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3章 組織マネジメント・リーダーシップ編

3章組織マネジメント・リーダーシップ編

3章で学ぶことNo.27PDCANo.287SNo.29PM理論No.30パワーの源泉と影響力の武器No.31カッツ理論No.32動機付け・衛生要因No.33マズローの欲求5段階説No.34サティスファクション・ミラーNo.35レビンの組織変革プロセスNo.36SECIモデル

3章で学ぶこと本章では、組織を効果的に運営するためのフレームワークや、人々のモチベーションを向上させるためのフレームワークを紹介します。

MBAの科目で言えば、HRM(人的資源管理)やOBH(組織行動学)に相当する部分です。

また、昨今の経営環境を鑑み、組織変革の科目に含まれるフレームワークも併せて紹介しています。

2章で、戦略やマーケティングがしっかりしていないと勝てないと書きましたが、戦略やマーケティングを実行するのは人であり組織です。

どれだけ戦略が立派でも、人々のモチベーションが低かったりしては、これまた競争には勝てません。

どうすれば組織をより効果的なものにできるのかという観点から読み進めていただければと思います。

まず紹介するのはPDCAです。

本文中にもコメントしていますが、PDCAは組織マネジメントに限らず、あらゆる企業活動やフレームワークを包含するような、最上位に重要なフレームワークです。

強い会社でPDCAが弱い会社はありません。

まずはこのフレームワークをしっかりご理解ください。

7Sは、戦略も含め、組織の特徴を網羅する重要フレームワークです。

これもコンサルティング会社などでよく用いられており、知っておきたいフレームワークです。

PM理論、パワーの源泉と影響力の武器、カッツ理論、動機付け・衛生要因、マズローの欲求5段階説は、リーダーシップのあり方を検討したり、人々の動かし方や動機付け、スキルアップのヒントを得る上で非常に重要なものです。

時代的には比較的古い、古典的なフレームワークが多いのですが、どれもいまでもよく活用されている考え方です。

それだけ人間の本質は大きくは変化せず、普遍的な部分が大きいということを反映しているとも言えます。

サティスファクション・ミラーは、特にサービス業で用いられる組織運営のあり方を示唆するフレームワークです。

従業員のモチベーションやスキルが社内のみで閉じるわけではなく、顧客に対する価値や顧客の満足度と有機的につながって循環構造を作るというのは示唆に富む考え方です。

レビンの組織変革プロセスは、組織変革プロセスの中でも最も古典的かつ有名なものです。

これから派生した変革論のフレームワークもたくさんありますが、まずはベースとしてご理解ください。

最後のSECIモデルは、本章のフレームの中ではやや異彩を放つ、独自のポジションのフレームワークです。

個々人のスキルやモチベーションを越えて、知恵や知識を組織の中でいかに効率的に生み出し活用するかという問いに応えるものです。

「知」の重要性がますます増す昨今の経営環境の中で、これもしっかり押さえておきたいものです。

繰り返しになりますが、戦略を実行するのは、最後は人、組織です。

皆さんの日常の管理業務などとも絡めてしっかり理解いただければと思います。

27PDCA企業が行うさまざまな活動を、PlanDoCheckAction(計画実行評価改善)という観点から管理するフレームワーク。

基礎を学ぶ用いる場面●マーケティング戦略など、あらゆる戦略が適切に実行されるようにする

●MBO(目標管理)などを通じて、なすべき仕事やスキルアップが適切になされるようにする●現場レベルで、日々の活動を改善し、生産性を高める考え方PDCAは、組織のあらゆる営みに応用可能で、かつ効果も出やすいため、「最強のフレームワーク」と評する経営者もいるくらいです。

本書では便宜的に本章に入れましたが、他のフレームワークをより効果的なものにできる、よりメタレベルのフレームワークです。

会社が年間計画を立て、その進捗を適宜見直して計画や予算をローリング(更新)していくのもPDCAですし、四半期ごとの従業員に対するMBO(目標管理)もPDCAです。

あるいは、営業の現場であれば、営業担当者が前日に翌日の計画を立ててそれを実行し、当日にその振り返りを行って、さらに翌日の行動計画に反映させるのもPDCAです。

このように、職務や組織の階層、あるいは時間的なスパンを問わず当てはめることができるところに、このフレームワークの使い勝手の良さとポテンシャルがあります。

PDCAの各要素を簡単に説明すると以下のようになります。

ここではある部署の一定期間の活動をイメージしています。

Plan:目標を設定し、それを具体的な行動計画に落とし込む。

Do:役割や組織の形態を決めて人員を配置し、従業員の動機づけを図りながら、具体的な行動を行う。

Check:途中で成果を測定・評価する。

Action:必要に応じて修正を加える。

PDCAは図表271からも分かるように、一度きりのプロセスではなく、一連のサイクルが終わったら、反省点を踏まえて再計画へのプロセスへ入り、さらに新たなPDCAサイクルに入っていきます。

また、PDCAは組織内の各部署や各従業員がバラバラにやっても効果は出ません。

図表272に示したように、組織の上位階層から現場レベルに至るまで、あるいは時間軸で言えば中長期的なものから短期的なものに至るまでが入れ子構造になりながら、整合性を保ちつつPDCAを回していくことが肝要です。

事例で確認強い企業はこのPDCAがしっかり回されていることが多いものです。

国内で言えばセブンイレブン・ジャパンが、独自の「仮説思考」と合わせながらPDCAをかなりタイトに回しており、それが同社の売上高利益率30%超という高収益につながっています。

海外企業では、エマソン社がPDCAをベースに効果的な経営を行い、長年増収増益を実現しているのが有名です。

同社は産業用のモーターなど、「地味な」商材を扱うメーカーですが、「最も称賛される企業ランキング」の上位常連でもあります。

同社のナイトCEOが書いた『エマソン妥協なき経営』から何カ所か抜粋してみましょう。

「直接の担当者が計画を策定するため、戦略立案と戦略実行の間のギャップを排除することができます。

計画の準備、会議体での議論、そして計画の練り直しは、事業部において強い団結したチームをつくるためにも大変重要です」「計画が実行できなかったり、実行されなければ何の意味もありません。

