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1週間で会社が変わる!採用の教科書1─絶対失敗しない求人・採用・面接の仕方─【オリジナル】

目次

利用規約

プロローグ

第一章黒字社員を採用しなさい!

□なぜ、会社は社員を採用するのか?

□会社は利益を出さなければ倒産する

□会社が人を採用しようとする「よくある理由」とは

□人を採用するということは、大きな投資である

□黒字から赤字に転落するそのときとは

□採用は失敗すると大きな損失を生む

□採用で成功しても、経費はこれだけかかる!

□目には見えない本当の損失とは

□面接官や採用担当者の損失も考えよう

□採用活動の損失

□採用は中長期的な視点を持たなければいけない

□妥協して採用していませんか?

□もっとも情報が少ない分野、それが採用だ!

□不況を感じない会社の共通点とは

□いい人材が集まる〝強い〟人事システム

□いい人材が集まる〝強い〟従業員満足度システム

□いい人材が集まる〝強い〟採用システム

COLUMN①いまいる社員を攻撃してはいけない

第一章のまとめ

第二章 採用活動のカイゼンをしよう!

□KAIZENという素晴らしい言葉を知ろう

□採用活動のカイゼン

□人が定着しない本当の理由は何か?

□デキる退職者から、退職の理由を聞き出そう

□採用担当者がよくする五つの言い訳

□応募者や会社の人気に責任転嫁する

□知名度がないから優秀な人が来ない

□応募者の質が低い

□不教の連鎖から脱却するには

□不教の連鎖はどのように連鎖していくか

COLUMN②福岡にある知名度ゼロの個人事務所の軌跡

第二章のまとめ

第三章会社に利益を生む黒字社員採用術ステップ1(採用準備編)

□社外広告ではなく、社内整備をする

□企業理念と行動の明確化

□あなたの会社は何のために存在するのか?

□価値観や企業理念の共有?浸透?

□一緒に働きたくない人材とは

□実際に紙に書き出してみる

□会社に合わない人材を見抜く

□採用基準に〝客先に合う人材〟という視点を入れる

□専門知識や技術があるから何?

□採用基準を確立する

□採用に成功したいなら〝採用しない〟こと

COLUMN③採用の準備に時間をかけることが採用成功の秘訣

第三章のまとめ

第四章会社に利益を生む黒字社員採用術ステップ2(選考編)

□書類選考を確立する

□適性試験を導入するメリットとは

□採用基準と連動した選考フローを確立する

□あなたの会社の面接方法はどれ?

□質問項目を事前に勉強する

□質問のテクニックを知る

□面接では応募者の考え方+行動パターンを確認する

□質問項目を確立する

□面接シートの作成はなぜ重要か

□なぜ面接シートを使わない面接がリスキーなのか?

□面接シートがあれば大丈夫!ではない

□面接官の教育とは

□面接をロールプレイングしてみよう

□営業担当者としての心構え

□どうやったら現場に採用の基本ルールを浸透させられるか

COLUMN④ここまでするんですか?

第四章のまとめ

第五章会社に利益を生む黒字社員採用術ステップ3(募集編)

□求人募集≠採用活動の間違い

□中小企業がターゲットとする応募者層は?

□魅力的な「中小企業のウリ」を考える

□応募者の質を上げる必要性とは

□応募者数が多いとよいという固定観念を捨てよ

□応募者の視点に立って、他社と自社を比較する

□他社を応募者の視点を持って調べる

□応募者に充分な情報を与えなければいけない

□給与など待遇面を書かない求人募集とは?

□応募者の心をつかめない求人募集とは?

□「人間くさい情報」が人を引き寄せる

□インターネットでの採用がもっとも安くもっとも効果がある

□会社の採用ページを見て応募してくる人は、意識が高い

□ブレない一貫したメッセージ

□人材採用においてブレない会社とは

□どんな採用ホームページを作ればいいのか?

COLUMN⑤勝てる場所で勝負をするということ

第五章のまとめ

エピローグ

プレゼントのお知らせ

プロフィール

奥付

利用規約

本作品の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信したり、ホームページやブログ、SNS上に転載することを禁止します。また、本作品の内容を無断で改変、改ざんな等を行うことも禁止します。また「採用の教科書」はいなだ社会保険労務士事務所の登録商標であり、弊社以外に本タイトルをつけた書籍やセミナーは商標権を侵害する違法行為となります。本作品購入時にご承諾いただいた規約により、有償・無償にかかわらず本作品を第三者に譲渡することはできません。本作品を示すサムネイルなどのイメージ画像は、再ダウンロード時に予告なく変更される場合があります。本作品は縦書きでレイアウトされています。また、ご覧になるリーディングシステムにより、表示の差が認められることをがあります。本書は平成二十二年二月五日にグラフ社から発行された、『一週間で会社が変わる!採用の教科書』を『採用の教科書1』と改題し、ビジネス・ベストセラー出版から再発行したものです。『採用の教科書』はいなだ社会保険労務士事務所の登録商標です。

プロローグ

はじめまして。人材採用コンサルタントの稲田行徳です。あなたはなぜ、この本を手に取ったのでしょうか?タイトルが気になったから?知り合いから紹介されたから?ただ、なんとなく書店で目についたから?あなたがどのような理由でこの本を手にしたのか、私にはわかりません。しかし、ただ一つ、私からこの言葉を贈りましょう。おめでとう。あなたはいま、運命の分かれ道となる大きなY字路に立っています。あなたが経営者でも、人事担当者でも、一介の営業マンでも、普通のビジネスマンでも、どんな職種、職階でも私はかまいません。これから私があなたに話すことは、あなたの会社の未来を左右する重大なことです。この本を読み、実行できるように働きかけることで、あなたの会社には活気があふれ、働く人はもっと楽しくなり、会社は利益を生み、長く存続することができることでしょう。私は二〇〇七年に福岡で、中小企業専門の人材採用コンサルタントとして「いなだ社会保険労務士事務所」を開業しました。人材採用の専門家として知名度が上がるにつれ、北は北海道から、南は沖縄まで日本全国の中小企業経営者から相談が寄せられるようになり、最近では、病院や国立大学などの教育機関からの依頼も増えています。なぜ東京ではなく、福岡に住む、それも小さな事務所の「私」に依頼が殺到するのでしょうか?なぜ全国の経営者たちは事務所に行列を作るのでしょうか?私は何も珍しいことはしていません。誰もが考えればわかるような当たり前のことを、当たり前にお客さまに教え、そのテクニックを社内に導入しているだけですが、それが利益を生み、社内活性化や経営を変えるほどの効果があったのです。もし私がただ一つだけ、ほかの人より抜きん出ていた点があるとすれば、早くから、このことに気がついていたということです。それは「採用活動と会社の利益は、密接に結びついている」という事実です。私は個人事務所を開く前、社会保険労務士事務所にて約七十社のコンサルティングを経験し、数多くの企業や経営者の方と関わった経験があります。その後は企業の人事担当としてさらに採用・教育・人事について勉強をしましたが、その際に採用という仕事が、いかに会社の経営やその後の利益に影響をおよぼすかということを知ったのです。実は、会社で利益を出し続けられるかどうかということは、どんな人に会社で働いてもらうかということに密接に関連しています。また、人を一人採用するごとに巨額の費用がかかっているということは、意外に知られていない事実です。間違った採用活動は、会社を疲弊させ、土台を揺るがします。会社とは、業種・職種・規模・地域・年商を問わず採用活動をおこなうものです。あなたがこの本を読んでいる瞬間も、日本はおろか世界中でおこなわれています。あなたもアルバイトや社員になるときに、一度くらいは面接を受けたことがあるはずです。でも、面接を受けたことはあっても、採用の仕方を教えてもらうことは、ほとんどないと思いませんか?会社の規模が小さくなるほど、これは顕著になります。新卒で採用した人が定年まで働いた場合、人件費のみでも二億円はかかります。このように採用は社内でもっとも高い投資であるはずなのに、正しいやり方を勉強する機会はほとんどなく、人事担当者や社長は、求人広告会社にいわれるがまま、採用活動=求人募集という誤った常識を信じ、採用活動をして失敗しています。また、雇用のミスマッチは企業側だけではなく、応募者も不幸にしてしまいます。つまり、会社が正しい採用活動をしないことで、日本の求職者をも不幸にし

ているのです。私はそんな日本の現状を少しでも変えたいと思い、この本を執筆することにしました。幸いなことに、これまでに多くの企業が私の考えに共感していただき、自社の採用活動を改善されて、望んだ人材を採用できる仕組みを手に入れてきました。次は、あなたの会社の番です。メモをとりながらこの本を何度も読み返し、会社で改善できる部分をすぐに取り入れてください。そうすることで、あなたの会社の採用活動が変わり、会社の業績も上がり始めることでしょう。さあ、一緒に未来への扉を開きましょう。稲田行徳

目次

第一章黒字社員を採用しなさい!

□なぜ、会社は社員を採用するのか?

あなたは、「会社が社員を採用する目的」は何だと思いますか?あなたが会社の創業者だったとして、考えてみましょう。あなたは起業し、会社を作って自分のビジネスを始めました。事業は順調に軌道にのり、決算は黒字になり、会社にはあなた一人では抱えきれないほどの仕事が舞い込んでくるようになりました。あなたはいまこそが社員を採るべきときだと思い、新聞やハローワークに求人広告を出す決心をしました……。さて、あなたは何を目的として、社員を採用しようと思ったのでしょうか?よく考えてみてください。多くの会社が、最初は「あなた」のような会社だったはずです。ではもう一度、質問させてください。会社が社員を採用する目的とは何だと思いますか?この質問を、真剣に考え、この理由を明確にすることで、採用の本当のゴールが見えてきます。ただ先を読むのではなく、必ず一度、考えてみてください。さて、あなたなりの答えは見つかりましたか?見つかったなら、次のページで答えを確認しましょう。【■POINT■会社は何のために社員を採用するのか、じっくり考えてみよう。】

□会社は利益を出さなければ倒産する

さて、前のページで、会社側から見た、採用の本当の目的をじっくりと考えてもらいました。それでは答えを明らかにしましょう。答えは……「会社がさらに利益を出すため」です。ちょっとストレートすぎるかもしれませんが、私はこの限られた紙面上でキレイごとを言って、紙のムダ使いをする気はありません。会社というのは利益を出さなければ倒産します。倒産しないためには利益を出す必要があるのです。たとえば「人手が欲しい」という採用の理由は、受注している仕事の量に比べて社内に人材が足りない状況であり、結果として仕事が回っていないわけです。それにより会社にどのような影響があるかと言えば、・顧客に対して十分な対応ができないため「クレームが増える」・仕事を受注できないなど機会損失が生まれる。・一人当たりの負荷が高いことから残業が増え、業務効率が落ちている。これらは当然ながら、利益の減少につながっていきます。利益が減る状態を、ただ指をくわえてだまって見ている経営者はいません。そうならないためにも、業務が回らなくなる前に人を採用しようとします。やっていることは人員の増加ですが、最終目的は「利益を上げること」です。このように会社は、さらに利益を出すために採用するのが目的のはずです。しかし実際に動き出すと、いつの間にか「採用すること」自体が目的になってしまっている会社ばかりが目立ちます。そして人数を確保するために妥協が生まれ、求める人材ではない人に内定や合格を出しています。この雇用のミスマッチは会社側だけではなく、応募者にとっても不幸なことなのです。【■POINT■会社が人を採用するのは、「さらに利益を出すため」である。】

□会社が人を採用しようとする「よくある理由」とは

「人手が欲しい」以外で会社が人を採用しようとする理由は「退職者がでたから(欠員補充)」「サービスの質を上げるため(体制の強化)」ではないでしょうか。これらを、会社がさらに利益を出すためという本来の採用目的からみると、こうなります。たとえば、「欠員補充」ですが、退職(休職)した人が持っていた仕事を、ほかの誰かがすべて引き継ぐと、引き継いだ人の業務量が増えてパンクする可能性があります。結果として、会社の利益が減るので、それを回避するために採用をします。「欠員補充」しないほうが人件費を抑えることができ、利益が増えるのでは?と考える人もいるでしょう。しかし、仕事には必ず人間の感情が入ってきます。いままで三人でやっていた仕事を二人で回せるからと欠員補充しなければ、仕事が回らなくなるかもしれませんし、その二人は不満も持つでしょう。場合によっては連鎖的に退職するなんていう最悪のことも起こります。では「体制を強化したい」から採用する場合はどうでしょうか?こちらは、仕事の量に目を向けているのではなく、「仕事の質」に目を向けています。社内に新しいスキルを持った人材を採用し、人数的に余裕を持たせることで、改善活動やマニュアル化などにも目を向けてもらい、仕事の質を上げることができます。仕事の質を上げて何をしたいかといえば、もうおわかりですよね?そうです。利益を出すためです。ちなみに「人手が欲しい」という理由や、「欠員補充」、「体制を強化したい」というようなものは採用の本来の目的ではなく、それらは採用の本当の目的を達成するための「目標」と「手段」であり、目先のマイルストーンでしかないのです。ところがほとんどの企業では、この「目標」や「手段」を採用の最終目的のようにとらえて採用活動をしています。この場合、そもそも目的(ゴール)の設定が間違っているのですから、採用に失敗するのは当然のことなのです。【■POINT■「欠員補充」や「体制強化」も、実は会社の利益を出すためである。】

□人を採用するということは、大きな投資である

ここで、皆さまに勘違いしていただきたくないことがあります。先ほどから、「会社が社員を採用する目的は、さらに利益を出すためである」という説明をしていますが、私は社員を「お金やコストがかかるものとして見なさい」と言いたいわけではありません。しかしながら、本来の採用目的である「会社に利益を出したいから人を採用する」というゴールを見失ったままでは、会社に貢献できる人を採用することはできません。「毎年新卒採用をやっているから」「単に人が辞めたから」「新しい部署ができたから」「忙しいから」……会社には、このようにさまざまなシーンで人を採用する機会があります。しかし、本来の採用目的とは違いますよね?人を雇うということがどれだけの投資なのか、また間違った投資をすることで、どれだけの浪費や機会損失をしているのかということを、本書を通じてリアルに感じてください。人を採用するということは、大きな投資です。一つの会社が一人の社員を新卒から定年まで雇用し続けると、なんと二億円のコストがかかるといいます。特にエグゼクティブ級ではなく、ごく普通の社員を雇うだけでこれだけのコストになるのですから、会社としては「どのような社員を雇うのか」ということが、会社の命運を分ける大きな分かれ道となります。それを、もしコストばかりかかってマイナスになるような人を雇ってしまったら?毎年新卒採用をいい加減にやっていたら?人が足りないからといって中途の社員を適当に雇っていたら?人による赤字は経営を圧迫していきます。しかし、「採用の目的は、会社がさらに利益を出すことである」というゴールを常に意識するだけで、会社での選考や面接方法が変わります。経営者を含め、採用に関わるすべての人が、この目的を忘れないだけで、採用が変わるのです。そして採用が変われば、あなたの会社が変わるのです。【■POINT■人による赤字は、経営を圧迫する。】

□黒字から赤字に転落するそのときとは

街中で社長さんを探して十人にインタビューをしたとします。そこで話を聞いてみると、売り上げが下がってしまった会社に必ず出会うでしょう。この黒字から赤字に転落するメカニズムを考えてみましょう。想像してください。二人で立ち上げたA社があるとします。そのA社が初めて人を雇おうと思ったとき、その会社は黒字でしょうか?赤字でしょうか?初めて人を雇おうと思ったとき、通常、その会社は黒字のはずです。通常、会社を立ち上げた後、その会社は順調に売り上げを伸ばすか、うまく行かずに撤退や廃業をするかのどちらかです。そして売り上げが伸びている会社は、いつか人手が足りなくなります。人手が足りない状態とは、受注した仕事の量に対して社内の人材が足りない状態です。ですから当然ながら黒字の状態なのです。ここで採用のことを勉強せずに、「やる気がありそう」とか「礼儀正しい」とか「学歴が高い」や「専門知識があるから即戦力として期待できそう」など勘と経験に頼って採用した結果、もし求めていた人と違う人を採用すると、何が起こると思いますか?――はっきり言いましょう。支払っている給与以上の働きをしないために、採用者に対しては赤字となり、せっかくの黒字利益を吸い取られるのです。つまり、最初は黒字だった経営が、初めて人を雇うことにより、もともとの利益が増えるか減るか大きく分かれるのです。採用を始めたときは黒字。しかし、いつの間にか赤字になったり、利益が減っているという場合は、「人材が理由による赤字」が出ていないかをぜひ、一度考えてみてください。【■POINT■もともと黒字だったならば、人材による赤字の可能性も考えてみよう。】

□採用は失敗すると大きな損失を生む

私がセミナーや講演などでよくする質問があります。「採用で失敗したら金額的にはいくらの損失を出すと思いますか?」という質問です。私が質問すると多くの経営者がこう答えます。「金額的な損失は採用した人の給与」だと。これは大きな間違いです。この程度の金額なら、もともと黒字を出していた会社であればすぐに立ち直れます。会社が赤字へ転落するなどありえないのです。あなたはどう思いますか?採用の失敗は金額的にいくらの損失を出すと思いますか?一度、真剣に考えてみましょう。社員を採用することで会社にかかる経費は、給与だけではありません。二十万円の給与の社員を採用しても二十万円×十二=二四〇万円とはならないのです。ではどのような経費がかかるか簡単にご説明しますと、・通勤交通費(月五千円〜月二万円ほど)・労災保険料(給与×一定率)・雇用保険料(給与×一定率)・健康保険料(給与×一定率)・厚生年金保険料(給与×一定率)・ボーナス(金額は会社による)・ボーナスにかかる労災保険料・雇用保険料・健康保険料・厚生年金保険料などです。さらに採用した人が四十歳〜六十四歳であれば、・介護保険料(給与×一定率)もかかります。しかも、健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料など社会保険料に関しては高齢化社会が進むにつれ、さらに値上がりしていき、経費は膨らむ一方なのです。【■POINT■社員を採用することで会社にかかる経費は、給与だけではない。】

□採用で成功しても、経費はこれだけかかる!

