9割の人が間違った買い物をしている成功している男の服選びの秘訣40宮崎俊一
はじめに松屋銀座、紳士服バイヤーの宮崎俊一です。2011年に、『成功する男のファッションの秘訣60』を出版した際の反響は、私の想像をはるかに超えたものでした。私は週に数回、売り場で接客をしていますが、この本を片手に、「このページに掲載されていたシャツが欲しい」など、〝指名買い〟してくださるお客様が数多くいらしたのです。中には、かなり熟読してくださったのか、たくさんの付箋がついた本をお持ちの方、遠く九州から、わざわざ私が売り場にいる日時を電話で確認して、来店してくださる方もいらっしゃいました。本当にありがたいことです。この場を借りて、御礼申し上げます。中でも一番嬉しかったのは、「今まで、いろいろな男性ファッションの単行本を買ったけれども、宮崎さんの本が一番、身の丈に合う、現実に即した内容だったよ」と言われたことです。同時に、ビジネススーツの話以外のことについても教えて欲しいという声をたくさん聞き、お客様が何を求めているのか、どんな情報が必要なのかを改めて考えることができました。ビジネスシーンの服装に自信を持っていらっしゃる方でさえ、「休日の服」となると、「何を買えばいいのかわからない」「何を買ってもうまくコーディネイトできない」とおっしゃるのです。前回の本でも申し上げましたが、私は服を「作る側」そして「売る側」の立場なので、お客様にとってコストパフォーマンスが高く、品質と実用性、ファッション性を備えた商品については、熟知しているつもりです。私自身は無類の服好きであり、当然、うんちくも大好きなのですが、本ではあえて、〝うんちくよりも現実に即した実用性〟〝ファッション性よりも、相手に好印象を与える信頼感〟を重視しています。それが男性ファッションの基本だと思うからです。今回、「休日の服」をテーマにした本を、という企画を講談社からいただいたとき、真っ先に考えたのも、コストパフォーマンスでした。私からご提案する以上、たとえ休日着であっても、「5年は着られる」耐久性や、「5年後のトレンドにも対応できる」好感度の高いファッション性を抜きに、洋服選びをするわけにはいきません。そもそも、多くの男性が「休日の服」選びを苦手としているのは、スーツと比べてルールがない分、自由度が高く、アイテムも多いからです。実際、売り場でたくさんの商品を前に迷ったあげく、「これでいいか」と、その日の気分で服を選んでいかれるお客様が多いようです。でも、「これでいいか」と気分で選んだ服の寄せ集めは統一感に乏しく、結果的に「洋服ダンスはとりあえず一杯になっているのに、おしゃれ度は上がらない」という慢性的な悪循環に陥りがちです。そこでこの本では、今後買うべき〈万能アイテム〉をご紹介させていただきました。量的には、スーツケースひとつに収まるくらいのアイテム数です。数こそ少ないものの、おすすめするのは日常のすべてのシーンをカバーする、精鋭アイテム揃いです。ポイントは〝適正サイズのものを、慎重な試着のうえで〟購入すること。あとは何をどう組み合わせていただいても、結構です。ただし、第3章でアイテムごとに素材やディテールについて、詳しく解説していますので、決して「これでいいか」といった姿勢では選ばないでいただきたいのです。この本に書いてあることさえ守っていただければ、あなたの「休日の服」は劇的に変化することを、私が保証いたします。何より、鏡の中に映るあなた自身の姿が、その効果を明快に示してくれることでしょう。2012年12月宮崎俊一
目次はじめに第1章定番アイテム、あなたは正しく選んでいますか?1休日のカジュアルスタイル再考2洋服の数を揃えても、おしゃれに見えない理由は?3洋服の購入計画は、タンスの〝メタボ〟解消からはじまる4必要なアイテムに絞ってクオリティを上げる5キーワードは〝ドレス仕立て〟のカジュアルアイテム6クールビズ対応のアイテムを買う必要はない第2章間違いだらけのコーディネイト7カジュアルといえども試着の手は抜かない~イメージトレーニングでおしゃれの実力をアップ~8体のラインを隠すつもりのオーバーサイズの落とし穴9マッチョでもメタボでも40歳を過ぎたらTシャツは着ない10多くの人が、足元でスタイリングを台無しにしている11ユーズド加工のアイテムに手を出すな12誰もが陥るチェックシャツの罠第3章万能アイテムを揃える【オールシーズン】13大人のシャツは絶対長袖!オールシーズンで活用せよ14チノパンはシルエットと仕立てが命15ジーンズ以上に便利オフホワイトのコットンサテンパンツ16スーツからデニムまでOKのスエードチャッカブーツ17元祖万能靴。『クラークス』のデザートブーツ18長袖ビズポロはオールシーズン活躍の超優秀シャツ【春夏】19強撚ウールのネイビージャケットならシワにならずに快適20春夏こそ、ジャケット・ベストを同素材で揃える21ウールパンツはミディアムグレーとチャコールグレーの2本を用意したい22『パラブーツ』のデッキシューズ「バース」【秋冬】235年以上着られる、ネイビーのウールジャケットの条件とは241着目の『ハリスツイード』はヘリンボーン柄を買うコラム1正しいジャケットの選び方25春にも着られるステンカラーコートはセットインスリーブを選べ26厚手と薄手、2種類の生地のグレーのウールパンツを用意する27もはや第二の皮膚。ハイゲージニットは30ゲージが理想28はおるだけでサマになるピーコートは大人にこそ似合う【あると便利な万能アイテム】29ドレス仕立ての長袖シャンブレーシャツ30旅行にも便利なサファリジャケット31チェックのジャケットはネイビー、グレー、ベージュをベースに32ジャケット代わりのローゲージニットカーディガンコラム2進化する定番アイテムコラム3シャツ&パンツのアイロン術宮崎流第4章オン・オフコーディネイトの黄金の法則33究極のアイテムは白シャツとジャケット。これが時代を超えた着こなしの基本34白シャツを極めればおしゃれの上級者35日本人は「ベーシックでシンプルなコーディネイト」が苦手36カジュアルアイテム×ドレスアイテムミックスの黄金の法則37襟元のアクセントにはスカーフを38ポケットチーフ100%活用術39女性からの好感度高し!カーディガンを味方につけろ40パターンオーダーのシステムを上手に活用しようコラム4休日こそ勇気をもってチャレンジ!ドレスショートパンツコラム5靴を長持ちさせる秘訣はシューキーパーと週1の簡単ケアおわりに
私物と表記されているものを除き、掲載している商品はすべて松屋銀座で取り扱っている商品です。(2012年12月現在。一部季節外商品含む)
そもそも、ビジネススーツ以外の、男性の休日のカジュアルスタイルの定義とは、何でしょう。着ていてラクな格好?リラックスできる服でしょうか。いいえ、それはただの〝部屋着〟です。人目をまったく意識しない服装を、ファッションとは呼べません。少なくとも、その定義で周囲から「おしゃれですね」という評価を得るのは不可能です。ある程度年齢を重ねた男性であれば、「たとえ休日であっても、ワードローブの核となるアイテムはジャケットであるべき」というのが、私の持論です。よく耳にする、〝ドレスダウン〟とは、ドレスアップの反対語。つまり着崩すことです。そして着崩すためには、まずはきちんと着るのが前提となります。「ジャケットを着ていたら、別にカジュアルでもなんでもないじゃないか」というご意見もあるかと思います。ですが、ここで断言しましょう。「男性がカジュアルスタイルで失敗する最大の原因は、カジュアルアイテムに不用意に手を出すことにある」と。考えてみてください。あなたの周囲に、流行のクロップドパンツ(くるぶしが見える、短い丈のパンツ)やダウンベスト、あるいはチェックのシャツを、センスよく着こなしている人が、果たしてどれくらい存在するでしょうか。「男性のカジュアルスタイル」と聞くと、ほとんどの人がチェックのシャツを連想し、実際に購入することも多いですね。でも実はチェックのシャツって、ファッションのプロにとっても、色選び、コーディネイトともに、扱いが非常に難しいアイテムです。一歩間違えば、〝老けた予備校生〟になりかねません。こうした失敗を避けるためには、まず、発想の転換が必要。大人のカジュアル感は、アイテムのデザインやカラーで表現するのではなく、素材やディテールで表現するべきなのです。デザインや仕立てはかっちりしたテーラードのジャケットであっても、素材やボタンに変化が加えられていれば、それは立派なカジュアルアイテムです。スーツに合わせる白いシャツであっても、素材がロイヤルオックスフォードであったり、襟がボタンダウンであるならば、カジュアルスタイルに応用できます。「休日には、休日用のアイテムを着なくてはならない」といった先入観は、キレイさっぱり忘れてしまいましょう。それだけでも〝カジュアルのプレッシャー〟から解放されるはずです。前項で私は、「休日だからといって、休日用のアイテムを着る必要はない」と申し上げました。「カジュアル感を表現する素材とディテール」については、第3章で説明するとして、ここでは具体的に、大人が選ぶべきアイテムについてお話ししましょう。次の表をご覧ください。これは一年を通して、これだけ揃えれば充分な〈万能アイテム〉を列挙したものです。
ボタンダウンシャツにドレスチノ(詳しい説明はメソッド05で。ここでは〝チノパン〟と認識してくだされば結構です)、あるいはネイビーのジャケットにグレーのスラックスと、馴染みの深いものばかりが並んでいます。実はここがポイントです。おしゃれに見せるためには、着慣れないものより着慣れたものを着るのが、実は一番、手っ取り早いのです。理由は、「着慣れた服には安心感があり、リラックスできる」からです。この心の余裕が、ファッション誌がよく使う〝こなれ感〟に通じます。裏を返せば、いくら流行の、あるいは高価な服を何枚持っていようとも、着慣れていなければ、おしゃれには見えないということです。ときどき、店頭でマネキンに着せているコーディネイトを、そのままご購入される方がいます。経済力があれば、おしゃれに見せるのは簡単です。極端に言えば、上から下までコーディネイトされた洋服を何パターンか用意すればいいのですから。でも現実にはそうもいきませんし、そもそもそれではおしゃれの実力は身につきません。今回、私が考えた〈万能アイテム〉リストに書かれているのは、〝必要最低限にして充分〟なアイテムだけ。いわば一軍登録者のみで構成されたリストです。皆さんは出張や旅行のとき、「必要最低限」の洋服を念頭に用意されると思いますが、私自身の出張ワードローブは、まさにこのリストそのままです。しかも、ヘビーユースして、リピートしているアイテムばかり。実際に何年も使った経験から、導き出したひとつの結論です。ファッションを仕事にしていない、一般のビジネスマンであれば、旅行のみならず日常のあらゆるシーンをカバーするワードローブとして充分機能します。言い方を換えれば、「センスよく見せるには、スーツケースひとつ分の洋服で充分」なのです。まずは前掲のリストを見ながら、ご自身のワードローブに何が足りないのか、実際にチェックしていただくとよいと思います。同時に、〝必要なもの〟〝不必要なもの〟に分ける作業をするのです。つまり、ワードローブの仕分け作業ですね。改めてタンスを眺めてみれば、無駄なものが多いことに気づかれるでしょう。ここで大切なのは、アイテムとしては所有していても、何年も袖を通していないもの、サイズが合わないものは、思い切って処分の対象にすること。ワードローブの風通しのよさは、スタイリングのしやすさに通じます。そもそも、手持ちのアイテムは少ないほうが、失敗も少ないのです。〈万能アイテム〉を一度で揃えるのは大変ですから、2年くらいのスパンで購入計画をたててみてください。そして、核となる〈万能アイテム〉だけで、コーディネイトの練習をしてみましょう。これはアスリートにとっての筋トレのようなもの。具体的には、ネイビーのジャケットに白のボタンダウン、グレーのパンツといった組み合わせ。無地同士の組み合わせですから、コーディネイトに迷う余地もありません。これをワンシーズン続ければ、あなたのおしゃれの基礎体力はかなり上がるはず。トレンドアイテムやチェックのシャツにトライするのはこの後です。『成功する男のファッションの秘訣60』でも書いたことですが、私がおすすめするアイテムはすべて、「5年以上着られる」ことを前提としています。5年以上着るためには、耐久性が必要です。多少、値段は張りますが、今まで余計なものを買っていた予算をすべて、絞り込まれたアイテムに投入すればいいのです。「安いから」といった理由だけで買ったものの着る機会が少ないものは、結局、タンスの肥やしを増やすだけ。〈万能アイテム〉リストに沿った買い物をしてくだされば、タンスの肥やしには、絶対になりません。無駄なアイテムを排除した、少数精鋭部隊ですから、非常に稼働率の高いものとなるはずです。ですから、アイテムを絞ってクオリティにこだわる買い物は、結果的には無駄のない、コストパフォーマンスの高い買い物になるのです。