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6章日常生活で活かす質問術

目次

脳内質問でトレーニングする

前章では、日常生活にどんなアクションを取り入れたらいい質問ができるようになるかという話をしました。

本章では、実際にあなた自身のモヤモヤを解決するにはどういう質問をすればいいのか見ていきます。

質問をする状況はさまざまで、人によってモヤモヤすることは異なります。

万人に効果のある質問は「ない」と言ってもいいのですが、それでも最大公約数的なものはあります。仕事、プライベートを問わず、多くの人が質問を必要とするケースを集めてみました。言うなれば、脳内質問のケーススタディです。

思考停止を脱却して、あなたのモヤモヤを解消するヒントになれば、幸いです。

世界で活躍できる人になるために必要な質問

日本から海外に出て行って、世界的に活躍できるようになりたい!そのためにはどうしたらいいのだろうかと、思っている人も多いでしょう。

世界で活躍するためには、英語と自分の行こうとしている国の言語と、世界共通の感覚を身につけることは必要です。

いろいろな国の人々に混じるのですから、ちょっとした言葉が相手を侮辱することになったり、差別になってしまったりすることがあるので、今この場でどんな発言をしてはいけないか、どういうことに配慮すべきかという「世界的な教養」が分かっていなくてはなりません。

新しいものをつくるにしても、どんなものがあったらうれしいかという世界的なニーズが見えていないとできないので、今世界でどんなことが問題とされているのか、日本語以外で発信されたニュースを押さえておくのはいいことでしょう。

しかし、それだけで国際的に活躍する人にはなれません。

この質問が必要です。

「自分だけが持っているものはなにか?」たとえば、日本人として自分が育んできた感覚や、自分だけが持っている技術など、どんなものでもいいからあなただけが持っている「ユニークさ」が求められています。

自分だけが持っているものがなぜ必要かと言えば、それが世界に対する贈り物になるからです。

世界から与えられるものを学ぶだけではなく、自分も世界の一員であり、「これだけは得意だ!」と自分から世界に与えるものを持っているから、必要とされるのです。

グローバル化が進めば進むほど、世界共通のものだけでなく、自分のユニークさを確かめていくことが必要になります。

世界中の人が同じ考えを持つことではなく、それぞれの違いを理解しながら、自分のユニークさを活かすことが求められるようになるのです。

私は大学生のとき、国連で働きたいと思っていた時期がありました。

国連職員のなり方を調べてみると、意外なことに、英語ができることよりも大切にされていることがありました。

それは環境、開発、経済、科学技術など、とにかくなんらかの分野での修士や博士の学位、あるいはそれに相当するくらいの専門性を持っていることでした。

私たちは世界で活躍している人たちを、「英語が話せて、国際感覚が豊かなのだろうな」という単一のイメージでとらえがちですが、実はさまざまなバックグラウンドを持った人たちがお互いに力を活かすからこそ世界の問題に対処できるし、面白いものがつくれるのです。

国際社会で活躍する人になるためには、自分のユニークさを徹底的に追求することです。

そう考えると、日本の中で活躍する方法とまったく同じです。

「さかなクン」は、魚類学者として、またタレントとして活躍していますが、魚のことを誰よりも知っていて愛しています。

自分の得意とする分野はなんでもよくて、魚でもいいし、雑草でもいい。

最近ではユーチューバーといって、自分がやったゲームのプレイ画面をユーチューブで発信して、人気を得ることで収入を得ている人々もいます。

どんなものであれ、これだけは自分は誰よりもよく知っていて愛している。そういうものがあると、どこでも活躍できるようになるのです。「こんなものはローカルで活かしようがない」と捨ててしまいがちなものほど、実は大事なものです。

自分が越えられない壁を乗り越えるための質問

自分がやりたいと思っていたことで、越えられないかもしれない壁にぶち当たってしまった──。

このときまずしてほしいのは、次の質問です。

「その壁はどうして見えているのだろうか?」この質問をすると、実は、壁が見えたときには、その壁を乗り越える作業がもう始まっていることが分かるはずです。

なぜなら、壁が見えるのは、その向こうにある大きな世界も、こちら側の自分も、壁の正体も、ある程度見えていることだからです。

小さな子どもが「将来プロ野球選手になりたい!」と言うときは、周りの大人も「なれるよ!」と応援しますが、壁はまだ見えていません。

テレビなどを見て、なんとなく憧れを持っている状態です。

しかし高校野球に進んでみると、だんだん憧れが現実のものに変わって、技術面や体力面での壁の存在に気づいていきます。

つまり、壁が見えてきたということは、それだけ目標の大きさに対して、自分の大きさが足りないことがハッキリと見えて、その差やその間にある課題が明確になってきたということなので、事態はだいぶ進んでいます。

