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1章 しくみを理解して節税策を模索する

はじめに書店に行くと相当数の節税本が並べられていますが、どれも似たり寄ったりな内容で、真新しいものはみられません。もちろん、節税は法に則って行うものなので、内容が限定されてしまうのは仕方がありません。それでも節税本が後を絶たないのは、単純に同じ内容をいろいろな切り口で紹介しているためです。そして、内容云々よりも数を競うようになってしまっているのが現状です。そのようななかで、我々が一番問題だと思ったのは、数をアピールすることでも切り口を変えることでもなく、内容に強弱がないことです。効果がある方法も効果がほとんどない方法も、どれも同じ節税という括りで紹介されており、一体どこから手をつけてよいのかわからない状況になっているのではないでしょうか。かなり効果的な節税策も、リスクばかり大きくてほとんど効果のない節税策も同じ括りにされてしまっているので、何となくよさそうな方法を使ったら税務署から大目玉を食ったという事態にもなりかねません。これは、リスク以外の何物でもありません。また、保険を使うと多額の損金を計上できるといわれても、戦略がなければただ保険料を損して終わってしまいます。しかし、そういったことに触れている書籍はあまりありませんし、あったとしてもほんの数行しか書かれていなかったりします。税法は、その一つひとつが複雑怪奇であり、かつ、ほかの税法ともリンクしています。目の前の方法にだけフォーカスしてしまうと片落ちになることもあるので、あまり税法に詳しくない方では太刀打ちできないのが現状かと思います。生兵法は大怪我のもとなのです。そういったことにならないよう、本書では節税策を、大きく分けて以下の3つに区分しました。・やってはいけない節税策・とりあえずやっておきたい節税策・積極的にやりたい節税策何からやってよいかわからない場合は、とりあえずやっておきたい節税策を、積極的にやりたい場合は追加の節税策をといった具合に、内容に強弱を付けています。逆に、やってはいけない節税策も紹介することで、効果がほとんどない節税策を回避することができるようになっています。もちろん、税の基本的な考え方がわからないと内容が理解できない可能性もあるため、それについても詳しく解説しています。内容的にはおもしろくないかもしれませんが、税のしくみや考え方を知ることで効果的な節税をすることができるので、基礎知識として押さえておいていただけると幸いです。また、一風変わった節税方法や銀行・税務署との付き合い方など、ほかの書籍ではあまり触れられていない内容についても、詳しく記載しました。どれも節税とは関係なさそうで、実は非常に大切なものなので、必ず最後まで読んでいただけますようお願いします。必要のない節税策は会社にとって害でしかありません。自らの目で判断し、効果的な節税策だけを取り入れていただくことができる内容になっているので、節税のバイブルとして書棚に並べておいていただけると幸いです。本書が御社にとっての節税策のスタンダードとなることを願ってやみません。税理士冨田健太郎税理士葛西安寿

目次はじめに1章しくみを理解して節税策を模索する01レシートを集めれば節税?〝合理的〟に節税する02利益の算出方法は会計と税務で異なる03法人税以外に会社が払う法人住民税・法人事業税04住民税・事業税は大規模法人ほど負担増になる05益金になるもの益金にならないもの06お金のやり取りがなくても益金になる07一定の海外子会社の利益も益金になる08損金になるもの損金にならないもの09法人税・法人住民税は損金にならない10節税は本当に税を〝節約〟しているのか11本当に節税できる項目はごくわずかしかない12経費を計上する時期決算の駆け込み需要は正解?13本当に節税できる項目に注力する14最終的に税金は減らない期ズレは最低限に抑える15税金を払わないと会社は大きくならない2章やってはいけない節税策01無駄な経費の計上は資金繰りを悪くする02決算賞与と決算セールどちらも所詮は期ズレ03経費にならない決算賞与の支給に注意04低価法適用のための決算セールはナンセンス05翌期の経費の前倒しで効果を出すのは難しい06全額損金タイプは保険料が割高で貯蓄性も低い07貯蓄性の高い保険は短期間で解約すると大損08高額資産を急に買っても当期分の経費は少額!?コラム領収書とレシートどちらを保存しておく?3章とりあえずやっておきたい節税策01やっておきたい節税策の具体例02青色申告の承認を受ける03出張旅費規程に日当を定め損金にする04社宅規程をつくって社員の手取りを増やす05各種税額控除を活用しよう06役員に給与を支払えば大きな節税効果がある07譲渡契約をしマイカーを経費にする08法人登記をし自宅を経費にする09通常の食事代を経費にする10残業時の食事代を経費にする11資格などの技能習得費を経費にする12事業に関連する旅費を経費にする13保険の積立金を経費にする14ゴルフクラブなどの費用を経費にする15会社を複数つくる分社化で法人税を節税16会社を複数つくる分社化で消費税を節税17消費税の免税期間を長くする18「原則」より少なく消費税を納税する19海外進出する場合は現地法人の設立を検討2010万円以上の固定資産を短期間で償却する21資本金を1億円以下にしよう!コラムクラウド会計の導入でタイムリーな試算表作成を4章積極的にやりたい節税策01積極的にやりたい節税策期ズレでも効果大な手法02退職金の3つのメリット03当期の税額を減らす税額控除を取りきる04社宅や福利厚生を充実させて給与を減らす05見積書や請求書は内訳を細かく記載する06見積書は穴が開くほど確認する07中古の資産購入で当期の税金を大幅カット0820万円未満の繰延資産は早いタイミングで償却09出口戦略がある場合の保険加入10利益に凸凹がある会社の保険を使った節税対策11自社に合った保険に必要な金額だけ加入する12保険加入で重視すべきは保障内容と実際の返戻率13保険は損金タイプごとに益金・損金処理が異なる14消費税の届け出は2年単位で考えよう15消費税の還付金受け取りまでの時間を短縮する16課税売上割合を95%以上にして消費税を控除17課税売上割合95%未満の場合消費税の一部を控除18建設仮勘定で消費税を先取りする195000円以下交際費を活用しよう!205000円以下交際費を区分して損金不算入減コラム合同会社の設立を検討しよう!5章こんな節税方法もある01目先の税金だけでなく相続税についても考える02法人成りで所得を分散する03益金不算入が可能な株式等の受取配当金04資金繰りが厳しいときは「仮決算」を検討しよう!05法人税の申告期限は延長することができる!06決算日を変更して期限後申告を防ぐ07倒産防止共済に加入して連鎖倒産等を防ぐ08役員給与を別途支払いそれでも損金算入できる

09文書を紙から電子媒体にするだけで節税できる10消耗品は在庫管理をしなくていい!11貸倒損失はピンポイントでの損失計上が必要12従業員の退職金を先に損金化する13補助金・助成金がないか探してみよう!コラム「個人成り」で社会保険の負担をカット6章税務署や銀行との付き合い方01最近の税務調査の傾向実地調査は減少する!02税務調査の対策と受け方の基本03議事録の類は時系列で揃えておく04税務調査で否認されるとどうなるか?05逃れられないペナルティ06追徴課税は損金にならない07納得できなくても払う必要がある08相性のよい税理士・会計士の選び方09フィーを値切ると損をする可能性もある10銀行との付き合い方はどうするべきか巻末資料節税のために社長がおさえておきたい用語解説法人税等の税率表用語一覧

[01税制度]レシートを集めれば節税?〝合理的〟に節税するひとえに「節税」といっても、その性質や種類、導入時の手間、それぞれの法人にとって有益かどうか、リスクの度合いなどさまざまです。まずは、法人に関係する日本の税制度のしくみをよく理解し、どのような方法が会社にとって最良なのか検討していくことが不可欠です。法人が負担する税金最も代表的なものは法人税ですが、そのほか消費税、法人事業税、法人住民税も法人が負担する税金です。これらの節税を中心に紹介していきます。これら以外で、法人が負担する税金には、固定資産税や印紙税、登録免許税、自動車税、ガソリン税などさまざまな種類のものがあります。また、直接法人に関わる税金ではありませんが、役員報酬などに課税される個人の所得税も、節税を考えるうえでは大変重要です。

個人と法人どちらのほうがお得なのかよく「法人化すると節税ができる」といわれます。その理由は、法人税と所得税の税率の違いや費用にできるものの範囲の違いなどによります。個人の場合、所得税の最高税率は45%なので、住民税と合わせると最高55%にもなります。一方、法人の場合は、法人の規模や所在する地域などによって差はありますが、実効税率は30%程度です。この税率の違いを利用し、法人と個人の所得の配分を調整することも、ひとつの節税方法です。また、社宅制度などの福利厚生制度などは、個人では導入することが難しいものが多く、法人化することによって活用できる特典などもたくさんあります。法人は2つの財布をもっていると考えるとわかりやすいでしょう。法人と個人(役員など)の2つの財布に対して、所得をどのように配分すると税負担を低く抑えられるか、などを検討することができます。法人に配分するものは、いずれ役員や従業員、株主などの個人に還元したり、将来のための設備投資に利用したりと、長期的な視野で運用していくことになるので、法人と個人への配分のさじ加減は大変重要です。主な節税法は4つ節税方法は、次のようにいくつかのジャンルに分けることができます。❶経費(損金)を増やすことによる利益減少❷法人と個人の税負担のバランス調整❸税額控除の適用❹国際的な課税制度の違いを利用特に、❶はメジャーな節税方法ですが、「とにかくレシートを集めて費用を多く計上すればよい」といったような、誰でもできる単純なものではなく、税理士の視点から、「合理的でリスクのない方法で損金化するコツ」を紹介していきます。

[02所得金額]利益の算出方法は会計と税務で異なる法人税の所得金額(税金をかけるもとになる税務上の利益)は、会計上の利益に一定の調整をして計算します。会計上は、収益から費用を引いて利益を求めますが、税務上は「益金」から「損金」を引いて所得を算出します。会計の収益費用と税務の益金損金は、会計と税務の目的や考え方の違いから異なる部分があります(1章[05益金]~[09損金]参照)。会計は株主への報告や経営判断に必要な数値を算出することを目的とするのに対し、税務は課税の公平性や適切な税負担、国の政策判断による優遇などを目的としているため、違いが生じるのです。課税対象となる所得金額法人税を計算するときは、損益計算書の「当期純利益」をベースにして、会計と税務の差を調整し、所得金額を計算します。前期から繰り越された欠損金がある場合には、ここで控除します。資本金や課税所得によって異なる税率所得金額に税率を乗じて法人税額を算出します。現在の法人税の税率は、次図のように定められています。

中小法人とは、普通法人のうち資本金の額が1億円以下などの一定の法人をいいます。日本の法人の税率は、外国企業誘致や国際競争力向上のため、近年段階的に引き下げられています。所得金額に税率を乗じて法人税額を算出した後、適用を受けられる税額控除があれば差し引きます。税額控除制度は、二重課税の排除や国の政策などによって設けられるものです(3章[05税額控除]参照)。以上の方法によって算出された法人税額が年間の法人の事業活動に対する法人税額です。原則として、事業年度終了後2カ月以内に申告し、税額を納付します。

[03その他の税]法人税以外に会社が払う法人住民税・法人事業税法人住民税と法人事業税は、いずれも地方税であり、課税庁は、法人の本社や支店、工場などが所在する地方自治体です。原則として事業年度終了後2カ月以内に申告して税金を納めます。税率は、標準税率を基準としながら各地方自治体が定めています。法人税割と均等割から成る法人住民税法人住民税は、法人の事務所等の所在する都道府県と市区町村が課す地方税です。都道府県民税と市町村民税の2種類(東京都23区は例外的に都民税のみ)があり、それぞれ、法人税額を基準として法人が納める税金である「法人税割」と、すべての納税義務者が規模に応じて均等に納める「均等割」から成っています。法人税割は、法人税額(税額控除前)×税率で計算します。現在の標準税率は、資本金1億円以下で、かつ法人税額が年1000万円以下であれば、都道府県3・2%、市区町村9・7%です。資本金の額が1億円超または法人税額が年1000万円超の場合の制限税率は、それぞれ4・2%と12・1%です。均等割は、法人の資本金等の額とその事務所等の人員数によって税額が決まります。所得に対する課税ではないため、赤字で所得がない期も納付しなければなりません。東京都の税率は、次の表の通りです。

資本金額等により税率が変わる法人事業税法人事業税は、事業を行う事務所等の所在する都道府県が課す地方税です。法人税の所得金額に一定の調整をし、税率を乗じて所得割を計算します(電気供給業、生命保険業等の場合、収入金額に対して課税)。法人住民税のような均等割はありません。事業税の税率は、資本金の額や所得の大きさ、事業所等の数などによって変わりますが、東京都の場合、資本金1億円以下の法人は、3・4~7・18%です。資本金の額が1億円を超える法人の場合には、0・395~0・88%ですが、所得割のほかにも外形標準課税という別の課税があります(1章[04その他の税]参照)。なお、複数の地方自治体に事務所等を置いている法人の場合には、法人住民税の所得割も事業税の所得割も、法人の所得を事務所等の人員数などに基づいて各地方自治体に配分して税額を計算し、それぞれに対して申告納付します。

[04その他の税]住民税・事業税は大規模法人ほど負担増になる期末時点の資本金の額が1億円を超える法人は、住民税の税率が高くなるほか、事業税については所得割以外にも、外形標準課税の負担が発生します。資本金の差で住民税の税率が大幅アップ先述のとおり、資本金の額が1億円超の場合の所得割の制限税率は、都道府県4・2%、市区町村12・1%であり、資本金1億円以下かつ法人税額が年1000万円以下の3・2%、9・7%と比べると、2~3割増しになります。均等割も資本金等の額が1億円を超えると29万円~となり、均等割で最も安い7万円と比べると4倍以上の差になります。赤字でも支払わなければならない外形標準課税事業税の外形標準課税は、たとえ赤字で所得のない事業年度においても、納付する必要があります。外形標準課税は、付加価値割と資本割から成っており、それぞれの課税標準に税率を乗じて計算します。付加価値割付加価値割は、収益配分額と単年度損益の合計額です。収益配分額とは、次の3つの合計です。❶報酬給与額(報酬・給与等+企業年金等の掛金)❷純支払利子(支払利子-受取利子)❸純支払賃借料(支払賃借料-受取賃借料)単年度損益は、繰越欠損金控除前(3章[02税制の恩恵]参照)の所得金額です。付加価値割の税率は、東京都の場合、1・26%です。資本割資本割の課税標準は、資本金等の額(資本金、資本準備金などの合計額)です。東京都の場合、資本割の税率は0・525%です。地方税の負担を抑えるには?事業税の外形標準課税と住民税均等割は、赤字の事業年度であっても負担しなければなりません。地方税の負担だけを考えるのなら、資本金の額は外形標準課税の対象とならない1億円以下に、そして均等割額を抑えるために資本金等の額をなるべく少額にして抑えたほうがお得になることが多いです。後に紹介しますが、資本金1億円以下の法人は、ほかにもさまざまな特典を受けることができます(3章[21税制の恩恵]参照)。

[05益金]益金になるもの益金にならないもの会計の収益と法人税法の益金は、ほとんどイコールと思って問題ありませんが、例外的に、受取配当等(5章[03益金]参照)や資産の評価益(1章[06益金]参照)などについては、会計上の収益にはなりますが、法人税法上の益金にはなりません。法人税法での益金の定義法人税法で益金は、「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による財産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係るその事業年度の収益の額とする」とされています。法律用語ではイメージがわきづらいと思うので、具体的な益金の勘定科目は次の図を参照してください。

なお、勘定科目のなかの雑収入科目は、いろいろな種類の営業外収益の取引に使われます。益金に該当するものとしないものが混在するので、申告時には中身をよく確認する必要があります。益金の認識は「収益が実現したとき」益金について気をつけなければいけないのが、益金を認識するタイミングです。たとえば、「当期は利益が出すぎるから、取引先に交渉して入金を遅らせてもらって、翌期の売上にしよう!」といった認識時期の操作はできません。益金を認識するタイミングは、「収益が実現したとき」が原則です。たとえば、物の引き渡しをする取引であれば取引先に納品した日、役務の提供をする取引であれば役務提供を完了した日に、収益の実現があったものとして、益金として認識しなければなりません。

[06益金]お金のやり取りがなくても益金になる取引先への売上などについては、実際にお金の流れがあるため、もれなく把握することは難しくありませんが、気をつけなければならないのが、お金のやり取りの発生しない取引です。金銭のやり取りがなくても、法人が経済的利益を受けている場合は、その価値を益金としなければなりません。経済的利益として益金に該当するもの金銭の授受がなくとも、経済的利益として、次のようなものが考えられます。❶無料で資産をもらった資産の時価が受贈益となり、益金を認識しなければなりません。たとえば、時価100万円の中古車を無料でもらった場合、100万円を受贈益(同時に車輌運搬具100万円資産計上)としなければなりません。❷低額で資産を譲り受けた時価よりも低い金額で資産を譲り受けた場合には、資産の時価と支払った金額との差額が、経済的利益として益金とすべき受贈益です。たとえば、時価100万円の中古車を30万円で譲り受けた場合、差額の70万円を受贈益(同時に車輌運搬具100万円資産計上)としなければなりません。❸債務を免除してもらった支払義務を免除された借入金や未払金、買掛金などの債務の額が、債務免除益として益金となります。❹無利息の貸付金たとえ貸付金の利息を受け取っていなくても、相手には無利息という経済的利益を供与しているため、貸し付けている側で受取利息相当額を益金として認識します。資産をもらった場合など、通帳等に入金記録が残らないような取引は、益金として認識することを忘れやすいため注意が必要です。「法人に何らかの利益をもたらす行為は、金銭の授受がなくても益金となる」と理解しておくと、漏れなく取引を把握できるはずです。

[07益金]一定の海外子会社の利益も益金になる国内に子会社がある場合、親会社の所得と子会社の所得を合算することは、連結納税を選択しない限りありません。子会社であっても別会社なので、会社単位で納税をすることになります。仮に親会社が子会社に所得を付け替えたとしても、親会社の税金が減って子会社の税金が増えることになるので、全体でみると影響はありません(寄附金として取り扱われる可能性もあります)。海外との取引等には注意が必要しかし、海外子会社の場合、そうはいきません。日本法人が海外子会社に利益を付け替えた場合、日本法人の税金が減り海外子会社の税金は増えることとなり、日本の税収が少なくなってしまうためです。ケイマン諸島やバミューダ諸島では法人税自体が存在しないため、税率0%が可能になります。日本であれば最大で約35%の法人税等が課せられるので、天と地ほどの差が生ずることになります。こういった国または地域に法人を設立して所得を付け替えることによって、結果として日本の法人税を減らすことができてしまうのです。その対策として設けられている制度が「タックスヘイブン対策税制」です。この税制の適用を受けると、海外子会社の所得の全部または一部を日本法人の所得として取り扱います。そうすると、付け替えた分の所得が戻ってくることになり、税収減を防ぐことができます。安易に「税率が低いから」といって海外法人を設立し、そこに所得を付け替えたとしても、結局は日本法人の所得とみなされてしまうので、注意が必要です。ただし、当該国または地域でビジネスをする経済的合理性がある場合は、タックスヘイブン対策税制の適用を受けません(部分的に受けるケースもあります)。あくまで、税金逃れのために海外子会社を設立した場合に適用される規定といえます。また、海外関連企業に通常よりも安い価格で商品を卸したり、逆に海外関連企業から高い価格で商品を購入したような場合、適正な金額との差額を日本法人に加算する「移転価格税制」と呼ばれる税制もあり、国内における子会社間の取引よりも厳しく取引価格をチェックされます。移転価格税制により否認された金額は、加算社外流出項目として取り戻すことができなくなってしまうので、十分に注意して取引価格を決定しましょう。

[08損金]損金になるもの損金にならないもの会計の費用と税務の損金は一致するものがほとんどですが、なかには異なるものもあります。これらの判断にあたっては、領収書や請求書等に記載されている名称や会計上の勘定科目ではなく、取引の実態などをみて判断する必要があります。不一致が生じる代表例❶交際費等および寄附金交際費等とは、取引先などの事業関係者に対する接待や贈答などの行為にかかる支出をいい、寄付金とは、金銭や経済的利益の無償の供与をいいます。税務上、どちらにも損金算入限度額が定められており、限度額を超えたところからは損金となりません。上限なく交際費等や寄附金の損金算入を認めてしまうと、儲かる企業が多額の交際費等や寄附金を計上して、不当に税負担を免れる可能性があるため、このような制度が設けられています。❷役員報酬・役員賞与役員報酬は、社長自身が自分の給与を決めることができるため、会社の利益操作に使われやすい費用でした。たとえば、期末が近付いてきたときに「今年は利益が5000万円もでるから、その分社長に特別ボーナスを出そう!」などといって役員報酬が損金となってしまうと、国としてはたまりません。そこで、会社が好きなように役員報酬を改定して、法人税の負担を不当に免れたりすることのないように、税法上のルールが厳しく定められています。役員報酬を損金とするためには、「毎月同額でなければならない」などの要件を守りながら、役員報酬を決定する必要があります(3章[06損金処理]参照)。❸税金法人税や住民税は損金になりません。また、延滞税や加算税などのペナルティも損金となりません(1章[09損金]、6章[05追徴課税]参照)。❹減価償却費固定資産を購入した場合、その全額を購入した事業年度の費用とすることは原則できず、資産の種類ごとに定められた耐用年数に応じて毎期少しずつ費用化します。税務のルールに従って、会計の減価償却費を計上することが一般的ですが、会社独自の償却ルールや国際会計基準などを採用している場合は、会計と税務で乖離が生じます。たとえば、100万円の固定資産を購入し社内独自ルールの2年で償却し、50万円を減価償却費として計上したとします。一方、税務上の耐用年数は5年であったとすると、税務上の償却限度額は20万円となります。その結果、償却限度額を超えた部分である30万円については損金にならないということになります。減価償却については、2章[08資産の購入]で詳しく紹介します。❺引当金繰入引当金とは、将来発生する費用のうち、当期に帰属する金額を見積もって、その概算額を当期の費用とするものです。会計上は、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、修繕引当金、ポイント引当金などさまざまなものがあり、業界独自の引当金を設定することもあります。税務上は、引当金のような概算経費を損金とすることには非常に慎重です。貸倒引当金などごく一部しか認められておらず、要件や計算方法も厳しく定められています。税務上の要件を満たさない引当金や、税務に定めのない引当金は、その繰入額が損金不算入となります。❻期ズレ支払いが期をまたいでしまう場合は、会計上、期末に未払金を計上し、当期の費用として処理します。このような費用が税務上も損金となるかどうかは、個別に検討する必要があります。税務上の販売費および一般管理費は、「債務確定基準」によって損金算入が可能かどうかを判断します。債務確定基準とは、次の3つの要件を、期末までにすべて満たすものをいいます。・債務が成立している・具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している・金額を合理的に算定できるこれらすべての要件を満たした場合、損金とすることができますが、そうでない場合は、概算経費のような扱いになり、損金不算入となります。税務のほうが会計よりも損金化に慎重であり、タイミングが遅くなることがよくあります。❼評価損物価変動や市況の変化などによって、棚卸資産や有価証券、固定資産などが取得した当初よりも価値が下がった場合、会計上「評価損」を計上することがありますが、税務上認められる評価損はごく一部に限定されています。たとえば、棚卸資産や固定資産であれば、災害等によって著しく損傷した場合などには損金とすることができますが、物価変動等によるものは損金とすることができません。以上のようなものは、費用と損金の不一致が生じる代表例です。不一致になるもののほうが、一致するものよりも数が少ないため、不一致になるものを覚えておけば問題ありません。「税務(損金)のほうが、会計(費用)よりも損金の認識基準が厳しい」と覚えておくとわかりやすいでしょう。

