2あらゆる仕事に「仮説」をもつ
01仮説を立てればやるべきことが絞られる02近くの「目利き」を使い倒す03「」04「」05ネット上の情報は「だから何?」まで考える06「」07仮説は「1行」にまとめる08思考の「枠」をもつ
ミニマム思考で「質×スピード」のレベルの高い仕事をするには、「仮説を立てること」が欠かせません。
常に仮説をもちながら仕事をすることを当たり前にするのです。
そもそも仮説とは何でしたか?先述したように、仮説とは「バリューを実現するための仮のアイデア」です。
たとえば、「売上が上がらない」という問題を抱えているなら、「既存顧客の売上ダウンが売上の上がらない理由ではないか」といったように、より詳細で、本質を突いた仮説を立てる必要があります。
こうした仮説を立てれば、「常連客に対して特典を付与する」「既存顧客の会員化を図る」といったアイデアを出し、検証することができます。
仮説を立てることによって、やるべきことが絞られ、そこに集中することができるのです。
仮説を立てるときはスピードが命です。
マッキンゼーでクライアントの問題解決に取り組むときは、最初の1~2週間が勝負。
先ほども述べたように3~6カ月で結果(効果的な提案)を出さなければならないため、最初の段階で筋がいい仮説を立てて、すぐさまその仮説が正しいか、情報を集めて分析をはじめる必要があります。
分析の段階では、資料やデータにあたって情報収集をするだけでなく、ユーザーへのアンケートを実施したり、クライアントの営業マンと一緒に得意先をまわったりしながら、現場からも徹底的に情報収集をします。
オフィスにはめったに戻らず、毎日のようにクライアント先に通い詰めることになります。
こうした情報収集や分析をしていると、あっという間に3~6カ月はたってしまうのです。
したがって、最初のスタートの段階でもたもたしていたり、なんとなく情報収集をはじめたりしていたら、後々になってスケジュールがきつくなり、期限内に最適の問題解決をすることが困難になります。
大事なのは、最初に仮説探しにダッシュで取り組むこと。
いかに最初の段階で筋がいい仮説を立てるかに集中するか、ということです。
仮説があれば質問も具体的になる買い物のシーンに置き換えてみれば、「パソコンを購入したい」というときに、「なんとなくパソコンがほしい」と思っていたら、片っ端から家電量販店を見て歩くことになります。
あれこれと悩んでいるうちに、時間がなくなり「また出直してきます」と言って店をあとにする結果になるかもしれません。
一方、最初から「気軽に持ち運びができるパソコンはどれか」という仮説をもっていれば、どこの売り場を見ればいいか絞れます。
少なくともデスクトップパソコンの売り場には行かないでしょう。
また、仮説があれば、店員さんに尋ねる質問もより具体的になってくるはずです。
ノート型にするのか、タブレット型端末にするのか冷静に判断できますし、あるいは、「スマートフォンで事足りる」という結論になるかもしれません。
仮説をもっていれば、時間をあまりかけることなく、自分のほしい成果(パソコン)を手に入れることができるのです。
問題解決や買い物のプロセスにかぎらず、普段の仕事でもスタート時から仮説を意識して仕事をすると、すでに「当たり」がついているので、限られた時間の中ですべきことが明確になります。
たとえば、営業の仕事でも「お客様が求めているのは、○○ではないか」と仮説をもっていれば、アプローチの仕方やすすめるべき商品も変わってくるでしょう。
やるべきことが絞られるといってもいいでしょう。
もちろん、検証の結果、その仮説が間違っていれば軌道修正する必要はありますが、確実に成果に向けて仕事を進めることが可能です。
一方で、仮説を意識していないと、どこから手をつけていいかわかりません。
何をすべきかが明確にならないので、暗闇の中で探し物をする状態になります。
成果にたどり着くまでに大きなロスとなるばかりでなく、成果を得る前に時間切れになってしまう可能性さえあります。
ミニマム思考は、最初の「仮説を立てる」段階が肝です。
相手が「なるほど!」と目を輝かせるほど仮説がインパクトをもっていれば、それは質の高い仕事といえます。
ざっくりとしたものであっても仮説を立ててから作業をはじめることは、仮説がまったくないままスタートする場合よりはるかにましです。
ただし、あまりに見当外れの仮説を立ててしまえば、軌道修正に手間取り、仕事の質×スピードは落ちる結果となります。
