イザナミ: ちょっと! そんな紹介の仕方をするから、みんなの顔がひきつってるじゃない! 私は殺人狂じゃないのよ!リュウ博士: だって、我々を 1日に 1000人殺すんですよね……。イザナミ: 私がそう言ったら、夫のイザナギちゃんが、 1日に 1500人を生むってすぐ返答したじゃない。この世界で人は毎日死ぬし、毎日生まれるでしょ? 私は「あの世」の神になったってことなのよ。あの世からこの世に出る「出産」と、この世からあの世に戻る「死」が私の担当ね。リュウ博士: (おっかないのに変わりはない気もするけど)イザナミ: 心の声がもれてるわよ。いますぐ死んでみる?リュウ博士: めっそうもございません!(汗)。イザナミ: あなただって、元をたどれば私が生んだんだから。死んだって元に戻るだけよ。リュウ博士: あ、そうなるんですか? つまり、すべての日本人の母だと?イザナミ: 神社好きじゃない人にそれ言ったら、キレられるわよ(笑)。神社好きな人でも、イザナギちゃんの子供って思っている方も多いかしらね。私が生んだ神もたくさんいるけど、アマテラスとかスサノオとか偉くなった神は、イザナギちゃんが「みそぎ」をしたときにひとりで生んだように書かれているから。リュウ博士: 三貴神(アマテラス、ツキヨミ、スサノオ)の皆様は、イザナギ様の御子とされていますよね。イザナミ: その前にイザナギちゃんが、死んだ私のいる黄泉の国に来て、約束を破って私を怒らせて大げんかして、「ケガレて」この世に戻ったじゃない? イザナギちゃんはそのケガレを水で清めたら、三貴神たちが生まれた。リュウ博士: そうでしたね。イザナミ: ということは「三貴神も私の子」ってこと!リュウ博士: え? なぜ、そうなるんですか? だって、イザナミ様の股から生まれた(注:女神に子宮や妊娠があるかは不明)神々たちは、イザナミ様の御子でしょうけど、三貴神様はイザナギ様の目と鼻から生まれておいでですよ!イザナミ: 三貴神の元をたどると、イザナギちゃんが黄泉の国で付けてきたケガレでしょ? そのケガレは私との大げんかで付いたんだし、さらにその元は私がイザナギちゃんに激怒したからよね。要するに三貴神の元は私の怒りと、その怒りを受けとめたイザナギちゃんなのよ。これって「性行為」と同じよね。リュウ博士: えぇ? どこが同じなんですか?(汗)。イザナミ: あの世とこの世の性行為って違うのよ。肉体を生む方法と、霊魂を生む方法は違うってことね。最初イザナギちゃんとは、「この世の性行為」をしたけど、私が火の神カグツチ(迦具土神)ちゃんを生むときに、股をひどく火傷して死んじゃったでしょ? で、死んで終わりのはずが、あきらめ切れないイザナギちゃんは黄泉の国まで来ちゃった。そして、大げんかした後、この世に戻ったイザナギちゃんから子供が生まれた。ここまではいいわよね?リュウ博士: そうですね。イザナミ: だったら、「やることやっちゃった」って考えるのが自然じゃない?リュウ博士: おぉ? いや、でも女性が子を生んだら、そう思うでしょうけど……。イザナミ: そう、男のイザナギちゃんが生んだ。これ、男女が逆転しているのよね。肉体を生む方法だって、ハタから見たら、女がひとりで子供生んだようにしか見えないでしょ? でも、元になっている男の精子があることを知識として知っているから、父親がいると思うわけで、それと同じ。ハタから見たら、男のイザナギちゃんが単独で三貴神たちを生んだように見えるけど、でも、元になっている〝女の何か〟があるって考えてもおかしくないでしょ?リュウ博士: その女の何かって何ですか?イザナミ: 女の怒りね。女の真っ直ぐな感情といってもいいかしら。リュウ博士: 女性の怒りが、霊魂を生むのですか?イザナミ: 女の真っ直ぐな感情を、男が受けとめると、霊魂が生まれるの。肉体を生む場合、男が出した精子を、女が卵子の中に受け入れて、生命が誕生するでしょ。霊魂を生む場合は、逆なの。女が出して、男が中に受け入れる。 「あの世の性行為」では、男の精子にあたるのが私の怒り、女の卵子にあたるのが私の怒りの攻撃を受けとめたイザナギちゃんの精神的な器とか度量ってやつね。出し入れするのは、精子や卵子のような物理的なものじゃなくて、気とかエネルギーと呼ばれる目に見えないものなのよね。その気を発するのが、感情ってこと。 だから私がイザナギちゃんにめちゃくちゃ怒ったのも、あの世の性行為ってことね。イザナギちゃんは最初、受けとめ切れずに逃げ出したけど、何とか全部受けとめて、この世に戻ったわ。イザナギちゃんに入れ知恵した神がいたわね。ククリヒメ(菊理媛命)っていうの。知ってるでしょ?
