。クリエイティブディレクターという仕事は、アイデアを出しただけで認めてもらえる仕事ではありません。きちんとかたちにして、世に出すところまでが仕事です。そのときにきちんと段取りができていれば、途中で頓挫したり、空中分解したりするようなことはありません。独立して自分で会社をはじめてからは、特に「やりとげる」ことへの責任感が芽生えました。どんなにいいアイデアでも、どんなに素敵なデザインでも、かたちにして世に出さなければ意味がない。当然、お金にもならない。「やりとげる」ということはとても大切なことなのです。やるべきことに漏れがないか。目標に的確にアプローチする手を打っているか。そして、やるべきことをタイムスケジュールにあわせてきっちりと詰めて、実行できるか。こうした「段取り」があってこそ最後までやりとげることができるし、ようやく「仕事をした」となります。プロジェクトを「はじめる」ことはできても、最後まで「やりとげる」力のある人は案外少ないのではないでしょうか?段取りを行なうことで、その他大勢の人と差をつけることができるはずです。めんどうくさがりやこそ「段取り」をしよう「どんな仕事であっても段取りをする」というと、几帳面な人だと思われるかもしれません。しかし、ぼくはとてもめんどうくさがりです。めんどうくさがりなのに、なぜ段取りをわざわざするのか?それは、段取りをしたほうが「結果的にめんどうくさくないから」です。「あー、いちいち段取りを考えるのがめんどうくさい。思いつくままにやろう」と仕事をはじめたら、効率は間違いなく下がります。人を巻き込むことができないので、質が高いものをつくれる可能性も低いでしょう。意思疎通ができず、チームがバラバラなので、確認ややり直しも増えていきます。めんどうくさがりやは、手間と時間をかけることを嫌いますが、段取りをしないと無駄な作業が増えて、そのぶん時間もかかります。「無駄なことが嫌い。時間がかかるのも嫌い。でも期日までに質の高い仕事をしたい」あなたがもし、ぼくと同じように「虫のいい」望みを抱いているなら、段取りのエキスパートになる素質があります。めんどうくさがりやほど、段取りをする必要がありますし、段取りが欠かせないはずだからです。段取りの大切さが少しはわかってもらえたでしょうか?それではさっそく、具体的な段取りについての話を進めていきましょう。
目次いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書目次CHAPTER1段取りは「目的地」を決めるところから1プロジェクトのゴールをイメージする2ゴールを「ビジュアル」で共有しよう3想像の範囲を100年後まで広げよう4「ターゲット」の解像度を極限まで上げよう
その仕事の「目的地」は決まっているか「段取り」について考えるうえで「仕事」について考えてみます。「仕事」を分解すると大きく3つに分けられます。①目的地を決める②目的地までの地図を描く③目的地まで歩くこの3つです。ふつうは③の「目的地まで歩く」ときの最適な手順を「段取り」と呼ぶことが多いでしょう。でも、そもそも①や②ができていないからうまくいかない、という場合が多くあります。目的地があいまいなまま歩みだすのは、いきなり登山をはじめることと同じです。山に登っている途中に「あれ?いったいどの山に登るんだったっけ?」では困ります。「気づいたら違う山に登っていました」では話になりません。まずは「正しい目的地」を定めることがなによりも大切です。仕事には「明確なゴール」がとても重要で、それを「きちんとイメージできているかどうか」が仕事の成否を分けるのです。では、目的地を決めるためにはどうすればいいのでしょうか?ぼくは、大切なのは「想像することだ」と答えています。それもただぼんやり想像するのではなく、ビジュアルで、リアルに想像することが大切です。ロゴをつくることが「目的地」なのか?「くまモン」の例でお話ししましょう。熊本県は、県のアドバイザーである小山薫堂さんに熊本のPRを相談しました。薫堂さんは、2011年に九州新幹線の鹿児島ルートが全線開通するのに合わせて「熊本のいいところを世の中に発信しよう」というキャンペーンを提案します。それが、市民を巻き込んで、熊本のワクワクやドキドキを発信していく「くまもとサプライズ」というプロジェクトでした。「熊本のこんなところがすごいよ!」というネタを集め、おみやげや特産品に「くまもとサプライズ」のロゴのシールを貼って盛り上げていこう、というものでした。ぼくへの依頼は、その「くまもとサプライズ」のロゴのデザインでした。薫堂さんの説明を聞き、資料に目をとおしました。