生保会社のトップセールスレディのなかには、億単位の収入がある人がいるそうです。とはいえ、大半のセールスレディはその一〇〇分の一くらいしか稼げません。彼女たちの給与の大半は歩合ですから、給与の差はすなわち売上の差です。 わたしはこの話を聞いたときにたいへん不思議に思いました。同じ会社の看板を背負い、同じ商品を扱って、同じ時間が与えられて、どうして売上が一〇〇倍も違ってくるのだろうと。 あるとき、某生保のトップセールスレディと話す機会があって、その秘密を知りました。その人は、「ほかの人から買うより自分から買ったほうがお客さまが得をする」と心の底から信じていたのです。 そのとき、わたしは、彼女の営業活動はある意味「親切」なのだなと思いました。 多くのセールスレディがノルマを課せられ、「やらされている」と考えて働いているのに、彼女やほかのトップセールスは、商品と自分の仕事に誇りを感じて働いている。だから、やる気もエネルギーも出るのです。 たしかに、「成果主義人事制度」は、ある程度は機能するでしょう。経営の現場にいてそう感じます。けれども、その運用次第ではマイナスに働くこともあるし、働く人が「命をかけて」とまで言ってくれることはまずありません。 評価やお金に命をかけることに反対はしませんけれども、そんな人がいたら逆に恐ろしいと思います。人が寝食を忘れて働くのは、 そこに、「誇り」や「信念」があるからだと思います。 もちろん、お金も大切ですが、それだけをインセンティブにしている職場は殺伐としています。わたしはお金を否定しているわけではありませんが、お金や評価はよい仕事をした結果なのです。やはり、誇りや信念が会社を強くするのだと思います。 田中耕一先生がノーベル賞を受賞したすぐあと、島津製作所の業績は急回復しました。戦略上のこともあるでしょうが、田中先生の受賞も大きかったと思います。同僚やその家族もノーベル賞受賞を大いに誇りに思い、これまで以上に仕事に励むこととなったのではないかと思うのです。家に帰って、子どもから「お父さんの会社ではノーベル賞をとった人がいるんだね」と言われたら、それを誇りに思い、自分もがんばってみようと思うに違いありません。 対照的に、あるとき、「社員は金とセックスで動く」と言い放った社長がいましたが、こんな会社で働く社員は不幸だし、誇りなどまったく持てないはずです(この社長の話を聞いたのはもう大分前なので、心配しなくとも、もう倒産していると思いますが)。
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