リュウ博士: 神話では、はい。しかし、にわかに信じがたいというかピンと来ないというか。イザナミ: まあ、目に見えないものね(笑)。ケガレってのは、霊魂にとっての受精卵のようなもの。みそぎをして、水で清めたら、霊魂が誕生するってわけ。このカラクリ、人類にとっては大事な話なのよ。女の怒りをどう扱うかって、原油や天然ガスより大事なエネルギー問題なんだから。気というエネルギーのね。リュウ博士: もっとくわしく聞きたいですね。イザナミ: 続きは我が愛しの夫イザナギちゃんに話してもらいましょう。約束を破るわ、私の怒りを受けとめ切れずに逃げ出すわ、しくじったのはイザナギちゃんなんだから! 怒った私がしくじったわけじゃないんだからね! イザナギちゃんにはありのままに受容してもらいましょ(笑)。リュウ博士: えー、ではまたイザナギ様、お出でいただけますか。イザナギ: 何か不満か?リュウ博士: いや、不満ということではなく……大変だなと(笑)。イザナギ: イザナミの後に出てきたら、分が悪いな(汗)。さっそく始めよう。女の怒りをどう扱うかの問題だったな。霊的に見れば、貴重な資源だってこと。いまふうにいうと、スピリチュアルなエネルギーってやつだな。リュウ博士: いや ~、女性の怒りって、男からしたら、触らぬ神に祟りなしですよ(汗)。イザナギ: 自分もそうだ(苦笑)。リュウ博士: だからお逃げになった。イザナギ: そうだ(笑)。それだけじゃないぞ! イザナミがこっちに出てこないよう、黄泉の国への出入り口をふさいだんだ! 1000人の人間が引っ張ってやっと動かせるほどのでかい岩「千引岩」でな!リュウ博士: て、徹底してますね(そんなに怖かったんだ……)。イザナギ: それだけ巨大なエネルギーなのだ、女の真っ直ぐな感情ってのは。怒り以外の感情でもいいが、怒りが一番真っ先に出やすいし、パワフルだな。女の怒りは、男の性欲を超えるエネルギーだからな。男の性欲が爆発的なエネルギーをもっていることは知っているだろう?リュウ博士: 男がもっている一番大きなエネルギーでしょう。それしかないかも(笑)。イザナギ: だよな。モテたいってだけで、男は体を鍛え、技を磨き、巨大な事業を起こし、偉大な芸術作品を生み出す。男の性欲は世界を動かす力そのものだ。リュウ博士: 英雄色を好むっていいますものね。イザナギ: そう。でも良いことばっかりじゃないよな。男の性欲は、罪を犯し、人を傷つけもする。性犯罪はもちろん、虐殺や戦争のような大きな暴力も、元は男の性欲だろう。人を救うときもあるが、もっと多くの人を傷つける。苦労してつくったものを、あっさり破壊してしまう。リュウ博士: 男の性欲と女の怒りが同じって言いたいのですか? 正直ちょっとピンと来ないというか、共通点はあるでしょうけど……。イザナギ: ふ ーむ、お前、何に性欲がわく?リュウ博士: そんなの私に聞かなくとも、コンビニの雑誌コーナーにでも行けばわかるでしょう(苦笑)。イザナギ: 神はコンビニには行かん。話を進めるぞ。相手に性欲がわくよな? 相手の体とか仕草とか吐息とか。リュウ博士: そりゃ、そうでしょう。何を当たり前のことをおっしゃるのです?イザナギ: 女も同じだと思うか? 同じようなものって思い込んでそうだけど、実際は相手に性欲がわくわけじゃないんだ。リュウ博士: と、いいますと?イザナギ: 自分で自分を素敵に感じることに性欲がわく、セクシーな気持ちになる。リュウ博士: んん? どういうことです?イザナギ: 妻のイザナミが何でオレを「愛しのイザナギちゃん」と言ってくれるかというと、オレといるとき、彼女は一番自分のことを愛しく思えるからだ。オレは強く彼女を求めていたし、大事にした。オレがそれほど熱心に見つめてくるから、こんな目で見られる私って……とイザナミは自分を鏡で見て「エロイっ!」と感じ、セクシーな気持ちにもなるんだ。リュウ博士: じゃイケメンが好きっていうより、イケメンに求められる私が好きってことですか?イザナギ: そうだ。女はきれいな女にあこがれるだろ? あの女のようになりたいとも思う。女は男に好かれるためにきれいになりたいのじゃなくて、自分に好かれるためにきれいになりたいんだ。それが女の性欲「性エネルギー」なんだな。リュウ博士: ふーん、男としてはつまらんし、わからん話ですね(苦笑)。