まず採用を決めた瞬間に、給与以外に保険料や通勤交通費などの経費がかかってくるということはご理解いただけたと思います。通勤費は人によって違いますし、会社の業種によって保険料は違うので一概にはいえませんが、大体、給与×十二か月分+ボーナスの合計金額×一.三倍ほどが、毎年その人の人件費としてかかると考えてください。たとえば、二十万円の給与で年間ボーナスが五十万円なら、二九〇万円ではなく、三七七万円ということです。(詳細金額は給与計算担当者にご質問ください)ただ、こちらに関しては採用で成功してもかかる諸経費です。採用で失敗したからといって、支払った給与が即損失になるというわけではありません。ところがもし、採用した人が一人分の仕事ができなくて、別の人も雇わなければならなくなったらどうなるでしょうか?人件費が余計にかかることになるのです。別の人を雇わないとしても、採用した人でできなかった仕事はほかの社員がカバーすることになり、結果として残業の増加なども起こります。また備品代などもかかります。ネームプレートや名刺、社員証、制服がある場合は制服、通常これらは採用した人のために新たに発注します。もし採用で失敗し、入社した人がすぐに退職した場合、これらの費用はすべてムダになります。ただ金額的には数万円程度でおさまるでしょう。そのほかにも業種によっては、一人一台のパソコンを準備したり、文房具やその社員が使用する光熱費や通信費もかかります。しかし、給与や備品など金額として計算しやすい目に見えるものが本当の損失ではありません。採用失敗による本当の損失は、表に出てこない見えない金額なのです。それについて、次の項目で詳しく説明していきましょう。【■POINT■採用で成功しても、これだけ諸経費はかかることを認識しよう。】

□目には見えない本当の損失とは

社員を採用すると、労働者名簿の作成や労働保険・社会保険の取得手続きが発生します。パソコンの準備や名刺など備品関係の発注などもそうです。これらの手続きをする人は、その仕事をする間はほかの仕事ができないので、売り上げの減少につながります。また、会社に入社し、すぐに仕事ができる人はいません。必ず社長や上司、先輩社員が仕事を教える必要があります。先輩社員は会社の売り上げを削って新入社員を教育しているのです。売り上げを減らさないためには、先輩社員が自分の仕事を片付ける必要があるので、足りない時間は残業しなければいけません。結果、先輩社員にストレスもかかり、人件費も増えます。そこまで身を削って教えた人に、三か月で退職されたらどう思うでしょうか?その後、代わりの人が入社してきても、また一から同じことを教えなければいけません。そして、その人がまたすぐに退職したらどうなるでしょう?あなたがその教育担当者なら社長の採用力を疑い、信頼できなくなりませんか?中小企業は一度に多くの社員を採用できません。なぜなら採用した一人ひとりに教育担当が必要であり、その教育担当の売り上げが減るため会社の経営に影響が出るからです。三十人しかいない会社で、一度に十人も採用したりすると、教育担当者の影響で会社の経営は傾きます。採用においては特に、教育担当の負担も常に頭に入れておきましょう。採用で失敗し、せっかく採用した人がすぐに辞めた場合、次は退職に伴う手続きも同じくありますので、これらの入退社の時間とお金はすべてムダとなります。それだけではありません。とりかえしがつかない損失もあります。社員のモチベーションの低下です。入社した人が自社をすぐに辞めるのを見て、モチベーションが上がる人はいません。その下がったモチベーションを回復させるのは難しいことです。【■POINT■採用に失敗すると、社員の売り上げとモチベーションも一緒に下がる。】

□面接官や採用担当者の損失も考えよう

こちらも同じです。採用した人がすぐに退職した場合は、選考に費やした費用と時間がすべてムダになります。さらに、その採用に費やした時間に本来稼ぐはずだった売り上げも損失ですし、失った時間の中には、社長や面接官が費やした人件費も入っています。求人広告にいくら使ったのでしょう?適性試験にいくら使ったのでしょう?交通費にいくら使ったのでしょう?応募者とのやりとりにどれくらい時間を使ったのでしょう?採用に失敗し、社員に退職された場合、それらは二度と返ってこないばかりか、再募集によりもう一度同じ金額と時間がかかります。募集選考費用+全面接官の人数×時間単価×選考時間を計算してみてください。驚きの金額になります。また、顧客の損失もぜひ考えてください。採用で失敗し変な人を採用した結果、客先でトラブルを起こしたり、対応が悪いなどを理由に、顧客が離れていきます。例えば飲食店など接客業の場合は、社員の対応により目の前のお客が減るだけではありません。そのお客は友人・知人にも直接話したり、ネットやブログなどさまざまな伝達方法を使って「あそこには行かないほうがいい」と口コミを広めます。悪いうわさは伝達するスピードが速く、将来の見込み客も消えます。客単価×平均リピート回数×友人数人×在職期間という損失が出ます。客単価次第ですが、一年ですぐに数百万円〜数千万円はいくでしょう。逆にいい人を採用できた場合は、同じ計算方法で数百万円〜数千万円のプラスをもたらすのです。このように顧客の損失を計算に入れるのが正しい考え方です。あなたの会社はどちらの人を採用したいですか?【■POINT■悪い人材を採用すると、既存の顧客にもダメージを与える。】

□採用活動の損失

最後に機会損失の話をします。限られた人数の採用において、Aさんを採用すると、求人募集を終了させますので、その後に就職活動を始めた優秀なBさんに自社の求人を知らせることができなくなります。再募集を始めたときには、Bさんが同業他社に取られているかもしれません。優秀なBさんが入った他社はどんどん利益を上げていく、しかしAさんを採用した自社は利益が上がらない。再募集をしても、採用したCさんはAさんやBさんより劣るかもしれないのです。さらに、頻繁に求人募集を出すことにより、「あそこは人がすぐに辞める会社だ」と求職者に認識されます。それにより、さらに採用が難航し、いい人材が来なくなる採用活動の負のスパイラルに入っていくのです。落ちた採用ブランド力の損失はいくらでしょう?ブランド力はお金では買えないのでプライスレスですよね?このように採用活動の本当の損失を考えると、「とりあえず採用して試用期間で判断する」というような採用方法がいくらの損失を出しているか、恐ろしくて私は計算したくありません。だから、そういった採用活動をしている会社の経営が苦しいのは当然なのです。新卒で採用した人は、定年までに人件費だけで二億円はかかります。しかし、本当の損失はこのようにもっと多いのです。人をモノにたとえるのはよくないですが、あまり考えずに二億円の買い物を適当にする会社があれば、「その会社は正気なのか?」と私は思ってしまいます。【■POINT■採用した人の人件費など本当の損失に比べたら微々たるものである。】

□採用は中長期的な視点を持たなければいけない

採用は一か月後や二か月後の状況を考えてしてはいけません。目の前の仕事など目先のことを考えて採用活動をすると、「その仕事ができるかどうか?」という視点で頭数採用をしてしまいやすいのです。採用というのは半年後、一年後、三年後、五年後といったように中長期的な視点で見る必要があります。この本の最初で話しましたが、採用の目的は「会社がさらに利益を出すこと」です。目先の仕事を回すだけなら、人材派遣などをスポット契約で活用すればよいのです。このように採用の視点を目先ではなく、もっと先に焦点を当てることで、求める人材や選考内容など会社の採用活動が変わっていきます。新規で採用してすぐに仕事ができる人はいません。中途採用であろうと、必ず「教育」という時間が必要です。即戦力が欲しい気持ちはわかりますが、業務を上手にこなすには仕事を覚えるだけではなく、社内や取引先との人間関係も重要です。ですから、仕事を覚える時間と人間関係を構築する期間も必要であり、経験と専門知識があっても、中途採用が新しい職場で即戦力とならない理由がここにあります。相手の性格や感情を無視した人間関係で仕事をしても、決してうまくいきません。ですから採用には必ず教育期間というものが必要となってきます。その教育期間を考えると、採用して立ち上がるまでにそれ相応の期間が必要なのです。中途採用でも入社して半年〜一年でやっとある程度の仕事ができるようになります。これが新卒採用であれば、ビジネスマナーから学ぶ必要があるので、仕事ができるようになるまでにさらに時間がかかるのです。採用の焦点を目先に合わせていると、ここで足をすくわれます。【■POINT■採用の視点を目先ではなく、もっと先に向けよう。】

□妥協して採用していませんか?

採用活動における最大の敵は、「妥協」です。妥協して採用した人で、いい人材が絶対にいないとは言いきれません。しかし、採用後に失敗したと後悔する経営者の多くが、「妥協」したことを認めているのです。妥協した結果、採用で失敗をしてしまうと、会社だけではなく応募者も不幸にしてしまいます。採用基準や企業理念に合わない応募者を妥協して採用してしまうと、その人は退職してしまうかもしれません。このような一人の不幸な人を世に送り出した責任は、妥協して採用した会社にあります。応募者のためにも会社のためにも、妥協は絶対にしてはいけないのです。よくある失敗例としては、求人募集をして十名の応募があったからと「その十名の中から選ばなければいけない」という気持ちになることです。そういった気持ちになると、採用で妥協してしまいやすいのです。本当は十名の中にいなければ、費用がかかってもまた求人募集をする勇気が必要です。採用で失敗すると大きな損失を生むのをご理解いただければ、その追加の求人広告は安いものなのです。妥協の落とし穴はほかにもいろいろあり、・「この人でまあいいか」と安易に採用を決定してしまう。・「人手が足りないのでどうしても採用しなければいけない」と思ってしまう。このようなときが「妥協の落とし穴」に片足を突っ込んでいる状態です。常に客観視し、内定を出すときに、これは「妥協ではない」と確信が持てるときのみ合格としましょう。それが会社を守る方法です。本書を読み進めることで採用時に「妥協」するという可能性は低くなりますが、それでも初心にかえり、常に律してください。それほど、妥協による失敗は多いのです。【■POINT■妥協をすることは、採用で失敗をする最短ルート。】

□もっとも情報が少ない分野、それが採用だ!

採用という分野は、企業の根幹を左右する重大な事柄であるにもかかわらず、企業向けの面接や採用に関する本はほんのわずかしかありません。しかし、求職者向けの面接本は書店にたくさん並んでいます。でも、何かが変だと思いませんか?この第一章で何度もお話ししたとおり、採用に力を入れなければ、間違った採用のコストは会社の経営を圧迫し、会社は赤字へと転落します。採用というのは、新卒・中途・正社員・アルバイト・営業・事務など雇用形態や職種に関係なく、日本の企業のほとんどがおこなうことなのに、絶対的にその情報量が少ないのです。実際にGoogleなどで採用のやりかたを検索すると、私のいなだ事務所を除けば、求人広告会社か人材紹介会社のホームページばかりが出てきます。残念ながらそれらの企業の目的は、自社の求人広告の宣伝だったり、人材紹介を使ってもらうことが目的です(宣伝は当然のことで何も悪くありません)。ですから、この本のように「採用で重要なのは、広告会社選びや人材紹介会社選びではない」や「採用での成功とは人を雇うことではない」「採用は腰をすえてじっくりとやるべき」といった採用の本質に触れる機会は少ないと思います。そもそも私のクライアントは人材紹介会社を使いませんし、求人広告もほとんど使いません。でもいい人材を採用できています。この本は第一章から順番に読めば、会社として採用に取り組む姿勢や選考準備・面接・求人のことが順番にわかるように書いています。あなたが採用のことを学ぶことで、あなたの会社は間違いなく成長します。ここまでお読みいただければ、応募者は採用や面接のことを勉強しているのに、会社側が採用を何の勉強もなしにおこなうリスクはご理解いただけていると思います。……ええと、大丈夫ですよね?もしまだご理解いただけていない場合は、この本を読む目的を明確にして、ぜひ最初からもう一度お読みください。【■POINT■正しい知識を持って採用活動することが重要である。】

□不況を感じない会社の共通点とは

私は人材採用のコンサルティングが仕事のメインですが、集客に関してもアドバイスをすることがあります。なぜかというと、採用と集客には共通するものがあるからです。いまでは、採用の相談と同じくらい集客の相談をするクライアントも増えてきています。弊社は年間百社ほどから採用や集客に関しての相談を受けますので、多くの経営者とお会いする機会があります。私は分析が好きなせいか、経営者に対して細かくインタビューをおこない、会社を分析していくことで、不況を感じない会社の共通点というのを発見しました。不況を感じていない会社には、二つの共通点があったのです。それは、①お客さまがやってくる、「集客に関する仕組み」を作っている。②いい人材がやってくる「人に目を向けた仕組み」を作っている。この両方を実現している会社の経営者は、不況の話などまったくしません。「お客を集める」とか「売り上げをアップさせる」といった宣伝文句の本は、本屋に行けばいくらでもあります。でもそれらの本の中で話していることは、「集客の仕組み」ばかりです。しかし、集客の仕組みを作っても、それを運営するのは人であり、つまり社員です。この社員に目を向けない集客論は、一時的にはもうかっても、人材は定着せず長期的な売り上げは出せないのです。ホームページを見れば私はその会社が、採用が上手か下手か大体わかります。集客が上手なマーケティングコンサル会社でも、採用ページはヒドイものだったりするのです。集客の仕組みは素晴らしくても、三年から五年経過するとどうでしょうか。会社は経営者や社員の人間力以上に大きくはなりません。その会社が人材の自転車操業をしていたら、会社の未来は決して明るくないでしょう。【■POINT■強い会社を作るには、お客さまと人材を呼ぶ仕組みが大切である。】

□いい人材が集まる〝強い〟人事システム

不況を感じない会社に共通する点は、お客さまが集まる仕組みと、いい人材が集まる仕組みだとご説明しました。いい人材が集まる=採用という風にこの本の内容から予想しやすいでしょうが、それだけでは人材が集まっても定着しません。不況を感じない会社になるために、採用以外にも目を向けなければいけません。それが……従業員満足度です。顧客満足度を略してCS(CustomerSatisfaction)と言いますが、CSは集客の仕組み作りとして重要視するものです。そして、いい人材が集まる仕組みは従業員満足度、略してES(EmployeeSatisfaction)に目を向ける必要があります。本書は採用をメインに取り上げていますが、本来の採用目的は、「会社がさらに利益を出すため」ですから、この従業員満足度を無視することはできません。いくらいい人材を採用しても、経営者が従業員満足度をまったく考えていなければ、人は辞めていきます。こういった視点から見ると、求人募集だけに目を向けた採用活動が、いかに意味のないものかご理解いただけると思います。「木を見て森を見ず」という言葉どおりです。本書を読まれたあなたにはぜひ、「広い視野でいい人材が集まる仕組み」を意識していただきたいと願っています。従業員満足度を一言で言うと、働いている人が自分の会社に満足しているか?ということです。ですからいい人材が集まる仕組みを手に入れたければ、採用に力を入れるだけではなく、入社後に会社への満足度を上げることも重要です。この従業員満足度は、人材の自転車操業や顧客満足度とも結びつきます。いくら採用が上手でも、釣った魚に餌をあげない人事制度では、必ず悪いうわさが広がります。では、従業員満足度を上げるためにはどうすればいいのでしょうか?そのためには、まず従業員満足度とは何かを知る必要があります。正体がわからなければ、対策のしようがありません。ただ、難しく考える必要はありません。次ページから詳しく解説していきましょう。【■POINT■いい人材を採用しても、従業員満足度を考えないと、人は辞めていく。】

□いい人材が集まる〝強い〟従業員満足度システム

アメリカの臨床心理学者でモチベーションの性質を研究した第一人者であるフレデリック・ハーズバーグ氏は、ある理論を発表しました。それが二要因理論と呼ばれる「動機づけ―衛生理論」です。組織運営では、非常に大事な考え方なので、ぜひこれを機会に覚えてください。従業員満足度とは、あるものが満たされると従業員は「満足」し、それが不足すると、「不満」になるというような単純な理論ではありません。従業員満足度とは、従業員の「満足」に影響を与えるものと「不満足」に影響を与えるものは、それぞれ別のものが原因であるという理論です。人間の欲求には以下の二種類あるといわれます。①苦痛や欠乏状態を避けたいという回避の欲求(衛生要因)②周囲から認められたい、自分を成長させたいなど成功への欲求(動機づけ要因)従業員満足度はこの二つの欲求への満足度で測ることができます。わかりやすく言いますと、職場のマイナス要因を取り除けば満足するかというと、「不満」は解消されても満足度は最大まで上がりません。逆に、達成感などのある仕事により「満足」を感じても、マイナス要因が残っていれば、「不満」は解消されません。たとえば、職場が臭いことに従業員が不満を感じている場合は、空気清浄機を置くなどで「不満」は消えます。しかし、満足するわけではないのです。従業員を満足させるためには、別の「満足」を上げる要因にも目を向ける必要があります。二要因理論を知ることで、従業員満足度を上げて社内を改善する方法がいろいろと見えてくるでしょう。【■POINT■従業員満足度が、いい人事システムの根幹を支える。】