[09損金]法人税・法人住民税は損金にならない法人が税金を支払った場合、会計上、租税公課勘定や法人税、住民税および事業税勘定によって費用として経理しますが、税務上は損金になるものとならないものがあります。損金にならない税金は、もちろん還付された場合も益金になりません。損金になる税金とならない税金法人税や法人住民税は損金になりません。また、延滞税などのペナルティや罰金および過料なども損金となりません。これに対し、法人事業税や利子税、事業所税、固定資産税、不動産取得税、自動車税、延滞金(納期限延長の場合のみ)などは損金となります。これらのほかにも、法人が納付する税金はいくつもありますが、税法には「損金とならないもの」が限定的に列挙されているので、記載のないものは損金になります。法人事業税や事業所税などの申告納税方式のもの(法人が自主的に申告して納付する課税方法)の場合は、原則として申告書を提出した事業年度に損金となります。固定資産税や不動産取得税、自動車税などの賦課課税方式(課税庁が税額を計算して納税者に通知してくる課税方法)の場合は、賦課決定のあった事業年度に損金となります。また、損金となる税金について、課税庁による更正や決定などがあった場合には、更正や決定があった事業年度に損金となります。損金となるタイミングについては、原則として「税額が確定した日の属する事業年度に損金となる」と考えておくとわかりやすいでしょう。

[10期ズレ]節税は本当に税を〝節約〟しているのか税金は、「利益×〇%」という方式で課税されるので、利益を少なくすることが節税であると定義するのであれば、利益を減らすためにどんどん経費を使えばいい(損金を増やせばいい)だけのことです。しかし、貴重な会社の資金を使って、不要なものやサービスを購入して経費を増やすというのは本末転倒です。本当に必要なものを計画的に購入して経費を増やし、結果、税金を少なくするというのが真当な節税であるといえるでしょう。経費が増える=節税ではないさて、ここで本題ですが、不要なモノを買うという行為は、本当に税を節約しているのでしょうか。もちろん、経費が増えているので当期の税金は少なくなります。ですが、必要な経費を入れただけなので、その経費を含めた利益がその年度の適正な利益だと考えると、これに対して税金がかかることは至極当たり前のことです。つまり、必要なものを購入したことで税金が少なくなったのではなく、その結果としての利益に対して、通常どおりの税金が課せられただけです。したがって、この行為は税を節約しているとはいえません。次に考えられるのは、翌期以降の費用を先取りして当期の費用に入れるというものです。たとえば、翌期首に100万円使う予定があるのであれば、それを当期末に使ってしまえば当期の利益を100万円減らすことができます。これは一瞬もっともな節税と思われるかもしれません。ですが、当期の費用が100万円増える代わりに、翌期の費用は100万円減ることになるので、当期の税金は少なくなりますが、翌期の税金は増えることになります。つまり、当期と翌期の2年間合計では納税額は変わらないことになります。このように、未来の経費を先取りして当期の経費にし、翌期以降その経費を計上できないため、結果としてその期間の納税額が変わらないことを「期ズレ(きずれ)」といいます。期ズレは手軽に当期の納税額を減らすことができる手法ですが、結果として1円の税金も節約していないのです。

[11本当の節税]本当に節税できる項目はごくわずかしかない一般に節税手法と呼ばれるもののほとんどが「期ズレ」になります。インターネットで「節税策」と検索してみると、不動産関係・保険関係の広告がたくさん出てきます。不動産や保険は節税商品との認識が強いかもしれませんが、これらは紛れもない「期ズレ」です。翌期以降の費用の一部を当期に先取りしているに過ぎません。ただし、これらの商品は年度末であっても一気に多額の費用を計上することができるので、当期の税金を少なくするという視点でみると、優れた商品であるといえるかもしれません。ですが、費用として支払った金額以上に税金を少なくすることはできないので、結果としてキャッシュ・フローは悪化することは忘れないようにしてください。本当に節税できる項目それでは、当期の税金を少なくし、かつ将来的にも取り戻されない「本当に節税できる」項目にはどういったものがあるのでしょうか。代表的なものでは、次のようなものが挙げられます。❶青色申告(3章[02税制の恩恵]参照)❷旅費規程の策定(3章[03損金処理]参照)❸社宅規程の策定(3章[04損金処理]参照)❹各種税額控除(3章[05税額控除]参照)❺消費税の簡易課税(3章[18消費税]参照)細かい解説は該当箇所に譲りますが、これらについてはできる限り取り入れたい節税策となります。事業者によってはすべてを取り入れることができないケースも考えられますが、数が少ないのでできるものはすべて取り入れておくことをおすすめします。これらだけでも数百万円単位で節税できることもあります。期ズレと違い、取り戻されることもありません。また、一言に節税といっても、それが法人税なのか所得税なのか、はたまた消費税なのかによって手法が異なります。見落としがちなものでいうと、印紙税などは文書の書き方によって税額が異なってくることがあるので、書き方をひと工夫するだけで節税できるケースもあります(5章[09印紙税]参照)。法人税だけでも所得税だけでも消費税だけでも片落ちになってしまうので、あらゆる税目に着目する必要があります。たとえば、消費税が少なくなったことで法人税・所得税が増えるというケースもあります。もっといえば、法人の価値を高めたことによって、相続税が上がってしまうというケースも考えられます。すべての税目はリンクしているので、「木を見て森を見ず」といった状況になってしまわないよう、本書を通して、各種税金のつながりを少しずつ理解していきましょう。

[12損金処理]経費を計上する時期決算の駆け込み需要は正解?決算の駆け込み需要という言葉があります。考え方としては経費の前倒しと同じなのですが、モノの場合はまとまった金額になるので、インパクトも大きくなります。飲み会であれば1回で数万円しか経費になりませんが、モノの場合は百万円単位で経費になる場合もあるでしょう。そういう意味では、理にかなっている手法といえます。不要なモノを買って経費を増やすのは愚の骨頂ただし、不要なものを購入しても何の意味もありません。ただ単に経費を垂れ流しているのと何ら変わりありません。であれば、買わないほうが余程いいでしょう。よく見られるケースにパソコンの購入がありますが、パソコンは大抵1台か2台は所有しているでしょうし、今すぐ使えなくなるようなことも少ないでしょう。それであれば、無理して当期に購入せず必要な時期に購入したほうがよいでしょう。いずれにせよ、購入した年度で経費にできますし、期ズレのため税額にも影響は与えません。なお、資産を購入する際に注意しなければならない点があります。購入価格が10万円以上の場合、基本的には一括で経費にすることができません。減価償却といわれる方法により数年間かけて経費にしていくことになります。なお、減価償却は月割で計上するので、期末日の属する月に購入したような場合は1年分ではなく1カ月分しか経費にできません。たとえば4年で経費にするパソコン24万円を期末に購入した場合、その年度の経費にできる金額は、「24万円÷4年÷12カ月」となり、わずか5000円しか経費にできないことになります。無理してパソコンを購入して5000円しか経費にできないのであれば、効果はないに等しくなってしまうので注意してください。ただし、購入価格が30万円未満であれば一括で経費にできることもあるので、次の表を参照してください。

[13本当の節税]本当に節税できる項目に注力する節税には将来的に取り戻されてしまう期ズレと、取り戻されない本当の節税があるという話をしました。将来的に会社に残るお金を最大化するためには、この本当の節税に注力しなければならないということがわかるでしょう。会社が存続している限り使える方法なので、積極的に取り入れるようにしましょう。ここで、代表的な本当の節税を再掲します。次の表を参照してください。

どの節税方法が使えるか専門家に相談を青色申告はほとんどの方が利用していると思いますが、規程については作っていない法人が驚くほど多いです。専門家に相談してなるべく早く策定したほうがよいでしょう。また、税額控除については、まずは制度を知ることから始めないといけないので、取りこぼしがないよう、これについても専門家に相談することをおすすめします。消費税については、そもそも免税の期間を長くすることが一番の節税ですが、法人設立初期にしか使えないので、該当する会社は少ないでしょう。簡易課税も、課税売上高が5000万円までという縛りがあるので、業種によってはまったく該当しない場合もあります。該当するならどちらが有利かを判定する程度の認識でよいでしょう。本当の節税は数も少ないですし、そもそも該当しないということもあるかと思いますが、該当するのであればその効果は絶大です。まずは専門家に相談して、自社に該当するものがあるのかを確認してみてください。自己判断で行うことはあまりおすすめできません。保険などに代表される期ズレとは違い、目先の税金を圧縮する効果はそこまで高くありませんが、未来永劫節税することができる方法なので、積極的に取り入れたいものです。

[14期ズレ]最終的に税金は減らない期ズレは最低限に抑える保険に代表される節税商品はそのすべてが期ズレであるというお話をしました。期ズレはいつかは取り戻されます。一時に多額の経費を計上できるのはとても魅力的ですが、最終的に税金は1円も減っていません。もちろん、期ズレには期ズレのメリットもあります。ここで期ズレのメリット・デメリットを確認していきましょう。期ズレのメリット❶当期の税金を減らすことができる❷保険を使えば多額の経費を計上することができる❸2カ月後に支払う法人税を圧縮できるやはり、目先の税金を減らせるという点が精神衛生上よいと思います。必要な経費や資産の購入であれば先取りしてしまってもよいでしょう。ただし、先取りしてもよいかどうかは入念に検証してください。また、保険については、出口戦略がある、毎年の利益にバラツキがあるような会社の場合はその効果を最大限に活かすことができますが、そうでない場合はただ保険料を支払うだけになってしまいます。自社の状況と保険商品の内容をよく勘案してから加入するようにしてください。期ズレのデメリット❶最終的には1円の税金も減らすことができない❷税務調査時に印象が悪くなる可能性もある❸資金繰りが悪くなる期ズレは将来取り戻されるので、支払う税金は期ズレを取っても取らなくても同じです。無理に期ズレを取りにいくのはおすすめできません。また、払った金額以上に税金が少なくなることはないので、結果として資金繰りは悪化します。資金繰りをよくするための節税のはずが、かえって資金繰りを悪化させていたのでは本末転倒です。

[15税金対策]税金を払わないと会社は大きくならない会社を大きくしたいという思いは、すべての経営者がもっているでしょう。それでは、会社を大きくするにはどうすればよいのでしょうか。答えは簡単で、利益を積み上げていけばよいのです。利益が増えることで投資も増えて、結果としてリターンが大きくなり、会社の規模は大きくなっていきます。ただ、利益が増えるということは、当然、税金も増えることになります。多額の税金を払ってしまったら会社が大きくなるのは無理だと思われる方もいるかもしれませんが、それは誤りで、税金を払わないと会社は大きくなりません。税金は利益に対して課税され、かつ、利益の金額を超えるほど課されることはありません。法人税の実効税率は最大で35%程度ですので、いい換えると65%の利益は残すことができるのです。これを履き違えて、税金を減らすために費用を増やした場合はどうなるのでしょうか。以下でシミュレートしてみましょう。次の図を参照してください。

ご覧の通り、会社に残る利益に1300万円もの差が生じます。たしかに、税金は700万円ほど少なくなっていますが、そもそもの利益が少なくなってしまいます。税金は、単純に「経費×税率」分しか差し引かれません。これが必要な経費であれば問題ないのですが、そうでないのであれば、「支出する意味がなかった」ことになります。効率のよい投資が会社を大きくする会社を大きくするためには、投資→回収→投資を繰り返していく必要があります。そして、回収分の利益に対しては税金が課せられます。可能な税金対策としては、投資を早めることです。早く投資をすることで回収も早くなるので、結果として会社は大きくなります。必要な投資を、必要な時期にしていくようにしましょう。

[01損金処理]無駄な経費の計上は資金繰りを悪くするやってはダメ!やってはいけない節税策の典型が、経費の垂れ流しとなってしまうものです。節税の名のもと、本来であれば必要のない資産を購入したり、無駄な飲み会などをしてもお金が減ってしまうだけなので、避けたほうがよいでしょう。また、期ズレは将来の経費を先取りするものなので垂れ流しではないと思われるかもしれませんが、必要な時期に支出しなければ無駄になってしまう可能性もあります。先取りした結果、経費を使う回数が増えただけだったということはよくある話なので、注意してください。意外と知られていないことですが、経費の計上時期というのはとても重要で、時期を見誤ると無駄になってしまう可能性が高くなります。節税は会社の資金繰りをよくするために行うものですが、無駄な経費を使えばそれだけ資金繰りも悪くなります。であれば、税金を払ったほうが得だったというケースも多く見られます。そうならないよう、経費の垂れ流しは絶対に避けなければなりません。取り戻されない「本当の節税策」以外で節税になるものはありません。期ズレは、単純に目先の税金を少なくするだけの対策です。長い目で見れば効果はありません。それにもかかわらず、こういった対策を打っていくというのは、大山鳴動して鼠一匹にもならない可能性があることを理解しておきましょう。無駄な経費を払うくらいなら給料を上げる税金を支払うのは無駄なことに感じるかもしれません。しかし、無駄な経費を使うことは税金を支払うよりも、もっともっと無駄なことです。必要のない経費を計上して利益を圧縮しても、会社にとって何らよいことはないということを認識しておいてください。無駄な経費を使うのであれば、従業員の給料や賞与に反映したほうがよほど効果的です。給与を増やすことで従業員のモチベーションや会社への忠誠心がアップし、結果として会社の業績がよくなっていくことは十分に考えられます。給料を上げると将来的に不安だというのであれば、福利厚生を充実させるのもよいでしょう。無駄に経費を使うくらいであれば、従業員に還元するのが会社のためによい選択肢となるでしょう。

[02期ズレ]決算賞与と決算セールどちらも所詮は期ズレやってはダメ!本来であれば翌期に計上するもののうち、一定の手順を踏むことで当期に計上できるものが2つあります。これらも期ズレではあるのですが、翌期に調整しやすい項目なので、使い勝手はよい手法です。ただし、使い方を間違えてしまうと余計な出費をしただけということになりかねないので、ここではその概要を確認していきましょう。翌期に調整が必要ならば決算賞与は支給しないひとつめは「決算賞与の計上」です。決算賞与は決算時に未払いであっても、一定の要件を満たすことで経費として計上することができます。従業員のモチベーションも上がるので決算賞与の支給は悪くない手段といえます。しかし、翌期の賞与で調整すればよいと考えている経営者も少なからずいます。決算賞与は払ったけれども、年間の賞与額は変わらなかったというケースも見受けられました。翌期に調整するつもりであれば、そもそも決算賞与を支給しないほうがよいかもしれません。税金はその場その場ですが、従業員は未来永劫会社のために働いてくれる貴重なリソースです。賞与を調整弁として使うのはあまりおすすめできません。節税目的の原価割れ販売は本末転倒2つめは決算セールです。決算時に原価割れ販売をすることで棚卸資産の評価損を計上する手法ですが、節税目的で原価割れ販売をするというのは本末転倒の気がします。少しでも利益を乗せて販売する戦略を練ったほうがよほど会社に残る利益は大きくなります。また、税務否認される可能性があることも否めません。リスクを負って損失を出す手法をあえてとるというのは、経営上問題があるのではないでしょうか。さらにいえば、原価割れ販売をすることで自社のブランドイメージが低下する恐れも十分にあり、その恩恵が多少の税額減であれば、よい施策といえないのではないでしょうか。決算賞与と決算セールは、利益の調整弁としておすすめの節税策といわれています。目先の税金のことだけを考えるのであれば確かに悪くない手法ですが、将来を見据えた場合は、むしろ愚策となってしまう可能性が高いです。どちらも所詮は期ズレです。期ズレのために将来を台無しにすることがないよう、十分注意してください。

[03決算賞与]経費にならない決算賞与の支給に注意やってはダメ!思ったよりも利益が増えそうな場合、決算賞与を支給する会社が多くあります。決算賞与は、一定の要件を満たすと、未払いであっても当期の経費(損金)として計上することができるので、使い勝手がよい手法といえるでしょう。未払いの賞与といえば賞与引当金がありますが、賞与引当金はあくまで概算計上ですので損金としては認められません。一方、決算賞与は、賞与を支払うことが確定している「確定債務」となるので、未払いであっても経費計上が認められるのです。ただし、その計上にあたってはいくつかのルールがあり、そのルールを満たしていない決算賞与の支給は節税効果がありません。翌月の末日が土日祝日の場合に注意経費計上のポイントは、支給対象者すべてに通知をし、かつ、その金額を翌月中に支払わなければならないということです。個人ごとに支給額を通知するのは大変なので、全社員がみる掲示板などで「月給の○カ月分を支給します」と通知するなどの方法がよいでしょう。メール等で通知する場合は、全員に通知が届いているかを確認する必要があるので、注意が必要です。また、翌月の末日が土日祝日だったような場合、その支給が翌々月になってしまうこともあるでしょう。この場合、「翌月中に全額支給」の要件を満たさなくなるので、注意してください。なお、全従業員と書きましたが、役員に決算賞与を支払った場合は損金不算入となります。ただし、使用人兼務役員の使用人分については従業員分とみなされるので、決算賞与を支給できます。最後に、賞与とセットで未払いの社会保険料を計上することになりますが、こちらについては経費にすることができません。経費にできるのは、賞与分のみとなります。決算賞与は使い勝手がよい手法ですが、要件を満たさず否認されるケースも見受けられます。計上要件を満たしているかの確認は必ずしておきましょう。

[04決算セール]低価法適用のための決算セールはナンセンスやってはダメ!決算セールと聞くと、「期末に在庫を一掃したいのか?」と思われるかもしれません。たしかにその側面もあるのですが、実は節税策のひとつでもあるのです。決算セールによって在庫を安く販売することで、その金額で販売をしたという事実を作ることができます。これがキモです。在庫の時価はいつの時価?在庫の評価方法には、原価法と低価法の2つがあります。原価法というのは購入価格を在庫の金額とするもので、低価法は時価が原価より下がっている場合、期末時点での時価を在庫の金額とする方法になります。原価法の場合は購入価格が在庫の金額となるだけですが、低価法の場合は時価を在庫金額とするので、時価が下がっていれば、含み損を当期の経費として計上できるというメリットがあります。では、ここでいう時価とは、何をもって時価というのでしょうか。時価の考え方には正味売却価額と再調達原価とがありますが、法人税基本通達5―2―11によると、「当該事業年度終了のときにおいてその棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額」とされているので、正味売却価額が時価ということになります。そうすると、決算セールにおいて値引販売をしていたのであれば、その金額こそが事業年度終了時の通常付される価額ということができます。その結果、低価法の恩恵を受けることができるのです。もちろん、取得原価よりも低い価格で販売していなければ低価法の適用が受けられないので、原価割れの販売をする必要があります。ただ低価法の適用を受けたいからという理由で決算セールをするのはナンセンスですが、不良在庫の処分をしたいような場合は悪くない手法であるといえます。低価法を適用するためには届け出が必要なお、棚卸資産の評価方法は、届け出をしないと最終仕入原価法による原価法が適用されます。低価法の適用を受けたい場合は、その事業年度開始日の前日までに棚卸資産の評価方法変更の届け出を提出する必要があります(設立1年目の場合は、1年目の確定申告書の提出期限まで)。また、現行の方法を採用してから相当期間(おおよそ3年)を経過していない場合、その申請は却下されるので注意してください。決算セールでの節税は、不良在庫を全部さばけなかったとしても、販売価格が取得原価を下回っていた場合に差額を評価損として計上することができます。決算セールで在庫を減らしてキャッシュを増やしながら、節税することもできるという状況を作り上げることができるのです。ただし、原価割れで販売するというのは本来あってはいけないことなので、そうならないようにしたいものです。また、評価損を受けるためだけにごく一部の在庫を原価割れで販売したような場合は、悪質と判断されて税務否認される可能性が高くなるので、注意してください。そういったリスクをすべて回避したいのであれば、原価割れ販売ではなく在庫を廃棄することも検討してみましょう。在庫を廃棄してしまえば廃棄分を経費にすることができるので、二束三文の収益しか見込めないような場合や、ブランドイメージを大切にしている場合は、廃棄を検討してもよいでしょう。

[05費用の先取り]翌期の経費の前倒しで効果を出すのは難しいやってはダメ!翌期の始めに予定している経費(費用)を先取りして当期に計上することで、当期の税金を少なくするというのは理にかなっている手法です。ただし、時期を早める必要があるのかどうかは慎重に検討しなければなりません。また、支出をしただけでは損金とならない可能性もあるので、注意が必要になります。闇雲に前倒しをしていると、税務調査で否認されてしまうことになりかねないので気をつけてください。今回は代表的な前倒し費用として以下のものを紹介していきます。・宣伝費……看板の作成、媒体へのバナー出稿など・修繕費……機械のメンテナンス、車両の修理など・交際費……飲食接待、ゴルフなど・社員旅行……国内旅行、海外旅行各前倒し費用の注意点宣伝費については、看板の作成やバナー出稿であれば前倒ししてもよいでしょう。バナー広告など等質等量の広告であれば、1年分を前払いしておけば全額を当期の損金にすることができます(短期前払費用といいます)。ただし、リスティング広告のデポジット(検索連動型広告の預かり金)をしたような場合は、使わなければ経費にならないので注意してください。修繕費については、そもそも前倒しをする必要があるのかという問題があります。使えている状態であればまだ修繕する必要はないかもしれません。修繕を行う場合は、修繕が期末までに完了しないと当期の経費にできないので、工事業者のスケジュールを確認しておく必要があります。交際費については、時期を早めることによって、結果として回数が増えただけだったということになりかねません。前倒しの効果は少ないので、必要なタイミングで行うのがよいでしょう。社員旅行については、多くても年1回が通常だと思います。すでに社員旅行を開催していたとすれば、無理に実施する必要はありません。また、期末日までに旅行が終わっていないと全額を経費にすることができなくなってしまいます。決算対策としていきなり実施するには無理がある項目です。なお、高額過ぎる社員旅行は給与課税される可能性があります。その点にも注意しましょう。経費の前倒しは効果があるのか?このように、前倒しして経費計上することが、よい結果を生むとはいい難い部分があります。無理して前倒しをする必要はまったくないので、前倒しをしても問題がないかをよく検証してから実施するようにしてください。前倒し計上は、翌期の費用を先取りするだけです。翌期であれば何の問題もなく経費として計上できたものを、無理して当期に入れることになるので、そこに歪みが生じてきます。期末の費用というのは、税務調査でも必ずチェックされ、不自然な経費については必ず指摘を受けます。計上要件を満たさない経費を計上していたりすると、悪質な会社というレッテルを貼られてしまう可能性もあるので、前倒し計上は慎重な判断に基づいて行いましょう。