イザナギ: 男はイケメンにあこがれないからな。もし世の中に男しかいないなら、佐藤健や福山雅治になりたいとは思わんだろ? でも、女に好かれたいために、もっとお金持ちになりたいためにイケメンになろうと努力するやつはいる。これが男の性欲だな。で、男の性欲は世界を動かす力だったわけだが……。リュウ博士: わけだが?イザナギ: 男の性欲よりもっと強い、世界を動かす力「女の性エネルギー」が解放されたのが現代だ。裏を返せば、近代まではガッチリ女の力が封印されてきたからな。リュウ博士: 誰が封印したんです?イザナギ: オレってことになるな。正確にいうと、オレとイザナミの合意の上でってことだ。千引岩で黄泉の国の出入り口をふさいだのは、オレたちが、女の怒り・女の性欲を封印して、表に出さないようにしたって意味もあるんだ。リュウ博士: いったいなぜ、そんなことを?イザナギ: なあ、人間なぜ怒ると思う?リュウ博士: そうですね、ルネサンス期イタリアの政治思想家マキアヴェッリの言葉を借りると、自分のもっているものが奪われるときでは? 財産、名誉、権利、家族友達などを奪われるのは、民衆が君主を恨む最大の理由だそうですよ。イザナギ: そう、大事なものが奪われそうなとき、人は激しく怒るよな。守りたいものがあるから、人は怒る。イザナミ: じゃ、私が何で怒ったのか理解してる?イザナギ: わ! 出たっ!(逃走の準備)。イザナミ: はぁ ~っ……。これ、ため息じゃないわよ。拳に息を吹きかけてるの。リュウ博士: イザナギ様……。イザナギ: いや、オレのこういうところだよな、怒らせたの。わかってるんだが(汗)。イザナミ: こうなるのがわかっていたから、見るなと言ったのよ、私の姿を。リュウ博士: 差し支えなければ、イザナミ様解説を(土下座)。イザナミ: 私が黄泉の国に行って、醜い姿になったのは知ってるでしょ?リュウ博士: はい……。イザナミ: 私の醜い姿を見たら、こうやって、イザナギちゃんがおびえるのはわかってた。こんな目で見られてエロイ気持ちになんてなれないわ。リュウ博士: つまり、女性代表であるイザナミ様の性欲が封印された?イザナミ: これは封印じゃないわ、単に〝なえた〟のよ(笑)。なえたのはイザナギちゃんも同じよね。腐った死体を抱きたい男はいないでしょう。いたら変態の度が過ぎる。で、怒ったの。だって私の大事なものが奪われたのよ? 私の尊厳が。女神としての自信や誇りってやつが。「私が私を好きでいられなくなった」ってことよ。それで「恥をかかせた」と激怒したの。私を守るには怒るしかなくなったのね。イザナギ: そうだな……。イザナミは女を代表して激怒した。で、オレは男を代表して受けとめたら格好良かったのだが、逃げ出した(笑)。イザナミ: 男の性欲は消え、この世の性行為はできない状態ね。ところが、あの世の黄泉の国では、それでよかった。男の性欲は退場し、女の性欲の出番が来たのね。イザナギ: ククリヒメに、あの世の性行為のことを聞いてな。霊魂を生むときは女が出して男が中に受け入れると教えてもらった。で、イザナミの怒りを受けとめた。受けとめて、みそぎをし、三貴神や住吉三神、綿津見三神たちを生んだんだ。彼らは日本国の霊魂となり、天皇家を生み出した。リュウ博士: ほほ ~って、ククリヒメ様がそんなことを言ったなんて聞いたことないですよ! 何を言ったか不明って伝わってますけど。