□いい人材が集まる〝強い〟採用システム

従業員満足度が上がれば、あとはいい人材を採用するだけで強い人事システムの完成です。採用は大きく分類すると三つの工程に分かれ、各工程はそれぞれ、まったく違う考え方が必要です。すべてを同じ考えでやると採用に失敗します。その採用の工程とはこの三つ①選考準備(求める人材像の設定や、面接官の教育など社内整備)②選考(面接などで求める人材と照らし合わせる)③求人募集(効果的な求人募集をして応募者の質を上げる)この三つに力を入れることで、いい人材が集まる〝採用システム〟が完成し、入社後も立ち上がりも早く、入社してすぐの離職率も減ります。しかし、採用と言うとどうしてもこの中では「③」に注力する企業が多いのです。でもそれだけでは採用で絶対に成功しないことはぜひご認識ください。「①」や「②」のような土台を育てておいた会社は一年、二年と経過するごとに他社がおこなう素人同然の採用活動と大きな差をつけていくのです。特に、教育に力を入れている会社は、社員を大事にするため、面接官の教育など一見売り上げに直接関係がなさそうな所にも力を入れています。目に見える応募者の「数」を集めても本来の採用目的を達成できなければ何も意味がないのです。ゴールへの近道は、こういった見えない所に力を注ぐことです。それが他社と差がつくポイントです。【■POINT■選考準備・選考・求人募集の三つに力を入れて「採用システム」を作る。】

COLUMN①いまいる社員を攻撃してはいけない

私が本書を執筆するにあたり、懸念していることがありました。それは既存社員に対しての風当たりです。いい人材を採用するための考え方やスキルを身につけると、社内の問題がいろいろと見えてくるようになります。そして、経営者の中には、新しく優秀な社員が入社してくることで、これまで一緒に頑張ってきた社員よりかわいがる人もいるのです。中には、自社の基準に満たない既存社員を解雇したい。と考える経営者も出てきます。しかし、それは絶対にしないでください。利益を出していないからといって、これまで一生懸命頑張ってきた社員を捨てることなど誰も望んでいません。私は採用コンサルを終えた会社の経営者にいつもこう言います。「今後入ってくる社員の質がいいからと、既存社員をすべて入れ替えるなどは絶対にやめてください。そのために私はお手伝いをしたわけではないですから」と。そうするとある経営者はこう言ってくださいました。「稲田さん、自分がいままでどんなに採用を適当にしていたかがよくわかりました。昔採用した社員がもう一度いまの採用試験を受けたら正直、受からないかもしれません。でも基準に達していないからといって、私はクビにしたりするつもりはないです。昔、採用を適当にしていた私の責任だから、私には社員を基準まで育てる義務があるんです。一生懸命、教育しますよ」思わず私は涙が出ました。私はこういった温かい気持ちを持った経営者を救いたいから、いまの仕事をしています。こういった社員を家族のように思う経営者がいるから中小企業のお手伝いをしています。本書は日本の中小企業のために書いたものです。必ずいまの社員も大切にしてください。それが私の願いです。ただし、会社が変わったことにより社員本人が会社についていけないから辞めるというのは仕方がないと思っています。辞めさせたり、辞めるよう仕向けることは絶対にやめてください。

第一章のまとめ

①採用の目的とは「会社がさらに利益を出すこと」である。これを常に頭に入れておこう。②採用の失敗が生む本当の損失を知ることで、採用活動に真剣に取り組まなければ、会社は経営危機に陥る。③採用の視点を一か月後などの目先に向けるのではなく、数年という期間で考えることで、求める人材像が明確になり、将来の人員構成を考えるキッカケとなる。④採用でもっとも失敗する理由が「妥協」。しかし、妥協して採用した結果、失敗した場合の採用の損失を考えること。⑤不況を感じない会社とは、お客さまが集まる仕組みと、人材が集まる仕組みを作り、運営している会社である。⑥人材が集まる強い人事システムを持つ会社は、従業員満足度(ES)という点も考えている。いや、むしろ考えなければ会社に未来はない。

第二章採用活動のカイゼンをしよう!

□KAIZENという素晴らしい言葉を知ろう

KAIZENを、日本語で書くならカイゼンや改善と書きます。カイゼンという言葉の意味を知らない日本人はいないでしょう。しかし、この言葉が意味する行動を、仕事に取りこまなければいけないと思う社員は何人いるでしょうか?KAIZENという言葉は、インターネットの辞書であるウィキペディアの英語版にも掲載されている言葉です。自動車業界におけるトヨタの躍進を見て、「トヨタの強さは一体何なのだ?」と世界中が注目したことから、一気に有名になった日本語です。たとえば、本書のなかで自分の会社に導入したいものが何かあるかもしれません。それを導入することが採用活動のカイゼンです。しかし、カイゼンできたから「あ〜よかった」で終わってはいけません。カイゼンは今後も常におこなっていくべきものなのです。カイゼンをやめた段階で、その会社の成長はそこまでで止まってしまいます。本書で学ぶ、採用基準、選考の方法、求人の方法。これらをすべて導入したら終わりではなく、カイゼンを重ねることで強い会社が出来上がります。中小企業は採用活動をそれほど頻繁におこなわないでしょう。しかし、あまり頻度の少ない業務だからといって、過去のやり方にカイゼンを加えなければ、人手が欲しいからと、とりあえずハローワークに無料で求人を出して、満足してしまうのです。そのようなやり方でこれまで採用に成功していても、再現性はなく、ただ運がよかっただけです。採用の仕組みを作っておかなければ今後、必ず経営に悪影響が出ます。いまの仕事をもっとうまくやる方法はないのか?この視点を持つことで会社はもっと成長し、社員もどんどん成長するのです。【■POINT■カイゼンをしなければ、会社は成長しない。その意識が大事。】

□採用活動のカイゼンでは

具体的にカイゼンをどうやればよいのでしょうか?そのために、知っておいていただきたい言葉があります。それがPDCAサイクルというものです。PDCAサイクルとはPlan(計画)―Do(実行)―Check(評価)―Act(改善)というものを回すことを言います。成長しない会社の共通点は、この中のCheckがないのです。カイゼンというのは、実行したことを振り返ることで生まれます。PDAというサイクルでは生まれないのです。では、採用活動のC(評価)とはどのようにすればよいのでしょうか?今回の採用活動は応募者の「数」が前回より一・五倍になったから「成功」だと言えないことは、もうご認識いただいていると思います。採用者の「数」や応募者の「数」を指標にしてはいけないのです。重要なのは「質」です。採用活動を振り返り評価した結果、応募者の「質」が前回より上がっている場合は、求人活動に関して「成功」だったと言えます。しかし、もっと応募者の「質」を上げたいと思ったら、この求人活動の中でカイゼンすべきところを探す必要があります。たとえば、応募者に実際に会った際にカイゼンの意識を持てば、応募者が会社のことを誤解している点や、質問内容からも求人方法でカイゼンすべきところがわかります。また、選考に関しても入社後の社員を見て、メンタル的なところを見たいなど事前にどうしても知りたい項目が出てきたら、新しい適性試験を導入するなども一つの案です。選考フローすら、変えてもいいのです。カイゼンやPDCAは工場など製造の現場で使われる言葉ですが、人事を含めすべての業務において重要な考えなのでぜひ、全社員が意識するようにしましょう。このカイゼンの意識と明確な企業理念が存在し、それらを理解し体現している社員がいれば、会社は自動的に成長します。【■POINT■採用活動のカイゼンポイントは、応募者が持っている。】

□人が定着しない本当の理由は何か?

「社員がすぐに退職して困る……。長く働き続ける人や、辞めない人を採用したい。どうすれば定着率の高い人材を採用できますか?」こういった相談が私のもとによく寄せられます。あなたの会社はどうですか?そもそも社員の定着率が悪いのには、五つの理由があります。①募集時の情報と実際の就労環境に差がある。②人間関係が悪い。③労働環境が悪い。④評価、給与環境が悪い。⑤会社が社員を大事にしてくれていない、この会社にいても成長できないと、社員が感じている。定着率が悪いのは、ほとんどの場合、この五項目のどれかが理由です。しかし、採用活動だけで改善できるのは一番最初の「募集時の情報と実際のギャップ」をゼロにすることだけです。すべての問題を採用だけで片付けようとするのがまず間違いです。これは弊社が作っているような、入社後の仕事が容易に想像できる詳しい求人ページ(ホームページ)などがあればある程度解決します。しかし、そのほかの項目は採用活動とは関係なく、社内の問題を解決するしかないのですが、人事担当者はつい、こう発想しがちです。【間違った例】社員の定着率が悪い↓すぐに辞める社員を採用するのが悪い。↓すぐに辞めない社員を採用すればいいんだ!つまり、こういう論理展開はありえないのです。【■POINT■採用活動で改善できるのは、募集時の情報と実際のギャップだけ。】

□デキる退職者から、退職の理由を聞き出そう

そもそもすぐに辞めない社員を雇うというのは、ほかに行くあてがないような社員を雇うことでしょうか。社内環境を改善しなければ、いい人材を採用するほどすぐに辞めます。いい人材ほど他社にすぐ転職できるからです。「辞めない人を採りたいという指標を採用活動の中に入れてしまって、ほかに転職できない人材を採りたいのですか?」というと、それは違うはずです。ちなみに、こちらが正しい論理展開です。【正しい例】社員の定着率が悪い↓なぜ定着率が悪いのか?↓退職者の同僚から彼らの退職理由の本音を聞いてみよう。↓なるほど。では次に、退職者本人から本音を聞いてみよう。↓なるほど。そういうわけか……。あなたは右記の仕組みを社内に導入できますか?一番のネックが「退職者本人から本音を聞くことはできるのか?」ということでしょうが、これが案外できます。電話をするのは人事担当者でかまいません。「職場環境の改善をしたいから退職の理由を教えてほしいのですが」と退職して数か月がたった人に、電話をするだけです。このとき、職場の元上司が電話をするのはダメです。退職者は本音を言いません。ちなみに電話をするときは、在職時にデキる人材だった人にしましょう。基本的に退職者は退職時に、会社に本音を言いません。でも数か月たつと、いまの職場のことしか考えませんし「職場の改善をしたい……」と切り出せば、「あのとき、本当は……」と本音を言ってくれやすいのです。【■POINT■退職の理由を明らかにし、職場を改善できる仕組みをつくろう。】

□採用担当者がよくする五つの言い訳

採用を経験したことがあれば、ほとんどの人が採用にうまくいかなかったときに一度くらいはこんな言い訳を言ったことがありませんか?①面接のときはいいと思ったんだけどな。②ウチの業界は人気がないから応募が少ないんだよね。③ウチは知名度がないから、優秀な人なんて来ない。④応募があってもロクなのがいないけど、背に腹は代えられない。⑤採用にお金をかける余裕はないから。どうでしょうか?採用でうまくいっていないとき、これらの言い訳を思わず口にしていませんか?なぜ、これを言い訳だと私が言い切るのか、これから詳しくご説明していきます。厳しいようですが、これらの言い訳は、私から見ると、・採用への社内意識が低い。・求人募集のやり方がまずい。・面接を適当にしている。のどれかにあてはまります。つまり、ここにはすべて、社内で解決できる問題が並んでいるだけです。いまから一つずつ、その言い訳をつぶしていきましょう。【■POINT■五つの言い訳は、社内を改善することでつぶすことができる。】

□応募者や会社の人気に責任転嫁する

「面接のときはいいと思ったんだけどな〜」採用した後に、思っていた人材と違ったときに、面接官や経営者がよく使う言い訳です。「面接でだまされた」と応募者に責任転嫁する人もいます。結論から言いますと、「面接力」がなかったというだけです。求める人材像の設定をやり直し、面接のやり方を見直しましょう。またこういう会社に限って、選考回数が非常に少ないのが特徴です。弊社のお客さまは平均して六次選考までありますし、多いところでは八次選考までします。なぜ、そこまでするのでしょうか?少ないほうが企業と応募者のお互いにとって楽なのはわかりますが、選考ごとにそれぞれ見る項目が違うので、その回数がどうしても必要だからです。書類選考もせずに面接一回で内定を決めていたら採用で失敗するのは当然です。「ウチの業界は人気がないから応募が少ないんだよね」応募者の数は、本来の採用目的とは関係ありません。いい人材を採用できるのであれば、応募者は逆に少ないほうがいいのです。「ウチの業界は人気がない」という考えのもとになったものは何でしょうか?。そうです。人気がないというのは過去の採用活動で応募がなかったこと等が理由となり「人気がない」と思いこんでいるか、同じように採用で失敗している同業他社との発言の中で出てきたかのどちらかでしょう。もし、本当に人気がない業界であれば、すべての同業他社が人材難となるはずですが、実際は採用に困っていない会社が必ずあります。そことの違いを探すことがやるべきことです。もし、百歩譲って、業界に人気がないとしてもそれほど関係ありません。自分たちでは気づいていない自社のウリを明確にし、それを効果的なやり方で、求人として伝えることで応募者の心に届くのですから。【■POINT■応募者に責任転嫁をせず、社内に原因を探す。】

□知名度がないから優秀な人が来ない

「ウチは知名度がないから、優秀な人なんて来ないよ」こちらもよく耳にする言葉です。知名度がなくても優秀な人材を採用できますし、弊社のお客さまは中小企業ばかりですから、どの会社も知名度はありません。でも、集客の仕組みを導入すれば、その業界での知名度は上がってきます。しかしお客さまにとっての知名度と求職者にとっての知名度は違うという認識をお持ちください。求職者にとっての知名度を上げれば、応募者は増えます。そして、求職者全員に知名度を上げる必要はなく、ターゲットとしている求職者にだけ知名度を上げればいいのです。たとえば弊社の採用の場合ですと、「福岡で人材採用コンサルタントになりたい人」にだけ知名度を上げればいいのです。そのときに重要なのが、求職者にとっての探しやすさと、業界内での自社の立ち位置を明確にすること。そして、ホームページを上手に活用することで知名度は勝手に上がります。もし、信じられないようでしたら目の前の私がいい例です。ブログとホームページを活用し、弊社を発見しやすくしたことでこのように出版のお話をいただけたわけです。中小企業の場合は、不特定多数に知名度を上げる必要はなくターゲットとなる求職者にだけ知名度を上げられるようホームページを上手に活用してください。これは新卒採用でも同様です。知名度や会社規模に関係なく新卒採用はできますし、当然ながら弊社のお客さまも新卒採用をしています。【■POINT■お客さまにとっての知名度と求職者にとっての知名度は違う。】

□応募者の質が低い

「応募があってもロクなのがいないけど、背に腹は代えられないからね」応募者の質が低いということですから、この場合は、求人方法に問題があるとわかったわけです。問題がわかれば解決策が見えるわけですから、むしろおめでとうございますと言いたいです。気をつけていただきたいのは、「求めている人材が来ない」というのは、原因ではなく結果だということです。ここでは、「なぜ来ないんだ?」と考えて、外部要因の責任にしなければ、見えなかったものが見えてきます。そして、「背に腹は代えられない」とか「いまは人手が足りないから」というのは、採用の目的が「頭数の補充」になっています。妥協して採用した場合、あとで会社の首を絞めることになります。もしどうしても人手が足りない場合は、その期間のみ「人材派遣」などを活用しましょう。人材派遣は高いと思うのであれば、もう一度、「採用で失敗したときの損失」を考えてみてください。どちらが高いかすぐに判断できると思います。また、「採用にお金をかける余裕はないから」という言い訳ですが、求人といえばハローワークを活用し、「応募者は無料で集めるもの」という認識が植え付けられている会社で多い発言です。こういった会社は「出ていくお金(コスト)」にのみ目が行きやすく「お金で買えない時間」や「社員が売り上げをよくも悪くもする」という考えの認識が甘い場合が多いです。採用にお金をかければいい人材が採れるわけではありませんが、お金を少しはかけなければ、いい人材を採用できる確率は下がります。お金で時間と労力と採用失敗時の損失を買えるとしたら会社にとっては安いものなのです。もし、この言い訳をいまでもお持ちなら、今一度、採用の損失の項目をよくお読みください。採用にはお金をかける余裕はないが、採用の失敗による損失にはお金をかける余裕があるということですから。【■POINT■五つの言い訳が頭をよぎったり、周囲の人が言ったら、黄色信号と思え。】

□不教の連鎖から脱却するには

外資系の会社で面接をするとき、どんなことをすると思いますか?いきなり答えを言いますが、面接のポイントについて本社から事前に教育があって、複数人で複数回、面接をします。理由は簡単で「これが理にかなっている」からです。では、日本の企業の99%は中小企業ですが、ほとんどの企業で面接をするとき、どうなっていると思いますか?悪い例①(面接官の依頼)上司「悪いけど明日、面接に出てくれないかな?いやいや。難しいものじゃないよ。ただ同席して気になったことを応募者に聞けばいいから。はい、これが履歴書ね。軽く読んどいて、よろしく」次の日のことです。部下は頭がよいところをアピールしたいので、張り切って応募者のアラ探しをし、気になることを面接でくまなく聞いた結果、圧迫面接になってしまいました。結果、内定辞退数が一人増えました。「ある能力を確認したいから、その質問をする」のです。でも、求める人材像もはっきりしていないのに、気になることをただ聞いているだけなら、単なる尋問になりかねません。面接はロジカルにしないとただの尋問です。悪い例②(面接官の依頼)「明日、面接があるから同席してもらえるかな?次回からやってもらおうと思うから今回は勉強だと思って、私のすることを見ていて、次回からひとりでやってね。大丈夫だって!そんなに難しくないから」次の日、面接に同席した部下の面接官は、応募者より上司の言動に注目し、そして、ただ質問内容を一生懸命にメモするのみでした。応募者は何か変だなと思い、無視されている気がして、感じの悪い企業だと思いました。こんなことをしていても、ただの作業員が増えるだけで、型どおりの質問しかできない、金太郎あめ面接官の出来上がりです。本当の「教育」は、ぶっつけ本番でやり方を教えるものではありません。「何でそうするのか?」を理解してもらうことです。確かに経験値を重ねて、結果仕事を覚えるというやり方もあるかもしれません。しかしながら、応募者は一生に一回のチャンスと思って面接に臨んでいます。その機会を社員の練習台として使うような、ずさんなことをしてもいいのでしょうか?

