ビジネスマン向けの本や自己啓発に関する本を読むと、必ず出てくるのが「仮説検証法」と呼ばれる問題解決の手法です。 仮説検証法とは、仕事がうまくいかず、良い方法を考え出さなければならなくなったとき、まずある解決方法を「仮説」として考えます。このあとこれを実行して有効かどうか「検証」すれば、問題が解決されて業績向上に役立つというものです。 確かに良い解決策が見つかる場合もありますが、しかしこの手法には、大きな制約条件があることはあまり知られていません。 仮説が、その人の「戦略実力の範囲内」でしか出てこないという制約です。 A社長の戦略実力が、 100点中 50点しかなかったとしましょう。この社長が経営をしていて解決すべき問題が発生したとき、仮説検証法によって仮説を出しても、その仮説のレベルはやはり 50点以下なのです。 B社長の戦略実力が 40点しかなければ、当然、 40点以上の仮説は出てきません。それだと、仮説そのものに大きな意味はなくなってしまいます。 競争条件が特に不利な「番外弱者」は、本来は、弱者の戦略ルールを厳密に守って経営をしなければなりません。それがわからず、有名企業が実行しているカッコのいい強者の戦略を実行すれば、当然、業績が悪くなります。 業績を改善しようと考えて仮説を立てても、その仮説もやはり強者の戦略であれば、業績はさらに悪化するのです。 C社のケースで見てみましょう。 C社は、人口 30万人の地方都市の飲食店で、近くに強い競争相手がないこともあって業績が良くなりました。しかし従業員 1人当たりの自己資本はまだ業界平均の 1・ 5倍ほどしかなく、まだ弱者の戦略ルールを実行しなければならない状態でした。 ところが社長は業績が良くなったことに気を良くし、「人口の多い東京に出店すれば、売上も上がって儲けも多くなる」と考え、東京に出店することにしました。「人口の多い東京に出店すれば、売上も上がって儲けも多くなる」というのは、いわば仮説です。 社長は何回も東京に行って出店場所を探し、設備や店員、開店のチラシなど準備万端調えて営業を始めました。 ところが予想に反して売上は計画どおりに上がらず、赤字続きになったのです。その結果、手元資金が底をついてしまい、 1年後にはやむなく撤退しました。幸い倒産はまぬがれましたが、これによって自己資本のほとんどを失ってしまいました。
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