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3章 勝ち続ける仕組みはCAがつくる

目次

01小さなPDCAを評価し大きく改善

変革2年目の課題は商品開発の構造改革前章では、私が良品計画の社長に就いてから、まずは「実行」ありきで、主にD→C→A→Pの順でPDCAを回し始めたことについて述べました。

危機的な状態、非常時には、まず目の前のやるべきことをやることから手をつけ、「C」「A」に進む。

少し落ち着いたところで、徐々に計画(Plan、以下P)を入れていくという流れで変革の大鉈を振るっていくのです。

続く2002年度──。

まだまだ気の抜けない状況が続きます。

変革の2年目は、減収増益を目標にして経費削減に努めました。

それと同時に、商品開発改革、なかでも不良在庫を38億円分も焼却処分した衣料品の商品開発改革を進めることが最大の経営課題でした。

経営改革プロジェクトでも、衣料品の商品開発改革は何度も話し合われ、できる変革はいろいろと行いましたが、やはり商品開発の構造の部分から改革する必要があるという結論に至ります。

小さなPDCAを1年間回し続けた結果、それでは光明が見出せない、小さなPDCAではダメだという評価(Check、以下C)を下し、もっと大きな改善案(Action、以下A)を考えようということです。

勝てる商品をつくるために外部のトップ企業と組む構造改革とは、勝てる構造にするということです。

しかし、それまで「スーパーの西友がつくった衣料品」と言われ、お客さまのニーズに応えられなくなっていた私たちだけで衣料品の商品開発を勝てる構造にすることができるかといえば、無理があります。

衣料品に必要な「かっこよさ」、トレンド、着やすさといった要素を兼ね備えた商品をつくるには、衣料品業界のトップ企業と組む必要があります。

つまり、ものづくりのレベルを格段に上げることが絶対条件になります。

そんなセンスを持っていて、無印良品のコンセプトのなかで実現できる人──。

そう考えてお会いしたのが、デザイナーの山本耀司さんです。

何度かの会合を経てようやく協力の約束をとりつけ、ヨウジヤマモト社からディレクターやデザイナーなど、約20人に来てもらい、良品計画の既存の商品部と一体となって総勢40~50人で衣料品のものづくりが始まりました。

無印良品のワイシャツは約2500円。

それに対し、ヨウジヤマモトのワイシャツは約2万5000円です。

この価格で売れるワイシャツですから、デザイン、パターンは完璧なレベルになります。

このとき、山本さんから、「ワイシャツの第二ボタンの位置は教えられるものではない」と言われたことをよく覚えています。

ワイシャツの種類、形状によって、その位置は微妙に変わるからだそうです。

これはつくり手のセンスによってのみ最適な位置を決めることが可能になるということです。

こうやって、ものづくりのレベルが突然世界レベルになったのです。

パリ、ミラノ、ニューヨークと、すべてのファッション・ショーに出品している彼らが来年のファッションの傾向をつくっていることも学びました。

そんな彼らと組むことで無印良品は1年後のファッションの流行を外すことがなくなったのです。

こうして「スーパー西友の衣料品づくり」から「世界のヨウジヤマモトの衣料品づくり」へと変わったわけですから、商品の違いはお客さまにも自然と伝わります。

「無印の衣料品が変わった!」新商品が並び始めたのは、2003年1月からですが、置いたそばから売れていき、売れ行きは日を追うごとに伸びていきました。

創業哲学にそむいていないか評価するただ、この段階では、衣料品の商品開発の構造が本当に変わったのか、これからもどんどん売れる商品を出せるのかは、まだわかりませんでした。

毎月毎月の売上の伸びを確認し、それが半年、1年と続いたことで、周囲の人たちも「無印の衣料品の復活は本物だ」と評価してくれ、自分たちも以前とはまったく違う、勝てる構造になったことを認識したのです。

やっているときは、自分ではそれが本当に正しいのかわからないものです。

それでも、それが正しいと思ったら信じてやり続けるしかないのだと思います。

ただし、ここで述べておきたいのは、あくまでも、ヨウジヤマモトの看板で売れたわけではないということです。

無印良品では、デザイナーの名前は一切表に出しません。

商品そのもので勝負するのが創業以来の哲学です。

もちろん、当時は明文化はされていませんでしたから、暗黙の哲学のような状態でした。

ですが、このことは、どんな経営状態に陥っても無印良品というブランド、良品計画という企業が守るべき砦であり、評価基準とも言い換えられるものでした。

ワイシャツなら、ワイシャツの素材と機能で勝負する。

創業以来ある洗いざらしのワイシャツは、綿でできています。

染色も漂白もしていません。

ノリもアイロンも使用していないワイシャツです。

パッケージにも入っていません。

このワイシャツのタグを切ってしまうと、どこの商品かわからなくなります。

つまり、着やすさや洗いやすさ、保湿性など、素材と機能だけで勝負して勝てる商品をつくろうというのが、無印良品のキャッチコピーにもなった「モノしか見えないモノをつくる」なのです。

