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6 運動系脳番地トレーニング

目次

最初に成長を始める脳番地 運動系脳番地

運動系脳番地の最大の特徴は、あらゆる脳番地の中で、最も早く成長を始めることでしょう。

人の成長過程では、まず運動系脳番地の枝ぶりが発達し、続いて前頭葉付近の思考系・感情系脳番地、次に脳の後方にある視覚系・聴覚系・記憶系の脳番地が伸びていきます。

また、運動系脳番地のトレーニングは、他の脳番地にもさまざまな影響を与えます。

スポーツでは、対戦相手やボールの動きを目で見なければならないので、視覚系脳番地を働かす必要があります。また、監督の指示を聞き、それをプレーに生かすには聴覚系脳番地が働きます。

スポーツに限らず、ピアノを弾くときにも運動系脳番地が使われますが、このときも、楽譜を見て鍵盤にふれ、出される音を耳で確かめながら演奏するので、複数の脳番地が使われます。

このように、運動系脳番地のトレーニングは他の脳番地との連動性を高めるうえでも非常に価値があります。あらゆる脳番地を総合的に伸ばしたいなら、まずは運動系脳番地のトレーニングから始めるといいでしょう。

運動系脳番地が発達しやすい職業としてスポーツ選手や芸術家などが挙げられます。

他にも農業や漁業に従事する人も運動系脳番地が発達していますし、意外なところでは裁縫が得意な人も。手先を器用に動かすには、運動系脳番地の働きが不可欠です。

ちなみに運動系脳番地のすぐ後ろには、人間の感受性や皮膚感覚を担う脳番地があります。

これは感情系脳番地とリンクしていますが、「今日は暖かくて気持ちいいから外を散歩してみようかな」と思うのは、皮膚感覚と感情が連動しているからです。

皮膚感覚を担う脳番地も、運動系脳番地と同様、幼少期から発達しており、他の脳番地の発達につながる基礎となっているのです。

34利き手と反対の手で歯みがきをする

生まれたばかりの赤ちゃんが体をバタつかせて大泣きできるのは、母親の胎内にいるときから、すでに体を動かす運動系脳番地の成長が始まっているからです。

しかし赤ちゃんは、同じ体を動かすにしても、ものを食べたりしゃべったりすることはできません。

これは歯が生えていないからや言葉を知らないからだけでなく、運動系脳番地の中の「口」や「舌」を動かす番地が未熟だからです。

このことから、運動系脳番地では、手、足、口、舌など体の各部分の動きをつかさどる番地が分かれていることがわかるでしょう。

手の器用さ、足腰の強さなどは、個別に鍛えていけば強化することができますが、その一方で、どうしても忘れられがちなのが口と舌の動き。

そこで、運動系脳番地のトレーニングとして「歯みがき」を取り入れてみたいと思います。脳番地的な視点から見ると、「歯みがき」は、手と口の番地を同時に使う、非常に効果的な「運動」なのです。

ただし、どうせなら普通にみがくのではなく、多少アレンジを加えたいところです。

まずは利き手とは別の手でみがいてみてください。(歯磨き)あなたが右利きなら左手、左利きなら右手を使うことで脳に新鮮な刺激が伝わります。

また、ブラッシングをするときには、歯ブラシをいつもと逆の方向に動かしてみたり、毛先をグラインド(回転)させたりするといいでしょう。

口の運動としては、「早口言葉」もおすすめです。

私は最近、楽曲付きの「脳番地体操・ HAPPY」というものを監修しましたが、この中でも「あいうえお」から始まる五十音や「なまむぎ・なまごめ・なまたまご」などの言葉を口の運動として取り入れました。

口の運動が終わったら、次は舌です。

子どもが「あっかんベー」をするように、舌を口の外に思いっきり出してみてください。舌を伸ばしきると喉の奥が緩むような感じになることがわかるでしょう。

この感覚が、舌を十分に使っている証拠なのです。

利き手以外での歯みがきや舌の出し入れは、普段使わない筋肉を使ったり、首から肩にかけての凝りをほぐしたりとさまざまな効用がありますから、毎日続けることをおすすめします。

35カラオケを「振り」つきで歌う

運動系脳番地のトレーニングにおいて大事なのは、楽しみながら体を動かすということです。

しかし、読者の中には体を動かすことが苦手で、「運動」「スポーツ」と聞くだけで尻込みしてしまうような人もいるでしょう。そういう人が運動系脳番地を鍛えようとすると、どうしても「やらなくちゃ」という焦りを感じてしまうようです。

しかし義務感にかられてトレーニングをしても、脳に良い刺激を与えることはできません。そこで運動が苦手な人に、楽しみながら脳番地を鍛える方法をご紹介しましょう。

それは「カラオケ」です。といっても、単に歌を歌うわけではありません。自分が歌うときに「振り」をつけながら歌ってみるのです。

かつて外来診療をしていたとき、私は患者さんたちの中に驚くほど肌が若い人たちがいることに気がつきました。

よく調べてみると、その人たちは、共通してダンスや日本舞踊など楽曲に合わせて体を動かすことを続けてきた人たちであることがわかったのです。

「振り」をつけるのが恥ずかしいという人は、他の人が歌っているときに、曲に合わせてジェスチャーをするのもいいでしょう。スポーツなどと違って体を激しく動かすわけではありませんが、これも立派な「運動」なのです。