エマソンでは、計画策定と同じように実行を真剣に行います」「我々は計画策定と管理に多くの時間を投資しています。

たとえばCEOは計画策定に半分以上の時間を割き、COOや他の本社経営幹部は計画策定と管理にそれ以上の時間を使っています」コツ・留意点1PDCAでまず重要なのは、適切なP(計画)を立てることです。

ここが低いレベルに設定されていると、多少適当なやり方をしても達成できてしまうため、組織のスキルも上がりませんし、従業員のモチベーションにもつながりません。

一方で、あまりにレベルを高いところに置き過ぎると、これもまた人々のモチベーションを削いでしまいますし、CA(評価・改善)のなしようもありません。

ストレッチしていながら実現可能な計画がまずは必要です。

2PDCAをしっかり回すためには、達成度が捕捉されなくてはなりません。

そこで必要となるのが定量的な数字です。

具体的には、計画時に適切なKPIを設定し、それらが一定期間でしっかり達成できたかを見極める必要があります。

KPIは当然、その企業の置かれた外部環境や業界特性、戦略などによって変わってきます。

たとえばスマートフォンを主なターゲットとしたニュースサイト事業であれば、記事数や月間アクティブユーザー数、ユニークユーザー数、平均滞留時間、シェア数、アプリの新規ダウンロード数、CPA(1人当たり顧客獲得費用)などをKPIに置くことで、戦略の進捗状況をより正確に測定することが可能となります。

287S組織のいくつかの要素の相互関係をあらわしたもので、組織分析に用いられるフレームワーク。

4つのソフトSと3つのハードSから成る。

基礎を学ぶ用いる場面

●ある企業の組織的特性を知る●ある企業の問題点を知る(不整合を起こしている個所を知る)●組織の変革に向けてボトルネックとなっている個所を知る考え方7つの要素について、個々の状況を知るとともに、それぞれが整合しているかを見ます。

優れた企業では、各要素がお互いを補い、強め合いながら戦略の実行に向かっているとされています。

4つのソフトSSharedValue(共通の価値観・理念):組織に根付いた価値観です。

たとえば、社会的善を旨とする、顧客第一主義などです。

Style(組織文化・経営スタイル):企業で受け入れられやすい考え方、行動です。

新しいことにチャレンジすることをよしとする、スピーディに動くなどです。

Staff(人材):従業員の特性です。

能力面やメンタリティの特徴が特に重要です。

Skill(組織スキル):組織として持つ能力です。

商品開発が巧み、広告がうまいなどです。

3つのハードSStrategy(戦略):競争に勝ち、業績を上げるための方向性です。

Structure(組織構造):組織の分け方(機能別、事業部別など)や階層数などの組織図上の特徴です。

System(経営システム):人事、管理会計、会議体など、組織を運営するための仕組みです。

このうち、ハードの3つは、変えようとする意思やプランがあれば、変更することが比較的容易ですが、ソフトの4つは、人の意識やスキルレベルなどが色濃く絡むだけに慣性が働き、強制的にまたは短時間に変更することは難しいとされています。

図表282は、7Sを組織変革の観点から並べてみたものです。

まず環境変化があり、それが戦略の変更を要請します。

System(特に人事評価など)とStructureを変革のツールとして用い、かつ強力なリーダーシップによるコミュニケーションなどを総動員し、変わりにくいソフトの4つのSを根気強く変えていくことが求められます。

事例で確認ここでは7Sの事例として、エクセレントカンパニーとして名高いGEの例を見てみましょう。

その強さの秘密が垣間見えます。

Strategy:以前より集中と選択をしていたが、昨今ではプラスチック事業や金融事業の売却を行うなどますますそれを加速し、重電、インフラ、ヘルスケアといった社会問題解決につながる分野で圧倒的なポジションを築くことを目指している。

Structure:全世界に支店を持ち、それぞれがプロフィットセンターになっている。

構造そのものは比較的オーソドックス。

System:特に人材育成の仕組みに特徴がある。

コーポレイトユニバーシティやリーダー選抜の方法論は他企業のお手本とされるくらい洗練されている。

人事考課はかなり厳し目。

SharedValue:「GEグロースバリュー」と呼ばれる人の成長に関する価値観がある。

リーダー育成こそが使命という意識が強い。

Style:目標達成意識がかなり強い。

一方でチームプレイや後進の育成をする文化がある。

Staff:個々人の能力は高く、メンタル面でも強い人間が多い。

Skill:特にリーダー育成に強みを持つ。

被買収企業を100日で同化させるなどのスキルもある。

スピードがとにかく速い。

コツ・留意点17Sの分析ではそれぞれの要素が整合していることが大事とされていますが、単に整合しているだけではなく、本文中に示したGEのように、高い次元で整合していることが望まれます。

たとえば、本来ポテンシャルを持つ人材を抱えているにもかかわらず、戦略のストレッチ度合いが低く、全体のモチベーションも低く、減点主義で誰もリスクを取らない、従業員の能力も伸びていないという状態は、望ましいものではありません。

人間が持つ潜在的な可能性が表出しているかが重要です。

2組織変革の途中では、むしろ7つのSが整合していないのが普通です。

本文でも触れたように、ハードの3Sの変化にソフトの4Sが追いついてこないからです。

あまりに乖離が大きくなると組織運営に支障をきたしますので、4Sが追いつける程度の3Sを立案することや、何が特に変革に取り残されているかを知ることが必要です。

日本企業では、アメリカ企業ほど簡単には人員の入れ替えをできないことも、4Sがなかなか追いついてこないという問題の一因となっています。

29PM理論リーダーシップは「P機能(Performancefunction:目標達成機能)」と「M機能(Maintenancefunction:集団維持機能)」の2つの能力要素で構成されているという理論。