したがって、できるかぎり筋がいい仮説を立てられるかどうかが問われることになるのです。
ミニマム思考ができるコンサルタントは、日頃から仮説を立てる訓練をし、それを習慣化しているので、経験と勘で確度の高い仮説を立てることができます。
もちろん、みなさんにも自然と仮説を立てられるようになることを目指していただきたいのですが、仮説を立てる技術が身についていない段階では簡単ではありません。
でも心配しないでください。
最初は誰でもそうです。
では、どうすれば確度の高い仮説を立てることができるのでしょうか。
答えは、「情報収集力」と「編集力」にあります。
仕事の質を上げるには、この2つの力が欠かせません。
現場の「生」の情報にこだわるまずは、「情報収集力」から説明しましょう。
インターネット検索や書籍、白書などに頼るだけではなく、社内の詳しい人やお客様、関係者からヒアリングし、現場の「生」の情報を集める力が求められます。
「生」の情報とは、自分で引き出す情報のこと。
このときに重要なのは、「さりげなく耳にする情報、目にする情報」と「自分のセンサー」です。
誰でもアクセスできるような情報ではなく、現場に行って顧客にさりげなく聞いてみるのです。
自分の上司、部下といったまわりの人でさえ、顧客になり得るのであれば、聞くことができます。
そして、「これはいけるのではないか」という自分のセンサーを働かせるのです。
さらに、確度の高い仮説につながる貴重な情報を得るためにできることがあります。
ミニマム思考の人は、まわりの「目利き」に相談します。
自動車業界にエッジの効いた人、飲食業界にエッジの効いた人、経済指標にエッジの効いた人、人材領域にエッジの効いた人など分野はさまざまですが、こうした目利きに質問や相談をすると、広く深い知見を得ることができます(「エッジ」は「鋭くとがったもの」という意味で、「エッジが効いた」とは、「流行に流されず、独自性が高い」「言動の切り口が鋭い」といった意味です)。
職場の上司や先輩の中には、あなたよりも知識や経験をもっている人が必ずいます。
そうした上司や先輩の知恵を拝借するのです。
また、社内にかぎらず、社外のネットワークを活用してもいいでしょう。
たとえば、「インターネットを使った販促活動」のプロジェクトに参加することになったとしましょう。
もしインターネットに関する知識があまりないなら、ネットワークの中からそれに詳しい人を探して、アドバイスを求める。
すると、見当外れな仮説を立てることを防げますし、仮説の方向性が見えてきます。
自分の頭で考えるよりも、効率的に確度の高い仮説を立てることができます。
ただし、相談するときに、ミニマム思考の人が心がけることがあります。
それは、「私はこんなことを考えているのですが、どうでしょうか」と自分なりに仮説をもって相談するということ。
その相手がユーザーになりそうなら、「こんなサービス・商品があったら使いますか?」と意見を聞いてみる。
あるいは「こんな仮説を立てたのですが、どうですか?」とさりげなく聞いてみる。
すると、いろいろなフィードバックや情報が返ってきます。
こうした情報をもとに仮説を検証してみるのです。
アドバイスを求めるなら、土台となる仮説があったほうがスムーズです。
「50代男性のビジネスパーソン向けにスイーツを開発したら売れるのではないか」という仮説をもっているなら、この仮説を検証するような「質問リスト」をつくって臨むのです。
50代男性は、「どんなときに食べているのか?」「どこで食べているのか?」「どんなスイーツを食べているのか?」「なぜスイーツを食べることに抵抗があるのか?」というように、5W1H(When、Where、Who、What、Why、How)に沿って質問リストをつくれば、モレを防ぐことができます。
仮説に沿って10個くらい質問を用意しておけば、30分もあれば効率的にヒアリングができます。
質問によって、目利きはインスパイアされて、いいアイデアやフィードバックが出てくるものです。
ミニマム思考のできる人は、仮説に沿った質問リストで、目利きから知見を引き出すのです。
確度の高い仮説を立てるためには、「編集力」も必要になります。
世の中に製品・サービスは出尽くしているといえます。
まったくのゼロからアイデアを生み出したり、商品開発をしたりといったことはありえない、と言っても過言ではありません。