そもそも、男性の服はルーツがはっきりしていて、ほとんどがワークウエアかユニフォーム、ハンティングかミリタリーウエアのいずれかがオリジナル。定番のピーコートやダッフルコート、チノパンも、全部ミリタリーから生まれたアイテムです。だから、アイテムの種類自体が少ないし、たくさん揃えなくても成立するのです。「でも、そんな無難な選択で、センスよく見せることが可能なのか?」と思われるかもしれませんね。そこはご心配なく。この〈万能アイテム〉リストを、スタイリストやバイヤー、デザイナーなど、いわゆるファッションのプロフェッショナルと呼ばれる人たちが見ても、ほとんどの方が納得してくれるはずです。一般に、ファッションの仕事をしている人は、「トレンドのものに飛びつくのが好き」だと思われがち。でも実際は逆で、結構、ベーシックですよ。もちろん、トレンドを無視するわけではなく、トレンドを把握したうえで、〝自分の定番アイテム〟にポイントとして取り入れながら、着こなしています。それが一番、効率的な方法だと知っていますから。つまり、ファッションのプロたちは自分にとっての〈万能アイテム〉を、サイズ感から微妙な色合いまで非常に具体的に把握していて、しかもトレンドをピンポイントでブレンドするのがうまい人たちなんです。皆さんはまず、この〈万能アイテム〉を着こなして、スタイリングのベースを体で覚えてください。そうすれば、「このトレンドなら自分に似合いそうだ」「このスカーフは便利かも」といった判断が、直感でできるようになるはずです。ここ数年、男性ファッションの世界では、〝ドレス仕立て〟がトレンドのキーワードとなっています。例えば、〝ドレス仕立てのチノパン〟とか、〝ドレス仕立てのポロシャツ〟といったふうに使います。わかりにくいですね。これは言い換えると、〝スラックスのような仕立てのチノパン〟〝シャツのような仕立てのポロシャツ〟という意味です。この場合の〝ドレス〟という言葉は、〝カジュアル〟の反意語として使われています。つまり、チノパンなんだけど、縫製はビジネスシーンではくウールパンツレベルですよ、あるいはポロシャツだけど、縫製はシャツと変わらないレベルですよ、ということです。
9割の人が間違った買い物をしている成功している男の服選びの秘訣40宮崎俊一
はじめに松屋銀座、紳士服バイヤーの宮崎俊一です。2011年に、『成功する男のファッションの秘訣60』を出版した際の反響は、私の想像をはるかに超えたものでした。私は週に数回、売り場で接客をしていますが、この本を片手に、「このページに掲載されていたシャツが欲しい」など、〝指名買い〟してくださるお客様が数多くいらしたのです。中には、かなり熟読してくださったのか、たくさんの付箋がついた本をお持ちの方、遠く九州から、わざわざ私が売り場にいる日時を電話で確認して、来店してくださる方もいらっしゃいました。本当にありがたいことです。この場を借りて、御礼申し上げます。中でも一番嬉しかったのは、「今まで、いろいろな男性ファッションの単行本を買ったけれども、宮崎さんの本が一番、身の丈に合う、現実に即した内容だったよ」と言われたことです。同時に、ビジネススーツの話以外のことについても教えて欲しいという声をたくさん聞き、お客様が何を求めているのか、どんな情報が必要なのかを改めて考えることができました。ビジネスシーンの服装に自信を持っていらっしゃる方でさえ、「休日の服」となると、「何を買えばいいのかわからない」「何を買ってもうまくコーディネイトできない」とおっしゃるのです。前回の本でも申し上げましたが、私は服を「作る側」そして「売る側」の立場なので、お客様にとってコストパフォーマンスが高く、品質と実用性、ファッション性を備えた商品については、熟知しているつもりです。私自身は無類の服好きであり、当然、うんちくも大好きなのですが、本ではあえて、〝うんちくよりも現実に即した実用性〟〝ファッション性よりも、相手に好印象を与える信頼感〟を重視しています。それが男性ファッションの基本だと思うからです。今回、「休日の服」をテーマにした本を、という企画を講談社からいただいたとき、真っ先に考えたのも、コストパフォーマンスでした。私からご提案する以上、たとえ休日着であっても、「5年は着られる」耐久性や、「5年後のトレンドにも対応できる」好感度の高いファッション性を抜きに、洋服選びをするわけにはいきません。そもそも、多くの男性が「休日の服」選びを苦手としているのは、スーツと比べてルールがない分、自由度が高く、アイテムも多いからです。実際、売り場でたくさんの商品を前に迷ったあげく、「これでいいか」と、その日の気分で服を選んでいかれるお客様が多いようです。でも、「これでいいか」と気分で選んだ服の寄せ集めは統一感に乏しく、結果的に「洋服ダンスはとりあえず一杯になっているのに、おしゃれ度は上がらない」という慢性的な悪循環に陥りがちです。そこでこの本では、今後買うべき〈万能アイテム〉をご紹介させていただきました。量的には、スーツケースひとつに収まるくらいのアイテム数です。数こそ少ないものの、おすすめするのは日常のすべてのシーンをカバーする、精鋭アイテム揃いです。ポイントは〝適正サイズのものを、慎重な試着のうえで〟購入すること。あとは何をどう組み合わせていただいても、結構です。ただし、第3章でアイテムごとに素材やディテールについて、詳しく解説していますので、決して「これでいいか」といった姿勢では選ばないでいただきたいのです。この本に書いてあることさえ守っていただければ、あなたの「休日の服」は劇的に変化することを、私が保証いたします。何より、鏡の中に映るあなた自身の姿が、その効果を明快に示してくれることでしょう。2012年12月宮崎俊一
目次はじめに第1章定番アイテム、あなたは正しく選んでいますか?1休日のカジュアルスタイル再考2洋服の数を揃えても、おしゃれに見えない理由は?3洋服の購入計画は、タンスの〝メタボ〟解消からはじまる4必要なアイテムに絞ってクオリティを上げる5キーワードは〝ドレス仕立て〟のカジュアルアイテム6クールビズ対応のアイテムを買う必要はない第2章間違いだらけのコーディネイト7カジュアルといえども試着の手は抜かない~イメージトレーニングでおしゃれの実力をアップ~8体のラインを隠すつもりのオーバーサイズの落とし穴9マッチョでもメタボでも40歳を過ぎたらTシャツは着ない10多くの人が、足元でスタイリングを台無しにしている11ユーズド加工のアイテムに手を出すな12誰もが陥るチェックシャツの罠第3章万能アイテムを揃える【オールシーズン】13大人のシャツは絶対長袖!オールシーズンで活用せよ14チノパンはシルエットと仕立てが命15ジーンズ以上に便利オフホワイトのコットンサテンパンツ16スーツからデニムまでOKのスエードチャッカブーツ17元祖万能靴。『クラークス』のデザートブーツ18長袖ビズポロはオールシーズン活躍の超優秀シャツ【春夏】19強撚ウールのネイビージャケットならシワにならずに快適20春夏こそ、ジャケット・ベストを同素材で揃える21ウールパンツはミディアムグレーとチャコールグレーの2本を用意したい22『パラブーツ』のデッキシューズ「バース」【秋冬】235年以上着られる、ネイビーのウールジャケットの条件とは241着目の『ハリスツイード』はヘリンボーン柄を買うコラム1正しいジャケットの選び方25春にも着られるステンカラーコートはセットインスリーブを選べ26厚手と薄手、2種類の生地のグレーのウールパンツを用意する27もはや第二の皮膚。ハイゲージニットは30ゲージが理想28はおるだけでサマになるピーコートは大人にこそ似合う【あると便利な万能アイテム】29ドレス仕立ての長袖シャンブレーシャツ30旅行にも便利なサファリジャケット31チェックのジャケットはネイビー、グレー、ベージュをベースに32ジャケット代わりのローゲージニットカーディガンコラム2進化する定番アイテムコラム3シャツ&パンツのアイロン術宮崎流第4章オン・オフコーディネイトの黄金の法則33究極のアイテムは白シャツとジャケット。これが時代を超えた着こなしの基本34白シャツを極めればおしゃれの上級者35日本人は「ベーシックでシンプルなコーディネイト」が苦手36カジュアルアイテム×ドレスアイテムミックスの黄金の法則37襟元のアクセントにはスカーフを38ポケットチーフ100%活用術39女性からの好感度高し!カーディガンを味方につけろ40パターンオーダーのシステムを上手に活用しようコラム4休日こそ勇気をもってチャレンジ!ドレスショートパンツコラム5靴を長持ちさせる秘訣はシューキーパーと週1の簡単ケアおわりに
私物と表記されているものを除き、掲載している商品はすべて松屋銀座で取り扱っている商品です。(2012年12月現在。一部季節外商品含む)
そもそも、ビジネススーツ以外の、男性の休日のカジュアルスタイルの定義とは、何でしょう。着ていてラクな格好?リラックスできる服でしょうか。いいえ、それはただの〝部屋着〟です。人目をまったく意識しない服装を、ファッションとは呼べません。少なくとも、その定義で周囲から「おしゃれですね」という評価を得るのは不可能です。ある程度年齢を重ねた男性であれば、「たとえ休日であっても、ワードローブの核となるアイテムはジャケットであるべき」というのが、私の持論です。よく耳にする、〝ドレスダウン〟とは、ドレスアップの反対語。つまり着崩すことです。そして着崩すためには、まずはきちんと着るのが前提となります。「ジャケットを着ていたら、別にカジュアルでもなんでもないじゃないか」というご意見もあるかと思います。ですが、ここで断言しましょう。「男性がカジュアルスタイルで失敗する最大の原因は、カジュアルアイテムに不用意に手を出すことにある」と。考えてみてください。あなたの周囲に、流行のクロップドパンツ(くるぶしが見える、短い丈のパンツ)やダウンベスト、あるいはチェックのシャツを、センスよく着こなしている人が、果たしてどれくらい存在するでしょうか。「男性のカジュアルスタイル」と聞くと、ほとんどの人がチェックのシャツを連想し、実際に購入することも多いですね。でも実はチェックのシャツって、ファッションのプロにとっても、色選び、コーディネイトともに、扱いが非常に難しいアイテムです。一歩間違えば、〝老けた予備校生〟になりかねません。こうした失敗を避けるためには、まず、発想の転換が必要。大人のカジュアル感は、アイテムのデザインやカラーで表現するのではなく、素材やディテールで表現するべきなのです。デザインや仕立てはかっちりしたテーラードのジャケットであっても、素材やボタンに変化が加えられていれば、それは立派なカジュアルアイテムです。スーツに合わせる白いシャツであっても、素材がロイヤルオックスフォードであったり、襟がボタンダウンであるならば、カジュアルスタイルに応用できます。「休日には、休日用のアイテムを着なくてはならない」といった先入観は、キレイさっぱり忘れてしまいましょう。それだけでも〝カジュアルのプレッシャー〟から解放されるはずです。前項で私は、「休日だからといって、休日用のアイテムを着る必要はない」と申し上げました。「カジュアル感を表現する素材とディテール」については、第3章で説明するとして、ここでは具体的に、大人が選ぶべきアイテムについてお話ししましょう。次の表をご覧ください。これは一年を通して、これだけ揃えれば充分な〈万能アイテム〉を列挙したものです。