三隅二不二教授が提唱。

基礎を学ぶ用いる場面

●自分自身のリーダーとしての強み・弱みを認識し、改善を図る●企業や人事部が管理職のリーダーシップを評価し、改善に活かす●リーダー陣のバランスがとれているかを確認し、人員構成に反映させる考え方P機能とは、メンバーへの指示や叱咤激励などにより、目標を達成する能力を指します。

主に業務志向、仕事指標の軸と言えます。

それに対してM機能とは、人間関係に配慮し、集団のチームワークを維持・強化する能力を指します。

PM理論では、P機能とM機能の2つの能力要素の強弱により、リーダーシップを以下の4つに分類します。

PM型(P・Mともに強い):目標を達成する力があると同時に、集団を維持・強化する力もある。

理想的なリーダーシップのタイプPm型(Pが強く、Mが弱い):目標を達成することはできるものの、集団を維持・強化する力が弱い。

pM型(Pが弱く、Mが強い):集団を維持・強化する力はあるものの、目標を達成する力が弱い。

pm型(P・Mともに弱い):目標を達成する力も、集団を維持・強化する力も弱い。

組織として良いのは、言うまでもなくPM型リーダーの比率が高い状態です。

ただし、このような企業はそう多くはありません。

よく見られるのは、比較的Pm型リーダーの多い組織、逆にpM型リーダーの多い組織、そしてPm型リーダーとpM型リーダーが適度に混在している組織です。

まずPm型リーダーが多い組織ですが、その典型は古いタイプの営業スタイルが通じやすい営業組織などです。

俗に言う「体育会系の組織」や単純なビジネスモデルの会社にこのタイプが多いようです。

一方、pM型リーダーが多い組織の典型例は、会社の業績が悪くないためあまり強烈にプレッシャーをかける必要がなく、かつ高学歴で繊細な人々が多い組織などです。

財閥系の老舗企業などによく見られます。

最も典型的に見られるのは、Pm型リーダーとpM型リーダーが混在している組織です。

リーダーを適切に育成することでPM型のリーダー比率を高めると同時に、プロジェクトチームなどではうまく人材を組み合わせ、組織としての力を発揮する工夫が必要となります。

事例で確認実際にある組織の管理職の分布をPM理論に則ってプロットしたのが図表292です。

この会社の大きな問題は、以下のようになるでしょう。

1)PM型リーダーがいない:両方の特性を兼ね備えたリーダーがこの図ではゼロとなっています。

A氏がギリギリでここに入らなかった結果とも言えますが、PM型リーダーの不在は好ましいことではありません。

A氏のM行動を上げる、あるいはB氏のP行動を向上させるなどの施策が必要でしょう。

2)全体的にP機能が強い:P機能が強いこと自体は業界や商材の特性にもよるので一概に悪いとは言えないかもしれません。

しかし、全体的なM行動の弱さは悪しき組織文化の蔓延や、対立の激化、さらには人間関係を原因とするメンタルヘルス問題に発展しかねません。

全般的にM行動をテコ入れするような研修の実施や評価基準の変更が必要と思われます。

何らかの形でB氏をベンチマークし、M行動を高めるヒントを得ることが効果的でしょう。

コツ・留意点1日本人は元々人間関係重視であることに加え、昨今はM行動を高めるための研修なども充実していることから、実際には図表292とは逆の傾向の組織が増えています。

ただし、P行動が弱くなっているとしたらそれはまた大きな問題です。

ライフバランス重視、豊かになった生活、コンプライアンスの過剰徹底など、さまざまな背景があるとは思いますが、グローバル競争が激化しており、その中で勝たなくてはならないのも事実です。

企業サイドとしては、組織の生産性を高めるP行動をいかに効果的に高めるか、再考の時期が来ていると言えるでしょう。

2PM理論は分かりやすく現代でも有効なフレームワークではありますが、リーダーシップ論の究極というわけではありません。

類似のフレームワークであるマネジリアル・グリッド同様、開発されたのは1960年代と古く、その後も、状況適合理論などに代表される様々なリーダーシップ論が生まれています。

PM理論のみを盲信するのではなく、他のリーダーシップ論も学んだ上で使いこなすことが必要です。

30パワーの源泉と影響力の武器人や組織の行動に影響を与える力(パワー)が何に由来しているかを考えるのがパワーの源泉の考え方。

一般論として他人の行動にどうすれば影響力を与えられるかを示すのが影響力の武器の考え方。

基礎を学ぶ用いる場面

●あらゆる場面において、他人に自分の思い通り動いてもらう●リーダーとして自分にどのような「人を動かす力」が備わっているかを確認し、能力開発のヒントとする●企業や人事部が管理職の「人を動かす力」を増す上でのヒントを得る●その理屈を知っておくことで、無意識のうちに他人に行動をコントロールされてしまう可能性を減らす考え方まずパワーとは、「人や組織に影響を与える力」のことです。

その源泉を知ることで、それらをうまく組み合わせ、効果的に他人を動かすことが可能になります。

図表301に示したのは、ジョン・フレンチとバートラム・ラーベンによるパワーの源泉の分類です。

強制力:相手が苦痛に感じるものを与えることで影響を及ぼせる力。

何かしらのペナルティなどが典型例。

報酬力:相手にとって嬉しいものを与えることで影響を及ぼせる力。

上司による人事考課で年俸が上がるなどが典型例。

正当権力:相手を動かしうる地位の高さ。

社内での上司部下の関係などが典型例。

専門力:相手が信頼するような専門性の高さ。

同一視力:相手にとって自分が魅力的と感じられるような人間であること。

出身校や業務経験、あるいは趣味などが同じこともそうした魅力につながる。

この他にも、ジェフリー・フェファーが提唱する、公式の力(強制力、報酬力、正当権力、情報力)、個人の力(専門力、同一視力)、関係性の力の3つ(細分化すると計8つ)に分ける方法もあります。

パワーの源泉がパワーの行使者、特にリーダーの特性に注目していたのに対し、影響力の武器は、たとえパワーを持たない人間であっても他人を動かす上で活用可能な、人間の一般的な性向を示すものです。

