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4章ステージ別育成をチームに取り入れる

目次

4章ステージ別育成をチームに取り入れる

ステージ別育成をチームに取り入れる育成ネットワーク型の組織を作るレベル1マネジャーとリーディングプレイヤーが、協力して育成を進めている状態レベル2部下同士が、1対1でトランジションを促進し合っている状態レベル3部下同士が、多対多でトランジションを促進し合っている状態育成コーチングと、育成チームミーティングトランジションが起こるチームを作るために

4章ステージ別育成をチームに取り入れる

ステージ別育成をチームに取り入れる3章までは、部下一人ひとりの段階を見極めて、適切な関わりを行うことの重要性についてお伝えしてきました。

4章では、「ステージ別育成をチームに取り入れる」ということをテーマに、育成対象を一人ひとりからチーム(職場)全体に広げていきたいと思います。

ステージ別育成をチームに取り入れる出発点となるのが、部下一人ひとりがどの段階にいるのか、そしてトランジション中なのか、そうでないのかという、トランジションの状態を確認することです。

あなたの職場では、トランジション中で苦労している部下と、トランジションを終えて活躍している部下の割合はどのような比率でしょうか。

(1)ほとんどの部下がトランジションを終えているそれぞれの部下が現在の役割を担う力を備えている状態であれば、安定的に成果を上げられるチームになっているはずです。

とはいえ、この状態がしばらく続いていることは必ずしも好ましいとは限りません。

なぜなら、今求められているチームとしての成果は出せるかもしれませんが、環境が変わったときやより高い成果がチームに求められたときに、部下の力量が追いつかなくなる可能性があるからです。

マネジャーとしては、チーム全体のレベルアップを見据えて「この部下をさらに次のステージに育てよう」という「育成ターゲット」を設定しましょう。

(2)トランジションを終えている部下とそうでない部下が半々ぐらいいるトランジション中の部下と、トランジションを終えた部下の数が同程度である場合です。

メンバー構成によっても様々なパターンはあるものの、一般的なケースだと言えるでしょう。

部下の数が少なければ、あなた一人で部下の育成を見きれる範囲でしょうが、部下の数が増えると、そうもいかないのが実情でしょう。

(3)ほとんどの部下がトランジション中である部下の大半が、求められる役割と現状にギャップがある状態です。

このままの状態が続けば、職場としての業績達成・目標到達が困難な状況に陥ります。

できるだけ早く、(2)の状態に持っていく必要があるでしょう。

あなたのチームは、どれに当たりましたか?先ほどの(1)の状態のチームの場合、3章でご紹介したような各部下に合わせた個別のアプローチが可能ですが、(2)や(3)の場合にはあなた一人で部下全員に関わったとしても、とても手が回らないはずです。

ここから、部下一人ひとりにアプローチすることから一歩進んで、ステージ別育成をチーム全体に取り入れるためのヒントをお伝えしていきたいと思います。

育成ネットワーク型の組織を作るステージ別育成をチームに取り入れるとは、どういうことでしょうか。

それは、「マネジャーが部下一人ひとりの育成に個別に関わるだけでなく、部下同士がお互いに関わりながらトランジションを促進し合っているチーム」を作るということです。

それはすなわち、「育成ネットワークができているチーム」と言えます。

イメージしてみましょう。

育成ネットワークができているチームリーディングプレイヤーを育てるリーディングプレイヤーが積極的に他の部下の育成をしてくれるプレイヤーや、メインプレイヤーの力が底上げされるチームとしての成果が出るあなた(マネジャー)は、他のマネジメント業務に注力できるもしこのようにしてプラスのサイクルが生まれ、すべての部下の力が底上げされれば、チーム全体の力は何倍にもなると言っても過言ではないでしょう。