ただ、ちょっと引っかかることがありました。「ウェブサイトやロゴをつくるだけ、ちゃんと盛り上がるかな?」ということです。そんな疑問を抱きつつも、まずはロゴを完成させました。ただ、もうすぐプレゼンという段階になっても「くまもとサプライズを効果的に広める手段はないかなあ……」とモヤモヤしていたのです。「ほんとうにうまくいくか」を疑うぼくはいつも、プロジェクトの完成形をビジュアルでリアルに想像します。おみやげ屋さんの売り場で、箱がいっぱいあって、そこに「くまもとサプライズ」のシールが貼ってある。そこに自分がいてどう思うだろうか……。八百屋さんの軒先にメロンやスイカ、トマトなどが並んでいる。そこに「くまもとサプライズ」のロゴのシールが貼ってある。ぼくはそこで「ああ、熊本か、じゃあ買おう」と思うだろうか?「大間のマグロ」など、地域が明確なブランドになっていれば買うかもしれません。しかし、「熊本のスイカ」と言われても、ピンとこないかもしれません。ならば、このスイカやメロンを両手にもって「熊本いいよ!熊本の食べものはおいしいよ!」と言われたほうがいいな、と思ったのです。シールを貼るよりも、宣伝マンがいたほうがいいのではないか。「そんなことをやっている人って誰だろう?」そこで思い出したのが東国原英夫さんでした。当時は、東国原知事が宮崎県の宣伝隊長として活躍していました。熊本にも東国原さんのような存在がいるといい。ただ、適任の「人物」は思い浮かばなかった。そこでキャラクターをつくろう、と思いたったのです。キャラクターがバーンと前に出て「熊本ってこんなにいいよ!」と宣伝したほうが盛り上がるんじゃないか。そのほうが人の目にとまると直感したのです。
熊本だから、やはりクマがわかりやすいなと考え、家でパジャマのまま、Macに向かい、クマのキャラクターを描きました。すぐにそれをスタッフに送って、そこからパターン検証をし、プレゼンにもっていったのです。このように、このプロジェクトではそもそも「キャラクターをつくってほしい」という依頼があったわけではありませんでした。企画当初は、くまモンなんて影も形もなかった。でも、プロジェクトの最終形を想像したら、ロゴのシールがただ貼ってあるよりも、くまモンが「熊本、こんなにいいよ!」と宣伝しているほうが盛り上がると思ったのです。ぼくは、つねに自分を疑います。「ほんとうにそうかな?」「もっといいやり方はないかな?」などと疑う。そこで有効なのがこの「ビジュアルでリアルに想像する」ということなのです。「発想のチャンネル」を替えるゴールをイメージするとき、つまり答えを出すときに、人はその道筋は一本だと思いがちです。だから一歩一歩ゴールに近づこうとする。しかし、世の中には飛行機もあれば新幹線もあるわけです。もしかしたら「どこでもドア」もあるかもしれない。答えまで最短距離でたどりつくことをあきらめてはいけません。先日、「農場に集客してビジネスができないか」という計画を検討することがありました。農場で乳搾り体験をしたり、野菜を採ったりして、みんなに楽しんでもらえないか、というものです。ふつうの段取りだと、「じゃあ、どういう農場にしようか?どういうデザインをしたら人は来てくれるだろうか?」などと考えるでしょう。ただ、ぼくがそれを聞いた瞬間、直感したのは「農場だと人を集めるのは難しいかも」ということでした。「農場体験」というのはよく聞くけれど、一度行けば飽きてしまいます。「農場に人が来る」というのはそもそも幻想なんじゃないか、と思ったのです。仮に農場に行くとしても毎週毎週行くようなイメージはできません。一時期は話題になっても、ただの「流行り」で終わってしまっては意味がないのです。継続的に農場に来てもらえなければいけない。そこでこう考えました。「逆に、毎週毎週行くところってどこだろう……?」出てきた答えは「公園」でした。同じビジネスをやるにしても「公園」と言ったほうが人は来るのではないか。それがぼくの出した仮説でした。公園なのに牛がいる。公園なのにキャベツを収穫できる。公園なのにパン屋さんがある。そんな公園があったら、すごく楽しいのではないかと、思ったのです。ニューヨークのセントラルパークだって、レストランが隣接していて人が集まっています。「農場」ではなく「公園」として打ち出すだけで盛り上がると考えたのです。ぼくは依頼を受けたときに、まず疑うところからはじめます。99%疑う。それは、もう「クセ」なのです。この案件でも、まず疑ったことで「農場」から「公園」というチャンネルに替えることができました。