悪い例③(事務の人への指示)上司「明日、面接があるから応募者が来るので、応接室に通して。お茶?ああ、そうだね。じゃあお願い」事務の人が、採用活動に慣れている人ならよいですが、経験が浅いなら応募者視点の欠如です。実はほかにもいろいろと伝えなければいけないことがあります。悪い例④(面接後のやりとり)上司「私は元気があってよさそうだと思う。君はどう思う?」部下「そうですね。受け答えもしっかりできていましたし、人柄もよさそうですし、いいのではないでしょうか」これは、典型的な日本企業の面接判定場面です。この会話を聞くと、その企業の求める人材像がまったく考えられていない、勘と経験の面接になっています。これらの悪い例は、挙げるとキリがないほどあります。なぜ日本では、面接を教育するという場面が少ないのでしょうか?これには理由があります。「不教の連鎖」、実は、私が作った言葉なのですが、これは、組織の人材の質が落ちていく原因の一つです。これ、気づかないと怖いことですよ。組織の質が年々下がっていきますから。ここで、ちょっとショックなお話をしますが、「虐待の連鎖」はご存じですか?「虐待を受けて育った子供が大人になって子供を持ったとき、子供に虐待をしやすい」もしくは、こうです。「虐待をしている親は子供時代に、虐待を受けていたことが多い」これは事実です。同じように「不教」つまり、「教えず」は連鎖するのです。【■POINT■不教の連鎖とは、教えられていないから教えられない負の連鎖のこと。】

□不教の連鎖はどのように連鎖していくか

【A】自分がちゃんと教わっていないから、人に教えられない。【B】自分がちゃんと教わっていないから、体系的に理解できず、教え方が下手。【C】自分がちゃんと教わっていないから、人に教える必要はないと思っている。【D】自ら学んでもらうために教えない。こういうのが「不教の連鎖」です。【C】は上に立つ人ではありません。それぞれの人生で蓄積された知識の差を理解していません。「ノウハウを人に教えたくない」このような個人プレーに走る考えを組織的にどうするかが鍵です。【D】のようなタイプは、職人の世界に多くいます。このやり方を否定はしませんが、弟子が師匠を超えるには、多大な時間がかかります。この中で多いケースが、【A】と【B】です。特に、【B】(やり方しか教えられない)が多く、入れ替わりの激しい【B】の会社で口頭でOJT→OJT→OJTを繰り返すと人材の質がどんどん落ちます。※OJT(OnthejobTraining)理由は簡単です。体系的に教えるマニュアルなどがあって初めてOJTが生きるからです。会社は人材で戦うしかありません。その入り口である採用って重要だと思いませんか?「不教の連鎖」をぜひあなたの力で止めてください。本書がそのお役にたてれば幸いです。【■POINT■不教の連鎖は、まずあなたが変わることで止められる。】

COLUMN②福岡にある知名度ゼロの個人事務所の軌跡

私は人材採用コンサルタントで、知名度のない中小企業に優秀な人材を採用することが私の仕事です。弊社がその際に活用するツールがインターネットです。実はインターネットはうまく使うと恐ろしい力を持っています。その活用方法を私は四年かけて学びました。パソコンの使い方ではありません。目に見えないインターネットというものをどう活用するかです。私も二十九歳で開業した当時はかなり苦労しました。私が持っていたのは、採用に関するノウハウと社会保険労務士の資格と一台のパソコン。そして一生懸命にためた百五十万円の開業資金だけです。当時は事務所を借りるお金もなく自宅が事務所でした。百五十万円の資金から生活費もまかなう必要がありましたのでお金に余裕などなく、コネもなければ、お客さまも当然いませんでした。開業当初はまったくの無名。当然、稲田なんて誰も知りません。当時のことをいま考えると、無謀としか思えません(笑)。しかし、一つだけ当時の私を褒めるところがあります。それは、マーケティングスキルやインターネットでの集客が大事だと当時から考えていたことでした。そのスキルがなければ私は自分の足で営業をしなければいけません。見込み客と会っているその営業の時間は売り上げを上げることができない時間となります。そもそも見込み客と会っても、契約にいたるかどうかはわかりません。そうなると見込み客と会っている時間があれば、その時間を既存客にあてたほうが、コンサルという仕事上、既存客に満足していただけます。見込み客に会うのと違い、既存客に満足さえしてもらっていれば、お金は必ず入ってくる。そう考えると、自分が営業をしなくてもお客さまのほうから自分を見つけて、お客さまのほうから相談や依頼をいただく仕組みを作る必要がありました。そのような理由から私は、最終的にはホームページとブログを活用することに行き着いたのです。そして、試行錯誤をした結果、ブログやメールマガジンを見たお客さまのほうから「相談したい」と依頼があるようにまでなりました。まったく無名だった私が国立大学などから講演依頼を受けたり、開業三年で出版できることになったのも、この仕組みのおかげだと思います。

そしてこのときの経験がいまいきています。私が知名度のない中小企業に応募者を呼ぶ仕組みを導入できるのも、知名度ゼロだった福岡にある小さな個人事務所に予約待ちが出るまでにした実績からきています。私に相談をする会社は、少なくとも当時の私よりは知名度があるわけですし、既存のお客さまがいるので当時の私より楽なのです。そうして、お客さまから集客の相談も受けているうちに、集客コンサルの契約などもいただくようになり現在に至っています。集客をした結果、売り上げが上がると、人を採用する必要が出てきます。また逆に人を採用したらさらに売り上げを上げなければいけません。ですから採用と集客は切っても切り離せない関係なのです。採用に力を入れて、どれだけ優秀な人を採用しても、正しい集客手法を導入しなければ、いつか会社が傾いてしまいます。私としては本書をお読みになった会社にはそのようなことになってほしくはありません。いい人材が集まる仕組みだけではなく、お客さまが集まる仕組みもぜひ学んで、少しでも長く事業を継続していただきたいと願っています。次の章からは、概念ではなく実際の採用手法に入ってきます。回りくどい表現は使わずに、ビシビシ行きますから(笑)ついてきてくださいね。

第二章のまとめ①カイゼンの形とはPDCAサイクルを回すことであるが、その中で重要なのは、「C」の仕組みである。そして、改善提案を受け入れる土壌を会社が持つこと。②採用の失敗は外部要因ではなく、すべて自社内に問題があるからだと認識することで、会社が変わっていく。③不教の連鎖という恐怖の連鎖が企業を襲い組織をダメにする。教えられないのなら、教えられる外部の人に依頼をするか、教えられるスキルを身につけること。採用という場面では特に、不教の連鎖が起こりやすい。④中小企業の採用担当者の五つの言い訳を知ることで、今後、自分が言い訳を発することが減る。⑤人材が定着しないのは二要因理論に集約される。定着率を上げるためには、社員や退職者から本音の声を聞けば良い。⑥人材採用と集客は経営上、切っても切り離せない関係。人材とお客さまを呼ぶ仕組みを作ろう。

第三章会社に利益を生む黒字社員採用術ステップ1(採用準備編)

□社外広告ではなく、社内整備をする

いよいよ、採用の準備編に入りました。ここからの内容はノウハウ的な話が多くなります。これらのノウハウは多くの企業が失敗してきたことであり、あなたの会社が失敗から回避するためのノウハウです。採用に失敗した会社の損失額はわかりますよね?そのような経験をあなたの会社がする必要はありません。先人のおかした過ちと同じ道を歩む必要はないのです。なぜなら、あなたはこの本を手にしたのですから。まず、人が欲しいと思ったほとんどの会社が最初にすること。それが「求人広告を出すこと」です。はい。この時点で採用に失敗することが決まりました。そうです。人が欲しいと思ったとき、パブロフの犬のように反射的行動をして求人広告を出してはいけないのです。社外に求人広告を出すのは最後の段階です。だから本書でも最終章に書いていますが、もしあなたが一章〜四章を読まずにいきなり最終の五章だけを読んでそれを自社に取り入れても採用で失敗します。人が欲しいと思ったとき、まずは社内整備をしてください。回りくどいようですが、これが採用で失敗しないための最短ルートです。社内整備をせずに、偶然にも素晴らしい求人広告を作ることができてしまい、応募者が殺到したとします。それで自社に合ったいい人が採用でき、入社後、結果を出せるかというと残念ながらそうはいきません。可能性は確かにゼロではないですが、それはただの運であり、いい人材が集まる仕組みではないために再現性はなく、次回の採用で失敗するでしょう。まぐれは何度も続きません。採用の土台を作ってから求人する。この順番をぜひ守りましょう。【■POINT■人が欲しい→求人を出すと、採用で面白いほど失敗する。】

□企業理念と行動の明確化

このステップを実行に移すときには、できる限り社員を巻き込んでください。そうしなければ実際の会社に沿ったものができません。またこのステップは、採用を始める前に最初におこなうことでもあります。つまり、「企業理念と行動を明確」にしなければ、採用活動を始めてはダメなのです。理念がなければどのような人材が欲しいなどと言っても、それは寝言でしかありません。中小企業の経営者に「企業理念を考えてください」と言うと、どうしても難しくとらえます。額縁に入れて、社長室に飾ってあるような「一つ、われわれは社会と地域のためにたゆまぬ努力を……」というものを考えがちです。でもそういったものは、言葉はキレイでも自分の会社とほかの会社との差別化をしにくくありませんか?この企業理念をしっかりと作り、全社員が意識すると、業績も上がり、会社がどういう行動をすればよいかもわかるので、経営選択の判断材料にもなります。人材採用においては、企業理念をわかりやすく応募者に伝えることで、その理念に共感し、会社と同じ夢を持つ応募者が面白いほどに増えてきます。たとえば、弊社は企業理念として、「中小企業の採用の失敗をなくし、企業・応募者の双方にとって幸せなよりよい社会をつくること」を掲げています。ですから私も、この理念に沿った仕事はおこないますし、企業と応募者にとって幸せにならない仕事はおこなわないのです。ほかに利益が出るような仕事があっても、それはほかの会社がやればいいと思っています。企業理念を難しく考える必要はありません。「あなたの会社は誰のために何をしたいのか?」「お客さまと社員に約束することは何なのか?」「これからどうしたいのか?」ただこれを考えて書き出すだけです。普段から考えていることをただ文字として書いて、伝えるだけです。これだけで採用や経営で有利になるのですからぜひ、トライしてみましょう。【■POINT■企業理念があれば〝オンリーワン企業〟のカラーが出しやすい。】

□あなたの会社は何のために存在するのか?

企業理念とは経営理念と置き換えられますが、経営理念だと「経営」という言葉のせいで、どうも全社員が意識しづらい気がします。だから「企業理念」という言葉を使っています。本当は、「私たちの企業理念」という言葉が一番いいです。企業理念などなくてもウチはやっていると考える経営者もいるでしょう。でも、企業理念がなければ「社員が何のためにこの会社で働いているかわからなくなる(存在意義)」し「判断基準がわからない(価値観)」し「会社の将来像が見えない(共有する夢)」のです。それでは、いつまでたっても上司の指示でしか動けない社員しか育ちません。そして肝心の上司も考えがコロコロ変わるのです。企業理念に関して、ある二つの企業を比較してみましょう。――人のやらないことをやり、ほかより一歩先んじて、世界を相手にする。自己の能力を最大限に発揮させ、最高の技術を持つこと(ソニー株式会社)。――私たちの使命は、生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与すること(パナソニック株式会社)。この二社は、同じジャンルの製品を作っていても、目指しているものが違います。生活と技術、そう、追い求めているものが違うのです。でも、このような理念を掲げ、社員が意識することで、ソニーらしい製品とかパナソニックらしい製品というものができますし、メーカーで働きたいエンジニアは、二社のうちどちらの会社が自分に合うかを判断できるのです。あなたの会社は何のために存在するのか?これをぜひ、考えてみてください。採用の目的と同じ「利益」ではないと思います。創業して間もないころは、「利益を追求する」という目標もあるでしょうが、ある程度の利益が出るようになり、会社のステージが上がると、「会社が利益のためだけに存在するのではない」と思うでしょう。利益のためだけであれば、社員はついてきません。実は第一章で話さなかったことがあります。それは最初からその話をしても理解しづらいからです。もし第一章で気づかずに、ここで気づいたのであれば、本書を読む間にあなたのステージが上がったことを意味します。そう、それは採用のもう一つの目的です。一章で採用の目的は「会社がさらに利益を出すため」だとご説明しました。なぜならば、その意識がなければ、採用活動を安易に考えてしまうためです。一章、二章は採用の重要性をあなたに説明する章だったのです。いきなり、いまからお話しする内容をお伝えしても「キレイゴトだ」と思ったかもしれませんから、あえてこの三章まで、もう一つの目的については、話すのを待つことにしました。そうです。採用にはもう一つ、重要な目的があります。人を採用するのは、「企業理念に沿った行動をするため」です。ただ、これだけを目的に掲げると、どうしても採用で失敗しやすくなります。採用の目的として「利益」というキーワードは絶対に忘れてはいけないのですが、「企業理念」も同じように重要なのです。これも「動機づけ―衛生理論」と同じ考えです。採用の失敗を回避するために、「利益」の考え方が必要ですし、動機づけのためには「企業理念」の考え方が必要です。私はこの二つをハーズバーグ氏を参考に「採用の二要因理論」と名付けました。どれだけ優秀な人材を採用しても、自社の考えに合わなければ、企業理念に沿った行動ができないために、お客さまからも信頼を失い、結果として利益を減らすので採用で成功したとは言えなくなります。企業理念に関しては、ザ・リッツ・カールトン・ホテルやジョンソン・エンド・ジョンソンが導入しているクレドも参考にしてください。また、このように企業だけではなく、個人単位でも同じように理念を持つことをおオススメします。ご興味があればインターネットを使ってマイクレドと検索してみましょう。【■POINT■採用の二要因理論を意識すれば、あとは合うか合わないかだけである。】

□価値観や企業理念の共有?浸透?

企業理念というのは、会社の行動の判断基準ですし、就業規則よりも身近な会社のルールです。これまで自社で企業理念や行動指針を明確にしていなかったのであれば、明確にし、選考基準に入れることで、今後は、それらを納得し価値観を共有できる人が入ってきます。一から社員に浸透させる必要もないのです。しかし、既存社員は別です。新しく作った企業理念はなかなか浸透しません。場合によっては、既存社員との対立も生まれるかもしれません。だから企業理念は、在籍する社員を巻き込んで作っていただきたいのです。経営者を含め社員が自ら考えたものであれば、その導入を嫌がる人は少なくなります。人は自分が決めたことは受け入れるものです。それでも変化を嫌う人というのは、必ず社内にいるものです。そしてそれにひるまずに企業理念を導入することにより、どうしても納得できない人は自然と辞めていきます(辞めさせてはいけません)。長く働いた人が辞めるというのはつらいことですが、会社の進むべき道を示して、それに従いたくない人が辞めるのは、会社が生まれ変わる過渡期には仕方のないことなのです。ですから、企業理念は会社が大きくなる前に、なるべく早く明確なものを作っておきましょう。後に回せば回すほど、導入に時間と労力がかかります。今後採用する社員に関しては、求人募集時から企業理念を一貫して伝えておくことで、会社の価値観に沿った行動をしてもらいやすくなります。そうすることで、将来的には自分たちで考え、行動できる強い組織が出来上がります。私は採用手法として、この企業理念や経営者の思いを伝えることで、それに共感した応募者が集まるいなだ式採用術(感情採用)を導入しています。クライアントからも「採用後の教育が本当に楽になった」といった喜びの声をほぼすべての会社からいただいています。教育が楽になるということは、成長が早いということです。ぜひ、あなたの会社も参考にしてください。【■POINT■新しい社員には、会社の価値観に共感してくれる人を採用しよう。】

□一緒に働きたくない人材とは

「御社が求める人材とはどのような人ですか?」と私が質問をすると、皆さんが大体、こう回答します。「頭がよくて」「やる気があって」「コミュニケーション力も高くて」「協調性もあって」「この仕事が好きで」「まじめで長く働いてくれる人」企業は星の数ほどありますが、多くの企業がほとんど同じ人材像を挙げます。あなたの会社はどうでしょうか?その回答が悪いとは言っていませんが、野球なら「エースで四番で足も速くて守備も上手、さらにケガをしない選手」を求めているわけです。これだけでは、本当の求める人材像を把握することができません。ここで出てくるのが、裏の裏は表という考え方。そう、逆からの視点です。つまり、「求めない人材像」を明確にするのです。要は、一緒に働きたくない人材をはっきりさせることです。これを明確にすると、その項目に該当しなければ、その人を採用してもいいことになり、少なくとも赤字社員を採用するという失敗を回避することができます。「求める人材像の明確化」の実際のやり方としては、「求めない人材像を明確にする」というステップを踏んで、自分の会社の採用必須条件を洗い出します。この求めない人材像が明確になればなるほど、採用の精度が上がるのです。そこから任意条件を追加し、求める人材像を明確にするのです。これは、動機づけ衛生理論をベースにした「人材像の二要因理論」というところです。このやり方は、普段の生活にも応用できます。たとえば恋愛に例えるとわかるでしょう。自分の理想の異性像ばかりを定義し、それを追い求めている人は、彼氏・彼女ができたり、結婚するまでに時間がかかります。自分の中で理想の異性を定義することももちろん大事ですが、一緒にいたくない異性像も定義することが大事なのです。それに付き合う前に気づくことができれば、不幸な恋愛も減りますので、「異性を見る目がない」と思っている人はここを注意しましょう。【■POINT■欲しい人材だけではなく、欲しくない人材も明確にする。】