少々、話は逸れますが、実はパンツやシャツ、ジャケットなどのベーシックアイテムは、「値段の違いが見た目に表れやすい」アイテムです。大きな理由は、縫製工場の違いです。縫製工場は、それぞれ得意なアイテムや主力商品を持っていますが、ジーンズを主に扱っている縫製工場と、スーツのスラックスが主力商品である縫製工場では、その縫製工程に歴然とした差があります。ジーンズを作るのに、スラックスと同様の工程は不要ですから、これは当たり前の話です。こうしたシステムを前提として、例えばメーカーが〝スラックス〟というアイテムを、ふたつの縫製工場に依頼したとしたら、どうでしょう。いつもジーンズを縫っている縫製工場では、ジーンズ作りをベースにした工程で作るため、本来のスラックスならば必ずある縫製工程が、少なからず省かれます。結果、同じアイテムでも、できあがった製品のクオリティには、大きな差が生じるのです。おわかりいただけたでしょうか。つまり、〝ドレス仕立てのチノパン〟とは、生地こそコットン・チノを使っていますが、スラックスを主力商品とする縫製工場で、スラックスと同じ縫製工程で作られたものなのです。ですから、〝ドレス仕立てのチノパン〟というより、〝チノ生地を使ったスラックス〟と呼んだほうが、正確かもしれません。〝ドレス仕立てのチノパン〟や〝ドレス仕立てのポロシャツ〟であれば、当然、ジャケットによく合います。それでいて、チノパンやポロシャツが持つカジュアル感も備えているので、トレンドのキーワードでもある〝こなれ感〟を表現するのに、ぴったりのアイテムだということです。ジャケットにチノパン、あるいはジャケットにジーンズの組み合わせは、別に珍しいものではありませんが、ボトムスのシルエット次第では、非常に野暮ったく見える組み合わせでもあります。ファッション初心者には、適切なシルエットの見極めが難しいものですが、〝ドレス仕立て〟を選ぶだけで、俄然失敗の確率は下がるはずです。〝ドレス仕立て〟のアイテムには、もうひとつ、注目する点があります。それは、サイズがきちんと選べることです。ご存じのように、カジュアルアイテムのサイズ展開は、多くの場合、S・M・L・LLくらいです。でも、〝ドレス仕立て〟のアイテムなら、シャツを首まわりのサイズで選んだり、パンツをウエストサイズで選んだりすることが可能です。「カジュアルも、スーツ同様、サイズ感が大事」なことは、第2章で詳しく説明します。〝ドレス仕立て〟の登場で、本来はカジュアルなアイテムも、ジャストフィットしたものを選べるようになったことは、非常に大きなメリットです。東日本大震災の後、節電対策として環境省が推奨したスーパークールビズは、日本のビジネスシーンにすっかり定着しました。最初の年こそ、プリントの半袖シャツなど、ビジネスには「ありえない」服装の是非も話題となりましたが、やはり「極端なカジュアルは仕事の場にそぐわない」という判断が勝ったようです。クールビズといえども、「あくまでビジネススタイルの延長線上にあってしかるべき」というのが私の考えです。ですから、清潔感とマナーを前提とした、一定のフォーマル感は必要不可欠。職場によってドレスコードはさまざまですが、「相手に失礼な印象を与えないこと」「信頼感を損ねないこと」を軸に考えれば、基本はやはり、〝ジャケットにスラックス〟になるものと思われます。ジャケットはネイビー、スラックスはグレーが、汎用性も高い定番中の定番といえる組み合わせでしょう。ここで改めて、前掲の〈万能アイテム〉リストをご覧になってみてください。いかがですか?クールビズに不可欠なアイテムがすべて含まれていることがわかります。つまり、クールビズ対応商品など、改めて購入する必要はないのです。実際、売り場にいらっしゃるお客様には、単品のジャケットとスラックス、あるいは職場のドレスコード次第ではドレス仕立てのチノパンをおすすめし、「ビジネスシーンに限定せず、ぜひ、休日にも活用してください」とお話ししています。もしかしたら、「チノパンなんて5000円以内で充分。何色か持って、ローテーションすれば便利」と考えていらっしゃるかもしれません。でもこの考えを、「今まで買っていたチノパン2~3本分の予算を使って、ドレス仕立てのチノパンを1本買おう」という発想に切り替えていただきたいのです。価格の目安は1万5000円くらいでしょうか。これを「高い」と思うか「安い」と思うかは、意見が分かれるところですが、休日にしか着られない5000円のパンツを3本持っているよりも、絶対に価値ある買い物だと思います。安い服には「気楽に着倒せる」というよさはありますが、ほとんどの方がそれなりの扱いしかしないものです。タンスの中に、色褪せ、アイロンの跡もなく、少々くたびれたチノパンが何本も入ってはいませんか?クールビズを通じて、私自身はこうした〝愛情を注がれないアイテム〟が減り、愛着のあるアイテムを大切に長く使う流れになってくれればいいなと思っています。
店頭に出ていると、毎回「カジュアルアイテムだから試着はいいよ」と、おっしゃるお客様と接することになります。その度に、「ぜひ、試着なさってください」と説得を試みるわけですが、これには確固たる理由があります。ご存じのとおり、カジュアルなアイテムの場合、サイズはS・M・Lと大雑把なものがほとんどです。サイズ分けが大雑把なのですから、試着もせず「偶然、ジャストの服に出会える確率は低い」ということになります。しかもS・M・Lというサイズに統一された基準はなく、メーカーやブランドによってかなりの差があるのが実情です。つまり、「私はMサイズ体型である」という認識は、あまり役に立たないのです。たとえTシャツであろうと、試着を侮ってはいけません。この本で私がおすすめしているのは、〝最低でも5年は着られるアイテム〟だけ。コーディネイトの難易度を抑えるために、基本は無地の、ベーシックアイテムに限定しています。人の視線を引きつけるような個性の強いデザインや色を〝武器〟として持たない場合、勝負の決め手は全身に何となく漂う収まりのよさしかありません。そしてこれを決定づけるのが、サイズ感なのです。そもそも男性の多くが、カジュアルアイテムは試着しないのですから、考えようによっては、試着して適正サイズの服を選んだだけで、すでに大幅なポイントリード。先行逃げ切りの必勝態勢ですね。試着のメリットはもうひとつあります。いろいろな洋服を着ているうちに、何となく「これは似合うな」とか「何かイメージが違うな」といったことが、感覚的にわかるようになることです。いわばイメージトレーニング。手持ちのワードローブを思い浮かべながら試着するのも、コーディネイトがうまくなるために有効な方法です。スーツの試着との大きな違いは、「より自分に似合うもの」を考えながら着ることでしょうか。カジュアルスタイルのほうが、より自由度が高いのですから。試着はどんな高級品でも無料で試せるチャンスです。販売員に手間をかけるからと遠慮なさる方もいらっしゃいますが、試着して気に入らなければ、「今回はやめておきます」のひと言でいいのです。試着を慎重にした結果、購入した洋服は、失敗がありませんから、少なくとも松屋銀座に関しては、試着ウエルカムです。「考えない、漫然とした試着」からは、もう卒業。考えながら試着して、購入したらその経験を次の試着に活かすことです。頭脳派試着でセンスアップをめざしましょう。私の実体験から申しますと、恰幅がいい方ほど、オーバーサイズの洋服を選ぶ傾向にあるようです。「体のラインを隠したい」というのがその理由なのですが、ここで断言しましょう。まったくの逆効果です。私からすると、太った人をスタイルよく見せるのは、とても簡単なことです。適正サイズのジャケットを着るだけでよいのです。男性のジャケットというのは、実によくできていて、体のラインを補整して見せてくれます。つまり、本人の体にくびれがなくても、シェイプされたジャケットをきちんと着れば、ウエストは締まって見えるのです。たとえウエストサイズ100cmの方であろうと、スタイルよく見せることは可能です。私自身はある程度、恰幅がいいほうが、むしろジャケットは似合うと思っています。これを容易にするためには、カジュアルなジャケットよりも、ベーシックな国産ブランドのジャケットをおすすめします。スーツ同様、サイズ展開が豊富にあるため、試着さえすれば、体に合ったサイズを見つけやすいからです。反対に、インポートのブランドのものや、S・M・Lといったサイズが限られたカジュアルジャケットは、「正直、体型に自信がない」という方は、避けたほうが無難。基本的に、ジャケットの着丈のお直しは、ポケットの位置などのバランスが悪くなるためおすすめしませんし、お直しの箇所が多くなればなるほど、ブランドが本来、意図したシルエットから遠ざかってしまうからです。恰幅がいい方の場合、一番お直しの多い箇所はウエストです。おなかが出ている人の場合、肩まわりにもお肉がついている人がほとんどです。そのため、肩に合わせてジャケットを選び、ウエストはゆるいことが多いのです。意外でしょう?「ウエストがゆるいなんてことは、あるはずがない」と思い込んでいる方は、ウエストラインをお直ししなければならないことに気づかず、結果、くびれのない寸胴体型に見えてしまう……というのがよくある構図です。キャリアを積んだ販売員ならば、当然チェックすべきポイントなのですが。いずれにせよ、どんな体型の人にとっても、「適正サイズのジャケットは七難隠す」は、確たる事実。「なで肩」や「瘦せすぎている」といった悩みも、「適正サイズのジャケット」を着ることで解決できることが多いので、慎重な試着をお願いします。ジャケットと対極にあるアイテムといえば、Tシャツです。ジャケットが体のラインの補整に役立つのに対して、Tシャツは非常に無防備なアイテム。決して体型をカバーしてはくれません。ロゴやイラスト入り、あるいは原色のTシャツなどは論外として、時折、雑誌などでは〝大人が買うべきTシャツ〟として、ラグジュアリーブランドのTシャツを紹介しています。果たして、素材と仕立てのよいものを着れば問題は解決するのでしょうか。私自身はそうは思いません。年齢を重ねると、いくら「若々しく見える」人であっても、〝隠したいパーツ〟が出てくるものです。代表的なものは、年齢が表れやすいと言われる首のシワや、日焼けによるシミ。これは日頃のエクササイズなどで改善できるものでもないので、やはりできるだけ隠したほうが望ましいと思います。「ジャケットのインナーとしてならいいだろう」というご意見もありますが、ジャケットを合わせるにしても、〝襟〟のついたシャツのほうが、首元に表情が出て、ずっと着映えがするものです。休日のリラックスした気分が、Tシャツというアイテムにマッチすることは理解できます。シャツを着るよりも、確かに解放された気がしますよね。アーティストや起業家などに、ジャケットにTシャツスタイルを好む人が多いのは、やはり「サラリーマンとは違う、自由な感じ」を無意識に主張しているのかもしれません。
しかも、こういった方々の多くは、いかにも「鍛えました」という体型だったりします。でも、そこに努力の跡が感じられるだけにいっそう、Tシャツ姿に〝若作り感〟や〝頑張って着こなしている感じ〟が漂ってしまうのです。私自身は40歳を過ぎてから、外出する際にTシャツは着ません。Tシャツというアイテムが、自分の年齢にはふさわしくないなと気づいたからです。ヨーロッパの男性は、ファッションに関心のある方であれば、シャツの首元にスカーフをあしらうなどして首は隠しています。少なくともTシャツではなく、ポロシャツを着ていますね。たとえ体型に自信があっても、ある程度の年齢を重ねたら、Tシャツ一枚で外出するのは控えましょう。ファッションは自由なものですが、おしゃれに見えるためには、自制したほうがよいアイテムもあるのです。Tシャツの話と共通した点があるのですが、私が個人的に気になっているのは、大人世代の足元、特にレザーのスニーカーです。雑誌などでも頻繁に特集されたせいか、ラグジュアリーブランドをはじめ、ファッションブランドのレザースニーカーを愛用されている方を多くお見かけします。多分、雑誌のコンセプトは、「若い世代とは差をつける大人のスニーカー」ということだろうと理解していますが、これに関しても違和感を抱かざるを得ません。いかにも高価そうなレザースニーカーは、Tシャツとスタイリングされていることが多く、確かに若い世代との差別化はできているのかもしれません。でもその意図が濃厚にこちらに伝わってくるため、何だか居心地の悪さを感じてしまうのです。実は、ブランドもののレザースニーカーは、クルーズラインと呼ばれている、バカンスをイメージしたコレクションで発表されることが多いのです。当然、リゾート地にはよく似合います。ヨーロッパのお金持ちにとっては、ひとシーズン限りの〝履き捨てアイテム〟に近い存在です。そういった背景を考えたとき、大人が日本の都会で履くレザースニーカーは、いかがなものでしょうか。本来、ブランドものだからといって、後生大事に履くようなアイテムではないのです。スニーカーは、たとえ革であろうと、あくまでスニーカー。ラグジュアリーブランドのレザースニーカーは、5万円前後の価格です。スニーカーの側面や後ろにブランドのロゴが入っているものも多く、意外にこれが目立ちます。私だったら、この予算を使って、靴ブランドのレザーのデッキシューズや、底の張り替えも可能なスエードのブーツを買いますね。例えば、〈万能アイテム〉としてあげている、『チャーチ』のスエードチャッカブーツ「ライダー」だって、これに少しお金を足せば、買えてしまいます。こちらのほうがよほど、生きたお金の使い途ではないでしょうか。あるいは、スニーカーの王道である『コンバース』の「オールスター」や『アディダス』の「スタンスミス」はいかがでしょう。予算的にも1万円以下で、よほど潔くて格好いいと思いますよ。皆さんは意外に自覚がないようですが、「ファッションにあまり予算はかけられない」とおっしゃる割に、私から見ると、結構、無駄遣いをされています。「5年使えないものは5000円でももったいない」という意識を持ってみてはいかがでしょうか。ユーズド加工してあるアイテムで、一番わかりやすい例はジーンズですが、他にもすり切れた感じに加工したスニーカーやシャツ、レザーアイテム、最近ではチノパンにもユーズドタイプが登場しています。デザインの一部として、十文字につぎはぎしたものなど、バリエーションも豊富。こういったアイテムを若い世代が着ることに関しては、トレンドファッションとしては面白いのかなとは思いますが、大人の男性が取り入れるべきトレンドとしては、どうでしょうか。そもそも、ユーズド加工そのものに、結構なコストがかかっています。実際、原価的には5000円くらいのデニムが、ユーズド加工を施すことで、1万5000円の商品となって売られているものもあります。しかも、人工的に汚したり、こすったりしているため、当然、耐久性も落ちています。今回、私がこの本の中でこだわったのは、アイテム数を絞ってクオリティを上げること。この原則から考えると、ユーズド加工の工賃にお金を払うのは、真逆とも言える行為です。率直に言えば、非常にもったいない。確かに、ジーンズなど「真っ青なものは照れくさい」と思われる気持ちは理解できます。実際、はき込んだジーンズのほうが格好いいものです。ファッション雑誌的な言い方をすれば、「こなれた着こなし」に見えるからです。とはいえ、はき込む時間もない。だったら「ユーズド加工のものでいいか」となるのが、自然な流れでしょう。でも、どうか今回は、ここで踏みとどまっていただきたいのです。ジーンズであっても、〝ワンウォッシュ〟と呼ばれる濃い目の紺と、きれいなシルエットにこだわるからこそ、ジャケットにもふさわしい〈万能アイテム〉となるのです。プロの目から見ると、ユーズド加工したものと、自分ではき込んだものの違いは、一目瞭然です。風合いからいったら、断然、自然にはき込んで色落ちしたもののほうが、格好いいものですよ。ちなみに、ジーンズは頻繁に洗うよりも、ある程度はき続けたほうがきれいに色落ちします。洗濯を重ねると膝から下も色落ちすることが多いようですが、はき続けると、膝から上が色落ちして膝下は色が保たれるのです。微妙な差なので、これはもう、好みの問題になってきます。
