ずいぶん前のことになりますが、顧客企業とアメリカ企業との業務提携交渉のお手伝いで、ニューヨーク郊外にある相手企業を何度か訪ねたことがありました。 交渉相手のその企業は全米で大きなフランチャイズチェーンを築いていたので、その交渉が無事成立した後、相手の社長に、「フランチャイズシステムがうまくいくコツは何ですか?」と尋ねてみました。 すると、彼の答えは、「犬のひもですよ」でした。 「?」何のことか分からない表情をしているわたしに、彼は次のようなことを話してくれました。 犬を散歩に連れて行くときに使うひもで、リールになっていて、ボタンを押すとそのリールが巻き戻せるものがあります。犬が飼い主の思っている方向やスピードで進んでいるときには、そのリールを緩めてどんどん行かせてやればよい。犬は自分の意思で自由に進んでいると思っている。飼い主もひもを手放しているわけではない。犬も飼い主も楽な状態です。 しかし、犬が飼い主の意思に反して違う方向に向かったり、速いスピードで走り出したら、ボタンを押してひもを巻き戻す。場合によっては、近くまで犬を引き寄せて、犬に分からせるために引き倒す必要があるかもしれない。 フランチャイザーとフランチャイジーの関係もそれに似ている、と。 本来、フランチャイジーになる人はサラリーマンと違って独立心の強い人です。エネルギーレベルも高い。だから、フランチャイザーの方針に従っている間は、できるだけ自由に行動してもらったほうが成果も出るし、お互いにハッピーです。ただし、方針に従わない場合は大いに抗議するし、場合によっては資格剥奪もありうるというわけです。 この話を聞いたとき、わたしは、これはフランチャイズシステムにとどまらず、人を動かすコツだなと思いました。 人は元来自由が好きです。方針に従っている間は、細かいことは言わずに自由に動いてもらったほうがよい。本人もそのほうがハッピーです。自分でやったと思ってもらったらよいのです。そうすれば、どんどんがんばります。 けれども、方針に従わない場合には厳罰で対応します。そうしないと、その人もろとも、組織が傾きます。お客さまもほかの社員も、不幸にします。 ところで、「管理されたほうが好き」という人も少なからずいることは知っています。でも、そのようなあまりに「飼いならされ」すぎた一部の人のために、全体を管理型にするなどというのは本末転倒だと思います。人は、ある年齢まで飼いならされすぎると、動けなくなるのも事実です。そんな人たちばかりだと、上の顔ばかりを見る実力のない人たちの集まりになります。くれぐれもそんな組織をつくらないでください。 方針や基本的な考え方の枠組の中で、働く人が存分に力を発揮できる組織が理想です。そのためには、「お客さま第一」などの基本的考え方を常に徹底し、その考え方を基準に自分で判断して動く社員を育てていくことです。
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