リュウ博士: あー、そうしますか(笑)。あれ、しかし怒りを受けとめられたのなら、千引岩で封印したのは、なぜです? あなたがそんなことしたから、女性の性エネルギーも封印され続けたんですよね?イザナギ: んなもん、オレのために決まってるだろう? 女の性欲は、男の性欲より強い。世界を動かす力は、女の方が強いんだ。そんなすごい力、強力なエネルギーは独占したいし、封印したいじゃないか。千引岩の向こう側に出入りできるのはオレだけでいい。他の男に勝って、より女にモテるためにな。つまり、オレの男としての性欲がそうさせたんだ。リュウ博士: な、何と勝手な!イザナギ: オレ個人の考えというより、男社会ってそうだったんだよ。男社会のしくみは、女の性欲がもつ巨大なエネルギーを、夫のためだけに使わせるのが基本だ。王様だの貴族だの、ひと昔前まで権力者は複数の女を妻にしただろ? あれ、何も子供がほしいだけじゃないんだよ。妻の数が多ければ、それだけ夫は強くなるんだ。女の強力な性エネルギーを数多く味方にするわけだからな。リュウ博士: イ、イザナミ様はそれでよかったんですか?イザナミ: 私を大事にしてくれるなら、他のことは何でもよかったわね。イザナギちゃんを倒して王になる力もあったのよ。でも、それ「かわいくない」じゃない(笑)。男に「かわいい女」って思われたいわけじゃないの。私が私を「かわいい女」と思いたいのよ! それが私の性欲ってこと。私の方が夫のイザナギちゃんより強いからこそ、私は彼の陰にいることにした。女と男がお互いの性欲を満たす一致点が見つかったわけね。そして女は陰にいることになった。女の性欲も、夫の前で、陰でだけ見せるものになった。そのときだけ、女の性エネルギーの封印が限定解除されたってこと。リュウ博士: そうなのですね……。ただ、現代は千引岩でふさいだ封印、解かれつつありますよね? もう女性が陰にいる時代じゃなくなった。「女は陰にいろ」なんて男性政治家が発言したら、即辞任でしょう。イザナギ: ん、そうだな。それはかんたんな話なんだ。封印が解かれつつあるのは、いや、「すでに解かれてしまった」のは、女の怒りが原動力だ。たまったんだなあ、長年の怒りが。さっきイザナミが、「私を大事にしてくれるなら、他のことは何でもよかった」と言っただろ? イザナミがオレの陰にいてくれたのは、オレがちゃんとご機嫌をとったから。世界を動かす女の力を、オレだけのために使ってくれることに、感謝していたからだ。イザナミの方がオレより強いのにもかかわらず、な。ところが、時代が経つごとに、男の方が女より偉いって多くの人が勘違いしてしまった。腕力は男の方が強いが、けっして女より賢いわけじゃないのにな。この男の勘違いが積もり積もって、女の怒りも積もり積もって封印は解除された。イザナミ: そうそう、一夫一妻制が普通になったのも大きなきっかけよね。女と男が一対一なら女が勝てるの。でも他の女が後ろにいる男は強いのよねぇ(苦笑)。イザナギ: 一夫一妻制でも男の方がずっと強かったのは、男の家に嫁として女を来させたからだ。嫁に来させたら、姑が夫に味方するだろ? 妻は夫には勝てても、夫と夫の母親の連合軍には負ける。女は嫁っていう役割を解かれて、ようやく女にかかった封印も解かれたわけだな。リュウ博士: なるほど、じゃ男性の性欲が世界を動かした時代は終わって、女性の性欲が世界を動かす時代になったわけですね。イザナギ: 単純に裏返るわけじゃない。男は陰にいるの向いてないぞ? 何せ、凸凹の凸だ。体が出たがりにできてるんだ(笑)。ただ、どちらかというと女の性エネルギーが主流になる。千引岩はもうないしな。女は女の性エネルギーをどう使うと満足するのか、そして男の性エネルギーとどう統合していくのか、いまは試行錯誤している途中だよ。