そしてあなたも、部下育成だけでなく、他のマネジメント業務にもっと注力できる余裕ができるはずです。

一方、このような状況が作れないとマイナスのサイクルに陥ってしまいます。

育成ネットワークができていないチーム部下全員に、マネジャーが自分で育成の手を打つ全員に手が回らない若手も中堅もなかなか育たないチームとしての成果が出ないあなた(マネジャー)は、いつまでも部下育成に頭を悩ませることに……

では、どのようにして「部下同士がお互いに関わりながらトランジションを促進し合っているチーム」を作っていけばよいのでしょうか。

そこに至るには、3つのレベルがあります。

目指すはレベル3ですが、一つずつ着実に上っていきましょう。

レベル0マネジャーが部下一人ひとりを個別に指導・育成しているレベル1マネジャーとリーディングプレイヤーが、協力して育成を進めている状態レベル2部下同士が、1対1でトランジションを促進し合っている状態レベル3部下同士が、多対多でトランジションを促進し合っている状態注目していただきたいのは、職場の中で出ている育成の矢印の数の違いです。

レベル1で、矢印の数は2倍になり、レベル2で、部下同士が結ばれ始め、レベル3に上がると、矢印の数は膨れ上がります。

このように、部下同士が誰からもトランジションを促進するためのサポートが得られている状態が、「育成ネットワークができている」と言えます。

この状態になると、チーム内で起こる言動は、業務を前に進めるためだけでなく、お互いの成長を意図したものになり、各部下のトランジションは加速度的に進むことになります。

それでは、レベルごとに詳細に見ていきましょう。

レベル1マネジャーとリーディングプレイヤーが、協力して育成を進めている状態この状態は端的に言えば、あなた自身と同じように他の部下を育成しようと協力してくれる部下を一人育てて、自分の右腕にしていくということです。

では、誰を育てるかと言えば、それはリーディングプレイヤーとしての期待をかける部下です。

段階マネジメントを効果的にチームに取り入れるための第一歩は、リーディングプレイヤーを育てることそのものなのです。

なぜなら、リーディングプレイヤーは一つひとつの業務に関しては高いレベルの知識や力量、経験を持っていて、指導・育成するための材料も豊富に持っているからです。

これを個人の知識として留めることなく、他の部下にも還流できれば、チームとしてのノウハウが蓄積されていくことになるでしょう。

さらに、リーディングプレイヤーは、次期マネジャー候補として目される位置にいます。

マネジャーになる前に、他のメンバー育成を経験したり、チーム全体の運営に関わろうという意識を持つことは、本人が将来マネジャーになったときにも、必ず活きてきます。

すでにリーディングプレイヤーとしての期待を十分に果たしてくれている部下がいれば問題ありませんが、もしそのステージの部下がいない場合や、リーディングプレイヤーとしての期待をかけている部下はいるが、なかなか後輩指導やチーム運営に目を向けてくれないという場合は、集中的な育成が必要になります。

リーディングプレイヤーにとって、次のような体験を積む機会を意図的に作り出すとよいでしょう。

メンバーの育成について上司とともに考え、メンバーに関わる体験具体的には、・あるメンバーの育成担当者や職場全体の育成担当者に任命される・上司と一緒に各メンバーをどう育てるか検討するコミュニケーションを通じたメンバーの関係性構築の重要性に気づく体験具体的には、・上司と若手メンバーの意見の相違に板ばさみにあう・ベテランメンバーの理解を得られず強い抵抗にあうマネジャーとしては、このような体験を積む機会を意図的に作り出すとよいでしょう。

一つエピソードを紹介します。

あるマネジャーは、チームリーダー(リーディングプレイヤー)の部下と毎週1時間の情報共有をしている。

2人で面談のような形で話すこともあれば、昼食をとりながら話すこともある。

そこでの話題の大半は、課のメンバーの最近の状況についてである。

チームリーダーは、毎回話を聞くうちに、自然と他のメンバーの業務状況やモチベーション、体調などに関心を持つようになり、メンバーと飲みに行った際には話を聞いたり、マネジャーがそれぞれの部下に対してどのように育成しようとしているかという意図をさりげなく伝えるようになっていった。

