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4「新規事業」よりも「既存事業」

 隣の芝生は青く見えます。いまやっていることがうまくいかない場合、つい、うまくやっている他人の成功に目を奪われてしまうのが世の常です。特に、厳しい時代はそう思います。そこで、新規事業に乗り出し失敗、という企業が少なくありません。「介護」が伸びそうだ、「環境」がよいなどといって新規事業で失敗した会社がどれだけ多いことか。  わたしは、既存事業で泣かず飛ばずで、やらなくてもよい新規事業に「逃げ込んで」失敗している、としか言いようのないケースをたくさん見てきました。失敗するのが当たり前だった会社も少なくありません。だって、内容をよく知っている既存事業でうまくやれない会社が、よく知らない新規事業でうまくいくわけがないじゃないですか。  ビジネスは「市場における他社との競争」ですから、市場のないところでは成り立ちません。したがって、もし、既存事業の市場が現在、あるいは近い将来に十分でない場合には、新規事業に乗り出さなければなりません。そうしないと、いずれ他社ともども立ちゆかなくなりますから。しかし、現在の市場が十分にある業界は違います。  そもそも、新規事業が成功する確率の高い企業というのは、既存事業でも十分に成功しているところなのです。  だから、新規事業にチャレンジするなと言っているのではありません。むしろ、いろいろなことをやってみることには賛成です。でも、何でもやればよいというものではない。こういう供給過剰の時代には、強みを生かせる分野に資源を集中することです。ビジネスのコツのひとつは「何でもかんでもやらない」ことです。  ピーター・ドラッカーは、企業がやるべきこととして次の三つを挙げています。   1  既存事業の業績向上   2  機会の追求   3  新規事業  たしかに、新規事業も重要です。でも、三番目です。企業は環境の変化に合わせて常に挑戦し続けなければなりませんが、その挑戦の一番目は既存事業です。それを「徹底」する。二番目の「機会の追求」とは、既存事業の周辺分野や周辺地域に進出することをいいます。新規事業は最後なのです。  「事業ドメイン」という言葉があります。ドメインとは「領域」という意味です。得意な領域で勝負をするというのが、供給過剰時代のビジネスの大原則です。ビジネスでは資源の集中が鉄則ですが、ではどこに集中させるべきかといったら、得意な分野に、です。  得意な事業領域に資源を集中してこそ他社との違いを明確にできます。  一方、既存事業であれ新規事業であれ、挑戦するときの鉄則は、「小さなリスクは恐れるな、大きなリスクはとるな」です。よく社運をかけた英断で会社をよみがえらせた経営者の話がもてはやされますが、そういうケースの背後には、その何十倍、何百倍もの失敗のケース、消えていった会社があることを忘れてはいけません。さらに、イチかバチか、社運をかけなければいけないところに追い込まれていたという事情があったことも!  大きなリスクをとるほうがかっこよく思えるかもしれませんが、小さなリスクを常にとり続けることで、大きなリスクは回避することができます。小さなリスクをとって常に挑戦していないから、つまり、長い間、環境の変化に対応しないできたから、「社運をかけた決断」をしなければならなくなるのです。  企業は、社運など簡単にかけてはいけないとわたしは思います。社運をかけたりしなくてもいいように、常に小さなリスクをとりながら挑戦し続けるのがよい。それは、人生でも同じではないですか?  小さなリスクを常にとり続ける会社は、社内でも「挑戦」する社風が生まれやすくなります。小さなリスクをとらず、最終的に大きなリスクをとらざるをえなくなる会社には、ふだんは挑戦を行わず、言われたことを言われたようにやっている社員が増えます。会社に躍動感がなくなりがちです。  小さな挑戦は、前向きな社風づくりの基礎ともなるのです。

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