リュウ博士: イザナギ・イザナミ夫妻の、女性の性エネルギーは封印されてきたというお話を聞いて、ひとつ疑問が出てきました。だったらなぜ日本神道の最高神は女神なのか? 神社の神様で「別格」としてもっとも尊崇されているアマテラス様は女神で、天皇家の祖とされています。アマテラス様はじつは男神である、なんて説もありますね。そこで講師にアマテラス様をお呼びし直接おうかがいしたく存じます。どうぞよろしくお願い致します。アマテラス: ……。リュウ博士: ど、どうされました? お気を悪くされたのでしたら、お詫びします(平身低頭)。瀧祭: 私がアマテラス様に取り次ごう。私は瀧祭神として知られる、伊勢神宮に流れる五十鈴川の神だ。アマテラス様は直接お前と話はしない。リュウ博士: お ー、そうですか。失礼しました。それではこうお尋ねいただけますか。あなたは本当に女神様なのですか、と。瀧祭: ふむ、ちょっと待ってな。アマテラス様(ごにょごにょ)……。ん、そうみたいだぞ。リュウ博士: あ、女神様だということですか?瀧祭: だな。さあ次は何だ?リュウ博士: (や、やりにくい)。瀧祭: ん、取り次ごう。アマテラス様、リュウ博士がやりにくいと申しております。リュウ博士: ちょっと! 心の声まで取り次がないで!瀧祭: お ー、そうかそうか。まあでもアマテラス様もやりにくいと思っているようだぞ。ただなあ、天皇としかアマテラス様は直接お話しされないのだよ。皇位継承の儀式を経た人間だけが、アマテラス様のお言葉を受けとり伝える資格があるのだ。リュウ博士: そうですよねぇ。無理なお願いでしたか。瀧祭: そうだ、セオリツヒメ(瀬織津姫)を呼ぶのはどうだ? 川の神仲間だから、声をかけやすいぞ。あいつなら誰とでも話すしな。それにアマテラス様男神説に直接関わっているのは、あいつだからな。リュウ博士: お ー、そうですか! ではぜひセオリツヒメ様にお越しいただければと思います。瀧祭神様、どうぞよろしくお願い致します。瀧祭: ん、わかった。おーいセオリツー、はいはいーセオリツヒメです ー。リュウ博士: ……(何を一人芝居しているのだ、このお方は)。セオリツ: 私がセオリツことセオリツヒメよ。ここから姫っぽく話してあげるわね(笑)。リュウ博士: 本当にセオリツヒメ様なのでしょうか……。セオリツ: 本当よ。でもウソくさい登場の仕方をしたのもわかってる(笑)。セオリツヒメっていろいろな人がいろいろな取り上げ方をして、何だか混乱しているのよね。リュウ博士: ご自身でおっしゃいますか!セオリツ: セオリツヒメは川の神でしょ。だったら五十鈴川の神である瀧祭神であったとしても不思議はないわよね? 瀧祭神がセオリツヒメである証拠はないけど、でも瀧祭神はセオリツヒメとは違うって証拠もないのよ。だったら瀧祭神はセオリツヒメなの。リュウ博士: それ、悪魔の証明ってやつじゃないですか! 「ない」と証明できないなら、それは「ある」ってやつ。セオリツ: そうね。私に関する説って悪魔の証明的なのも多いわ。私が瀧祭神だとする理屈はもうひとつあるの。それはね、私がアマテラスの皇后だとしている『ホツマツタヱ』という文献があるのね。漢訳されて『秀真伝』ともいうわ。皇后なんだから、夫のアマテラスに取り次ぎをしても不思議ではないってことね。リュウ博士: 〝アマテラス男神説〟の文献ですよね。それで、男神なのでしょうか? アマテラス様はあなたの夫なのでしょうか?セオリツ: 本当よ、と答えたら信じるのかしら? それともウソよ、と答えた方が信じるのかしら?リュウ博士: じらさないでください! どっちなんですか?セオリツ: どー ーーでもいいですよ ♪ ってのが答えね。リュウ博士: (からかわれているか、相手にされてないんだなあ)。セオリツ: あら、ちょっと怒っているわね。でも本気で答えているんだけど? あなた、私がどういう神なのか、少しは知っているでしょ?リュウ博士: 国中の罪ケガレを祓う、川の神です。セオリツ: そう、祓いの神、水で罪ケガレを清める「みそぎ」の神ね。リュウ博士: ということは、どういうことなのでしょうか……。セオリツ: 私のもとに国中の罪ケガレが集まるのよ? 本当かウソかわからない怪しい説にまみれるのも、私らしいの(笑)。