これも様々な分類がありますが、最も有名なのは、図表302に示した、ロバート・チャルディーニによる6つの影響力です。

これらは、実践例として交渉術のテクニックなどにも応用されています。

たとえば「フットインザドア」という、本命の要求を通すために、まず簡単な要求からスタートし、段階的に要求レベルを上げる方法がありますが、これはコミットメントと一貫性を用いています。

このように、影響力の武器を使った他人の動かし方は多数のものがあります。

自分が積極的に使うかどうかは別として、知っておきたい考え方です。

事例で確認歴史上の事例で考えてみましょう。

本能寺の変というリスクの高い反逆の際に明智光秀が家来(部下)に対して用いたパワーは何でしょう?強制力、報酬力、正当権力は間違いなく強く機能したでしょう。

専門力は微妙かもしれませんが、家来として長く仕える中で同一視力に動かされた者もいたでしょう。

影響力に関して言えば、光秀が現実にタクティクスとして用いたかは別として、返報性(過去の恩に報いなければならない)、コミットメントと一貫性(ここまで苦楽を共にしたのだからいまさらノーとは言えない)、好意(主として好きだ)、権威(信長の側近がチャンスと言うのだからチャンスなのだろう)が機能した可能性が高そうです。

昨今は戦国の世ほど強制力を強くはできません。

だからこそ、こうしたことを理解して他人を動かす術をしっかり考えたいものです。

コツ・留意点1特に影響力の武器は、それを使うことでてきめんに効果が出やすいため、多用する人間も少なくありません。

しかし、多くの人間は、こうした人間ならではの癖を利用されて相手の思い通りに動かされたと知ると気分を強く害するものです。

昨今はビジネス書などでもこのような考え方を説明したものが増えましたから、ばれる可能性は非常に高まっていると言えるでしょう。

そうした中であまり安易に影響力の武器を用いすぎると、相互不信を生んだり自分への信頼をかえって下げることにもなりかねません。

自分がいいように扱われないための予防的知識として知っておくことは大事ですが、自分が用いる場合は細心の注意が必要です。

2パワーは、それが相手に伝わっていないとパワーとして機能しません。

特に専門力や同一視力などはその傾向が強いと言えるでしょう。

日本人は奥ゆかしさからか、自分の力を誇示することを嫌う傾向が強いようです。

そのこと自体を否定するものではありませんが、嫌みにならない程度に周りに自分のパワーを正しく伝えるコミュニケーションにも意識を向けたいものです。

31カッツ理論マネジャーの能力をテクニカル・スキル、ヒューマン・スキル、コンセプチュアル・スキルの3つに整理するもの。

ロバート・カッツ教授が提唱。

基礎を学ぶ用いる場面

●管理職が自分自身の持つべき能力の指針を得、能力開発に活かす●企業や人事部が自社の社員の強み・弱みを把握し、研修やOJTなどの施策のヒントとする考え方カッツは、マネジャーに必要な能力には3種類のものがあり、さらに、その比率は職位が上がるに従って変化する(変化させるべき)と考えました。

カッツの3つのスキルは、具体的には以下のようなものです。

テクニカル・スキル:業務遂行能力や業務知識と呼ばれるものです。

たとえば会計担当者にとっては経理・財務の知識などがこれに当たりますし、システムエンジニアにとってはプログラミング能力などがこれに該当します。

ヒューマン・スキル:俗に言う対人関係能力のことです。

組織が協力しながら働くうえで、誰にとっても重要なスキルと言えるでしょう。

具体的には、部下とのコミュニケーション力や動機づける力、交渉力、調整力などが該当します。

コンセプチュアル・スキル:概念化能力とも呼ばれます。

物事を概念化して捉えたり、抽象的に物事を考えたりする能力です。

グロービスで言う「クリティカル・シンキング」(健全な批判精神を持ちながら、物事を正しく考える力)の能力とほぼ同等の能力と考えていいでしょう。

カッツは、図表311の通り、マネジャーの階層が上がるにつれ、テクニカル・スキルの重要度が相対的に下がり、コンセプチュアル・スキルとヒューマン・スキルの重要度が高まると考えました。

事例で確認ここではファーストリテイリングの柳井正会長について考察してみましょう。

柳井氏はもともと山口県の紳士服店であった小郡商事の2代目社長です。

アパレルに関する知識は抜群で、いまでも現場の担当者に負けないくらいの知識があると言われています。

また、当初は小さな店の店主でしたから、現場感覚や店舗運営などについても優れた知識を持っています。

アパレルビジネスを運営する上でのテクニカル・スキルは非常に高いものがあります。

ヒューマン・スキルに関しては、時に冷徹と表現されることもありますが、コミュニケーション力や動機づける力、交渉力などがなければ、ほぼ一代でファーストリテイリングをあそこまでの企業に育て上げることはできなかったでしょう。

その意味で、ヒューマン・スキルも極めて高いと思われます。

そしてそれ以上に柳井氏を特別な経営者たらしめているのは、そのコンセプチュアル・スキルでしょう。

「頭が切れる」「構想力が素晴らしい」「成長のボトルネックを見抜くセンスが素晴らしい」など、同社の役員陣からの発言も含め、さまざまな評価がありますが、「考える力」が図抜けているのは間違いありません。

こうして見てくると、柳井氏は現在、どのスキルも極めて高いレベルにあることがわかります。

しかし、ファーストリテイリングの成長物語を読んでいくと、小郡商事からファーストリテイリングへと変わり、さらにSPAという業態に転換して成長するに伴い(元々二代目社長なので、カッツのモデルの縦軸には必ずしも相当しませんが、小さな組織を率いる立場から大きな組織を率いる立場に変わったという点では、カッツ・モデルを援用できます)、徐々に現場に必要なテクニカル・スキルの比重が下がり(もちろん、絶対的レベルは今でも極めて高いですが)、イノベーションに必要なコンセプチュアル・スキルの比重が高くなってきたことが読み取れます。