また、このトレーニングは、音楽を注意して聴くことでおのずと脳番地の反応が聴覚系にシフトするという効果もあります。

ちなみに、アイドルなどの曲を聴きながら振りまねをするのと、自分が考えた振り付けで自然に体を動かすのとでは、脳番地の使われ方がそれぞれ異なります。

振りまねをする場合は、もともとオリジナルの「型」があり、それを忠実にまねるという要素が入ります。一方、体を自然に動かす場合は、自分の動きをつくり出すという点で、ある種の「独創性」が入ります。前者が「受動的な振り」なら、後者は「能動的な振り」だというわけです。

意味合いが違うとはいえ、運動系脳番地を鍛えるうえではいずれも効果的ですから、トレーニングとして積極的に取り入れてみてください。

36歌を歌いながら料理をつくる

トレーニング 35のように、あえてスポーツをしなくても、日常生活の中で運動系脳番地を鍛えることは十分可能です。たとえば「料理」。料理も五感をフルに使いますから、広い意味での「運動」です。

料理をすること自体が運動系脳番地のトレーニングになり得るのですが、ここでは、あえて歌を歌いながら料理をすることを提案しましょう。

なぜ、これが運動系脳番地のトレーニングになるのでしょうか。

運動系脳番地は体を動かす際にさまざまな指令を出していますが、歌いながら料理をすると、料理をする「手」と歌を歌う「口」を連動させるように指令を出すことになります。これは、とても高度な指令です。

一方で、運動系脳番地は、何か行動を起こす前に「どうやって体を動かすか」というプランを立てる働きもあり、私たちはそのプランを常にコントロールしながら行動しています。しかもこのプランは、瞬時に、かつ無意識のうちに立てられます。

朝、会社に行くときも、「どの道を歩くか」「どこから電車に乗るか」というプランが一瞬で立てられ、私たちはそのプランに基づいて動いています。

もし、こうしたプランが立てられないと、家を出ても右往左往することになってしまうでしょう。もちろん、これは料理の場合も例外ではありません。

運動系脳番地では、調理の最中も、次に何をすればいいのかが素早く計画されています。これに「歌を歌う」というアクションを付け加えることで、運動系脳番地に一定の負荷がかかるというわけです。

これをうまく応用すれば、体を動かしながら頭の中では別のことを考えることが容易になり、しかも普段以上にいいアイデアを生み出すことが可能になるのです。

37鉛筆を使って日記を書く

パソコンの普及によって、紙に文字を書く機会はめっきり少なくなりました。確かに、文字を速く大量に入力するには、パソコンのほうが圧倒的に有利でしょう。

しかし、脳への刺激という点では、パソコンは手書きには遠く及びません。

パソコンを使っているときは、脳をフル稼働しているようなイメージがありますが、実は手(指)の動きは限られており、運動系脳番地はわずかしか使っていません。

一方、鉛筆やペンを使って字を書くと、脳は手の動きを細かく指示しなければならず、広い範囲の脳番地を使います。

パソコンでは「読み」さえ知っていれば文字を入力できますが、実際に文字を書くときは、ひらがな・カタカナ・漢字・アルファベットなどをひと通り覚え、正確に書かなければいけません。

また、パソコンで書いた文章は、文字のサイズや書体が統一されて出力されますが、手書きの場合は、その時々の心理状態が文字の形に大きく反映されます。

焦って書けば文字が雑になりますし、リラックスして書けばきれいな文字が書けるでしょう。大事な書類であれば、文字が雑にならないよう、緊張感を保ちながら書こうとするのではないでしょうか。つまり、手で文字を書く際には、さまざまなことに配慮しなければならないのです。

このように、「書く」という行為は、脳番地の成長に良い効果を与えてくれます。この効果を体験するためにも、普段パソコンばかり使っているという人は、ノートに自筆で日記を書く習慣をつけるといいでしょう。

難しく考えて、内容のあるものを書こうとする必要はありません。

たとえば「今日は ○ ○から △ △まで歩いた」「今日はずっと家にいた」など、自分の 1日の行動を書くだけでもいいのです。とにかく、このトレーニングは「手で書く」ことが大事なのですから。

なお、筆記具は、ボールペンではなく、鉛筆や万年筆を使うことをおすすめします。鉛筆や万年筆は、書くときに先端を微調整しなければいけません。この微調整が、指先の脳番地トレーニングにはもってこいなのです。

38名画を模写する

文字を書くことと同様、絵を描くことも、手を動かす運動系脳番地の訓練になります。絵には、文字以上に多くの情報量があります。

細部まで描き込んだり色使いを変えたりすれば多彩な表現ができますし、できあがった作品を見れば、描いたときにどんな心境だったのかということも含めて、文字以上に多くの情報を読み取ることができます。

