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CHAPTER1→「マネジメントリーダー」とは何か

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CHAPTER1→「マネジメントリーダー」とは何か

01人を導き、成果を生み出す

ディズニーの〝課長〟は大企業の経営者並み

私が在籍した当時(2007年)の東京ディズニーランドの商品販売部、運営部の組織構成は37ページ(※こちらを参照)の図表のとおりです。

現在では組織構成や役職名称などに変更が加えられていますが、「マネジメントリーダー」について語るうえで支障はないので、私がよく知る在籍当時の組織構成をベースに話を進めていきましょう。

たとえば、東京ディズニーランドの商品販売部の場合、最高責任者として部長がいて、その下に「マネージャー」が置かれていました。

さらにマネージャーの下に3~4つのショップを管理する「ユニットマネージャー」と呼ばれる責任者がいました。

そして、それぞれのショップには「スーパーバイザー」(運営部では各アトラクションに置かれた「ワーキングリード」)と呼ばれる現場の責任者がいました。

スーパーバイザー(ワーキングリード)の下には、業務を分担して任せる「アルバイトリーダー」、トレーニングを任せるアルバイトの「トレーナー」が置かれていました。

ちなみに、東京ディズニーリゾート全体で、現在約2万人ものキャストが働いており、たとえばユニットマネージャーの管理するキャストは、100~300人で、一般企業でいえば、中規模企業の経営者並みの部下を抱えています。

その上のマネージャーは一般企業でいえば課長クラスですが、抱える部下は1000人以上の規模で、大企業の経営者並みといえるでしょう。

「マネジメントリーダー」とは誰のことか

たとえば、ディズニーのユニットマネージャーが、商品発注・補充、金銭の集計管理、キャストのスケジュール管理、さらには安全管理やレジのメンテナンスなどを行っているわけではありません。

実際問題として不可能です。誰がそれらの業務を行っているかといえば、部下のスーパーバイザーたちです。さらに、スーパーバイザーも、部下のアルバイトリーダーやトレーナーに業務を分担しています。このような業務分担は、何もディズニーに限ったことではありません。

1人あるいは数人の責任者が、担当する人、カネ、モノ、時間、信用、ブランドなど、いわゆる「資源」一切を管理・運営することはできないからです。

そこで実際には、さまざまなポジションの責任者は、部下を通じて、それらを管理・運用し、成果へと結びつけます。つまり、人を通じて成果をあげているわけです。

すなわち、私がいう「マネジメントリーダー」とは、このような「人という最も大切な資源を導いて、成果を生み出す人」にほかなりません。

ですから、ディズニーではアルバイトリーダーやアルバイトのトレーナーもマネジメントリーダーに該当します。一般企業でいえば、グループリーダーや主任クラスもマネジメントリーダーに該当します。

また、広く解釈すれば、高校の野球部の主将などもマネジメントリーダーと呼んでいいでしょう。

マネジメントリーダーの4つの条件

マネジメントリーダーとは、言葉を換えれば部下や仲間を的確にリードし目標達成、顧客満足度アップ、売上アップ、従業員満足度アップ、部下のモチベーションアップなどさまざまな成果をあげることによって、組織さらには地域社会に貢献する存在です。

同時に、それこそマネジメントリーダーの役割であり責任にほかなりません。

また、それを実現するには、前述したような資源を効率的・効果的に管理・運用できる人材を育成することが不可欠です。

特に人を重視するディズニーでは、明確に定義されているわけではありませんが、よいマネジメントリーダーの条件として、次の4つをあげています。

●部下をどのように育てるかを本気で考えている

●部下の持っている長所や強みを最大限に引き出す

●部下の個人的な悩みを聞き相談にのる温かさを持っている

●愛情を持って部下を叱ることができる

02「業績」よりも「人」を重視・優先する

ディズニーでいちばん魅力のあるアトラクションはキャスト!

ディズニーでは、「ディズニー・テーマショーの主役は、キャストである」と考えています。つまり、「キャストこそが、ゲストを幸福にする最も大きな力だ」ということです。

たとえば、ディズニーでは、マネジメントリーダーによるキャスト教育の一環として、次のようなシーンを見ることができます(次の会話文では、「マネジメントリーダー」を「リーダー」と記します)。

リーダー「いちばんのアトラクションは、なんだと思う?」キャスト「え、行列がいつでもできているから、スプラッシュ・マウンテンかな」リーダー「そうだね。人気あるよね(否定はしない)。でも、ウォルトも言っているけど、最も人を惹きつけるのは〝人〟だよ。つまり、キャストなんだよ。あなたのディズニースマイルが、ゲストを惹きつけるんだ。アトラクションには、人を惹きつけるものという意味があるんだよ。最も魅力があるのは、あなた(キャスト)なんだ」