では、その壁を目の前にして、次はどうすればいいのでしょうか?壁を固定したものだと思い込むのは、間違いです。

動かないように見えるかもしれませんが、壁は揺らぎます。

努力したり、悩んだり、学んだりすることで、壁は確実に姿を変えます。

そんなことを言われても、「絶対に変わるはずがない」「どうしていいか分からない」という人には、あなたのやりたいことについて、こんな質問をすることをおススメします。

「達成できた人はどんな方法で、なにを努力したのだろうか?」「達成できた人はどんな人とつながっているのだろうか?」「こうすればできるようになる!」というセオリー、固定したノウハウでなく、生きた情報収集をしてください。

セオリーは「誰でも同じようにやれ」という方法ですが、成功した人に誰一人として同じ人はいません。

生きた他人の具体的な行動パターンからヒントが得られることはたくさんあります。

他人の行動に影響を受けてください。

意外と小さなことが成功に導いていることに気づくはずです。

「え?そんなことでいいの?」「そんな人とのつながりを持つことが大事なの?」自分自身が揺れ動いて、違う自分になることが、壁越えの術を身につけるコツです。

壁はフッと消えることがあります。自分が変われば、壁も姿を変えるのです。

自分とは違う人と向き合うための質問

インターネットの成熟もあり、国と国との境界が薄くなって、多種多様の人々が行き交うこと、文化、歴史、言葉が異なる人たちと交流することが増えるのが、グローバル化です。

自分とは違う人と出会う機会が増えてきたのは、日本国内でも同じです。

同じ日本人といっても、多種多様の趣味があって、嗜好性も、経験も違います。

みんながみんな同じテレビ番組を見て、情報を共有している時代は終わり、もう「誰もがこれを好き」という「メジャー」は存在しなくなりました。

これからは自分と違う人とどのように向き合うべきかを、一人一人がますます悩む時代になっていきます。

自分と異なる人に出会い戸惑いを感じたら、まず、こんな質問をしてみてください。

「この人と自分との共通点はなんだろうか?」非常に遠く見えても、非常に近いのが人間です。

どんなに遠い存在に見えても、誰もが自分の幸せ、自分の周りの人の幸せを願っています。

そのような基本的な願いは、あらゆる文化の人に共通しています。

異文化の地に旅行に行って、「マクドナルドやスターバックスがあってホッとした」という話をよく聞きます。

どうして安心するのかといえば、おそらく、自分の国で慣れたものが他国にもあったからとか、このような企業が全世界共通の価値観を提供できているからではありません。

これらの場所で人々が時間を過ごすときの基本的なあり方が共通で、「おなかが空いた」「おいしいものが飲みたい」「楽しい時間を過ごしたい」という欲求がみんな同じだからこそ、ホッとするのではないでしょうか。