したがって、デザイナーや生産者の名前を出すことは一切ないのです。

もちろん、宣伝に有名人を使うことも一切ありません。

商品そのもので勝負するのが、無印良品なのです。

デザイナーの名前や有名人を使って売れた商品は、本当の売上には数えられないと考えるブランドなのです。

無印良品の「やらない原則」これ以外にも、無印良品には「やらない原則」がいくつかあります。

MUJIのロゴは商品につけません。

また、強い色は避け自然の色しか使いません。

機能を追加しすぎません。

シンプルに徹します。

もちろん、店では無印良品の商品以外は売りません。

だからこそ、大量の不良在庫をすべて焼却処分したのです。

無印良品のタグを外して下取りのルートを使って売りさばけば、いくらかのお金になったのではないかと言われたことはこれまでに何度もあります。

しかし、シンプルを売りにしているだけに、無印の商品だったことはわかってしまう。

そうしたら、売れ残りを別の会社に安く流して処分しているといううわさがあっという間に広まり、せっかく築いたブランドが壊れてしまいます。

自社の創業哲学は、経営が正しい方向に進んでいるかを評価するための最もシンプルで、最高の基準でもあるのです。

無印良品の商品は、何の変哲もないようでいて、じつは暮らしに溶け込むよう緻密に計算されつくされたデザインです。

そのために、世界の一流のデザイナーにデザインをお願いしたり、日本を代表するメーカーに製造を依頼するなど、ものづくりについては妥協を許しません。

デザインも製造技術も世界トップクラスなのです。

「シンプルな商品ばかりで、真似されたらどうするのか」こう心配される人もいるかもしれませんが、逆に、シンプルだからこそ、真似するのが難しい。

「ちょっと真似てやろう」では、つくろうにも同じものはつくれないのです。

たとえば、私が手帳に書くときに使っているシャープペンシル。

再利用できるアルミ製で、500円くらいです。

軽くて丈夫で書きやすく、芯もあまり折れません。

デザインも文具メーカーのものよりすっきりとしていて飽きがきません。

デザインと機能、この両方を高いレベルで兼ね備えているのが無印良品の商品なのです。

もし真似して同じものをつくって500円で売ったとしたら、おそらく利益は出ないはずです。

さきほどお伝えしたとおり、2002年に衣料品の商品開発にヨウジヤマモト社が加わり、翌年の春夏物から衣料品がガラリと変わり売上を伸ばしたのに続き、2003年には家具や生活雑貨のデザインを世界の著名なデザイナーに依頼してつくる「WorldMUJIプロジェクト」を開始します。

これにより、2004年から家具や生活雑貨の売れ行きも伸び始めます。

商品開発に1年かかることはわかっていたので、社長になった1年目から商品開発改革に手をつけ、PDCAを回してはいましたが、数字としての結果が出たのは3年目以降となりました。