コツ・留意点1カッツの洞察は鋭いものがありますが、「スキル」に比重を置き過ぎている点に違和感を抱く人もいます。

そこでグロービスでは、カッツの3つのスキルは保ちつつも、さらにそのベース、根幹となるものとして「意識/心的要因」を重視しています。

また、スキルはその状況に合わせて発揮されてこそ意味を持つものですから、「態度」や「行動」もスキルと同等あるいはそれ以上の意味があるものとして捉えています。

部下の育成の際などはスキルに過度に注目するのではなく、それ以外の要素も満遍なく意識したいものです。

2近年はグローバル化の影響もあり、グローバルリーダー育成の必要性が叫ばれています。

グローバルリーダーに関してもカッツのモデルは有効ですが、ややポイントがぼやけてしまい、育成への応用が難しくなってしまいがちです。

そこでグロービスでは、図表312に示したような「3+3」の能力を提唱しています。

語学はもちろん、さまざまな視点から物事を見ることのできる能力(国際的視野)、そして多様性の高い組織において信頼と人間関係を構築できるような能力(異文化コミュニケーション力)がプラスαで必要になるのです。

32動機付け・衛生要因仕事に対して満足をもたらす要因と不満をもたらす要因は異なるという考え方。

前者が動機付け要因、後者が衛生要因となる。

フレデリック・ハーズバーグが提唱。

2要因理論と呼ばれることもある。

基礎を学ぶ用いる場面

●部下がなぜ動機付けられていないかを分析したいとき●部下を動機付けたいとき●企業や人事部が人事制度を設計・変更したいとき考え方ハーズバーグは、人々が動機付けられる要因にも2種類のものがあると考えました。

1つは動機付け要因です。

動機付け要因には、仕事の達成感、責任範囲の拡大、エンパワーメント、能力向上や自己成長、チャレンジングな仕事などが挙げられます。

これらは、従業員に適切に与えられることで、直接的に満足を高め、モチベーションを向上させることにつながります。

一方、衛生要因は直接的に人々を動機付けるものではありません。

不満は解消されるものの、そのことが満足感やモチベーションを高めるとは限らないのが衛生要因の特徴です。

衛生要因の具体例としては、上司の管理方法、労働環境、作業条件(金銭・時間・身分)などが挙げられます。

仮に衛生要因が満たされていない状況で(例:賃金が安い、労働時間が長いなど)、どれだけ動機付け要因を与えたところで、不満は解消されていませんから、従業員のモチベーションは簡単には上がりません。

逆に、仮に従業員のモチベーションが低いところに衛生要因だけを追加しても、これもモチベーションの向上にはつながらないのです。

企業としては、現状の衛生要因と動機付け要因の状況を把握したうえで、適切なミックスを提供しなくてはなりません。

なお、ハーズバーグのこの理論は、動機付けに関する理論としては比較的古いものであり、その後の研究で一部疑義を呈されている部分もありますし、反例も多数発見されています(金銭的報酬が動機付けにつながる例など)。

それにもかかわらず、いまだに広く知られ、実務でも用いられているのは、そこに完璧とまでは言えないまでも、一定の普遍性があるからと考えるのが妥当でしょう。

また実務に応用する上で分かりやすいということも、この理論が重宝される理由と言えそうです。

ちなみに、組織行動学とは全く異なる分野でも、動機付け、衛生要因と共通点のある、アナロジー的なフレームワークが提唱されています。

その例が、図表322に紹介した顧客満足のピラミッドです。

顧客満足に関して提示されたこのフレームワークでは、顧客が提供されることを前提として考えており、提供されないと不満につながる「本質機能」と、当然提供されるとは思っていないが、提供されたら嬉しい「表層機能」を切り分けて製品・サービスの設計をすべきと説きます。

すぐに分かる通り、本質機能はハーズバーグの衛生要因、表層機能は動機付け要因と相似的な意味合いを持ちます。

事例で確認日本企業で非常にユニークな組織運営をしている会社に京セラがあります。

京セラは独自のアメーバ経営で有名ですが、アメーバ経営では、小集団を率いることの責任、個人の自立(自律)、成長、社会貢献、帰属意識といったことを非常に重視します。

これらは動機付け要因に相当します。

そしてモチベーションは概ね高くなっています。

同社の給与レベルなどももちろん悪いわけではありませんが、競合より大幅に高いわけではありません。

まさに衛生要因はしっかり提供して不満足を取り除きながら、動機付け要因を多数与えることでモチベーションを高めていると言えるでしょう。

一方、ある企業などは、給与レベルこそ悪くはないものの、仕事がきつく、そのわりに自由度や達成感がないということで、特に支店のモチベーションは必ずしも高くはないようです。

コツ・留意点1ハーズバーグの理論に対する批判として、従業員の満足度に注目するのはいいが、満足感と生産性との間に本当に関連性があるのかが証明されていない、というものがあります。

確かに、どれだけ従業員のモチベーションが高くても、最終的には企業の利益につながらなければ意味がありません。

衛生要因にせよ動機付け要因にせよ、実際の支出や、手間暇をかけることによる機会コストが生じることを考えればなおさらです。

ハーズバーグの考え方は理解しながらも、どうすれば効果的に利益につながるような動機付けになるかをしっかり考える必要があります。

2ハーズバーグの炯眼は、満足と不満足がそれぞれ反対の状態だとは考えなかったことです。

満足の反対は「満足なし」であり、不満足の反対は「不満なし」であると考えたところが斬新だったのです。

この考え方は、本文中にも紹介したように、サービス・マネジメントなどにも応用されており、顧客が不満ではないからと言って満足しているわけではないということは、半ば常識化しています。

33マズローの欲求5段階説人間の欲求を5段階に分類し、重要性に従ってそれらが階層構造をなしているとしたモチベーション理論。

低次元の欲求が満たされれば、さらに高次の欲求を満たすべく行動すると考える。

アブラハム・マズローによって提唱された。

基礎を学ぶ用いる場面

●部下の動機付けのヒントにする●自分の動機付けが何によってなされているかを確認し、キャリア構築のヒントにする●企業や人事部が、従業員の満足度を上げるための施策を検討する●マーケティング担当者が顧客の満足度を上げるヒントとする考え方マズローは、人間は自己成長を求める動物であるという考えのもと、人間の欲求を5段階に分類し、低次元の欲求が満たされれば、さらに高次の欲求を求めて行動すると考えました。