日本の男性は、本当にチェックのシャツが好きですね。松屋銀座でも、フロア一杯にチェックのシャツが並ぶ時期がありますし、実際によく売れています。ジーンズをはいてTシャツの裾を出し、その上にチェックシャツをはおる。これは男性の休日着の超定番スタイルですね。でも私が拝見する限り、99%の方が、失敗しています。チェックの大きさ、ボトムスやインナーとの色合わせ、サイズ感、着丈のバランス、素材感と、考えなければいけない要素が多すぎるのです。もちろん、あなたがモデルのように長い手脚とすらりとした体型、あるいはジョニー・デップのような強烈なキャラクター、もしくはプロのスタイリストにも負けない突出したセンス、このいずれかを備えているのなら、結構です。でも残念ながら、大部分の人は、チェックのシャツを着こなすだけの資質を備えていないのです。あえて申し上げます。ここまでリスクが高いチェックのシャツに、手を出すのはやめましょう。「もう、チェックは買わない。その分のお金は他にまわす」。これだけで、あなたのファッションは、確実に底上げされます。
第3章では、〈万能アイテム〉について、詳しくご説明をしていきます。季節に関係なく、オールシーズン活躍する〈万能アイテム〉のトップバッターは、〝長袖のシャツ〟です。適正サイズ、適正デザイン、適正素材のものを選んでいただかなければ、〝万能〟には機能しません。一切の妥協をせずに、お選びください。最初の1枚としておすすめなのは、ロイヤルオックスフォード生地の白のシャツです。襟はセミワイドカラーで、もちろん長袖です。私は個人的に、「大人のワードローブに、半袖シャツは必要ない」と思っています。
第1の理由は、「エレガントではないから」。第2の理由は、「半袖シャツは夏しか着られないから」。第3の理由は、「半袖は長袖で代用が利くから」。半袖シャツの必要性を「夏、暑いから」とおっしゃる方が多いのですが、私に言わせれば、この問題を解決するのは簡単です。腕まくりをすればよいのです。『成功する男のファッションの秘訣60』では、ヨーロッパのビジネスシーンで半袖シャツはありえないということをお伝えしました。でも、オフィスでの腕まくりはマナー違反ではありません。ジャケットやカーディガンをはおるよりも、温度調整が簡単にできますし、ジャケットを着たときに、汗や皮脂でジャケットの裏地を汚す心配もありません。そもそも半袖のシャツをエレガントに着こなすことは不可能です。実は半袖シャツは、長袖と比べ、袖の筒が大きく作られています。二の腕にフィットしない、あの感じが、垢抜けた印象にならない大きな原因だと思います。反して、男性がシャツを腕まくりする姿は、同性ながら、「なかなか格好いいな」と思うのですが、いかがでしょう。女性陣の評判も上々のようですよ。実際、盛夏のイタリアは40℃を超える猛暑になりますが、スーツに半袖シャツを着ている男性を、私は見たことがありません。そもそも、店で売られていないのです。もちろん、現在所有している半袖シャツを「処分しろ」とは申しません。ただ、「今後、買う必要はありませんよ」ということです。繰り返しになりますが、半袖シャツに投入する予算を、他の〈万能アイテム〉にまわし、一点ごとのクオリティを上げていただくのが、理想です。〈万能アイテム〉のボトムスの中でも、たぶん、一番ヘビーローテーションになるであろうアイテムが、チノパンです。実はここ数年の間、チノパンの人気は上がっています。以前は「カジュアルなボトムスといえば、デニム」でしたが、現在はデニムと人気を二分している状況です。厳密にいえば、夏物と冬物では素材が微妙に違うのですが、通年はける素材のものもありますので、店頭で確認して、まずはこのタイプを1本購入するとよいでしょう。余裕があれば、夏物の薄手と冬物の起毛素材の2本が揃えられたらベストです。ここでいうチノパンとは、もちろんドレス仕立てのもの。シルエットと仕立てが命と言っても過言ではありません。シルエットは、膝から下が緩やかに絞られたテーパードラインが基本です。そして必ず、プレスラインが入っているものを選んでください。要するに、スーツのパンツと同じシルエットなのだと認識していただければ、わかりやすいかと思います。テーパードラインとプレスライン、このふたつを守っていただければ、俄然、ジャケットとの相性がよくなります。しかも、脚が長く見えるという利点も。さらに、この後に出てくる〈万能アイテム〉の靴を合わせたときにもしっくり馴染み、きちんとした印象になります。タックについては、現在はノータックが主流です。チノパンにも当然、トレンドはありますが、今、述べた特徴は、多少ディティールの変化はあっても、今後5年間は継続すると思われます。仕立てについても、スーツのパンツと同様の縫製がされているかが、チェックポイントです。スラックスと同じ仕立てであれば、サイズ展開が細かいうえに、きちんとお直しして購入することができます。試着のときに注意していただきたいのは、ウエストサイズよりも、ヒップと太もものフィット感をチェックすること。ウエストは最大プラスマイナス5cmくらいはお直しできますが、ヒップはほんのわずかしか直せないからです。自然に立った状態で、ヒップの一番出ているところにパンツが乗っかり、下に向かってすとんと落ちているのが理想。ウエストはちょうどよくても、ヒップがつってしまっていたり、ポケットが開いてしまうようであれば、買うべきではありません。パンツ丈は靴下が見えるか見えないか程度の長さ。裾上げはダブルがおすすめです。
今回、ご紹介する〈万能アイテム〉の中で、たぶん、皆さんにもっとも馴染みのないアイテムが、この〝コットンサテンパンツ〟ではないでしょうか。これは、簡単にいえば、ジーンズの形をしたコットンサテン素材のパンツです。サテンと聞くと、ものすごく光っているイメージがあるかもしれませんが、それはシルクの場合で、コットンの場合、ほとんど光沢感はありません。仕立てはジーンズと同じですから、5ポケットで、〝リベット〟と呼ばれる金具が打ってあります。ただ、コットンサテン独特の風合いと、オフホワイトという色の効果で、見た目はチノパンよりもドレッシーな印象です。実は、これにはきちんとした理由があります。このパンツは、現在、『Lee』から出ている「ウエスターナー」というモデルが有名ですが、「ウエスターナー」の名前の由来は、カウボーイの正装からきています。ご存じのとおり、カウボーイの日常着は、上下ともにデニムです。ところが、彼らが仲間内でパーティするときなどは、トップスはオフホワイトのコットンサテンのジージャンで、ボトムスはこの同素材のパンツです。このスタイルが、彼らのフォーマルなんですね。なんとなくドレッシーな印象なのは、このルーツに理由があったのです。ですから、オフィスのドレスコードが、それほど厳しくない会社であれば、これにネイビーのジャケットを合わせれば、クールビズスタイルにも充分、対応可能です。もちろん、休日着としてはカジュアルすぎずドレッシーすぎず、はくだけで「あれ、何かセンスいいな」と周囲に思わせる、キーアイテムとなってくれることでしょう。しかも、シルエットや股上の深さなどが絶妙で、私自身、20年以上も愛用していますが、決して飽きないし、古臭く見えることもありません。さらなるメリットは、センタープレスのラインを入れる必要がないので、汚れたら頻繁に家で洗えること。真っ白ではないのでコーディネイトしやすいし、「白のパンツなんて照れくさいよ」とおっしゃる方でも、抵抗なく着ていただけると思います。ただ難点なのは、「ウエスターナー」の生産量が非常に少ないこと。私も見つけたら即買いし、常にストックしているほどです。そして、ジーパンと同じ縫製ですから、ウエストの直しができません。ヒップとのバランスに留意しながら、ベストのサイズを選んでください。裾上げは、ジーンズのように長めにはくのではなく、ドレスチノと同じく、靴下が見えるか見えないかくらいの長さがよいでしょう。
今回、休日の〈万能靴〉として、第一の条件に考えたのは、靴底が革でなく、ラバーソールであるということ。何といっても雨に強いことが魅力です。『グレンソン』は、1866年創業の英国老舗ブランド。本来はグッドイヤーウェルト製法(※注)の革底の靴を得意としていますが、ラバーソールも優秀です。
このチャッカブーツを実際に履いてみると、パンツからのぞく印象は、スエードのドレスシューズそのまま。ですからごく正統派のスーツであっても違和感がありませんし、ジーンズなどのカジュアルアイテムにもしっくりと収まります。ドレスチノとか、「ウエスターナー」に合わせても、非常にいいバランスですね。色はブラウンからダークブラウンくらいの範囲で選ぶと、合わせやすいと思います。ときどき、「紺のスーツに茶の靴って、合うの?」と、特に年配の方から聞かれるのですが、ヨーロッパでは〝紺に茶〟は非常にコンサバティブな色合わせです。グレーのパンツに〝茶〟も素敵です。むしろ、休日の足元としては、黒では少々改まった印象で、遊びの要素に欠けるような気がします。スエードを選んだのは、手入れの簡単さと、雨に強いという利点から。意外に思われるかもしれませんが、スエードはブラシ一本で手入れが済みますし、水にも強いのです。しかも、この靴は底の張り替えが可能なグッドイヤーウェルト製法で作られています。ちなみに、私が信頼して靴の修理をお願いしているのは、『ユニオンワークス』(http://www.unionworks.co.jp)の中川一康さんです。出張など持っていける靴の数が限られているとき、バイヤー仲間でスエード靴を選ぶ人は多いですよ。雨の日に2日連続で履かなければ、まず大丈夫です。さらに、紐でしっかり結べるので、ホールド感にも優れています。スニーカー感覚で履けるため、移動の多い出張先では本当に重宝します。かつては「スエードは冬の素材」といわれていましたが、今では通年アイテムとして通用します。ですから、クールビズの足元としても活躍します。ご存じかとは思いますが、靴とベルトは、色、素材を合わせるのが基本です。ですから、できれば、スエードの茶のベルトを合わせるのがベスト。少なくとも、色だけは絶対に合わせてくださいね。※注グッドイヤーウェルト製法=本格派の高級紳士靴につかわれる製法。頑丈で安定しており、長時間歩いても疲れにくい特徴を持つ。一見すると、チャッカブーツと似た印象を持つかもしれませんね。このふたつは選択肢とお考えください。もちろん両方あるのがベストですが、2~3年かけて揃えたらよいと思います。実はこのふたつ、かたちは似ていますがルーツが異なります。チャッカブーツはもともと乗馬用で、『クラークス』のデザートブーツは砂漠で使用するためのブーツです。クラークスのほうがカジュアル感が強く、ウールのスーツにはちょっと難しいかもしれません。でも、ジーンズからコットン素材のスーツまででしたら、対応可能。実は私のバイヤーとしてのキャリアは、革からはじまっています。ですから、ずいぶん勉強もしましたが、『クラークス』のデザートブーツは、約2万円という価格から考えると、信じられないくらい上質な革を使っています。どうしてこんな価格が実現可能なのかというと、理由はその生産量にあります。このモデルの発売は1950年ですが、1995年には世界販売累計1000万足を突破。「世界で一番売れた革靴」としてギネスに認定された、定番中の定番なのです。発売以来、現在もまったく製法を変えずに作られている、元祖〝休日スタイルの万能靴〟です。ルーツが砂漠の探検用のブーツですから、非常に機能的。独特のゴム素材のクレープソールは、ローテクですが非常にクッション性の高い優れたパーツです。しかも、意外に減りが遅いのも嬉しいところ。通気性も抜群です。唯一の弱点は、雨には少々、弱いということ。なにしろ、砂漠用のブーツですから。歩きやすいのでスニーカーと同じ感覚で履けるのに、スニーカーのように〝手抜き〟なファッションには見えません。スエードの質感が利いて、程よく上品な雰囲気に仕上がります。ボタンダウンに、ワンウォッシュのジーンズを合わせたときでも、白いスニーカーを履くよりも、このサンドベージュの『クラークス』を履いたほうが、ずっとおしゃれ。誰でも簡単に〝好青年〟を演出できると思いますよ。カラーはサンドベージュ、焦げ茶、黒が定番ですが、休日に履くのなら、リラックスした感じで履けるサンドベージュがおすすめです。実は、生産量の少ないネイビーも格好いいんですよ。全身を青系統でまとめたいときやホワイトデニムをはくときなど、この靴があると一気に垢抜けます。