02商品開発はPDCAで前進する

小さなPDCAを回して改良を重ねる商品開発のプロセスを確認すると、半年に一度の商品戦略会議で商品開発の方針を決め、具体的な商品の開発アイテムを決めます。

これが、序章でも紹介した、私が捨てずにいつでも見られるように管理していた商品計画書です(P)。

そして、ファーストサンプル、セカンドサンプルとつくられていき、最終サンプルをつくります(D)。

この間も、小さなPDCAを回して改良しています。

最終サンプルは、アドバイザリーボードの審査を受けます(C)。

アドバイザリーボードでは、この商品は無印良品として販売してもいいか、品質だけでなく哲学も含めて判断します。

たとえば、色は派手すぎないか、装飾は華美になっていないか、チープな素材を使っていないかなど、無印良品のコンセプトを逸脱していないかをチェックするのです。

そこで改良点があれば、提案されます(A)。

アドバイザリーボードで承認された商品は、展示会に出します。

この展示会に、国内はもちろん、世界中から社員が集まるほか、ルミネやファミリーマートの担当者、メディアも集まります。

この展示会が開催されるのが、だいたい発売の5カ月前。

春夏の新商品であれば、11月に開催されます。

展示会の反響を見て、それぞれの商品の生産量が決められ(P)、実際の生産に入っていきます。

新商品は、早いものが1月から店頭に並び始め、4月にはすべての新商品が市場に出揃います(D)。

そして、購入したお客さまの声として、クレームや要望が寄せられ、それらを毎週火曜日に開かれるお客さまの声ミーティングで評価し(C)、改善案を検討します(A)。

これは新商品に限りません。

既存商品もPDCAサイクルの中に入ってきます。

さらに、毎月、月に一度の会議で、新商品を含めた全商品の改廃が決まります。

不具合のあった新商品も、このPDCAを何度か繰り返すことで機能と品質の高い新商品へと生まれ変わるのです。

03商品を磨く毎週の「C」「A」と月1回の会議

新商品は半年後に買うといい!?商品開発のプロセスでとくに大切なのが、お客さまの声に基づいて行う「C」「A」です。

お客さまの声に謙虚に耳を傾け、そのクレームや要望に真摯に向き合って「C」「A」を行うことで商品の機能と品質が高まっていく。

これが非常に重要なのです。

実は、私が手帳に書き込むときに愛用しているアルミのシャープペンシルも、実は最初からこれほど書きやすかったわけではありません。

発売後、半年くらいの間に、「芯が折れやすい」「書きにくい」「芯が詰まった」といったお客さまの声が寄せられました。

そうした不具合を一つひとつ直していく、改良していくことで、現在の機能が実現できているのです。

自動車でも、ニューモデルが発売されたら、半年くらい待って買ったほうがいいと言われます。

これも同じことで、発売直後に買って乗り始めた人が、いろいろな不具合を感じたり発見したりしてメーカーに伝えます。

メーカーはそれらの不具合を一つひとつ直して改良していくのです。

だから、不具合が出切って、それらが改良された商品が出回る半年後に買ったほうがいいというわけです。

シャープペンシルも、新発売時のものと半年後のものの見た目は同じですが、実は中身は微細なリニューアルを重ねて改良されているのです。

これもよく見るとPDCAになっているのがおわかりでしょうか。

商品開発の計画を立て(P)、実際に新商品を製造し発売します(D)。

しかし、それで終わりではなく、お客さまのクレームや要望を聞き(C)、不具合を直して改良する(A)。

これを繰り返します。

良品計画は、SPA(製造小売業)なので、お客さまの声をダイレクトに受け取ることができます。

これは大きな利点で、お客さまの声を次々とお聞きし、それに真摯に向き合い、改善、改良を加えていけば、商品の機能や品質を向上させることができるのです。

お客さまの声は、店舗で直接聞く分が約5万件、電話やメールなどが約12万件で、1年間に約17万件寄せられます。

お客さまの声は、月曜から日曜までの1週間分がお客さま室に集められ、火曜日に開かれる「お客さまの声ミーティング」で、商品部や品質管理、生産管理の担当者が話し合い、どこをどう直すかなどを決めます。