一見何気ないことのようですが、マネジャーとしてはこのような動きを取ってくれる部下がいるということは非常に心強いものです。

では、リーディングプレイヤーを巻き込むためのポイントを見てみましょう。

リーディングプレイヤーを育成ネットワークに巻き込むポイント具体的には、次のようなことから始めるとよいでしょう。

・毎週定例でミーティングを実施し、チームの状態について2人で会話する時間を取る・各メンバーの今後の能力開発課題について意見を求める・目指すチームの状態について、リーディングプレイヤーを巻き込んだ上で決定する・定例会の運営をリーディングプレイヤーに任せてみる巻き込むにあたって一つ留意しておきたいのは、リーディングプレイヤーの、他の部下に与える影響力は、思っている以上に大きいということです。

このステージの部下は、他の部下からすれば最も身近で頼りになる存在であることが多いでしょう。

上司のあなたに対しては言いにくいことでも、リーディングプレイヤーの部下には普段からいろいろと相談している、ということも少なくありません。

そのリーディングプレイヤーと上司であるあなたが部下の育成について一枚岩になれば、これほど心強いことはありません。

しかし、もしそうならなければ、あなた一人がいくら頑張ったところでチームとしてまとまるのは難しいでしょう。

それどころか、この段階の部下はすでにリーディングプレイヤーとしての実力は十分で、視野もマネジャーに近づいてきていますから、業務やチームの問題点にも気がつきやすく、放っておくと問題点の指摘や非難ばかりをしてしまう可能性もあります。

リーディングプレイヤーの「抑える」行動にもあるように、「仕事や組織に対する不平不満・愚痴を他のメンバーの前であらわにする」といった行動を取り、他の部下に大きなマイナスの影響を与えてしまうことにもなりかねません。

だからこそ、リーディングプレイヤーを巻き込む際には、なぜ他のメンバーの育成に協力してほしいのか、あなた自身がマネジャーとしてチームをどのような職場にしていきたいのか、という意図をきちんと伝えることが重要です。

具体的にどのような動きが起こればよいのか、イメージを持っていただくために、ある事例を紹介しましょう。

Aさんはメーカーに勤める8年目の社員で、設計部門に所属しています。

彼はリーディングプレイヤーのステージの第一歩を踏み出したばかり。

肩書きも「リーダー」と呼ばれるようになっていました。

業務のボリュームも増え、自分一人ではこなしきれない状況の中で、後輩3人と一緒に仕事を進めていく必要が出てきました。

上司である課長は、Aさんに対して後輩3人の働き振りや人間関係の状況についてたびたび聞くようになりましたが、Aさんは「正直、仕事を前に進めることで精いっぱいで、後輩の様子に気を配るほど余裕はありません」という状況でした。

「次第に後輩にお願いした仕事の成果物のレベルが、私が期待したものに至らないことが多くなったのです。

せっかく作業してもらったのに、一からやり直しになることも多く、これには申し訳ない気持ちとともに『何でこんなことも分からないんだ』という苛立ちもありました。

進捗も本来の計画から遅れ始め、焦りも増すばかりでした」そう話すAさんに課長は、後輩3人の特徴や指導のコツを教えることにしました。

Aさんは、とにかく業務のすべてについて細かく指示を出さなければならないと思っていたようです。

そこで課長は「一人ひとりに合わせた指導」の大切さを伝えました。

たとえば「さんは仕事の目的をきちんと確認しながら進めたいタイプで、気になることがあると手が止まってしまう傾向がある。

だから、こちらから『この仕事は何のためにやっているんだっけ?』などと聞いてあげるといいよ」、「さんは人見知りの傾向があるから、協力部署の関係者との顔つなぎは、手伝ってあげるといいよ」など、それぞれの後輩の特徴と、どうすればうまく仕事を進められるか、具体的なアドバイスを伝えたのです。