□実際に紙に書き出してみる

弊社では新規契約をしたお客さまにまずヒアリングをするのですが、その項目の中に、この「一緒に働きたくない人材は?」という項目があります。どういう人が欲しいですか?と聞くと、どの経営者も同じような回答をしますが、「一緒に働きたくない人材は?」という質問をすることで、各社それぞれ独自の価値観を持っていることがわかります。部署ごとにも違うほどです。皆さん、過去の誰かを想像しながら話していることが多いのですが、それが大事なのです。理想の人材ばかりに目が行くと足をすくわれますから、その場合は理想の真逆をみることが大事です。「協調性がある人が欲しい」というのはよく聞きますが、裏を返すと「協調性がない人はダメだ」ともとれます。「コミュニケーション力のある人がいい」ではなく、「コミュニケーション力のない人はダメ」なんです。もし、面接や選考の段階でそのようなそぶりが見え、それがNGの人材像であれば、ほかのよいところがあっても、即不合格の判断をしたほうがいいでしょう。試しに、あなたが隣で一緒に働きたい人がどんな人か、紙に書き出してみてください。その後、あなたの隣で一緒に働きたくない人を挙げてください。先ほどと違う項目が出てくるでしょう。このように視点を変えるだけで、真実が見えてくるのです。そして、その項目を紙に書き出すことが大事です。紙に書き出さなければ他の人と共有できません。頭の中で思っていてもダメなのです。紙に書き出すか書き出さないかで、採用の成否すら分けますので、必ず紙に書き出しましょう。【■POINT■裏の裏はオモテである。】

□会社に合わない人材を見抜く

こちらは概念的なものですが、重要な考え方なので、あなたの会社でも意識してください。それは、いくら能力が高くても、人間がよくても、会社に合わない人もいるという点です。会社とはビルやオフィスをさすわけでもなく、会社名をさすわけでもありません。企業理念を実現するための人の集合体が会社です。ですから、会社も、社風も業績も歴史も「企業理念とそこで働く人」が作っていきます。人の集合体である以上、会社とは、「感情や価値観を持つ大きな人」だともいえます。人にはそれぞれの人生があり、歴史があり、価値観があり、目的があります。ですから、すべての人と感情の部分で仲良くなれるということはありえません。これはあなたもご理解いただけるのではないでしょうか?会社が大きな人だと理解し、世の中の人全員と感情部分でわかりあえるわけではないと認識することで、応募者がいくら優秀でも自社に合わない人材である可能性がある点もご理解いただけるのではないでしょうか?それを理解することさえできれば、優秀な人材の定義や求める人材の定義に必ずこれが入ってくるはずです。そう「自社の価値観に合うかどうか?」です。そして、「自社の価値観」とは企業理念(会社のあり方)と、そこで働く人たちの価値観です。ここを無視した採用活動では、能力の高い人を採用できても、自社の価値観に合った行動をしてくれない限り、いつか退職することになります。価値観に合うかどうかを、選考で見抜くためには、当然ながら採用する側に、「明確な価値観」がなければ判断のしようがありません。ですから企業理念やそれに沿った行動とはどういうものなのかをわかりやすく書き出しておく必要があるのです。それがあれば、選考では、応募者が企業理念に合致するかどうかだけを見るだけでよいのです。【■POINT■自社の価値観に合わない人を採用してはいけない。】

□採用基準に〝客先に合う人材〟という視点を入れる

採用をするときに、求める人材像(求めない人材像)にお客さまからの視点がちゃんと加味されていなければ、せっかく人を採用しても、会社と応募者にとって不幸な結果になることが多いということをお話ししましょう。それでは採用基準に〝お客さま側の視点〟を入れるとは、どのようなことでしょうか?たとえば、営業職採用の場合、面接時に第一印象の悪い人を採用すると、その面接官が受けた同じ第一印象を今度はあなたの会社のお客さまが感じることになります。そう考えると、清潔感のない人や、笑顔がまったくない人、声が小さい人、相手の気持ちや空気が読めない人を採用すると、その人は面接時の状態でお客さまと接することになります。さらにお客さまと関わる場面は、取引先だけではありません。人事総務や経理など事務系の職務の場合は、社員がお客さまと同じ立場となります。社員にたいしてどのような対応をするのかで部署のイメージも決まるし、問題があった場合は、上司の責任ともなるのです。多くの企業で失敗例としてよくあるのは、経理部門の男性社員の採用です。この職種にコミュニケーション力や人間的な魅力を採用基準に入れなかったために失敗した会社は、多いのです。社内的な業務にも、ぜひ、お客さまの視点も導入してください。あなたの会社が、どれだけ仕事ができる人だと思って採用しても、お客さまからの評価が悪ければ、採用の目的の一つである「利益」に貢献できないわけです。それでは結果として採用は失敗といえます。面接の場で目の前にいる応募者を採用するということは、その応募者に会社の看板を背負わせて、お客さまと会わせるということです。そうなると、その応募者の行動すべてが、会社の行動となります。お客さまの視点を考えるということは、その応募者に会社の看板を背負ってもらうべきかどうかを考えるということです。【■POINT■客先に合わない人材を採用してはいけない。】

□専門知識や技術があるから何?

中途採用で人を採用するときに、専門知識や技術だけを見てはいけません。多くの会社が失敗するのがこの点なのですが、必要とされる技術の専門性が高ければ高いほど、「過去の会社での経歴や経験があるから」「自社で即戦力になりそうだから」と安易に採用を決定してしまいます。中途採用で失敗する理由の多くがこれです。本当に大切なのは専門知識や技術だけではなく、コミュニケーション能力や考え方などその人の持つ人間性なのです。なぜかというと、ある程度優秀な人であれば、専門知識などはあとから経験したり勉強したり、資格なども机の上での勉強で補うことが可能ですが、コミュニケーション能力や人間性の底上げは容易にできることではありません。なぜならそれは教えて身につくという能力ではないからです。仕事はできると思って採用したけれど、人として問題があるから、結局仕事ができず、客先でトラブルを起こしたり、社内でも浮いてしまったりと、トラブルが起こります。専門知識や技術があるということはいいことなのですが、それだけを理由に合格させてはいけません。「仕事ができる」ようになるには、能力だけでなく、環境や人間関係も絡んできます。職場が変わってすぐ即戦力として働ける人がめったにいないのは、仕事をするには周りに順応することや、コミュニケーションを取ることがどうしても必要になってくるからです。即戦力が欲しいと、技術にフォーカスして採用してしまいがちなのですが、結局、大切なのは総合力です。その人の人間性、根底にあるもの、どんな人と付き合ってきてどんな人と生活して、どんな考えを持っているか、そして自社の価値観と合うかということのほうが重要です。中途採用をするとき、専門知識や技術だけでなく、コミュニケーション能力や人間性を絶対に無視してはいけません。そもそも本当に組織人として優秀であれば前の職場でも活躍しているはずです。その人がなぜ転職したかということはよく調べましょう。【■POINT■大事なのは専門能力だけでなく人間力であることを忘れない。】

□採用基準を確立する

この話は、いままでお話ししてきたことの、まとめとなります。実際に欲しい人材像、欲しくない人材像をこれまでに明確にしました。会社の企業理念や価値観を明確にしました。お客さま側の視点も明確にしました。選考とは、これらの要素を持っているか持っていないかを確認する場なのです。次の二つを比べてください※営業職と事務職/研究職と営業職/新卒採用と中途採用それぞれの職種を採用するときに、評価するポイントは同じでしょうか?当然違ってきますよね。もっともわかりやすい例ですと、新卒採用と中途採用では「専門スキル」を求めるレベルが大きく違います。つまり、全職種を同じ基準で見てはいけないのです。職種ごとに基準を作ることは非常に大変な作業ですし、知識が必要です。では、あなたの会社独自の採用基準を作る場合は、どのようにすればよいのでしょうか。まずは、企業理念に関しては、全職種共通です。しかし、部署ごとに別の理念がある場合は、そちらも加味します。そして、募集職種ごとに自社内やお客さまの視点から欲しくない人材像を書き出します。これらは必須の採用基準です。この必須採用基準とベター(あれば尚良し)基準を合わせたものを採用基準として、各項目の達成ラインを決めましょう。そしてもし、選考でこの必須基準をクリアしていない場合は、潔く不合格としましょう。必須採用基準をクリアしていない場合、迷って採用してもよい結果を生みません。「この採用基準を紙に書いて共有し、会社の公式基準として保存すること」このステップが重要になります。この本をちゃんと順番どおりに実行していれば、もとになる情報は手元にあるはずです。あとはそれを紙に書いて共有し、保存することで完了します。頭の中にあっても再現性はありません。【■POINT■受け入れ部署によって違う「採用基準」を紙に書いて明確にする。】

□採用に成功したいなら〝採用しない〟こと

この本で、あなたは採用の改善方法や、ノウハウを学ぶわけですが、採用力をアップする知識やノウハウを身につけても、第一章で学んだ「会社が人を採用する本当の目的はさらに利益を出すことである」ということを忘れないでいただきたいのです。必ずこの目的を念頭に置いて、採用活動をしてください。会社が採用活動に失敗する主な理由として、「急いで人を採用したい」と思うことで生じる判断ミスがもっとも多いのです。ですから、いつも「いい人がいたら採用しよう。それ以外は不合格にしよう」と考えをシフトすることこそが採用に成功する道となります。焦っては絶対にいけません。正しい求人募集をしていれば、いい巡りあわせは必ずあります。採用しようと思えば思うほど、妥協が生まれ、結果、採用で失敗しやすいのです応募者から見ると、敵とも取れるような発言をしていますが、会社はボランティアではありません。目的達成のためには根本的な考えを変える必要があるのです。たとえば、採用活動に時間がかかり、足りない人手を補充するために採用を急ぐより、その間は派遣社員などの活用をおオススメします。さらに派遣社員の中には、いまの社員より優秀な人材がいたりします。そうなったときは、その派遣社員を正社員として採用するとよいでしょう。(本人が嫌がるかもしれませんが……)嫌がられた場合は、会社に何か問題があると思って、内部を見直したほうが賢明です。【■POINT■「急いで採用しよう」という焦りが採用を失敗させる最大の理由。】

COLUMN③採用の準備に時間をかけることが採用成功の秘訣

「採用は準備がすべて」これほど重要なことを、なぜいままであなたに誰も言わなかったのでしょうか?「採用基準の作り方」これほど重要なことを、なぜいままであなたに誰も教えなかったのでしょうか?「今度新しく人を採用したいと思う」このような内容を求人広告会社でも友人の社長でもいいので相談してみてください。ほとんどの人たちは先ほどの二つをあげることはないと思います。これが日本の中小企業の採用を取り巻く現実です。私はいつもこう言います。「採用に成功したいのなら、準備が大事です。そこに時間をかけてください。求人募集は最後に考えることです」と。こう聞くと、「面倒くさい」と思うのもわかります。「選考のことを考えても、応募者が来ないとどうしようもないから、やっぱりまずは集めるほうに力を入れたい」とおっしゃる経営者もいます。でも、厳しいことを言うようですが、これまでそうしてきた結果、採用に失敗して私のところに相談をしにきているんです。もし、自社の採用を見直したいのなら、まずは、「採用の準備」に時間をかけて「明確な採用基準」を作ってください。その際は、一人で考えずにこの本の内容を共有して取り組んでみましょう。あなたが周りに教えてもいいし、会社で何冊か買って読んでもらってもいいと思います。常識とは多数決です。ですから、新しい考え方は非常識なのです。しかし、この非常識な考え方に真実があるときがあるんですよね。採用=求人という常識により、誰が一体得をするのでしょうか?応募者?会社?違いますよね。誤った常識をぜひ変えて、ほかの採用に困らなくなった会社のように躍進していきましょう。

第三章のまとめ①採用活動の構築で大事な点は、社外広告の見直しではなく、社内改善。求人広告などは採用活動全体の中のほんの一部でしかない。②企業理念を作り浸透させることで、採用は成功しやすくなり、自分たちで考えて行動する社員を育てることができる。③欲しい人材を考えるだけではなく、欲しくない人材を考えることで、本当の意味での求める人材像が完成する。④中途採用における失敗で多い理由、それが、専門知識があるから。人間力が重要なことを知り、正しい採用活動をしよう。⑤「採用に成功したいなら採用しないこと」という究極の考え方が、自社で採用の失敗を減らす方法である。⑥ここまで忠実に実行することで自社の「採用基準」が完成する。それは宝であるから採用に関わる人全員で共有しよう。

第四章会社に利益を生む黒字社員採用術ステップ2(選考編)

□書類選考を確立する

中小企業では、書類選考を実施していないところが多いのです。しかし「書類選考をしないこと」は、採用経費を無視したやり方です。小さな会社ほど書類選考をしません。「」、。。①全応募者を面接に呼ぶことになる=面接基準に達しない応募者も来る。(交通費・面接時間×面接官の人数・適性試験時間・面接日程の遅延)②履歴書、職務経歴書をじっくりと読む時間がない。(面接の場で初めて書類を見ることになる)③事前シミュレーションをすることができない。(受け入れ部署との社内調整や、懸念項目などを列挙する時間がない)どれも人材採用にとっては致命傷です。よい人材を採用したいのであれば、書類選考は絶対に必要なのです。中途採用やパート採用で職務経歴書をもらわない中小企業もありますが、当然NGです。特に中途採用の場合は、職務経歴書がないと何も判断できません。新卒採用の場合は、職務経歴書がないので自社で作ったエントリーシートなどを活用するのがよいでしょう。提出された書類は宝の山なので、そこから面接で聞く質問を決めたり、基準に達していない人を書類で不合格にすることで採用コストを減らし、面接の精度を上げることができます。なお、履歴書には必ずカラー顔写真を貼って提出してもらってください。履歴書に顔写真がないと面接後に応募者を思い出すこともできませんし、顔写真から手に入る情報は多いのです。【■POINT■書類選考で、採用コストを大幅に削減し、面接の精度が上がる。】

□適性試験を導入するメリットとは

中小企業ではあまりなじみのない適性試験ですが、適性試験(ペーパー試験)は必ず導入することをおオススメします。なぜかというと、適性試験は面接で見ることのできない知能指数(IQ)や国語力、数学力、ストレス耐性、性格など、実にさまざまなものをバランスよく測定することができるからです。お金は確かにかかりますが、実際に使えば、リターンのある投資だとわかると思います。適性試験にはSPIやエゴグラムなど各社いろいろと種類がありますが、一人当たりにかかるコストは二千円—八千円です。第一章でもご説明したとおり、人材採用に失敗したときにかかるコストに比べれば、微々たるものですよね?適性試験はどんなものも、ある程度応募者の性格や特徴がわかるので、試験の結果から、面接だけではわからない応募者の側面を知ることができます。いまはWEB上で簡単に受験できるものもあるので、面接前に自宅で受験してもらうと、会社に呼んで試験監督を用意する必要もなく、交通費を支払う必要もないのです。よく、どの適性試験を導入するのがよいかと聞かれますが、SPI系か、SHL社、NOMA総研、内田クレペリンのどれかを用いればいいと思います。それにストレス耐性を見る試験を別途追加しておくとさらに精度が上がります。ただし、適性試験の結果は面接で判断できない箇所を補ってくれるものであり、適性試験の結果だけで合格させてはいけません。また、適性試験は多くて二個くらいまでの実施にとどめないと、性格試験を二回したりと、応募者にむだな負担をかけてしまいますのでご注意ください。【■POINT■適性試験は、面接では見えない応募者の能力をチェックできる。】

□採用基準と連動した選考フローを確立する

採用をおこなうときは、自社の採用基準をまず作り、それを判定するために選考の流れを見直すというのが正しい順番です。復習になりますが、いきなり求人を出すのではなく、正しい採用の手順は、①欲しい人材の明確化。②その欲しい人材&欲しくない人材を見抜く選考フローの導入や教育。③欲しい人材に響く求人方法の導入。です。この順番を誤ると採用で失敗します。また、あなたの会社の採用基準と連動していない選考も意味がありません。悪い例として、とりあえず他社がやっているからと小論文やグループ面接などをしてしまうなどがあげられます。面接というのは、適当にいい人を見るというのではなくて、自社に合った人を選ぶのが目的です。第三章でお話しした、欲しい人材像を明確にしていれば、選考フローではそれを見抜くことだけに集中すればいいのです。必ずしも何でもできる人がいいかというとそうでもないですし、必要とされるスキルも職種によって違うので、職種ごとに採用基準を作り、選考フローと連動させてください。いい人を見抜くためにはどういう選考フローがベストかを考える必要があります。一般的な中小企業のオススメ選考フローとしては、書類選考、適性試験、面接を最低二回は実施し、実際に一日二日職場を体験してもらうことです。内定前に会社と応募者の両方が納得して入社日を迎えるというのが理想です。職場体験をすることで、応募者も会社を見極められるので、雇用のミスマッチが起こりづらくなります。【■POINT■いい人を見抜くために、会社の選考フローを考えてみよう。】

□あなたの会社の面接方法はどれ?