商品を見直す、「C」と「A」のための会議です。

それを受けて、月に一度、商品の具体的な改廃を決める会議が開かれます。

「この商品はここをこう改良します」、または、「この商品はどう改良してもダメなので廃棄します」という改廃を決めるのです。

04「C」と「A」でやめる仕事を決める

見直しで大切なのは無駄を省くこと構造改革を行ったのは、商品開発だけではありません。

ありとあらゆる仕事のやり方を見直し(C)、改善(A)していきました。

「見直し」と「改善」と聞くと、何か作業や手順が増えるように受け取られることもありますが、私が見直しにあたって大切にしたのは、ムダを省くこと。

やらなくてもいい、やめてしまえる仕事がないか、どうしたらその仕事をやらなくてもすむようになるか、という視点で仕事を見直したのです。

現在やっている仕事を次々とやめることができれば、生産性がどんどん上がるからです。

たとえば、一番厳しかった2001年度の直営店の人件費率は約11%ありましたが、構造改革後の2005年度の直営店の人件費率は約8・6%に下がります。

金額にして約31億円の削減です。

リストラによる人員削減はまったく行っていません。

では、何をやったのか。

まずは、大型商品の店舗からの発送の廃止です。

「これをやめたら効率が上がる」という仕事はないか?無印良品の商品には、ベッドや自転車、布団など、大きなものがあります。

こうした大型商品は、購入者の自宅まで送る必要があるため「配送商品」と呼ばれます。

この配送商品がたくさん売れれば売れるほど、店の従業員の残業が増えます。

なぜなら、閉店してから、段ボールに詰めるなどの梱包作業や、伝票をつくったりと配送手配を行うからです。

この仕事がなくなれば、店の従業員の残業が大きく減ります。

現状の仕事を見直す際には、やはり効果が大きいものを優先すべきでしょう。

この仕事がなくなれば大きく生産性が上がるというものがないか、評価(C)するのです。

配送商品の改善(A)は、店から送るのをやめ、物流センターから購入者の自宅に直接送るというものでした。

物流センターに梱包された配送アイテムを用意しておき、注文を受けた店から物流センターにその情報を流します。

物流センターは、商品の発送を日常的にやっているので、すぐに受注商品の発送手配ができます。

もっと簡単にすませる方法はないかという発想店頭に商品を迎え入れる、店での納品作業も時間と手間のかかる仕事でした。

朝方、トラックが店に着き、商品をおろし、その商品を店員が受け取って荷ほどきし、店のそれぞれの該当箇所に陳列していきます。

もちろん、この仕事はなくすことはできませんが、もっと簡単にできるようにならないか、改善策(A)を考えました。

まず、トラックは道が空いている夜に走らせます。

さらにあらかじめドライバーに店の鍵を預け、店の中、それも該当する売場、棚まで商品を運んでもらいます。

ステーショナリーが入った折り畳みコンテナは、ステーショナリー売場に置いてもらうといった具合に。

このようにカテゴリーごとに折り畳みコンテナがあり、それらの折り畳みコンテナがカゴ車と呼ばれる台車に積まれているので、ドライバーはカゴ車をガラガラ押しながら、売場ごとに商品が納められた折り畳みコンテナを置いて回ります。

朝、出店した店員は、自分の担当の折り畳みコンテナから商品を取り出してすぐ側の売場に陳列するだけですから簡単に作業を終えられます。

また、売れ残りの返品作業というのも面倒な仕事でした。

返品するそれぞれの商品の取引先や原価を調べて伝票を起票し、それを付けて商品を送り返す。

人の手でやっていた仕事を機械化して、自動的に伝票がつくれるように改善することも可能でしたが、その仕事をなくしてしまうほうがより効率的です。

このケースの改善策(A)は、「店長に廃棄権限を与える」です。

返品せずに捨ててしまえば、返品作業はなくなります。

店長が廃棄を決定し、営業課長が回ってきてそれをチェックしなくてもいい仕組みにしました。

これで良品計画からは、返品作業がなくなりました。

人を減らすと指示も減る本社と各店舗をつなぐ連絡方法にもムダが隠れています。

営業課長から各店長への指示日報というものがありました。

「新商品がいついつ届くからそれをこのように店頭に並べて……」というような指示日報が、一日にいくつも店に送られてくる。

そうすると、店はその対応に追われて仕事が煩雑になり困るわけです。

それ以外にも、アンケートや報告書をつくる指示なども店には届きます。

こうした指示が多くなれば多くなるほど、店長と店員の仕事が増え、場合によっては対応しきれなくなります。

物理的にできないので、指示が来ても無視するようになり、店の実行力が下がります。

そこで、改善策(A)として考えたのが、それまで営業課長(エリアマネジャー)の下についていたスタッフの数をゼロにすることでした。

2~3人いた営業課長のスタッフが細かく指示を出せば出すほど、店は忙しくなるからです。

スタッフをゼロにすることで指示は営業課長が一人で出せる量に絞られますから当然、指示日報が激減します。

指示が減れば、店も対応できますから実行力は上がります。

欲しい情報が瞬時に手に入る仕組みをつくるお客さまの商品に関する質問や問い合わせに答えるのも、じつはかなり大変な仕事でした。

たとえば、グラス一つをとっても、お客さまの質問は多岐にわたります。

「食洗機で洗えますか?」「ガラスの原料に鉛は入っていませんか?」「どこで生産されているのですか?」いくら商品教育を行っても、商品が多いのでとてもすべての内容は覚えきれません。