スマートフォンが電話やカメラ、音楽プレーヤーなど個別の商品の組み合わせであるように、ヒット商品のほとんどは、既存のアイデアや情報の組み合わせでできています。
つまり、数ある情報の中から、特定の情報をピックアップし、それらをアレンジする「編集力」が必要なのです。
これは、新しい切り口や視点を見つけることと言い換えることもできます。
編集力の高低は、アウトプットの良し悪しを左右します。
情報の編集がうまい仕事は、これまでになかった画期的なアイデアや問題解決策となるので、お客様に高い価値をもたらします。
情報の編集力が高いアウトプットのことを、マッキンゼーでは「セクシーだね」と評価していました。
ここでいうセクシーというのは、「引きつける力がある」「ぐっとくる」といった意味合いです。
たとえば、最近、書店のビジネス書のコーナーを覗くと、「マンガ版ビジネス書」がたくさん並び、なかにはヒットしているものもあります。
ビジネス書をマンガで読むというのが今では当たり前になりました。
従来だと「マンガ=娯楽」という発想になりますが、忙しいビジネスパーソンにとっては、効率的にノウハウや教養を学べるマンガ版のビジネス書は、大きなバリューをもちます。
本と比較してマンガの場合、視覚を通じた情報処理が速くできるため、マンガで知識をさくっと理解できることは、ビジネスパーソンにとってはバリューとなりえます。
そうした切り口でマンガをとらえ直し、「ビジネス書×マンガ」という新しいジャンルをつくったことが、マンガ版ビジネス書ヒットの秘訣といえるでしょう。
また、「いきなり!ステーキ」というステーキ店が人気を集めているのも、「特別なときにゆっくり食べる高級な食べ物」という従来のステーキのあり方を、「立ち食いスタイルで質の高さと圧倒的な安さ」という切り口で編集し直したからこそ、ヒットしたのだと思います。
あるいは、新型の列車を開発する場合では、従来どおりに走行速度や座席数、快適性などといった単なる移動手段としてとらえる発想はセクシーではありません。
もしかしたら、列車に乗る体験自体がお客様の心をつかむのではないか。
そんな発想で情報を編集するのはセクシーです。
九州を走るクルーズトレイン「ななつ星」をはじめ、近年、高級ホテルのようなおもてなしが受けられる観光列車や足湯が設置された新幹線など、特別観光列車が人気を集めています。
それまでの列車に「体験」という要素をプラスしたことがヒットの秘訣だと考えられます。
これは、従来どおりに「列車はお客様を早く、快適に運ぶもの」という固定観念に凝り固まっていたら生まれない発想といえるでしょう。
マトリクスの軸の取り方が決め手セクシーな発想は、軸の取り方が秀逸です。
言い方を換えれば、どんな切り口で情報を切り取るか、ということです。
「重要度」と「緊急度」のマトリクスは、多くの人が目にしたことがあるでしょうが、縦軸と横軸を取ってセグメントに分けるマトリクスは、発想を得るためのフレームワークとして、質の高い思考を可能とします。
たとえば、ビールの新商品を開発するケースで考えてみましょう。
ビールを切り取る軸はたくさん考えられます。
価格、のどごし、容器(ビン、缶など)、辛さ、キレなどは、ビールをセグメントする軸としてよく使われてきたものです。
そこで、仮に「実は価格やのどごし、味以外に『舌触り』を求めるのではないか?」と仮説を立てて、ビールの「舌触り」を軸にしたらどうでしょう。
舌触りがビールのうまさを決めるという根拠やデータがあれば、セクシーな軸として関心を集める可能性があります。
「舌触り」×「キレ」、あるいは「舌触り」×「辛さ」といった軸でマトリクスをつくって、他社商品をセグメントし、ライバルと差別化を図るという戦略も考えられるでしょう。
たくさんある情報の中から、どんな軸を抜き出し編集するか。
そのセンスによって、仮説の確度は上がり、アウトプットのできも変わってくるのです。
ただし、どんなにセクシーな軸をとって、ユニークで優れた仮説を設定しても、それらを証明する根拠がなければ、その仮説は活かすことができません。
仮説を裏づけるファクト(事実)やデータが必要です。
そういう意味でも、情報収集力は重要な能力なのです。
確度の高い仮説やセクシーな軸は、どうすれば思いつくことができるのでしょうか。
自分の頭で考えることが重要であることは言うまでもありませんが、ベースとなる知識や情報が頭の中に十分にインプットされていなければ、誰もがするような発想しかできません。