一見、「アイデアの出し方」のような話ですが、こうしたことも仕事を早く進めることにすごく役立ちます。多くの人は答えにたどりつくまでに時間がかかって、段取りが悪くなっている。徒歩ではなく、飛行機や新幹線でゴールに到着するようなアイデアが出せると、スピードはぐんと加速するのです。「お客さんが何と言っているか」想像せよでは、どうすれば「発想のチャンネルを切り替える」ことができるのでしょうか?ぼくが「農場ビジネスをしたい」と聞いたときに頭に思い描いたのは、ぼくがベビーカーを押して「△△農場」に行っている場面でした。その場面をリアルに想像したときに「農場にベビーカーを押してまで行きたくないな」と思ってしまったのです。人はみんな「自分がどういう暮らしをしているか」「どういうところに遊びに行くか」ということを大切にします。住むところひとつとっても「湘南エリアに住んでいる」とか「横浜に住んでいる」といったことが重要になる。ようするにみんな「自分の株価を上げる」ことに神経を集中させているのです。流行りの「インスタ(インスタグラム)」もその延長線上にあるものでしょう。だから「ベビーカーを押してどこに行くか」ということはすごく大事なのです。早くいい答えを出すには、完成を全力で想像すること。そして「完成したものを見ている人」のことを考えるのです。つまりは消費者、お客さんになりきる。そのプロジェクトの完成を見て「誰が」「どうよろこんで」「なんて言っているのか」「どういう表情をしているのか」といったことを映画のように想像する。そうすれば、自然と答えに近づいていけるはずです。
「画像検索」を使ってビジュアルでイメージするどんなに仕事を早くする段取りを組んでも、そもそもの目的地が間違っていては、元も子もありません。だからこそ、ゴールをイメージし、正しい目的地を定めることが大切なのです。ぼくは、ゴールのイメージをつくるうえで「グーグルの画像検索」をよくします。たとえば「公園」をつくるプロジェクトがあったとしたら、まずはグーグルで「きれい公園」といったキーワードで画像検索をする。すると、画像がバーッとたくさん出てきます。この中で気になるものをピックアップしていくのです。「緑に囲まれている公園がいいな」「藤棚があるような和の公園がいいな」といった具合です。ゴールのイメージは「言葉」で表現してもいいのですが、ただ「公園」というだけでは精度が低くなってしまいます。画像には、言葉にするとものすごい量になる情報が詰まっています。たとえば「まだ明るさの残る夜、桜がライトアップされていて、赤い橋があり、左手前から右奥に向かって、川がある。ライトアップされていない部分は岩です」、こう説明してもピンとこないでしょうが、写真を見れば一発でわかります。よって、まず完成形のイメージを「画像で、ビジュアルで」探してみる。「自分はどんなことがやりたいのか」を言葉にするだけではあいまいになってしまうのです。「『ビジュアル化』なんてデザイナーの仕事なのではないか?」という声もありそうですが、完成形のビジュアルをイメージすることで、今の仕事の「ステップ数」も見えてきます。また、どれくらいの難易度なのか。どれくらいのスピードで進むべきなのか。予算はどれくらいか。そういうさまざまなことが見えるきっかけになる。「まず画像検索をする」というのは、デザイン関係の仕事でなくても、あらゆるプロジェクトに応用可能なのだと思います。ちなみに画像検索をすると「イメージが固まりすぎてしまう」恐れはないのでしょうか。ぼくは、もしイメージが固まってしまうのだとしたら、それは「合っている」ということなのだと思います。イメージがピッタリくるなら、まずはそれで固めていい。あとから提案を受けたり、指示があったりしたら、それもやってみればいいのです。アイデアは2つになるかもしれませんが、それで構いません。アイデアは「広げる」と「絞る」の2段階があります。目的地を決めるにあたっては、まず「広げる」ことが必要です。地図を広げるイメージで「あっちのほうがいいかな」「こっちのほうがいいかな」と探ってみる。たとえるなら「アメリカかな?ヨーロッパかな?」という感じです。そこで大体の行き先が決まったら、次に絞っていきます。より詳細に「ロンドンだな」とか「ニューヨークだな」というように絞っていく。目的地がもし2か所になるのなら、両方の道を歩いていけばいいのです。「完成形のイメージ」を決めるよく「コンセプトから考えよう」などといわれます。もちろんコンセプトがかんたんに決まるときはそれでいいのですが、決まらないときは「完成形のイメージ」から考えるとスムーズです。