個々の商品については、事前にまめにネットで情報を把握してから来店されるお客さまのほうが店員よりも詳しく、さらに細かな情報を求めてくるケースも増えました。

その求めに応じて質問に答えられるのは、会社全体を見渡してもその商品づくりに携わった2、3名だけというのが実情です。

この場合の改善策(A)は、ウェブカタログづくりでした。

各商品の詳細な情報を管理していた「商品マスター」を店の携帯情報端末でお客さまにも見られるようにしたのです。

これで質問や問い合わせの6割以上に答えられるようになりました。

商品教育をする必要がなくなり、質問された内容の情報を加えることで、さらに情報は詳細になり、質問や問い合わせは減っていきます。

このように、単純に人員を減らすのではなく、仕事を減らして仕事の効率化を図り、一人当たりの生産性を上げる構造改革を行いました。

単純に人員だけを減らすと、手が回らなくなり、店の売場が荒れます。

しかし、このように仕事を減らしてから人員を減らせば、売場が荒れることはありません。

配送商品の梱包・配送がなくなり、納品作業が簡単になり、返品作業がなくなり、指示日報が減り、お客さまの質問への対応が減れば、7人いた店員を5人に減らすことができます。

一人ひとりの労働強化を行うのではなく、現状の仕事を評価し(C)、楽になるように改善して(A)、合理的に人員を減らすことで、人件費率を2%以上下げたのです。

これはまさに、「C」と「A」の賜物なのです。

05コスト構造の改革も「C」「A」がカギ

優れた他社に学ぶ構造改革としては、コスト構造の改革にも取り組みました。

売上高に対する販売管理費(販売費及び一般管理費)の割合が、約34%あったのですが、これを30%にしようという目標を立て、「30%委員会」を立ち上げます。

商品開発の構造改革によって売れ行きが好調になり売上が順調に増えていくのですが、それにともなって販売管理費も増えていました。

この販売管理費を減らすことができれば利益が増え、強い構造の組織になります。

そこで、「店舗業務改善」「在庫物流改善」「調達構造」「賃料施設構造」「本部業務」と業務ごとに改革案を検討して「C」からCAPDという順にPDCAを回そうとしたのですが、現状のやり方に慣れて満足してしまっている自分たちだけでは、評価も甘くなり、改善案も良い知恵が出ませんでした。

商品開発のときにはヨウジヤマモト社を外部から引き入れて成功しましたが、同様に、外部の知恵が必要だろうということで、他社を研究して良品計画のやり方との違いを見つけ(C)、他社のやり方を学ぶ(A)ように変えて、ようやくPDCAが回り始めます。

たとえば、当時の無印良品には値札が203種類もありました。

これを減らそうと考え、しまむらを研究すると、しまむらには値札が3種しかないことがわかりました。

さっそくそのやり方をヒントにして無印良品でも半数以下の97種類に減らします。

さらに値札に関する取引先が25社あったのを2社にします。

これにより、値札の経費が5億円から2億5000万円に半減できました。

また、キヤノンでは、「海外アソート」といって、海外でつくった部品を日本全国にすぐに配送できるように海外で仕分け(アソート)してから40フィートのコンテナに積み込んで日本に輸入していました。

