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3章ステージ別に部下を育てる

目次

3章ステージ別に部下を育てる

マネジャーが、部下に関わる3つの場面(1)スターターの育て方(2)プレイヤーの育て方(3)メインプレイヤーの育て方(4)リーディングプレイヤーの育て方ステージ別育成の具体策:ある営業部の場合(1)スターターの育成(2)プレイヤーの育成(3)メインプレイヤーの育成(4)リーディングプレイヤーの育成日常のやりとりの中で、部下の状態が見えてくるコラム職場で学ぶことと、研修で学ぶこと

3章ステージ別に部下を育てる

マネジャーが、部下に関わる3つの場面2章では、ビジネスパーソンが仕事の体験や周囲との関わりの中でトランジションしていく過程を紹介しました。

3章では、部下をトランジションさせるために、上司として具体的にどう関わればよいのか見ていきます。

「伸び悩んでいる若手がいる」「中堅に自覚が足りなくて困る」といった課題を解決するヒントも得られるでしょう。

部下がどのステージにいたとしても、トランジションを促進するためにマネジャーとして関わる場面は次の3つです。

(1)仕事を割り当てる(2)良し悪しを伝える(3)支援するここからは、ステージ別に(1)〜(3)の場面で具体的に何を行えばいいのか、説明します。

1スターターの育て方スターターのステージでは、社会や会社の一員であるという姿勢を持ち、周囲との関係性を築くことが求められます。

しかし、自分が納得できないことやうまくいかないことを他者や環境のせいにしてしまい、職場にうまくなじめない場合もあります。

そうならないよう、上司として次のような関わりを実践してください。

(1)仕事を割り当てるお客様や他部署の視点に触れる機会を作る「相手はどう考えているのか」を意識する・想像することは、ビジネスパーソンにとっては非常に重要な姿勢です。

スターターには、他者の視点に触れさせる機会をできるだけ多く作ってあげましょう。

たとえば、他部署とのミーティングやお客様への訪問などです。

その際、他部署の人に、「私たちはこう考えている」ということを分かりやすく発言してもらえるよう、お願いしてもよいでしょう。

できるだけ多くの同僚・先輩と触れ合う機会を作るスターターには、自分から積極的に周囲の人と触れ合って、職場になじんでほしいと思うものですが、なかなか自分から声をかけていくことは難しいでしょう。

そこで、上司としては、歓迎会やランチの場などを利用して、とにかくスターターが周囲とコミュニケーションを取れる機会を数多く与えることを意識しましょう。

「新人とランチするバトン」を作って部署内で順番にリレーする、といったイベントにしてもよいでしょう。

(2)良し悪しを伝える小さな前進を認めるどんな些細なことでも、「新たにできるようになったこと」を見つけたら、積極的にほめて認めるように心がけましょう。

周囲から見ると何でもないことであっても、スターターにとっては大きな出来事です。

見逃さないよう注意しておきましょう。

社会人として求められる「基準」を明示するスターターは、何がビジネスパーソンとしてふさわしい行動なのかという基準がまだ持てていません。

服装や言葉遣いなど、学生であれば問題にならない行動でも、職場にふさわしくないものは多くあります。

この時期に身につかなかったことは後から直すのは難しくなるので、時には厳しく伝えることも必要です。

(3)支援するこまめに声がけを行い、職場への安心感を醸成するスターターの状態として一番避けたいのが、周囲となじめず、コミュニケーションが取れなくなることです。

スターターが困ったときにはいつでも相談に乗れるよう、普段からこまめな声がけを行い、安心感を持たせるようにしましょう。

たとえ、あいさつだけであっても「見ていてくれている」という感覚を持つものです。

他の部下からも話しかけるように言っておきましょう。

他者視点で考えさせるお客様や他部署の視点に触れる機会を作ったとしても、スターターが自分自身で「相手の期待は何か」ということに思いを巡らせるのは、そう簡単ではありません。

