どんな業界でも、何かヒットする商品が出ると、またたく間に類似品が多数出回ります。そして、上手に真似るのが商売上手と思っている人が多いように思います(実際に、真似た商品づくりをしていない会社でも)。 けれども、右肩上がりの時代ならいざしらず、この供給過剰の時代では、トップ企業の真似をしていても生き残れません。どんなに小さな会社でも(小さな会社だからこそ)、キーワードは「他社との違い」です。 では、どこでどのように差をつけるのか? というと、その差別化を具体化するのが「 Q、 P、 S」、つまり、 1 Quality 品質 2 Price 価格 3 Service サービスです。お客さまは、この Q、 P、 Sすべてを見比べて、どの会社のどの商品を選ぶかを決めています。そこで、お客さまが望む Q、 P、 Sの組み合わせをいかに提供できるか、それが企業の勝ち残りのカギとなります(何でもそうですが、分解すると分かりやすくなります)。 Qは商品の品質です。サービス業ではお金をいただいて提供しているサービスが Qとなります。となると、 Sは何? と思うかもしれませんね。「その他」の Sだと考えていいでしょう。電話の応対がよい、というのもそうだし、伝票を間違えない、店まで近い、店員を知っているなど、その他すべてのことです。 そして、実は、この、 その他の Sこそが、差別化のカギとなります。 というのも、いまや、 Qと Pではなかなか差別化しにくいことが多いからです。 たとえば、日本経営品質賞を獲得した「ホンダカーズ中央神奈川(旧ホンダクリオ新神奈川)」は、戸別訪問や電話勧誘を一切せず、営業マン一人当たりの売上がほかのカーディーラーの二倍以上あることで有名です(ほかの本でもよくご紹介しています)。 系列のカーディーラーですから、 Qや Pが他社と違うわけではありません。勝手な値付けはできないし、そこで買ったホンダ車が空を飛ぶということもない。つまり、 Sの差だけで倍以上売っているわけです。 Sとは、言い換えれば「きめ細やかさ」です。サービスの話をすると、「うちもがんばってます」とおっしゃる方が多いのだけれども、サービスや「お客さま第一」については、「やっている、やっていない」でなくて、「どこまでやっているか」です。 深みが勝負なのです。 よい会社の社長とお話をすると、だいたい出てくる言葉は「うちは、まだまだです」ということです。サービスやお客さま第一の深みを知っているからです。一までやれば十あるのが分かり、十やれば百、百やれば千あるのが分かるからです(お客さま第一でも、勉強でも何でもそうですが、やればやるほど深みがあるのが分かります。ちょっとだけ分かって、全部分かったような気になっているのがいちばん危ないし、いちばん厄介な人たちです)。 さて、他社との差別化に、新しいことを行うことが必要な場合もありますが、中小企業やベンチャーでは、 Q、 P、 Sをライバル他社よりも「少しだけよく」するだけで、成功への近道となることが多いと感じています。新しいことを行うのはリスクがあり、それなりの資本が必要ですが、すでに市場があるところで他社と差別化するのなら、それだけ成功確率も高くなるはずです。 お客さまの視点から見た場合には、 Q、 P、 Sのどこを他社より「よりよく」するか、ですが、徹底したお客さま志向がベースになることはいうまでもありません。 一方、他社との差別化を具体化するもうひとつの視点として、次の4つの Pがあります。有名なマーケティングの 4 Pです。 1 Product(製品) 2 Price(価格) 3 Place(流通) 4 Promotion(販促) 最近は、 Partnering(提携)を含めて5つの Pと言われることもあるようです。 Q、 P、 Sよりもう少し戦略的視点と言えます(このあたり、拙著『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』(ディスカヴァー刊)に詳しく書きました)。 いずれにしても、重要なのは、お客さまの視点に立った他社との差別化であるということです。 本書の最初の項に書いたように、徹底的なお客さま志向の社風を小さな行動から変えることでつくりだし、それにより、お客さまのニーズを的確にとらえる「発見力」を鍛えることです。お客さまが何を求めておられるかが分からずに、行動することはできないからです。そのためには、社長が社内にばかりこもっている「穴熊」ではどうにもなりません。
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