日本で仕分けるよりも、人件費の安い海外で仕分けたほうが、費用が安くなるのは誰にでもわかるでしょう。

しかし、海外で仕分けると、仕分けされた一つひとつのパッケージに入れる量が減り、全体として運べる量が減ってしまいます。

つまり、空気を運んでいるような状態になってしまうのです。

良品計画の場合、40フィートのコンテナで4000万円分の商品が運べたのが、海外アソートを行うと1000万円分の商品しか運べなくなってしまいます。

4分の1に減ってしまうのです。

海外で仕分けを行い、さらに一つのパッケージにできるだけたくさんの商品を詰めるためにはどうすればいいか。

キヤノンは、その効率が抜群で、普通なら一つのパッケージに2000個しか部品が入らないところ、さまざまな工夫で1万個入れていました。

40フィートコンテナは巨大な箱です。

その箱のすべての空間を活用するように、専用の立体型の収納ケースをつくり出したのです。

この収納ケースに部品をびっしり詰め、収納率を5倍にも上げていたのです。

こうした工夫を学ぶことで、海外アソートを行い、かつ4000万円分に近い量の商品を運べるようにします。

もう一つ例を挙げましょう。

無印良品の店舗は、当時、売場が85%で、残りの15%は倉庫になっていました。

この倉庫部分のうち5%を売場にすることができれば、売場が90%になり、それだけ売上が伸びます。

倉庫の売場化です。

倉庫部分を減らすためには、在庫を減らす必要があります。

しかし、在庫を減らして売れ筋の商品が売り切れになり、売り逃してしまえば売上増につながりません。

したがって、店が常に適正な在庫を持つために、売上実績の正確な把握と受発注の精度を上げていくことが求められます。

こうした帳票は、前に述べた通り、全商品共通でつくられるように変革していたため、売場の5%増加にもチャレンジすることができたのです。

毎週の「C」で実行100%へこうしたコスト構造を変える構造改革を行う30%委員会は、2004年の下期に始まったのですが、この半期だけで93回行っています。

半年は26週ですから、毎週3、4回、30%委員会を開いて「CA」を行うことで、構造改革のPDCAをグルグル回していました。

構造改革は、毎週会議を行い、実行の進捗を毎週、毎週、追いかけ続けるのがコツです。

2週間に一度、3週間に一度だと、どうしても実行が先延ばしになり、その結果、成果が出ず、いつの間にか尻切れトンボになってしまうからです。

たとえば、先ほど紹介した店の倉庫部分を15%から10%にするケースなら、先週、いくつの店が10%にできたのか、今週は何店できそうなのか、残りはいつできるのか、毎週毎週「Check」を行い、追いかけ続けるしかありません。

300店舗あれば、300店がすべて倉庫部分10%になるまで、進捗を追いかけ続けるしかないのです。

それを行うのも、30%委員会でした。

そして、93回行われた30%委員会のうち、私が欠席したのは数回だけです。

ほぼすべてに出席したのは、経営のトップがいることで緊張感が生まれ、きちんと進捗率が上がるからです。

裏を返せば、トップがいなければ厳しさが欠け、緊張感がなくなってしまう恐れがありました。

だから、取締役会は欠席しても、30%委員会は最優先で出席し続けたのです。

プロジェクト型の会議、ある目的を達成するための会議は、言い出しっぺがいないと前に進まないものなのです。

なぜなら、必ず、なかなかやってくれない人がいるから。

このやってくれない人をいかにフォローして最終的にやってもらうかが勝負です。

私がやらずに誰かに任せると、達成率95~99%まではいっても、100%にはなりません。

それを100%まで持っていくのが、社長である私の仕事でした。

私に多くの示唆を与えてくれた『経営は「実行」』(ラリー・ボシディ、ラム・チャラン著、高遠裕子訳/日本経済新聞社)に書かれているとおり、「最後までフォローすることは実行の試金石であり実行力のあるリーダーは皆徹底して絶えずフォローしている」ものなのです。

06第三者の「C」で現場の真実を知る

営業に関するあらゆることを話し合う監査委員会実行100%の組織にするために、毎週月曜日に行っていたのが、「監査報告」です。

手帳には「監」と書かれています(次の写真)。

監査報告についていきなり説明する前に、どんなプロセスで監査やその報告が必要になるのか、順を追ってお話ししましょう。

毎週月曜日の午前中には、営業会議が行われます。

ここでは営業の数字だけでなく、営業に関するあらゆることが話し合われ、決められます。

たとえば、店の備品の角に頭をぶつけて子どもがケガをしたという報告があり、とりあえず備品の角にクッション材を取り付けることが決まったとします。

ゆくゆくは、角を丸くした角のない備品にしていくにしても、すぐにはできませんので、すぐにできる対応策としてクッション材を付けてくださいという指示が店舗に対して出されます(P)。

しかし、これも指示をしたからといって全店がすぐに実行してくれるわけではありません(D)。

翌週の営業会議で販売部から実行の進捗状況が報告されますが、これがだいたい甘めの報告になります。

備品の角という角、すべてにクッション材を付ける必要があるにもかかわらず、一部の備品にしか付けていなくても「実行した店」としてカウントされるといったようなことが行われるのです。

確かに一部は実行しているので嘘ではないのですが、かといって真実でもありません。

一方、当然のことながら社長は現場の真実を知る必要があります。

そこで、考え出したのが「監査室」による店舗の巡回監査です。

40店で起こっていることは全店で起こっていることおもに店長経験のある4人前後の専任の監査員が、午前1店、午後1店、監査を行います。

月曜日から金曜日までに1人が10店、4人で40店を監査します。

その結果の報告が、月曜の午後、直接社長に報告されます。

わずか30分の報告ですが、トップに現場の状況を見えるようにすることが目的です。

監査項目は約200項目あり、それを監査するのが通常業務ですが、その都度行われる「クッションを付けてください」といった指示の実行状況も同時に監査してもらい、報告してもらいます。

この監査した40店で起こっていることは、全店で起こっていることとほぼ同じです。

40店中3店がクッション材を備品のすべての角に付けていなかったという報告があれば、全直営店約300店のうち、約20店はクッションを付けていないと想像できます。

監査報告の場には販売部長もいますので、すぐに完全実行に向けて動き出してもらいます。

翌週、また監査報告を受けますが、実行していなかった3店は名指しで実行するように指示がいきますし、それ以外の店にも実行されているかの確認が行われますので、100%実行されたという報告になります。