Aさんは、今まで後輩の特徴など気にしたことがなく、皆同じように関わっていたので、新鮮に感じたようでした。

それから、Aさんは徐々に後輩に任せた仕事が順調に進んでいく手ごたえを感じるようになりました。

「皆が、1から10まで言わなくても動いてくれるようになりました。

遅れていた計画も、『ここが踏ん張りどころですよね!』と言って自分の業務の効率化を考えてくれるようになりました」と、Aさんは振り返っています。

今でも課長はAさんと定期的に話をする時間を設けていて、この先の業務をどう進めていくのか、それぞれの後輩をどう育てていくのかという話題に展開しているそうです。

この事例でマネジャーは、リーディングプレイヤーの部下に他の後輩の特徴と仕事の進め方についてアドバイスを送っているものの、直接的な指導・育成はAさんに任せています。

マネジャーからすると、育成の視点を持つ人が自分の他にいるということは、非常に心強いはずです。

このように、頼れるリーディングプレイヤーを作れるかどうかが、チームに育成ネットワークを作る重要な鍵になります。

もう一つ、リーディングプレイヤーのやる気をかき立て、仕事の体験を「トランジションを促進する体験」になるよう工夫している事例を紹介しましょう。

Bさんは人事部の仕事をしています。

先日、ある制度の改訂に関わるリーダーを務めたときの出来事を話してくれました。

「制度の方向性が固まってきた頃、役員向けにプレゼンテーションをする場面があり、準備に準備を重ねて当日を迎えました。

職場の全員が約半年間この仕事にかけてきましたから、発表役の私がその努力を無にするわけにはいかないと、気合を入れて臨んだんです。

発表後の議論は白熱したのですが、何とかチームで考えていた方向性で進められることになりました」ここで、Bさんの印象に強く残った出来事が起こったそうです。

「会議が終わって部屋を出たところで、ある役員に声をかけられたんです。

『Bさん、お疲れ様。

チームの力を結集して、よくここまでのものに仕上げてくれたね』と、ひと言だけでしたが、ものすごく嬉しかったですね。

特に、自分の成果というよりもチームで頑張ってやってきたことが伝わったんだと思えたので」しばらくして、その役員と話す機会があって、ひと言かけてもらったことへのお礼を述べると、こう打ち明けられたそうです。

「実は、あのとき声をかけたのは、君の上司に頼まれていたからなんだ。

『今回Bはチームリーダーとして本当によくやってくれたので、プレゼンテーションの内容がよかったら、ぜひほめてあげてください』とね」この事例では、あえてマネジャー自身からリーディングプレイヤーとしての動きをほめるのではなく、よりインパクトを強く与えられる人から伝えてもらっています。

それは、この経験を部下にとっての成功体験として「トランジションを促進する体験」につなげるだけでなく、リーディングプレイヤーとしての「出口のサイン」に気づかせるものでもあります。

この事例以外にも、リーディングプレイヤーの方に話を聞くと、直属の上司であるマネジャーだけでなく、部長のようなさらに上の立場の人からのひと言や、隣の課のマネジャーからのひと言も心に残るようです。

「最近、君のチームの雰囲気がよくなったね」というひと言で、「自分の頑張りを見てくれていたんだ」という自信につながっていくのです。

レベル2部下同士が、1対1でトランジションを促進し合っている状態次は、リーディングプレイヤー以外の部下同士を結びつけるレベルです。

もちろん、あなた自身による部下一人ひとりへの関わりや、リーディングプレイヤーから他の部下への関わりがあってのことですが、さらに他の部下同士が関わり合う状態にしていきます。