[06保険]全額損金タイプは保険料が割高で貯蓄性も低いやってはダメ!法人が加入する保険は、個人が加入する保険と異なり、返戻金をアテにしたものが多くなっています。返戻金が高ければ高いほど貯蓄性が高いということができ、貯蓄性の高さによって損金にできる割合が異なってきます。人気があるのは何といっても全額損金タイプです。支払った保険料が全額損金として経費計上できるにもかかわらず、貯蓄性もあるので得した気分になるでしょう。しかし、全額損金タイプの返戻率は加入者の年齢にもよりますが、50~90%程度です。裏を返しますと、10~50%は戻ってこないことになります。そうすると、貯蓄性を考えて加入するというのは無理があるのではないでしょうか。「苦しくなったら解約」は損をする可能性が高いまた、全額損金タイプは保険料が割高である傾向があります。これは、単純に保障が手厚くなっているためで、被保険者が亡くなった場合に、5000万円や1億円といった保険金が支払われるものが多いです。そこまで高額の保障は必要なのでしょうか。さらにいうと、解約するまでの期間は決められた保険料を毎年支払っていく必要があるので、将来的なキャッシュ・フローを加味しておかなければなりません。苦しくなったら解約をすればよいと考える方もいますが、解約返戻金のピークは後の期間になるのが一般的なので、早めの解約は損になる傾向があります。「貯蓄を損金にすることができる!」という言葉に惹かれて加入される方が多いのですが、全額損金タイプの場合は貯蓄性も低く、ただ単に高額な保険料を支払っているだけとなってしまいます。であれば、個人で保険に入ったほうが余程よいでしょう。なお、個人の場合も最大で12万円(3種類の合計)まで所得控除ができるので、多少の節税効果を得ることができます。無用な保険に加入することは、単にお金を捨てることになりがちなので、本当に必要な保障なのかを考えて加入を検討してください。無駄に手厚い保障の保険は会社にとっても個人にとっても必要ありません。その際、返戻率については考えないようにしましょう。基本的には、全額損金タイプに入る必要はないと思います。保障が必要であれば、個人で加入してすることをおすすめします。

[07保険]貯蓄性の高い保険は短期間で解約すると大損やってはダメ!貯蓄性で保険加入を考えた場合、全額損金タイプはそもそもの返戻率が低いのであまりおすすめできません。しかし、1/2損金タイプや1/3損金タイプなどでは返戻率が100%近いものもあります。これであればかなり貯蓄性が高いということができるので「加入してもよいのでは?」と考える方もいるでしょう。このような保険の代表格は逓増定期保険と呼ばれるもので、ピーク時の返戻率が高いのが特徴です。しかし、裏を返すと、ピーク時以外の返戻率についてはかなり抑えられているので、短期間で解約をしてしまうと大損してしまうことになります。保険の加入は、慎重に慎重を重ねて検討するようにしてください。逓増定期保険に加入するならば入念に資金計画を立てるここでひとつ簡単な事例を紹介します。次の図を参照してください。

見てのとおり、4年目までは返戻率がかなり低くなっています。1年目にいたっては、6%しか戻らず、4年目でも70%しか戻りません。キャッシュ・フローの悪化により解約を余儀なくされた場合、保険会社が儲かるだけで、会社は大損です。返戻率が低過ぎて解約できないといった状況も考えられます。契約者貸付という制度もありますが、保険料を支払うために今まで支払った保険料を担保にお金を借りて金利を払うというのは、あまりに馬鹿馬鹿しい話です。もちろん、加入時に返戻率の説明は受けるので、少なくとも返戻率が高くなるまでの期間までキャッシュ・フローがもつような資金計画を作ってから加入するようにしてください。無理な加入は自分の首を絞めることになってしまいます。目先の節税のために大損してしまったケースも少なくありません。逓増定期保険への加入を検討しているならば、十分な資金繰りが見込める状況でなければならないことを肝に銘じておきましょう。また、必要だから加入するといった状況でなければ、無理に加入されないことをおすすめします。基本的に出口戦略のない逓増定期保険の加入はおすすめできません。キャッシュフローが悪化してしまうことが目に見えています。慎重に判断するようにしてください。

[08資産の購入]高額資産を急に買っても当期分の経費は少額!?やってはダメ!資産を購入しても、全額を当期の経費として計上することはできません。原則として、10万円以上の資産を購入した場合は、減価償却という方法で経費化していくことになります。減価償却の償却方法には定額法と定率法とがあり、定額法は単純に「取得価額÷耐用年数」、定率法は「帳簿価額×償却率」により計算をします(便宜上、残存価額は考慮していません)。定率法の償却率は定額法の償却率の2倍で、たとえば耐用年数5年だと、定額法は20%、定率法は40%の償却率となります。そうすると定率法のほうがお得なように感じるかもしれませんが、定率法は帳簿価額(取得価額からこれまで経費にした金額を控除した残額)に対して償却率を乗じていくので、最終的な減価償却費は定額法も定率法も同じです。目先の節税を考えた場合は定率法のほうが有利なので、多くの方が定率法を選択します。届け出をしなければ自動的に法定償却方法になるなお、償却方法には「法定償却方法」というものがあり、法人の場合、何の届け出もしなければ定率法になり(建物、建物附属設備、構築物、無形固定資産等は定額法のみ)、個人の場合は定額法が法定償却方法となります。減価償却の計算要素は、取得価額・耐用年数・残存価額(1円)の3つです。取得価額は購入した金額(付随費用を含む)、耐用年数は原則として耐用年数省令に定められている年数となります。どれもかなり長期間にわたって費用化しなければならないことがわかります。例えば、300万円で新車を購入しても、1年間で経費にできる金額は「300万円÷6年=50万円」になります(定額法)。300万円もの出費をしたにもかかわらず、経費になるのがたったの50万円では、少し損した気分になるのではないでしょうか。定率法にすれば2倍の償却費を計上することができますが、それでも物足りないくらいです。中古品なら耐用年数を短くできるそこで注目したいのが耐用年数です。4章[07損金処理]で具体的に説明しますが、耐用年数が短ければ費用化する期間を短くすることができるので、年間の経費を増やすことができます。また、耐用年数は新品の資産を基準としており、中古資産の場合は異なる耐用年数となります。応接セットや建物附属設備を中古で購入することはないかと思いますが、中古でもよいものは中古で購入して、短い期間で償却するのがよいでしょう。また、一定の中小企業者の場合、取得価額30万円未満の資産を購入したとき、全額を経費とすることができるので、こちらも利用したいものです。ただし、年間300万円が限度となり、かつ償却資産税の対象にもなります。この点が10万円未満の場合と異なる扱いになるので注意してください。

[01概要]やっておきたい節税策の具体例節税の効果★★★★★「さあ節税をしよう!」と考えたところで、何からやってよいのかわからないというのが実情でしょう。そこでこの章では、手をつけていってもらいたい順番に節税策を紹介していきます。節税には本当の節税と期ズレがあるというお話をしましたが、それに追加してオーナー社長の給与やマイカー、食事代などを経費にする方法も紹介していきます。オーナーや社長は所得税も節税できる特にオーナー社長関係については、本来であれば給与としてもらって所得税を支払った後の金額から支払うべきものを法人の経費とすることができるので、単純に所得税分の節税をすることができます。所得税の最高税率は55%(住民税含む)なので、節税効果はかなりの金額が見込まれます。法人税のみならず所得税も節税できる方法になるので、該当する場合はぜひ活用してください。また、国内や海外に会社をつくる手法は、ハードルこそ高くなりますが、それだけに効果はかなり大きくなるので、会社の発展に合わせて検討していきたい項目となります。まずはできるものから取り掛かってみてください。特に本当の節税部分については、できる限り多くの項目を押さえるようにしてください。節税効果を5段階で評価しているので、「節税の効果」の数が多いものから手をつけていくのも一考でしょう。これらの施策を取り入れることで、少なくとも数十万円~数百万円、会社によっては数千万円~億単位での節税が見込めます。本業と並行して行うくらいの気持ちで取り掛かってください。節税に取り掛かる際には税理士に相談を節税は税に直結します。そうすると、仮に利益率5%の会社であったとしたら、100万円の節税は2000万円の売上に匹敵することになります。2000万円の売上をつくることはそう簡単ではありませんが、100万円の節税はそこまで難しいものではありません。かなり面倒な項目もありますが、その苦労を負ってでもやる価値があるものなので、積極的に行うようにしてください。また、かなり専門的な部分もあるので、専門家に相談しながら実施することをおすすめします。

[02税制の恩恵]青色申告の承認を受ける節税の効果★★★★★法人の確定申告の種類には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。白色申告にはメリットがないため、ほとんどの法人が、税務上圧倒的に有利な青色申告の承認を受けています。青色申告の4つの特典では、青色申告にはどのような特典があるのでしょうか。代表的な特典として、次のものがあります。①欠損金の繰越控除、②特別償却・割増償却、③税額控除、④推計課税がされないこのうち、①欠損金の繰越控除は、法人がある期に赤字を出した場合に、その金額を翌期以降10年にわたって黒字から控除できるしくみです。たとえば、中小法人等が前期に税務上200万円の赤字を出し、当期の利益が100万円だったとします。本来であれば、当期の利益100万円が課税の対象となるところですが、前期の欠損金200万円のうち100万円をぶつけることができるため、当期の課税所得はゼロとなり、法人税を納税する必要がなくなります。残りの欠損金100万円は、さらに翌期へ繰り越すことができます。なお、資本金1億円超など一定の法人の場合、欠損金の控除額は、当期の税務上の利益の50%が限度となります。今回のケースの場合、当期は50万円が課税の対象となり、残りの欠損金150万円は翌期に繰り越すことになります。②特別償却・割増償却は、一定の資産などを購入した場合に、より多くの減価償却費を計上できる特典で、③税額控除(3章[05税額控除]参照)は、固定資産や人件費などについて一定の支出があった場合に、税額を直接控除できる特典です。これら2つの特典は、制度の新設や廃止、計算方法などの変更が頻繁に行われるため、適用を受けられる制度がないか、毎期情報を収集するとよいでしょう。④推計課税とは、同業他社との比較などによって、税務署が帳簿に基づかずに独自に税金を計算して課税する方法ですが、青色申告法人に行うことはできません。青色申告法人の場合、税務署は法人が作成した帳簿の調査に基づいて更正などの判断を行います。青色申告をするためには、事前に申請書を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。設立初年度の場合には設立後3カ月以内、または設立事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに「青色申告の承認申請書」を所轄税務署長に提出すれば、初年度から青色申告法人となります。設立第2期以降の場合は、適用を受けようとする事業年度開始日の前日までに申請書を提出する必要があります。申請書提出後、税務署から何も連絡がなければ、自動的に承認があったことになります。青色申告の承認を受けると、法定の帳簿記録と保存をしなければなりませんが、この点は白色申告とほとんど変わりません。青色申告になることによる手間やデメリットは特にないので、早めに承認を受けておくとよいでしょう。

[03損金処理]出張旅費規程に日当を定め損金にする節税の効果★★★★★出張に関する支出には、交通費、宿泊費などがありますが、出張旅費規程に日当などを定めていると、これら実費に加えて、日当なども法人の損金にすることができます。また、受け取る個人の側からみると、日当などは給与ではなく非課税所得となります。個人に対する給与にならないということは、社会保険料の負担も増加しません。さらに、国内出張に関する手当は、消費税の課税取引なので、仕入税額控除(4章[17消費税]参照)の対象となります。まさに、法人と個人どちらにも嬉しい制度です。なお、日当の目的は、「宿泊費や交通費以外にかかる食事代や少額な諸経費などを、出張の都度精算するのは煩わしいので定額で支給する」ということであり、節税のためにあるものではありません。よって、日当は同規模同業他社と同水準であることが望ましく、そのほかにも、全社員を対象とすることや、書類を保管しておく必要もあります。規程の目的と手続き方法出張旅費規程に定めるべき内容は次の通りです。❶規程の目的出張旅費規程の目的を定めます。「役員または社員が業務により出張する場合の手続及び旅費に関して定める」といった文章が一般的です。❷適用範囲全社員が対象になります。もし役員を別規程にする場合には、その旨を記載します。❸出張の定義出張の定義を定めます。移動距離が片道100キロを超えるものを出張と定義している会社が多いようです。また、距離によって、遠出張や近出張などを定めることもできます。❹旅費の種類と金額交通費、宿泊費、日当などの金額をそれぞれ定めます。交通費は実費精算です。宿泊費は一般的には実費精算ですが、定額支給とすることもできます。日当は宿泊の有無や距離で区別できるほか、長期の出張については減額することも可能です。いずれも、社長や役員、役職者、一般社員などの役職に応じて差をつけることができます。これらのほかに、出張時の食費に対する手当を支給する会社もあります。❺手続き方法出張申請書や出張報告書などの提出に関する手続き方法や必要な添付書類、提出期限などを定めます。領収書確認の手間も省ける出張旅費規程を定めると、節税効果だけでなく事務処理の効率化も図れます。所定の様式に必要な情報がまとまるため、処理しやすいほか、宿泊費を定額支給にすれば宿泊費の領収書を確認する必要もなくなります。

[04損金処理]社宅規程をつくって社員の手取りを増やす節税の効果★★★★☆社宅制度は、福利厚生の充実のみならず、税制面でのメリットがあります。給料増額よりも、同額の社宅を提供するほうが、双方にとってお得になります。社宅の種類には、法人が不動産を賃貸して役員や社員に提供する借り上げ社宅と、法人所有の不動産を役員や社員に貸す方法があります。ここでは、一般的な借り上げ社宅について説明します。家賃の受領額に注意する法人は、不動産の所有者と賃貸借契約を締結し、所有者に家賃などを支払い、それが全額法人の損金となります。そして、役員や社員からは一定額の家賃を受け取る必要があります。役員や社員から一定額の家賃を受領しないと、給与として課税されてしまうので、注意が必要です。たとえば、家賃が月10万円の部屋を借り上げて社宅にし、社員から3万円を受領し、その分社員の給与を7万円下げる場合、次のようになります。❶法人側負担する家賃10万円が損金となり、社員から受け取る3万円が益金となり、支払家賃として7万円の経費が発生します。しかし、社員の給与を7万円下げたことにより給与としての経費は7万円減少し、トータルとしては会社負担に変更はありません。❷社員側給与は7万円下がりますが、10万円の部屋に3万円で住めるため、家賃負担も7万円下がります。一見メリットがないようにみえますが、給与が7万円下がるため、所得税・住民税・社会保険料が軒並み下がり、結果として手取額が増えるということになります。このように、社宅制度で、法人の負担を増やすことなく、社員の手取額を増やすことができます。また、節税の論点ではありませんが、社宅は給与として課税されないことから、社会保険料の負担も増えません。社宅に似た福利厚生制度として、住宅手当もありますが、こちらは給与となるため個人の税負担が増えるほか、法人と個人の社会保険料も増加してしまいます。なお、役員に貸与する社宅については、豪華なものは社宅にできないほか、小規模な住宅でない場合は、受領すべき家賃の計算方法が変わるので注意が必要です。社宅制度を設ける場合には、トラブルを避けるためにも、社宅規程に具体的な費用負担や入居のルールなどを明確に定めておくことが必要です。

[05税額控除]各種税額控除を活用しよう節税の効果★★★★★法人税を直接安くできるのが税額控除です。期間限定で制定される租税特別措置法に基づくものが多く、継続的な情報収集が肝心です。メジャーなものを2つ紹介します。主要な税額控除❶機械等を取得した場合設備投資を後押しするために設けられた制度で、中小企業者などが新品の機械などを取得して事業に利用した場合、その取得価額の7%相当額(法人税額の20%が限度)を法人税額から控除できます。対象となる機械などは、次のようなものに限定されています。・1基160万円以上の機械および装置・1台120万円以上の事務処理の効率化、品質管理向上等に資する測定工具および検査工具・合計70万円以上のソフトウェア・3・5トン以上の運搬用普通自動車など控除しきれなかった金額は、翌事業年度に繰り越すことができます。なお、不動産業、電気業など一定の事業や、資本金が3000万円以上の法人などは対象外になります。❷研究開発税制企業の研究開発投資の促進を図る目的で、試験研究費関連については諸々の手厚い税額控除制度が設けられています。なお、対象となる試験研究費は従来、①製品の製造、②技術の考案、改良等がその範囲とされていましたが、これらに加え新たに③ビックデータ等を活用したサービス開発もその範囲に含まれました。制度はかなり複雑で、現状では「試験研究費の総額に係る税額控除制度」「中小企業技術基盤強化税制」「特別試験研究費に係る税額控除制度」「試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度(高水準型)」の4つから構成されています。ただし、複雑なだけあって、これらをうまく組み合わせることができると、なんと最大で法人税額の40%もの税額控除が可能となります。開発等を行っている企業は一度顧問税理士へ相談してみるとよいでしょう。

[07損金処理]譲渡契約をしマイカーを経費にする節税の効果★★★☆☆役員や従業員などが所有している車を法人の事業に利用し、実際にかかったガソリン代や高速代などを精算して法人の経費(損金)としているケースはよくありますが、このような場合、車検代や保険料、修理費用などは個人負担のままとなっていることがほとんどです。実は、車の名義を法人に変えると、これらの費用や減価償却費なども法人の経費にすることができます。法人に名義を変更してもプライベートで利用可能まず、個人所有の車について、法人と譲渡契約を締結して、法人に買い取ってもらいます。このときの金額は、実際に売買されている市場価格で計算します。市場価格より高い金額を設定した場合、役員報酬や給与とされてしまう可能性があるので、注意が必要です。役員報酬とされてしまうと、その金額は法人の損金とならず、さらに個人の給与所得として課税されることになり、会社と個人の両方に負担がかかります。譲渡後、車は法人名義となり、法人が保険料や車検代、修理費用などを支払った場合、それらはすべて法人の損金になります。それだけでなく、個人名義では計上することのできなかった減価償却費も、会社の損金にすることができます。なお、車を法人へ売却したときの売却益については、生活用財産の譲渡のため、個人に税金はかかりません。名義を法人に変更した後に、プライベートで利用している場合には、その部分は損金になりません。プライベートに利用する日数や距離などの具体的な割合に応じて、損金になる部分とならない部分を合理的に算定する必要があります。●個人名義のまま賃貸借する方法また、名義を変更せずに、個人から法人に車を賃貸借契約で貸し出す方法もあります。この場合、法人が個人に支払う賃貸料は損金となりますが、その反面、個人が会社から受け取るお金は個人の所得として課税の対象となります。また、税務署から賃貸料が合理的な金額でないと判断された場合、法人の損金と認められず役員報酬や給与と認定されてしまうリスクもあります。賃貸借契約を検討するよりも、思い切って法人に売却して名義変更したほうがよいでしょう。

[08損金処理]法人登記をし自宅を経費にする節税の効果★★★☆☆法人登記を自宅にしている場合、自宅にかかる支出のうち、法人が利用している部分に対応する金額を、法人の損金とすることが可能です。自宅が賃貸物件なのか、自己所有物件なのかで取り扱いが異なります。❶自宅が賃貸物件の場合間取りなどを見ながら、法人で利用している部分の部屋の床面積を計算し、全体の何%が法人利用になっているかを調べます。個人で支払っている賃料や管理費、共益費などのうち、法人が利用している割合の分だけ法人の損金にします。たとえば次の図のように、賃料などが10万円の自宅を賃貸し、そのうちの一室を法人のオフィスとして利用しているとします。オフィスとして利用している部分が物件全体の20%の床面積を占めているので、会社の損金となる賃料は、「10万円×20%=2万円」となります。

❷自宅が自己所有物件の場合法人と個人との間で賃貸借契約を締結し、賃料は近隣の相場を参考にして設定します。相場と比較して高すぎる場合、役員報酬と認定される可能性があるので気をつけます。法人が個人に支払う賃料を法人の損金とすることができます。しかしその裏返しで、個人に入るお金は不動産所得として課税の対象となりますので、毎年確定申告をする必要があり、賃料から法人に貸している部分に対応する固定資産税や減価償却費などを必要経費として差し引いて、不動産所得を計算します。また、いずれの場合でも、自宅に係る水道光熱費や通信費、防犯費用などのうち、法人利用部分に対応する金額も、法人の損金にすることができます。自宅を法人名義に変更すれば社宅制度を利用できる可能性もここでは、自宅に法人登記をした場合を紹介しましたが、自宅を個人名義から法人名義に変更してしまう方法もあります。その場合は、自宅利用部分が社宅扱いとなり、社宅制度を利用できる可能性もあります。