このような教育は、オンステージのキャストだけを対象に行われているわけではありません。

ディズニーでは、人事や総務、経理などといった内部管理部門のキャストにも、「オンステージのキャストがゲストを惹きつけることができるのも、あなたたち、バックステージのキャストのフォローがあればこそだよ」と人間重視の教育を行っています。

たとえば、私がディズニーに在籍していた24年間、新入正社員は内部管理部門に配属される前に必ず3年から5年、フロントライン、つまりアトラクションやショップに配属されました。

その間、一般キャスト、トレーナー、スーパーバイザーを実際に体験することによって、彼らは、自分の組織の本業は何であるかを知ることはもちろん、キャストこそがゲストにハピネスを提供する主役であることを実感するのです。

そして、フロントラインで働くキャストとの人間関係を築くとともに、彼らの苦労を理解します。このような入社後のフロントライン体験は、その後も内部管理部門のキャストの心に確実に生きています。

たとえば、内部管理部門のキャストは、しくみやルールをつくることがあります。そういうとき、特にフロントラインのキャストから「なぜ、こんなルールが必要なの?」といった批判を浴びがちな損な役回りです。

しかし、彼らもゲストに幸福や満足感を与えるフロントラインのキャストを、少しでも応援したいという気持ちでいるのです。だからこそ、たとえばオンステージに雪が積もれば、率先してオンステージの雪かきをします。

つまり、直接ゲストと触れ合う機会はほとんどなくても、バックステージの社員1人ひとりが「自分たちもキャストの一員である」ことを自覚しているのです。

なぜディズニーのキャストは手を抜かないのか

ドイツの心理学者リンゲルマンの興味深い実験データがあります。それは、人には、大きな集団になるほど手を抜く傾向があるというものです。

たとえば、1人対1人で綱引きをした場合、人は100の力を発揮するが、2人対2人になると100の力が93になり、3人対3人になると85しか力を発揮しなくなるといいます。

というのも、集団になればなるほど「誰かが頑張ってくれる」という考えが無意識に働き、手を抜いてしまうからだといいます。

一方、ディズニーに目を転じてみるとどうでしょうか。東京ディズニーリゾートには約2万人のキャストが働いています。

もちろん、シフト勤務もあるので、2万人全員が同じ時間帯に一挙に仕事に就くわけではありません。

しかし、〝大集団〟で仕事に取り組んでいることは間違いありません。

ところが、ディズニーのキャストは、「誰かが頑張ってくれるから」と手を抜くことはありません。

それどころか、リピーターが圧倒的に多いことからもわかるように、大変高いレベルのホスピタリティやサービスを維持し、ゲストに提供し続けています。

リンゲルマンの実験結果から見れば、ディズニーのキャストの仕事ぶりは驚くよりほかありません。なぜでしょうか。

それは、冒頭の例にも見られるように、ディズニーには人間重視の風土があるからです。だからこそ、いつでも手を抜かないキャストが育っているのです。

もちろん、キャストも人間ですから、ときには手を抜きたいと思ったり、気がゆるんだりすることもあるでしょう。しかし、そんなとき、次のような思いが、ディズニーのキャストの脳裏を駆けめぐるのです。

「ゲストにハピネスを提供するために頑張っているほかのキャストの足を引っ張ってはいけない」「仲間に迷惑をかけてはいけない」だから、ディズニーのキャストは誰も、手を抜きそうになっても手を抜かないのです。

つまり、人間重視の風土によって育まれた「仲間を大事にする思い、仲間への気遣い、思いやり」が、ディズニーのすべてのキャストの胸に刻まれ、手抜きをしない大きな力となっているのです。

業績を伸ばすのは「人」

一方、業績ばかり重視して社員の気持ちを考えようとしない組織・職場では、風通しが悪く人間関係に問題が山積みという風土ができあがっていきます。

たとえば、マネジメントの対象は、次の2つに大別することができます。

●業績的な側面●人間的な側面

「業績的な側面」は、文字どおり、売上や利益率などを対象とし、「人間的な側面」は、社員の成長や考え方などを対象とする、つまりモチベーションを高めたり組織への誇りや愛着を育てるようなマネジメントのことです。

一般的によく見かけるのは、業績的な側面を重視し、売上アップの方法や実務に必要な法務の研修などを積極的に行い、「今月の売上目標は……」といったスローガンを前面に出して社員を牽引するような組織です。