世の中にはまったく新しいアイデアというのは存在しません。
どんなに斬新に見えるようなアイデアも、すでに存在するアイデアをうまく組み合わせ、編集したものであることがほとんどです。
iPhoneでさえも、極端なことをいえば、パソコンと電話という機能を組み合わせたものです。
では、自分の仕事や抱えている問題に関する情報を、その都度インプットすればよいかというと、そう単純ではありません。
もちろん、関連する情報を集めることは大切ですが、集めた情報がそのまま確度の高い発想やセクシーな軸になるとはかぎりません。
仕入れてきた情報Aと情報Bを足し合わせたからといって、魅力的なアイデアが生まれるわけではないのです。
発想というのは、「1+1=2」というシンプルな足し算の世界ではありません。
頭の中では有機的にさまざまな化学反応が起きていて、新しい情報Aと過去の情報Cがふいに組み合わさって、ユニークな発想が生まれることもあるのです。
公私にわたる情報のストックが非線形思考につながる仮説をもとに的確な情報収集をして、論理的に分析することに加えて、これまでの人生で得てきた経験や知識、勘などが組み合わされることによって、ベストの解答を導き出せます。
あるとき、点と点がつながって、線になってアイデアが降りてくる。
そんなイメージです。
これを「非線形思考」といいます。
大前研一氏も「非線形思考」の重要性についてこう語っています。
「冷徹な分析と人間の経験や勘、思考力を最も有効に組み合わせた思考形態こそ、どのような新しい困難な事態に直面しても、人間の力で可能なベストの解答を出して突破していく方法であると思う」したがって、セクシーな軸を見つけるコツのひとつは、目の前の仕事だけにかぎらず、普段の生活の中でさまざまな情報や経験を重ね、ストックしておくことです。
これは遠回りのように見えるけれど、最短の近道でもあるのです。
ミニマム思考ができる人は、やみくもにスピード勝負の仕事はしないということです。
優秀なコンサルタントの中には、仕事から離れて、文学やアートに親しんだり、哲学や科学関連の書籍を読んだりしている人が多くいました。
彼らは、そうしたジャンルから、仕事にも通じる人生の本質的なことを学んでいると感じました。
彼らは、さまざまな知識や経験をストックしておくことが、仕事の成果にもつながることを経験的に理解していたのだと思います。
普段から本質的な情報に触れる。
それによって、あなたの思考力は確実に深くなっていきます。
もうひとつセクシーな軸を見つけるために効果的な方法があります。
それは、先述した「目利きに聞く」ということです。
自分が考えているテーマに関して詳しいスペシャリストに徹底的に取材するのです。
目利きは、普通の人が知らない情報やひと味違った視点をもっているものです。
そうしたスペシャリストに上手に頼ることによっても、セクシーな軸は見つけやすくなります。
セクシーで、確度の高い仮説を立てられると、仕事の質が上がります。
たとえば、先輩のコンサルタントが、あるプロジェクトで海外から輸入した食材の売上を伸ばすという問題解決に取り組んだときのこと。
この市場の全体の傾向として、輸入物は国産よりも人気がなく、売上が低迷していたのです。
その原因と解決策を導き出すために彼は、全国のスーパーや店を行脚してその食材の消費動向についてヒアリングし続けました。
そこから見えてきたのは、実は、地方によってよく売れる部位やカットのしかたが異なるということでした。
つまり、地方によってよく食される料理の種類や調理法が異なるので、地方によって販売する食材の形を変えることが重要だということがわかってきたのです。
たとえば、「A県は鍋物用の薄切りタイプが売れる」「B県は焼物用のサイコロタイプが売れる」というように、売れる商品に明確に差があったのです。
そこで、彼はこんな仮説を立てました。
「地方によって販売する食材の部位やカット法を変えたらどうか」食材の売上を決めるのは生産国と価格だととらえ、売れる部位や調理法は大差ないと考えていた輸入販売会社にとっては、これはまったく新しい視点でした。
実際、彼の仮説は大当たり。
海外産の輸入食材であるにもかかわらず、見事、国産物と遜色ないほどに大きく売上を伸ばしたのです。
このように確度の高い仮説を立てることは、仕事のスピードアップだけでなく、質と成果を大きく左右します。
そのためにも、ヒアリングなどの情報収集が大切になるのです。