ぼくらがデザインした「東京ショコラファクトリー(TOKYOCHOCOLATFACTORY)」という東京みやげがあります。このデザインを作成するにあたっても、まず画像検索による「資料集め」から行ないました。まずはチョコレートのお菓子なので、チョコレートの画像を集めていきました。途中で「ウイスキーの『ジャックダニエル』のパッケージ感がいいな、チョコレートっぽくておいしそうだな」と思ったので、それに近いイメージのものも集めました。この段階でいきなりラフをつくります。すると、すごくシンプルでカッコいいデザインができあがりました。男っぽい感じの「ゴディバ」や「ジャックダニエル」のような方向性で一度固まったのです。しかしそのあと、妻であるプロデューサーが「私はそれは買わない」と言い出しました。「もっとかわいくすれば?」と言うのです。ぼくも含めてスタッフみんなで「えーっ?マジっすか!」となったのですが、そのおかげで別の方向もやってみようとなりました。もうひとつ、ぼくの頭の中にあったのが「架空のチョコレート工場」のイメージでした。「架空のチョコレート工場があったとしたらどんなところだろう?」と想像し、イメージに近そうな「アメリカの遊園地」を画像検索しました。「コニー・アイランド」や「フロリダのディズニー・ワールド」の裸電球がいっぱいぶら下がっているようなイメージを探っていきました。ちなみに包装紙は「チケット」をイメージしました。おみやげのコンセプトは「チョコレート工場」だけれど、そのチョコレート工場は遊園地みたいな場所です。そこで包装紙を「チョコレートファクトリーへ行くためのチケット」がいっぱい貼ってあるイメージにしたのです。
このプロジェクトはどうなったら成功か?ところで、そもそもこの「東京ショコラファクトリー」のプロジェクトは、どうなれば「成功」なのでしょうか?つまり、今回の「目標」は何なのか?デザインなどに気をとられ、そこをきちんと把握していないケースもよくあります。試しにスタッフに聞いてみると「クライアントが目標としている販売数量とか金額とかを満たすことができたら成功だと思います」という答えが返ってきました。ぼくは「そうじゃないよ」と言いました。販売数量や金額を満たすのは「目標」ではなく「結果」です。ビジネスの場では、結果のことを目標と勘違いする傾向があるのです。このプロジェクトの場合は「東京で一番のおみやげになること」。それが「目標」だとぼくは考えました。ぼくは東京に住んでいますが「東京のおみやげ」と言ったときに、ちょうどいいものがあまりないなと感じていました。今回デザインすることになったお菓子は、バウムクーヘンにチョコレートのコーティングをしたもので、こういったお菓子なら、たいていの人は嫌いではありません。しかもデザインもよければ「最高の東京みやげ」になるんじゃないか、と思ったのです。さらには、この「東京ショコラファクトリー」が売れると東京のイメージもよくなるんじゃないか。それは0・001ミリかもしれないけれど、きっとプラスになるはずです。よって「どうなったら成功か?」といえば、そこが成功なのではないかと思ったのです。「デザインをどうするか」「パッケージをどうするか」以前に「どうなったら成功なのか」をきちんと把握し、共有しておくことは仕事を進めるうえでとても大切です。「なぜそうなるのか」をロジカルに説明できるようにするデザイナー、クリエイティブディレクターというと、直感やセンスでものごとを決めるイメージがあるかもしれません。「なぜこのデザインなのですか?」と聞いても「いや、これはこういうものなんです」などと答えるイメージをもっている人も多いでしょう。ぼくは「なぜ、このデザインになったのか?」を明確に、ロジカルに説明できるようにしています。「東京ショコラファクトリー」でいえば、こんな具合です。「最高の東京みやげ」をつくるにあたって、まず「東京」について考えました。東京のイメージは3つに分かれます。ひとつは昭和30年代の「ALWAYS三丁目の夕日」のような過去のイメージ。2つめはクリーンな高層ビルと雑多な新宿ゴールデン街のミックスのような現在のイメージ。3つめは「ブレードランナー」みたいな近未来都市の未来のイメージです。次に、この3つのうち「おいしそうなイメージ」といえば、過去・現在・未来の中で、どれだろうと考えました。このあいだ新横浜のラーメン博物館に行ったのですが、ノスタルジックな雰囲気で「チャルメラ」を思い出しました。懐かしくて食欲がそそられたのです。ラーメン屋さんも、すごくきれいなお店より、ちょっとさびれているお店のほうがおいしそうだったりします。そうすると「過去」っておいしそうなイメージがあるな、と気づいたのです。