上司としては、「お客様から見るとどう見えるだろう?」「さんの期待は何だろうね?」といった問いかけを意識的に行うことで、新人に考えさせる支援を行いましょう。

たとえば服装についても、ただ規定に従って注意するのではなく「お客様が見たらどう感じると思う?」といった観点から自己チェックをさせるとよいでしょう。

2プレイヤーの育て方プレイヤーのステージは担当業務を持った上で、自ら働きかけて周囲に教えを乞い、責任を持ってやりきることが求められます。

しかし、うまくいかないときに、一人で悶々と問題を抱え込んだりする場合もあります。

そうならないように、上司として次のような関わりを行いましょう。

(1)仕事を割り当てる担当業務を持たせるスターターが「先輩のお手伝い」業務が多いのに対し、プレイヤーは自分の担当業務を持つようになります。

たとえば、営業職であれば、一人でお客様を担当することになるでしょう。

その際、本人が「ここまでが自分の仕事」と理解できるよう、責任範囲を明示し、担当させましょう。

相談相手とセットで仕事を割り当てる業務を任せたとはいえ、まだプレイヤーはひとり立ちしたばかり。

独力で成果を上げるには、力が不足していることも……。

そこで、仕事を割り当てる際には、「誰に相談しながら進めればよいか」をアドバイスしておきましょう。

これは、仕事の質を担保しながら、相談を通じて人から学び、力をつけてもらうためです。

(2)良し悪しを伝える自分の考えを持つことを求める担当業務を持たせることと合わせて、その業務についてどう進めようと考えているのかを確認していきましょう。

「言われたことをそのままこなしている」と感じたら、「自分の考えを持って仕事を進めてほしい」ということを、明確に伝えてください。

「さんはどう考えるの?」といった問いかけも有効です。

仕事の進め方についてのフィードバックを行うプレイヤーは、仕事の進め方の基本を身につけておく重要な時期です。

報連相(報告・連絡・相談)やPDS(PlanDoSee計画・実行・検討)について、うるさいくらいの指摘をしておきましょう。

週に1度、定例でミーティングを行い、一緒に仕事の進め方について確認するのもよいでしょう。

(3)支援するプレイヤーが協力を得やすい状況を作っておくプレイヤーになったばかりだと、任された担当業務を最初から独力でこなせるわけではないので、周囲に助けてもらう必要があります。

プレイヤーが助けを求めやすいように、他の部下には、「が困ったら声をかけてくると思うから、助けてあげて」などと、根回しをしておきましょう。

ただし、プレイヤーには自分から相談をしに行くよう、求めてください。

振り返り方を教えるプレイヤーの時期は、どうしてもうまくいかないことが多くなりがちです。

その際、気をつけたいのが、自己中心的に考えたり、うまくいかないことを前任者や他部署のせいにしてしまったりすることです。

そのような状態に陥ると、この先の成長が見込めなくなります。

それゆえ、失敗を振り返って、自分を客観視できるように「何が原因でうまくいかなかったのか?」「周囲にどんな相談をすればよかったか?」を考えさせるようにしましょう。

3メインプレイヤーの育て方メインプレイヤーは、担当業務に精通し、関係者を巻き込みながら成果を出すことが求められます。

しかし、自分の判断基準が持てないでいると、関係者の意見に振り回される可能性もあります。

そうならないよう、上司として次のような関わりを行いましょう。

(1)仕事を割り当てる一人ではやり遂げることが難しい質・量の仕事を与えるいよいよ一人前になるステージ。

質・量ともにこれまでにないくらいの背伸びをさせる仕事を割り当てることが、成長につながります。

とりわけ、同じ部署の上司や先輩だけでなく、他部署を巻き込み、協力を得なければ成果を出すことが難しい業務を思いきり任せるとよいでしょう。

顧客や関係者の矢面に立ち、彼らの協力を引き出す経験が、仕事に対する自負を持つことにつながります。

後輩指導を任せる後輩がいれば、その育成担当を任せてみましょう。

人に教えることでメインプレイヤーも成長することができますし、次のステージ、リーディングプレイヤーを見越すと「人に関わり、動かす」経験を積んでおくことは、糧になります。

(2)良し悪しを伝える抱え込んでいないか確認するメインプレイヤーとしての責任感から、すべて自分でやってしまおうとする部下もいるでしょう。

そうすると、そもそも一人ではこなせない業務のはずですから、進捗は滞りがちになります。

上司としては、定期的に業務の進捗をチェックし、「遅れ始めたな」と感じたら、「あの件、どうなってる?」などと、抱え込みの状況をチェックし、指摘しましょう。

仕事の判断基準を確認する関係者を動かしていく必要があるこのステージでは、いろいろな意見に振り回されてしまい、メインプレイヤー自身で判断できなくなることがあります。

上司としては、メインプレイヤーの判断に対して、OKなのかNGなのかを、折に触れて伝えることが必要でしょう。

相談を受ける際には、対処の妥当性だけでなく「なぜ、そのように判断したのか?」という根拠を確認しましょう。

(3)支援する直接手は出さず、アドバイスだけ行うもし、抱え込みの状況が分かったら、どう対処すればいいのかアドバイスをしましょう。

抱え込んでしまう原因は、最初の段取りがまずいことにあります。

「誰に」「何を」「いつまでに」お願いすればよいのか、一緒に確認しましょう。

マネジャーとしては手を差しのべたくなりますが、できるだけアドバイスにとどめ、部下本人の主体性に任せましょう。

仕事に対する考え方を語るメインプレイヤーの仕事の判断基準(何を重視して仕事を進めるか)が明確になるように、マネジャーは意識しましょう。

方法としては、マネジャー自身の仕事に対する考え方を語ることです。

あなたが、それぞれの業務で「何を判断基準にしているのか?」を共有するとよいでしょう。

部下本人にも、「どういうことを大事にして業務をしてきたのか」を説明させることも重要です。

4リーディングプレイヤーの育て方リーディングプレイヤーには、自らの担当業務を進めるだけではなく、メンバーを育て、チームで成果を上げることが求められます。

しかし、周囲や組織に無関心な人の場合、チームで成果を上げるための動きが身につかない恐れがあります。

そうならないよう、上司として次のような関わりを行いましょう。

(1)仕事を割り当てるプロジェクトやチームのリーダーに任命するリーディングプレイヤーには、「チームをどう束ねていくのか」「このプロジェクトをどう運営するか」という視点を持ってほしいものです。