実は、このような組織では、一時的には業績がアップしても、社員の士気が上がらず、時が経つにつれ、だんだんと業績が落ちていきます。

そのような組織のマネジメントリーダーのなかには、そのような状況に陥ってはじめて人を重視する重要性に気づき、外部のメンタル的な研修やコーチング研修を受講する人が少なくありません。

しかし、業績的な側面を重視する傾向からどうしても抜けきれず、外部の研修を受講して得た知識をなかなか有効に活かせないようです。

もちろん、マネジメントリーダーにとっては、業績も重要です。ただ、業績的な側面よりも、まず人間的な側面を重視しなければなりません。

なぜなら、生産性や売上を上げるベースは人、つまり部下だからです。部下がやる気になって頑張ってくれて、はじめて業績が伸びるのです。

いくら業績を伸ばす知識を詰め込んでも、部下がやる気を出してくれなければ業績は伸びません。その意味で、大切なのは、経営陣をはじめマネジメントリーダーが、まず人間的側面を重視する考え方を持ち部下に接すること、人を重視する研修やトレーニングを継続して実施していくことです。

そうなれば、自然に職場にも人間重視の風土が育っていきます。また、「自分や仲間が重視されている」と感じることができれば、部下の仕事へのモチベーションも上がります。その結果、当然、業績も伸びていきます。

「業績を伸ばすのは人です!」──この言葉を肝に銘じましょう。

キャストにしっかり注意するディズニーのリーダー

ディズニーには、ディズニールックという厳しい身だしなみのルールがあります。これを徹底させることは、マネジメントリーダーの大きな役割のひとつです。

また、ディズニーには、「アピアランス・コーディネーター」というディズニールックをキャストに遵守させる専門の担当者もいます。

マネジメントリーダーもアピアランス・コーディネーターも堂々とキャストを見ており、身だしなみに乱れのあるキャストがいれば、はっきりと注意や忠告を行います。

そのため、チェックされることに不慣れな新人キャストは、最初は「ビクビク」したり、ときには「ムッ」としたりしています。

しかし、マネジメントリーダーやアピアランス・コーディネーターが自分たちをほんとうによく見ていることや両者の間にブレがないこと、そして彼らの身だしなみに対する妥協のない姿勢に、リスペクトすら感じるようになっていきます。

注意するときの2つのステップ

マネジメントリーダーは、部下の仕事に対する能力レベル、人格・性格などを観察し的確に判断しなければなりません。そのため、マネジメントリーダーには、たとえ部下に最初は嫌がられても、「部下を堂々とよく見る」姿勢が求められます。

「部下を堂々とよく見る」姿勢・行動は、リーダーシップと共に、マネジメントリーダーに絶対に必要な基本中の基本といってよいでしょう。

読者の皆さんも、この本を読み進めていく過程のいろいろなシーンでそのことを再認識されるはずです。ただし、堂々と見て何か問題があった場合、すぐに反省点や修正点を告げるのではなく、次の2つのステップを踏むことが肝心です。

[ステップ1]よい点を褒める

よく見た後、まずよい点をすぐにフィードバックしてあげることが大切です。それがすぐにできないときは、同僚キャストに「マネジメントリーダーが褒めていた」と伝えてもらいます。

[ステップ2]反省・修正点を伝える

よい点をフィードバックしたうえで、反省・修正すべき点があるキャストには、反省・修正すべき点を伝えます。

忘れてならないのは、まずよい点を褒めることです。いきなりキャストに「反省しよう」「修正しよう」と言うと、反射的に反発するケースもあり得ます。

つまり、「すべてが悪いわけではない、よい点もあるんだよね。でも、ここがちょっと乱れているから気をつけようね」とステップを踏めば、キャストも素直に指示を受け止めることができます。

いずれにしても、部下を堂々と見た後にフィードバックしてあげることが大切です。

このフィードバックがあればこそ、部下は「自分のことを気にしてくれている」と思い、仕事に対するモチベーションが上がる、あるいは働きがいを感じるようになります。

なお、注意・忠告するのではなく「叱る」場合については、104ページ以降(※こちらを参照)を参照してください。

リーダー間で基本的見解を一致させる

冒頭のマネジメントリーダーがディズニールックが守られているかをチェックする例でわかるのは、「部下を堂々とよく見る」ことに加えて、「マネジメントリーダーたちの言うことが一致している」ことです。

たとえば、ディズニールックのルールのひとつに、髪の長さに関する規定があり、男性キャストの場合、「前髪が目にかかってはいけない」と規定されています。

このような微妙な規定の場合、ある人は「これくらいの長さならOKだ」と思っても、別の人は、「それはちょっとまずい」と思うように、人によって判断に違いが出る可能性があります。