これもNo.32の動機付け・衛生要因と同様、モチベーション理論としては比較的古典的な理論で、かつ批判もありますが、普遍性が高いことから今でも多くの人がさまざまな場面で活用しています。

5段階の分類の詳細は以下の通りです。

生理的欲求:生命を維持するための根源的な欲求。

人間の最も原始的な欲求である、食欲や睡眠欲などが含まれます。

安全欲求:経済的な安定や健康の維持、治安の良さや事故リスクの低さなど、安全で豊かな生活を求める欲求です。

日本をはじめとする先進国では、この欲求までは満たされていることが多いため、企業の担当者が施策を考える上ではあまり重要ではないとされています。

所属と愛の欲求:社会的欲求とも呼ばれます。

自分が社会に求められていると感じることや、良き組織やコミュニティに属して心の安定を得たい、人とつながって孤独感を忌避したいという欲求です。

近年、SNSなど「人とのつながり」を促進するサービスが増えていますが、これはまさにこの欲求に応えるものです。

承認欲求:他者から尊敬されたいという欲求です。

承認欲求には2種類のものがあり、低次な承認欲求は、名声や注目といった表面的なものにとどまります。

マズローは、より高次の承認欲求である、自己肯定感や自律性、自分自身の評価の高さが重要と考えました。

自己実現欲求:自己の存在意義を実現する欲求です。

自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、なすべきことを成し遂げたいという欲求です。

マズローは欲求5段階説の中でもこの欲求を最高次に位置づけ、この欲求を満たすことこそが人間を幸せに導くと考えました。

この欲求の5段階は、図表331に示したように大きく物質的欲求と精神的欲求に区分することもできます。

一般に先進国の企業では精神的欲求が従業員のモチベーションを高める上で重要と考えられており、実際に企業側もそれを意識して人事施策を考えます。

事例で確認図表332にビジネスパーソンAさんの欲求が満たされている度合いを示しました。

Aさんの上司は何をなすべきでしょうか?まず考えられる方策としては、人間関係のトラブルを上司が介入して解決するとともに、周りの人々に彼/彼女をもっと評価するように働きかける、というものがあります。

ただし、これは往々にして対症療法的に終わってしまう可能性もあります。

もしAさんの方に根源的な問題があるのであれば、部署を変え、Aさんが働きやすい場所を提供してあげるのがいいかもしれません。

もう1つ気になるのは、Aさんの自己実現欲求が不明というところです。

「コツ・留意点」のところでも触れるように、あらゆる人間の自己実現欲求を満たすことは難しいですが、かと言って、当人が何をしたいのか、何を実現したいのかを全く知らないというのは問題です。

一度しっかりコミュニケーションをとることが必要でしょう。

コツ・留意点1よくある誤解は、低次の欲求が満たされないと、人はより高次の欲求に至らないというものです。

この点についてはマズロー自身も否定していますし、実証研究でもそうでないことが示唆されています。

たとえば生理的欲求や安全欲求が完全には満たされてはいなくても、人は所属と愛の欲求を求めたり、承認欲求を求めたりするのです。

もちろん、低次の欲求があまりに満たされていない状況で高次の欲求を満たそうとしてもなかなか効果は出ませんが、100%満たす必要はないという割り切りを持つことも重要です。

2マズローは自己実現欲求を他の4つとは異なる別格のものとも主張しました。

また、近年、人々の「自分探し」がブームになったこともあり、「部下の自己実現欲求を満たしたいが、なかなかそうも行かない」と悩まれる管理職が散見されます。

しかし、現実に、あらゆる従業員の自己実現欲求を満たすことは不可能ですし、費用対効果も見あいません。

自己実現欲求は意識しながらも、所属と愛の欲求をしっかり満たしてあげたり、承認欲求を満たしてあげるだけでも、従業員のモチベーションは十分に上がるという点を意識したいものです。

34サティスファクション・ミラー顧客満足と従業員満足が相互に影響を与えあうと考えるフレームワーク。

あらゆるビジネスに応用可能だが、特にサービス業で重視される。

基礎を学ぶ用いる場面

●何が顧客満足、従業員満足実現のボトルネックになっているかを見極め、対策を打つ●ビジネスモデルや当該サービスの改善のヒントを得る考え方製造業とは異なるサービス業ならではの特徴として、サービスの提供者と顧客が直接的に接点を持ちやすいという点があります。

それゆえ、お互いの満足や逆に不満足が、増幅されやすくなるという傾向があります。

たとえば、サービスによって顧客が満足し、従業員に満足の意を伝えると、その従業員は自分の仕事に誇りと愛着を持つようになることでモチベーションが高まり、さらに良いサービスを顧客のために提供しようとします。

逆に不満を伝えられるとモチベーションが下がり、それがサービスにも反映されてしまうため、ますます顧客は不満足を覚えるのです。

もちろん、企業として目指したいのは前者です。

従業員の満足を高めることで高品質のサービスを提供し、そのサービスを受けた顧客が満足することで、ロイヤルティを高めてリピーターになったり口コミをする。

その結果として、企業の生産性や収益性が上がるというのが理想像です。

このような、顧客満足と従業員満足が好循環の関係にあることを、サティスファクション・ミラーと言います。

図表341の中でも特に重要なのは、3段目の顧客満足と従業員満足の対応、そして4段目のサービス獲得コストの低下と生産性向上の対応です。

従業員の満足を上げる施策には多数のものがありますが、それが一過性であったり、点としての施策で相互に連関がないようでは効果は高まりません。

そこで役に立つのが、図表342に示した、従業員満足の向上を含む好循環のサイクルです。

この図表からも分かるように、組織マネジメントに絡むあらゆる要素——採用、配置、育成、評価、報奨——などに関して満遍なく工夫していくことによって初めて従業員満足が向上し、それが顧客サービスにも反映されるだろうことが分かります。