クールビズが本格的に定着し、もっともヒットした商品といえば、このビズポロです。『ラコステ』が発信源ですが、各メーカーがこぞって発売しており、カラーも豊富になりました。
一番の特徴は、〝ドレス仕立てのポロシャツ〟であること。生地はポロシャツによくある鹿の子(鹿の子編み)ですが、袖はカフス仕立て、襟には台襟が付いています。台襟というのは、襟を立たせるための土台になる部分です。これがあるとネクタイがきれいに収まります。襟のかたちはビジネスで着る機会が多いならエレガントなセミワイド、カジュアルに着たいのならボタンダウンがおすすめ。ポロシャツの特徴であるプルオーバーのデザインも、クールビズに合わせてフルオープン、つまり前の部分が全開するデザインが登場。さらに、一部のメーカーでは、ドレスシャツと同様、首まわりのサイズで選ぶこともできます。つまり、仕立ては完璧なドレスシャツです。ネクタイを締めてスーツを着たら、見た目は普通のシャツにしか見えません。たぶん、皆さんは「ポロシャツ」と聞けば半袖で、夏になったら一枚で着るもの、というイメージだと思います。実際、鹿の子はカジュアルな素材ですから。でも〝ドレス仕立て〟にすることによって、オンビジネスで立派に着られるアイテムに進化したのです。しかも生地自体に表情がある分、休日に一枚で着てもサマになります。鹿の子は、凹凸のある生地のため、肌に張り付かず、通気性・吸水性に優れています。さらにシワになりにくく、アイロンなしでもOK、丈夫なので家でどんどん洗えるのが利点です。織りが粗いものと細かいものがありますが、オフィススタイルをベースに選ぶのなら細かなタイプ、休日メインであれば、粗いものでもいいと思います。従来は夏の素材と捉えられていましたが、〈通年アイテム〉と思っていただいて結構です。実際、私も一年中愛用しています。ストレッチ性にも優れていますので、非常に快適ですよ。もちろん、休日にも活躍しますから、一枚買っておくと非常に便利。〝ドレス仕立て〟でありながら、適度なカジュアル感があるため、カーディガンやピーコートといったアイテムと相性抜群です。余裕があったら、白はもちろん、色違いの紺やグレーなど、大人買いしても充分に元がとれるアイテムだと思います。「ウールは冬の素材」と勘違いしている人も多いのですが、ウールの大きな特徴は、夏涼しくて冬暖かい、シワになりにくく、軽量で耐久性にも優れていることです。「麻とコットンの混紡」と聞くと、涼しげに感じますが、実は麻とウールの混紡のほうが涼しいのです。この秘密は、「汗を吸い、それを空気中に発散させていく」というウールの特性にあります。つまり、ウールは〝呼吸する繊維〟なんです。この特性には涼しいことの他に、復元しやすいというメリットもあります。1日着たら2日休ませるという、〝中2日ルール〟を守り、休ませている間にきちんとジャケット用の厚手ハンガーにかけていただければ、3日後には完全に復元しています。夏場のジャケットって、着ている時間よりも手に持っている時間のほうが、長いくらいではないですか?そのため、売り場でもお客様から「持ち歩いてシワになりにくいジャケットを」という要望を多くいただきます。そんなとき、絶対の自信をもっておすすめできるのが、この強撚ウールのジャケットです。私自身も、まさにこれを着倒す勢いで愛用しています。次の写真のように鞄に挟んだり、腕に掛けて持ち歩いたりしても、まったくシワが気になりません。非常に丈夫ですから、私の場合、一着を8年着ていますよ。強撚ウールは通常のウールと比べ、若干高価ですが、5年以上着られたら、かなりコストパフォーマンスが高いといえます。
オン・オフ両用できるように、色はネイビーを選べば、着用不可のオフィスはほとんどないのでは?白のボタンダウンあるいはビズポロ、ミディアムグレーのスラックスと組み合わせるコーディネイトなら鉄板です。ここまで、強撚ウールの利点ばかりを話してきましたが、この素材にも弱点はあります。それは素材感としての面白みに欠けること。平凡な印象になりがちです。でも、春夏の〈万能アイテム〉として選ぶのであれば、まったく問題ありません。むしろ、平凡さは誠実さ、信頼感などに繫がりますから、単品の組み合わせゆえにカジュアルに傾きがちなクールビズのコーディネイトに、フォーマル感を与えてくれると思います。通勤時は暑いから、シャツとパンツのスタイルで。そしてオフィスに〝置きジャケット〟としてこのジャケットとネクタイを用意する。こんな活用の仕方もおすすめです。「春夏物でジャケット・ベストのツーピース」をご提案すると、お客様は大概、驚かれますが、セットで揃えておくと、春先の早い時期から秋口まで着られますので、暑がりの人にも非常に便利です。男性ファッションの歴史では、シャツは本来、下着の扱いとなっています。ですから欧米人のビジネスシーンにおいては、ジャケットなしで、シャツにスラックスだけの格好で人前に出ることはありません。でも、ベストにスラックスであれば、ドレスコード的にも問題ありません。映画の中でも、男性がシャツの腕まくりをして、ベストにスラックスのスタイルで打ち合わせに臨む、といったシーンがよく見られます。なんとなく仕事ができそうな風情を醸し出していて、なかなか格好がいいものです。日本では、ジャケットにベスト、スラックスのスリーピースは、「おじさんのもの」という先入観があるようですが、私はもっともっとベストを活用していただきたいと思っています。利点はいくつもあります。ビジネスシーンにおいても、休日であっても、単品よりもコーディネイトで悩まずに済むこと。手軽に人と違った着こなしを演出できること。ジャケットとベストを単品でも使えるため、コストパフォーマンスが高いこと、などです。ボトムスにチノパンやジーンズを合わせても、おしゃれですよ。ただ問題なのは、セット売りをしているメーカーが少ないことです。これは少々手前味噌な話になりますが、第4章のメソッド40で詳しく解説する百貨店のパターンオーダーを利用すれば、簡単に手に入ります。松屋オリジナルパターンオーダーは、ほとんどのジャケットにベストが別注可能。しかも単品でジャケットとベストを購入するよりも、ずっとお得な価格です。しかも、自分のサイズに合わせたものをオーダーできるのでほぼ完璧に体にフィットするジャケットが選べるはずです。色はグレーやネイビーでも結構ですが、生地に表情があるもののほうが、カジュアル感が出ます。休日にフル活用することを考えるのなら、コードレーンやシアサッカーといった生地もおすすめです。
クールビズに対応する単品コーディネイトで、一番フォーマル度が高いのは、ネイビーのジャケットにグレーのパンツの組み合わせです。このコーディネイトであれば、大半のオフィスで着用が可能なのではないでしょうか。もちろん休日着としても、きちんとした場に出席する際や、エレガントな雰囲気を演出したいときには、やはりコットンよりもウール素材のパンツが適しています。私自身は、ある程度の年齢に達した大人の男性にとって、グレーのウールパンツは必須アイテムだと思っているのですが、実はきちんとしたパンツを持っている人って、案外少ないようです。セレクトのポイントは、細身のシルエットでノータックのデザインであること。色は、ミディアムグレーが何にでも合わせやすく、便利です。靴は茶がよく馴染みます。お客様の中には、単品パンツに黒やネイビーを選ぶ方も多いのですが、これらの色はコーディネイトのテクニックからすると、上級編。その点、ミディアムグレーなら、トップスの色をまったく選びませんし、誰にでも似合います。パンツの1本目には、ぜひ、ミディアムグレーを選んでください。そして、もう1本買う余力があるならば、チャコールグレーがおすすめです。下半身が引き締まって見える効果がありますし、こちらなら黒の靴にもよく馴染みます。特に夏場は汗をかきますから、パンツも同じものを毎日はくのは避けたいですよね。そうなると余計に、ミディアムとチャコールのグレー2色を持っていることに価値が出てくるのです。2色でローテーションが可能になりますから。インポートの3万円台のパンツを1本買うよりも、国産の1万円台のパンツを2本買ったほうが、生地が傷まないので、おすすめです。「せっかく2本買うなら、全然違う印象の色で」と思われる気持ちもわかりますが、コーディネイトが難しいパンツは、結局タンスの肥やしになりがち。私たちファッションのプロにとっても、グレーのパンツはヘビーローテーションアイテムのひとつです。ただし、グレーのパンツは、サイズが合わないと老けた中学生みたいな印象になってしまうので、くれぐれも慎重な試着を心がけてくださいね。
春夏の足元を飾る靴として、自信をもっておすすめするのが、『パラブーツ』のデッキシューズです。このデッキシューズには「バース」という名前がついていて、その品質はフランス海軍の潜水艦部隊に正式採用されていることからもお墨付き。特徴は、高品質なレザー、グリップのよさ、履き心地、脱着のしやすさなどで、どれをとっても一級品です。さらにもうひとつ、特におすすめする理由は、デッキシューズは水に滅法強いということ。なにしろ甲板で履くために作られた靴なのですから当たり前の話ですが、梅雨というやっかいな季節がある日本で履くのに、この利点を見逃す手はありません。私自身も、雨が降りそうな日は、だいたい『パラブーツ』のデッキシューズを選んでいます。濡れた甲板でも滑りにくいよう開発された独特の吸盤形のソールは非常に安定感が高いですし、水が入らない。梅雨の時期に限っていえば、『クラークス』より便利です。水に強く、劣化しにくい独特な素材「ボイルレザー」を使用しているため、手入れも非常にラク。素足で履けるよう作られているのでクッション性も優秀です。とはいえ、素足に革靴が苦手な人も多いようですから、そういう方は靴下を履いていただいても結構です。カジュアルなコーディネイトでしたら、靴から見えない靴下を選んだほうがよいでしょう。私自身はもっぱら素足で履いて、シーズン中に何回か、中性洗剤でザブザブと水洗いしています。今回、どうして「ローファーよりもデッキシューズなのか」と疑問を持つ方もおられると思いますが、理由はベーシックアイテムでありながら、本格的な〝ミリタリースペック〟が味わえるから。しかも、ローファーより軽くて履きやすい。紺×白×赤といったマリンカラーも人気ですが、〈万能アイテム〉として選ぶのであれば、単色の紺や茶、黒が便利でしょう。ソールの色にも注目してください。アッパーと馴染みのよい色のソールと、白のソールから選べます。紺や茶の靴に白のソールはかなり目立ちますが、その分、カジュアル感は高まります。茶に茶のソール、あるいは黒に黒のソールならば、普通のローファーと同じ感覚で合わせられます。この辺りは、クールビズにも活用するか、あるいは休日の靴と割り切るかで、選んでいただくとよいでしょう。
秋冬の〈万能アイテム〉としておすすめするものの筆頭は、やはりネイビーのジャケットです。オフィスで着ることを前提としないジャケット選びならば話は別ですが、通勤にも活用したいと考えるならば、1着目にはネイビーの無地が外せません。冬物は夏物に比べ価格が上がるので、より長く着られるものを選びたいですよね。目安は「5年」と考えていますが、この耐久性を満たすためには、イギリス製もしくは国産の〝経・緯双糸〟の生地を選ぶのがベストです。〝経・緯双糸〟とは、経糸にも緯糸にも、撚りの強い糸を使用した生地のことです。春夏編でご紹介した強撚ウールも、この〝経・緯双糸〟の一種。夏向きに、より撚りを強くした糸が使われています。〝経・緯双糸〟の利点は、耐久性とハリに優れていること。光沢感はあまりなく、着た印象もカチッとした感じです。温暖化の影響か、東京では以前よりも冬の寒さが穏やかになっています。北海道などの寒冷地は暖房が利いているので、逆に室内で厚着をする人は少ないようです。戸外で寒ければ、コートを着ればいいのですから。これらの点を踏まえると、「秋冬のジャケットはスリーシーズン対応のものを」と考えるのが、もっとも現実に即しているのではないでしょうか。つまり、盛夏以外の秋・冬・春に着られる素材です。この観点から、起毛素材ではない、梳毛と呼ばれるちょっと薄手の生地を選ぶのが正解です。さらにパターンオーダーを利用すれば、裏地を背抜き仕様にすることもできます。私が〝スリーシーズン対応のジャケット〟をおすすめするのには、実はもうふたつ、理由があります。ひとつは、この後で紹介する『ハリスツイード』のジャケットを揃えてほしいから。ふたつめは、寒暖はベストでも調整できるからです。むしろ、あまり厚い生地を買ってしまうと、着る時期が短くなってしまうため不経済です。ここでは、〝ネイビーのジャケット〟と書いていますが、お好み次第ではブレザーでも結構です。実はブレザーとジャケットの違いは、ボタンがメタルか否かだけ。ですから、ブレザーとして長く着て、「飽きたな」と感じたら、メタルボタンを普通の替えボタンにすれば、ジャケットになります。もちろん、反対もアリです。