そのために、明確に分かる形でリーダーの役割を与えましょう。

「自分のことだけ考えずに、全体のことを見てほしい」というあなたのメッセージを伝えるためです。

マネジャーのサポート役を任せる職場の方針や部下への仕事の割り当て方について、リーディングプレイヤーに、一緒に考えるように求めましょう。

マネジャーと同じ視界を共有し、サポート

してもらうことができれば、あなたの職場運営はずいぶんとラクになるはずです。

(2)良し悪しを伝える自分で手を動かすことを戒めるリーディングプレイヤーへのフィードバックは、「チーム全体を視野に入れているのか?」という点に集約されます。

自分で手を動かすことばかりに没頭し、協働する後輩や関係者にうまく仕事を分担できない部下もいると思いますが、見かけたら指摘するようにしましょう。

仕事の成果についても、本人が手を動かしたものだけでなく、チームメンバーを動かして上げた成果を評価しましょう。

職場全体を見た動きを評価するリーディングプレイヤーが、マネジャーとメンバーの間を取り持つ役割を果たしてくれたら……。

上司のあなたにとって、これほど頼りになる部下はいないでしょう。

「メンバーがこういうことを言ってきています」ということを伝えてくれた場合は、感謝の気持ちを表現しましょう。

また、職場運営についての率直な意見は、反対意見も含め受け止め、一緒に考える姿勢が重要です。

(3)支援する部下育成についての会話を交わすメンバーそれぞれの特徴や、今後どんな風に育成していこうと考えているかを、話しましょう。

加えて、どのように指示すればメンバーが動いてくれるのか、といったあなたの経験を惜しげなく伝えましょう。

部下の仕事の進み具合や気持ちの状態について、リーディングプレイヤーのほうが自分より詳しくつかんでいると感じるようになったら、育ってきている証拠です。

意見を交換しやすい関係を作るマネジャーとリーディングプレイヤーの関係が良好かどうかは、職場の雰囲気に大きく影響します。

普段から、リーディングプレイヤーとコミュニケーションを積極的に取り、職場の状況について率直に話し合える関係を築いておきましょう。

ステージ別育成の具体策ある営業部の場合マネジャーとして関わる3つの場面(仕事を割り当てる、良し悪しを伝える、支援する)を通じて、トランジションの「核となる意識・行動」(「抑える」と「伸ばす」)を部下が身につければ、自然とステージ転換を促すことになります。

より具体的な場面をイメージすることでリアリティが持てるよう、ストーリー形式で進めていきます。

【場面設定】営業部営業企画課営業促進のための様々な支援を行う。

【登場人物】鈴木マネジャー:営業部営業課から、営業企画課に異動してきたばかり谷口さん:入社1年目河合さん:入社2年目加藤さん:入社3年目渡辺さん:入社5年目斉藤さん:入社7年目山崎さん:入社10年目【プロローグ】10月初旬。

鈴木マネジャーは、慣れない営業企画課の席で、いつもとはまったく異なる期初を迎えていた。

入社して以来、営業一筋でやってきたのだが、この秋、営業企画課に異動してきたのだ。

まだ、仕事の全体像もつかめていないし、課のメンバー一人ひとりの人となりも知らない。

初めて課の全員が集まったミーティングでは、「これまでずっと営業でやってきたので、営業の立場はよく分かっているつもりです。

今後は、その営業をこれまで以上にサポートできるような組織にしていきたいと思っています。

ぜひ、皆の力を貸してほしい。

分からないことだらけで、最初は教えてもらうことのほうが多いかもしれませんが、どうぞよろしく」とあいさつをした。

メンバーの反応は様々で、年長者の山崎さんはお手並み拝見といった様子であったり、中堅の渡辺さんたちは、何か新しいことに挑戦できるかもしれないという、期待感を抱いているようであった。

着任して最初の2週間で、部下全員と面談をした。

鈴木マネジャーは「ものさし」の考え方を用いて、それぞれの部下がどのステージに位置しているのか、おおよそのあたりをつけることができた。

谷口さん:入社1年目スターターへのトランジション中河合さん:入社2年目プレイヤーへのトランジション中加藤さん:入社3年目プレイヤーとして活躍中渡辺さん:入社5年目メインプレイヤーへのトランジション中斉藤さん:入社7年目メインプレイヤーとして活躍中山崎さん:入社10年目リーディングプレイヤーへのトランジション中「トランジション中は4人か。