[09損金処理]通常の食事代を経費にする節税の効果★★★★☆毎日かかる飲食費を可能な限り損金にしたいと考える方は多いと思います。もちろん、プライベートな飲食費は法人の損金とすることはできませんが、法人の事業のために必要な飲食費であれば、損金とすることができます。会議費・交際費・福利厚生費として認められるものでは、どのような場合に飲食費を損金にすることが可能なのでしょうか。❶取引先との会議取引先との打ち合わせのために用意するお弁当やお茶、お菓子など、また、レストランで行う打ち合わせにかかる飲食費などは、会議費として損金とすることができます。❷取引先の接待取引先を接待するために支出した飲食費などは交際費として損金とすることができます。ただし、好きなだけ損金にすることは認められず、税務上の上限が定められています。資本金1億円以下の法人の場合には、少なくとも800万円までは損金になると考えて差し支えありません。このとき、1人あたり5000円以下の飲食費は、800万円の枠でカウントする必要がありません。トータルの金額を参加者の人数で割って、1人5000円以下になる飲食費については、交際費とは区別して「少額交際費」や「会議費」などの勘定科目で管理しておくとよいでしょう。❸社員との新年会など新年会や忘年会などで社員と飲食する場合は、福利厚生費として損金にすることができます。ただし、「もっぱら従業員の慰安のため」に行うものでなければなりません。したがって、全社員を対象とするものであることが大前提であり、特定の部署の人たちだけで行う新年会や、希望者のみが参加する二次会などは福利厚生費ではなく給与となります。また、豪華すぎる場合なども、福利厚生費ではなく、給与と認定される可能性があるので、常識的な範囲内で行う必要があります。ビンゴ大会の景品なども常識的な範囲内であれば福利厚生費となります。❹出張時の飲食出張旅費規程(3章[03損金処理]参照)に、食費補助の定めをおいている場合は、福利厚生費として損金とすることができます。判断に悩む場合は客観視するこのように、事業に関連する飲食費は損金にすることができますが、調査があったときに事業との関連性を立証できるよう、「誰が」「いつ」「誰と」「何人で」「何のために飲食をしたのか」という記録と合わせて領収書などをしっかりと保管しておきましょう。事業に関連する飲食費か否かの判断は非常に難しいものです。損金になるかどうか判断に悩んだときには、「外部の人がこの経費を見たらどう思うだろうか」という客観的な観点から考えてみるとよいでしょう。

[10損金処理]残業時の食事代を経費にする節税の効果★★☆☆☆残業時の食事代を法人が補助する場合、法人の福利厚生費として損金にすることが可能です。要件を満たさないと、給与と認定されて思わぬ課税をされることになるので、要件を確認したうえで導入しましょう。❶全社員を対象としていることあくまでも福利厚生制度のひとつなので、全社員を対象とする必要があります。社長や役員など、特定の人だけを対象とした場合は、その人に対する給与として個人に課税されることになります。❷実費精算であることレシートなどの資料をもとに、実費で精算しなければなりません。たとえば「一回の残業時の食事につき500円支給」などと概算額で支給した場合には、給与として個人に課税されることになります。❸残業時の食事として適切な金額であること残業時の食事なので、夕食としてふさわしい金額に留める必要があります。一回の食事が1人数千円などの場合には、残業中の食事として高すぎるので、福利厚生費とは認められず、給与とされてしまう可能性が高くなります。リスク回避のために規程を定めておくなお、役員に対する残業時の食費補助が給与とされてしまうと、この給与は定期同額給与(3章[06損金処理]参照)に該当しないので、支給額は会社の損金とならなくなってしまいます。会社も個人も税金の負担が発生してしまうので、役員については特に注意が必要です。食事にかかる支出は、税務調査が入ったときに、会社の考えに反して交際費や給与などに認定されてしまうリスクが常に付きまといます。税務調査時に福利厚生制度であることを主張できるよう、残業時の食事に関する規程を定め、食事をする時間帯(夜○時以降や残業○時間以上など)や上限額(1000円以下など)、申請方法(部門長の承認など)を明確にしておくとよいでしょう。

[11損金処理]資格などの技能習得費を経費にする節税の効果★★☆☆☆技能習得費などのように、「近い将来、会社の売上や利益に貢献するための知識や経験を得るために必要な費用」は法人の損金にすることが可能です。解釈に幅がありますが、ポイントとしては次の2つです。❶職務に直接必要な技術、知識、免許、資格を取得させるための費用であること❷金額的に適正であること法人の営む業種によって、必要な資格や知識などは異なりますが、たとえば次のようなものであれば、技能習得費として法人の損金にすることができます。①レストランのスタッフがワインソムリエや野菜ソムリエの資格をとるための費用②保険代理店のスタッフが、FPの資格をとるための費用③病院のスタッフが、医療事務の資格をとるための費用④海外進出を考えている会社の営業職が英会話教室に通う費用⑤経理担当者が、簿記や国際会計基準を学ぶための費用⑥服飾販売員が、カラーコーディネーターの資格をとるための費用このように、さまざまなものを技能習得費として法人の損金とすることができますが、法人の事業にまったく関係ないものや、個人的な趣味、勉強のための費用は損金として認められません。「現在および将来の法人の経営にとって必要か否か」という観点から、判断をする必要があります。技能習得までの期間を設けることも可能福利厚生の一環として自己啓発のための通信教育のメニューを提供するなど、法人が負担した技能習得費が事業との関連が薄い場合は、損金とならず個人に対する給与とされてしまう可能性があるので注意が必要です。また、技能習得費を全額法人負担とすることも可能ですが、半額または一部を本人負担としたり、「○年以内に合格した場合には会社が負担する」といった条件をつけたりすることもできます。法人の事業にとってどのような資格が有益か、いくらまで法人が負担するかなど、規程をつくって明確にしておくとよいでしょう。

[12損金処理]事業に関連する旅費を経費にする節税の効果★★☆☆☆役員だけで行う旅行や、プライベートな旅行は損金にすることはできず、法人が負担した場合には給与となりますが、法人の事業に関連する旅費については、損金とすることが可能です。たとえば、役員や社員の福利厚生のための社員旅行や研修旅行、海外視察旅行などは、事業に関連する旅費として損金にすることができます。給与課税されないように事前に要件を確認する社員旅行については、法人が役員や社員に供与する経済的利益の額が少額である必要があるほか、次のような要件をすべて満たす必要があります。・国内旅行の場合は、4泊5日以内・海外旅行の場合は、外国での滞在が4泊5日以内・参加者人数が全体の50%以上・不参加者に金銭の支給をしない経済的利益が少額かどうかの判断は法人の負担額が社員1人あたりおおむね10万円程度と考えるのが一般的です。そのため、海外旅行など旅費がかかる社員旅行の場合には、旅費の半額を社員負担などとする会社が多いようです。また、社員旅行に家族の参加を認めることも可能ですが、家族は社員ではないので福利厚生費とすることはできません。家族の参加にかかる旅費は、その全額を参加者負担にする必要があります。福利厚生費と認められない金額が発生した場合には、役員や社員に対する給与として課税されることになるので、注意が必要です。さらに、役員の場合には定期同額給与ではないため(3章[06損金処理]参照)、税務上は全額が法人の損金となりません。研修旅行については、法人の業務のために直接必要なものであれば、全額が損金となります。直接必要でない部分の費用は、損金とはならず、参加者に対する給与となります。海外視察旅行については、法人の事業の遂行上直接必要であると認められる場合に限り、旅費や滞在費などを損金とすることができます。

[13損金処理]保険の積立金を経費にする節税の効果★☆☆☆☆2章[07保険]で、保険料の半額が損金、残りの半額が積立金などとなる逓増定期保険を紹介しました。では、何年にもわたって積み立てた多額の保険金は、いつ、どのようなタイミングで損金になるのでしょうか。損金になる3つのパターン❶保険事故が発生した場合保険事故が発生し、保険金の支払いがされた場合、そのことによって保険契約が失効となるのであれば、積立金の額は損金となります。逆に、保険事故が発生しても、保険契約が失効しない場合は、積立金は損金とならず、そのまま積み立てておくことになります。❷保険を解約した場合保険契約を解約して払い戻しを受けた場合には、積立金の額が損金となります。このとき、法人が保険会社から受け取る解約返戻金の額は、法人の益金となります。❸保険の名義を変更した場合保険契約を法人から個人へ名義変更した場合も、積立金の額は損金となります。このとき、法人が個人から受け取る金銭(解約返戻金相当額など)がある場合には、法人の益金となります。これらのほかにも、保険契約の転換や払済保険へ変更した場合にも、積立金の額が損金となり、解約返戻金相当額は益金となります。したがって、保険の解約や名義変更、転換などを検討する場合には、積立金の額、解約返戻金の額、解約などによって発生する法人税等の負担額などを網羅的に把握し、タイミングを見極めることが重要です。保険は万が一の事態に備えて加入するものですが、法人の資金繰りなどにも大きく影響してくるので、出口まで考えた長期的な視野で検討しなければなりません。保険の出口戦略については、4章[09損金処理]で詳しく紹介します。

[14損金処理]ゴルフクラブなどの費用を経費にする節税の効果★★★☆☆ゴルフクラブやスポーツクラブの会費や利用料を会社の損金にしたい場合、どのような点に気をつければよいでしょうか。これまで説明しているとおり、法人の事業との関連性がなければ、法人の損金にすることはできないので、理由づけを考える必要があります。福利厚生制度であることを明確化する❶接待ゴルフ取引先とのゴルフは、法人にとって重要な商談の場と考えられます。ゴルフ場といういつもとは違う環境で、ゴルフをプレーしながら取引先と商談をしたり、本音を聞きだしたり、親睦を深めることによって新たな営業先を紹介してもらったり、というチャンスがたくさんあるでしょう。このような取引先の接待のためのゴルフの利用料を法人が負担した場合には、法人の事業との関連性が認められるので、交際費として損金にすることが可能と考えられます。もちろん、取引先の接待とは関係ないプライベートな利用の場合には、事業との関連性が認められないので、法人が負担した利用料は個人に対する給与となります。役員の場合には、定期同額給与に該当しないため、全額が損金となりません(3章[06損金処理]参照)。❷スポーツクラブスポーツクラブの会費については、全社員の健康増進を目的とする福利厚生制度であれば、福利厚生費として法人の損金とすることが可能でしょう。福利厚生制度ですので、役員など一部の人に限定してはならず、全社員を対象とする必要があります。もし一部の人に限定した場合には、先ほどと同様に、個人に対する給与となります。法人がゴルフクラブやスポーツクラブの会費を負担する場合には、福利厚生制度であることを明確にするために、規程を定めてルールや利用方法などを明確にしておくとよいでしょう。

[15税制の恩恵]会社を複数つくる分社化で法人税を節税節税の効果★★★★☆法人税は累進税率が適用されており、資本金1億円以下の一定の法人の場合、所得金額が年間800万円までは軽減税率の恩恵を受けることができます。一般の法人税率が23・2%であるのに対し、軽減税率は15%になるので、実に8・2%も低い税率が適用されることになります。最大で「800万円×8・2%=65万6000円」も節税できることになるので、かなり大きなメリットであるといえるでしょう。また、法人住民税および法人事業税についてもこういった累進税率があり、所得金額が少なければ税金が少なくなるような税制となっています。❶法人住民税(東京23区内に事務所がある場合)・資本金1億円以下、かつ、法人税額1000万円以下……12・9%・それ以外……16・3%❷法人事業税(東京都の場合)・資本金1億円以下、かつ、年所得金額2500万円以下年400万円以下……3・4%年400万円超800万円以下……5・1%年800万円超……6・7%・それ以外年400万円以下……3・65%年400万円超800万円以下……5・465%年800万円超……7・18%※資本金1000万円以上、かつ、事務所または事業所がある都道府県の数が3以上の場合は、軽減税率不適用法人となり、一律7・18%の税率が適用されます。中小・大企業どちらでもメリットの大きい分社化そこで検討したいのが分社化です。ひとつの会社で異なる事業をやるような場合は、別会社をつくることで法人数を増やし、軽減税率の恩恵を受けることができます。ひとつの法人よりも複数にしたほうが節税メリットは大きくなります。ただし、既存事業を分割して新会社を設立したような場合は、このような恩恵を受けられないケースがあるので、注意が必要です。必ず専門家に相談するようにしてください。また、中小法人の場合は、交際費が年間800万円までは全額損金算入することができます。分社化をした場合は、「会社の数×800万円」までを損金算入することができるので、交際費を多く使う業種の場合は、こちらのメリットも大きいでしょう。分社化をすることで手間は増えますが、節税メリットも大きくなるので、ある程度の規模になってきたら会社を複数つくることを検討してみてもよいでしょう。

[16税制の恩恵]会社を複数つくる分社化で消費税を節税節税の効果★★★☆☆新たに会社を設立した場合は新設法人となるので、最大2年間、消費税の納税義務が免除される場合があります。そうすると、新たに会社をつくれば、最大2年間は消費税を支払わなくてもよいケースがあることになります。年間の課税売上高が2000万円、仕入率が50%とすると、「2000万円×10%×50%×2年=200万円」もの消費税を支払わなくてよいことになります(消費税増税後(10%)で計算。ただし、当該金額は法人税等の課税対象となるので、「200万円×税率」分の法人税等が課せられます)。売上や支払額によって免税期間が短くなるただし、「免税事業者になればお得だ!」ということで会社を設立したものの、実は免税事業者の要件を満たしていなかったというケースがあります。実務上、非常に大切な論点になるので、順に確認していきましょう。❶2年間まるまる免税とはならないケース消費税は基準期間(原則としてその事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1000万円以下の場合、納税義務が免除されます(資本金1000万円未満の法人に限ります)。したがって、新設法人の1期目・2期目については基準期間がないので、原則として免税事業者となります。ただし、特定期間(原則としてその事業年度の前事業年度開始日以後6カ月の期間)の課税売上高および給与等支払額が1000万円超の場合、2年目は免税事業者となることができません。なお、「課税売上高および給与等支払額が1000万円超」なので、いずれかが1000万円以下の場合には2年目も免税事業者となることができます。もちろん、1年目は特定期間すらないので、1年目は必ず免税事業者となることができます。少なくとも1年目は確実に免税事業者、2年目については判定が入ってくるというように理解しておくとよいでしょう。❷そもそも免税事業者となれないケース資本金1000万円未満で新たに設立された法人は、原則として2年間消費税の免税事業者となることができます。ですが、特定新規設立法人に該当する場合は、設立1年目・2年目であっても免税事業者となることができません。なお、特定新規設立法人とは、下記の要件を満たす法人をいいます。・新規設立法人が他の法人または個人に支配されている(株式等の50%超を直接または間接に保有されている関係)・上記の法人または個人および当該法人または個人と一定の特殊関係にある法人のうちいずれかの者の基準期間相当期間(=新規設立法人の基準期間に該当する期間)における課税売上高が5億円超せっかく会社を設立してもこれらの要件に該当してしまう場合は、節税メリットが少なくなってしまいます。免税事業者の判定はかなり複雑になっているので、免税事業者となるために会社を設立しようとする場合は、必ず専門家に相談するようにしてください。特に、売上高5億円超の会社が新たに会社を設立する場合は、特定新規設立法人に該当するかしないかの判断をしなければならないので注意が必要です。また、法人だけでなく、個人事業者の法人成であっても引っ掛かってくる規定となるので、法人でないから大丈夫だと考えないようにしてください。小売業など、売上高の大きい業種で法人成する場合は、特に注意が必要です。免税事業者の要件を満たす場合は、それだけでも十分なメリットが受けられます。業種によっては数千万円単位での節税ができることもあります。

[17消費税]消費税の免税期間を長くする節税の効果★★★★★消費税の納税義務があるか否かの判定は、基準期間における課税売上高が1000万円超かどうかによって判定をします。基準期間は、原則としてその事業年度の前々事業年度を指すので、設立1年目・2年目については基準期間がなく、免税事業者となります。ただし、基準期間がない事業年度のうち、資本金が1000万円以上であったり、特定期間の課税売上高および給与等支払額が1000万円超の場合、2年目は免税事業者となることができません。また、そもそも特定新規設立法人に該当する場合は、1年目から課税事業者となることになります(3章[16税制の恩恵]参照)。1年目を7カ月とし課税を回避さて、それでは免税期間を最も長くするためにはどうすればよいのでしょうか。特定新規設立法人に該当しない前提で、まず資本金を1000万円未満としなければなりません。ここでいう資本金には資本準備金を含まないので、資本金と資本準備金を合わせて2000万円未満ならば、資本金を1000万円未満とすることができます(払込資本のうち最大50%は資本準備金とすることができるため)。そして、課税事業者選択届出書を提出しないことで、少なくとも設立1年目は免税事業者となることができます。さて、問題となるのが設立2年目です。設立2年目は特定期間の判定をしなければならないので、原則としてその事業年度の前事業年度開始日から6カ月の期間の課税売上高および給与等支払額によって判定を行います。この期間の課税売上高または給与等支払額のいずれかが1000万円以下の場合は、2年目も免税事業者となるので、2年間まるまる免税期間を堪能することができます。問題となるのが、特定期間の課税売上高および給与等支払額が1000万円超のケースです。このままでいくと2年目が課税事業者になってしまいます。この場合、1年目を7カ月にしておくと、1年目・2年目ともに免税事業者となることができます。なぜかというと、特定期間が7カ月以下の場合は特定期間の判定を行わないからです。小売業などは、半年間で売上高も給与等支払額も1000万円超となってしまうでしょうから、1年目を7カ月とすることで対応するようにしてください。そうすることで、最大1年7月間、免税事業者でいることができます。

[18消費税]「原則」より少なく消費税を納税する節税の効果★★★☆☆消費税の納税額は、課税売上から課税仕入(課税売上割合を加味)を控除して算定します。そうすると、「赤字の場合は消費税を納税する必要はないのか?」と思うかもしれませんが、赤字でも納税するケースがあります。その原因となる代表格が「給与」です。給与は消費税の非課税項目であるため、課税仕入とすることができません。したがって、給与を含めないで赤字であれば、納税どころか払い過ぎた消費税を還付してもらえることにもなりますが、通常は給与を含めないでも赤字になるということはまずないので、納税するケースが多いでしょう。このように、「課税売上高-課税仕入高」がゼロ超の場合は納税、ゼロ未満の場合は還付される計算方式を「原則法」といいます。なお、原則があれば例外があるのが世の常で、例外として消費税には簡易課税制度というものがあります。簡易課税の場合、概算の仕入率を使って納付する消費税額を算定します。仕入率は業種によって異なり、具体的には次のとおりです。第一種事業(卸売業)……90%第二種事業(小売業)……80%第三種事業(製造業等)……70%第四種事業(その他の事業)……60%第五種事業(サービス業、保険業等)……50%第六種事業(不動産業)……40%たとえばサービス業を営んでいる場合、「課税売上高に係る消費税額×50%」が納税額となります。給与の比率が高いような場合は、原則よりも簡易課税で申告したほうが有利になるケースが多いでしょう。まずは、自社における課税仕入の割合を算出して、上記のみなし仕入率と照らし合わせてみてください。簡易課税のほうが有利そうであれば、簡易課税制度を選択したほうがよいでしょう。ただし、簡易課税制度を受けるには、2つの条件があります。ひとつめは基準期間における課税売上高が5000万円以下であることです。5000万円超の場合は選択できません。2つめは、簡易課税の適用を受けようとする事業年度開始日の前日(=前事業年度の末日)までに、消費税簡易課税制度選択届出書を提出しなければならないことです。「当期から受けます」というのはできません。簡易課税の2つのデメリットを理解しておくまた、簡易課税には2つのデメリットがあります。ひとつめは一度簡易課税を選択したら2年間は簡易課税を続けなければならないという制度です。2つめは、必ず納税になるということです。売上高に対して仕入率を乗じて納税額を計算する仕組み上、還付を受けることができません。設備投資をした場合などは多額の課税仕入が生じますが、簡易課税ではその分の課税仕入を控除することができないので、設備投資の予定がある時期については、簡易課税の適用を受けないほうがよいでしょう。自社の設備投資計画も勘案して、原則が有利か、簡易が有利かを判定して選択するようにしましょう。なお、簡易課税をやめる場合は、やめようとする事業年度開始日の前日までに消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出する必要があります。なお、消費税増税による経過措置がありますが、本書では説明を割愛しています。

[19税制の恩恵]海外進出する場合は現地法人の設立を検討節税の効果★★☆☆☆近年では、海外進出をする企業が増加してきています。海外では、日本より低い税率の国や地域がたくさんあるので、そういった場所で事業を行うのであれば、日本法人としてよりも現地法人を設立して低い税率の恩恵を受けたほうが得になります。課税適用除外の要件とは?しかし、そんなにうまい話ばかりではないもので、日本法人または居住者が合計で50%超を直接および間接に保有する海外子会社を有する場合は、タックスヘイブン対策税制の適用を受けることになり、海外子会社の所得の全部または一部を日本法人の所得として計上しなければならなくなります(1章[07益金]参照)。ただし、適用が除外される要件があり、具体的には以下の4点になります(ペーパーカンパニー等の場合はこれらの基準は適用されず、当該国または地域の税負担率が30%未満であれば全額が合算課税の対象となります)。・事業基準……主たる事業が株式の保有、船舶・航空機リース等ではない・実体基準……本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有する・管理支配基準……本店所在地国において事業の管理・支払い・運営を自ら行っている・所在地国基準……次の2つのケースがあります。(左記以外の業種)→主として所在地国で事業を行っている非関連者基準(卸売業など7業種)→主として関連者以外の者と取引を行っているこれらの要件をすべて満たし、かつ、当該国または地域の税負担率が20%以上の場合は合算課税を免れることができ、20%未満の場合は受動的所得(利子・配当・無形固定資産の使用料など)部分が合算課税されることになります。また、いずれかの要件を満たさない場合は、当該国または地域の税負担率が20%以上であれば合算課税の適用は受けませんが、20%未満の場合は全額が合算課税となります。何やら難しい話をしてしまいましたが、要するに、現地で事業を真っ当に行っていれば、税負担率が20%未満であっても、受動的所得部分しか課税されないので、大きな影響はないということになります。

[20損金処理]10万円以上の固定資産を短期間で償却する節税の効果★★☆☆☆10万円以上の固定資産は、原則として減価償却によって毎期費用化しなければなりませんが、例外的に、もっと短期間で償却できる方法があります。❶一括償却資産20万円未満の固定資産を一括償却資産といい、税務上3年間で損金とすることができます。償却費は、取得価額の合計額×当期の月数/36で計算します。ただし、翌期以降に売却や廃棄処分等をしても、3年間は同様の処理で償却費を計上しなければなりません。たとえば、18万円のPCを10台、期末の最終月に購入して利用を開始したとします。一括償却資産として処理すると、「180万円×12/36=60万円」をその事業年度の償却費として損金とすることができます。翌期および翌々期も同額です。❷少額減価償却資産中小企業者等(資本金の額が1億円以下などの法人)の場合、取得価額が30万円未満の少額減価償却資産を取得したときは、全額を損金(1事業年度あたり300万円が限度)とすることができます。積極的に利用すべき資産制度先ほどのPC10台を少額減価償却資産として処理すると、180万円全額を取得した事業年度の損金とすることが可能です。もし、このPCを通常の方法で減価償却すると、耐用年数は4年、定率法償却率は0・500なので、初年度の減価償却費は、「18万円×0・500×1月/12月×10台=7万5000円」となります。取得した事業年度の損金になる金額は、一括償却資産として処理すると60万円、少額減価償却資産として処理すると180万円、通常の固定資産として処理すると7万5000円と、大きく差が開いています。一括償却資産や少額減価償却資産として処理したほうが、通常の償却よりも損金化できるタイミングが早いため、お得といえます。10万円超20万円未満(中小企業者等の場合には30万円未満)の資産を取得した際は、積極的にこれらの制度を活用するとよいでしょう。