「東京の過去」のイメージを探っているなかで出てきたのが「工場」のイメージでした。「工場があって、チョコレート……」というところから映画『チャーリーとチョコレート工場』につながります。そこで、この「東京ショコラファクトリー」というネーミングとコンセプトが生まれたというわけです。一見、感覚的に生まれたようなものでも「なぜこのネーミングなのか?」「なぜこのビジュアルなのか?」は説明できるようにしています。そうすることで、クライアントさんも納得しやすいし、正解にたどりつきやすいのです。ぼくが「このほうがいいと思う」ということには、かならず理由があります。最終のイメージはビジュアルで考えつつも、そこに行きつくところまでは説明ができるようにしておく。そこが大切だと思っています。
どれだけ事前に「想像」できるかが勝負仕事をはじめるときに、どれだけ最終のかたちを想像できるか。それが仕事の成否を分けます。それもぼんやりと考えるのではなく、なるべく詳細に、なるべく範囲を広げて想像するのです。たとえばの話ですが、「あのモミの木を切ってくれ」という依頼があったとしましょう。通常は「どうやって切りましょう?」「どれくらいのスケジュールでしょうか?」という話からはじまります。しかしぼくは「この木を切って問題がないのか?」と考えます。目の前の人は「切れ」と言っているけれども、ほんとうに切っていいかどうかを、かならず考えるのです。もしも保護林であれば「切れと言われたから切った」ではすまされません。いくら森の管理人に「大丈夫ですよ」と言われても、特別な許可が出ているかどうか、自分自身で調べたほうがいいケースもあります。クライアントからの依頼であっても、信頼している仕事仲間からの依頼であっても、法律や差別問題といった最低限のルールに抵触しないかどうかを疑い、想像する。想像して、できることならしっかりと確認します。「会社の命令だから」「上司が言ったから」という根拠だけで、疑いもせず指示どおりに動いたとしても、大丈夫な場合が95%でしょう。しかし、残り5%で足をすくわれる時代だからこそ、まずは疑り深くなっておく。あえてちょっとネガティブな想像もしたほうがいいと、ぼくは感じています。幸い、インターネットなどで調べる方法も整備されているので、ここはきちんとおさえておきたいところです。ほんとうにその必要はあるのか?次に考えるのが「この木を切る必要がほんとうにあるのか?」ということです。「このモミの木を切ることが必要だし、ベストだ」という前提で、ぼくに「木を切ってほしい」という依頼がくる。だから切るのはあたりまえ。そう考えがちですが、もう少し想像力を働かせて、その「あたりまえ」を疑ってみるのです。「森を明るくしたい」という意図で森の管理人は「モミの木を切って」と言ってきたのかもしれません。しかし、モミの木を切らずに明るくする方法もあるかもしれません。あるいは、モミの木ではなくスギの木を切ったほうがいいかもしれない。目的を考えず、ただ依頼にそのまま応えていたら、最高の結果は出ません。ぼくはこれがどうやらクセになっているらしいのです。組織に属していても、「この指示がほんとうに必要で、ベストか?他のやり方のほうが目的にかなっているのではないか」と想像してみる習慣をつけておくといいでしょう。プロジェクト完了の「その後」まで想像するもうひとつ、「この木を切ったらどうなるか?」という「その先」を想像することも大切にしています。どんなものごとも、関係性のバランスのなかにあります。そのモミの木を切ることで、森の生態系が変わるかもしれない。そのモミの木(の下)は、もしかしたら森に長らく棲んでいる鹿たちの大事な寝床で、居場所を失った鹿が途方に暮れて農作物を荒らすかもしれない。そんなイメージを働かせることも大切です。これはあらゆる仕事に当てはまります。その仕事をしたことによるまわりへの影響は、間接的なものであってもかならずあります。いい影響もあれば、悪い影響もある。いくら売れても生産過程で環境に悪影響を及ぼすものは、つくるべきではありません。「その後まで想像する」というのは「その仕事で起こりうる最大のトラブル」へのリスクヘッジともいえるでしょう。ぼくはさらに想像します。「このモミの木を切り倒したとき、どの方向に倒れるか?」たとえば西方向に倒れたら、そこの地面に生えているおいしいキノコがだめになってしまうかもしれません。このように、「自分たちの新商品が出たら、他部署の類似商品とシェアを食い合うことにならないかな?」なども想像するのです。これは直接的な影響を想像するということ。逆にいい影響が出てくる場合もあります。これらの想像と関係なく、ぼくは直感的に「これはヤバイんじゃないか」と感じたら、理由なく、いったんストップすると決めています。仕事に着手するのは、自分でちゃんと納得できたときです。これらの想像を省略したら、いい仕事はできないでしょう。商品やプロジェクトの「寿命」を想像する