選考フローの中で、重要なものはやはり面接ですが、面接にもいろいろな種類と組み合わせの仕方があります。大きな会社だと一次面接にいきなりグループ面接を持ってきたりしますが、これは採用担当者の労力を減らしたいためです。中小企業がよい選考をしたいのであれば、オススメしません。グループ面接は相対評価です。応募者を並べて抜きんでた人を見るだけでは、そのときのグループにより応募者はラッキーだったり、アンラッキーだったりします。本当に個人の能力を見たいのなら、個人面接をオススメします。もし、グループ面接を導入したい場合は、一度、個人面接をして合格した応募者のみにするといいでしょう。そのあとにグループ面接を持ってくるというのはありかと思います。ほかにも自社の中で高業績をあげている人の行動特性を調べて、採用活動に生かすというコンピテンシー面接というのもありますが、コンサルタントなどプロが入らないと導入は難しいです。市販の本の中では、コンピテンシー面接がはやっていますが、これを導入したいとしても、面接官にスキルが必要ですし、面接時間が長くなります。もし導入したいのであれば、選考に三回の面接を導入し、二回目で実施するなど工夫をするといいでしょう。すべての面接は「面接官の質問にたいして回答をしてもらう」そして最後に「応募者から質問してもらう」というのが基本的な流れです。【■POINT■面接方法は自社に合ったものを選ぼう。】

□質問項目を事前に勉強する

「面接の場は、何を聞いてもいい」と思っている人は少ないでしょうが、それでは逆に、「何を聞いたらダメか?」ということを理解していますか?ここでは面接で聞いてはいけない質問についてご説明します。厚生労働省の指針や職業安定法などで、収集してはならない個人情報が定められています。また、男女雇用機会均等法にも注意する必要があります。アルバイトだからOKなど雇用形態や職種に左右されません。(ちなみに、違反した場合は訴えられたり、懲役や罰金を科せられます)①本人に責任がない情報・本籍出生地に関する質問「例実家の最寄り駅はどこですか?」・家族に関する情報(職業、続柄、収入、資産など)・居住環境に関する情報(住宅の種類、間取りなどの情報、近隣の情報)・生活環境や家庭環境に関すること「例シングルマザーですか?」②思想の自由に反する情報・支持政党・宗教・購読新聞、購読雑誌、愛読書・労働組合、学生運動、消費者運動などの社会運動・尊敬する人物③セクシャルハラスメントに関するもの・将来の結婚や出産の件など女性が嫌がる質問すべてなど、聞いてはいけないことは多岐にわたるので把握しましょう。【■POINT■面接時にこれらの質問をしてはいけません。】

□質問のテクニックを知る

面接で応募者の情報を引き出すには、面接官も質問のテクニックを磨くことが大切です。どのような質問をするかによって、面接の精度が変わってきます。ここで面接時の質問テクニックを語りだすと本が丸々一冊あっても足りないので、基本的なところだけをご説明します。質問の仕方には、大きく分けて二種類があります。・オープン(OPEN)質問・クローズ(CLOSE)質問この二つです。クローズ質問は、イエスかノーで答えるしかない質問で、オープン質問は、自分の言葉で答える必要がある質問です。(例)Q「おすしは好きですか?」……クローズ質問Q「おすしのネタで何が好きですか?」……オープン質問。基本的に面接で使う質問は、応募者の情報を引き出すためにオープン質問を使います。クローズ質問ばかりの場合は、面接官の質問力が足りませんので勉強が必要です。クローズ質問は、何も考えなくても答えることができますし、応募者は「違う」と言いづらいため、面接官が知らないうちに答えに誘導していることもでてきます。イエス、ノーだけでは応募者のことを知ることはできません。【■POINT■面接では基本的にはオープン質問を使って質問する。】

□面接では応募者の考え方+行動パターンを確認する

オープン質問で応募者の考え方を知った後は、「いつ」「どこで」「どうやって」など、応募者がどのように行動したかということを確認していきましょう。応募者はうそをつくこともありますが、実際の行動を聞けば、過去に何をしたかなので、うそをつきにくくなります。たとえば、応募者が面接で「御社が第一志望で、ぜひ入社したいと思っています」と回答したとしても、面接官が「なんでそう思ったのですか?」や「弊社のどんな製品に興味がありますか?」、「弊社の仕事はどんなものだと思いますか?」というような質問をさらにすると、本当は自社に興味がなかったり、まったく調べていないことがわかったりします。このように質問を掘り下げることによって、応募者のことが見えてくるのです。質問→回答で終わらずに、質問→回答→さらに質問という流れで応募者の行動や価値観、考え方を知ることができます。気をつけなければいけないのが、「なぜ?(なんで?)」はストレートな質問なので、聞き方や使い方を誤ると圧迫面接となってしまいます。その場合、「なぜ?(WHY)」を「なにが理由?(What)」にすると少し優しくなります。また応募者の本音を引き出すために、ベタな質問をしないというテクニックもあります。ベタな質問というのは、たとえば「◯○さんの長所はなんですか?」などです。こういった場合は「◯○さんのどんなところがいいと友達に言われますか?」など言葉を換えただけで、同じ内容ですが、応募者は用意した回答がしづらくなります。大切なことは、応募者があなたの会社に合った人材であるかどうかを確かめるということです。くれぐれも圧迫や尋問にならないように気をつけましょう。【■POINT■質問を掘り下げて、応募者からうまく情報を引き出そう。】

□質問項目を確立する

面接とは基本的には質問の場です。ですから、質問が面接の精度を左右します。この質問内容は、面接の場で考えるのではありません。事前に考えておく必要があります。質問テクニックに関しては、先ほどのページでご説明しました。では、実際にどのような質問をすればよいかですが、採用面接における質問とは、応募者の能力や思考を知りたいためにするものです。当然ながら「面接で知りたい応募者の能力」は会社によって違います。ここでは、必ず聞いておいたほうがよい質問をあげておきますので、使うかどうかは自社の採用基準をもとに判断してください。・志望動機(業界を選んだ理由、その中から自社を選んだ理由)。・自己PR(本人が得意と思っている分野、ただし、実績の確認も必要)。この二つは応募者も必ず用意してきていますので、そこを質問してあげましょう。ベーシックな質問ですが、応募者が用意してきた質問を話させて、緊張を解いてあげるというのも面接では重要です。いきなり始まった瞬間からハードな質問をすることはおススメしません。その他に、・企業理念と同じ価値観かどうかを見る質問(企業理念を聞いて感じたこと、そして応募者が自社の企業理念を体現できるのであれば、そう思う実績を確認)。・前職の退職理由(自社を辞める理由にもなる)。・専門知識を尋ねる質問(自社独自)。・希望する給与額(給与提示後の辞退がおこらないように先に希望を聞きます)。・前職の職場での対人関係や仕事の仕方。などが面接での代表的な質問です。基本的には同じ質問を全応募者にしてください。それ以外に聞きたいことは個別質問として聞きましょう。またここは非常に奥が深く、本書とは別に「採用面接(選考)」に特化した内容の本も書いています。詳しくは私のブログをご覧ください。【■POINT■事前に何を聞くかを決めなければ面接にならない。】

□面接シートの作成はなぜ重要か

あなたの会社は面接時に、面接シート(面接評価シート、面接票など)を使っていますか?もし使っていないのであれば、「人材採用はフィーリングでギャンブルだ」と言っているようなものです。三段論法で理由を説明しましょう。①よい人材を採用したいなら『正しい選考』で人材を見極めなくてはならない。②『』、『』。③『』、『』。少々強引でしょうか?しかし、面接シートが採用の精度を上げることは、紛れもない事実なのです。私のとったデータでは、中小企業の九割近くが面接シートを使って面接を実施していません。しかしながら、大企業で面接シートを使っていないところは逆に皆無です。人を採用するのであれば、企業規模やアルバイトなど職種を問わず、面接シートは必須です。面接シートがないと、このようなデメリットがあります。①記憶に頼った面接で、尋ね忘れが発生する。②勘と経験に頼った面接になる。③面接官ごとに面接内容のばらつきがある。④全部の面接内容を覚えることはできない。⑤面接経験がない人は面接ができない。⑥面接のカイゼンができない。面接シートを用いていないと、これだけのリスクを背負うことになります。詳細は次ページで説明しましょう。【■POINT■面接シートを使わないと、人材採用はギャンブルになる。】

□なぜ面接シートを使わない面接がリスキーなのか?

①記憶に頼った面接で、尋ね忘れが発生する。面接では、必ず聞いておくべき質問というものが存在します。また、会社ごと(職種ごと)に聞いておきたい質問は必ずあります。面接シートを用いない場合、それらすべての質問を覚えておく必要があります。もしあなたが面接の経験者なら、「聞き忘れた!」ということを経験したことがありませんか?その後、電話で質問するわけにもいきません。尋ね忘れがあって採用すると、入社後にトラブルになることもあります(例転勤がありますが大丈夫ですか?などの質問)。②勘と経験に頼った面接になる。何度も言っていますが、「頭がよさそう」「元気」「まじめそう」などと、漠然とした評価をして合否を判定してはいけません。せっかく作った採用基準を面接の場と連動させるためには面接シートに盛り込む必要があります。③面接官ごとに質問内容のばらつきがある。一次面接、二次面接、最終面接など、それぞれの選考ごとで質問内容にばらつきがないことが理想です。たとえば、同じ一次面接を受けている応募者の中で、全員質問内容が違うということはあってはいけません。面接官は一人ではなく、複数の目で見ることが重要です。ところが、複数で面接官をおこなうと、面接官Aは毎回、ある質問をするのに、面接官Aがいないときは誰もその質問をしないということも起こります。質問の内容を統一することで、判断がブレづらくなり面接の精度が上がります。そのためには面接シートが必要です。④全部の面接内容を覚えることはできない。これは、人間には記憶の壁があるからです。一般的に人の頭の中は、一度に三個までは理解できる構造になっています。これが面接の場合、三人までは内容を覚えています。四人以上になると、それぞれがどんな人だったか正確に記憶することが難しくなります。さらに、日が経つと記憶が薄れてきますので、何人も面接をしていると一週間前、二週間前の面接内容を忘れていることがあります。

⑤面接経験がない人は面接できない。面接官も緊張します。特に新人の場合は、応募者よりも緊張していることがあります。何も見ないでいきなり面接できるでしょうか?答えはNOです。⑥面接のカイゼンができない。PDCAサイクルの「C(Check:評価)」と「A(Act:改善)」ができないことです。成長しない会社は「C」から「A」の流れができていません。採用でも同様です。採用した人を見て、面接で聞いておけばよかった質問が出てきたとき、「こういった項目を次回から質問しよう」と、その質問項目を新しく面接シートに盛り込むことで、面接のカイゼンができます。ところが面接シートがないと、面接を改善することもできないのです。採用活動におけるCは、実際に採用した人の結果を確認することです。応募者を採用後、「思ったよりもよい人物ではなかった」とします。つまり、採用に失敗した場合、そのときにやるべきことは、「なぜ採用に失敗したか」を振り返ること。そのときに使うべき資料は……当然「面接シート」です。入社後二か月後、ダメだと気がついたとき、三か月前の面接を正確に覚えていることは不可能です。【■POINT■面接シートがないと、これだけのリスクを負う。】

□面接シートがあれば大丈夫!

ではない前ページでご説明したようなリスクを回避するためには面接シートが必要です。ですが、「面接シートを作ればすべてが安心!」というわけではありません。「面接シート」は採用を成功させるための、一つのツールでしかないのです。どれだけ面接シートがよくても、それを扱う面接官のスキルが低いとか、十分な教育を受けていない場合は、意味を成しませんので注意してください。面接シートは「ツール」です。ツールというものは、それを使いこなすスキルがある人が使ってはじめて意味をなすものです。最後によくあるご意見として、「面接シートは、面接中と面接後のどちらで記載したらよいでしょうか?」「面接中に書きながら質問すると、応募者の顔をしっかり見られない」「応募者に緊張感を与えたくないから、面接シートは持ち込みたくない」「面接シートを応募者から見られていないか気になります」等のご意見があります。面接シートのアドバイスとして、複数で面接をし、一方が質問をしているときに面接シートに記入しましょう。ただしこのとき、下を向き過ぎてはダメです。面接シートはバインダーなどに挟んで応募者から見えないようにしてください。また履歴書に直接書きこむのは絶対におやめください。応募者に履歴書を返すこともあります。【■POINT■本書の最後に面接シートのプレゼントがあります。必ずご覧ください。】

□面接官の教育とは

本書をここまで読み進めていただいたということは、あなたが本書から何かしら得るものがあったのだと思います。しかし、本書から手に入れた知識やノウハウを会社の中で、あなただけが持っていて、他の面接官が知らなければ、あなたがいないところで面接に失敗しています。それは会社にとって決していいことではないですよね?第二章で不教の連鎖をご説明しました。社内で採用や面接に関しての不教の連鎖を止めるためには、面接官の教育や採用に関わるすべての人の教育が必要なのです。そのときに役立つのは本書で学んだ人材採用の正しい知識でしょう。あなたが面接官の教育をできる立場であれば、ぜひ一度、社内で面接をする人を集めて研修や講義を開いてください。考えやノウハウの共有をすることで、組織とは強くなっていくのです。もし、そのようなことをしなければ何が起こるのでしょうか?それは面接時に、・履歴書を見ながら適当に質問をしたり・聞いてはいけない質問を聞いてしまったり・聞かなくてはいけない質問を忘れてしまうなどのトラブルが今後も起こり続けるのです。不教の連鎖をぜひ、あなたの手で止めてください。研修時に使う資料としても本書をお使いください。応募者にとって面接官とは、会社の印象を決める重要なポジションです。ですから、面接官が失礼な態度を応募者にとってしまうと、選考辞退や内定辞退も起こり、さらにその噂は広まり今後の採用活動や集客にも影響を与えてしまいます。そのようなことを防ぐためにも、あなたが学んだこの内容を面接官となる人、全員に必ず教育しなければいけません。面接官の教育をしていない人を面接の場に上げてはいけないのです。なぜなら面接官は会社の顔でもあるのですから。【■POINT■教育をしていない面接官を、面接の場に絶対上げてはいけない。】

□面接をロールプレイングしてみよう

四章をここまで学んでいただければ、選考や面接に関しての知識をかなり手に入れたはずです。で、ここでノウハウを学んだとして、いきなりぶっつけ本番でやるのはどう思いますか?ありえませんよね(笑)。応募者は学校の教授や友人、コンサルタントを活用して面接の練習をしてきます。それなのに、選考する企業側は何もせずに面接をしてもよいのでしょうか?答えは否ですよね。そこで、必ずやっていただきたいのが、知識を学んだあとに、ロールプレイング(予行演習)をすることです。面接官二名と応募者役一名で、模擬面接を社内でおこなってください。やればわかりますが、うまく質問できず棒読みになったり、緊張してまったくいい雰囲気を作れなかったり、マニュアル的な面接になったりと、さまざまな失敗を体験するでしょう。しかし、それでいいのです。失敗をするのなら社内のロールプレイング時にしましょう。これを応募者の前、つまり本番で失敗すると取り返しがつきません。聞いてはいけない項目など口が滑ったら一発で終わりです。①採用の心構えがわかりました。②求める人材像も作りました。③面接や選考のことも勉強しました。④さあ本番を迎えるぞ。ではなく、必ずロールプレイングをしてください。弊社は面接官研修で、必ずこのロールプレイングを入れています。ですから面接官の教育時に御社もロールプレイングを入れておきましょう。ロールプレイングをするかしないかで面接の精度が決まります。面接官一人当たり最低三回です。本番で失敗しないためには大事な工程です。【■POINT■応募者の前で失敗するわけにはいきません。予習が大事です。】

□営業担当者としての心構え

面接は営業の場でもあります。なかなか面接官は自分たちが営業担当という意識を持ちづらいのですが、応募者をお客さまと考えることで、営業担当者としても接しなければいけない意味がわかるのではないでしょうか?採用活動を通して、会社が応募者を選ぶだけでなく、応募者からも、会社は選ばれています。面接官が失礼なことをすれば、選考途中での辞退や内定辞退もありますし、インターネットの掲示板などに書かれたりします。選考で不合格となった人に、会社や商品のことを悪く言われないためにも、採用に関わる人全員が営業担当であるという意識を持ってください。実はこの意識を持てれば、採用活動全般について、カイゼン箇所が次々と見えてくるのです。たとえば職場の環境です。玄関が汚い、床が汚い、タバコ臭い、男くさい、徹夜みたいな人もウロウロしていたとします。面接に来た際に、そんな職場を見た応募者はどう思うでしょうか?決して会社を良く見せろというわけではないですが、見られている、選ばれているという意識を持ってください。こういうところには、優秀な人ほど気がつくものです。カイゼンすべき場所はカイゼンしましょう。たとえば、面接の前には応接室や玄関、通路を掃除したり、空気清浄機を置いたり、応募者にお茶を出してもいいでしょう。応募者側の視点になれば採用活動の視野が広がります。応募者の立場に立った採用活動をすれば、ほかの中小企業とかなりの差がつけられます。「面接官は選ぶから応募者より偉い」もし、このような間違った考えを持っている面接官がいたら、面接官から外しましょう。そういう人をお客さまの前に出してはいけません。内定辞退や選考辞退が多い会社は、この辺の意識が低いこともあるので、その場合はこれを機会にぜひ、見直してみましょう。【■POINT■採用にかかわる人は、自らが会社の営業担当だという意識を持つ。】

□どうやったら現場に採用の基本ルールを浸透させられるか

この本を手にしているあなたの職場に、本書で学んだような正しい面接の仕方を教えられる人はいますか?おそらくほとんどの人が該当しないでしょう。たとえばあなたの会社の人事部長さんが、「正しい面接の仕方」を理解していなかったとしましょう。人事部長さんの面接手法は、履歴書を見て、気になったところを聞いていくだけの面接だとします。その人事部長さんが間違った面接手法を、社内の面接官に教えてしまうのです。面接官全員が間違った面接手法を学ぶため、会社全体の選考力が下がってしまいます。もしあなたの職場に面接のことを教えられる人がいなかったなら、あなたは一からそれを職場に浸透させていかなければなりません。また、採用とは経営者や人事だけが考えることではなく、全社の協力が必要です。たとえば、一緒に働きたい人、働きたくない人を書き出すなど、求める人材像を絞り込む工程がありましたが、当然ながら、経営者や人事ではわからないことがあります。現場(受け入れ予定部署)の意見を聞く必要があるのです。採用の重要性を全社に浸透させるためには、この最初の段階から、現場を巻き込んでいきましょう。人事と現場に距離がある会社もありますが、「いま採用の改善でこんなことをしています。○○さんのご意見を聞きたいのですが」と意見を求められて、嫌な気持ちになる人はいません。勝手に考えて決定事項を伝えたりするのではなく、一緒に採用活動を構築してください。現場の意見に採用成功の鍵があるのです。たとえば、受け入れ予定部署の方に本書を読んでもらい、下地をつくってから意見を聞くと、喜んで協力してくれると思います。どうしても現場の教育が難しいというのなら、いなだ事務所でも面接官研修をやっています。このような研修で意識を変えていくというのも一つの方法ですね。【■POINT■最初から現場を巻き込むのが、意識を変える重要なコツである。】

COLUMN④ここまでするんですか?

