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6 「ROE」よりも「 ROA」

 この項は少しややこしいかもしれませんが、大切なことなのでしっかり理解していただきたいと思います。  以前、ある新聞社が大企業の社長に対して「経営上、もっとも重要な指標は何か」という調査をしました。複数回答可能で、四割以上の社長の答えが「 ROE」(株主資本利益率 =利益 ÷純資産)でした。わたしは、この回答にたいへん驚くと同時に、がっかりしました。なぜなら、少し会計を勉強したことがある人なら、 ROEと答えずに ROA(資産利益率 =利益 ÷資産)と答えたはずだからです。  たしかに ROE(株主資本利益率)は、前項で説明した「純資産」に対する利益率で、たいへん重要な指標であることは間違いありません。けれども、   ROE(株主資本利益率)が最重要と考えると、  場合によっては企業をリスクにさらしかねません。  たとえば、資産 =一〇〇、負債 =五〇、純資産 =五〇、つまり、自己資本比率が五〇%の会社が一〇の利益を出したとすると、 ROA =一〇%、 ROE =二〇%となります。  しかし、同じ利益で、負債 =九〇、純資産 =一〇と自己資本比率を一〇%まで下げると、 ROAは同じ一〇%ですが、 ROEは一〇〇%となってしまいます。 ROEは格段に改善しますが、自己資本比率が大きく下がっているわけですから会社の安定性は損なわれます。  つまり、   ROEというのは、負債の比率を高めるだけで改善してしまう指標なのです。  専門的で恐縮ですが、もう少し詳しく説明すると、 ROAに「財務レバレッジ( =資産 ÷純資産)」を掛けたものが ROEです。式で表すと「 ROE = ROA×財務レバレッジ」となります(少しむずかしく感じるかもしれませんが、もう少しおつき合いください)。 ROA =利益 ÷資産… 1財務レバレッジ =資産 ÷純資産… 2 1 x 2 =(利益 ×資産) ÷(資産 ×純資産)       =利益 ÷純資産       = ROE自己資本比率 =純資産 ÷資産  上の式からお分かりのように、 ROEを高めるためには、 ROAを高めるか、財務レバレッジを高めればよいのですが、財務レバレッジの式をよく見ると、前項で説明した「自己資本比率( =純資産 ÷資産)」の逆数です!  自己資本比率は会社の中長期的な安定性を表すものでしたから、その逆数ということは、  財務安定性を崩せば崩すほど、 ROEはよくなる!  一方、 ROAを高めることを指標にすれば、自己資本比率を落とさずに、 ROEを上げることができます。  ですから、正しい経営指標の優先順位は、先に ROAがきて、その後に ROEがくるはずで、先に ROEというのはおかしいのです。   ROEというのは、株主が預けている資金に対する利益率を表すものともいえますから、 ROEを重視するのは、株主重視の姿勢を表明するためのものなのでしょう。株価を高めに維持するために必要なことなのかもしれません。  けれども、 ROAを高めることこそが、中長期的な財務安定性を損なわずに、株主の期待に応えることにつながるはずです。  いうまでもないことですが、経営者というのは、資金の調達源である負債と純資産の両方に責任を持つ者なのです。株主にだけ責任を持つというのは均衡を欠きます。

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