ぼくは今、相模鉄道(以下、相鉄)のリブランディングのプロジェクトに携わっています。横浜を走る鉄道、相鉄が100周年を超えてなお、さらに愛されるものになるためにブランディングしなおすプロジェクトです。これは、とても寿命の長いプロジェクトです。「時代によってよさが変わってしまうかもしれないものは、極力避けよう」「100年後も、よさが変わらないものをつくろう」そう考えました。そのうえでどのような提案がふさわしいかを考えると、「とてもオーソドックスなもの」という全体像が浮かび上がってきました。デザインというと、珍しかったりおもしろかったりするほうが、いかにも「らしく」て受け入れられやすいものです。逆に、ごくふつうで、堅実で、シンプルな提案だと「別にデザインなんかされていないじゃない?」と言われることが多い。しかし、100年スパンで想像すると、「珍しいものは飽きられる」という答えは、はっきりと見えていました。・古くならない、醸成するデザイン・普遍的な色、素材・100年たっても色あせないものこんなキーワードをもとに出てきた相鉄のデザインコンセプトは、「安全×安心×エレガント」でした。安全、安心は普遍の価値であり、鉄道の責務。デザインも、それをあらわすものでなければなりません。そのうえで、横浜という街をつくった鉄道ゆえの上質感、優雅さを表現したいと思ったのです。相鉄に限らず、ぼくが携わるプロジェクトはすべて「どれくらいの寿命になるか」を想像します。数日でその役目を終えるイベントなのか?次の世代にも愛されるようなものにするのか?ついプロジェクトが終わったときが寿命であるかのように考えがちですが、「さらにその先にどうなるのか」をきちんと想像することが、プロジェクトを成功させる秘訣なのだと思います。長い時間をかけて、ゆっくり変えていく相鉄の場合は、最終的に「ブランディングデザインは、100年スパンのプロジェクト」としたのですが、これにはもうひとつ制約上の理由もありました。鉄道は建物とは違い「工事中です。ご迷惑をおかけします」と何ヶ月も何年も閉鎖することはできません。駅や電車は通電している箇所が多く、工事の安全性を考えれば無理はできません。電車はまた365日走り続けているので、工事ができる時間はとても限られています。相鉄は24時間運行しているわけではありませんが、終電が出たあとも貨物列車が通過したり、整備をしたり、試運転をしたりするのです。夜中に作業ができても、始発は定刻どおりに走らせなければならない。仮にホームの一部を工事で取り壊したとしても、朝にはいったん復旧する作業が不可欠です。つまり作業は、スムーズかつスピーディになんか進まないということ。ほんとうに少しずつ少しずつ、短い作業時間を最大限に活用しながら、たくさんの工事や作業をやっていかなければならないのです。「やるべきこと」が多いのに、時間は足りない。大勢の人が関わっているので、時間の奪い合いになり、ストレスフルになる可能性もあります。これは結構なマイナス面で、段取りも難しくなります。しかし、「少しずつしかできない」という制約はプラスに変えることができる、と思ったのです。そこで、こんな方針を打ち出しました。「100年プロジェクトなのだから、長い時間をかけて、ゆっくり変えていく」腰を据えて取り組むことで、現場の焦りが消えます。さらなるメリットは、新しいデザイン、流行りのデザインに振り回されずにすんだことでした。そして、「100年かけて変えていくのだから、100年は価値が変わらないものをつくる」という覚悟もできたのです。似たケースをもとに「予測」するいかにリアルに詳細に想像するか。いかに想像の範囲を広げるか。それが大切だとお伝えしてきました。ただ、「想像する」といっても限界はあります。まったく知らない分野のことを想像するのは難しいでしょう。そういうときは、似たケースを参考にするといいでしょう。