で、それを全部「水に流す」ってこと。リュウ博士: 本当かウソか、ではなく、水に流せと。アマテラス様が男神か女神かも、気にするなとおっしゃいますか?セオリツ: 男か女かなんて、その質問が浅すぎるってこと。仮にアマテラス様が男神だったとして、それ、ただのワイドショーネタよ。神話なら、もっと深い意図がある。男か女かに「事の本質」はないわ。さらにその奥に事の本質があるってことね。リュウ博士: くわしくお聞かせください!セオリツ: イザナギ様が千引岩で黄泉の国への出入り口をふさいで、女性の怒り・女性の性欲を封印した。女性を表に出さないようにしたって話は聞いたわよね。
わよね。なのになぜ神様のトップは女神のアマテラス様だったのか?リュウ博士: はい、そこです。矛盾していませんか?セオリツ: まったく矛盾していないわ。話の筋が完璧に通っているもの。アマテラス様の「岩戸開き」の神話は覚えているわよね。傷ついたアマテラス様は岩戸にお隠れになった。岩戸だから、大きな岩の扉ってことね。もうわかるでしょ? 夫イザナギ様に激怒し、巨大な岩に封印された妻イザナミ様。弟スサノオ様に激怒し、巨大な岩の向こうに隠れた姉アマテラス様。どちらも男に怒った女が、大きな岩で間をふさいだ神話ね。太陽神であるアマテラス様のお力もまた封印された。ただ、その後アマテラス様は、神々の儀式によって、岩戸から外に出てきた。『古事記』『日本書紀』に書かれたのは、女神の力は封印されたということ。でもいずれ出てくるし、封印を解く方法もあるよっていう予言でもあったのね。リュウ博士: なるほど、そしてその封印を解く方法が……。セオリツ: そう、神社!リュウ博士: そう、神社!リュウ博士: なるほど、神社参拝が女神の封印を解除する鍵だったのですねぇ。セオリツ: あら、あなたってかなり単純? お人好しというのかしら。リュウ博士: むむ? 何かちょっとバカにしていますね?セオリツ: あーら、そんなことないわよお ♪ ただね、封印を解く鍵があるなら、封印をする鍵だってあるでしょ? どっちも同じ鍵だと思うけど。リュウ博士: つまり、神社は女神の封印をし続けていた場所ともいえるのですか?セオリツ: そうそう! 封印されていたのに気づいたら、その封印を解こうなんて思う人は少数派よ? むしろ封印されたままにしておこうと思うもの。あなた金庫が閉まっていたら、開けようとする? 開けたくなるのは泥棒くらい。むしろ大事なものが保管されていると判断して、金庫を守るんじゃない?リュウ博士: むむむ、たしかに……。セオリツ: イザナミ様やアマテラス様を被害者だと思っているのかな? 被害者なら救出しないとね。でも最強の神イザナミ様と最高の神アマテラス様よ。封印されたというより、「知 ーらないっ!」ってキレて閉じこもったのよ(笑)。リュウ博士: イザナミ様とイザナギ様の場合、両神合意のもとってことでしたね。セオリツ: そうそう。男の方が女より偉いっていう男の勘違いが積もり積もって、女の怒りも積もり積もって、そんな人々が神社参拝して封印は解除されていったわけ。これね、地上の女が怒るほど、黄泉の国の女神の怒りは減っていったのよ。表と裏ってそういう相反する関係なの。女神の怒りが減っていったら、「知 ーらないっ!」って気持ちも減るわよね。そうしたら女神は岩の外に出ていく! この先も男の勘違いはあるでしょう。そのたびに女の怒りは爆発し、女神の怒りは減って、女神の封印は解除され女の性エネルギーは解放されていくってことね。女の怒りも女神封印解除の鍵だけど、男の勘違いも女神封印解除の鍵だってこと。失言する男にも、時代を動かすお役目があるのよ。リュウ博士: なるほど、時代を前に進めたい人にとって、時代錯誤の失言ってじつは喜ばしいことなんですね。怒るけど裏で笑顔みたいな(笑)。
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