経営コンサルタントとして顧問先の企業の財務内容などを見る際、注目することのひとつは、売上の中身です。いくら全体の売上が目標を達成していたとしても、その内訳が、ある分野において自社の占めるシェアが高いわけではない商品やサービスに大きく偏っているとしたら、ちょっと危険です。 売上高を上げようとすることは経営においては非常に重要なことですが、売上高拡大を狙うあまりに、シェアが低い商品の売上ばかりが増えると、これは危ない。市場で主導的地位をとれず、価格やマーケティングの主導権が奪えずに他社製品の戦略や価格に大きな影響を受けることになるからです。 つまり、主導権のある他社の戦略に合わせないと、一気に売上はなくなってしまう、ということです。で、無理して合わせると、利益がなくなってしまう。利益だけでなく他社のマーケティング戦略にも振り回されかねません。 そうなると、広告宣伝費やリベートなどの営業費用が多くかかり、見かけ上の売上高は拡大しているけれどコスト倒れで利益が出ない。それどころか、結局、赤字の「くたびれ儲け」となっている場合もあります。 つまり、売上高だけにとらわれると、利益の出ない企業となってしまう場合がある。シェアからみる見方が大事なのです。市場での自社のプレゼンスや主導権を表し、市場での力となるもの、それがシェアです。 ところが、シェアというと、「シェアは中小企業には関係ない」と考える中小企業の経営者も出てきます。たしかに、一般には、大企業なら世界シェアや国内シェア、中小企業なら地域シェアを想定する人が多いでしょう。でも、それは違います。 中小企業でも、大企業でも、「特定のお客さまのなかでのシェア」を常に意識することが大事です。 あるお客さまのなかでのシェアが低下し泡沫候補となると、いつ切られるか分からない。 つまり、自社にとって大きな売上を上げているお客さまでも、先方の側から見れば泡沫な取引先にすぎないとしたら、いつ切られるかという心配は常につきまといます。 実際、現在のような不況になってくると、それは心配ではなくて、現実です。 たとえば、ある会社が、現在 A、 B、 C、 Dの四社から同様の仕入れをしていて、そのシェアが、 4 : 3 : 2 : 1だとします。 もし、この会社が、仕入れを一割削減しようとする場合、どうするでしょうか? 理屈だけで考えれば、各社の仕入れを一割ずつ減らすということになりますが、実際には D社が切られるだけです。そのほうが取引の手数が減るからです。 あなたの会社の主力商品は、主要取引先にとっての A社ですか? B社ですか? C社ですか? それとも D社ですか? 自社にとっては重要でも相手からは重要でないということは、結構あるのではないですか? 大切なことは、自社の規模の大小にかかわらず、 お客さまのなかでのシェアを高め、 そのお客さまから「重要な」あるいは「大切な」存在と思われることです。 もし、いま、あなたの会社が、 D社だったとしても、サービスのよさなどで他社とひと味違えば、切られる会社は別の会社となり、むしろシェアを伸ばすチャンスとなるかもしれません(シェアには、物理的なシェアだけでなく、お客さまの「精神的」なシェアもあります)。 これは、一般の消費者がお客さまである場合も同様です。一人ひとりのお客さまにとって、いちばんの商品、いちばんの会社となることを目指すのが、最終的に売上を伸ばす早道です。それは、中小企業であっても、自営業であっても、自由業であっても、同じです(次の「社長力 2 マーケティング力」の章で出てくる「『客観的一番』よりも『主観的一番』」の項目を参考にしてください)。
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