すべての要素が重要なのですが、この中であえて1つ最重要な施策を選ぶとしたら、サイクルの頂点に位置する「入念な採用と選抜」でしょう。

よく、「誰をバスに乗せるかは慎重に検討せよ」といったことが言われますが、最初にバスに乗せる人間を間違えてしまうと、育成や評価をどれだけ工夫してもなかなか効果が出ないものだからです。

事例で確認高い従業員満足度と顧客満足度が実現され、まさにサティスファクション・ミラーが実現している企業にホテル業を営むリッツ・カールトンがあります。

同社は、新しいホテルの開業にあたって、従業員候補を慎重に選抜するとともに、しっかりした訓練を施します。

意外なのは、完璧なスキルを身につけさせてから現場に出すというのではなく、当初のトレーニングは比較的早く積ませ、OJTで鍛えていくという方法です。

ただし、最初から顧客数が多いと対応しきれませんから、最初はあえて稼働率を落として丁寧なサービスを提供できるようにし、徐々に稼働率を上げるという工夫をしています。

また、同社は従業員への大きな権限移譲でも知られています。

「忘れ物をしたお客様のために飛行機で追いかけてそれをすぐに届けた」といった逸話には事欠きません。

これが従業員満足にもつながっているわけですが、何もコントロールする仕組みなく権限移譲することは不可能です。

同社においてそれを可能にしているのがクレドと呼ばれる経営理念です。

従業員はこれを徹底的に叩きこまれます。

規則で縛るのではなく、理念で方向付けや動機付けすることは、従業員満足を高める上でも理にかなっていると言えるでしょう。

コツ・留意点1No.7の好循環・悪循環のパートでも触れましたが、好循環はいったん回り出すとあとは自律的に回り出し、企業にとって大きな武器となりますが、最初でボタンの掛け違いがあると、悪循環が回り始め、それがどんどん拡大してしまい、食い止めるのが非常に困難になります。

初期においては、その差は本当に紙一重ですが、長い時間がたつと容易にはそれを変えることはできません。

だからこそ、ビジネスの初期において従業員満足を高める施策にこだわりたいものです。

2従業員の満足度が高いことがそのままサービスの質に反映されないという事態も往々にして観察されます。

例えば仕事でそんなに工夫しなくとも競争があまりないため十分な給与が得られるという状況です。

競争を回避できる状況を作ったという意味で戦略論としては評価できなくもないですが、これではいったん競争にさらされた瞬間に競合に負けてしまう可能性が高まってしまいます。

真に高い品質のサービスが提供されているか、あるいは顧客が満足しているかはしっかり測定することが必要です。

35レビンの組織変革プロセス組織変革の最も単純なモデル。

固い状態を軟らかい状態にし、再度望ましい姿で確固たる状態にすべきと考える。

クルト・レビンが提唱した。

基礎を学ぶ用いる場面

●組織変革を行う際に、組織がどのステージにあるのかを把握する●自己変革に転用し、自分の現状を知る考え方組織変革は、それをやろうと思ってからすぐに実現できるものではなく、ある程度のプロセスを踏むことが必要となります。

このプロセスに関しては、さまざまなものが提案されていますが、最も古典的かつ汎用性が高いのが、このレビンの変革プロセスです。

レビンの変革の3つのプロセスをもう少し詳細に説明すると以下のようになります。

解凍:メンバーに新たな心の変化の必要性を理解させ、安定した均衡状態とも言える現状を突き崩し、変化に向けて準備をする段階。

このプロセスは、推進力(例:リーダーが変革の必要性を強く説く、プロジェクトチームを作るなど)が高まった時、あるいは抑止力(例:抵抗勢力の中心人物がいなくなったなど)が弱まった時に進みます。

移動:変化のための具体的な方策を取り入れ、新たな行動や考え方を学習させていく段階。

この段階は混乱と試行錯誤の段階とも言え、適切な変革マネジメントが必要となります。

再凍結:新しく導入された変化を定着させる段階です。

人々は平穏を取り戻し、新しい考え方や価値基準に馴染んでいきます。

一般に重視されるのは、解凍と移動のプロセスです。

特に移動のプロセスは時間もかかることから適切なマネジメントと、推進する強力なリーダーシップが求められます。

まず解凍の方ですが、ここでは、「なぜ変わる必要があるのか」「なぜこのままではいけないのか」を徹底的に従業員に腹落ちしてもらう必要があります。

「変化は怖いものではないこと」「変化した後の状態の方が魅力的であること」などもしつこくコミュニケーションする必要があります。

そのために明確な変革後のビジョンやアナロジーによるイメージ喚起が必要となります。

次に移動ですが、これについては「必ずこうすればうまく行く」といった魔法の方法論はなく、組織の状態に合わせてさまざまな施策を講じる必要があります。

重視されるのは以下のような点です。

・まずは小さな成功を収める:それをベースにして「できるんだ」「この方向性でいいんだ」という安心感を組織内に醸成します。

・抵抗勢力をうまく緩和する:抵抗勢力も一様ではありません。

抵抗する理由も違いますし、組織の中におけるパワーや、過去の状態への馴染み度合いもすべて異なっています。

そうした状況を踏まえながら、どのようにそれを切り崩していくのかを考えます。

・変革の途上では人々の感情は大きな起伏を見せます。

エネルギーレベルが下がらないように、人々と密にコミュニケーションをとることで、勇気づけすることが必要です。

事例で確認組織変革の有名な事例にかつての駿河銀行(現・スルガ銀行)があります。

当時、日本の金融業界はまさに規制緩和が始まった頃で、第二地銀であったスルガ銀行は、有力銀行の挟み撃ちにあい、地盤沈下の可能性がありました。

しかし、規制業界ということもあり、変革への意識は当初はあまり高くありませんでした。

それを大きく変えたのが岡野光喜社長です。

彼は銀行としてはユニークなマーケティング戦略を打ち出すとともに、組織文化を変えることを宣言しました(解凍)。

そして人事制度を変更したり、ジュニアボードなどの施策を使うことによって中期的に行員の意識を変え(移動)、同行を一目置かれる存在へと変革していったのです。

コツ・留意点1本文中でも触れた抵抗勢力の緩和についてはさまざまなタクティクスがありますが、最もオーソドックスなアプローチの1つが図表352に示した、変革論で名高いJ.P.コッター教授の方法論です。