該当部署の報告だけでなく、第三者の監査(C)報告も行い、実行されていなければ、すぐに実行されるように手を打つ(A)。

つまり、監査報告もまた「C」「A」をきっちりと行うための仕組みなのです。

07MUJIGRAMを「C」「A」で進化させ続ける

「C」「A」の実施はなぜ大切かここまでお伝えしたように、勝つ構造づくり、仕組みづくりは、「C」「A」が非常に重要になります。

PDCAを回し続けるためには、「C」「A」を強化するのが極意だと言っても過言ではありません。

「P」「D」、つまり計画と実行ができている企業は多いようですが、「C」「A」がきちんとできている企業は意外に少ないものです。

実際に、他社の経営者や社員と話をしていると決められたことが実行できていないという話ばかりです。

計画し、やってはみたものの、それがいったいどんな結果に結びついたのか、取り組みは不十分ではなかったかなど振り返りから改善への流れがおろそかになっているのです。

言い換えれば、「C」「A」がきちんとできている企業は、変化対応の実行力があり、順調に事業を進められるわけですから、業績もいいはずです。

とはいえ、良品計画も会社創設時から実行力が低かったため、評価と改善までは手が回っていませんでした。

私が社長になっても、最初の2年間は業績が悪く、とにかく目の前の「やらなければならないこと」が山のようにあり、それらをやり続けて、何とか100%実行する毎日でした。

やり続けたことの成果がようやく出始めたのは3年目のこと。

評価と改善を含めたPDCAが回る仕組みづくりに着手できるようになりました。

その代表例が、店舗を回すノウハウのすべてを収めた業務マニュアル「MUJIGRAM」。

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企業によっては、業務マニュアルが製本されていますが、見た途端に、使えないか、使われていない業務マニュアルだとわかります。

なぜなら、製本されているということは、内容がずっと変わらないこととイコールだからです。

残念ながら、人も商品も、サービスも急激に変化を続ける時代に、何年間も内容が変わっていない業務マニュアルが役立つはずがありません。

正しいMUJIGRAMの使い方とは店舗での仕事の基本ですから、新入社員は、MUJIGRAMをもとにした研修を行い、各自の仕事に関する部分は、さらによく読んでもらい理解を深めてもらいます。

そして、実際の店の現場ではマニュアルに沿って仕事を行います。

店では先輩も同僚も部下も全員が同じやり方で仕事をしています。

したがって、MUJIGRAMに載せておけば、100%同じやり方で実行されることになります。

実行力100%の仕組みです。

では、実際にどのように使われているのか?たとえば「あれ、これでよかったかな?」と思ったら、MUJIGRAMを見て正しいやり方を確認します。

また、日々仕事をしていると、ときに、「こうしたほうがいいのでは」という改善案が浮かびます。

そうしたら、店舗の端末から改善提案を行うことができます。

該当ページのフォーマットに沿って書き込めば、改善案を提案できる仕組みです。

たとえば、店長には、取得するべき資格が、防火管理者、酒類販売管理者、食品衛生責任者など、9つあります。

これを店長になってから取得するようにしていたのですが、店長は忙しくて取得するのが大変なので、店長になる前に取得することにしてはどうか、という改善提案が行われました。

こうした改善提案をエリアマネジャーが検討し、これまでの方法より良くなると認められれば承認され、その改善提案が本部関連部門で採用され、MUJIGRAMが書き直されます。

MUJIGRAMは13のファイルに合計約2000ページが綴られていますが、改善提案によって、毎月約20ページ、全体の約1%が改訂されます。

つまり年間で12%変わるという計算になります。

それは、それだけMUJIGRAMが進化したことの証左でもあるのです。

08良いPDCAが回り続けるしかけをつくる

放っておけば良い仕組みも衰退するものMUJIGRAMに限りませんが、PDCAは、回し始めが一番難しく、回り始めれば、利便性を実感できるようになり、習慣にもなりますので、自然と回り続けるようになります。