ご存じの方も多いかもしれませんが、『ハリスツイード』は2011年秋冬シーズンに大ブームとなった素材です。非常に保温性が高いうえに丈夫で、かなりのヘビーユースをしても、10年は着られます。デニムやチノパンはもちろん、コーデュロイやスエードなど、起毛素材のパンツとの相性も抜群ですから、休日用のジャケットとして、大活躍してくれるはずです。そもそも『ハリスツイード』とは、スコットランド北西部の島、ハリス・アンド・ルイス島の島民たちが自分の家の機械で織った生地を指します。ハリスツイード協会という団体を通して、認定されたものだけが、『ハリスツイード』ブランドを名乗ることが許されているのです。イメージとしては、「魚沼産コシヒカリ」といったブランド米のシステムに近いですが、こちらにはさらにもっと厳密な取り決めがあります。市場に〝ハリスツイード風〟の生地が多く出回ると思いますが、絶対に正式認可された『ハリスツイード』を買ってください。『ハリスツイード』と記されたラベルが見返しなどに縫いつけてあります。協会が創設100周年を迎えても変わらない独特の風合いに漂う魅力は、やはり本物ならでは。ファッションの経験値を上げる意味でも、皆さんには〝本物〟に触れていただきたいのです。織り柄の種類はたくさんありますが、1着目に選ぶのであれば、グレーのヘリンボーン柄をおすすめします。これは「キング・オブ・ハリスツイード」と呼ばれ、『ハリスツイード』を代表する柄であり、世界的にも一番売れている生地です。『ハリスツイード』を使ったジャケットは、主に日本製と中国製が数多く出回っています。基本のデザインは、2つボタンか3つボタン段返り。着丈が短かったり、ラペルの幅が狭かったりと、デザインもののジャケットも中には多少ありますが、『ハリスツイード』自体、先ほども申し上げたとおり、10年は着られる丈夫な素材です。しかも、あくまで〈万能ジャケット〉としておすすめするアイテムなので、ベーシックなデザインを選んでください。具体的には、ラペルの幅は約8・5cmが基準。ポケットは、スーツのジャケットに見られるような、フラップポケット(※注)や、ポケットの生地を上からはったようなパッチポケットがありますが、こちらは好みで選ばれていいでしょう。カジュアルな印象なのは、パッチポケットのほうです。私もかなり長い間、愛用していますが、店頭で着る機会が多いので、あえて〝背抜き〟と呼ばれる、背中の部分に裏地を付けない仕立てを選んでいます。そのくらい、暖かいのです。総裏でしたら、人によってはコートも必要ないくらいですから、暑がりな人ならば〝背抜き〟がおすすめです。※注フラップポケット=ポケット口に同じ生地で作ったふた付きのポケットのこと。
ステンカラーコートは、オールシーズン着られるコートです。売り場に並ぶのは、春と秋の年2回なのですが、実はお得な買い方のコツがあります。冬物が出揃う10月から11月にライナー付きのタイプを購入し、春先はそれをはずして着用するのです。ライナーが付いていること以外は、春物も冬物も、大きな違いはありません。本来なら売る立場の人間として、春物、冬物の両方を買っていただきたいのですが、ここでお話しするのは〈万能アイテム〉。ビジネスからカジュアルまで対応し、さらに真夏以外は着られるコートとなると、やはり結論としては、〝秋から売られるライナー付きのステンカラーコート〟ということになります。購入する際に気をつけていただきたいのは、着丈です。スーツに合わせる場合、適正な着丈は85~100cmとされています。この着丈というのは、襟の付け根から裾までの長さですが、身長にも左右されるので、わかりにくいですね。そこで、わかりやすい目安として「ステンカラーコートの長さは、下に着るジャケットの丈プラス10cmから、長くても膝丈まで」と覚えておいてください。この丈ですとパッと見た印象が、軽やかでスポーティ。なぜ丈にこだわるのかといえば、〈万能コート〉だけに、スーツにも休日着にも合わせて着ていただきたいからです。スーツだけならば少々長めでもいいのですが、ジーンズなどに合わせるとなると、気持ち短めのほうが洒落ています。そして、セットインスリーブのものを選んでください。セットインスリーブとは、ジャケットのような袖のことです。一般によく見かけるのは、襟ぐりから袖下にかけて斜めに切り替えの入ったラグランスリーブです。ラグランスリーブは、中にスーツを着たときは動きやすくてよいのですが、難点は、少々野暮ったく見えること。ジャケットを着ないで、シャツやニットの上にはおった場合、ジャケットと違って肩パッドが入っていないので、上半身が貧相に見えてしまうのです。ことになで肩の人にとっては致命的。その点、セットインスリーブのコートなら、肩のラインをある程度補整してくれるので、きれいに着こなせます。中にジャケットを着ても、もちろん大丈夫です。使いやすい色は少し濃いめのベージュ。チノパンにもよく似合います。通勤の満員電車などは結構暑いので、ウール素材のコートよりもむしろ、コットン素材のステンカラーコートが重宝します。
一般的に衣替えといえば、10月でしょうか。10月の気温と真冬の2月とでは随分温度差がありますから、パンツも厚手、薄手の2種類を用意できると理想的です。パンツを2種類用意するのには、もうひとつ、理由があります。それは、ジャケットの素材感との相性を考えて、パンツを合わせたいから。とはいえ、男性の中には、「夏物と冬物の区別もつかない」方が、案外大勢いらっしゃるようです。その方々に、いきなり素材感の話をしても難しいとは思いますが、素材感は経験で少しずつ身につくもの。そして素材感の違いを理解してコーディネイトできるようになると、印象が驚くほど垢抜けます。ですから、ここはちょっと我慢して、読んでみてください。専門用語で説明すると、素材感の違いは、梳毛と紡毛の違いです。梳毛は比較的長い繊維を主体とした糸で、繊度(糸の太さ)が均一でスラリとしています。撚りは強めで固く締まった薄手の生地になるため、スーツに使われることが多いですね。紡毛は短い繊維を紡いだもの。起毛したフランネルのような生地や起毛のないツイードは、いずれも紡毛の一種。こちらは厚手のものが多いですね。〝素材感を合わせる〟というのは、梳毛なら梳毛同士、紡毛なら紡毛同士を合わせたほうが、しっくり馴染むということです。ものすごく大雑把に言えば、厚手の上着には厚手のパンツ、薄手の上着には薄手のパンツが、好相性ということ。例えば、紡毛であるツイードには、同じ紡毛グループのフランネルのパンツを合わせるとしっくり収まります。あるいは、厚手のカシミアのジャケットにフランネルのパンツ、足元にはスエードのチャッカブーツを合わせると、表面感や光沢が似ているため、すごく垢抜けて見えるのです。反対に、「色目は合っているのに、なんかちょっと変だな~」と思うときは、たいてい、色ではなく、素材感の相性に原因がある場合が多いようです。ですから、冬のウールのパンツは、梳毛タイプの薄手パンツと、ツイードやフランネルなど、紡毛タイプの厚手パンツ、この2本を持っているのがベストです。色に関しては、最初はミディアムグレーを2本、あるいは薄手はミディアム、厚手はチャコールと、色を変えてもいいでしょう。最終的には、梳毛、紡毛、それぞれ2色のグレーを用意できれば、完璧です。
まず最初に、ハイゲージニットの定義について、お話ししましょう。〝ゲージ〟は1インチ、つまり2・54cmの中に、いくつ編み目が入っているかで決まります。現在の世界的基準でいうと、1インチの中に編み目が12、つまり12ゲージ以上のニットを、ハイゲージと呼んでいます。反対に、ローゲージというのは、1インチの中に編み目が5つ、5ゲージ以下のものを指します。ハイゲージでもローゲージでもないものは、ミドルゲージと呼ばれたりします。ですから、秋冬の〈万能アイテム〉としておすすめしている30ゲージのニットは、超ハイゲージ、つまり編み目がすごく細かなニットのことです。実感としてわかりにくいかと思いますが、30ゲージのニットは素肌に着ても、チクチクするような感じはほとんどありません。つまり、〝第二の皮膚〟のようなニットだというわけです。当然、超ハイゲージニットを作るためには、高い技術が要求されますので、30ゲージのニットを作っているメーカーは、ごく限られています。よく知られているブランドの代表は、英国の『ジョン・スメドレー』でしょう。超ハイゲージニットの魅力は、何といってもその滑らかな肌触りですが、コーディネイトにおいても、特筆すべきメリットがあります。例えば、普段はビジネスで使用しているジャケットを休日に着たいとき。超ハイゲージニットならば、インナーに着ても、もたついた感じになりません。ジャケットにタートルネックは、誰にでも似合う組み合わせですし、女性からの好感度も高いようです。タートルネックをカーディガンとのセットアップで持っていれば、さらに着こなしの幅は広がります。コーディネイト要らずなのも、嬉しいですね。個人的におすすめなのは、Vネックのカーディガン。シャツの上に重ねれば、ジャケットなしでもサマになりますし、ウォームビズ対策として、タイドアップ(ネクタイスタイル)したスーツの下にも重ねられます。グレー系のスーツにグレーのカーディガンを着れば、スリーピース風の着こなしに。ただし、タイトなシルエットを選ぶことが絶対条件です。ジャケットのインナーにすることを考慮すると、身ごろだけでなく袖もぴったりと細めのものを選んでください。
ここ数年、英国の『バブアー』やアメリカの『ウールリッチ』を筆頭に、アウトドアテイストのコートがブームでしたが、流れは再び、ダッフルやチェスターフィールドコート(※注)など、ベーシックなコートに戻りつつあります。皆さんお馴染みのピーコートは、もともとイギリス海軍で艦上用のユニフォームとして着用されていたミリタリーコートです。日本では学生が着るコートとして、一世を風靡したことを覚えておられる方も多いでしょう。でも最近は、大人の男性にこそ着こなしていただきたいコートとして、注目を集めるアイテムのひとつです。とはいえ、「まだ持っているはず」と、かつてのピーコートを持ち出すのはNGです。素材やディティール、何よりもサイズ感が、以前流行したものとは大きく様変わりしているからです。海軍のユニフォームとして重宝された原型のピーコートは、防水・防寒性に優れた厚手でゴワゴワとした生地が特徴でした。重さもかなりのものでしたが、「休日用のコートは軽いものがいい」との要望を受け、各メーカーが発表しているのは、柔らかなフランネルやカシミアなどの高級素材を使ったもの。これにより、見た目がかなりエレガントな雰囲気になっています。シルエットは体にフィットしたコンパクトなつくりが基本で、他のコートと比べて着丈はかなり短めです。しっかりとした肩のラインと大きな襟は健在ですので、欧米人と比べ体型で見劣りしがちな日本人にも、着こなしやすいコートといえるでしょう。サイズ次第でジャケットの上にも着られますが、本来、スーツに合わせるにはカジュアルすぎるアイテムです。フィット感が魅力なのですから、休日用と割り切って、適正サイズを選んでください。インナーを選ばず、ニットやシャツの上にはおるだけで、サマになることも大きな利点。次の写真のコーディネイト、白シャツの上にはおっただけの、テクニック要らずのスタイルです。厚手の素材がマフラーやグローブと好相性ですので、小物で個性を表現できたら満点ですね。この冬は、各メーカーがこぞって発表しているため、バリエーションはかなり豊富。5年後を見据え、「今こそ買うべき」コートです。※注チェスターフィールドコート=テーラードジャケットの裾を長くしたようなデザインのコート。フォーマル用が簡略化されて広まった。(第4章のメソッド35参照)
もしかしたら、〝シャンブレー〟という言葉自体、ご存じない方がいらっしゃるかもしれません。シャンブレーとは、経糸に色糸、緯糸に白を使用した薄手の平織物。霜降りのような独特の風合いを持ちます。ブルーのシャンブレーが一般的です。