かかわり合うとっかかりがなにもないように見える人たちこそ、共通点はなにかを探ることが必要です。

それを足がかりにできたなら、次にするべき質問はこれです。

「いかにその人と自分とが違うのか?」ここで確認したい「違い」というのは、肌の色や、目の色、また信仰している宗教など、具体的に明示できるものではありません。

「どうしてこういうふるまいをするのだろうか?」と想像の中で確かめるしかない「違い」のことを言っています。

このように質問をして、自分がまだ知らないこと、想像もできないことが、実際に相手の血となり肉となっていることを思いやる必要があります。

要するに、違いというのは、相手に対するリスペクトとして表れなければなりません。

たとえば、外国からの旅行者は、ほとんど日本文化を知らないでやって来ます。

自分が外国に気楽に旅行することを思っても、事前に相手の文化を知らないのはむしろ当たり前のことです。

しかし、「日本には違う文化があるのだ」というリスペクト、そして「それを学ぼう」というオープンな姿勢があれば、われわれはこの人を素敵な人だと思うでしょう。

われわれが他国に行くときも同様です。

知らないものへの思いやり、想像、リスペクトがあれば、自分とは違う他者に対して、正面から向き合えるようになります。

「まだ自分の知らない素晴らしい宝物が埋まっているのだ」という姿勢で、相手の文化に入っていくことができれば、どんなドアも開くはずです。

相手の異質性への想像力を持つことが、未知の世界へのドアを開きます。

この想像力さえ身につければ、異なる他者と向き合うのは、不安でも恐怖でもなく、大きな喜びの源泉となるはずです。

原因を究明するときの質問

期待のかかったプロジェクトや、大々的に宣伝した新商品が失敗に終わったとき、関係者一同を集めて、いわゆる反省会が行われます。

うまくいかなかった原因を究明することは大事です。

前向きにものごとを進める態度で、どうして失敗したのかを正確かつ誠実につかむことができれば、次回に活かすことができます。

しかしこういう席では、残念なことに責任追及になりがちです。

犯人探しや個人攻撃ばかりで、結局大事なことはすべてうやむやになってしまう。

失敗した原因をきちんと分析し、次に活かすためには、いい質問が必要です。

まず絶対にしてはいけない質問があります。

「誰のせいでこんなことになったのか?」誰が悪いと決まったら問題は解決するのでしょうか?しません。

本当は、失敗は誰でもするものです。それはあなただったかもしれない。

犯人探しをして、その人を排除すれば感情的にスッキリする人もいるのでしょうが、原因究明は、責任のなすりつけではなくて、「論理」でするものです。

前向きに論理を展開するためには、こんな質問からしていきます。

「どのあたりからうまくいかなくなったか?」うまくいかないときは、なんとなく途中で「これでいいのかな?」という不安や心配がよぎったりするものです。

本当はその違和感に気づくことができれば、軌道修正できたはずなのですが、なぜか見過ごされてしまった。

「これでいいのかな?」と思ったところに、うまくいかない原因が存在している可能性が大きいので、次回から気づけるように、この点を反省しておくことが大事です。

次の質問もいいでしょう。

「なぜそれを止めることができなかったのだろうか?」本当は「いいことにならない」と分かっているのに、惰性で続けてしまったことが原因で失敗してしまうことは、よくあります。