その代表的な例として、スターターへのトランジションにいる部下と、メインプレイヤーへのトランジションにある部下、という1対1の組み合わせがあります。

この方法について、もう少し詳しく見ていきましょう。

この場合のメインプレイヤーは、いわゆるOJT担当やメンターと呼ばれるような立場で、指導の役割を負うということです。

新入社員がOJTを受けることによって成長するのはもちろんのこと、指導を任されたメインプレイヤーのほうが、実はより成長したというのはよく聞かれる話です。

まさに、2人同時にトランジションを狙った一石二鳥の部下育成と言えるでしょう。

留意したいのは、メインプレイヤーへのトランジション中の若手は、そうは言ってもまだ一人で後輩を育てられるだけの力はないということです。

新入社員の指導を任せっぱなしにするのではなく、マネジャーとしてしっかりとサポートすることで、三位一体となった育成ができるのです。

メインプレイヤーへのトランジションで、後輩指導に関わる項目を確認してみましょう。

次のようなことが、メインプレイヤーに、「入口のサイン」を気づかせることになります。

後輩からアドバイスを求められる後輩にとっての手本になることを求められる後輩指導を通じて、次のような体験がトランジションを促進させます。

後輩を指導しながら、課題解決をともに進める体験他者の成長に貢献する経験を積む体験が挙げられます。

一方、スターターの育成には、次のような関わりが大切です。

お手本として助言する、励ます、安心できる関係を作るできたことを承認する、できていないことを示す、学びを意味づける一緒になって喜ぶ・くやしがる・なぐさめるこれらの関わりを通じてスターターは先輩の動向に目がいく、学べるものは学ぼうとするという出口に到達していくのです。

周囲の関わりには、メインプレイヤーなどの先輩からの関わりが効果的な場合と、マネジャーの関わりが効果的な場合がそれぞれあります。

たとえば「一緒になって喜ぶ・くやしがる・なぐさめる」といったことは、比較的立場の近い先輩からのほうが、同じ目線で伝わりやすいと考えられるでしょう。

一方で「できたことを承認する、できていないことを示す、学びを意味づける」という関わりは、まだ先輩社員でも少々荷が重いところもあるかもしれません。

ですから、場面に応じて、あなた自身が直接指導したり声をかけたりするのか、それとも指導を任せる部下からの関わりを重視するのかをすり合わせておくとよいでしょう。

メインプレイヤーをスターターの指導役にし、両者の成長を図るには、次のような取り組みが有効です。

・メインプレイヤーと一緒に、指導するスターターの育成計画を立てる・その計画に基づいて、育成のPDSを回す支援をする。

具体的には定期的なミーティングやスターターを交えての三者面談を実施する・仕事の報告をあえてスターターにさせることで、スターター本人の理解度を測るとともに、メインプレイヤーの指導の状況についても確認するここで、ある事例を紹介しましょう。

商社で働く2年目社員のCさんは、1年目に自分のメンター(指導係)になった先輩社員のことを話してくれました。

「先輩は当時4年目で、かなり厳しい人でした。

口調はやさしいんですけど『全然ダメだね』と言われることが多くて……。

でも、私がミスをして上司に叱られたとき、先輩はまったく飲めないはずなのに、飲みに誘ってくれました」Cさんはその場での先輩の言葉が、すごくありがたかったと言います。

「先輩は自分の新入社員の頃の話をしてくれて。

『俺も仕事が遅かったんだよ』とか『俺が1年目のときよりも、お前はよくやってるよ』とか。

嬉しかったですね。

『4年経てば人並みにはできるようになるから』と言ってもらえたのも安心しました」その先輩は1年で異動してしまったそうですが、異動した後もたまに様子を見に来て気にかけてくれていたそうです。

「3カ月ぐらい前ですかね、先輩がスッと来て、『大丈夫?問題ない?』と聞いてきてくれたので『大丈夫です』と答えると、安心した顔をしてました。

部署が変わっても、気にかけてくれていることが純粋に嬉しかったですね」Cさんの下にも、今は後輩が1人いるそうです。

「後輩が入ってくると、やっぱり自分がしてもらったように面倒を見なければいけないなと思うんです。

メンターという立場になって分かったんですが、実は先輩の私に対する指導は、課長と役割分担してやっていたんですよ。

課長が厳しく指導して、先輩がそのフォローをする、という。

今、自分も課長と一緒に新人にどう接するかという話をしていると、自分が指導してもらったことのありがたみがよく分かります」この会社の方には他にも話をうかがいましたが、皆さん口々に「後輩を育てるのは当たり前のこと。