下に向かうにつれてよりハードなアプローチとなります。

一般的には、ある程度時間的に余裕があるのであれば、「教育とコミュニケーション」「参加促進」「手助け」などを用い、我慢強く従業員の意識を変えていきます。

ただし、時間的猶予がなかったり、抵抗勢力が強い場合などには、「策略と懐柔」「有形無形の強制」といったハードな施策を用いる勇気も必要です。

2組織の変革は、一部のみが突出して進めていけばいいというものではなく、ある程度のスピード合わせが必要になります。

たとえば、開発部門が劇的に変わったのに営業部門やマーケティング部門が全く変わらないとしたら、それはそれで軋轢を生むことになります。

変革のリーダーシップをとるリーダーたちが適宜コミュニケーションして、変革のスピードをある程度までは合わせることも必要です。

36SECIモデル個人が持つ暗黙的な知識(暗黙知)は、「共同化」(Socialization)、「表出化」(Externalization)、「連結化」(Combination)、「内面化」(Internalization)という4つのプロセスを経ることで、共有の知識(形式知)となると考える。

野中郁次郎教授が提唱。

基礎を学ぶ

用いる場面●経営者が、組織において効果的にナレッジを管理し、活用しやすいようにする●勘と経験で成り立ってきた企業が、その強さの本質を体系化することで持続的に勝てるようにする●海外展開する企業などが、より多くの多様な人々にナレッジを効果的に移転する考え方SECIモデルは、野中郁次郎教授が提唱した、知識創造活動に注目するナレッジ・マネジメントの枠組みです。

ナレッジ・マネジメントでは、SECIのプロセスを管理すると同時に、このプロセスが行われる「場」を創造することが重要であるとされます。

SECIモデルの各プロセスの詳細は以下のようになります。

共同化:文書化されていない行動様式やそのベースにある知恵、メンタルモデルなどを指す暗黙知を形式知化するプロセスです。

一方、形式知とは、文書化あるいは可視化されたドキュメントやマニュアル、方法論などを指します。

共同化は、日々の活動を通じて各人が持っている暗黙知を、お互いに共通の時間を過ごしたり、空間をシェアしたりすることによって、他人に共有していくことと言えます。

一般に、小集団での活動を前提にすることが多く、徒弟制度などがその典型とされます。

表出化:共同化によって蓄えられた暗黙知を言葉やチャート、プロトタイプなどを活用して、具体的な形に変えていくことです。

マニュアル化などがその典型です。

表出化では、対話が重視されます。

暗黙知は、そもそも自分自身がその存在に気付いていないことも含まれていることが多く、それゆえに、他人と対話を重ねることにより、その本質を言語化し、磨くことが重要なのです。

連結化:表出化された形式知をさらに結びつけて具体化し、最終的な形に落とし込むプロセスです。

たとえば、形になったコンセプトを、すでに動いているオペレーションサイクルに効果的に適用できるように追加することなどが該当します。

内面化:連結化によって組織としての形式知とされたものを、再度個人の暗黙知として取り込んでいくフェーズです。

たとえば、新しい業務プロセスの中で、実際に手や足や頭を動かす中で感じる事柄は、個々人の経験として内面に取り込まれていきます。

内面化で重要なのは、内省と実践の反復です。

意識的に内省をして、体の中に取り込んでいくことが重要です。

より具体的には、自分なりに工夫をし、反省をし、何度も繰り返すことです。

事例で確認SECIモデルの特に表出化がうまく行った例にトヨタの「プリウス」の開発があります。

元々トヨタは連結化などに長け、日本企業の中でもナレッジ・マネジメントに強みを持つ企業といわれていましたが、課題も少なくありませんでした。

そうした中、1993年にスタートしたプリウスのプロジェクトは、トヨタにとっても大きなチャレンジでしたが、ここでトヨタは同社史上初めて「大部屋制」を採用します。

狙いは、同じ空間で作業し、コミュニケーションを密にする中で暗黙知の共有を行うことでした。

この狙いはうまく行き、「21世紀の自動車」という形でコンセプト化(表出化)することにつながったのです。

プリウスのプロジェクトは、技術面もさることながら、時間的にも非常にタイトな制約のあるものでした。

だからこそ、既存の開発の進め方ではなく、ナレッジが効果的に生まれるような施策に果敢に挑戦したのです。

コツ・留意点1SECIモデルを効果的に回すためには、当然ながらそのプロセスに応じた勘所を押さえる必要があります。

ただし、各プロセスに求められる姿勢やスキルには大きな差があります。

たとえば、連結化では「左脳的」な頭の働きが必要であり、論理性、分析、考える(Think)力が重視されます。

一方で、最初のプロセスの共同化では、視覚、聴覚を始め、五感を総動員して感じとり、体得することが必要となります。

当然、感じる(Feel)スキルが重要です。

同じ人間がすべてのスキルや特性を高次元で持つことは困難ですから、うまく場を設定したり、リーダーシップをとる人間が役割分担することが必要です。

2SECIプロセスは、図表361からも想像できる通り、1回きりのプロセスではなく、繰り返し回し続けるプロセスです。

よくある失敗は、運動論として1回トライし、一定の成果は収めたものの、それで終わってしまい、ナレッジが進化していかないというものです。

SECIプロセスが自動的に回り続ける仕組みを構築することが望まれますが、そのためにはトップの強いコミットメントと、知識創出を当たり前の活動と考える組織文化の醸成などが必要となります。

 

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