上司からのプレッシャーもあるし、期待のかかったことを止めるには勇気もいる。

それで心のどこかで気づいていたはずの問題を見ないことにしてしまいます。

やらなくてもいいことをやってしまった背景をあぶり出していくと、次回への改善策が見えてきます。

失敗することは、悪いことではありません。

悪いのは、失敗を活かさないことです。

自分や、他人に原因を帰するのではなく、誰にでもあり得ることとして、盲点になっていたさまざまな文脈を言葉にすることが、次の成功に結びつくのです。

自分の望みがかなわないときの質問

大事なミーティングに向かっていたら、天候不順や予期せぬ事故で、飛行機の出発が2時間遅れることになった、電車が止まった──。

自分のせいではないのに、どうすることもできないで、仕事をパアにしてしまう。

こんな不運に遭遇すると、「ふざけるな!」「どうしてくれる!」と飛行場の係員や、駅員に詰め寄ってしまうことがよくあります。

人間は自分の利益が侵害されると、他人が邪魔な「モノ」にしか見えなくなってしまいます。

よくよく考えれば、飛行機が遅れたのも、電車が止まったのも、係員のせいではないのですが、あたる場所がなくて、目の前にいる関係者に詰め寄ってしまう。

どんなことでも言い散らしていいサンドバッグにしてしまいます。

「自分に今できることはなにか?」こんな場合にすべき質問はこれです。

ミーティングには数時間遅れてしまっても、せめて終わりには間に合いそうかどうか、新幹線や、タクシーや、バスを検討する。

そうしてベストを尽くせば、少なくともミーティングの相手には誠意が伝わります。

その相手も、あなたのせいではないことは重々承知しています。

手段がなくて動けない状況なら、あきらめて周辺のホテルに泊まってしまうのもいいし、家が近いならもちろん帰ってしまうのもいい。

手近な他人に詰め寄ったところで、事態は絶対に変わらないし、むしろ苦情対応に相手は追われて仕事が増え、肝心なことができなくなってしまいます。

ただ互いにイヤな気持ちになるだけです。

どうしても目的を達成する手段がないならば、完全に方向転換して、自分が気持ちよくなれることを考えるほうが大事なのです。

どうしようもない不運でも、自分にやれることはあるはずです。

なんの努力もしないで感情だけをぶつけるよりも、この状況で「自分も他人も心地よくいられるように、私が努力できることはなにか?」と質問してみてください。

自分のせいではないのだし、あきらめるしかないことはあきらめる。不運な状況のほうでなく、自分にできることに集中しましょう。

これがまさに1章でご紹介した、ベスト・エフォート形式です。

こんなことも分かっています。

もう末期で、手の施しようがない状態の病気のパートナーを看取る。

こんなに人間にとって絶望的で悲しいことはありません。

しかし、実際にそういう状態にある人たちにインタビューすると、ほとんどが、そんなどうすることもできない状況の中でも、「幸せな感情を持つ瞬間がある」と答えます。

それは、なんでもない日常であればおろそかにしてしまうようなこと──。

たとえば、「外の空気を吸いに行ったら、夕日がキレイだった」というような偶然によって幸せな気持ちになることもあるし、「パートナーのシーツを変えてあげただけで、気持ちよさそうな顔が見られた」と自分ができる小さなことをしただけでもうれしくなる場合もある。

どうしようもないように見えても、工夫できることは見つけようと思えば、事実見つかります。

そして、そういうことを見つけるのが得意な人ほど、パートナーの死という耐えがたい衝撃、またありとあらゆる挫折からの回復が早いことが分かっています。

どんなに最悪な状況でも、小さな工夫をして、自分と他人が気持ちいいと思う一瞬をつくるように心がけてください。それが結局は、あなたの生きる力になってくれます。

将来なにをしたらいいのか分からないときの質問

人生では、どうしてもなにをすべきか分からなくなってしまうときがあります。

中学・高校で進路を決めるとき、将来を選ばなければならないとき、また大人になっても、道に迷ってしまうことは多々あるものです。

なにをしたらいいのか分からないという人は、次の質問をしてみましょう。

「今まで自分はなにに感動してきただろうか?」人間は感動に基づいて生きています。感動したことは、その人に引っかかりをつくり、それが人生のポイント、ポイントになってきたはずです。

私の人生を子ども時代から振り返ると、非常に深く感動した分野が二つありました。

ここまで読んでくれた人には言うまでもなく、それは科学と芸術です。

子どものころから追いかけていた蝶は、自然界という非常に複雑で多様な世界を見せてくれました。

アルベルト・アインシュタインの伝記を読んだときには、「この人は今までにない宇宙の見方を見出したのだ!それをこんなに個性的なやり方で貫いたのだ!」と雷に打たれたような衝撃を受けました。

芸術で言えば、5歳のときに初めて聞いたオーストリアのピアニスト、アルフレート・ブレンデル演奏のベートーべンの『月光』や『熱情』。

小説なら、夏目漱石の作品に何度も感動してきました。

脳科学をやりながら、芸術や文学に取り組む今の私のスタイルは、結局子どものときに感動したものを追うことでできてきたものです。

なぜ「自分がなにに感動したのか」という質問をするのが大事かというと、自分がどういう人間か分かることに加えて、自分がかつて感動したものについてなら、努力に耐えられるからです。

世の中でなにかをしようとすると、たくさんの障害が出てきます。

しかし、自分に感動を与えてくれたものならば、なおかつその感動を覚えていさえすれば、「あの感動のところまで行きたい!」と難しさを乗り越える努力ができます。

たとえば、ある書家は、若いとき美術大学に行くのをあきらめたそうです。

それは「美大に行っても食べられない」「仕事にならない」と周りの反対を受けたからです。

その人は、書家として活躍するようになりましたが、最近になってまた絵を描き始めました。

絵の世界で食べられるようになるのは大変ですが、やはりかつて自分が感動した絵の道だったならば、モノになるかどうかは分からなくても楽しいし、その大変な努力をしていたいと思ったのだそうです。