さらに、文字と絵では、「空間」のとらえ方が異なります。文字を書くときに、「どれだけのスペースに収めようか」と考える人は少ないでしょう。

一方、絵は、紙やキャンバスの大きさを見ながら、どれだけの範囲に描くかというバランスを意識しなければいけません。このように、空間を把握する力は運動系脳番地に連動して刺激されます。

しかし、絵を描くのは苦手だし、何を描いていいのかわからないという人もいるかもしれません。

そんな人は、名画を「模写」することから始めてみてください。ゴッホ、ピカソ、ルノワール、北斎……、名画と言われるものなら、どんなものでも構いません。あなたが好きな絵を 1枚選び、徹底的にまねしてみるのです。

「難しそう」という人は、マンガをまねてもいいでしょう。絵画に限らず、ものをつくる過程で何かをまねることは脳のいい訓練になります。

なぜなら、見よう見まねで同じものを再現しようとすることで、その作品をつくった人の脳番地の使い方を無意識になぞることができるからです。

しかし、当然ですが、オリジナルの作品を描いた画家と、それをまねた人の脳は同じではありません。この世に「まったく同じ脳」というのはひとつとして存在しないのです。

したがって、どれだけ精巧に名画をコピーしたとしても、そのコピーはあなたの運動系脳番地を使って描いた「オリジナル作品」なのです。

39階段を 1段とばしで下りてみる

私は普段、エレベーターやエスカレーターを極力使わず、階段を使うようにしています。もちろん、運動のためでもありますが、上り下りに変化をつけることで足腰を動かす運動系脳番地が鍛えられるからなのです。

「上り下りに変化をつける」とは、具体的にどういうことなのでしょうか。

たとえば、階段を「 1段とばし」で上ってみてください。段をとばしながら上ろうとすると、一段一段上る場合と違って、着地する場所や着地のタイミングをよく見極めなければいけません。

いきおい、よく考えながら足を踏み出すようになりますし、いつも以上にしっかりと着地点を見るようになるでしょう。

「1段とばし」をすると、このように普段使わない注意力が必要になるため、脳が新鮮な刺激を受けるのです。「1段とばし」がそれほど難しいと感じない人は、応用編として、「 1段とばしで下りる」というのはどうでしょうか。

実際にやってみるとわかりますが、これは 1段ずつ上るよりも、はるかに難しく感じるものです。「1段とばし」で上ることが苦もなくできるという人も、こちらは体のバランスの取り方が違う分、少し慎重になるのではないでしょうか。

同じ「 1段とばし」でも、下りる場合は上る場合より、より多くの運動系脳番地を働かせることになるのです。ただし、足を踏み外したりバランスを崩したりすると、思わぬ事故に発展します。

このトレーニングは、まわりに人がいる場合や階段が急なときには、控えるようにしてください。

40頭が働かなくなったらひたすら歩く

どんなに考えても名案が浮かばず、行き詰まってしまうことはよくあります。これは、特定の脳番地に連続して負荷がかかっている状態であり、あまり良い状態とは言えません。この状況を変えるには、使っている脳番地を移動させる、「脳番地シフト」が必要でしょう。

ところで、人と口論をしている最中に感情が抑えられなくなり、急に相手につかみかかる人がいます。実はこの場合も「脳番地シフト」が行われています。

思考系脳番地の働きが弱まり、感情系脳番地の勢いを借りて、運動系脳番地にシフトして相手に手を出してしまう——。怒りを向けられた相手としては迷惑な話ですが、本人にとっては見事に脳番地シフトを果たしているわけです。

とはいえ、考えが行き詰まったときの対処法として、「キレる」ことを推奨するわけにはいきません。他人に迷惑をかけない範囲で「脳番地」をシフトさせるためには、まずは作業をいったん中断して、その場を離れてみることでしょう。

ただし、作業をしている場所から一時的に離れるだけでは不十分。

「なぜ、さっきは行き詰まったんだろう」などと考え始めてしまったら、体は離れても「脳」は机の上から離れていないことになるからです。

思考が行き詰まったときには、とにかく体を動かして脳の活動を無条件に運動系脳番地へシフトさせなければいけません。運動系脳番地から他の脳番地にシフトすることは簡単ではありませんが、その逆は比較的楽にできるのです。

最近はあまり見かけませんが、昔のドラマでは、会社の休憩時間に屋上で社員同士がバレーボールに興じるシーンをよく見かけました。よくよく考えると、あれは非常に理にかなっていたわけです。

手軽にできる運動として、おすすめしたいのが「歩く」こと。「歩く」ことは体を動かすときの基本動作ですから、脳を活性化させるには、最も手軽で確実な手段です。

思考が硬直化してきたなと思ったら、何も考えずに 10 ~ 15分ほどひたすら歩いてみてください。たとえわずかな時間でも、作業で酷使した脳番地の活動を意識的に休ませることができるはずです。

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