予想より多いが、まずはこの4人の育成を進めていこう」と鈴木マネジャーは決めた。

1スターターの育成鈴木マネジャーの部下の中で、唯一のスターターが入社1年目の谷口さんです。

谷口さんは入社して2カ月の研修期間の後、6月に配属されました。

配属されて4カ月が経ち、そろそろ「新人」という見方もされなくなってくる頃。

上司としては早くスターターへのトランジションを完了して、次はプレイヤーへ……と先を急ぎたい気持ちにもなります。

ところが、スターターは入社と同時にトランジションを迫られますし、これまでの学生時代とはまったく異なることを求められますから、決して簡単な転換ではありません。

そこで、いきなり「社会人になったのだから、これくらいできて当然」という期待をかけるのではなく、ある程度のトランジションの期間(数カ月から半年。

研修期間が長い場合は1年弱かかる場合も)を見通しておく必要があります。

では、鈴木マネジャーと谷口さんのやりとりを見てみましょう。

いつものように鈴木マネジャーが出社して、パソコンを立ち上げメールをチェックしていると、一通の新着メールが飛び込んできた。

谷口さんからのメールで、本文にはこう書かれていた。

「お疲れ様です。

今日、体調が悪いのでお休みを取らせていただきたいと思います。

よろしくお願いいたします」鈴木マネジャーは少し心配に思いつつも、「お大事にしてください。

何かあれば電話で連絡をくださいね」と返事をして、行き先ボードの谷口さんの欄に「お休み」と記入した。

しばらくすると、渡辺さんが出社してきた。

「鈴木マネジャー、おはようございます。

……あれ、今日、谷口さんお休みですか?今日、打ち合わせを入れていたのになあ。

お願いしたい仕事もあったし、どうしよう……」と困惑した様子。

いかがでしょうか。

どのように感じましたか?「谷口さんはけしからん」「鈴木マネジャーの対応もいまいちでは?」など、いろいろと思われたかもしれません。

では、ここで質問です。

「あなたが鈴木マネジャーだったら、翌日出社してきた谷口さんに何と声をかけますか?」選択肢は次の3つです。

(1)体調についてもう大丈夫なのかと気づかう(2)休みを取ることの連絡方法について、指摘をする(3)渡辺さんに謝るよう指示をする実は、どれも正解なのですが、谷口さんのスターターへのトランジションを促す上では必ずしなければならない関わりがあるのです。

それは(2)休みを取ることの連絡方法について、指摘をするです。

スターターである谷口さんには、社会人として求められる「基準」を明示する必要があります。

これが、上司が関わる場面で「良し悪しを伝える」ということです。

先ほどのケースでは、スターターの「核心となる意識・行動」に照らすと、欠勤するという連絡をメールでのみ行った谷口さんの行動が、抑える意識・行動のすべてメールで解決しようとするに該当しています。

マネジャーとして関わる際にはこの点に言及し、「重要または緊急の連絡に関しては、相手に確実に伝わることを重視して、その場で伝わったことが確認できる電話で行うべきだよ。

メールは、いつ確認できるか分からない。

その点、電話なら相手がいなくても別の人に伝言をお願いするなど、対処の幅が広がるからね」などと、指摘する必要があるでしょう。

少々丁寧過ぎるのでは?と感じられるかもしれませんが、特に最近の新入社員は、「必要性がきちんと理解できたことに対しては素直に行動に移す」傾向があるため、「何でメールなんだ!こういう場合は電話が当然だろ!」と一喝するのではなく、理由を添えることが実践や応用につながります。

併せて、「もしこれがお客様への緊急連絡であればどうする?」など、お客様や他部署の視点に触れる機会を作れれば、より応用が利くでしょう。

もう一つ、伸ばす意識・行動の自分の言動が相手にどう伝わるかを意識することにも触れるのがよいでしょう。

今回、谷口さんが休んでしまったことで、渡辺さんとの打ち合わせをすっぽかすことになってしまいました。

渡辺さんとしては、どんな気持ちになるでしょうか。

「約束していたのに勝手だな」と思うのか、はたまた「この仕事は谷口さんにとって大事ではないのだな」と判断されてしまうかもしれません。

たとえ、谷口さんにそんなつもりがなく、体調不良が原因だとしてもです。

このとき、「渡辺さんと打ち合わせがあったそうだね。

ちゃんと本人に『行けない』と伝えたのか?何も連絡がなかったら、渡辺さんはどう思ったと思う?自分が渡辺さんだったらどう感じる?」と、他者視点で考えさせることも大事です。

では次の場面です。

さらに1カ月ほど過ぎ、谷口さんは渡辺さんの指示のもと、年明けに行うお客様向けの新商品説明会の準備を進めていた。

鈴木マネジャーも参加した会議の席でのこと、お客様宛の招待状の中身を議論していると、これまで発言の少なかった谷口さんがおもむろに口を開いてこう言った。

「実は私、昨年度の新商品説明会のときに、お客様に取ったアンケートを見直してみたんです。

そうすると、特に多かったご要望は『あらかじめどんな商品が題材で、何にどれくらい時間がかかるか分かっておきかった』というものだったのです。

半数以上のお客様の声としてありました。

だから、来年度はこれまでのものより、説明会で扱う商品について内容を充実させた招待状がよいと思います」と発言した。

では、このような場面で鈴木マネジャーだったら、次のうち、どの対応を取るでしょうか。

(1)谷口さんにお客様宛ての招待状の作成をすべて任せてみる(2)谷口さんの意見を聞いた上で、先輩の渡辺さんと一緒に作業させる(3)確実に仕事を進めていく必要があるので、「昨年どおりでよい」と指示をするいかがでしょうか。

結論を出す前に谷口さんの発言を確認してみましょう。

谷口さんは「お客様のためにも、より詳細な招待状を出すべき」と提案をしていますが、根拠なく言っているわけではなく、「半数以上のお客様の声としてありました」という事実をつかんでいることから、伸ばす意識・行動の事実と意見を分けて伝えるができ始めています。

また、誰かに言われたわけでもないのに、お客様に取ったアンケートを見直してみたという行動は、抑える意識・行動の必要なことは教えてくれるもの、与えられるものという待ちの姿勢でいるではなく、自分からアクションを起こしていることがうかがえます。

というように、スターターに必要な意識・行動を身につけつつある谷口さんですが、まだ一人だけで業務を進めるのは難しいので、(2)の「一緒に作業させる」がふさわしいでしょう。