このシャンブレーを使ったシャツが、セレクトショップでは数年前から売り上げを伸ばし、最近ではファッション誌でも頻繁に取り上げられて、トレンドのひとつとなっています。若い世代の間では、デニムやダンガリーに代わるシャツとして、カジュアルに着られることの多い生地ですが、大人世代はあえてドレス仕立てにこだわることで、ドレッシィな雰囲気と独特のカジュアル感を兼ね備えた、ちょっと新しい感覚のシャツとして活用してはいかがでしょうか。ドレス仕立てですから、当然、台襟も付いていますし、セミワイドカラーなど、ネクタイをするのにふさわしいつくりとなっています。プレスして、スーツにタイドアップで着れば、独特のカジュアル感が演出できますし、休日はプレスはせずにニットの下などに着ていただくと、ちょっとエレガントな雰囲気に。ドレスシャツによく使われるブロードや、ボタンダウンシャツに使用されるオックスフォードなどとは、ひと味違ったおしゃれが楽しめます。一年を通して〈万能アイテム〉として活躍するうえ、夏はかなり涼しく着られます。ビズポロの白やネイビー、ボタンダウンシャツなど、基本のアイテムを揃えて、「着こなしに変化をつけたいな」と思ったときに、スパイス的に使っていただきたいシャツです。少しずつ色が落ちていく過程で、独特の霜降り感に何ともいえない味が出てくるのも、このシャツの魅力。一見、ベーシックなアイテムでありながら、「何か、他のシャツとは違うぞ」と周囲に思わせる、技ありアイテムとして取り入れてみてはいかがでしょうか。サファリジャケットとは、もともとアフリカでの狩猟や探検旅行、つまりサファリに出かける目的のために考案されたジャケットです。1970年代には、イヴ・サンローランによって、爆発的な人気アイテムとなりました。そのサファリジャケットが、今、再び注目を集めています。とはいえ、身ごろに配された大きな4つのフラップポケットなど、その特徴的なディテールは残しながらも、柔らかなコットン素材や体に沿う細身のシルエットなど、かなりの進化を遂げています。この過程は、ワークテイストが強かったカーゴパンツが、素材やディティール、仕立てが変化することで、〝ドレスカーゴ〟として生まれ変わっていった進化とよく似ています。ですから、私がおすすめするサファリジャケットも、いわば〝サファリ風〟。サファリの雰囲気を残したジャケットと思っていただければよいと思います。中には、テーラードジャケットにフラップポケットが4つ付いただけといった、デザインも。ただ、本来のサファリジャケットとしての特徴がかなり薄まったとはいえ、その機能性の一部は健在です。よく、「テーラードジャケットのポケットには物を入れないのがおしゃれ」と言われますが、そこに不便を感じている男性は多いのではないでしょうか。ジャケットに〝堂々と使えるポケット〟が付いていると、機能的だし便利ですよ。旅行の際も、小さな鞄など持たなくても、パスポートやボーディングパスなど、全部ポケットに入れられますから。ホテルに到着した際にも、カジュアルとはいえ、一応ジャケットを着ているので、臆することなく振る舞えます。実は70年代に流行したのも、この機能性が評価されてのこと。しかも、デザイン的には〝サファリ〟という非日常的な空気感も漂っていて、着るだけで旅行気分というか、ある種のバカンス気分、非日常が表現できるところが、大きな魅力です。日本では今まで、「サファリジャケットといえば中高年のもの」というイメージが強かったのですが、今回の人気再燃によって、若い世代にまで支持が広がっていくと思われます。テーラードほど堅苦しくなく、ブルゾンほどカジュアルでもない、新しいタイプのジャケットとして、注目のアイテムです。
まず、認識していただきたいのは、〝チェック〟という柄自体、ストライプやドットなどと比べ、ずっとカジュアルな柄であるということです。ビジネスに使われるスーツやネクタイに、チェックよりもストライプが多用されているのは、このためです。裏を返せば、無地のジャケットをチェック柄にするだけで、簡単に休日のリラックス感が表現できる、便利な柄でもあります。ただし、第1章でもお話ししたとおり、チェックは意外に難しい柄でもあります。柄の大きさや色の組み合わせ次第で、モダンにも、古臭くも見えてしまうからです。とはいえ、チェック柄を好む男性が多いのも事実。そこで、この項ではチェックのジャケット選びのコツについて、お話ししましょう。まずはベースカラーを決めましょう。ベースカラーは、今まで〈万能アイテム〉としてご紹介してきたものと相性のよい、ネイビー、グレー、ベージュの3色から選んでください。問題は、これをベースに、どんな色合いを加えるか。例えばネイビーベースの場合、ミックスされているのは、グレーや白、サックスが多いですね。それから意外にマッチするのが茶色。グレーがベースでも、ネイビー、白、同じくサックス、茶が合います。ベージュがベースの場合は、濃淡をつけるための茶、サックス、ピンクなど。他にはボルドーといったところが、好相性。以上の組み合わせであれば、どなたでも比較的、コーディネイトしやすいと思います。
さて、気に入ったジャケットが見つかったら、「これをどう着るか」を考えてみてください。せっかく買っても着こなせなかったら、無駄になってしまいますから。具体的にはインナーとの組み合わせですね。〝頭の中で、目の前のジャケットと手持ちの服を組み合わせる〟のが難しい場合、一番失敗の少ない方法は、ジャケットを買う際に1点でもよいからインナーも一緒に購入することです。この際、販売員にアドバイスを求めてもよいでしょう。例えばタートルネックのニットを1枚、買い足すとか、シャツを1枚買い足すといった具合です。理想的なのは、フォーマル度の高いアイテムとカジュアル度の高いアイテムをそれぞれ1点、買い足すこと。ベースカラーにミックスされている色のアイテムをインナーに合わせると洗練された着こなしに。家に帰ってみたらうまく合うインナーが見つからず、着る機会を失ってしまうことを考えたら、ずっと効率的だし経済的。なにより、自信を持って着こなせますよ。ここ数年、英国調がトレンドとなっている流れから、ローゲージニットのカーディガンが人気です。ローゲージニットとは、メソッド27でも少しお話ししましたが、ごく大雑把に言えば、太めの糸でざっくり編まれたニットのことです。アイテム自体は昔からあるベーシックなものですが、着るだけで〝旬〟を感じさせてくれる便利なアイテムとなっています。
私がニットカーディガンをおすすめする理由はもうひとつあります。それは〝休日のタイドアップを容易にするアイテム〟だからです。皆さんは、ネクタイのコーディネイトと聞くと、無意識に「ジャケットを着なければ」と、思い込んでいませんか?そんなことはありません。例えば、ビズポロにミディアムグレーのパンツを合わせ、ネクタイを締めます。ここまではビジネスシーンに多いコーディネイトですね?通常ならば、上にジャケットをはおるのですが、それをローゲージニットカーディガンにチェンジするのです。たったこれだけで、フォーマル感を残しながら、品のよい休日スタイルができあがります。応用編としては、パンツをチノパンに、あるいはジーンズに替えても大丈夫です。当然のことながら、カジュアル度はアップします。さらにステップアップした応用編としては、ツイードやフランネルなど、紡毛素材のパンツとの相性も抜群。カントリー調の雰囲気が強調されることにより、英国紳士風の着こなしとなります。パートナーとのちょっとした外出や、友人宅でのホームパーティなどにぴったりです。しかも女性からの好感度の高さはピカイチ。ローゲージニットのカーディガンにも、デザインバリエーションはありますが、おすすめはショールカラーのもの。ショールカラーとは、タキシードに多く使われる、へちま状で曲線的なデザインの襟を指します。この襟の利点は、襟元にボリューム感と表情が加わるため、ストールなどの小細工を加えなくても、それだけでサマになること。そして、ショールカラーの襟を立て、裏側についたループを留めることによって、肌寒いときなどに、簡単に温度調整が可能なところです。なにより雰囲気が上品でエレガント。色はネイビー、グレーが使いやすいと思います。茶は、着こなし次第で老けた印象になりますので、注意が必要です。ローゲージのニットとはいえ、体にフィットしたサイズ感が、おしゃれに見せる決め手です。くれぐれも、試着の手を抜かないようにしてください。
第3章では、各アイテムに焦点を当て、説明しました。いかがでしたか?たぶん、「想像していたよりもずっと身近で、着慣れたアイテムばかりなので安心した」のではないでしょうか。第1章でもお話ししましたが、ファッションに詳しい人、センスがよいと言われている人ほど、実際にヘビーユースしているアイテムは、ベーシックなものが多いのです。一方で、「ファッション好きでトレンドに敏感」な人が好感度の高い着こなしをしている例は、百貨店の現場で見聞きしてきた経験からも、あまり多くないように思います。非常に乱暴な表現であることを承知のうえで、あえて断言しましょう。「夏はTシャツと半袖シャツから決別し、上質な白の長袖シャツを着続けるだけ」「冬はネイビーのジャケット、もしくは『ハリスツイード』のジャケットを着続けるだけ」これら、たったふたつを守っていただくだけでも、あなたの着こなしのセンス、少なくとも周囲からの評価は、急上昇するはずです。用途が明確でなく、しかも着こなしにセンスが要求されるアイテムを複数購入するくらいならば、その予算すべてを白いシャツとジャケットに充てるほうがずっと賢明な選択です。繰り返しますが、その前提として〝適正サイズのものを、慎重な試着のうえで〟購入することが必須条件です。〝ジャケットと白シャツだけ〟に的を絞ったコーディネイトは、テクニックが必要ない分、アイテム自体のパワーを借りて着こなすスタイルとも言えるからです。しかし、それがファッション初級者が最初に歩むべき、王道でもあるのです。まずは2年かけて〈万能アイテム〉を揃え、着続けてみてください。5年後も、決して古びて見えない精鋭揃いであることは保証いたします。ボトムスはシーズンを通して〝ウールのパンツ>ドレスチノ>ジーンズ〟の順番で、カジュアルになっていきます。簡単でしょう?この基本さえ押さえれば、どんなシーンにもふさわしい装いができるはずです。「男性のファッションは白シャツにはじまり、白シャツに終わる」と言っても過言ではありません。その証拠に、ファッションのプロは、「これ!」と決めた自分の定番である白シャツなら、同じものを何枚も持っているものです。そして傷んできたら、さらにリピートします。いろいろなアイテムに手を出さず、「白のドレスシャツの、着こなしバリエーションを増やす」ことにお金と知恵を注ぐのは、ファッション偏差値を効率的に上げる賢い方法です。私はビジネスマンを対象とした講演会で話をする機会も多いのですが、その場でときどき、尋ねられることがあります。それは「宮崎さんの腕まくり、格好いいですね。どうロールアップしているのですか?」という質問です。意外に思われるかもしれませんが、本当です。当然のことながら、講演会のはじめはネクタイをしてジャケットも着ているのですが、後半になると、ひと言お断りしてシャツ姿になることがあるのです。腕まくりの仕方など、こんな細かなところまで、同性同士、意外に〝見られている〟ことを再認識すると同時に、白いシャツが持つ魅力やパワーを実感します。確かに白いシャツ一枚であっても、TPOや気分に応じて、きちんとプレスして着る、あえてちょっとシワを残して着る、襟を内側にロールして着る、あるいは袖をまくり上げてみる……。合わせるパンツ次第でも、表情は無限に変化します。皆さんがよくご存じの『ラルフローレン』も、ほんのちょっとした着こなしのコツで、コーディネイトを格好よく見せるのが得意なブランドです。「なんか、こなれた着こなしだな」と感じたら、雑誌広告やショップのディスプレイでも結構です、注意深く観察してみてください。シャツの襟を片方だけ跳ね上げる、腕まくりをする、胸元のボタンを絶妙に開けてみる……私たちも簡単に真似ができる、着こなしのヒントが見つかることでしょう。センスよく見せるためには、こんな小さな発見の積み重ねが大切です。ぜひ、白シャツのおしゃれを極めてください。