セクシーな仮説は一次情報から生まれる「情報収集をしなさい」と言われたとき、まずはどんな行動をとるでしょうか。
多くの人は、インターネット検索に頼ると思います。
たとえば、ビール市場の数字を参考にしたいときは、「ビール市場売上推移」といった検索ワードを入れてお目当ての情報を探すでしょう。
そして、運よく適切なビール市場の数字にたどり着いたら、それを資料として採用します。
しかし、ミニマム思考のできる人は、インターネットに掲載されているようなデータをそのまま使いません。
その情報から「SoWhat?」(だから何?)と考えます。
インターネット上の情報がすべて無価値というわけではありませんが、それらの情報は誰でも入手できるという意味では、価値が低い。
大切なのは、その情報からどんな意見や見解、あるいは仮説を導くか、です。
たとえば、ノンアルコールビールの市場推移のデータを示しながら、「ノンアルコールビールの市場が伸びています」と言っても、「だから何?」と一蹴されてしまいます。
「ノンアルコールビールの市場が伸びているのは、アルコールが苦手な女性のニーズをつかんでいるからではないか」という仮説を導くことができて、はじめて情報として価値があるものと認められるのです。
では、情報収集はどうすればよいでしょうか。
ポイントは、できるかぎり二次情報ではなく、一次情報に当たることです。
一次情報とは、直接見たり、聞いたり、体験したりして、自らが仕入れた現場情報のこと。
二次情報とは、誰かが言っていたり、新聞や本に書いてあったり、テレビで見たり、インターネットに書いてあったりした、第三者を介して得た情報のこと。
二次情報の中にも有益な情報は存在しますが、それらは第三者のフィルターがかかっている情報です。
元の情報を加工・編集したものなので、必ずしも情報の解釈が正しいとはかぎりません。
極端なことをいえば、情報を発信する第三者によって、捻じ曲げられている可能性すらあります。
マッキンゼー時代、当時の支社長であった大前研一氏に、こんなことを言われたことがあります。
「新聞に書いてあることを鵜吞みにしてはいけない」新聞に書いてある情報は信用性が高いと思われがちですが、あくまでも新聞記者のフィルターで切り取られた情報にすぎないというわけです。
したがって、新聞記事で役に立ちそうな記事を読んだら、記事を書いた人に直接会いに行って話を聞いたり、取材先が明記されている場合は、直接インタビューを申し込んだりもしました。
問題の解決策を導き出すために、徹底的に現場で調査をするのです。
たとえば、ある自動車販売店の「売上が落ちている」という問題があったとしたら、100人以上のユーザーにヒアリングをします。
「どうしてその販売店で車を買ったのか?」「車を買うときに重視することは何か?」こういった質問をし、売上が落ちている原因を徹底的に探っていく。
現場で何が起きているのか確認するのです。
車のような高価な買い物は、「営業マンとの人間関係が重要だ」というのが、それまでの業界の常識。
いかに定期的にお客様のもとに通い、リピートにつなげるかが売上を左右すると考えられています。
しかし、ヒアリングの結果が意外な可能性もあります。
たとえば、実は車のユーザーは、「家の近くにある販売店で買う」という傾向があらわれたらどうでしょうか。
営業マンとの人間関係は、さほど売上には貢献していなかったということが判明したら、おもしろい仮説が立てられそうです。
たとえば、この結果にもとづいて、コンビニのように一定の地域に店舗をたくさん出すという仮説を立ててみる。
すると、その自動車販売店の売上が大きく回復するような方法になるかもしれないのです。
ネット頼りではなく、現場に行くおもなヒアリングの対象は、会社の商品・サービスを買ってくれるお客様。
営業担当はもちろん、開発やマーケティング部門の担当者もできるかぎりお客様の意見を直接聞く機会をつくることによって、確度の高い仮説を立てることができます。
「現実的にヒアリングするのはむずかしい」ということはありません。
工夫するのです。
たとえば、自分の会社の商品やサービスが使われている現場に足を運んでお客様の様子を観察することができますし、声をかけて、さりげなくヒアリングしてみることもできます。
経験知から15人くらいにヒアリングするだけでも、かなりいい情報が収集できます。
実際、できる先輩コンサルタントも、まず15~16人にさくっとヒアリングして、生のいい情報を収集していました。
