社長が動かなければ、社員は動かない。社員を動かす「特別な方法」などない。自分が動く。それを見て社員が動く。そういうなかで良好な人間関係も築かれていく。
――従業員の勤労意欲をいかにして盛り上げればよいのかで頭を痛めております。
何かそのためのよい方法があればお教えいただきたいのですが……。
松下 昔の日本に「頭回らなければ尾も回らん」という言葉があるんですよ。
だから百人の人を緊張させて、大いに成果をあげようと思えば、あなたの活動をはたの人が見て〝気の毒な〟というようにならんといかんでしょうな。うちの社長はもう一所懸命にやっている、〝もう気の毒や〟という感じが社員のあいだに起これば、全部が一致団結して働くでしょう。
けど、そうでないかぎりは、あなたの活動の程度にみな働くでしょう。
(笑)私はそう思いますね。
人間というのはそんなものです。だから決してぼろいことはないわけですね。自分はタバコくわえて遊んでいて、「働け」と言うたって、そら働きよらんですよ。(笑)
私はそう考えてやってきました。
それともう一つは、あなた自身が働きがいを覚えることが大事ですね。
自分が雇っている人がほんとうによくやってくれる、もったいないほどよくやってくれる、自分もうっかりしてられんわい、というような気分があなたに起こるということも、それとまた相対した一つの姿でしょうな。
そういうことによって人間関係ができていく。
その人間関係によって、いまあなたが希望されるようなことが達成されるのではないかと思いますね。
そのための一つの方法として、あなたが意見を求めるということをしきりにやらないといかんですね。面倒やけどいっぺんあの男の意見も聞いてみようと。
「こういう問題、きみどう思うか」と、立ち話でもいいと思うんです。つまり、皆に相談して、皆がそれに関心をもってやるという方法がいいのではないかと思いますね。
百人ぐらいであれば私はそれができると思うんです。
たくさんになるとちょっとむずかしいですが、それをやるのに百人ぐらいがいちばん使いごろやないですか。そういうようにまあ感じますがね。
特に方法というのはないと思います。あなた次第だと思いますね。
〔一九六二〕
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