実際には、自分が感動した仕事そのものができるようにはならないかもしれません。

しかし、音楽好きの人なら、演奏家にならなくても、音楽の世界のどこか片隅にでも自分がかかわれる仕事を探せばいいし、そのための努力であればきっと耐えられることでしょう。

生活のためには誰でもムリをしなければならないところはあるけれど、その仕事が自分の根幹にある感動に結びついてくれるのならば、そのムリを楽しめるし、努力に耐えられます。

だから、迷ったときは「自分が人生の中で感動したことはなんだろう?」と質問をしてください。

人とのつながりに感動したことがあったとすれば、コミュニケーションをカギとした仕事に就くのがいいのかもしれません。

また、自分がなにかしたときに誰かが喜んでくれたことに感動したならば、人を喜ばせる仕事なら努力できるかもしれない。そう考えていけば、自分が取り組んでいく仕事はいくらでも見つかります。

どんなものにしたら人は喜んでくれるのかと考えるのがデザイナーです。

サービス業もそうですし、おいしいご飯を提供するのも、そんな仕事の一つです。

あなたが感動したことはなんですか?

6章のポイント

  • いい質問をするには、自分や相手が何を求めている(いない)か真剣に探り出すしかない。
  • 国際的に活躍する人になるには、自分だけが持つユニークさを追求していく。
  • 壁とは揺らぐもの。見えたときには、乗り越える作業が始まっている。
  • 自分とは言葉も文化も違う人と接したときは、共通点と違いの両方を探して宝物にする。
  • 自分ではどうすることもできない状況に遭遇しても、小さな工夫をすることで生きる力が湧いてくる。
  • 自分が本当に感動したものなら、どんな苦労にも耐えられる。

おわりに

ブルー・オーシャンの時代を生きるために

この本では、あなたの現状を変えるきっかけになる質問力についてお話をしてきました。

質問をすることは、実は「生きること」そのものです。質問は、「自分の中になにか足りないものがある」と自覚することから始まります。

この「なにか足りない!」という気持ちこそ、われわれを動かす力です。

  • 「おなかが空いた!」
  • 「じゃあ、なにかを食べよう」
  • 「なんとなく寂しい」
  • 「じゃあ、誰かに会いにいこう」
  • 「ものたりない」
  • 「じゃあ、好奇心に従って、新しいものに触れにいこう」
  • 「知らないことがたくさんだ」
  • 「じゃあ、知るようになろう」
  • 「飽きてしまった」
  • 「じゃあ、新鮮なものをつくろう」

このように、自分に足りないものを認識することが、より豊かな自分になる、よりよく生きるきっかけになります。

自分が変わるためには、世間で言われている「正解」などに自分をムリに当てはめようとするのではなく、自分に欠けているものを自覚して、問題提起をすることが必要だということを見てきました。

今、時代は大きく変わろうとしています。

人工知能の発達によって、人間の仕事の内容も変わっているし、インターネットなど情報ネットワークの発達によって、国境なども意味がないグローバル化の時代になっています。

このような時代には、求められる質問も当然変わってきます。

質問力はこれからますます変化し、進化し、人間の生き方を支えていくものになるでしょう。

たとえば今までは質問というと、答えが決まっている中で正解の点数を争うのが主流でした。これは「レッド・オーシャン(赤い海)の質問力」と名づけることができるでしょう。

レッド・オーシャンとは、みんなが血で血を洗うように激しく競争している領域のことで、この中ではどうしても、ある一つの「正解」をめぐって、誰が一番早くたどり着けたか、誰が一番正確だったかという「順位」が重んじられてしまいます。

この中では個性的な質問をすることは一切求められませんでした。

一方、「ブルー・オーシャン(開かれた青い海)」、つまり、どんどんイノベーションが起こり新しい産業が生まれ、文化のあり方も変わり、情報ネットワークによって人と人とが結びつけられる世界の中で求められる質問力は、まったく違うものです。

むしろ、長い間ずっと答えが出ないような質問をする、誰も答えを知らない質問をする。それで答えを見つけようと活動する中で、自然に自分の生活が変わり、人の生活が変わる。自分の欠点を正直に見つめることから生まれるユニークさが、いつの間にか自分や他人への宝物になる。そのような正解がなく、終わりがない質問力が必要とされています。