[21税制の恩恵]資本金を1億円以下にしよう!節税の効果★★☆☆☆資本金が1億円以下の法人(大規模法人や大法人と一定の関係がある場合を除く)には、次のようなお得な規定が適用されます。①軽減税率②年800万円の交際費枠③繰越欠損金の全額控除④欠損金の繰戻還付⑤少額減価償却資産の損金算入特例の適用⑥留保金課税免除⑦各種特別控除、特別償却の適用⑧外形標準課税の適用除外以下、順に説明していきます。

8つの規定をうまく活用する❶税率軽減資本金1億円超の法人の場合は、法人税の税率は23・2%となりますが、資本金1億円以下の法人は、年800万円までの所得については15~19%の税率となります。❷年800万円の交際費枠の適用資本金1億円超の法人の場合は、外部との飲食代の50%が損金算入されますが、資本金1億円以下の法人の場合は、「外部との飲食代の50%」と「年間800万円」のうちいずれか多い金額までが損金算入されます。すなわち、年間800万円までは用途を問わず無条件に損金算入されることになります。❸繰越欠損金の全額控除資本金1億円超の法人の場合は、過去10年以内(平成30年4月1日開始事業年度の場合)に発生した繰越欠損金のうちその事業年度の所得金額の50/100までを当期の所得金額から控除することができます。これに対し、資本金1億円以下の法人の場合は、過去10年以内に発生した繰越欠損金のうちその事業年度の所得金額までを控除できます。すなわち、当期の所得金額より過去10年以内に発生した繰越欠損金のほうが多い場合は、当期の所得はゼロということになります。❹欠損金の繰戻還付この制度は、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合(「欠損事業年度」)において、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度(「還付所得事業年度」)に繰り戻して法人税額の還付を請求できるというものです。たとえば、前期1000万円の課税所得が出て法人税を150万円支払っていた場合で、当期1000万円の欠損となったときは、前期支払った150万円の法人税の還付を受けられるということになります。欠損金の繰戻還付制度は、資本金1億円超の法人の場合は受けることができず、資本金1億円以下の法人のみが受けることができます。❺少額減価償却資産の損金算入特例の適用資本金1億円超の法人が30万円未満の固定資産を取得した場合、法定耐用年数に応じて各事業年度で減価償却を行うのに対し、資本金1億円以下の法人の場合は、年間300万円までは全額を損金算入できます(3章[20損金処理]参照)。❻留保金課税免除特定の同族会社(株主1グループで50%以上の株式保有等)が、利益を配当等せず内部留保をした場合には、課税留保金額に10~20%を乗じた金額が、通常の法人税とは別に課されてしまうという制度です。この制度は、資本金1億円超の法人の場合は対象となり、資本金1億円以下の法人は、適用が除外されています。❼各種特別控除、特別償却の適用次のような特別償却や特別控除については、資本金1億円超の法人は受けることができず、資本金1億円以下の法人のみが受けることができます。・中小企業等経営強化税制・中小企業投資促進税制(特別償却のみ)・商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特別償却のみ)など❽外形標準課税の適用除外外形標準課税とは、地方税の計算において赤字でも課税できるように、儲け(所得)のみに課税するのではなく、報酬給与、利子、賃借料、資本金に対しても税金を課す課税方式をいいます。この外形標準課税ですが、資本金1億円超の法人が対象法人となり、資本金1億円以下の法人には適用されません。これらのように、資本金が1億円以下と1億円超では、適用の有無がかなり異なってきます。1億円以下のほうが有利な制度が多いので、資本金1億円以上の法人である場合は、減資の検討をしてみてもよいかもしれません。

[01損金処理]積極的にやりたい節税策期ズレでも効果大な手法この章で紹介する節税策は、今すぐにできる節税策ではないものもありますが、該当した場合は積極的にやっていきたい節税策です。基本的には期ズレなのですが、金額が多額になり、かつ、期ズレの期間が長くなるものがあります。こういった場合、取り戻されるまで時間がかかるので、期ズレであっても積極的にとっていきたい手法です。期ズレでも効果的な節税策簡単に分類すると、次のようになります。❶保険関係❷資産取得関係❸その他保険関係については、数百万円から数千万円を損金にする手法を紹介します。もちろん期ズレなのでどこかで取り戻されるのですが、取り戻される場合の戦略についても紹介します。ただし、保険については勘違いしている方も多いので、注意したい点についても詳細を説明していきます。資産取得関係については、建物や構築物のように償却期間が長いものについて、その期間を短くするような手法を紹介します。10年、20年かけて経費にするのは気が遠くなるでしょうが、この手法を使うことで、ある程度まとまった金額を、短期間で経費にすることが可能になります。設備が古くなってくると収益性も悪化するので、収益性が高い初期に多額の経費を計上することで、課税所得をコントロールすることが可能になります。設備投資をした場合などは、必ず実施するようにしてください。その他については、あまり該当することはないでしょうが、給与を減らしたり、所得をコントロールしたりして、あえて当期の税金を増やすことで節税するというトリッキーな方法になります。いずれの方法についても、細かい注意点があるので各項をよく読んで理解を深めてから実施するようにしてください。また、顧問税理士がいる場合は、必ず顧問税理士の判断も仰ぐようにしましょう。そうすることで、リスク回避することができるでしょう。

[02損金処理]退職金の3つのメリット節税の効果★★★★☆保険の出口戦略として、退職金で相殺するだけだと、「ただ単に、経費を入れただけじゃないか」と、あまり魅力を感じない方もいるでしょう。しかし、この退職金という経費は税制上、非常に優遇されています。退職金のメリットは「退職所得控除」「1/2課税」「分離課税」の3点です。退職金にかかる税金は抑えられる退職所得控除は「給与所得控除」のように、無条件で所得を控除することができる制度です。退職所得控除は勤続年数により算定され、勤続年数20年以下の場合は「40万円×年数」、20年超の場合は、「800万円(40万円×20年)+70万円×20年超の年数」となります(1年未満の端数は切り上げて1年とします)。たとえば、勤続30年の場合、「800万円+70万円×10年=1500万円」も控除することができます。この場合、退職金が1500万円以下であれば、全額控除となり、税金は1円もかかりません。退職所得控除だけでも結構な金額になりますが、さらに控除後の金額に1/2を乗じた金額が課税対象額となります。したがって、先の事例で退職金が2000万円とした場合、「2000万円-1500万円=500万円」の1/2である250万円が課税対象額となります。最後に分離課税です。分離課税の場合は分離課税単独で税計算を行うので、給与所得等に加算されません。所得税は超過累進税率が適用されるので、所得が高くなると税率も高くなるのですが、退職所得は別に計算をするので悪戯に税率が高くなることがありません。少し難しい部分もあるので、簡単な事例で検証してみましょう。次図を参照してください。

3000万円の収入に対し、税額は約100万円となります。実効税率はわずか3・3%です。ここまで低い税率が適用されるのは退職所得以外にありません。なお、仮に3000万円を給与所得で受け取った場合の所得税額は約830万円となり、700万円以上の節税効果があります。退職所得にかかる税額は相当少なくなるので、毎月の役員報酬を少し下げて退職金で受け取るようにすれば、個人の手取り金額を最大化することが可能になります。内部留保が溜まっている場合には、役員報酬を下げずに役員退職金を支払えばよいでしょう。役員退職金には一定の制限がある退職金は税制の優遇がかなりあり、役員報酬で取るよりも退職金で取ったほうが得なので、退職所得の恩恵を受けるための調整をすることが考えられます。その対策として、課税当局では役員退職金に対して一定の制限を設けています。ひとつめは、短い勤続年数の場合の制限です。H25年以降、役員としての勤続年数が5年以下の場合は、退職所得の金額の計算において、1/2を乗じることができなくなりました。短期間の勤続年数でも1/2とすることを許してしまうと、会社を作って短期間で清算し退職金を得、また会社を作って……というスキームがまかり通ってしまうためです。2つめは不相当に高額な金額の場合、税務否認される制度です。たとえば、退職直前の役員報酬が10万円、退職金が1億円といったように、月額報酬と退職金とに著しい乖離があるような場合は注意が必要です。仮に税務否認された場合、その否認金額は役員賞与として全額損金不算入となってしまうので、全く意味のないものとなってしまいます。税務否認されないためには、次の算式で計算した金額の範囲内としておくのがよいでしょう。もちろん、実態によって否認されるケースもありますが、ひとつの指標にはなるので、頭に入れておいてください。役員退職金=最終役員報酬月額×役員在任期間×功績倍率このなかの功績倍率には、何か決まった倍率があるというわけではなく、退職する役員の在籍中の貢献度を考慮し何倍にするかを決めることになります。たとえば、代表取締役は3倍、専務取締役は2・5倍、常務取締役は2倍といったように決定していきます。もちろん、あまりに高率ですと税務否認される可能性が高くなりますが、この例で表示した程度の倍率であれば、税務否認される可能性は低いでしょう。また、この記算式で計算した結果が、同業他社の役員退職金と同程度であればよいのですが、突出して高いような場合は、高いことについての理由付けが必要となります。最後に、役員退職金の算式や功績倍率を決定したら、役員退職金規程を作成しておくと、より客観性が増してよいでしょう。

[03税額控除]当期の税額を減らす税額控除を取りきる節税の効果★★★☆☆税額控除は当期の税額を直接減らすことができ、かつ、取り戻されないものなので非常に有用な制度です。ただし、無制限に税額控除できるわけではなく、当期の法人税額に制度ごとに定められた一定割合を乗じた金額までと制限されています。また、税額控除を取りきれなかった場合、翌期に繰越できるものとできないものとがあり、繰越ができないものについては、取りきれなかった時点で権利放棄することになってしまいます。せっかくの税額控除なので、できれば全部取りきりたいものですが、どうしていけばよいのでしょうか。簡単な事例で確認していきましょう。例所得拡大促進税制を適用、雇用者給与等支給額の増加額……200万円当期の所得金額……600万円、当期の法人税額……90万円、期ズレ前払費用……70万円あえて益出しをして税金を増やす所得拡大促進税制の場合、雇用者給与等支給額の増加額の10%が税額控除の対象となります。また、法人税額の20%が限度額であり、取りきれなかった場合の繰越は認められません。現状では「200万円×10%=20万円」の控除枠があるのですが、法人税額の20%が「90万円×20%=18万円」しかないため、2万円は切り捨てられてしまいます。そこで、あえて所得を増やして法人税額を増加させ、限度額を増やしています。期ズレが70万円あるのでこれを取らなければ当期の所得は670万円となり、法人税額は100万5000円になります。「100万5000円×20%=20万1000円」なので、控除対象額以上となり、税額控除がすべて取りきれることになりました。結果として、当期の法人税を8万円多く支払うことになりますが、当期に入れなかった期ズレ分を翌期に取れば、翌期の法人税が10万円少なくなるので、2年間トータルでみると、税額控除が取れた分の2万円が納税減となります。これに住民税・事業税が加わるので、もう少し節税メリットが増えます。しくみさえ理解していれば簡単なので、税額控除が取りきれないような状況があれば、あえて「益出し」をして税金を増やし、税額控除を取る方法を検討してみてください。

[04税制の恩恵]社宅や福利厚生を充実させて給与を減らす節税の効果★★★☆☆これまで、社宅制度や食費補助、新年会や忘年会などの福利厚生制度について紹介しましたが、これらの節税メリットは、同額の給与を支給するよりも大きいのです。福利厚生を充実させる節税メリット法人が負担した福利厚生費は会社の損金になり、その分会社の税金が安くなりますが、その恩恵を受ける個人には課税がされません。これは非常に大きな節税メリットです。福利厚生費ではなく同額の給与を支給したとすると、その給与は法人の損金にはなりますが、個人の給与所得が増えて税負担が増加します。さらに、給与が増えると法人と個人の社会保険料の負担も増えるので、福利厚生費は給与と比べるとはるかにお得なのです。また、福利厚生費の大半は、飲食費など消費税のかかる取引なので、福利厚生費が法人の損金になると同時に、消費税の負担を抑えることができます。これに対して、給与は消費税のかからない取引のため、給与をいくら増額しても消費税節税のメリットはありません。このように、福利厚生制度は、法人税、消費税、所得税など、複数の税金において節税効果が期待できるので、福利厚生制度を充実させ、その分給与を下げることができれば、法人・個人両方の税金を安くできる可能性があります。これらの節税メリットのほかにも、福利厚生制度には次のようなメリットもあります。節税効果以外にも嬉しいメリット経営が厳しいときでも役員報酬は毎月同額でなければなりませんし、社員の給与を減らすことも容易ではありません。しかし、社員旅行や新年会などは、経営状況によって中止したり、規模を小さくしたりすることが可能です。また、福利厚生制度が充実していると、役員や社員が気持ちよく働くことができ、会社のイメージアップも図れ、支出額以上の副次的な効果も期待できるかもしれません。福利厚生制度は、紹介した以外にもさまざまなものがあるので、どのような福利厚生制度が会社にとって有用か、役員や社員にとってうれしい制度か、そして給与課税されないものなのかどうかなどを調べ、検討してみるとよいでしょう。

[05損金処理]見積書や請求書は内訳を細かく記載する節税の効果★★★★☆固定資産を新規に購入する際は、なるべく細かい単位で見積書や請求書を記載してもらうことが肝心です。なぜなら、10万円未満で固定資産としなくてよいものや、一括償却資産や少額減価償却資産(3章[20損金処理]参照)の判断は、1単位ごとの金額に基づくからです。たとえば、応接セットの場合は、テーブルとイスがセットになって機能するものなので、テーブルとイスのセットで1単位と考えます。また、カーテンの場合は、1枚で機能するものではなく、ひとつの部屋で数枚が組み合わされて機能するものなので、部屋ごとに1単位と考えます。では、中小企業者等が社長室と副社長室、執務室を模様替えした場合について考えてみましょう。「○○一式」とひとまとめにしない見積書のカーテンの欄には、「カーテン一式55万円」と記載されていたとします。このままでは、55万円の固定資産の取得として処理するしかありません。そこで、「カーテン一式55万円」の内訳を確認してみたところ、次の通りでした。・社長室……15万円・副社長室……15万円・執務室……25万円この場合、もちろん通常の耐用年数で償却しても構わないのですが、社長室と副社長室のカーテンは、一括償却資産、少額減価償却資産または減価償却資産、執務室は少額減価償却資産とすることも可能です。見積書のカーテンの欄を「一式」ではなく、部屋ごとに記載してもらうなどの工夫をするだけで、少額減価償却資産かどうかの判断が明確になり、償却方法の選択肢を増やすことができるのです。見積書などには、なるべく細かく内訳を記載してもらい、10万円未満のものや一括償却資産、少額減価償却資産とすることができるものがないか、よく確認することが大切です。

[06損金処理]見積書は穴が開くほど確認する節税の効果★★★★☆見積書や請求書などの内容を、細かいところまで確認してから経理処理をしないと、税金を多めに負担してしまう可能性があります。なぜなら、固定資産にすべきものと、その事業年度の損金としてよいものなどが混在している可能性があるからです。たとえば、機械を購入した場合の見積書を考えてみましょう。見積書の合計額は130万円で、その内訳は次のようになっていました。❶機械の本体価格……100万円❷機械を工場に設置するためにかかった費用……10万円❸日頃のメンテンナスのために必要な潤滑油や軍手などの消耗品……20万円項目を細かく分けて固定資産計上額を減らすでは、このうち固定資産に計上しなければならないのはいくらでしょうか。固定資産の取得価額には、「その資産の購入代価とその資産を事業の用に供するために直接要した費用」を含めなければならないので、❶と❷は固定資産になります。❸は普段必要な消耗品を同時に購入しただけなので、固定資産に含める必要はありません。見積書の内容をしっかり確認しないと、110万円でよいはずの機械の取得価額が130万円になってしまいます。固定資産に計上する必要のないものは、なるべくその事業年度の損金としたほうがお得です。

[07損金処理]中古の資産購入で当期の税金を大幅カット節税の効果★★★☆☆減価償却(2章[08資産の購入]参照)の計算要素のうち、唯一手を入れることができるのが耐用年数です。耐用年数が短ければ短いほど、資産を早く費用化することができるので、短くできるのであれば短くしたいところでしょう。耐用年数省令に定められている耐用年数は新品資産が基準となっており、中古資産の場合は異なる耐用年数となっています。・中古資産の経過年数が耐用年数のすべてを経過している場合耐用年数×20%(2年未満の場合は2年)例えば耐用年数5年の資産の場合、「5年×20%=1年2年」となります。・中古資産の経過年数が耐用年数のすべてを経過していない場合(耐用年数-経過年数)+経過期間×20%(2年未満の場合は2年)例えば耐用年数8年、経過年数3年の場合は、「(8年-3年)+3年×20%=5・6年5年(端数切捨)」となります。なお、経過年数に1年未満の端数がある場合は月単位で計算をします。最後に年換算して耐用年数を出すことになるので注意してください。経費計上におすすめの中古資産とはいっても、中古の資産を購入するケースは少ないでしょう。エアコンやテレビを中古で購入することはまずありません。そうすると、どういった資産に適しているのでしょうか。答えは、乗用車です。中古車は広く一般に流通しているものであり、走行距離が短い乗用車であれば長く使うことができます。それでは、何年落ちの乗用車を購入すれば、最短で費用化できるのでしょうか。年数で計算すると、次のようになります(なお、新車の耐用年数は6年です)。(6年-4年)+4年×20%=2・8年2年4年落ちの乗用車であれば、最短期間である2年で償却をすることができます。正確にいうと、3年10カ月より以前の乗用車であれば2年償却となるので、中古車を購入する場合は何年落ちかを確認するようにしましょう。そして、晴れて2年償却となった場合、購入年度の減価償却費はどのくらいになるでしょうか。定額法の場合は50%ですが、定率法であれば50%の2倍、つまり何と100%償却することができます。500万円の乗用車であれば、500万円全額を経費にすることができるので、かなりのインパクトになるのではないでしょうか。ただし、減価償却は月割ですので、期中に購入した場合は月数按分が必要になります。決算月に購入したのであれば1/12しか減価償却できませんので、注意してください。なお、1カ月未満の端数がある場合は切り上げて1カ月として計算するので、期首の属する月(3月決算であれば4月)の末日までに購入すれば、100%まるまる経費にすることができます。どうしても新車がいいというのでなければ、4年落ち以上の中古車を購入して、早く償却することで当期の税金を減らすことができます。中古車でも構わない方は、ぜひ活用したい制度といえます。

[08損金処理]20万円未満の繰延資産は早いタイミングで償却節税の効果★★★☆☆支出する費用のうち、支出の効果が1年以上に及ぶもの(固定資産や前払費用を除きます)を繰延資産といいます。繰延資産は、その支出の効果の及ぶ期間で償却しなければなりません。わかりやすい例で紹介すると、オフィスを賃貸する際に支払う権利金などです。たとえば、2年間の賃貸契約で48万円の権利金を支払ったとすると、支払時に48万円の繰延資産を計上し、毎月2万円ずつ償却していくことになります。支出の効果の及ぶ期間で償却するのが原則ですが、例外的に、法人の任意の期間で償却できる繰延資産があります。金額の大小に関係なく、支出した事業年度に即時償却することが可能なので、早いタイミングで損金とすることができます。任意償却の繰延資産❶創立費法人を創立するときにかかる費用です。たとえば、法人の商業登記費用、司法書士報酬、会社創立作業のための事務所の賃貸料、発起人への報酬などです。❷開業費会社を設立してから開業するまでの間に、その開業準備のために支出する費用です。たとえば、取引先との打ち合わせ費用、あいさつ回りの手土産、HP制作費、チラシ印刷費、消耗品等購入費用などです。❸開発費新たな技術の採用や、新たな経営組織の採用、資源開発、新市場を開拓するために支出する費用です。たとえば、新しい市場に参入するために、市場調査や広告宣伝を行った場合の費用や、専門家に対するコンサルティング費用などが該当します。❹株式交付費/社債等発行費株式や社債などを発行するときに支出する印刷費や登記のための費用です。また、任意償却の繰延資産以外にも、支出額が20万円未満の繰延資産は、その全額を支出事業年度の損金とすることが認められています。即時償却が可能な繰延資産や20万円未満の繰延資産は、早いタイミングで償却して損金とするとよいでしょう。

[09損金処理]出口戦略がある場合の保険加入節税の効果★★★★☆保険商品は一時に多額の経費を計上することができますが、所詮は期ズレなので、いずれは取り戻されてしまいます。そうなると、「保険をやる意味はないのでは?」と思う方もいるでしょう。ですが出口戦略がある場合、保険は非常に有効な節税手段となるのです。出口戦略とは、保険金が支払われた場合にどう経費をぶつけるかというものです。保険は積立時に経費となる代わりに、保険金の支払時は収益として処理をします。この収益計上時、すなわち保険金の支払時に、保険金額と同等の経費を計上することで、その事業年度の税負担を少なくする戦略です。保険金収入を退職金で打ち消す「そんな都合よく保険金額と同等の経費を計上できる方法があるのか?」と思うかもしれませんが、実はあるのです。それが退職金です。退職金はある程度まとまった金額になるので、その支払資金を確保することが大切になります。そこで保険を活用して積立金を経費として計上しながら資金をプールし、退職金支払時に保険金の支払いを受けることで、保険金収入と退職金とで打ち消すことができるのです。通常、多額の費用を計上するのは難しいのですが、退職金であればそれを実現することができます。ただし、保険加入時に退職までのプランニングをする必要があるので、保険会社や税理士とよく相談してこのスキームを実施するようにしてください。この際に使う保険商品は、逓増定期保険がよいでしょう。実際に退職するであろう時期に返戻金のピークがくるような保険商品を購入すれば、返戻率の損失も最小限に抑えることができます。簡単な事例で確認してみましょう。次の図を参照してください。