これは谷口さんに、「お客様や他部署に関わる仕事」を割り当てることになります。

また、マネジャーの関わり「良し悪しを伝える」の中の、「小さな前進を認める」に該当します。

「よくその点に気がついたね」と、声をかけましょう。

その後、渡辺さんと谷口さんが作成したお客様向けの案内は、非常に評判がよく、例年よりも多くの参加を集めることができた。

商品説明会の場面で、実際に自社のお客様と対面し、どんなことを求められているのかに触れる機会を得た谷口さん。

「うちの商品やサービスがどんな風にお客様に受け入れられているのかよく分かりました」と感想を述べていた。

このように、仕事の流れや意味が理解できてくるとスターターへのトランジションが終わりに近づいてきます。

「トランジションの出口のサイン」と部下の様子を照らし合わせることで、マネジャーが部下のトランジション状態を把握し、部下が出口のサインに気づけるようにしておきましょう。

具体的には、トランジションの状態の変化を見逃さないよう、上司として「チェックポイント」を決めておくことが重要です。

・会議場面での発言・ちょっとした雑談の中のセリフ・仕事をお願いしたときの反応など、日常の小さな場面に現れることで十分です。

2プレイヤーの育成続いてのストーリーは、2年目の河合さんです。

2年目も半ば、そろそろ配属されて1年が経とうとしているところで、職場には後輩もいます。

「もう新人とは違う」という認識を周囲も本人も持っているはずです。

では、ストーリーを見てみましょう。

鈴木マネジャーは、2年目の河合さんの今後の育成計画について思いを巡らせていた。

(河合さんは言われたことはきちんとこなしてくれているが、2年目としてはもう少し自分から動いてほしいところだな。

谷口さんも入ってきたことだし、先輩社員としてそろそろ、プレイヤーへの転換を促してもいい頃合いだろう。

少し話をしてみるか)河合さんは、この10月からイベント企画チームというところで、お客様向けにイベントの企画を立案し、営業が提案できる状態にするという業務を行っている。

イベント企画チームは、他に7年目の斉藤さんと2人のチーム。

マネジャーと斉藤さんが相談しながら、チームを運営している。

鈴木マネジャーは斉藤さんに声をかけて、こう持ちかけた。

「斉藤さん、少し相談なんだけど、河合さんにそろそろ一人で企画をさせてみたいと思うんだけど、どうかな?」「ええ、いいと思いますよ。

河合さんは覚えも早いので、一通りのことはできるようになっています。

そろそろ、自分が中心となって動く業務を割り当てても問題ないでしょう。

私が毎年担当をしている、就職イベントの企画を任せてみましょう」「ありがとう、そうしよう。

もちろん、斉藤さんにはサポートをしてほしい」「任せてください」そんな会話があって、鈴木マネジャーは河合さんと話す機会を持った。

「河合さん、お疲れ様。

最近の様子を教えてほしいんだけど、仕事は順調かな?」「はい。

斉藤さんは丁寧に教えてくださってますし、一つひとつ業務を覚えていくのが嬉しいです」では、ここでまた質問です。

マネジャーとして河合さんに新たな仕事の割り当てをする際に気をつける必要があることは何でしょう?(1)これまで(スターター)とは異なる期待をしていることを、分かるように伝えること(2)河合さんの現在の業務量を大幅に超えないように、他の仕事を調整すること(3)これまでやったことがある仕事と、類似点があるものを選ぶこと河合さんのプレイヤーへの転換を推し進めるという観点で言うと、どんな伝え方が望ましいのでしょうか。

鈴木マネジャーの伝え方を見てみましょう。

「なるほど。

よかった。

河合さんの丁寧な仕事振りは、私も頼りになると思っているし他部署からの評判もいいよ。

谷口さんも配属されたことだし、もう新人ではないからね。

見本にもなってほしい。

実は、今回は河合さんに新しい仕事をお願いしたいと思っている。

去年まで、斉藤さんが担当していた就職イベントの仕事なんだけど、斉藤さんもサポートにはつくが、河合さんメインで担当して企画してほしいんだ。

簡単ではないと思うが、きっといい企画にしてくれると思っているので、ぜひ頑張ってほしい」河合さんは一瞬、不安そうな表情を見せたが、「斉藤さんも、サポートしてくれるというのなら……やってみます」と言ってくれた。

太字箇所を見ると分かるように、(1)スターターとは異なる期待をしていることを、分かるように伝えることを重視したやりとりになっています。

マネジャーの関わりである、仕事の割り当てとして「担当業務を持たせる」こと、斉藤さんをサポート役にしていることから、「相談相手とセットで仕事を割り当てる」ことを行っているのです。