とはいえ、油断は禁物です。

どんなに良い仕組みも、人間は飽きます。

ゆえに、どんなにうまくいっている仕組みでも、油断をすると徐々に衰退していくのが常です。

そうならないように、常にフレッシュな情報を出して、アメもムチも使いながら叱咤激励し、継続していくことに注力することが大切です。

パートやアルバイトも含めた店で働く人たちの知恵と工夫の詰まった提案で進化し続けるMUJIGRAMも、何もしなければ、提案は尻すぼみで少なくなります。

ですから、提案1件につき500円などと賞金を出す、優れた提案には半期に一度社長賞を授与するなど、提案を減らさないためのさまざまな工夫を行いました。

たとえば、提案強化月間を設定し、店ごとに競争してもらう。

20件提案している店があると、5件しか提案していない店はがんばり出します。

良い提案は表彰し、賞金や商品を出します。

そして何よりも、自分の提案が採用された人は、MUJIGRAMが自分の要望通りに書き換えられたことに、満足感や充実感を味わうことができます。

これが「また、提案しよう」という動機付けにもなります。

一度喜びの味を知ると、またその味を味わいたくなるのです。

マニュアルに「仕事の目的」を加えた理由MUJIGRAMには、それぞれの仕事の目的も、あるときから書かれるようになりました。

実際、仕事のなかには、気の進まない作業もあります。

それを単なる作業だと思うと、よけいにやりたくなくなるものです。

しかし、その作業の目的として、「お客さまのために見やすく、取りやすく、選びやすくする」と書かれていたらどうでしょう。

作業ではなく、お客さまのために行う大切な仕事なのだと思えるのではないでしょうか。

これも改善提案によるMUJIGRAMの進化の一つです。

そして、「お客さまのために」を店員が常に意識することで、売場がきれいになれば、売上も上がりますし、何よりも、無印のファンをつくることにつながります。

昔は100人店長がいれば、100通りの売場になったのが、MUJIGRAMによってどこの店もベストの売場を効率よくつくれるようになりました。

マニュアルや仕組みは、つくって終わりではありません。

「仏作って魂入れず」という言葉があるように、マニュアルや仕組みも、つくっただけでは動き出しません。

私は、「血を流す」と表現していましたが、人間の体の中を血液が常に流れ続けているように、血が流れ続けるマニュアルや仕組みにして、はじめて効力を発揮するものとなるのです。

コラム「MUJIGRAM」を生んだ新店オープンの混乱

手帳には、シャープペンシルで書くのが基本で、蛍光ペンはもちろん、赤や青色のボールペンも使わない主義です。

ちなみに愛用のシャープペンシルと消しゴムは無印良品の商品です。

シャープペンシルは、細身のアルミ製でワイシャツの胸ポケットに挿して使っています。

消しゴムもノック式で便利なのですが、残念ながらもう販売していません。

販売中止が決まったときに、私はまとめ買いして、それを今でも使っています。

文字は黒一色。

まさに〝色気〟のない手帳ですが、行動を淡々と書きとめたキーワード一つで、そのときのことを昨日のことのように思い出すことができるから不思議です。

1994年の9月の第2週の見開きの右ページに「柏島屋」とあります。

このとき、「MUJIGRAM」をつくる発端となるエピソードが起きました。

ただ、それらしいことは手帳のどこにも書かれていません。

しかし、手帳を見るだけで思い出せるのです。

事業部長になってはじめての新店出店だったので、オープン前日に売場の点検に行きました。

夕方6時頃には、売場はだいたいできあがっていたのですが、そこに、他店のベテラン店長が応援にやってきました。

「これじゃダメだ。

ここは、こうしたほうがいい」そう言って売場を直し始めました。

彼のアドバイスにしたがって売場を直し終えた頃、別のベテラン店長がやってきて、「これじゃダメだ」と言って売り場を直し始めました。

議論は白熱し、夕方に一度できあがっていた売場は、深夜0時を過ぎてもまだ完成しませんでした。

そのベテラン店長に悪気があったわけではありません。

入社すると、尊敬できる店長やかわいがってくれた店長の背中を見て育ち、そのやり方に学んでいきます。

徒弟制度のようなものです。

したがって、100人の店長がいると、売場づくりは100通りになるのです。

100人に2人くらいは完璧な売場をつくります。

しかし、残りの98人は70点くらいの売場しかつくれません。

お客さまのためには、90点以上の店が100店あることのほうが大事なのです。

「これじゃダメだ」と思った私は、誰が店長であってもベストの売場がつくれるマニュアルをつくろうと決心します。

それが後のMUJIGRAMです。

しかし、手帳には何も書いてありません。

書いてあるのは、「もう1人発令する」の一言のみ。

販売が好調で人手が足りなくなったので、もう一人店員を補充するというメモだけです。

それでも、その日のことは事細かに思い出すことができます。

「経験主義ではダメだ」とこれまでにないほど痛感したので、手帳に書くまでもないと思ったのです。

それほどまでに、絶対に忘れられない、忘れてはならない出来事でした。

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