競合会社の商品やサービスを実際に体験してみることも、新しい発見につながることが多くあります。
情報収集というと、すぐにインターネット検索に頼ってしまう人が多いようです。
インターネットを情報収集のツールとして活用することは悪いことではありません。
ただし、大事なのは、インターネットの情報をそのまま鵜吞みにすることなく、それをヒントに自分なりの仮説や見解を導き出すこと。
「現場に行く」ことによって、オリジナルの情報をキャッチすることができるのです。
確度の高い仮説を立てるためには、現場を見て、声を聞くことをおろそかにしてはいけません。
情報は自分の足で稼いで「つくる」ものです。
もちろん捏造するということではなく、現場でオリジナルの情報を集めるということ。
ミニマム思考の人はインターネット検索を仮説のヒントに使います。
仮説の切り口を見つけるために、最初にインターネットを使ってディープな検索をするのです。
いろいろなキーワードで検索して、30ページくらい、ざくっと読んでみる。
英語の文献もあたってみる。
すると仮説の切り口のヒントになります。
インターネットで収集した情報に対して、「本当にそうなの?」「ということは、こんな考え方ができるのではないか?」「自分だったらこう考える」と、常に自分の頭で考えることが大切です。
そうすることによって、仮説の確度は上がっていくのです。
「仮説がない」というのは、視点や切り口がないということです。
クライアントの問題のありかを探るために、ユーザーに質問やアンケートをしても、仮説をもっていなければ、何をどこから聞いていいかわかりません。
単に「ざっくばらんに意見を聞かせてください」では、本当の問題にたどり着くまでに時間がかかりますし、聞かれたほうも返答に困るでしょう。
仮説を立ててから情報収集に臨めば、自然と集めるべき資料や聞くべき質問やアンケート項目も決まってきます。
たとえば、売上不振のある食品は、都市部ではなく地方都市で売れるのではないかという仮説をもっていれば、それに沿った情報収集ができます。
自社とライバル商品の都市部と地方都市におけるシェア比較をデータ化したり、地方のユーザーにアンケートをとったりといった作業に絞ることが可能です。
ただし、仮説を検証するために、インタビューや質問をするときに気をつけなければならないことがあります。
それは、誘導尋問をしないことです。
仮説をもつことが段取りよく仕事を進める条件だと話しましたが、「こうに違いない」と決めつけてインタビューに臨むと、自分に都合の良い質問ばかりしてしまいがちです。
矛盾したことを言うようですが、自分の立てた仮説にがんじがらめになってはいけません。
「営業戦略に問題があるはずだ」という仮説をもっていると、どうしても営業戦略に関する質問に集中してしまいます。
ミニマム思考のできる人は、仮説をもちながら他の可能性も検討します。
逆説的ですが、これが事実なのです。
ただスピーディーに仕事をこなそうとして、「これが正解に違いない」という思い込みをもっていると、他の重要なメッセージを見過ごしてしまう可能性があります。
ミニマム思考の人は、あらゆる可能性を検討して、最も重要な仮説を見極めるのです。
本当は営業戦略ではなく、商品そのものだったり、人事組織に問題が潜んでいたりするかもしれません。
仮説は、自分の思考の枠をつくることではありますが、思考の外の要素を完全に排除してはいけません。
最初の段階では仮説をもちながらも、すべての意見や情報を排除しない。
ある程度、決め打ちはしながらも、ひとつのことに固執はしない。
そのようなバランス感覚が必要になるのです。
仮説が大切だからといって、仮説に執着してはいけません。
自分の立てた仮説が100%的確ということもありえますが、多くの場合、仮説がすべて的中するとはかぎりません。
大きな方向性は合っていても、細かい点で軌道修正をしなくてはならないケースがほとんどです。
あくまでも仮説は、質とスピードを上げるために立てるのが基本。
もちろん、確度の高い仮説を立てられるに越したことはありませんが、最初から正解を導くのは簡単ではありません。
仮説は分析・検証をしていく過程で、軌道修正をしていくのが普通です。
したがって、仮説を無理やりこじつけで証明しようとしてはいけません。
自分に都合良く情報を解釈し、検証結果を捻じ曲げてしまったら、望むような成果は出ないでしょう。
仮説を意識することは重要ですが、最初の仮説にとらわれすぎてはいけないのです。