1年ごとの掛金1000万円、1/2損金タイプの逓増定期保険を前提としています。また、便宜上、ピーク時の返戻率は100%、法人税等の税率は30%としました。毎年の掛金支払時は、「1000万円×1/2=500万円」を経費とすることができます。そうすると、「500万円×30%=150万円」の節税効果を得られます。ただし、5年目の保険金支払時には「5000万円×1/2=2500万円」が収益となってしまうので、「2500万円×30%=750万円」の税負担が生じてしまいます。しかし、ここで2500万円の退職金をぶつけてしまえば、保険金収入と退職金が相殺され、税負担なく保険金の支払いを受けることができるのです。保険金を経費とすることで、実質的に退職金の積立額を経費にしているのと同じ効果が得られるので有用な戦略ですが、この事例では2500万円の退職金のために5000万円を積み立てることになるので、最初4年間の資金繰りが悪化します。その点、くれぐれもご注意ください。

[10損金処理]利益に凸凹がある会社の保険を使った節税対策節税の効果★★★☆☆毎期継続して利益を出し続けている会社は、どのくらいあるのでしょうか。中小企業の場合は、その割合がかなり下がってくるのではないでしょうか。そもそも、事業年度というのは人為的に区切られた期間です。すべての業種・業態において1年間という限られた期間でずっと利益を出し続けるというのは無理がある話ともいえます。なかには、2年ないし3年で一区切りというような会社もあることでしょう。最長でも1年ごとに税金計算しなければならないただし、税制はそんなことは知ったことではなく、最長でも1年ごとに税金計算をする必要があります。利益が出た場合は税金を支払い、利益が出なかった場合は税金がゼロとなります(一定の中小法人は繰戻還付という制度が利用できます)。これは実はおかしな制度です。簡単な例で確認してみましょう。例1年目……利益300万円、税金75万円2年目……利益△100万円、税金0円(法人税等の税率は25%とし、均等割は加味しない)この場合、2年間の納税額は75万円です。しかし、2年間の利益は「300万円-100万円=200万円」なので、税率25%を乗じると50万円の税額になります。損失分は翌期以降に繰越となり、基本的には前年以前に支払った税額は返してもらえません。税制がこういった状況なので、毎期継続して利益を積み重ねていくような会社以外の会社は、何かしらの対策をする必要があります。保険を使った節税戦略の注意点そのひとつに保険を使った戦略があります。やり方は簡単で、利益が出た年度に保険商品を購入し利益を圧縮します。そして、損失が生じた年度に保険を取り崩すことによって、損失を減らすことができるのです。この方法を使うことで税金対策はもちろん、金融機関等に赤字決算を見せたくないといった場合の対策にもなります。次の図を参照してください。

一見するととてもよい手法に見えるかもしれませんが、ひとつ落とし穴があります。それが解約返戻金の返戻率です。保険は解約する時期によって返戻率が異なるので、たとえば今年に加入して翌年解約したような場合、驚くほど少ない返戻率になってしまう可能性があります。もちろん、そうではない商品を選べばよいのですが、完全に自社にカスタマイズされた保険というのはないので、たまたまうまくいくことはあっても、基本的には損をしてしまうことになるでしょう。正にひとつの保険程度の意味合いで、少額程度であれば試してもよいでしょうが、多額の投資をするのは避けたほうがよいでしょう。

[11損金処理]自社に合った保険に必要な金額だけ加入する節税の効果★★★☆☆一度でも法人保険の資料請求をしてみようものならば、保険会社から怒涛のような連絡がくるでしょう。あまりにしつこくて、嫌になってしまった方もいるかもしれません。とはいえ、保険に加入するためには営業攻勢は避けて通れませんので、加入する意思がある場合は、どこかに決めなくてはいけません。このときに注意したい点がいくつかあるので、紹介します。高額な保険加入を勧めてくる担当者は警戒しようまず、付き合いのある営業担当がいない場合は、個別の保険会社よりも複数の保険会社を扱っている会社に頼んだほうがよいでしょう。個別の会社だと商品に限りがあるので、自社に合った商品が見つかるとは限りません。複数の会社の保険を扱っているほうが、マッチする保険が見つかる可能性が高いでしょう。次に、どういった保険を勧めてくるかによって、営業担当のタイプを見極めましょう。必要以上の保障がついた保険を勧めてくる場合は要注意です。その方はご自身の営業成績しか考えていない人かもしれません。自社の事を考えてくれる人にお願いしたいものです。最後に、税理士事務所が保険代理店をしているケースがありますが、基本的には税理士事務所からは保険に加入しないほうがよいかと思います。小銭ほしさに代理店をやっているような税理士事務所があるのも事実なので、特に税理士のほうから保険のオファーを受けたような場合は警戒したほうがよいでしょう。保険会社の担当が決まったら、次に保険商品を決定します。この際、営業担当はありとあらゆる手口で高額な保険加入を勧めてくるでしょう。よくある口説き文句が「節税になります」「将来の備えになります」などです。法人保険はそもそも節税にならない(期ズレ)ですし、個人であっても合計12万円までしか控除できません。それにもかかわらず、節税を口実に高額な保険を勧めてくるのは、理論が崩壊しているといえます。そういったセールストークに惑わされず、自社に合った保険商品を必要な金額だけ加入するようにしてください。基本的には、出口戦略のない場合は法人保険など必要ありませんし、個人保険についても利率の悪い保険で積み立てる理由も特にないでしょう。あの手この手で甘いトークを仕掛けてきますが、なるべく客観的に判断するようにしてください。

[12損金処理]保険加入で重視すべきは保障内容と実際の返戻率節税の効果★★★★☆逓増定期保険に代表される、返戻率の高い保険であっても、100%以上の返戻率のものは基本的にありません。保険付貯蓄商品なので保険料分が差し引かれます。しかし、保険会社の資料を見ていると「115%!」「130%!!」「150%!!」といった数字が乱立しています。これはどういうことなのでしょうか。タネ明かしすると、これは「実質」返戻率というもので、おそらく保険会社の造語です。実質返戻率は、返戻金の額に、経費にした保険料に係る減少した税額分の金額を加算して算定した値です。具体的には次の通りです。例年間保険料……300万円(1/2損金)10年後の解約返戻金……2850万円(返戻率95%)10年間の損金算入額……300万円×1/2×10年=1500万円同上に係る減少税額……1500万円×30%=450万円実質返戻率=(2850万円+450万円)÷3000万円=110%※法人税等の税率は30%として計算見てのとおり、実質返戻率の計算にはひとつ重要な要素が抜けています。返戻金の益金算入分が加味されていないのです。益金算入分を加味すると、「(2850万円-1500万円)×30%=465万円」の税負担増となり、実際の返戻率は94・5%となります。何だか詐欺みたいな話で、世の中でまかり通っているのが不思議です。もちろんこれには理由があって、「退職金等で返戻金を相殺するからその分の税率は加味しなくていいですよね?」ということなのですが、退職金は黙っていても費用になるものなので、保険の節税効果に含めるのは疑義が残ります。とにかく、実質返戻金という言葉はただのセール用語であって、そこにフォーカスしても何の意味もありません。実質返戻金の話をされたら無視するようにしてください。大切なのは、保障内容と実際の返戻率です。

将来法人税率が下がればメリットも……?ただし、将来的に法人税率が下がった場合、税率の高い時期に経費にして、税率の低い時期に益金にすることになるので、その差のメリットは受けることができます。法人税率は世界的に低下傾向にあるので、多少の恩恵は受けることができるかもしれません。いずれにせよ、返戻率100%を大幅に超過するような保険商品はないので、セールストークには乗っからないようにしましょう。

[13損金処理]保険は損金タイプごとに益金・損金処理が異なる節税の効果★★★☆☆保険料を支払った場合の会計処理は、どれだけ損金になるタイプなのかによって異なります。また、そのタイプによって保険金を受け取った場合の会計処理も異なるので、間違えることがないよう確認していきましょう。「全額損金タイプ」と「1/2損金タイプ」の事例を紹介しますが、1/3損金タイプでも1/4損金タイプでも、考え方は1/2損金タイプと同じなので、必要に応じて数値を変えて利用してください。全額損金タイプ保険料支払時は、支払保険料として費用処理をします。そうすることで、全額が損金算入として処理されます。保険金受取時は、保険差益として収益処理をします。なお、保険金の受け取りは経常的なものではないので、特別利益として計上するのがよいでしょう。保険金の受け取りは、残念ながら全額が益金算入となります。1/2損金タイプ保険料支払時は、1/2を支払保険料として費用処理し、残り1/2を前払保険料または保険積立金として資産計上します。損金にならなかった金額は、資産として計上するので、計上し忘れないよう注意してください。また、前払保険料勘定を使用するとほかの保険料と混ざってしまう可能性があるため、保険積立金勘定を使用したほうがよいでしょう。保険金受取時は、保険金額から保険積立金相当額を控除した金額を保険差益として収益処理をします。こちらについても、特別利益として計上するのがよいでしょう。この金額は益金に算入されますが、保険積立金部分については、資産が戻ってきたイメージになるので、収益計上をする必要はありません。つまり、益金不算入となります。たとえば、1000万円保険料を支払っていて、950万円戻ってきた場合、「1000万円×1/2=500万円」は益金不算入、差額の450万円は益金算入として処理をします。保険積立金を資産計上していないとできない処理になってしまうので、くれぐれも保険料支払時の処理を間違えないようにしてください。

[14消費税]消費税の届け出は2年単位で考えよう節税の効果★★★☆☆消費税には、さまざまな届出書が存在します。その各種届出書のなかには、一度提出すると継続適用しないといけないものがいくつか存在します。そのなかでも特に気をつけないといけないのが次の2つです。❶消費税課税事業者選択届出書消費税の納税義務がない免税事業者が、あえて納税義務者になることを選択するための届出書です。なぜ、わざわざ課税事業者を選択するのかというと、課税事業者であれば、消費税の還付を受けることができるからです。免税事業者の場合は納税義務がない代わりに、還付を受ける権利もありません。そこで、あえて課税事業者となることを選択し、還付を受けようというのが、この届け出の意図です。還付を受けられる年度については有利になりますが、いったん課税事業者を選択すると、2年間継続して適用する必要があるため、注意が必要です。たとえば、翌期は多額の経費が発生せず、普通に利益が出ることが予想される場合、翌期に限ってみると、免税事業者のままでいれば納税しなくて済んだものが、課税事業者を選択したことによって納税が義務づけられます。当期の還付だけでなく、翌期までの通算で損得を考えて届出書を提出する必要があります。❷消費税簡易課税制度選択届出書2年前の課税売上が5000万円以下である課税事業者が、受け取った消費税の額から控除する支払った消費税の額を、実際に支払った金額に替えて、受け取った消費税に一定の率を乗じた金額とする方法(簡易課税)を選択するための届出書です。詳しくは3章[18消費税]の項を参照してください。こちらもすぐ飛びつきたくなる方法ですが、簡易課税を選択した場合は還付を受けることができません。2年継続適用が要件なので、翌期に工場を建設するなど、多額の仮払消費税が発生する予定であれば、あえて簡易課税の届出は出さずに原則課税のままとしておき、2年目に多額の還付を取りに行ったほうが2年合計では有利ということもあり得ます。消費税に関する届け出は、先を予想しながら慎重に判断するようにしましょう。

[15消費税]消費税の還付金受け取りまでの時間を短縮する節税の効果★☆☆☆☆消費税では、その事業年度の基準期間(基本的に前々事業年度)における課税売上高が1000万円以下で、かつ、特定期間(基本的に前事業年度の上半期6カ月間)における課税売上高または給与等支払額のいずれかが1000万円以下である場合には、納税義務が免除されます(3章[17消費税]参照)。これに該当して、免税事業者になることがわかっている場合で、翌期に建物の建設のような巨額の設備投資を予定しており、多額の還付が発生することが見込まれるとき、課税事業者選択届出書をその事業年度開始日の前日までに提出しておけば還付を受けられるというお話をしました。還付を受けるまで1年以上かかることもあるしかし、還付を受けられるのは、その事業年度終了の日から2カ月以降先になるので、その間の資金繰りに悪影響を及ぼしかねません。そこで検討したいのが、課税期間の短縮です。本来であれば課税期間=事業年度なので、事業年度が1年であれば課税期間も1年となりますが、課税期間を短縮することで、早く還付を受けることができるので、その分だけ資金繰りがよくなることになります。検討してみる価値はあるでしょう。なお、課税期間の短縮は、「消費税課税期間特例選択・変更届出書」をその適用を受けようとする事業年度開始日の前日まで(新設法人の場合には、事業を開始した日の属する事業年度中)に所轄税務署長に提出することで、その適用を受けることができます。この届出書を提出すると、課税期間を3カ月または1カ月に短縮することができるので、会社の実情に合わせて3カ月か1カ月かを選択してください。輸出企業など、ほぼ毎回還付が見込まれる場合は1カ月、そうでない場合は3カ月が無難かと思います。なお、課税期間を短縮した場合には、課税事業者選択届出と同じく、2年間の継続適用となります。短縮してから2年間は、1カ月ないしは3カ月で消費税の確定申告をしなければならなくなるので、注意してください。目先の還付金を早く受け取ることだけに注目してしまうと、その後苦労することになるかもしれません。1カ月ないしは3カ月で確定申告をするのは結構大変なので、設備投資が連続しているような場合に利用するのがよいでしょう。

[16消費税]課税売上割合を95%以上にして消費税を控除節税の効果★★★★☆消費税の計算方式は、売上などに係る受け取った消費税から、仕入れや経費などに係る支払った消費税を差し引いて納税する金額を決定します。ただし、残念ながら、支払った消費税の全額を無条件に差し引くことができるというわけではありません。当期の課税売上が5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上の場合に、全額控除が可能となり、そうでない場合は、一定の金額は控除することができません。課税売上割合=総売上に対する課税売上の割合それでは、この厄介な課税売上割合とは何でしょうか。簡単にいうと、総売上に対する課税売上の割合で、図のような算式で算出します。

分母の総売上高は、「課税売上」+「(輸出)免税売上」+「非課税売上」の合計となり、分子の課税売上高は、「課税売上」+「(輸出)免税売上」の合計となります。「(輸出)免税売上」は、輸出売上と考えて問題ありません。また、非課税売上とは、課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮などから、課税しない取引として限定して定められているもので、土地の売却や預金利息、有価証券・金銭債権の譲渡などが該当します。なお、有価証券・金銭債権の譲渡は、課税売上割合の計算上は、その譲渡対価の額の5%に相当する金額が非課税売上として計算されます。課税売上割合1%の違いで納税額に30万円の差!?仮に、受け取った消費税が800万円、支払った消費税が500万円であったとして、課税売上割合が95%ちょうどであった場合には、支払った消費税を全額控除できるので、納税額は、「800万円-500万円=300万円」となります。一方、課税売上割合が94%だったとすると、支払った消費税は全額控除とはいかず、「500万円×94%=470万円」が控除対象となります(一括比例配分方式により計算した場合)。その結果、「800万円-470万円=330万円」の納税となり、課税売上割合が1%違うだけで、30万円も納税額が増えてしまいます。もしも課税売上割合が95%に近いのであれば、不要なパソコンや備品等を売却するなどして課税売上を増やし、課税売上割合を95%以上に引き上げることで、支払った消費税全額を控除することができるので、検討してみるとよいでしょう。

[17消費税]課税売上割合95%未満の場合消費税の一部を控除節税の効果★★★☆☆前項において、課税売上が5億円以下で課税売上割合が95%以上の場合、仮受消費税から仮払消費税を全額控除することができるという話を紹介しました。では、そもそも課税売上が5億円を超えている場合や、課税売上割合が95%に満たない場合には、控除できる仮払消費税をどのように計算したらよいのでしょうか。仮払消費税のうち、課税売上割合に対応する部分のみを控除することができるのですが、その際の計算方法に、「個別対応方式」と「一括比例配分方式」の2種類があります。有利なほうを選択できますが、一括比例配分方式を選択すると、2年間継続適用しなければなりません。個別対応方式仮払消費税を、①課税売上に対応する部分、②課税売上・非課税売上に共通する部分、③非課税売上に対応する部分に区分します。①の仮払消費税は全額控除することができ、②の仮払消費税は、課税売上割合を乗じて計算した部分のみ控除することができます。一括比例配分方式仮払消費税を区分せずに、その全額に課税売上割合を乗じて計算した金額を控除します。では、具体的に、課税売上3000万円、非課税売上1000万円、仮払消費税200万円(課税売上対応150万円、共通対応40万円、非課税売上対応10万円)の会社で考えてみましょう。個別対応方式で計算すると、「150万円+40万円×3000万円÷4000万円=180万円」が控除対象となります。一方の一括比例配分方式では、「200万円×3000万円÷4000万円=150万円」となります。計算の方法の違いだけで、30万円もの差が出ています。個別対応方式を選択した場合、仮払消費税を3つに区分する必要があるため、一括比例配分方式よりも手間がかかります。しかし、いつでも有利な選択ができるように、区分しておくことをおすすめします。

[18消費税]建設仮勘定で消費税を先取りする節税の効果★★☆☆☆建設仮勘定とは、建物を建設する場合や、自社用の機械装置やソフトウェアなどを開発する場合に、それらが完成する前の支出について一時的に計上しておく仮の勘定科目です。いったん、建設仮勘定に計上しておき、事業に利用するタイミングで、建設仮勘定から建物や機械装置、ソフトウェアなどの勘定科目に振り替えます。では、この建設仮勘定にかかる仮払消費税は、どのタイミングで認識すべきなのでしょうか。❶支出したとき完成部分について代金を支払ったときに仮払消費税を認識します。建設仮勘定を計上する度に、仮払消費税を認識しますので、次に紹介する❷の方法よりも認識のタイミングが早くなります。建設仮勘定の金額は、税抜金額で計上していきます。❷事業に利用したとき建設仮勘定を計上するタイミングでは、仮払消費税を認識しません。その資産を事業に利用するときに、建設仮勘定を固定資産の勘定科目に振り替え、同時に仮払消費税を認識します。各事業年度で計上する建設仮勘定の金額は、税込金額になります。このように、建設仮勘定に係る仮払消費税を認識するタイミングには2種類あります。たとえば、次の図のような「税込220万円の建物を建設するケース」で考えてみましょう(消費税増税後(10%)で計算)。工事が完成した部分について、1年目に110万円、2年目に110万円を支払い、3年目から事業に利用しました。

❶の方法では、1年目と2年目で10万円ずつ仮払消費税を認識しますが、❷では3年目に20万円をまとめて認識します。どちらのタイミングで仮払消費税を認識しても、3年合計でみると結果は同じです。しかし、仮払消費税を早く認識しておいたほうが、消費税の負担も早めに軽くなるので、お得といえます。建設仮勘定を計上するときは、仮払消費税の認識タイミングを検討するとよいでしょう。

[19損金処理]5000円以下交際費を活用しよう!節税の効果★★★★☆交際費は、資本金1億円以下と1億円超の会社で損金となる金額が異なります。資本金1億円「以下」の場合損金となる金額は、次の①と②のいずれか多いほうの金額となります。❶交際費等のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%相当額❷交際費等の額のうち、年間800万円までの金額よって、資本金1億円以下の場合は、少なくとも年間800万円までは損金にできることになります。資本金1億円「超」の場合交際費等のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%相当額が損金となります。ここでの「費用」ですが、もっぱらその法人の役員もしくは従業員、またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものは除かれます。つまり、社外の方との飲食代に限るということになります。5000円以下なら無条件で損金になるなお、いずれの場合も、いわゆる5000円以下交際費については含まれません。いい換えると、5000円以下交際費は要件を満たすことで無条件に損金となります。それでは、5000円以下交際費とは何かというと、外部との飲食代のうち、その支出額を飲食等に参加した人数で割って計算した金額が5000円以下である場合の交際費をいいます。なお、5000円の判定にあたっての消費税の取り扱いについては、その法人の適用している消費税等の経理処理(税抜経理方式または税込経理方式)によって計算した金額によって異なるので注意してください。

[20損金処理]5000円以下交際費を区分して損金不算入減節税の効果★★★★☆5000円以下交際費として認められるには、次の事項を記載した書類を保存している必要があります。5000円以下交際費の適用に必要な書類❶飲食等の年月日❷飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係❸飲食等に参加した者の数❹その費用の金額並びに飲食店等の名称および所在地※店舗を有しないことその他の理由によりその名称またはその所在地が明らかでない場合は、領収書等に記載された支払先の氏名もしくは名称、住所もしくは居所または本店もしくは主たる事務所の所在地が記載事項となります。❺その他参考となるべき事項これらは、1次会と2次会を別のお店で行うなど、それぞれの行為が単独で行われていると認められるときは、それぞれのお店での飲食費ごとに1人当たり5000円以下であるかどうかを判定します。つまり、それぞれのお店ごとに書類を保存する必要があるということです。なお、記載にあたっては、原則として、相手方の名称や氏名のすべてが必要となりますが、相手方の氏名について、その一部が不明の場合や多数参加したような場合には、その参加者が真正である限りにおいて、「○○会社・□□部、△△◇◇(氏名)部長ほか10名、卸売先」という表示であっても問題ありません。また、通常の経理処理等にあたって、把握していると思われる自己の役員や従業員等の氏名等までは記載しなくてもよいこととなっています。ただし、当然ですが単価を下げるために人数を水増しする行為は厳禁です。手間はかかりますが、5000円以下交際費を区分することで、損金不算入となる金額を減らすことができるので節税につながります。注力していきましょう。

[01相続税]目先の税金だけでなく相続税についても考える節税の効果★★★☆☆会社にお金を残したいという気持ちは多くの経営者の願いでしょう。では、どうすれば会社にお金を多く残すことができるのでしょうか。一言でいってしまうと、売上を増やして経費を減らし、利益を最大化することです。利益が多ければ多いほど会社にお金を多く残すことができるのです。そうすると税金も高くなってしまうと思うでしょうが、税金は利益の範囲内でしかかからないので、下手な節税策を施すよりも利益を最大化してそれに対する税金を支払ったほうが会社に残るお金は多くなります。役員報酬は税率35%に収まる金額にするまた、オーナー企業の場合は役員報酬をどうするのかという問題があります。会社に残るお金とオーナー個人に残るお金の合計額を最大化させたい場合は、会社に係る法人税と個人に係る所得税を天秤にかけます。法人税等の最高税率は約35%、個人の最高税率は55%(共に住民税を含む)なので、役員報酬は税率が35%以内に収まる程度の金額とする必要があります。また、社会保険に加入している場合は、これに社会保険料率も加味する必要があるので、役員報酬はかなり少なくしないといけないことになります。ひとつの指標として頭の片隅に置いておいたほうがいいでしょう。もうひとつ忘れてはいけない税金があります。それが相続税です。非上場会社の株式を評価する場合いくつか評価方法がありますが、そのひとつに「純資産価額方式」というものがあります。これは、会社に残っている利益をベースに評価する方法であり、会社にお金をたくさん残しているような場合は評価額が高くなってしまいます。しかも、株式という資産は下手に分散させることもできず、相続財産としては使い勝手が悪いものです。それを加味すると、ただ会社にお金を残すという方法は考えものです。であれば、役員報酬を増やして個人のお金を増やし、そこから不動産投資等をして相続財産を減らしたほうが全体の相続税額が少なくなる可能性が高くなります。ついつい目先の法人税・所得税だけを見てしまいがちですが、その結果、相続税が多額になるのであれば、一族レベルで考えると損になります。個人で考えるのには限界があるので、ある程度の規模になったら専門家に相談することをおすすめします。