私が直接、お手伝いをしたお客さまと、採用に失敗し続ける会社には大きな違いがあります。その違いは会社規模とか社長の経営能力とか、おこなっている仕事が魅力的かどうかなどではありません。それは、「ここまでするんですか?」と限界に対する意識の違いです。弊社は、採用コンサルの契約依頼があっても、受託基準がありお受けできないことがあります。いなだ式採用術(感情採用)は応募者が日本語を読める人であれば業種や職種などは関係ないので、受託基準は、職種などではなく「経営者の意識」や「社員への思い」に関するところです。たとえば、「採用にここまでする必要はない」というラインをどこに置いているかで見ています。お金をかけるかどうかではなく、意識の問題なんです。わかりやすくするためにちょっと質問をします。「採用は会社の将来を担う仲間を迎え入れる大切な仕事だ」と思っているA社と、「採用は目の前の仕事をさばくために人手を補充する仕事だ」と思っているB社。あなたが応募者ならどちらの会社に入社すると幸せになると思いますか?当然、A社ですよね。これでB社だと答える人は自分を痛めつけたい、かなりマゾ的な人だと思います(笑)。これからもわかるとおり、応募者は自分を大切に扱ってくれる(正確には扱ってくれそうな)会社を選びます。B社のような採用意識を持つ会社は、従業員満足度が低い傾向にあるため、いい人材が集まるシステムが機能していません。結果として急な退職やトラブルが多く、人材に関して労力やコストがかかっています。私としてもそういった会社のお手伝いをしたくないですし、もし手伝ってしまったら、不幸な応募者を増やすだけになります。これは弊社の企業理念に背くことになるので受託できません。

このA社とB社を分けている意識の違いが、先ほどご説明した「採用に対して労力をつぎ込む限界をどこに置いているか」です。この意識の差が採用の成否を決めます。そうです。この限界が低い会社は採用に成功しないのです。逆に言うと、この限界が高い会社は、正しい知識とノウハウを導入するだけで採用に比較的楽に成功します。たとえば、「採用で失敗しないためには実技試験を必ず実施して、面接では見られない所を確認することが重要です」こう私が言ったとして、もしあなたが、「そこまでするの?」と思ったら危ないですよ。採用の失敗に片足を突っ込んでいます。この場合、成功する思考と正しい質問は「どうやって実技試験をやればいいの?」だと思いませんか?実技試験の導入方法は思ったより簡単です。パソコンを扱えることが必須であれば、課題を与え、パソコンを使って三十分で資料を作ってもらう。接客業なら、接客のロールプレイングをすればいいのです。料理人なら厨房で包丁を握ってもらいます。経理なら、経理ソフトを触ってもらいます。トラック運転手ならトラックを実際に運転してもらう。などなど。要は実際の仕事内容に即した自社オリジナルの実技試験を入れるだけです。やれば驚くほどの情報が入りますし、やらなければ入社後に「あれ?こんなはずでは」と後悔する。採用の成否を分けるのはこういったことなんです。もう一度、採用で失敗したときの損失を考えてみてください。失敗しないためであれば、採用に全力を尽くした方がいいと思いませんか?ただし、会社側が求めるだけではなく、「社内見学」や「先輩社員と話す機会をもうける」など応募者からも会社のことを判断できるよう全力を尽くしてくださいね。採用に関して「ここまでするんですか?」という考えには気をつけましょう。

第四章のまとめ

①採用基準だけがあっても採用に成功しない。その採用基準を実際の行動に落とし込んだ選考フローを確立する必要がある。②書類選考の重要性を理解し、正しいやり方を自社に導入することで、面接時の精度が上がる。③面接シートの重要性を知り、自社に導入することで人材採用の精度は格段に上がる。面接シートがなければ、面接などしてはいけない。④適性試験を導入しよう。⑤面接官の教育がなければ、どれだけ良い仕組みを作っても運用されない。⑥採用活動は導入段階から現場を巻き込んで、会社としてよりよいものを作っていこう。

第五章会社に利益を生む黒字社員採用術ステップ3(募集編)

□求人募集≠採用活動の間違い

人は通常、自分固有の思考方法や自分の過去の経験に基づいて物事を判断してしまいがちです。これが経験のない、人材採用などの場面ですと、次にとらわれやすいのが、「常識」という考えです。そして、いまの人材採用の常識は「人手が欲しい→求人を出す」ということではないでしょうか?「まず一日も早く求人広告を出して人を呼びましょう!人を呼ばないことには、採用などできませんよ」とどこへ相談しても言われます。そのアドバイスどおり、経営者や人事担当の方は、人材紹介会社やハローワーク、フリーペーパー、折り込みチラシ、WEB求人媒体などに求人広告を出します。自社ホームページに簡単な募集要項を公開して、求人募集をする会社もあるでしょう。それが実は……採用に失敗する会社がとる方法なのです。採用の失敗はこのような流れで起きます。【失敗する採用のフロー】人手が欲しい→求人を出す→応募がある→面接をする→合格→入社→思ったよりいい人材ではない。採用で成功するためには、「人手が欲しい→求人を出す」このフローの間に、本来おこなうべきことがあります。それがこちらです。【成功する採用のフロー】人手が欲しい→欲しい人材像を明確にする→選考内容の確立→面接官の教育→効果的な求人を出す。このように、求人広告を出す前に、まずは社内的にやるべきことがあるのです。【■POINT■「人手が欲しい→求人を出す」というやり方は必ず失敗する。】

□中小企業がターゲットとする応募者層は?

中小企業が大企業よりいい人材を採用することはできると思いますか?この質問はクローズ質問ですがイエス・ノーでお答えください。メルマガですと、ここでシンキングタイムと称して一ページ開けたいところですが、さすがに本では出版社の目が怖くてできません。先ほどの質問に答えるとすれば、「イエス」が答えです。なぜなら、中小企業を選ぶ人と、大企業を選ぶ人は別だからです。つまり、求人募集の際に、大企業を選ぶ人をターゲットにしてはいけません。応募者にはいろいろな考えの人がいて、大企業で働くよりは、小さな会社で活躍したいと望む人がいます。また社長と一緒に会社を大きくしたいという夢を持つ人もいます。そもそも企業規模そのものを気にしないという人もいます。そういった人をターゲットとして自社のウリとなるメッセージを発信するということが、大事なことです。応募者目線に立つとわかるのですが、応募者は会社を比較しています。応募者には就職したい会社の候補が何社もあって、いい人材であればあるほどその中から選ぶことができます。会社側が、常にほかの会社と「比較をされている」という意識を持つことが大切です。応募者が候補に挙げている会社と勝負をしなければいけない。まずはその意識を持つことが大事です。冠(会社名)や会社規模でしか就職先を判断できない大企業志向の応募者は、中小企業内で誇りを持って仕事をしてくれません。そうなると当然、アウトプットにすら差が出てきます。「冠」ではなく「会社」にほれる人を募集することです。【■POINT■中小企業の採用では、大企業志向の人を相手にしない。】

□魅力的な「中小企業のウリ」を考える

大企業がまねできないウリとは、例えば次のようなものです。①自分が歯車の一つではないと感じられるほど幅のある仕事が多い。②経営者(経営)と近く、経営を身近に見られる。③社員を家族と思っている温かい社長がいる。④管理職になるまでの昇進スピードが速い。そして中小企業がアピールすべきウリは「経営者」と「企業理念」です。中小企業にはユニークな考え方を持つ経営者がたくさんいます。この経営者のキャラクターを前面に出して、この人のもとで働いてみたい。この会社に入社したいと思ってもらうことが大事です。その会社の経営者が会社を大きくしてきた背景には、何かしらの思いや考えがあるはずです。夢を持って起業したでしょうし、苦労したことや、失敗や成功もあったはずです。また今後の夢もお持ちのはずです。そういう事実を前面に出して、応募者に伝えてください。そうすることで、大企業や他社とは違う自社独自のストーリーが出来上がります。そのストーリーは誰もまねできないオンリーワンのウリなんです。そういったオンリーワンに応募者は共感し、他社ではなくあなたの会社を選ぶのです。私はそうやってお客さまの求人募集を成功させてきました。中小企業は経営者が看板です。ですから応募者を引きつけるためにも、魅力的であり、人格的にも社員から慕われるような行動を普段から取ることも大切です。【■POINT■大企業がまねできないような「自分の会社の魅力」を考えてみる。】

□応募者の質を上げる

必要性とは第四章までお伝えしたことを実行すると、社内の選考力は格段にアップします。ところが、これは新たなる問題を生むのです。それは、「選考に合格する人がいない」「応募者の質が悪い」というような問題です。そして、このような考えになってしまいやすいのです。【間違った考え方】「基準が高すぎたのかな。どれだけ応募があっても、このままでは人が採れない」そしてせっかく作った採用基準を下げる→採用に失敗する。これだとせっかく作った採用基準が無駄になってしまいます。正しいPDCAサイクルをもとにした考え方はこちらです。【正しい考え方】「いまのやり方だと応募があっても全員が落ちてしまっている。選考のやり方は間違っていないのに、何が悪いのだろう」→応募者の質の低さ→応募者への情報の出し方に問題がある→求人方法を見直す→応募者の質が上がる→採用に成功する。面接のスキルや選考力がアップした以上、いままでどおりの求人の出し方をしていれば、必ず不合格者は増えます。場合によっては合格者がゼロとなります。そのときにカイゼンすべきは、採用基準ではなく、求人の内容です。自社のウリを伝えきれていますか?求人の出し方はいまのやり方が最善だと思いますか?ここに目を向け、応募者の質を上げる努力をしてください。カイゼンあるのみです。【■POINT■選考力がアップした以上、応募者の質を上げなければいけない。】

□応募者数が多いとよいという固定観念を捨てよ

採用で応募者数を増やすことに意識がいっていませんか?もし、そうであればそれはあまりいい考えではないと思います。なぜなら、応募者数が多いことは、決してよいことではないからです。採用の常識の中には、「応募者数が多いほうが良い」という常識がありますが、実際は違うのです。たとえば、求人広告会社からも「求人広告を出せば応募者が来ますよ。応募者の数を増やせば必然的にいい人材に出会える可能性も上がりますよ」と言われたことはありませんか?でも応募者数を指標にしてはいけないのです。第一章で説明したように、採用の目的が「会社がさらに利益を出すこと」「企業理念を遂行すること」であれば、「選考途中の人数」はまったく関係ありません。少ない応募者でも、求める人材が採れればいいのです。応募者の数にとらわれるのではなく、あなたの会社の基準に合格する人が何人いるかということを考えましょう。採用活動は、ただでさえ時間と費用を使います。採用の応募者数が多ければ多いほど、人的なコストも、採用にかかる費用もかさみます。また不合格になった応募者は、会社のファンになることは決してありません。ですから不合格者は少なければ少ないほどいいのです。究極の採用活動とは、一人の不合格者も出さずに採用することです。つまり、採用基準をクリアした応募者一人から応募があればいいのです。採用活動で不合格者を減らすことは、応募者のためにもなりますので、応募者が応募前に判断するためにも、充分な企業情報を出して採用活動をしてください。【■POINT■応募者数が多ければいいわけではない。】

□応募者の視点に立って、他社と自社を比較する

「応募者があなたの会社を就職先の選択肢の一つとしてあげるとき、ほかにどんな会社をあげますか?」これを知らないと、効果的な求人募集はできません。「他社と比べて、自社がどうか?」「応募者にとって魅力はあるのか?」「そもそも応募者の選択肢の一つとして入るのか?」このような視点を持つことが求人募集を成功させるカギとなります。なぜなら、応募者はあなたの会社以外も、就職先として考えているからです。つまり、比較されているという意識が大事です。例えば……●他社が社会保険を完備しているのに、自社にはない。●他社が給与十七万円〜としているのに、自社は十五万円〜としている。●他社があらゆる情報を提供して応募者に自社を理解してもらおうと努力しているのに、自社の情報は〝調べようとしても調べる方法〟がまったくない。●他社はホームページ上で社内の写真や動画をふんだんに使って職場をイメージしてもらおうとしているのに、自社は何も出していない。●他社は選考中に社長と話す機会があるのに、自社にはない。別に『他社よりすべての面で優れなさい!』と言っているわけではありません。しかし、他社がどのような方法で採用活動をしているかがわからなければ、自社のどの部分がウリになるのかわからないままです。ちなみに、調べることは簡単にできますので、実行しましょう。これをするかしないかで採用の成否が変わります。詳しくは次ページで説明します。【■POINT■ライバルを知らないと、採用でまったく動けない。】

□他社を応募者の視点を持って調べる

それでは次のように、実際に他社の情報を調べてみましょう。①ハローワークに行って、同業他社の求人票や求人一覧を印刷し、ライバル会社の諸条件などを調べる。②インターネット上の転職サイトや就職ナビでターゲットとする応募者の視点に立って、職種で検索をし、出てきた会社を印刷する。そして、諸条件やどのような求人文章を書いているのかを確認する。③応募者がインターネットで検索して探すことも想定して、「職種求人地域」(例:社会保険労務士求人福岡)などで検索をし、出てきた会社を確認する。ちなみに、あなたの会社は出てきましたか?応募者はこのような方法で就職活動をしています。応募者の視点に立てば、自社の求人に必要なものが見えてくるでしょう。たとえば、このようなことがありました。あるお客さまは、社会保険にいままで加入していませんでした。しかし調べてみると、同じ地域の同業他社は社会保険に加入していたのです。あなたは「社会保険がある会社」と「社会保険がない会社」の両方から内定をもらった場合、どちらに入社したいですか?条件が同じなら、別の部分で魅力を感じない限り「社会保険がある会社」を選びませんか?たとえ、あなたが社会保険のない会社に行きたいとしても、扶養している家族や配偶者、両親が反対するかもしれません。特に新卒採用では、親や家族の意見で内定辞退などはよくあります。以前はこの待遇でも応募者は来た。しかし、最近は応募者がまったくこない。この場合は、応募者が選択肢にあげている会社の求人情報を調べて印刷し、自社が公開している求人情報と見比べてみましょう。そこに答えはあります。【■POINT■他社との比較の中に、答えはある。】

□応募者に充分な情報を与えなければいけない

応募者が会社を就職先の候補に選ぶ判断基準は、会社が出している情報のみです。ところが、会社からたいした情報を出していないのに、いきなり面接で、「ウチとほかの会社の違いは何か」とか「ウチの商品のウリはなんだと思うか」などと応募者に質問したりします。応募者が調べられる情報は限られており、会社のホームページやパンフレットくらいです。しかしながら、会社のホームページは応募者ではなく、大抵はお客さま向けにつくられています。たとえ一人しか採用しなくても、応募者向けに求人ページを作って、他社との明確な違いや自社のウリ、企業理念、会社の軌跡などを応募者の立場に立って読みやすく書いてください。この求人ページは、応募者の質を上げるために必要なツールです。ですから、経営者や人事担当者が文章を書けない(書きたくない)という場合でも、採用成功のために、採用のプロに依頼してでも作ってもらいましょう。求人ページは自社の資産となるため、そこにかけたお金は、取り戻すことができます。会社が充分な情報を出すことで、応募者は会社のことをよく知ることができます。その結果、自分がその会社に合わないと思った場合は応募してきませんし、合うと思った場合は、これまでの応募者とはまったく志望意欲が違ってきます。特に、求める人材にグッとくる文章で魅力を伝えることで、求める人材が応募してくる確率が上がります。このように不合格者を減らし、求める人材の志望意欲を上げることで、応募者の質が上がるのです。つまり応募者の質を上げるためのキーワードは、「情報提供」です。【■POINT■会社が与えた情報で応募者は会社を選ぶ。】

□給与など待遇面を書かない求人募集とは?

求人募集をする際に、法的には給与など待遇面は書かなければいけないと決まっているので、給与など待遇面を書かない求人広告というのは違法です。ですが、いい求人募集というのは、給与など待遇面を消しても魅力的である求人文章のことです。試しにあなたの会社の求人募集内容から、給与など待遇面を消してみましょう。一体何が残りますか?待遇面の項目を消しても、応募が来る自信はありますか?その残った情報だけで応募してくる人は、待遇面を見て応募してきた応募者と比べてどちらが自社に合った人材だと思いますか?考えてみてください。いまの求人募集ページから、給与、福利厚生などの待遇面を消しても応募者が来るでしょうか?もしそれを消したら、あなたの会社の求人ページが白紙になったというのであれば、あなたの会社の求人募集が、自社のウリを何も伝えていないということです。それでは残念ながら応募者の質を上げることもできませんので、すぐにでも自社のウリを求人募集内容に追加してください。多くの会社が給与や勤務地、福利厚生などの一覧表をペタっと自社ホームページに貼って終わりにしています。仕事内容などは一行しか書かれていないことが多く、応募者に不親切な求人が多いと思います。企業理念や自社のウリをぜひ伝えてください。応募者が会社を選ぶ基準は給与だけではなく、給料以外の会社の魅力です。それを応募者に知ってもらって「この会社で働きたい」と思ってもらうことなのです。【■POINT■給与など待遇面を消しても魅力的な求人内容ですか?】

□応募者の心をつかめない求人募集とは?