相鉄の仕事でぼくが似たケースとして参考にしたのは阪急電鉄(阪急電車)でした。モデルケースとして探したわけではないのですが、「電車の仕事をするのなら参考になりますよ」と、関西出身の人が教えてくれたのです。1907年創業の阪急電鉄は大阪・梅田から神戸、宝塚、京都まで走っており、有川浩さんの小説『阪急電車』は映画化もされました。おしゃれで愛らしい電車は有名で、関西の人にとって「阪急沿線」というのは憧れとされています。阪急電車の人気の理由を考えると、あの独特の車両の色が大きな要素ではないかと感じました。ぼくはチョコレート色だと思ったのですが、阪急電車の独特の色には「阪急マルーン」という固有の名前がついています。栗の「マロン」が語源だそうで、深みがありながら温かい、上品なこげ茶です。1950年に行われたアメリカ博をきっかけに誕生したそうですが、何度か色を変えようとしたところ、利用者から「この色を変えないでほしい」という反対意見が出たという資料も見つかりました。それはまぎれもなく、阪急電車が利用者に愛されている証拠でしょう。誰もが「阪急だ!」とわかる独自の色をもつ阪急電車は、年月を重ねれば重ねるほど、ブランド価値は高まっていくはずです。「変わらない」ということが、信頼と愛着を生むのだから、安全、安心という鉄道の性質にも合致します。地域の住民に愛され、ブランド化すれば、沿線の土地の価値も上がっていきます。そうすると憧れる人たちも出てくるから、ますます価値は高まる。急激に流行ったりはしないが、ゆるやかな上り調子で、阪急電車は地域になくてはならないものになります。モデルケースの阪急電車について想像をすると、相鉄が目指すのも、まさにここだと思いました。その電車に乗るのが誇らしく、その電車を見れば「帰って来た」と思えるような、地域のシンボルになる。相鉄のあるべき姿が見えてきたのです。商品やプロジェクトの想像をする際に、うんうんと唸っていても広がりません。まずは、先行して成功しているモデルケースを見つけましょう。そのケースとの比較で、やるべきこと、進むべき道は見えてくるはずです。
その「ターゲット」は何の雑誌を読んでいるか商品、ブランディング、施設……。どんなプロジェクトであっても、ぼくはその仕事の「ターゲット」を決めます。今さら本に書くようなことでもないことは、もちろん承知しています。「ターゲットを決めろ」なんてことは、どんなビジネス書でも書いてあるし、日々の会議でも「この新製品のターゲットはどんな人たちか?」と上司に聞かれるでしょう。問題は、ターゲットを決めることではなく、ターゲットの決め方です。もう少し正確にいうなら、ターゲットの絞り方です。「若い女性がターゲット」「働くビジネスマンが手に取りたくなるようなもの」これでは、ターゲットを決めたことにはなりません。ぼんやりしていて、想像力に欠けています。詰めが甘いのです。そこで、ターゲットをとことん絞りましょう。ぼくはありったけの想像力を駆使してモンタージュしていき、人物像まで決めてしまいます。ぼくは「THE」というブランドを手がけています。「ザ・ジーンズといえばリーバイス501」のように、「これこそは」と言える商品をそろえているブランドです。この「THE」のターゲットをぼくはどのように設定したか。ここで思い巡らすのは、ターゲットが読んでいる雑誌です。「THE」のお客さんはどういう雑誌を読んでいるのかを想像するのです。「そうだな、『BRUTUS』『GQ』『AERA』あたりかな……」ここで「そうか、ターゲットはおしゃれが好きな男性だな」と決めてしまうと、見誤ります。おしゃれ好きな男性には「THE」の服は刺さらないでしょう。なぜなら、いわゆるファッションが好きな男性はコム・デ・ギャルソン、メゾンマルジェラなど、装飾性が高くて凝った服を好むからです。一見オーソドックスでなんの変哲もないように見える「THE」の服は選びません。かといって、奥さんや恋人に買ってきてもらったものを着るような、それほどこだわりのない人は、無印良品やユニクロに行くでしょう。彼らも「THE」の服は選びません。そこで、さらに絞っていきます。「THEを好む人は、『モノ・マガジン』の定番特集を買う人。『BRUTUS』も買うけれども、ファッション特集の号は買わないかもしれない」こだわりがあってもファッションフリークではない人たちは、「プロダクトとしての洋服」が好きなんじゃないか?モノへのこだわりだから、奇抜なデザインよりも品質とか素材を重視するはずです。とっかかりとして「どんな雑誌を読みそうか」を想像することで、ターゲットはある程度絞られます。雑誌について考えたら、次は「どんな音楽を聴いているだろう?」「好きなテレビは?よく行くお店は?」などとターゲットの解像度を上げていけばいいのです。ターゲットになりきって「演技」をするそれでは、相鉄のケースはどのように考えればいいでしょうか。ターゲットはもちろん乗客であり、沿線の住民です。そうなると、老若男女、趣味もいろんな人がいます。