[02税制の恩恵]法人成りで所得を分散する節税の効果★★★★☆「法人成り」とは、個人事業主が法人になることをいいます。「法人成り」をするメリットとしては大きく次の2つが挙げられます。法人成りの2つのメリットひとつは所得を分散することで、課される所得税率を引き下げることにあります。すなわち、個人事業主の場合は、儲けすべてに所得税が課されますが、法人にして役員報酬をもらうようにすると、法人へストックしておく分には法人税が課され、役員報酬としてもらう分には所得税が課されることになります。所得税の税率は、5%~45%までの7段階あり、所得が増えれば増えるほど税率は高くなります(これに住民税10%が加わります)が、法人税の税率は15%~23・2%です(一定の中小法人で年間所得800万円までは軽減税率が適用されます)。したがって、「法人成り」を行って所得を分散することができれば、適用される所得税の税率を引き下げることができるのです。2つめのメリットは、役員報酬について給与所得控除が適用されることです。給与所得控除とは、給与等の収入金額に応じて自動的に一定額が控除される制度のことをいいます。個人事業主の場合は、売上から経費を差し引いた儲けについて所得税が課されますが、この儲け分を給与として受け取ると、給与所得控除を差し引くことができます。たとえば、個人事業主で2000万円の課税所得が出た場合の税金は、約720万円となります。しかし、法人の場合は役員報酬と法人の所得とを分けることができるので、役員報酬を1200万円、法人へのストック分を800万円とした場合、所得税は約270万円、法人税は約180万円となり、所得税と法人税を合わせた税額は約450万円となります(税額にはすべて住民税を含みます)。税率差はもちろん、最大で220万円ある給与所得控除をフルに使うことで、大きな節税効果を生むことができます。ただし、役員報酬の設定には一定の注意点があるので、3章[06損金処理]も確認してください。また、売上から源泉徴収されてしまうような業種(執筆、デザイン、講演など)で、売上代金が満額入らず資金繰りが厳しいときは、「法人成り」をすることで源泉徴収されず、資金繰りが良化する効果もあるので該当する方は検討してみてください。

[03益金]益金不算入が可能な株式等の受取配当金節税の効果★★★★☆株式等を保有している場合、配当金を受け取ることがありますが、これは原則として受け取る法人の益金となります。しかし、そもそも配当金とは、法人税等課税後の利益剰余金を株主へ還元するものなので、受け取る法人側でも益金として再度課税の対象とすると、二重課税となってしまいます。その対策として、配当金の二重課税を排除するために、株式等の区分に応じて益金としなくてよい金額が定められています。株式等の4区分益金としなくてよい金額は、次の4つの株式等の区分に応じて異なります。❶完全子法人株式等配当等の計算期間の初日から末日までの間、100%のグループ関係があるほかの内国法人の株式等をいいます。受取配当金の全額が益金不算入です。❷関連法人株式等配当等の基準日以前6カ月間、発行済株式等(自己株式等を除く)の1/3超を継続して保有しているほかの内国法人の株式等をいいます。受取配当金の全額が益金不算入です。また、負債利子の支払いがある場合には、そのうち関連法人株式等の帳簿価額に相当する部分を受取配当金の額から控除します。❸その他の株式等❶❷および❹のいずれにも該当しない株式等です。受取配当金の50%が益金不算入です。❹非支配目的株式等配当等の支払いに係る基準日において、発行済株式等(自己株式等を除く)の5%以下を保有しているほかの内国法人の株式等をいいます。受取配当金の20%が益金不算入です。

[04決算]資金繰りが厳しいときは「仮決算」を検討しよう!節税の効果★★☆☆☆前期の法人税の年税額が20万円(前期が12カ月の場合)を超える場合、中間申告が必要となります。中間申告は、当期の開始日から6カ月を経過した日から2カ月以内に行う必要があります。「3月決算であれば11月末」のようになります。中間申告の方法は2種類あるこの中間申告ですが、「予定申告」と「仮決算」の2種類の方法があります。予定申告とは、前期の実績をもとに計算する方法で、前期の法人税の年税額を前期の事業年度の月数で割って6を乗じて計算します。具体的には、前期の事業年度が12カ月、年税額が30万円の場合、納税額は、「30万円÷12×6=15万円」となります。これに対して仮決算とは、当期開始日からの6カ月間を1事業年度とみなして、通常の決算と同様の決算を行い、税額を計算する方法です。ただし、仮決算の結果、予定申告の金額を超える場合には、予定申告による申告・納付を行うことになります。前期にたまたま利益が出過ぎたような場合、当期の予定申告による納税額が多額に発生します。資金繰りが厳しい場合には、仮決算を検討してみるとよいでしょう。なお、予定申告は前期の税額から簡単に計算できますが、仮決算は通常の決算と同様の処理を行うことになるので、早めに準備しておく必要があります。また、中間申告書の提出がない場合は、予定申告があったものとみなされるので、注意してください。地方税・消費税にも中間申告がある中間申告は、法人税に限らず地方税、消費税にもあります。地方税(住民税や事業税)は、法人税の中間申告に連動します。消費税の場合は、前期の年税額が48万円を超える場合に中間申告をする必要があります。48万円という金額は、国税部分のみの金額となり、地方税を含めると約60万円以上になります。なお、前期の国税分が48万円~400万円の場合は年1回、400万円~4800万円の場合は年3回、4800万円を超えた場合は年11回の中間申告が必要になります。法人税同様、予定申告と仮決算を選べるので、資金繰りの状況を見て選択するとよいでしょう。

[05決算]法人税の申告期限は延長することができる!節税の効果★★☆☆☆通常、法人税の申告書の提出期限は、事業年度終了の日の翌日から2カ月以内となっています。たとえば、3月決算の会社の場合は5月末が申告期限となります。ただし、定款の定め等で、毎期の事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に定時総会が招集されない状況にあると認められる場合には、確定申告書の提出期限を1カ月間延長することができることになっています。この延長申請の際には、定時総会が事業年度終了の日の翌日から3カ月以内に開催されることを証明するため定款を添付することになります。よって、定款にその旨の文言が織り込まれているか確認する必要があります。株式会社の場合は、「株主総会」の「招集」の条項に「事業年度終了の日の翌日から3カ月以内に定時株主総会が召集される」旨を記載するようにします。合同会社の場合は、株式会社のように定時総会を開催する文言が入っていないことが多いので、設立時に「計算」の章に「決算確定」の条項として「事業年度終了の日の翌日から3カ月以内に決算を確定する」といった文言を入れるようにしましょう。申告期限の延長申請書は、所轄の税務署、都道府県税事務所および市区町村役場に、その適用を受けようとする事業年度終了の日までに提出する必要があります。延長申請でペナルティの支払いを防ぐ申告期限の延長をしていない場合は、事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に厳密な税額計算を終え、納税を済ます必要があります。もし申告書の提出が遅れると、無申告加算税と延滞税(いずれも損金不算入)が発生します。これが、申告期限の延長をしている場合は申告書の提出が2カ月を過ぎた場合であっても3カ月以内に申告・納付をすれば無申告加算税および延滞税は課されず、延長期間部分について利子税(損金算入)が課されるのみとなります。申告期限の延長申請の有無で、ちょっと遅れた場合の取り扱いが大きく異なるので、無駄なペナルティの支払いを防ぐという意味でも提出しておくといいでしょう。なお、消費税申告に関しては、申告期限延長の制度がなく、事業年度終了の日の翌日から2月以内に申告書の提出と納付が必要なので注意してください。

[06決算]決算日を変更して期限後申告を防ぐ節税の効果★★★★☆新規に設立した会社の場合、多くの会社が設立から1年後までを第1期としています。これは、「消費税の免税期間を長くする」という意味においては、節税効果が高い方法です(3章[17消費税]参照)。ただし、その結果、決算時期が会社の繁忙期と重なってしまうと、次のようなデメリットが生じます。①忙しくて重要な情報を税理士に伝えるのを忘れたり遅れたりして、節税が可能となるような税務上の届出書を提出しなかった。もしくは、期限までに提出できなかった②あとから領収書が出てきたが、申告期限までの時間がなくて入力できなかった③税理士からの質問に答える時間がなかったため、決算が固まらずに申告書の提出が間に合わず、納付が期限後となってしまったこのようなことは、社長がひとりで何役もこなすような小規模な会社ではよくあることです。その結果、本来追加計上できた経費を入れられず、余分な納税が発生したり、期限後申告となり加算税等のペナルティや延滞税を支払うことになるなど、時間があれば支払わなくて済んだものを支払う羽目になってしまいます。期限後申告が続いて青色申告が取り消されたとなれば、過年度の欠損金が使用できなくなるなどの多大な不利益を被ることになります。決算時期を閑散期にすることは、このようなリスクを避けるために有効な手段です。余裕をもって申告ができることはもちろん、決算前に何か対策はないか税理士と検討することも可能になります。申告忘れ・遅れを防ぐほかにも利点があるまた、上記のような、失点を防ぐ意味での決算期変更以外にも利点があります。たとえば、期中は赤字続きで当期は欠損とふんでいたが、最終月に想定していなかった突発的な多額の利益が計上されることになった場合(ビッグプロジェクトの受注や土地の売却など)、最終月の前月を事業年度終了の日とする決算期変更を行うことで、当期の納税を抑えることができます。多額の利益については翌期に織り込まれるので、翌期の申告までの1年間で節税策をゆっくり検討すればよいということになります。自社の状況から、何月決算にするのがいいか、税理士と検討してみるといいでしょう。

[07損金処理]倒産防止共済に加入して連鎖倒産等を防ぐ節税の効果★★★★☆中小企業倒産防止共済制度とは、正式名称を経営セーフティ共済といい、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。倒産防止共済に入るメリットは次の4つです。❶無担保・無保証人で、掛金の10倍まで借入可能共済金の借入は、無担保・無保証人で受けられます。共済金貸付額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8000万円)」の、いずれか少ない金額となります。❷取引先が倒産後、すぐに借入できる取引先の事業者が倒産し、売掛金などの回収が困難になったときは、その事業者との取引の確認が済み次第、すぐに借り入れることができます。❸掛金の税制優遇で高い節税効果掛金月額は5000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額もできます。また確定申告の際には、掛金を損金に算入できるので、節税効果があります。❹解約手当金が受け取れる共済契約を解約した場合は、解約手当金を受け取れます。自己都合の解約であっても、掛金を12カ月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40カ月以上納めていれば、掛金全額が戻ります(12カ月未満は掛け捨てとなるので注意が必要です)。税負担は変わらないが……40カ月以上の納付で100%戻るということは、掛け金が先に損金として計上されるということです。毎期の納税額が少なくなりますが、解約手当金の入金時に一気に課税されるため、税負担という意味ではトータル的には変わりません。しかし、裏を返せば、1円のキャッシュアウトもなく売掛先倒産時に借入ができるという保証がされていることになります。保険料ゼロ円で一定の保証を受けることができると考えると、非常にお得な制度といえます。なお、加入資格は、継続して1年以上事業を行っている中小企業者で、一定の要件に該当する場合に加入できることになります。

[08損金処理]役員給与を別途支払いそれでも損金算入できる節税の効果★★★☆☆役員給与に関しては、基本的に毎月一定額を支給する定期同額給与であることが求められます(3章[06損金処理]参照)。定期的に同額支給する場合は損金に算入できる制度がありますが、違う時期に支給した場合は損金不算入となってしまいます。しかし、次のような理由から所定の時期に別途お金が欲しいケースもあるでしょう。①住宅ローンでボーナス払いを活用しているため、ある一定の月だけお金が必要になる②盆暮れの帰省時には親戚周りの付き合いでお金が必要になるこのような場合に活用したいのが「事前確定届出給与」制度です。「事前確定届出給与」制度は、あらかじめ支給時期と支給金額を定めた届出書を所轄の税務署へ提出しておけば、定期同額となっていなくても、損金として認めてくれる制度です。なお、「あらかじめ届出書を提出する」と記載しましたが、提出期限は、次のうちいずれか早い日になるので、注意してください。❶株主総会等の決議により、その支給時期と支給金額の定めをした場合には、その株主総会等による決議をした日(株主総会の決議をした日がその職務の執行を開始する日の後である場合にあっては、当該職務を開始する日)から1カ月を経過する日❷その事業年度開始の日から4カ月を経過する日たとえば、3月決算の法人で、株主総会の日が6月25日であったとすると、6月25日から1カ月後の7月25日と、事業年度開始の日である4月1日から4カ月経過する日である7月31日のうち、早いほうの7月25日が提出期限となります。なお、新設法人の場合は、その設立の日から2カ月を経過する日までとなります。非常勤役員の場合はケースごとに取り扱いが異なるまた、年に1回ないし2回、所定の時期に給与を支払う非常勤役員については、支払いをする会社が同族会社かどうかで取り扱いが異なります。同族会社に該当しない法人であれば、この届出の提出がなくても、「事前確定届出給与」に該当するものとされる一方、同族会社の場合は、届出があってはじめて「事前確定届出給与」として認められることになります。

[09印紙税]文書を紙から電子媒体にするだけで節税できる節税の効果★★★★☆印紙税は文書に対して課される税金です。印紙税の対象になるのは、印紙税法で定められた「課税文書」と呼ばれるもので、課税文書を作成すると、定められた金額の収入印紙を貼り付けて消印し、納税する必要があります。課税文書は20項目に区分されており、そのうち以下に挙げるものが代表的なものです。❶不動産等の譲渡契約書(一号文書)❷請負契約書(二号文書)❸継続的取引の基本契約書(七号文書)❹金銭または有価証券の受取書(一七号文書)紙でなければ課税対象にならないさて、この印紙税ですが、実は簡単に節税する方法があります。課税文書を紙ではなくPDF等の電子媒体で作成するという方法です。印紙税は文書に対して課されるので、電子媒体の場合は文書に該当せず、印紙税の課税対象にならないことになります。また、印紙税は、課税文書原本に課されるので、コピーの場合は課税されません。通常、契約書などは売り手・買い手の両方が原本を保管するケースが多いですが、原本をひとつ作成してそれに印紙を貼り、もう1通はコピーで済ませることで、印紙税を半分にすることができます。なお、一号文書、二号文書および七号文書などは、記載金額の多寡によって印紙税額が異なります。税抜で記載することにより金額を少なくし、その結果、印紙税が少なくなることがあるかもしれません。ただし、一号文書や二号文書で契約金額を記載しなかった場合、200円の印紙が必要となります。記載金額が1万円未満の場合は非課税なので、金額を記載したほうが印紙税は少なかったというケースもあります。大手流通企業で数百円の請負契約書に金額を記載していなかったことにより、1通あたり200円の印紙税が課され、数千万円単位で課税された事例もあります。契約書の書き方にはくれぐれも注意してください。

[10損金処理]消耗品は在庫管理をしなくていい!節税の効果★★★☆☆消耗品などは、原則として消費した事業年度の損金となります。つまり、封筒やコピー用紙、筆記用具などの消耗品をまとめ買いしている場合、期末に在庫の棚卸をして、未使用分を損金から除外しなければなりません。しかし、その作業は大変な手間であり、毎期同じように購入して消費しているものを期末にカウントすることに、何のメリットもありません。そこで、事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産は、毎期一定量を取得して経常的に消費するものに限り、取得した事業年度の損金に算入することが認められています。消耗品に該当するもの消耗品の代表的な例は、次の通りです。❶事務用消耗品封筒、コピー用紙、筆記用具、文房具、クリップ、付箋、テープ、電池など❷作業用消耗品軍手、ゴム手袋、タオル、潤滑油、釘、ボルト、ナット、アルコールなど❸包装材料段ボール箱、ビニール袋、包装紙、ガムテープ、緩衝材など❹広告宣伝用印刷物ポスター、チラシ、パンフレット、ポストカードなど❺見本品消費者に配布するサンプル、試供品などただし、これらに該当するものであっても、金額が多額で期末の在庫数量に大きな増減があるなど、課税所得への影響が軽微でない場合には、原則通りに在庫をカウントして損金から除外する処理をしなければなりません。在庫管理を省略することができるのは、毎期同じように購入し、同じように使っている消耗品に限ります。在庫数量に大きな変動がないか注意しましょう。

[11損金処理]貸倒損失はピンポイントでの損失計上が必要節税の効果★★★★☆貸倒損失とは、売掛金や貸付金などの金銭債権が何かしらの事情で回収できず貸し倒れたときに認識される損失のことです。損失計上できる時期は限られている貸倒損失は、計上するための要件が定められています。例えば、「取引先の業績がよくないという噂を聞いたので損失計上した」といったように、好きなときに都合よく損失とすることはできません。また、要件を満たせばそれ以降は好きなときに損失計上できるというものでもなく、基本的には、要件を満たした期にピンポイントで損失計上しなければならず、その機を逸すると否認される可能性が高まります。税務上、貸倒損失が認められるのは、次のようなケースです。❶法的な貸倒れ・更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定などにより債権切り捨てがあった場合・債権者集会の協議決定などで合理的な基準に基づく債権切り捨てがあった場合・債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合で、債務者に書面で債務免除をした場合❷実質的な貸倒れ・債務者の資産状況等から見てその全額が回収できないことが明らかになった場合❸形式的な貸倒れ・売掛債権に係る債務者との取引停止後、1年以上経過した場合・同一地域の債務者について有する売掛債権の総額が、その取立費用に満たない場合損失計上するタイミングを逃してしまい、不良債権のまま帳簿に残り続けている金銭債権があるケースはよくあります。これらは、今後どのタイミングで損失にしても、すでに時期が過ぎているため税務上否認される可能性があります。適切な時期に落としていれば認められていたものが、時期を誤ると認められなくなるのは、もったいない話なので、税理士と相談し、適切な時期に損失計上するようにしましょう。

[12損金処理]従業員の退職金を先に損金化する節税の効果★★★☆☆従業員に対する退職金は、原則としてその全額が損金として認められます。ただし、損金となるのは退職金の支払時となるので、一時に多額の費用が発生してしまいます。従業員が多ければある程度は平準化されますが、従業員が少ない中小企業の場合は退職時のインパクトが大きくなってしまうというリスクがあります。そこで検討したいのが、中小企業退職金共済、いわゆる中退共です。中退共に加入した場合、その掛金は支払時の損金として認められます。つまり、退職金を毎期の費用にできるイメージです。中退共はその名の通り中小企業の退職金制度なので、中小企業しか加入することができません。ただし、その範囲は比較的広くなっており、たとえばサービス業であれば常時使用する従業員が100人以下または資本金・出資の総額が5000万円以下であれば加入することができます。製造業や建設業の場合はこれが、300人以下または3億円以下となっており、かなり広範囲をカバーしているといえます。また、気になる掛金ですが、月額5000円から3万円の範囲となっており、従業員ごとに任意で選択することができます。短時間労働者であっても2000円から4000円の範囲で設定することができるので、資金繰りとの兼ね合いで掛金を決めてください。デメリットも把握して検討しようこう聞くと中退共はかなりお得な制度のように思われるかもしれませんが、デメリットもあります。主なものは以下の4点となります。❶全従業員を加入させる必要がある(試用期間中など一定の人を除く)❷支払った掛金は返してもらえない❸懲戒解雇であっても退職金が支払われる❹従業員の勤続期間が2年未満だと元本割れをする最も大きなデメリットは「掛金を会社に戻してもらえない」ことです。ここが保険との最も大きな違いといえるでしょう。中退共の掛金はその全額が個人の退職金に充当されるので仕方がありません。資金繰りには十分注意して掛金を設定するようにしてください。

[13助成金]補助金・助成金がないか探してみよう!節税の効果★★★☆☆1章で述べているように、世にいう節税はいわゆる期ズレというものが多く、実質的に得をしていない場合が多いのが現状です。そこで、もっと直接的なお得な方法がないかというときに少し検討してほしいのが、補助金・助成金になります。国や地方自治体は政策目標を達成するため、それぞれの目的・趣旨に応じたさまざまな補助金・助成金に関する施策を講じています。これら補助金・助成金は、国が行うものもあれば地方自治体が行うものもあります。募集期間や予算が定められているものが多く、募集期間内であっても予算に達するとすぐに募集停止になってしまったりと、流動的であったりもします。よって、会社の所在地域で、今現在どのような施策が講じられているのか、アンテナを張っておく必要があります。各省庁HPや各自治体HPで検索するか、中小企業庁の委託を受けて作られているサイトである「ミラサポ」などを活用してもよいでしょう。「ミラサポ」はサイト内に「施策マップ」というものがあるので、そのなかで国や各地方自治体をクリックすると今行われている施策(補助金・助成金・融資制度など)を検索することができます。残念ながら地方自治体はまだ登録されているところが少ないので、その場合は各自治体HPなどで探すことになります。補助金・助成金はあくまでプラスα補助金・助成金は、その内容が多岐にわたるため、サポートする専門家が税理士であったり社会保険労務士であったりとさまざまです。よって、内容に応じて各専門家に依頼することになります。その際に、各種専門家に依頼して補助金・助成金を申請すると、成功報酬が発生するケースが多いので事前に報酬体系を確認しておくとよいでしょう。また、ごく稀に、補助金・助成金を受けないと損だといわんばかりに血眼になって探される方がいらっしゃいます。本来的には、補助金・助成金なしで会社を運営していくのが普通で、それがないと経営できないというのは問題です。補助金・助成金は、たまたまタイミングが合って何か受けることができるものがあればラッキーくらいのプラスαで考えておくとよいでしょう。