質問をすることは、世の中に対する向き合い方、姿勢を形づくることでもあります。

みなさんは子供のとき、「食事のときの姿勢が悪い、ちゃんと背筋を伸ばしなさい」「知っている人に会ったら、挨拶をしなさい」など、注意された経験はありませんか?そのような礼儀作法がちゃんとできていると、「あの人は姿勢のいい人だ」と目に留まるのと同じで、いい質問ができる人は「ポジティブに世界と向き合っているな」と注目を集めることでしょう。

質問には、その人の生きる姿勢が表れます。

自分に対して、世の中に対して、いい質問ができるようになることは、これからの世の中では、「生きる道を自分で切り拓く、ポジティブで、最高の姿勢を持っている」という証になります。

質問力がある人は「生きる姿勢ができている人」なのです。

現代は、正解がなく、どんどん変化するリスクだらけの時代に見えるかもしれませんが、裏を返せばわれわれがより楽しい人生を迎えるチャンスを持っているということです。このチャンスを活かせるかどうかは質問力にかかっています。

この本で、一体その質問力とはなんなのか、それを鍛えるにはどうしたらいいのか、いくつかヒントをご紹介してきました。

この本の中で説明したような質問力の中にこそ、「ブルー・オーシャンを生きる」という意味において最も大事な叡智が詰まっていることは事実です。

しかし、それは今までの常識に反するものだったかもしれないし、すぐには実践できないようなものだったかもしれません。

今すぐに「いい質問」ができなくてもかまいません。

しかし、この本を使って、これから毎日の生活の中で少しずつ、質問する練習をすることで、自分の原点を探し、新しいブルー・オーシャンの時代を生きるいい姿勢が身について、みなさんの人生が素晴らしいものになっていったら、私は幸せに思います。

最後になりますが、本書を企画立案してくれた岩崎英彦さん、河出書房新社の高木れい子さん、原稿執筆に協力してくれた恩蔵絢子さんにはお世話になりました。

3人の協力がなければ、完成しませんでした。どうもありがとう。本書を読んでくださった読者のみなさんにもお礼を申し上げます。

どうか楽しい人生を!茂木健一郎

現状を変えるための質問

他人に向けた質問

  • 「あなたは世界をどうしたいですか?」
  • 「すぐに一つでもなにか提案ができますか?」
  • 「大変だったわね。大丈夫?」
  • 「あなたはこんなときどうしましたか?」
  • 「あなたの場合はどうでしたか?」
  • 「なにがお好きですか?」
  • 「どのワインがお好きですか?」
  • 「どのあたりからうまくいかなくなったと思いますか?」
  • 「なぜそれを止めることができなかったのでしょうか?」

自分に向けた質問

  • 「自分が一番心地よくなれるのは、どんな生き方だろう?」
  • 「今日が人生の最後の日だとしたら、私は今日やろうとしていることをやるだろうか?」
  • 「今、自分にできる最大限のことはなにか?」
  • 「この問題について、今すぐやらなければいけないのはどんなことだろうか?」
  • 「自分が一番したいことはなんだろう?」
  • 「どうやって一人一人説得していけばいいだろうか?」
  • 「どのようにすれば、精度を高めることができるか?」
  • 「あと少しだけ成長するためには、なにをすればいいのだろう?」
  • 「次はなにをしようか?」
  • 「今日の話題はなににしよう?」
  • 「自分だけが持っているものはなにか?」
  • 「その壁はどうして見えているのだろうか?」
  • 「達成できた人はどんな方法で、なにを努力したのだろうか?」
  • 「達成できた人はどんな人とつながっているのだろうか?」
  • 「この人と自分との共通点はなんだろうか?」
  • 「いかにその人と自分とが違うのか?」
  • 「今まで自分はなにに感動してきただろうか?」
  • 「どのようにすれば事態を収拾できるだろうか?」
  • 「次はどんな挑戦をしようか?」
  • 「なぜ不便を我慢しなければならないのか?」
  • 「自分も他人も心地よくいられるように努力できることはなにか?」

著者紹介茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)1962年東京生まれ。

脳科学者。

東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。

理学博士。

理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。

2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞、2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞受賞。

他の著書に『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)『結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方』(学研プラス)『頭は「本の読み方」で磨かれる』(三笠書房)『脳を最高に活かせる人の朝時間』(河出文庫)等がある。

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