自分もそうやって育ててもらってきたから」と言います。

自分が先輩に育てられてきたからこそ、自然と自分も後輩を育てる番だと思える。

時間を超えて、育成される、育成する、という「育成の連鎖」が起こる風土があったのです。

このように、職場に新しいメンバーが加わるタイミングでステージ転換を意図してペアを組ませることは、非常に効果的な方法でしょう。

レベル3部下同士が、多対多でトランジションを促進し合っている状態次のレベルは、部下同士を結ぶ関わりの矢印が全員に張り巡らされている状態です。

リーディングプレイヤーのようなある特定の部下が他の部下に集中的に関わっている、またはスターターやプレイヤーのようなある特定の部下だけが指導育成を受けているといった状態ではなく、先輩・後輩関係なく全員が全員の成長に向けて関わろうとしている状態です。

このような状態を作ることができれば、マネジャーがいちいち口を出すことがなくても職場のあちこちで、お互いのステージ転換を促すやりとりが生まれているはずです。

マネジャーにとって部下育成の面では理想とする職場の状態と言えるでしょう。

少し焦点を絞って、プレイヤーへのトランジションに目を向けてみましょう。

特にプレイヤーへの転換は、スターターの後輩が職場に配属されるような入口のサインでもなければ、ステージの変化に気づきにくいものです。

そしてそれは、本人が気づきにくいだけではなく、周囲の他の部下にとっても同様です。

いつまでも「あいつは一番下っ端」「まだ経験が浅いからこれくらいしかできないのは仕方ない」という認識が、なかなか払拭されないのです。

ですから、あなたがスターターの部下をそろそろプレイヤーへトランジションさせようという意図を持ったときは、チームのメンバー全員にその部下がプレイヤーへのトランジションを迎えていることを周知し、全員からの意図的な関わりを促すことが効果的です。

このようにして、「多」対「1」という関わりを作ります。

プレイヤーへのトランジションでは、特に、チーム全員が

職場全体で一緒に考える詳しい人やキーパーソンを紹介する次の機会にチャレンジしようという動機づけをするという関わりをしていくことが大切です。

このようなサポートがあってこそ、プレイヤーは関係者の話を、意図も含めて理解できる関係者と話すときに自分の意図を盛り込める自分で解決できなくても、誰に聞けばいいか分かってくるという出口に近づくことができるのです。

実例をご紹介しましょう。

DさんはIT系企業に勤める3年目社員です。

3年目になって他部署とのやりとりが増えたところで、うまく仕事が進まないことに悩んでいたそうです。

「とにかく、何かをお願いしに行くことに抵抗があって。

きちんと頼めないから、相手も期日までに仕事を上げてくれなかったりする。

悩んでいたときに、職場でポロッと『今度あの人とこんな仕事で関わるんですよね』という話をしたら、普段はあまり一緒に仕事をする機会のない先輩に聞こえたようで、『あの人はこんなタイプだから、お願いの仕方をこんな風に気をつけたほうがいい』だとか『私はあの人と明日話す機会があるから、声をかけておいてあげるよ』なんて言ってくれて、そこから、とても仕事がスムーズに進むようになったんです」これが一つのブレイクスルーだったとDさんは言います。

また、上司がいろいろな場で「Dさんはこんなことに詳しい」「こんなことができる」と宣伝してくれたので、そのうち他の先輩からも意見を聞かれるようになってきたそうです。