ディズニーでは、そういうことがないよう、マネジメントリーダー間で意見交換し、共通の解釈・認識を持ってはじめて行動に移します。

マネジメントリーダー間で意見が相違する可能性のある場合は、自分の判断だけで動くことはありません。

もし、マネジメントリーダーによって、基本的なルールなどの解釈や考え方に違いがあれば、「課長からはこう言われたが、部長からはこう言われた」というような事態が生じて、部下は、誰の言うことを信じればよいのかわからなくなります。

また、そういうことが重なれば部下は混乱するだけでなく、マネジメントリーダーはもちろん、組織を信頼しなくなります。

そういうことがないよう、マネジメントリーダーはお互いに日頃からよくコミュニケーションをとり、基本的なものごとについては、共通の解釈・考えを持って部下に接することが大切です。

パーク内に寝泊まりしていたウォルト・ディズニー

ここで、ディズニーの創始者ウォルト・ディズニーに関するエピソードをご紹介しましょう。

ウォルトは経営者として多忙な日々を送っていましたが、時間があればディズニーランド(アメリカ・アナハイム)内にあるファイアーステーションの2階のオフィスに出向き、寝泊まりをしていました。

そして、そのオフィスの窓から、パークはきれいに保たれているか、ゲストは楽しんでいるか、しょっちゅう見渡していたのです。

もちろん、キャストの仕事ぶりもしっかりと見ていました。

そして、笑顔でゲストに接していないキャストを見つけると、上司のマネジメントリーダーを呼び、「なぜ彼は笑顔じゃないの?ここは夢と魔法の王国なんだよ。

笑顔のできないキャストはここでは働けないと、彼に言いなさい」と伝えました。

すなわち、ウォルトは社長であると同時に、フロントラインのマネジメントリーダーとして、オンステージの状況やキャストの仕事ぶりを見ていたのです。

では、なぜウォルトは、そこまでしたのでしょうか。

それは、1人でも多くのキャストに成長してもらい、自分の分身になってほしかったからです。ウォルトは、自分1人では夢と魔法の王国を築き存続させることはできないことを知っていたのです。

ウォルトの寝泊まりしたオフィスは、今も当時のままアナハイムのディズニーランド内に残されています。

「部下との時間」を常に大事にする

「部下としっかりコミュニケーションをとりましょう」「部下をよく見ましょう」と言うと、「そんな時間はない」と言うマネジメントリーダーが少なくありません。

前述したように、多くの部下を抱えるディズニーのマネジメントリーダーも忙しい立場です。決して時間に余裕があるわけではありません。

ただ、ディズニーのマネジメントリーダーたちは、時間をつくるためにどうすればいいか、そのために自分はどんな能力を高めればいいか、常に考えて行動に移します。

そして、忙しくてもなんとか時間をつくって、キャストとコミュニケーションをとっています。

たとえば、ディズニーのマネジメントリーダーは「今、キャストの士気が落ちてる」とか「こういう苦情があったな。みんなで解決しなくちゃいけない」と思ったときは、たとえどんなに忙しくても、ミーティングを開くタイミングを判断し時間設定を行います。

そして、問題・課題解決の方策をキャストたちと話し合い、キャストたちが納得したかたちで解決策を実行に移します。

キャストは、当然、「マネジメントリーダーが忙しいにもかかわらず、自分たちのために時間をとってくれている」ことを知っています。

だからこそ、マネジメントリーダーとキャストの間に厚い信頼関係が育まれていくのです。

ミーティング、面談を活用する

ディズニーでは、

●朝礼や終礼

●アルバイトリーダー・ミーティング

●トレーナー・ミーティング

●スーパーバイザーとアルバイトキャストの面談

・ミーティングなどの機会を、必要事項の伝達、キャストの提案を聞く、あるいはキャスト同士の打ち合わせはもちろん、マネジメントリーダーとキャスト・キャスト同士のコミュニケーションの場としても活用しています。

また、ディズニーには、開園後大雨になって入園者数が伸びなかったような場合、「雨天解消」といって、勤務するキャスト数を減らすしくみがあります。

しかし、ときには雨天解消とせず、その後の時間を余剰となったキャストのミーティングにあてることもあります。

また、ディズニーのマネジメントリーダーは、日常の業務中においても、キャストに積極的に声かけをするなど、常にキャストとコミュニケーションをとるよう心がけています。

いずれにしても、得意・不得意を問わず、マネジメントリーダーには、部下とのコミュニケーション能力を高めることが求められます。

この能力の詳細については拙著『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方』で解説しているので参考にしてください。

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