こうした場合も「絞る」ことは必要なのでしょうか?たしかに既存の利用者のキャラクターはまちまちです。そしてどんな人も、つねに遅れる、臭うといった「極度にイヤな電車」にならない限り、利用し続けてくれるでしょう。よって、このグループは「デフォルト・ターゲット」としていったんおいておきます。ここで考えるべきは、「今後のターゲット」です。ぼくは「今後のターゲット」をこんなふうに考えました。「結婚3年目で、来年子どもが生まれる。今は賃貸に住んでいるけれど、出産を機に、家を買いたい。年収は平均的で安定志向。夫の会社は渋谷だけれど、地方出身だから、のんびりしたところが好き。都会派というより自然派」想定したのは女性でした。なぜ女性を今後のターゲットにしたのか。家を購入する際、重要なのは女性の意見です。田園都市線、井の頭線、東横線といろいろあるなかで、相鉄を選んでもらうには、女性に魅力的なブランドでなければいけません。現状の漠然としたターゲットではなく、今後のターゲットを明確に描くことで、プロジェクトの進むべき方向はさらにはっきりとしてきます。
ターゲットを決めたら、ターゲットになりきって「演技」をするといいでしょう。「相手の立場になりなさい」というのは、みんな言うかもしれませんが、そこの精度を上げていくのです。想像の解像度をマックスまで上げる。すると「ほんとにそれほしいかな?」「そこに行きたいかな?」ということが見えてきます。みんながある一方向から見ているとすると、ぼくはちょっと遠くから見たり、逆から見たりしてみます。「いじわるな見方をしている」ともいえるかもしれません。ふつうとはちょっと違う角度で見るのです。ターゲットになりきるときは、正直に、素の感覚でいることも大切です。会議や打ち合わせの場になると「ポジショントーク」をしてしまう人もいますが、それはご法度です。人はいいことを言おうとしがちです。できないと思われたくないから、気のきいたことを言おうとしてしまう。そこに罠があります。ひとりの人間としての「素の感覚」を忘れないことが大切なのです。ぼくは入社1年目のスタッフの意見にも「いいね、それ!」となることがよくあります。実は業界に染まっていない人のほうが正直にものを見られるのです。ビジネスマンはスーツを着た瞬間に「ふつうの感覚」を忘れてしまいがちです。「私は買わないんですが」「ぼくはいいと思わないんですけど」というのも禁句。「市場調査するとこれがいいと出ました」と言う人もいますが「あなたが買わないのなら、消費者はもっと買わないでしょう」と思ってしまいます。「トップダウン」で考えれば段取りは自然に決まるCHAPTER1では、段取りをする前提の話として「目的地をきちんと決めよう」という話をしてきました。この段階をきちんと踏んでおくことで、プロジェクトは早く進みますし、ベストなかたちで着地することができます。見切り発車でまずはじめてみて、段々とかたちが見えてくる「ボトムアップ」のやり方もあるのかもしれませんが、効率的には思えません。最終のイメージから「トップダウン」で考えることで、ゴールのイメージが明確になるだけでなく、あらゆることがおのずと決まってくる。よって、その後の段取りにおいてもプラスに働くのです。たとえば「YokohamaNatureWeek」というイベントを横浜のこども自然公園というところで行なったときの話です。その準備をする際に「屋台やキッチンカーは何台必要か?」という問題がありました。これを「ボトムアップ」でひとつひとつ考えていけばすごく時間もかかりますし、最終的にどういうイベントになるか見えてきません。このイベントの「目的」は「きちんと数を決めて予算を出す」ことではありません。「イベントをよりいいものにして、多くの人に楽しんでもらうこと」です。どういう人が何人くらい来て、どういう動きをして、どういう思いをするのか?人がどんなふうに集まって、どのくらい混みあうのか?そこがきちんとビジュアルでイメージできていれば、現地のマップから割り出して「だいたい何メーター間隔で、何台キッチンカーを置く」という答えは自然に出るはずなのです。ちなみにこのイベントでは、予想をはるかに超える集客により、キッチンカーが足りなくなってしまい、うれしい誤算がありました。来場者の満足度は97%にも達したのです。まず目的地を決める。それによって、その後の段取りが格段にスムーズになります。CHAPTER2では、その目的地までの地図の描き方を中心にお話ししましょう。
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