「もともと上司からは、『お前をうちの職場に引っ張ってきたのは、うちのメンバーが持っていない専門性があるからだ』ということは言われていました。

実際に、『この件だったら、Dに聞いてみな』といったことを、職場でどんどん言ってくれたんです。

これが自信にもつながりました。

すると他の先輩も、他部署の人が相談に来たときに『Dに聞いてみるといいよ』とつないでくれるようになりました」このような関わりが周囲からあったことで、「ずいぶん仕事が進めやすくなりました」とDさんは振り返っています。

Dさんの職場では、上司や先輩が皆、積極的にDさんに働きかけていることが話から伝わってきます。

プレイヤーに、チーム全体で関わる風土を作るポイントを整理しておきましょう。

・課会やミーティングの中でプレイヤーに意見を求め、それに対して他のチームメンバーがリアクションするような働きかけを行う・小さな仕事であっても、「意図的に他部署の関係者の協力を引き出さなければいけない仕事」を割り当てるDさんの事例では、先輩「多」が後輩「一人」に関わる「多」対「1」の例を紹介しましたが、後輩が先輩のトランジションを促進するために関わる「多」対「1」もあります。

たとえば、リーディングプレイヤーが、小チームやプロジェクトチームのような形でプレイヤーやメインプレイヤーと一緒に仕事をしているとします。

リーディングプレイヤーはその協働する後輩の指導や、チーム全体に目を配ってチーム運営をすることが役割として求められるわけですが、当然これは容易なことではありません。

リーディングプレイヤーである先輩は、後輩への仕事の頼み方や指導の仕方などを迷いながら行っていて、後輩も先輩のチーム運営のあり方についてどこか疑問を感じなら日々仕事している、というのはよくあることです。

もちろん、それを後輩が先輩にストレートに言うことは抵抗があってなかなか難しいでしょう。

だからこそ、先輩社員にとって後輩から言われたひと言というのは、心に刺さるひと言になることが多いのです。

先輩社員は感情的になることなく、後輩からの率直な進言に耳を傾けることで、多くを学ぶことができるのです。

そのためにも、後輩は先輩に対して「もっとこうあってほしい」「今の仕事の進め方で困っている」など、臆することなく、率直に伝えてほしいものです。

マネジャーとしては、こういう後輩から先輩への率直な関わりを奨励し、背中を押してあげることが重要です。

また日頃から、誰もが意見を言いやすい職場環境であることも重要です。

風通しのよい組織においては、スターターやプレイヤーといった後輩から、メインプレイヤーやリーディングプレイヤーといった先輩の育成に向けた関わりが生まれてきます。

これによって、「多」対「多」でトランジションを促進し合っている状態ができていきます。

ここまで読んできて、現実はなかなか難しいと感じた方もいるでしょう。

たしかに簡単ではありません。

一朝一夕にこのような職場を作れるわけではありませんが、レベル3の職場作りを目指して、企業で取り入れている手法がありますので紹介します。

育成コーチングと、育成チームミーティングここからは、ステージ別育成をチームに取り入れていく際に効果的なマネジャーと部下の1対1の関わりの手法と、チームでの育成ネットワーク作りのための手法をご紹介します。

名づけて「育成コーチング」と「育成チームミーティング」です。

「育成コーチング」は、部下と1対1で話すものです。

部下へのコーチングを終えたら、職場全体で行う「育成チームミーティング」を実施すると効果的です。

(1)育成コーチングステージ別育成をチームに取り入れていくときにまず大事なことは、上司であるマネジャーと、育成しようとしている部下の間で、トランジションの状況認識のすり合わせができていることです。

具体的には、その部下が現在どのステージにいるのか、どんなことが期待されているのか、トランジション中なのか否か、成長課題は何かといった内容について、部下本人の認識とあなたの認識をぴったりと合わせるということです。

