いろいろとある利益の抽出方程式のなかでも、最も基本的なものは、次の二つである。
売上高=単価×数量
売上高―経費=利益
この方程式が意味するものは次の三点に要約される。
① いかに単価を上げるか(商品力)。
② いかに販売数量を増やすか(販売力)。
③ いかに経費を下げるか(コストダウンカ)。
これが売上げを増やし、利益を高めるのに必要な基本的な考えである。この方法はきわめ
てシンプルなので、迷ったときにまず第一に戻るべき経営の原理・原則、公式である。
さらにこの方程式から、次の方程式が導かれる。
売上高―利益=経費
経費十利益=売上高
この方程式が意味するものは、
①売れないときは無理して売らない。それに見合う経費に抑えること。
②経費がどうしても必要ならば、それにふさわしい売上げを確保すること(できもしな
い売上げ計画はやめたほうがよい)。
③売上げを最大限に、経費を最小限に(京セラ。稲盛和夫会長の言葉)。
ただ、この数年と来たる二一世紀においては、これだけでは収益が簡単に実現しようはず
もないc
次の三つの方策を行なうことであろうが、これらを別々に実践するのではなく、ミックス
した方策をとるべきである。
①販売力を磨く。
②コストダウンカを磨く。
③商品力を磨く。
一販売力が第一」とセールスマンの数を確保し、教育訓練を行ない、動機づけを徹底しても、
なかなか販売成果が出ない。また、コストダウンも仕入先の協力を得て、さらに、あるとき
には強権を発動し、VA(価値分析)、VE(作業分析)活動を行ない、ケチケチ作戦を展開し
ても、ものの二年も実施すれば、もうそれ以上に効果のあるコスト低減策が見つからない。

しかも売上げ単価は、せっかくコストダウンした以上に、
急ピッチで下がり続ける。商品企画力が生命である見込
み産業の優良企業ですら、売上げ単価は決して上がらな
いどころか、商品寿命もますます短命になりつつある。
こうした事態を打開するための方程式として、私は図
表318の式を提案したい。
商品力と販売力は車の両輪のように世間の人は言うが、
私はそうは思わない。大型トラックの車輪の片軸には二
つのタイヤがついている。私は、商品力と販売力はちょ
うどそれと同じ関係にあると思う。いまの長期不況を突
破するには、片軸に商品力と販売力の一軸二輪、左右四
輪のスタイルでなければならない。そのためにはマーケ
ティングカ・マーケティング思考が欠かせず、従来のよ
うな営業部、製造部、仕入れ部門といった発想では絶対
にやっていけない時代なのである。
私がアドバイスしているのは、営業会議は、販売会議と商品開発会議を別々に行ない、そ
れぞれの機能を明確に区別することである。ところが、大半の企業はこの二つの機能をごちゃ
まぜにして実施しているし、営業会議には商品開発という視点が欠けている企業も多い。花
王などの大手メーカーがプロダクトマネジャー制度を導入しているように、製造つまり商品
力と販売は本来一体のものであり、そうでなければ効果が上がらない。
売れる商品づくりに成功しさえすれば、従来の営業部門などは要らない。中国に「桃の木
があれば自然とそこへの道ができる」という意味の古いことわざがあるが、まさにそれと同
じことである。商品力と販売力はそもそも一体のものなのである。
もっとわかりやすい例をあげれば、これはちょうど寿司店のお寿司のつくり方、「立ち」カ
ウンター席のやり方である。寿司店には立ち(タチ)と館(ヤカタ)があり、立ちとはカウンター
席、館とはテーブル席を指す。館ではウエイトレスやウエイターがメニューのセット物の注
文をお客から聞いて調理師がつくるが、立ちでは調理師がお客様の好みの品の注文を自分で
聞いてつくる(高い)。こここでは生産部門と営業部門が分かれておらず、まさに製販一体で
ある。
そして店には店長(管理責任者)と調理長(生産販売責任者)がいる。立ちではお客が座って
注文してから一分もかからず、品物はお客に出される。お客のどんな注文にも応じてすぐに
つくり、セットメニュー(定番商品)より高額で売る。
この章の第3節でハーバード大学のハンセン教授のマーケティングの定義を説明したが、
例にあげた寿司店の立ちのように、マーケティング活動は「つくる(仕入れる)」ことと「売る」
ことは、別々の行動ではなく、顧客の要求するものをつくって売っていく一連の行動なので
ある。
部門の異なる製造部門がつくったものを、営業部門が無理矢理に押し込み営業したり、お
願い販売をすることは、マーケティングとは言えないのである。そして製造部門と営業部門
が一体となって行動するためには、本当に売れる「キーワード」を両者が共になって探し、そ
れを現実の商品づくリヘと具体化していくマーチャンダイジング活動(商品化計画、商品企
画)が大切になってくるのである。

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