では、続きを見てみましょう。

河合さんにイベントの企画を任せてから、「そろそろ進捗報告が欲しいな」と鈴木マネジャーは思い始めていた。

少し前に声をかけたときには「大丈夫です」と答えていたので、いったんそのままにしている。

すると、営業部を通りかかったときに、営業の石田マネジャーから声をかけられた。

「おう、鈴木。

ちょっといいか?あの、毎年やっている就職イベントの件だが、お客様にもう紹介していいのか?開催時期や場所などが分からないんだ。

一度河合に聞いたけれど、要領を得なくて……」とのこと。

そろそろ営業に伝えていなければおかしい情報だ。

「それは、すまない。

すぐに確認して知らせるよ」と言って席に戻り、河合さんに確認をした。

「河合さん、例のイベントの件だけど、開催時期をまだ営業に伝えていないのかな?」「あ、はい……。

まだ伝えてませんが」「営業はもう案内をしたがっているよ。

いつになれば確定できるだろう?」「分かりません……会場が決まるまでは、決められないと思います」「会場は決まっていないのかな?」「まだ、だと思います。

運営部のほうから連絡がないので……」イベントの会場を確保することや、当日のオペレーションを主導するのは運営部というところだ。

河合さんは、「運営部から連絡がない」ことで「まだ会場が決まっていない」と判断しているようですが、事実はどうかは分かりません。

「連絡がないからといって、決まっていないとは限らない。

事実を確認しなければいけない」「担当として、就職イベントが開催されるまでの責任を持つ必要がある」ということは、必ず伝える必要があるでしょう。

こちらは、トランジションを促進する周囲の関わりとなります。

改めて、仕事の割り当ての担当業務を持たせる際の、責任の範囲を明示することを強調しています。

また、良し悪しを伝えるの、仕事の進め方やフィードバックを行うことにもつながっています。

では、ストーリーに戻りましょう。

鈴木マネジャーは河合さんの発言を捉えて、少し厳し過ぎるかもしれないと懸念をしつつも次のようなフィードバックを行った。

「確かに、会場の決定は運営部の役割だね。

でも、このイベントを担当として成功させるのは、河合さん自身だよ。

運営部からの連絡を待つのではなく、自分から情報を取りに行くことが必要だと思うよ。

もちろん、その上で他部署との調整が必要な場合は、斉藤さんに相談してほしい」その後、河合さんは自分の責任範囲が明確になったことで、動きやすくなったように見える。

今も、運営部に機材の搬入日の確認を自分からしているようだ。

自分では判断できないことは、タイミングよく斉藤さんに相談している。

その甲斐あって、「仕事が前に進む」という感覚を持ち始めているようだ。

3メインプレイヤーの育成メインプレイヤーは、「一人前」となるステージです。

ここで初めて、業績に大きく貢献する一員として、カウントできる状態になります。

逆に言えば、マネジャーとしては、いかに早くこのステージに上がってきてもらうかということに、力を注がねばなりません。

それでは、鈴木マネジャーのストーリーを見てみましょう。

営業企画課では、充実してきた商品群について、これまでは個別の案内カタログを作っていた。

そこで、全商品が掲載されたカタログを作成することになり、5年目の渡辺さんが中心となって業務を進めている。

チームのメンバーは1年目の谷口さん。

関係部署としては、営業課と制作部がある。

営業課と「どんなカタログであればお客様に、商品をより知ってもらえるか?」という議論を繰り返した上で、企画に落とし込み、制作部に渡すということを実行している。

ある日、1年目の谷口さんがこんなことを相談しにきた。

「あの、渡辺さんと進めているカタログの件なんですけど、少し困っているんです。

自分は、チームのメンバーにいなくてもいいんじゃないかと思っていて……。

なかなかできることがない中ですが、渡辺さんに『何か手伝うことありますか?』と聞いても『いいよ、自分でやるから』と言ってくれるので」鈴木マネジャーは少し気になったので、渡辺さんの様子を確認することにした。

「渡辺さん、カタログの件、どうなってる?順調?」「そうですね、順調ですね」「そうか。

他の業務は?」「うーん。

正直、カタログの件で手いっぱいであまり余裕はないですね」「谷口さんとはどんな分担でやってるの?」「カタログは私一人でほぼやってますね。

手が回らない、営業からの企画書の作成補助なんかは、谷口さんにお願いしちゃってますけど……」さてこの後、マネジャーとして渡辺さんに何を問いかけますか?マネジャーとして気になるところは、カタログの企画をほぼ自分一人でやってしまっているというところです。

この仕事は、実はトランジションを起こすために、一人でやり遂げることが難しい質量の仕事を割り当てるということをしているので、そもそも独力ではできるものではないのです。

会話の続きを見てみましょう。

「カタログの企画はきちんと進んでいるのかな?なかなか一人では進めるのが難しい分量だと思うけど?」「……実を言うと、順調なのかどうかもはっきり分からないんです。

たぶん少し遅れてきていると思うんですけど、とにかく目の前の仕事をこなしていくだけになっていて、先々のことを考える余裕がなくって」「なるほどね。

先のことがあまり見えていないから、谷口さんとも仕事を分担できないんじゃない?」「……そうなんです。

本当のところは手伝ってほしいんですけど、何を分担していいか分からなくて。

それは他の部署のメンバーに対しても同じなんです」「そうすると、結局自分でやらなきゃいけないことがどんどん増えていくね。

それだと、今後大きな仕事はしていけないよ。

じゃあ、少し段取りを描いてみようか」鈴木マネジャーは、渡辺さんと2人で今後の進め方について議論を行った。

鈴木マネジャーは、「良し悪しを伝える」の、「抱え込んでいないか確認する」を行った上で、支援として「直接手を出さず、アドバイスを行う」を実行しています。

この関わりを通じて、全部自分一人の力で何とかしようと抱え込むという意識・行動を抑え、担当業務の達成状況や、そこに至る道筋を自ら描くという意識・行動を伸ばそうという意図です。