それではここで、実際の「ダメな会社の採用ページ」の例をお見せしましょう。【職種】営業【仕事内容】弊社パッケージソフトの販売営業【応募資格】要普通免許、学歴・経験不問【雇用形態】正社員【給与】月給十八万円以上※当社規定により決定【休日、休暇】週休二日制(土・日)、祝日【標準勤務時間】九時〜十八時【勤務地】本社よく見ませんか?こういった形を。そう、「ただのデータ」です。世の中にこういった形式の求人募集が多い理由は、求人紙がこのようなスタイルだからです。だから、自社ホームページで「採用情報」として公開するときもそれをまねてしまいます。たとえば、このような悪い例のページが二十社あったとして、応募者は何を基準にその二十社の中から就職先を選ぶと思いますか?考えてみてください。ただ先を読むのではなく考えてくださいね。答えは「データ」です。このデータを基準に応募するかどうかを決めます。当たり前ですよね。会社はデータを出しているわけですから、応募者はデータで判断する。ただそれだけです。よほど労働条件がよいデータでなければ、応募者の食いつきは悪いですし、そもそもそれに食いつく応募者の質は、残念ながらあまりよくありません。つまり、こういった人間味がまったくない求人募集では心をつかめません。【■POINT■ただのデータが書かれた表を見せても意味がない。】

□「人間くさい情報」が人を引き寄せる

中小企業が採用で勝つためには、「人間味」で勝負をするしかありません。具体的な例をあげます。「社長がどんな思いでこの会社を作ったか?」「社長は今後、この会社をどうしていきたいのか?」「社長はどんな人生を送ってきたのか?」「企業理念は何か?それはどういったことなのか?」「働いているスタッフが楽しい瞬間は何なのか?」「皆はどんな気持ちで働いているのか?」「ほかの会社と違うところは何なのか?」「会社が危機的状況に陥ったのはいつか?それをどう解決したのか?」などなど。こういった情報を求人募集の中に入れてみてください。応募者は「会社が提供した情報」のみで判断します。つまり、「ただの求人データ」のみを提供しているときは、それで判断されますが、「社長がどんな人か」「会社はどんな歴史があったか」「今後、自分はその会社でどうなれるのか?」等の情報を提供することで、応募者はその情報で判断します。応募者が集まらない、いい人材から応募がないと不満を言っている会社ほど、情報を応募者に提供していません。来ないのは当たり前なんですよね。さあ、そこのあなた!ぜひ、自社の求人媒体を見てみましょう。まだ応募者に会社の情報で伝えられることがあると思いませんか?特に「人間くさい情報」を。【■POINT■応募者は会社が提供した情報で会社を判断する。】

□インターネットでの採用がもっとも安くもっとも効果がある

求人の媒体でいま現在オススメなのは、インターネットを使った採用です。これが一番費用対効果が高いです。ただ、勘違いしてはいけないのですが、インターネットの採用とはいっても、インターネットの大手求人サイトを使いなさいというわけではありません。自社のホームページ内に、会社の資産として、訴求力の高い求人ページを持ってくださいということです。紙媒体を使っていままで求人活動をしたことがある方ならおわかりかと思いますが、紙媒体でメッセージを伝えようと思ったら、必ずスペースが必要です。そしてスペースを広げると、広告費用も上がってきます。伝えたいならお金がかかるというシステムです。しかも紙媒体は掲載期間が短いのもデメリットです。同じ求人を連続で何年も掲載する紙媒体は存在しません。一週間とか十日などの短い期間で十万、二十万の予算を使ってしまうことになります。紙媒体での求人手法は、掲載期間の間に求めている人材が、求人紙を手に取り、掲載されている何百社の中から自社の求人募集を見つけなくてはいけないのです。これでは完全に運まかせです。会社の情報をたくさん伝えるためには、スペースの制限がない媒体が必要です。それを実現できるのは自社のホームページのみです。自社ホームページであれば、制作時にコストがかかるだけで、その後は掲載期間もなく、何度でも利用できるため長い目で見るとコストは最小限に抑えられます。動画を掲載したり、写真を掲載するのも自由です。この自社ホームページを使った採用手法は弊社が得意とするところで、これまで知名度のないお客さまでも採用に成功できたのは、この費用対効果が高い自社の求人ページを活用したからです。【■POINT■掲載期限や利用制限のない自社ホームページを採用に活用する。】

□会社の採用ページを見て応募してくる人は、意識が高い

新卒を採用している私のお客さまの話です。その会社はこれまでハローワークの求人しかしておらず、いい人材が採れなかったので、弊社にコンサルティングを依頼し、自社ホームページでの採用に切り替えました。同時期にあなたもご存じの大手就職サイトが驚くほど安くアプローチしてきたので、そのお客さまは試しにそちらも契約してみたところ……自社ホームページからの応募者に比べ、就職サイトから来た応募者たちの志望意欲の低さにガクゼンとされていました。それもそのはずです。自社のホームページまで見てくれる人は、志望意欲が高い人です。就職サイトではフォーマットも決まっていて、自社独自の作りにすることができません。また必ず文字数制限もあり、自社ホームページよりも応募者に伝えられる情報が少ないのです。つまり、応募者の質をこちらの努力で上げることがなかなかできないのです。あなたの会社のホームページに、この瞬間も応募者が見に来ているかもしれませんが、あなたの会社はちゃんと情報を伝えていますか?大丈夫ですか?会社のホームページを見に来てくれて、せっかく会社のことを知ってもらうチャンスだったのに、求人ページとしてまったく機能していない内容が掲載されていたら、それは本当にもったいないことです。せっかく応募者が、あなたの会社に興味を持ってアクセスしてくれたのに、そこで何も自社のウリなどを伝えずにさよならされてしまうのは機会損失といえます。就職サイトや求人サイト、紙媒体に高いお金を使って、キレイな広告を出しても、自社ホームページに来た、意識と質の高い応募者にアピールしていないようではもったいないですよね?この五章でご説明した内容をもとにぜひ、自社のホームページを見直してみてください。そして伝えられる情報を足していきましょう。【■POINT■会社のホームページから応募する人は、意識も質も一番高い。】

□ブレない一貫したメッセージ

採用以外でも大事なことですが、会社を経営するには、ブレない軸を持つことが大事です。企業理念を明確にして、それに沿った行動とはどういうものなのかを書き出しましょう。そして事あるごとにそれを見直し、判断基準とすることで、理論上、ブレない軸が出来上がります。人は日々、成長します。考えも変わります。周囲の環境も変わっていきます。その中で、変えていくべきものと変えてはいけないものがあるのですが、土台となる自分軸や会社軸をコロコロ変えるのはよくありません。あなたが、信念や発言がコロコロ変わる経営者や上司のもとで、働くことを考えてみてください。このような人や会社には、誰もついていかないと思いませんか?たとえば私の好きなメーカーのソニーが、「技術の追求や人のやらないことをやる」という方針をやめて、急に、「利益重視で他社がやってもうかっていることをやろう」という方針に変えたとしたら、何が起こるでしょう。世界を相手にして技術を追求する夢に共感していた技術者は、こぞって退職します。そしてお客さまも去っていきます。これは架空の話ですが、会社の軸がブレるということは、たとえばこのようなことなのです。そしてこれらの「軸」を、経営者の日々の発言からも社員は感じ取っています。「あなたの会社は誰のために、何をしたいのか?」「お客さまと社員に約束することは何なのか?」「これから未来に向かって、どう行動したいのか?」ぜひ、ブレない軸を忘れずに、メッセージを発信してください。それをすることで、応募者やお客さまの心に届き、「カッコイイ会社」と認知されるのです。【■POINT■会社や自分がブレないために、しっかりと判断基準となるものを作ろう。】

□人材採用においてブレない会社とは

本書に書いている内容を忠実に実行すると、これまでの採用活動と違い、条件に興味を持つのではなく、会社の考え方と方向性に共感する応募者から応募があるようになります。弊社のお客さまは、親御さんから、「ぜひ、ウチの子を受けさせたいです」といったメッセージもよくいただきます(自分の進路を自分で決めないのをよい悪いは別にして)。あなたの会社もこの章で学んだ求人募集の方法を活用すれば、応募者は会社で自分が働くイメージを明確に持って応募してくるのです。これは非常によいことですが、もし求人募集時に伝えた内容と、実際の仕事の中身が違ったら、応募者はどう思うでしょうか?そうです。「あれ?全然違うよこの会社」となりますよね。そうなれば、応募者は危険を感じ、選考辞退をするのです。求人募集時に応募者が感じた印象と、実際に会社に来てみて感じた印象にギャップがあれば、選考中の辞退や内定辞退が起こります。さらに、選考中と入社後で応募者が感じた印象にギャップがあれば、入社後、すぐに退職します。選考中の辞退が多い会社や、入社後の退職が多い会社は気をつけなければいけないこと。それが、・外部に発信しているメッセージと社内の実情のズレ・社長と社員の意識のズレなどです。選考中の辞退や内定辞退、入社後すぐの退職が多い会社に共通している点はこの「ギャップ」なのです。そして、そういった会社の求人募集や選考時に応募者に伝えている説明内容などを、働いている社員が聞くと「全然違うよ。うそばっかり」と感じてしまいます。試しに求人ページを社員に見せてみてください。そして、率直な感想を聞いてみましょう。もし、外部に発信しているメッセージが、経営者の本音だとすれば、それを社員に何度も伝えて理解してもらう必要があります。そうしなければ、採用された人が入社した後に、「だまされた」と思うのです。会社のいい面ばかりを見せて、悪いところをひた隠しにし、応募者をだまして入社させても、結局すぐに退職するので自社の首を絞めるだけです。そもそもそういった採用方法は詐欺ですからね。結婚詐欺ならぬ「採用詐欺」です(笑)。そうならないためにも、外部にメッセージを発信するときには、同時に社内の

社員の意識統一にも取り組みましょう。片方にだけメッセージを発信しても、ギャップが生まれるだけですから。風通しがいいと求人募集に書いたのなら、社員も共感するようにしなければいけませんし、提案を受け入れる風土があると書いたのなら、同じく社員が提案できる風土がなければいけません。新しく人を募集するにしても、その募集の理由をしっかりと伝えましょう。応募者は「すぐに人が辞める会社なのかな?」と常に疑っています。会社に関する情報を徹底的に提供し、そういった不安を解消してあげて、自分の居場所がそこにあると思ってもらうのが、求人募集の本当の目的です。応募者は賢く、うそはすぐに見抜きます。キレイごとを書いても意味がありませんし、印象に残りません。しかし正直に自分の会社にまだ足りないところを書いたりすると、それは応募者の心に伝わります。求人募集は究極的には、等身大の会社をあますことなく伝えることです。それにより、本当に会社に合った人材と巡り会うことができるのです。ブレない軸を会社と経営者、社員が身につけて、それを効果的に発信することでカッコイイ会社になります。どんな会社でも、自社を見つめ直すと必ずいい点や誇りに思えることが出てきます。そういったものを見つけたら、ぜひ大切にしてください。そういった軸を大切にするのが「永続する会社の姿」です。【■POINT■求人募集は等身大の会社の考えを伝える場である。】

□どんな採用ホームページを作ればいいのか?

この章でご説明した内容をもとに、自社の求人ページをぜひ作ってください。ホームページは一回作ってしまえば、ランニングコストはほとんどかからないものです。そして、中小企業のウリや企業理念、経営者の思い、会社の情報を余すところなく伝えたホームページは会社の資産として、御社の採用活動の根底を支えます。もう求人媒体に頼る必要もなくなるのです。ただし、最初に作るときは予想以上に大変だと思います。応募者に向けて読みやすく心に響く文章を書くというのは、そう簡単にできるものではありません。そこで、この本の読者には特別に弊社が作った求人ページを二社だけお見せします。どちらも人材採用に苦戦していたところ、弊社のいなだ式採用術「感情採用ホームページ」での人材採用で、採用に成功しています。一社は病院です。いろいろと問題になっているように、看護師の採用というのは本当に難しくて、弊社に依頼する前は、人材紹介会社を活用していて年間千五百万円の人材紹介料を支払っていたそうです。この募集は、将来を見越して抜本的に看護体制を変えるための大人数の中途採用でした。杏雲堂病院というこの病院には、特長的な理念がありました。それが「ゆとりの看護」というものです。この「ゆとりの看護」をウリとして前面に出したホームページを制作しました。現在は毎月のようにホームページのみで採用できており、人材紹介料を一円も払うことがなくなり、千五百万円のコスト削減だけではなく、応募者の質も上がったのです。もう一社は「東京の下町にある町工場で次期社長の右腕となる大卒理系の職人候補」という難しい人材の採用でした。以前はパートの採用でも苦労をしていたのですが、この錦部製作所という会社は「世界一の歯科器具を作っているこだわりの職人集団」というウリがわかり、それを自社ホームページでアピールしてからは、全国から履歴書が届くようになったのです。すでに採用は終了していますがホームページは参考になると思います。【■POINT■ホームページは一回作ってしまえばお金がかからないもの。】

杏雲堂病院http://www.kyoundo.jp/saiyou/人材不足と呼ばれている看護師採用においてこれまで人材紹介会社からの紹介ばかりで前年度は1500万円の費用をかけていた東京の杏雲堂病院では、「ゆとりの看護」という看護理念を前面に出した弊社が作った求人ページのみで、人材紹介会社を使うことなく半年で看護師十六名の採用を実現させた。二〇一〇年一月時点。応募者の質も人材紹介会社より格段によくなったとのこと。錦部製作所http://www.nishikibe.co.jp/saiyou/東京の下町の小さな町工場。これまでの採用は応募者が来ないため、面接というより説得という状態で入社してもらっていた錦部製作所では、歯科器具の製造で世界一の技術を持っていること、そして明確な職人としての位置づけを前面に出した弊社が作ったホームページのみで、全国から応募があり将来の幹部となる優秀な人材一名を採用した。

COLUMN⑤勝てる場所で勝負をするということ

需要と供給のバランスを意識することは採用でも集客でも重要な考え方です。供給が多い場所で勝負をすれば、他社との取り合いになってしまいます。たとえば、事例でご紹介した東京の杏雲堂病院さんなどは、東京での看護師採用というほかの病院がとても苦労をしている職種での採用活動に成功され、年間一五〇〇万円の人材紹介料も0円に。さらに応募者の質も上がりました。これは病院に確固たる理念があったから、他病院と差別化ができたのです。ほかの病院と差別化することで、応募者にとってとてもカラーが出た存在となります。要はブランド化したのです。「杏雲堂病院の考え方はこうだと応募者が話せるほどに」です。自社ホームページまで見に来る応募者の感情を考えたことはありますか?その応募者は、紙媒体や転職サイトで御社の募集条件面をチラ見して応募してきた応募者とは意識レベルが違うと想像できると思います。そのような意識の高い訪問者がやってきたチャンスに、ちゃんとした「おもてなし」ができないのであれば、せっかくの応募者が逃げていきますよ。ほら、いまこの瞬間も。自社の求人ページはとにかく採用成功のためには絶対に必要なのです。ただ、「カッコイイ」などデザインやフラッシュと呼ばれる動くページに凝ってしまってはいけません。ここにだけはご注意ください。ホームページは見るのではなく、読んでもらうのが目的です。応募者の心に届くのは、「メッセージ」つまり、文章や言葉のみです。たとえば、本書で画像はほとんどありません。文字のみです。でも、本書から何かしら心に響くものがあったのなら、それは「メッセージ」つまり、文章や言葉ですよね。自社の求人ページを見直したり新しく作る場合は、必ず「採用の本当の目的」を実現できたかどうかでPDCAサイクルを回してください。求人ページもカイゼンあるのみです。弊社も求人ページを公開後、訪問者のデータを見ては何度も修正をかけています。プロですら最初に作ったページよりPDCAを回した後のほうがいいページができますので、ぜひ、あなたの会社も取り入れましょう。

第五章のまとめ①求人募集が採用活動のメインではない。②中小企業のウリは企業理念と経営者。ここを上手にアピールしよう。③選考力を身につけることで陥る壁が見えてきたことにより、応募者の質を上げる必要性がある。④応募者数が多かった=求人募集の成功という概念を捨てることで、本当に良い採用活動とは何なのかを学び、他社と圧倒的な差をつけよう。⑤応募者の心に響く、いなだ式採用術(感情採用)とは、条件面ではなく、会社にほれて応募がある、企業・応募者双方にとって最高の求人募集方法。⑥ブレない一貫したメッセージを発する重要性を知り、採用活動を通じて、自社内のカイゼンまで視野に入れよう。

エピローグ

ここまでお読みいただきありがとうございました。最後に私から、お願いがあります。この本をここまで一気に読んでしまったのであれば、明日から一週間かけて再度、読んでいただけませんか?本を読むのがあなたの目的ではなかったはずです。また知人や職場の人からこの本を薦められたのであれば、彼らはただ読んでもらいたいからオススメしたわけではないはずです。「得てほしいものがある」「悩みを解決してもらいたい」という善意の気持ちからでしょう。であれば、その目的を達成させましょう。書籍というのは、著者の数十年の人生が詰まっています。そして、それぞれの分野に自分の命をささげ、その道のプロと呼ばれる人たちが書いています。彼らは多額の投資と数多くの失敗をして独自のノウハウを確立させました。どの著者も世の中のためにと思って自分のノウハウを本にしています。でもそれらのノウハウは読者であるあなたが実践してこそ意味があります。あなたは書評家ではないのですから、私のノウハウをぜひ、この本から盗んで自社のビジネスに生かしてください。私を信じる、信じないはあなたの自由ですが、本書を読んで、「これは使える」「これは導入したい」と思ったあなたの気持ちは信じてください。私にうそをついてもいいですが、決してご自分にうそをつかないでくださいね。あなたが採用のスキルを手に入れた証しをぜひ、あなたの会社に導入しましょう。喜びのご報告を私は楽しみに待っています。事例としての掲載を快諾してくださった錦部製作所さん、杏雲堂病院さん、そして、弊社と一緒に成長しているクライアントの皆さま、この本を世に出すキッカケを与えてくださった編集の佐藤房子さん、そして、この本と出会ってくださったあなたに心から感謝いたします。本当に本当にありがとうございました。最後に私をいつも支えてくれる真紀、聡友。そして私を育ててくれた家族である富太、絹惠、かずゑ。いままでいろいろ迷惑もかけたけど、本当にありがとう。

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