あえて〝苦手〟と表現させていただきましたが、どうも多くの男性は、〝ベーシック〟で〝シンプルな〟スタイルをすることに、抵抗があるようです。私自身を例に挙げれば、「休日のリラックス感を表現するなら、白のドレスシャツをノーアイロン・ノータイで着て、腕まくりでもすれば充分」と考えるのですが、多くの人は「せっかくだから、もっとわかりやすく、チェックのシャツでも着ようか」とか、「せっかくだから、デニムシャツでも」と思われるようなのです。でも、アイテムの数を増やすことは、必ずしもセンスアップには繫がりません。むしろ、大人の男性が着慣れないカジュアルアイテムに手を出すと、〝若作り〟に見えるなど、失敗の確率が高まります。もしも「おしゃれに見せたい」と思うのでしたら、策を弄さず、〝ベーシックでシンプルな〟着こなしに徹してみてください。流行の要素など、なくてもいっこうに構いません。グレーのウールパンツにセミワイドカラーの白いシャツ、そしてネイビーのジャケットか、あるいはステンカラーコートでもピーコートでもいいのです。こんなシンプルな着こなしが、実は一番、「洗練されて見える」もの。結果的には、「大人ならではの品のよい着こなし」や、「女性からの支持率が高い」着こなしに通じるのです。そして、何度でも繰り返しますが、その大前提となるのが、〝適正なサイズ感〟です。どんなに高価な服であろうと、どれほど、美しいシルエットの服であろうと、正しいサイズを選ばなければ、その服のよさは、まったく生かされません。言い方を換えれば、「服を購入した時点で、その装いが成功か失敗か、9割は決定」しています。次のコーディネイトはその好例です。チェスターフィールドコートに白のタートル、そしてボトムスはミディアムグレーのパンツです。これらのアイテムに抵抗のある男性、あるいはコーディネイトの仕方がわからない男性など、いないのでは?でもサイズ感さえ正しければ、「おしゃれだな」と思わせるには充分です。
大人のおしゃれはシンプルな着こなしが、年齢相応の落ち着きや信頼感に通じます。改めて、この真実を胸に刻んでいただきたいですね。ここでは〈万能アイテム〉をより効率的に、稼働率を高めるためのコーディネイトについて、お話ししましょう。次の写真をご覧ください。今まで繰り返し、その重要性をご説明してきた、ネイビーのジャケットにワンウォッシュデニムを合わせただけのコーディネイトです。〝オン=ビジネス〟のアイテムと、〝オフ=休日〟のアイテムがミックスされているのがわかります。
例えば、あなたが「今日はジーンズを履きたい」という気分の日。色落ちジーンズに半袖ポロ、スニーカーを合わせたのでは、学生と変わりません。ではどうすればいいかというと、ボトムスがジーンズというカジュアルアイテムなので、トップスには、きちんとプレスされたセミワイドカラーのドレスシャツを合わせ、ジャケットを着るのです。ネクタイを結ぶと、さらにフォーマル感は高まります。このように、カジュアルアイテムとビジネスアイテムを、対比させながらミックスしていくと、非常に〝こなれた〟コーディネイトができあがります。あるいは、「今日は、ネクタイはしたくないな」と思ったとします。でもパートナーと外出する約束があるから、それなりにきちんと見える格好をしなければいけない。それなら、上半身は半袖のポロシャツにカーディガンでもよいので、その代わり、ボトムスにはきちんとプレスの利いたウールのパンツを合わせるのです。これだけで、印象はがらりと変わります。つまり、「大人の休日着には、必ず何か一点、ドレスアイテムを加える」ことが、基本のルールなのです。さらにここに、ちょっとこだわりを感じさせるベストや靴などの小物が加えられたら、完璧です。「ビジネスアイテムはビジネスアイテム同士、あるいはカジュアルアイテムはカジュアルアイテム同士で組み合わせるもの」という、先入観は捨ててください。ワードローブの「通勤用の引き出し」と「休日用の引き出し」にしまわれたアイテムは、自由に組み合わせてかまわないのです。コーディネイトが難しいと思われるかもしれませんが、大丈夫です。私がご推薦した〈万能アイテム〉リストに入っているもの同士なら、どれをどう合わせても、決しておかしなスタイルにはなりません。少々、値段が張る洋服であったとしても、稼働率さえ高ければ、それは「高い買い物」とは言いません。そして、休日も含めてドレスアイテムの稼働率を上げていくことが、「おしゃれな着こなし」に近づく近道です。正方形のスカーフは、あまり馴染みのないアイテムかもしれませんが、基本の折り方さえマスターすれば、扱いは非常に簡単です。慣れてきたら折り方を工夫して、見せたい柄がきれいに出るようにアレンジしてもいいでしょう。
色・柄選択のポイントは、やはり紺ベースが無難。ドット柄や小紋柄が、ジャケットやシャツを選ばず、便利です。ネイビーのジャケットに白いシャツ、グレーのパンツといったベーシックな装いも、スカーフをあしらっただけで、ぐっと華やかに。男性が個性を主張できる、数少ないアクセサリーのひとつでもあります。ファッション性のみならず、防寒や首のシワを隠す意味でも、気軽に活用していただきたいですね。
前著『成功する男のファッションの秘訣60』を出版した際、「今まで、知りませんでした」という意外な感想をいただいたのが、ポケットチーフに関する記述でした。皆さん、「ポケットチーフはフォーマルな小道具だから、スーツにするもの」と思われていたようなのです。確かにフォーマルな装いには必要不可欠ですが、ポケットチーフ自体は「胸ポケットのあるジャケットであれば、どんなジャケットにも挿してよい」ものです。というよりも、「胸ポケットがあるジャケットには、フォーマルであろうがカジュアルであろうが関係なく、ポケットチーフは入れるべき」と認識していただいたほうが正確です。ほとんどの日本人には、あまり馴染みがないアイテムでもありますが。私がポケットチーフの重要性をことさら強調するのには理由があります。チーフ自体は、わずか数千円程度、面積的にもごく小さなアイテムですが、これ一枚でネクタイ1本、いいえ、ジャケットを着替えたほどの、〝着映え〟効果があるからです。実際、旅行や出張など、着替えを数多く持っていけないときには、ポケットチーフの存在は格別重要です。ジャケットの印象をがらりと変えるほどの存在感があるにもかかわらず、かさばらないため、何枚でも用意できます。お客様の中には、「着席の際は相手に上半身しか見えないので、より効果的に使える」とおっしゃる方も。とはいえ、柄物のポケットチーフでジャケットにさまざまな表情を与えるのは、上級テクニック。あまり慣れていない方が1枚購入するのなら、ぜひ、〝麻の白〟を選んでください。「シルクじゃないの?」と思われる方もいるでしょうね。白のポケットチーフは、季節を問わずシルクよりも麻を挿すのが正統なスタイルなのです。麻のポケットチーフは4000円位で上質なものが買えますから、ネクタイ1本買う分を、チーフ2枚に投資していただけたらと思います。麻のチーフは家で簡単に洗えますし、丈夫で長持ち。清潔感のある〝真っ白〟をキープするためにも、洗い替えを考えて2枚以上持っていただくと便利です。この本を読んでくださっているのが女性の方であれば、パートナーへのプレゼントとして選んでみてはいかがでしょう。ネクタイをプレゼントする女性は多いのですが、ネクタイは意外に好みがはっきりしているのに比べ、麻の白ならまさに万能です。気の利いた贈り物として喜ばれること、請け合いです。
よりリラックスした休日スタイルとして私がおすすめするのは、2種類のカーディガンを使ったコーディネイトです。次をご覧になればおわかりいただけると思うのですが、どちらも〈万能アイテム〉だけを組み合わせたもので、コーディネイトはごくごくシンプル。それだけに、フィット感と着丈がすべてです。みなさんがイメージされているカーディガンと比べると、かなりタイトで、しかも短めかと思います。
ごまかしのきかない着こなしですから、「シルエットは絶対にジャストサイズのものを選ぶ」ことが原則。間違っても、〝タンスの肥やしになっていたカーディガン〟を引っ張り出して着るのは、おやめください。初級者でもトライしやすい色はネイビーかグレー。無難で、しかも洗練されて見えます。少し冒険したいのなら、パープルも素敵です。ベーシックなアイテムですので、多少色で遊んでも下品にはなりません。パターンオーダーとは、店頭で扱っている既製服をベースに、自分のサイズに合わせたものをオーダーできるシステムです。例えばジャケットでお直しできるのは、ウエストのシェイプと袖の長さです。反対にお直しできないのは、肩幅と着丈。肩幅は無理としても、「着丈は直せるのでは?」と思われるかもしれませんが、ジャケットのポケットやボタンの位置をずらすことができないため、たとえ1~2cmでも着丈を直すと全体のバランスが崩れてしまいます。スーツの場合、ジャケットは丁度よくてもパンツが極端に合わなかったら、そのスーツは諦めざるを得ません。こうしたケースで有効なのが、パターンオーダーです。ベースとなるシルエットやデザインは、あくまでそのブランドの意図を踏襲しながら、サイズだけを自分仕様に修正するのです。エルメネジルドゼニアやラルフローレンなど、多くのブランドがパターンオーダーを扱っています。
サイズ修整の他にも、裏地が背抜きになっている夏のジャケットを総裏にしてしまう、反対に総裏の冬のジャケットを背抜きにしてしまうといったことも可能です。こうすることで、夏物は真冬以外、冬物なら真夏以外のスリーシーズン着られるジャケットとして活用できます。喪服などの礼服はあえて背抜きにしておくことで、年間通して着用できるようになります。冬場はコートを着ればいいのですから。一部のブランドでは、スーツと共布のベストをオーダーし、スリーピースにすることも可能。さらにパンツを1本追加し、単品コーディネイト用にシフト。ベスト、パンツを単品で購入するのと比べたら、かなりの割安価格なうえに、自由度が高いと思いませんか?周囲とはひと味違ったおしゃれが楽しめますし、何より単品買いよりも絶対にお得。これからは、気に入ったジャケットやスーツを見つけたら、「パターンオーダーは可能ですか?」と尋ねることを、習慣にしてはいかがでしょうか。
おわりにバイヤーという職業柄、毎日数えきれないくらいの服に囲まれて生活しています。毎シーズン、何点かは新しく購入する服もあるため、自宅のワードローブは常に超過密状態です。そんな私が、本当に必要なアイテムを再認識する瞬間は、海外出張に必要な服や靴をスーツケースに詰めるとき。オックスフォードのボタンダウンシャツ、ドレスチノ、グレーのウールパンツ、デニム、ハイゲージニット、シルクのスカーフ、デザートブーツにスエードのチャッカブーツ。毎回、毎回、何を持っていこうかさんざん悩んだ末に、お馴染みの「万能アイテム」がスーツケースの定位置に納まっていきます。結局、これだけのアイテムさえあれば充分なんだ、いつもそう思うのです。どれも今日まで10年以上(中には30年以上のアイテムもいくつか)リピートして買い続けているものばかりです。繰り返し何度も何度も修理して自分の足の一部となった靴など、多分、これからも自分が生きている間は、ずっとリピートし愛用し続けるアイテムでしょう。どれだけたくさんの服や靴、小物を持っていようが、一年間の3分の1はこのスーツケース一つ分の出張ワードローブで過ごしているという事実。つまりこれが「万能アイテム」なのです。たくさんの服を持つことが大事なのではなく、むしろ持っている服を「どう使いこなすか」「どう着こなすか」が大切なのだとあらためて実感しています。まずはこの本で紹介する「万能アイテム」が揃ったら、それを自由に着こなして自分のスタイリングのベースを体で覚えるようにしてください。基本的に5年は着られるものばかりなので、きちんと手入れをしながら繰り返し着込んでいただきたい。着込んで自分の体に馴染んでくると、愛着が湧いてきます。でもそれだけではありません。体に馴染んで出てくる自然な服の風合いが、あなたをよりこなれたファッションの上級者に見せてくれるのです。この本を通して、休日ファッションで悩む多くの男性に、ベーシックでシンプルなコーディネイトが持つ「好感度アップの力」を少しでも伝えられれば幸いです。最後に、前作に続き、この本を書くチャンスを与えてくれた編集者の角田多佳子さん、ライターの河西真紀さん、弊社広報の矢吹直子さん、多忙な中のスケジュール調整、適切なアドバイス、心から感謝いたします。
著者:宮崎俊一(みやざき・しゅんいち)1965年北海道生まれ。1989年株式会社松屋入社。96年より紳士服バイヤーとして活躍。独学でイタリア語を習得して生地の買い付けに出向き、国内の仕立て職人とともに作る「丸縫い既製スーツ」が人気を集め、イタリア製スーツを凌駕するその品質の高さはアパレル業界を驚愕させた。現在はIFIビジネス・スクール、青山学院大学、首都大学東京、東京経済大学においてファッションビジネスのカリキュラムで講師を務める。毎日新聞の連載、ファッションセミナーなど幅広く活動している。著書に『成功する男のファッションの秘訣60』(講談社)がある。松屋銀座東京都中央区銀座361電話0335671211(大代表)営業時間10:00~20:00無休http://matsuya.com/m_ginza/
9割の人が間違った買い物をしている成功している男の服選びの秘訣40二〇一三年二月一日発行宮崎俊一©ShunichiMiyazaki2013発行者鈴木哲発行所株式会社講談社東京都文京区音羽二‐一二‐二一〒1128001◎本電子書籍は、購入者個人の閲覧の目的のためにのみ、ファイルの閲覧が許諾されています。私的利用の範囲をこえる行為は著作権法上、禁じられています。01
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