前回の打ち合わせ以来、渡辺さんは、谷口さんとうまく分担してやっているようだ。

今も、カタログについて打ち合わせをしている。

「それじゃあ、谷口さんには営業からお客様の声をヒアリングしてほしいんだけど、できそうかな?」という会話が聞こえてくる。

そこに、制作部の武田さんがやってきた。

「渡辺さん、まずいよ!印刷会社から、納期に間に合わない、できないって泣きが入ってさ」「えっ!そんな……OKって言ってくれてましたよね?もう納品日も決まっているし今さら変えるわけにはいきませんよ。

今回は特殊な加工を施そうとしているし、そうするとあそこしか技術的には対応できるところがないから……」「困ったね、どうしようか」「……分かりました。

私が直接行って交渉します。

これまでの経験からも、後1日工程を減らせるはずですから、何とかならないか、お願いしてみましょう」そう言うと、「鈴木さん、今、経緯を聞かれたと思いますが、すぐに行ってきます。

武田さんすぐ出ましょう」と声をかけて、出ていった。

(何だか頼もしくなってきたな)と鈴木マネジャーは感じていた。

1カ月後。

渡辺さんが尽力したカタログがいよいよ納品された。

お客様の声を反映し、ただ商品を並べるのではなく、一つひとつの魅力が伝わるよう、斬新な手法で表現することにこだわった一冊だ。

「渡辺さん、できたね!これはすごい。

さっそくお客様のところに行ってくるよ!」営業メンバーが渡辺さんに声をかけている。

武田さんもやってきて、「あのとき、渡辺さんが印刷所にかけ合ってくれたから、何とかスケジュールどおりに納品できたよ」と笑顔になっている。

「渡辺さん、毎日夜遅くまで頑張った甲斐がありましたね」と谷口さんも嬉しそうにしている。

こういった経験を通じて、仕事の判断基準ができてきます。

渡辺さんはお客様に役立つものを納期と品質を両立させて届けることを、大事にするようになりました。

マネジャーの関わりとして、仕事に対する考え方を語る支援を行う、絶好の場面でしょう。

4リーディングプレイヤーの育成リーディングプレイヤーへの転換、いわゆるチームリーダーへの転換は、「自分で手を動かす」から「人を動かす」ことへの大きな転換です。

マネジャーとしても、それを意識しておきましょう。

それでは、最後のストーリーです。

見てみましょう。

山崎さんは入社10年目で、企画畑一筋。

企画の機能「商品企画」「販売促進」「イベント企画」のすべての業務を経験していて、一通りのことはできる実力を持っている。

特に、「商品企画」ということにおいては、グループの中で一番経験があり、これまでにも新商品を企画してきた。

鈴木マネジャーは山崎さんに「一緒にこの課を盛り上げていこう。

リーダーとして牽引していってくれ。

ついては特に2つの仕事をお願いしたい」と言って、次の2点を提示した。

・「営業の新たな動き方を模索する」プロジェクトに課の代表として参加すること・3年目のメンバー・加藤さんをさらに育てることある日、鈴木マネジャーが会議を終えて席に戻ると、山崎さんが話しかけてきた。

「鈴木マネジャー、ちょっとよろしいでしょうか?営業の動き方を模索するプロジェクトなのですが、営業から『商談一つひとつに必ず営業企画課の担当者をつけて一緒に進めてくれないか』と提案されまして、『持ち帰ってマネジャーと相談します』と返答したのですが、どう思われますか?」と、あまり自分の考えを持たずに相談してきた。

「なるほど。

山崎さんはもしかすると今回のプロジェクトでの自分の役割を誤解している部分があるかもしれないので、改めてはっきり伝えておこう。

部署の代表としての見解をまずは組み立ててみてはどうだろう。

もちろん、迷ったことがあれば相談に乗って一緒に考えるよ。

このプロジェクトには、マネジャーだったらどう考えるかという視点を持って臨んでほしいんだ。

山崎さんならどう判断するのか、聞かせてほしい」と返答した。

山崎さんは、驚いた表情を浮かべていたが、「分かりました」と言って席に戻っていった。

その後、しばらくは山崎さんからこの件で相談がなかったが、加藤さんと、よく打ち合わせをしている姿を見るようになった。

2人はこれまではどちらかというと、個別に仕事をする傾向があったので、少し珍しい光景ではあった。

1週間後、山崎さんから「鈴木さん、例のプロジェクトについて、課としての見解をまとめたので、ご意見いただけますか?」と言って資料を差し出された。

そこには、より効果的だと思う営業支援の形がパターン化されている。

さらに山崎さんとして、どれが一番、課にとってよい取り組みなのかという考察が加えられていた。

「この提案内容には、非常に納得感があるね。

どうやって検討したの?」鈴木マネジャーが質問すると、山崎さんは、「実のところ、自分一人で考えていても、妙案が思い浮かばなかったので、思い切って加藤さんに手伝ってもらって皆の意見を聞いてみたんです。

そうすると、私たちの動き方についても皆それぞれ意見を言ってくれて……。

それもありがたかったんですけれど、何より『山崎さん、そんなこと初めて聞いてくれましたね。

実は……職場の今の状態について、思っていることはあったんですが、なかなか言う機会がなくて』といった声が多かったんです。

それで、これまでは自分の仕事を満足いくようにできればいいということを中心に考えていたんですが、皆の役にも立ちたいなと思い始めて……」鈴木マネジャーは、自分が意図した以上の変化が、山崎さんに起こり始めていることに驚いた。