ここが合っていなければ、いくらあなたが一生懸命指導しても、部下本人にとっては的外れなものになってしまうでしょう。

始めは大変かもしれませんが、一度、一人ひとりの部下とじっくりと話す機会を作りましょう。

驚きや発見があるはずです。

「思っていた以上に、部下は自分の成長課題を的確に認識していて、頑張ろうとしていた」「自分が周りから期待されていることにまるで気づいていなくて愕然とした」という気づきがあるでしょう。

このコーチングの時間こそ、部下にとってみればあなたから「入口のサイン」や「出口のサイン」を示されることになるでしょうし、「トランジションを促進する周囲(上司)からの関わり」を受ける場になるでしょう。

「トランジションを促進する体験」となる仕事を割り当てられる場になるかもしれません。

具体的な進め方は、次の図をご覧ください。

(2)育成チームミーティングステージ別育成をチームに取り入れ、多対多の関係を作るには、部下同士も、互いのトランジションの状況について理解しておくことが大切です。

(1)の育成コーチングですり合わせたことを、他の部下にも知っておいてもらうことで、互いに日常業務の中でアドバイスしやすくするのです。

具体的には、部下一人ひとりが自分はどのステージにいて、トランジションの状況はどうなのか、何が成長課題なのか、そして周囲の同僚には普段からどんな関わりをしてほしいのか、ということを部下自ら語り、それに対して周囲の同僚はアドバイスを送るというものです。

このミーティングでは、自らが課題を考えて口にするため、他のメンバーは本人にアドバイスを伝えやすいというメリットがあります。

特に後輩から先輩に対して、「確かに先輩はそういうところがあるかもしれません。

たとえばこの前、あの場面で私はそういう風に感じたことがあります。

もう少し、こうしていただけるとうまくいくかもしれません」といった具合に、普段言いにくいことでも伝えるきっかけになりやすいのです。

先ほど紹介した面談は1対1、こちらはチーム全員というミーティングの場ですから、ファシリテーション(進行)の難しさはあります。

しかし、効果は抜群です。

この手法は、職場に育成ネットワークを作る上で、非常に大きな効果があります。

具体的には、・チームをレベル3の、部下同士が多対多でトランジションを促進し合っている状態に、意識をより高めるために手を打ちたい・新しく作られた組織で、短期間にチーム力を高めなければいけない・あなたがマネジャーとして新たな職場に異動し、部下一人ひとりの状態を把握したいといった場合などに、実施してみることをおすすめします。

一方で、「部下の業務時間を奪うことになり、理解を得られないことが心配」「部下が評価を下されていると捉えて反発しないのか」といった懸念を抱かれる方もいるようです。

だからこそ、実施に際しては留意点として、・この取り組みの目的は、あくまで部下全員の能力開発のために行おうとしている・上司であるあなた自身が、そのために協力したいと思っている・この取り組みは、部下を評価をするものではないし、人事考課などに用いることは一切ないということをきちんと説明して、進めていくことが必要です。

次の図の進め方を参考に、あなたの職場の状況やメンバー構成も考慮しながら、アレンジしてみてください。

トランジションが起こるチームを作るためにここまで、「ステージ別育成をチームに取り入れる」というテーマで、「マネジャーが個別に関わることなく、チームメンバー同士がお互いに関わり合いながらトランジションを促進しているチーム」を作ることを目指して、取り組みのヒントをお伝えしてきました。

皆さんの中には「とてもじゃないが、自分の課・チームではこんな部下同士の関わりは望めそうにない」だとか「理想としては分かるが、いきなりこのレベルを目指すのは難しい」と尻込みする方もいらっしゃるでしょう。

確かに、チーム全体のレベルを上げるということは、何か手を打ったからといって、すぐさま成果が上がるようなものではありません。

しかし、継続的にこのような取り組みを続けていくことで、必ずチームの変化の兆しを感じる瞬間があるはずです。

それこそ、マネジャーとしての部下育成の醍醐味を味わえる場面です。

自身の成長を実感する部下と、そんな部下を見て喜びと頼もしさを覚えるあなた。

そんな関係にすべく、チームを高めていきましょう。

 

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