「そもそも」に立ち返る仕事を進めるうえでは、常にゼロから考え、「そもそも」に立ち返ることを大切にしなければなりません。
常識や思い込みに縛られないことによって、本当の問題や解決策にたどり着くことができる、というわけです。
これを「ゼロ発想」と呼びます。
「ゼロ発想」とは、「そういうものだ」という前提を「それ本当?」と疑うことからはじめることです。
ミニマムに考える人は、この業界はこういうものだから、といった前提条件にとらわれません。
まず何が前提となっているのかを見つけ出し、その前提が本当なのか、見極めるのです。
ゼロ発想は無邪気さから生まれるともいえます。
たとえば、駄菓子の商品を開発しようという場合、どうしても子どもを対象に発想しがちです。
しかし、「そもそも駄菓子を買うのは子どもだけだろうか?」という発想ができれば、大人向けの駄菓子というアイデアが浮かぶかもしれません。
また、スイーツの商品を開発する場合も、「スイーツを好むのは女性だけか?」という発想ができれば、「疲れた脳を活性化させたい50代の男性ビジネスパーソンに向けたスイーツ」というアイデアが出てくるかもしれません。
仮説を立てるとき、特に最初の段階では「そもそも問題は何なのか?」というゼロ発想をしなければ、答えを見誤ります。
仮説と思い込みはまったくの別物です。
仮説は、あくまでも仮の答えにすぎません。
他にふさわしい答えが見つかりそうなときは、それまでの仮説を軌道修正したり、まったく別の仮説に乗り換えたりすることが求められるのです。
ミニマム思考ができている人は、自分の仮説をも鵜吞みにしないで、あらゆる選択肢を検討して、仮説を絞り込んでいきます。
だからこそ、質×スピードのレベルの高い仕事を実践できるのです。
仮説を立てることは、良い問いを立てるということです。
問いの形にすることによって、人は自然と考え、答えを出したくなります。
たとえば、「インド市場に参入すべき」という仮説を立てると、「すべき」ということに固執し、これに有利な情報ばかりを探してしまいます。
しかし、「インド市場に参入すべきか?」と質問の形にすると、自然と仮説について検証するようになります。
スポーツ選手は反復練習を繰り返すことによって反射的にベストパフォーマンスを発揮できます。
それと同じで、仮説を立てて「本当にそうなのか」と自問することを習慣にしていると、神経細胞同士を結合する役割をもつ「シナプス」が「仮説を立てたら検証する」という脳の神経回路を形成します。
そうなると、自然と仮説を検証しようと脳が働きます。
ミニマム思考の人は仮説を検証する回路ができているのです。
仮説を立てるときは、できるだけ具体的な文章にまとめるのがコツ。
たとえば、「売上を上げるにはどうすればいいか?」よりも、「60代シニア夫婦の層に買ってもらえる新商品のアイデアは何か?」のほうが、どんな情報を集めて分析すればよいかが、より明確になります。
抽象的な問いになってしまうのは、仮説を十分に検討できていない証拠です。
Who(誰が)、What(何を)、How(どうやって)、When(いつ)を意識しながら具体的な文章にしましょう。
また、ミニマム思考の人は「ワン・センテンス(1行)」形式を徹底します。
いくら具体的だからといっても、仮説が何行もの文章になってしまうのは問題です。
何行にもなるということは、仮説の核心が明確になっていないということです。
1行程度のシンプルな文章でまとめることによって、仮説の要点がはっきりします。
シンプルな問いを意識することによって、スッと言葉が頭に入ってきて、反射的に質問に答えようと脳が働き始めます。
長い文章だとなかなか頭に残らないので、問いに答えようとする意識が低くなってしまいます。
たとえば、「A商品はインターネット上でのシェアを高めるべきか?」「B商品は都市部ではなく地方で売るべきか?」「C商品は価格を上げて、高級路線に舵を切るべきか?」といった具体的&コンパクトな文章にすると脳が自然と働きはじめます。
日頃から仮説を立てる習慣をもつ魅力的な問いを立てられる人は、普段から自分なりの仮説をもつ習慣があります。
街を歩いていたり、ニュースを聞いたりしても、「なぜその現象が起きているのか」と思考し、仮説を考えます。
たとえば、「男性向けのスイーツが流行っている」というニュースを聞いたとしたら、「へぇ~、そうなんだ」と聞き流しません。
