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2「未来予測」よりも「現在過去分析」

 前の項の最後に、正しい「方向づけ」のために必要なこととして、お客さまの背後にある、大きな世の中の流れを見極めていくことを挙げました。日本や世界の経済の状況です。経済の背後には政治もあります。「会社」は「社会」の中にあり、その流れには逆らいようもないからです。今回の金融危機でも分かったように、どんな会社でも大きな経済の流れには逆らえないのです。その流れを見極められるかどうかで、経営のパフォーマンスは大きく違ってきます。  ただ、ここにも、よくある思い違いが存在します。それは、ことさら未来を予測しようとすることです。未来を予言者のように、とうとうと語れるのが優れた経営者だと思い込んでいる人がいます。  でも、神さまでもない限り、未来はだれにも分かりません。  それが証拠に、二秒後の株価が分かりますか?  二秒後の株価があらかじめ分かって株式を売買していけば間違いなく世界一の金持ちになれるでしょうが、そうはいかない。二秒後のことすらだれにも分からない。  経営を行うには、そのだれにも分からない不確実な未来をある程度読み解くことが必要です。しかし、未来は、未来ばかりを見ようとしても見えてきません。  では、どうすればいいのか?  それは、  現在と過去をコツコツ勉強することです。  そこに、未来を読み解くキーがあります。  では、どうやって現在と過去を「勉強」したらいいのか?  それをこれからお話ししましょう。  まず毎日の新聞を丹念に読むことです。そうやって、起こっている事実をどんどん吸収するのです。それが、過去や現在を知る「正しい努力」の第一歩です。  別にむずかしいことではないのに、多くの人がそれを「きちんと」やっていないのは、実にもったいないことだと思います。でも裏を返せば、ただそれだけで、経営者や経営者予備軍として人より一歩抜きんでることができる、ということです。  さて、新聞の読み方にも、コツがあります。  まず、一面から読むこと。そうしないと、興味がある部分(たとえば、テレビ欄とか三面記事とか)しか読まなくなってしまうからです。特に国際面や経済面は、ともすれば、敬遠されがちです(もちろん、この期に及んでも、朝からスポーツ紙やマンガを読んでいるような「社長」は、この本の読者にはいないと思いますが、論外です)。  次に大事なのは、大見出しだけだとしても、ただ漫然と見るのではなくて、そこから、自社を取り巻く環境や、もっと大きな経済や社会の流れを読み取ろうとしながら読むことです。  むずかしいことではありません。わたしの会社では一年コースの「後継者ゼミナール」や「コンサルタント養成講座」をやっていますが、その参加者には、日経新聞を読んで自分の仕事に関係があることなどの「経済日記」を毎日つけてもらっています。受講生を見ていると、最初は、自社に関わることが中心でも、日を追うごとにより大きな経済の変化にも関心が向いてくるようになります。小さなことから始めても、きちんとやっていけば、関心の幅はどんどん広がっていくのです。  特にわたしがお勧めしているのが、月曜の日経新聞の景気指標。それを毎週、「定点観測」するだけで、かなりのことが分かります。未来も見えてきます。このことについては、拙著『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』や『同「数字力」養成講座』(ともにディスカヴァー刊)など、別の本でもいつも書いています。この景気指標を用いて、未来を読み解くセミナーもよく行っています。そのくらい重要で役に立ちます。  たとえば、もとをたどればアメリカの住宅価格の値上がりを前提とし、また証券化というリスク分散から始まった世界金融「バブル」の崩壊が近いことも、この日経新聞の景気指標の『定点観測』をしていた人には、かなり早い時期に、その予兆くらいは「見えて」いたと思います。  そして、現在の経済危機が、以前の景気後退とはまったく違う状況になっていることも、日経新聞の記事や景気指標を定点観測していれば分かるはずです(米国の数字、特に、「個人消費」、「新車販売台数」、「住宅着工」などを 01年の「 I Tバブル」崩壊時と比べてみてください。衝撃的なはずです。日本の数字も同じです)。  ここでもし、月曜日の日経新聞の景気指標について、「そんなのあった?」という人がいるとしたら、せっかくのチャンスをムダにしています。ほんとうにもったいない。まずは、自分の経済実感と数字が合っているかを検証するために、この指標を見てください。  最初はよく分からなくても、毎週見ているうちに、なんとなく数字が「読める」ようになってきます。そうすれば、しめたもの。あなたも、テレビや新聞に登場するお偉い経済評論家よりもずっと的確に経済の実態、経済の動向が読めるようになります。  経営を行うにあたっては、いろいろな専門家の意見を参考にすることはもちろん重要ですが、最後は、自分で意思決定するしかありません。その判断能力を、身につけておかなければならないのです!  先ほども書きましたが、「会社」という字は、「社会」の反対です。社会より大きな会社は存在しません。経営者というのは、最後は自分の経済観や経営観を頼りに、社会の中に存在する自社の舵取りを行わなければなりません。  短期的な小さな舵取りもあれば、長期的な大きな舵取りもあります。もし、だれかの意見にしたがって間違った方向に進んでしまったとしても、その「だれか」が責任をとってくれるわけではありません(とりようもないでしょう)。  その自分自身の経済観、経営観を養うために、常に現在(現在は常に過去になる)を知る地道な努力は、経営者の最低限の義務だと思います。

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