まず、最初のやりとりで、鈴木マネジャーが意図していたことは何だったのでしょうか。

マネジャーの関わりの「仕事の割り当て」として「プロジェクトやチームのリーダーに任命する」ことを行いました。

そうすることで、山崎さんの他のメンバーや組織に対して関心を持たず、自分の担当業務に没頭するという意識・行動を抑えることができ、さらには、

課やチームが最大の成果を上げるために、今自分が最もやるべきことは何かを考える上司や目上の相手にも、現場の目線から率直に意見を主張するという意識・行動を伸ばすことができたと言えるでしょう。

さらに、2人の会話は続きます。

「ところで、今回は加藤さんにも手伝ってもらったみたいだけど、この仕事を通じて、彼に何を学んでほしいと思ってたのかな?」と鈴木マネジャーは山崎さんに聞いてみた。

「……加藤さんが何を学ぶかですか?すみません、正直なことを言うと、そこまでは考えていませんでした」「非常に高度なことだと思う。

でもすべての仕事を、育成場面だと考えてほしい。

加藤さんが今できること・強みや弱みを山崎さんはどの程度把握している?また、彼に将来どんなビジネスパーソンになってほしいと思ってる?実はこのような視点で各メンバーを見ることが、チームリーダーには求められているんだ。

もちろん、いきなりすべては無理だけど、今後期待したいと思っているよ。

将来的にマネジメントをすることにも、つながっていくんだよ」「今、すべてをやれる感覚はありませんが、今回のことを通じて皆と初めてゆっくり仕事について考えていることを話せた気がしています。

その中で、それぞれの持ち味や特徴をぼんやりとつかみ始めています。

加えて、課をこんなチームにしていきたいなと思い始めています。

私にできるか分かりませんが、チームリーダーとして何ができるか、もう少し考えてみたいと思っています」「そうだね、頑張ろう。

私も、精いっぱいサポートするよ」ここまでで、鈴木マネジャーのストーリーは終了です。

最後の場面では、マネジャーとして部下育成についての会話を交わす支援を行っています。

日常のやりとりの中で、部下の状態が見えてくる部下の4つのステージについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

ストーリーの中でマネジャーが関わる場面すべてが、日常のふとしたやりとりであったことに驚かれたかもしれません。

部下のステージ転換を支援する、ということはまさに日常に埋め込まれたOJTなのです。

ご自身の部下の顔を思い浮かべて、「あいつにはこんなことを伝えてあげたい」「それによってこの意識を伸ばしてもらいたい」といったことを思い巡らせてくだされば幸いです。

コラム職場で学ぶことと、研修で学ぶこと部下の育成を考える際、その方法として、職場で仕事を通じて育成を行うOJT(OntheJobTraining)と、研修といった形で職場を離れて育成を行うOffJTがあります。

一般的な1日や2日といった限られた時間の研修では、トランジション(成長ステージの転換)は到底できるものではありませんから、トランジションを促進するのはOJTが中心ということになります。

まさに、ここまで説明してきた「仕事の体験」や「周囲からの関わり」が重要になります。

では、OffJTとして研修を受けることは、トランジション促進の観点でまるで意味のないことなのでしょうか。

そうではありません。

たとえば、「中堅社員としての役割を学び意識を変える」といった主旨の研修はどうでしょうか。

このような研修ではたいてい、ケーススタディなどを行いながら、中堅社員の果たすべき役割とは何かを学びます。

その中で部下は、今後自分に求められる役割を理解し、今の自分と照らし合わせて課題を浮き彫りにしていきます。

同じ立場である他の研修受講者と様々な議論を交わす中で、その課題に取り組もうという動機づけがなされます。

このような研修は、トランジションの入口のサインを気づかせ、新たな成長ステージに向けて課題に取り組もうと動機づける効果があると言えます。

他にも、「これまでの経験を振り返り、自分の強みや弱みを把握して今後の仕事に役立てよう」といった主旨の研修はどうでしょうか。

このような研修では、これまでの仕事の体験を振り返り、そこから得た学びや成長したことを整理していきます。

体験したことが自分にとってどのような意味があったのかを結びつけるのです。

このような研修は、トランジションの出口のサインを気づかせ、自分の成長を実感させるとともに、これからさらにその成長ステージで活躍するための課題に取り組もうという気持ちを醸成する効果があると言えます。

このように、OffJTはトランジションの入口のサインや出口のサインを気づかせるための有効な機会だと考えられるのです。

もちろん、職場であなたが部下に入口のサインや出口のサインときちんと示せていれば、このような機会はなくてもよいのかもしれません。

しかし部下にとって、外部の講師や同じ立場の研修受講者とともに議論して考えた結果気づいた「入口のサイン」や「出口のサイン」は、より強いインパクトを持って心に残ることも多いのです。

マネジャーとして、この機会を有効活用しない手はありません。

研修を受けに行く部下に向けて、研修の趣旨は何か、何を学んできてほしいかを事前に自分の言葉で伝えておくのです。

それは、あなたの口から直接「入口のサイン」「出口のサイン」を発信する絶好の機会なのです。

また、研修から帰ってきた部下に対しても、何を学んできたのか、今後の課題は何かをともに考えようと関与することが、トランジションを乗り越えていこうとする部下の動機につながることは言うまでもありません。

研修というと、面倒、苦手、という印象を持つ方もいると思いますが、部下が研修を受ける際には、トランジションを促進する部下育成の機会として、積極的に活用しましょう。

 

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