「流行っているとは何を根拠に流行っているというのか」、あるいは「なぜ流行っているのか」を考えます。
「殺伐とした競争社会の中で愛情に飢えているからではないか」→「愛情に飢えているから甘いものを食べて気を紛らわせているのではないか」というような仮説思考をします。
流行している商品やお店があれば、「なぜこの商品は売れているのか」「なぜこの店には行列ができているのか」と考え、社会現象があれば、「なぜこんな現象が起きているのか」を考えて、自分なりの仮説を立てる。
そして検証してみるのです。
こういうときこそ、すぐに調べられるインターネットは役に立ちます。
インターネットで検索して検証してみる。
まわりの人に聞いてみるのもいいでしょう。
自分なりの仮説が検証できそうだと思えば、ブログで発信してみてもいいでしょう。
ミニマム思考のできる人は、このようにインターネットを意図的に使うのです。
ここまで仮説を立てる技術の大切さを述べてきましたが、「仮説を立てるなんてむずかしい」と感じている人もいるかもしれません。
ミニマム思考ができる人は、「これが問題ではないか」「こう解決するといいのではないか」と早い段階から当たりをつけて、仮説を立てていきます。
仮説を立てるのが早ければ早いほど、仮説と検証を高速で繰り返して、仕事の質を高めていくことができます。
実は、仮説を立てるスピードをアップさせるツールがあるのです。
それが、フレームワークです。
フレームワークとは、いわば思考の枠のこと。
「枠」にはめることは、思考の自由を奪われるような感じがするかもしれませんが、枠が決まっていないと、どこから何を考えればいいかわかりません。
たとえば、先述した「空」(事実)→「雨」(解釈)→「傘」(行動)もフレームワークのひとつ。
「さあ、自由に考えてください」と言われると、何から考えていいかわかりませんが、「事実はどうか?」→「その事実からどう解釈するか?」→「どのように行動し、問題を解決すればいいか?」という思考の流れが先にあれば、どうしたらいいかわからず途方に暮れるという状態は避けられます。
フレームワークをうまく使うと、思考力が働くため、自由に考えるときと違って、アイデアや洞察が生まれやすくなり、思考がスピードアップします。
それは、結果として段取りの高速化にもつながるのです。
ミニマム思考の人は、フレームワークを活用して、仕事のムダをなくしているのです。
たとえば、単に「新しいお酒の企画を考えなさい」と言われると、とりとめのないアイデアしか出てきませんが、「20代女性に好まれるビールの企画を考えなさい」と言われれば、より具体的なアイデアが出てきます。
実は、「枠」は発想の自由を奪うものではなく、発想を自由にするのです。
フレームワークを知っているのと知らないのとでは、「各駅停車に乗るか、飛行機に乗るか」くらいのスピード差が生まれるといっても過言ではありません。
9割のケースは既存のフレームワークで対応できるフレームワークを使うことは、思考の枠をつくると同時に、思考の幅を広げることでもあります。
普通に考えていたら考え及ばなかったことも、フレームワークを活用することで気づき、思考のモレを防ぐことができるのです。
もちろん、フレームワークは、コンサルタントにかぎらず、さまざまな職種、職業の人でも使いこなすことができます。
企画、開発などのクリエイティブな仕事だけでなく、営業や販売、事務などの仕事でもフレームワークを使って、スピードアップすることが可能です。
フレームワークには、さまざまなビジネスシーンでよく使われる代表的なものがいくつも存在しますが、それらはひとつの型にすぎない、ということを忘れてはいけません。
フレームワークは、「これでなければいけない」というルールはありません。
一般的に知られているフレームワークは、あくまでも汎用性が高いからよく使われているにすぎません。
自分の業界や業種によって、オリジナルなフレームワークをつくることによって、質×スピードはさらに向上します。
ただし、自分でフレームワークをつくるのは応用編です。
9割のケースは、既存のフレームワークで対応できます。
すでに紹介した「空・雨・傘」や、これ以降に紹介する「3C」「流れ」「ビジネスシステム」「ロジックツリー」など、いくつかの代表的なフレームワークについて、本書で解説していますので、興味のある方はぜひ押さえておいてください。
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