[01税務調査]最近の税務調査の傾向実地調査は減少する!平成29年11月に国税庁から「平成28事務年度の法人税等の調査事績の概要」が発表されました。この発表によると、平成28事務年度において行われた実地による税務調査の件数は次のとおりとなっています。①法人税……97000件②法人の消費税……93000件③源泉所得税……116000件次に、10年前の平成18事務年度を確認してみましょう。①法人税……147000件②法人の消費税:139000件③源泉所得税……202000件なんと、すべての税目で大幅に実地調査件数が減少しています。各税目の減少割合は次のとおりです。①法人税……34%減少②法人の消費税……33%減少③源泉所得税……42%減少ここまで減少した理由のひとつとして、平成23年12月に公布、平成25年1月に施行された税務調査の手続きに係る国税通則法の改正があります。この改正により税務署内部の審理が厳格になり、審理を通すための資料収集やその他税務署側の事務作業が増加したため、実地調査が減少したものと考えられています。このような状況を踏まえ、平成29年6月に「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」が国税庁から発表され、税務調査の重点課題として「国際的租税回避への対応」、「富裕層に対する適正課税の確保」、「大口・悪質事案への対応」を挙げています。さらに、課税・徴収の効率化・高度化を図るため、①申告内容の自動チェック、②軽微な誤りのオフサイト処理(手紙、電子メールでの接触)、③調査・徴収でのAI活用、を柱に挙げています。これらを踏まえると、今後は、実地調査すべき事案はAIによって判定され、それ以外の軽微な誤り等については実地調査ではない方法での接触というような、メリハリの利いた税務調査になっていくのではないでしょうか。

[02税務調査]税務調査の対策と受け方の基本税務調査というと何だか嫌な気持ちになるものです。追加納税となることはあっても、還付になることはまずないからです。つまり、何か取られるか、よくて現状維持ということになるので、できれば来てほしくないというのが本音かと思います。では、税務調査がまったく存在しないとしたらどうでしょうか。世の中ズルいことがまかり通り、誰も真面目に納税しなくなってしまいます。税務調査の本来の目的は、悪質な脱税をしている法人からしっかり徴収して、真面目にやっている法人が馬鹿を見ないようにすることです。ズルいことをして周りにいいふらし得意げになっている社長がいたら、真面目に納税している社長からするとまったくもっておもしろくありません。よって、このような悪質なことをしている法人を徹底的に取り締まることで、やはり真面目にやることが一番なんだという課税の公平を担保しようとするのが税務調査の目的ということになります。そう考えると、「税務調査官=悪」ではまったくなく、むしろ世の中を正す正義の味方という捉え方もできるかもしれません。税務調査のノルマは存在する?とはいえ、税務調査官も組織の一員であり、ノルマはないと公言してはいるものの、現場サイドでは「追加納税をとってくる調査官=不正を見逃さず発見してくるすごい調査官」と考えているフシもあるため、何でもかんでも追加納税につなげようとして、イチャモンに近い指摘をしてくる調査官がいることは事実です。また、税務調査官も人間なので、イチャモンをつけるつもりはなくても、結果的に間違った指摘をしてくることもあります。実際に税務調査に入られたら、税務調査官の指摘が会社の計算間違いや認識違いなど真っ当な指摘であるのか、まったく見当違いな指摘であるのか、はたまた、意図的にイチャモンに近い指摘をしているのかをよく見定める必要があります。また、税務調査はひとりで対応するのではなく、顧問税理士とタッグを組んで対処してください。税務調査自体は、課税の公平を担保するための大切な作業なので、どこかの法人が必ず税務調査を受けます。これは、日本国にとって必要なことでもあるので、税務調査を受ける場合は、法人の代表として恥ずかしくないような対応をしたいものです。

[03議事録]議事録の類は時系列で揃えておく株主総会議事録、取締役会議事録、監査役会議事録、経営会議議事録、部門会議議事録など、法人にはさまざまな種類の議事録があります。法律によって作成する義務があるものや、会社が記録を残すために任意で作成しているものなど、議事録によって重要度や役割は異なりますが、議事録を作成する主な理由は次の通りです。❶会議で決定した内容を記録❷会議の経緯を記録❸責任の所在を明らかにする❹関係者への情報共有❺役所等での手続時に提出議事録は時系列で整理しておく議事録は、外部の機関などから写しの提出を求められることがあります。たとえば、法務局で会社の登記事項を変更するときや、金融機関から新規の借入をするとき、税務調査のときなどです。規模の小さな法人の場合、議事録を作成していないことも多く、提出を求められてから作成することが多いかもしれません。少し前の決定事項であればそれも可能ですが、いざ必要となったときにだいぶ前の議事録を作成しようと思っても、「いつ」「誰が」「何を」「どのように決定したか」など、あやふやな記憶を辿って作成することになってしまい、好ましくありません。また、当時の出席者の押印をもらう必要が出てくるなど、思わぬ手間が発生する可能性もあります。特に、法律で義務付けられている議事録や、会社の運営にとって重要な事項を決定したときの会議の議事録、会社の規程(福利厚生制度など)を制定した時の議事録などについては、その都度きちんと作成しておき、外部から提出を求められたときに速やかに探し出せるよう、種類別に時系列で整理し、ファイリングしておくといいでしょう。

[04税務調査]税務調査で否認されるとどうなるか?税務調査が入り、ある経費100万円について損金性が認められず否認を受けたとしましょう。この場合、繰越欠損金が多額にある法人と黒字法人では、次のように取り扱いが異なります。❶繰越欠損金が多額にある法人繰越欠損金が少なくなるだけで、追加納税や加算税等のペナルティ、延滞税は発生しません。ただし、繰越欠損金が減るため、将来的に利益が出た場合、否認を受けなかった場合に比べ早く利益が出るようになり、課税される時期が早まることになります。❷黒字法人100万円否認されたことで、100万円に関する法人税等の本税がまず発生します。また、この追加の本税について、過少申告加算税等のペナルティ、延滞税が追加されます。さらに、否認を受けた内容が仮装隠蔽など悪質であった場合には重加算税が発生します。通常の税務調査は直近3年分を調査することが多いのですが、国税通則法の条文上は5年とされています。また、否認を受けた内容について偽りその他不正の行為と認められると、最大7年前まで遡られることになります。悪質な場合は重加算税、さらに追加納税が発生悪質と認められる場合は、本税のほかに重加算税が課されます。また、短期間に繰り返して仮装・隠蔽が行われた場合、重加算税等の加重措置により通常の重加算税の割合にさらに10%加算されてしまいます。繰り返し重加算税となった場合の最高税率は約50%となってしまうので、このようなことがないようにしたいものです。なお、否認される項目が期ズレとなる場合は、当期で否認されたものは、翌期の損金となるので、本税だけでみると損得は発生せず、結果として、当期否認された分に関する加算税・延滞税等のペナルティを支払うということになります。しかし、当期否認され、翌期以降の損金にならないようなもの、たとえば、交際費の否認などは、本税+加算税等のペナルティ+延滞税を支払うことになるため、負担が重くなります。さらに、役員給与と認定されるような否認は、法人税の負担だけでなく、役員個人の所得税について追加納税が発生するので、特に注意してください。

[05追徴課税]逃れられないペナルティ修正申告や期限後申告などをすると、本来納めるべき税金のほかに、別途次のようなペナルティの支払いが発生します。たとえ会社に悪気がなく、税務署に事情を説明したとしても、免除してもらえるものではありません。場合によっては、想定を超える負担となる可能性もあります。❶無申告加算税……期限後申告の場合、本税の5~30%❷過少申告加算税……期限内申告について、修正申告をした場合や、税務署による更正があった場合、本税の5~15%❸不納付加算税……源泉徴収税額について、納期限後に納付をした場合、5~10%❹重加算税……仮想・隠ぺいがあった場合、❷と❸に代えて本税の35~45%、または❶に代えて40~50%❺延滞税……未納となっている本税に対して、年2・6~14・6%平成29年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税につき期限後申告をした場合で、その期限後申告の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税や重加算税が課されている場合は、従来の無申告加算税や重加算税の税率に、さらに10%の割合が上乗せされることになり、負担が非常に重くなっています。地方税でも重いペナルティが課せられるこれらは、いずれも国税に関するペナルティですが、法人事業税などの地方税でも同様に、次のようなペナルティが定められています。❶不申告加算金……本税の5~30%❷過少申告加算金……本税の10~15%❸重加算金……本税の35~50%❹延滞金……年2・6~14・6%ペナルティは、適切な申告と納付をしていれば、負担する必要のない税金です。もちろん、税金を喜んで払いたい人はいないと思いますが、ペナルティのリスクを冒して税金を安くするよりも、適切な申告と納税に努めるほうが賢明ではないでしょうか。

[06申告納税]追徴課税は損金にならない前項で紹介したペナルティは、残念ながら、どれもすべて法人の損金にすることはできません。そもそも、ペナルティを法律で定めている目的は、納税者に対して適切な申告納税を促すためです。ペナルティはそれを怠った場合の罰金という意味合いなのです。したがって、ペナルティの支払いについては、金額の多寡にかかわらず、損金としての性質が認められていません。適時適切な申告納税を心がけるだいぶ期間が経過してから納付した場合や、ペナルティの種類によっては、本税を大きく超える金額となってしまうこともあります。「こんなことになるんだったら、最初から適切に申告しておけばよかった!」という声をよく耳にします。もちろん、「正しいと思って処理していたのに間違っていた」ということも多々あると思います。自信のない処理などは、事前に国税庁に質問したり、税理士などの専門家にアドバイスを求めることもできます。できる限りリスクを排除して申告しておくと、税務調査の際も安心です。ペナルティは、法人にとってデメリット以外の何者でもありません。ペナルティの支払いが発生することのないよう、節税はリスクを抑えた範囲内で行い、日ごろから適切な帳簿付けをし、期限を守った申告納付を心がけましょう。

[07追徴課税]納得できなくても払う必要がある自主的な修正申告なら納得がいくかもしれませんが、税務署からの指摘による追徴課税の場合、納得できないケースもあると思います。しかし、納税については、日本国憲法第30条に、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」と定められているとおり、国民の義務であり、逃れることはできません。無視しようとしても、取り立てに来ますし、最悪の場合、財産の差し押さえによる強制執行になることもあります。納得がいく、いかないにかかわらず、追徴税額が決まり次第、早めに支払いましょう。もし、金銭的に支払うことが難しい場合は、納税猶予の制度も設けられています。ただし、猶予期間も一定の延滞税がかかることを考えると、資金繰りが厳しくても、期限までに納付しておいたほうがいいでしょう。どうしても納得できないときまた、税務署の判断にどうしても納得ができない場合には、処分を行った税務署に対して処分の取り消しや変更を求めて再審査の請求をしたり、国税不服審判所に対して審査請求を行ったり、裁判所に訴訟を起こしたりすることも可能です。国税不服審判所で主張が認められ、認容を勝ち取ったり裁判で勝訴したりすると、多く納めすぎた税金は「還付加算金」という利息を含めて還付となります。税額が納得いかないほど巨額な場合は、思わぬ利息収入が入るかもしれません。ただし、税務署は徴税の専門機関であり、その処分をするために十分に証拠集めをして理論武装しているので、それに打ち勝つことは容易ではありません。また、結論が出るまでには長い年月がかかり、大変な労力を要しますし、税理士や弁護士などの専門家に対する報酬も別途必要です。納得できないときには徹底抗戦することも選択肢のひとつですが、それにかかる時間や労力、費用をよく考えて判断する必要があります。そこまでして争うメリットがないようであれば、早めに納税して会社の経営に注力するほうが賢明かもしれません。

[08税理士]相性のよい税理士・会計士の選び方税理士の登録者数は、平成30年3月末時点で約77000人も存在します。どうやってひとりの顧問税理士を選ぶのかこのなかで、自社にとって一番相性のよい税理士を探すのは事実上不可能です。そこで、一番を探すのは無理だとしても、少なくとも悪くはない税理士を選ぶためのポイントを2点ほど挙げておきます。❶質問しやすい感覚的な話になりますが、かなり重要です。どれだけ知識のある税理士であったとしても、何だか偉そうで聞きづらければ意味がありません。また、質問に対して怒って答えているような方もたまにいます。どこまで許容できるか個人差があるかと思いますが、自分にとってコミュニケーションを取りやすい税理士であることが何より重要なことになります。これは最初に面談した際に、何となくわかるでしょう。ここで無理をして契約してしまうと、あとで聞きたいことが聞けないなど、フラストレーションがたまってしまうことになるので妥協しないようにしましょう。❷勉強をしていそう節税をしたいのであれば、当たり前ですが税金のことを知っている税理士でなければなりません。近年、税制はめまぐるしく改正され、少し前の制度が今は使えないといようなことが多々おこっています。正直なところ、税理士でもついていくのに一苦労です。日々実務をこなしながら、知識をアップデートしていくのは非常に大変なことなのですが、それを怠らず研鑽を積んでいる税理士を選ぶようにしましょう。HPなどで、執筆、講演、ブログ、ニュースレター等の発信状況を確認してみるとよいでしょう。知識のある税理士であり、かつ、何でも聞きやすい状況であれば、アタリの税理士なのではないでしょうか。

[09顧問料]フィーを値切ると損をする可能性もある顧問税理士を決めたら、あとは報酬と作業してもらう内容を取り決めます。税理士報酬は次のような観点から決定されていきます。❶帳簿の入力をクライアントがするか、税理士がするかクライアント側で帳簿の入力を行う場合、税理士側の手間が省けるので報酬は安くなります。ただし、試算表を確認したら、現金も預金もマイナスで、結局全件確認することになってしまい、結果、税理士側の工数が増えてしまうようなケースでは、値上げを要求される可能性があります。税理士に確認しながら、正しい帳簿を作成しましょう。❷訪問は毎月か、隔月か、四半期か、決算時のみか会社への訪問頻度が多ければ多いほど、往復の移動時間を含め税理士の拘束時間が長くなるため、報酬は高くなります。❸売上規模はどのくらいか会社規模が大きいほど、税理士の負うリスクが高くなるため、報酬は高くなります。❹資本金はいくらか❸の売上規模と同様の考え方です。特に資本金が1億円を超えるような場合には、税制の取り扱いが異なるケースも増えるため(3章[21税制の恩恵]参照)、報酬は高くなります。❺その他特殊論点はないか試算表の作成やチェック以外に、たとえば、源泉徴収票の作成や資金繰り表の作成などを依頼する場合は手間が増えるので、報酬は高くなります。顧問料を節約すると損をする?税理士も商売なので、もらっている報酬で利益を出す必要があり、報酬が安ければ安いなりの仕事をしてしまうことになりかねません。報酬が安い場合は、どうしても機械的な作業をするのみに留まってしまいます。年間10万円の顧問料を減らした結果、30万円のお得な節税情報を得られなかったという場合もあるかもしれません。定期的に面談を受けることで、世間話の一環でお得な節税情報や、同業種の他社情報などビジネス上のヒントを得られたりしますので、税理士報酬等のプロフェッショナルフィーは過度に値切らず適正価格を支払うといいでしょう。

[10銀行]銀行との付き合い方はどうするべきか銀行は一見節税と関係ないように思われますが、深いところではまったく無関係というわけではありません。たとえば、中小企業の機械の特別控除は1基160万円以上の機械および装置、1台120万円以上の測定工具および検査工具、合計70万円以上のソフトウェアなど、ある程度まとまった金額の資産を購入しないと適用を受けられません(3章[05税額控除]参照)。また、所得拡大促進税制も給与の支払いが増えていなければならないという要件があります(4章[03税額控除]参照)。このように、税務上のメリットを受けるために、お金を使う必要がある場合があります。お金は車でいうガソリンのようなもので、無借金でこつこつ貯めていくと数年かかってしまうものが、金融機関から上手に借入をすることで、1年で目標を達成できることもあります。ただし、借入がうまくいくかどうかはわからず、不安な点もあるかと思います。借入経験豊富な税理士に交渉してもらうさて、その借入ですが、社長が直接金融機関と交渉するとうまくいかないケースが出てきます。単純に、借入をするという行為に対する経験が少ないため、借入をするためのポイントがズレてしまっていることから、審査に落ちてしまうケースがあるのです。その点、税理士は多数のクライアントを抱えているので、常に融資の相談を受けています。社長個人とは比較にならないほど経験値があるので、金融機関に提出する融資申込書や各種計画表の受けのよい作り方はもちろん、金融機関からの質問に対する回答についても、的確なアドバイスをすることができます。また、すでに融資を受けている場合、まだ借入が可能かなども察しがつきます。それ以上に大きいのは、社長が借入に行くと融資担当者と初顔合わせになり、先方も大丈夫な社長かどうかを慎重に見定めようとしますが、なじみの税理士の紹介だと貸してくれるかはさておき、少なくとも無下には扱われません。税理士はほかのクライアントをもっているので、別の会社から融資の申し込みを取れるかもしれないからです。よって、融資を受けたい場合は、顧問税理士に相談して間に入ってもらい、一言いってもらうだけでも、だいぶ可能性が広がります。金融機関は複数行と付き合う複数の金融機関と付き合うメリットはさまざまあります。金融機関の支店長や融資担当者は定期的に交代になりますが、新しい担当者の場合は数カ月様子見することが多く、融資に消極的になるケースがあります。そのような場合に、担当者が変更していない他行に掛け合えば勝手知ったる仲として融通が利きやすくなります。また、複数行と付き合いがあることで金利交渉を有利に進めることもできます。また、借入の半分くらいを返済すると、返済した分くらいは追加で貸してくれることがあります。このときにひとつの銀行のみから借入をした場合、元の融資期間が7年とすると3~4年しないと追加で借りられません。ですが、1年目にメガバンクや地銀、2年目に信金、3年目に政策金融公庫などと、時期をずらして複数の金融機関から借りることができれば、4年目にメガバンクから追加融資、5年目に信金から追加融資、6年目に政策金融公庫から追加融資といったように、毎期の資金繰りが非常に楽になっていくので、税理士とうまく連携し、資金計画を練っていきましょう。

節税のために社長がおさえておきたい用語解説節税に関する用語にはさまざまなものがあります。本文で解説されている用語もありますが、ここで特に重要なものについておさらいしておきましょう。法人税…法人の所得金額を課税標準として課される税金(国税)法人事業税…法人の所得に対して、地方自治体(都道府県)によって課される地方税法人住民税…法人の事業所がある自治体から課税される地方税で、「法人都道府県民税」と「法人市町村民税」の総称固定資産税…固定資産の所有者に課税される地方税で、土地・家屋・有形償却資産が課税対象となる印紙税…課税文書(株券や手形など)に対して課される税金登録免許税…登記や登録、免許などについて課せられる国税益金…資本等の取引によるものを除いた、法人の資産の増加をきたす収益の額損金…資本等の取引によるものを除いた、法人の資産の減少をきたす原価や費用、損失の額自動車税…自動車に対し、定置場の所在する都道府県においてその所有者に課される税金ガソリン税…ガソリンに課せられる税金で、正式には「揮発油税及び地方揮発油税」という当期純利益…事業年度に計上されるすべての収益から、費用を差し引いて計算される当期の最終的な純利益欠損金…事業年度の所得の金額の計算上、損金の額が益金の額を超える場合の、その超える部分の金額資本金…出資者が会社に払い込んだ金額を基礎として設定される一定の額のこと税額控除制度…一定の要件を満たした場合に、法人税額から一定の金額を控除できる制度。要件は制度ごとに細かく定められている外形標準課税…資本金1億円超の法人を対象とした法人事業税の課税制度であり、所得を基準とした課税(所得割)、法人の生み出した付加価値を基準とした課税(付加価値割)と資本金等の金額を基準とした課税(資本割)により徴収を行う制度連結納税…連結グループをひとつの単位として、連結グループに属するそれぞれの法人の所得金額と欠損金額を損益通算して連結所得金額を計算し、連結所得に対する法人税額を親法人がまとめて納税する制度タックスヘイブン対策税制…タックスへイブンとよばれる軽課税国(シンガポールなど)を利用して租税回避を図る行為を排除する制度引当金…将来発生する費用のうち、当期に帰属する金額を見積もって、その概算額を当期の費用とするもの評価損…企業の所有する資産に取得原価または帳簿価額と異なる価額を付する場合に生じる差額原価法…購入価格を在庫の金額とするもの低価法…時価が原価より下がっている場合、期末時点での時価を在庫の金額とする方法合同会社…会社形態のひとつで、登録免許税6万円のみ(定款認証不要)で設立することができる退職所得控除…給与所得控除とは別に、退職所得につき一定額を控除することができる制度

用語一覧あ青色申告一括償却資産一括比例配分方式移転価格税制印紙税受取配当金益金益出し延滞税か海外子会社・海外関連企業開業費外注費会計士開発費外形標準課税確定申告加算税貸倒損失貸倒引当金課税売上高課税事業者株式交付費仮払消費税仮決算簡易課税還付金議事録期ズレ技能習得費給与手当給与課税均等割クラウド会計繰越欠損金経営セーフティ共済決算賞与決算セール欠損金減価償却原価法建設仮勘定源泉徴収控除合同会社個人成り固定資産税個別対応方式さ再調達原価

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■著者紹介冨田健太郎(とみた・けんたろう)税理士。複数の上場企業の経理部、大手専門学校の講師、会計事務所および個人事業を経験して独立開業。開業後は、オーナー企業や個人事業者の税務・会計、コンサルティング、講座講師等をしながら、WEBでの情報提供にも注力している。自身が運営するサイト「勘定科目大百科」は月間20万PV以上、また、大手税理士検索サイト税理士ドットコムの税理士ランキングで1位も獲得している(平成29年8月18日現在)。東京税理士会上野支部税務支援対策部委員。葛西安寿(かさい・やすひさ)税理士。青森、宮城、東京の3つの税理士事務所および税理士法人に12年にわたり勤務。零細企業から上場企業までの法人税申告を行うとともに、医療法人の申告や相続税等の資産税業務まで幅広く業務をこなす。独立後は、いち早くクラウド会計を取り入れ業務を拡大するとともにもうひとつの柱として相続税業務に注力している。その他、医療法人の監事、既存税理士のいる会社とのセカンドオピニオン契約、保険外交員向けセミナー、執筆等、多岐にわたり活動している。■執筆協力戸田愛(とだ・あい)2014年税理士登録。立教大学法学部卒業。鉄鋼メーカー本社の総務人事部にて、管理部門の業務を一通り経験した後、税理士法人トーマツおよび医業専門税理士法人を経て、2016年池袋にて独立開業。個人および法人の会計税務や相談業務を中心としながら、相続案件にも注力している。

小さな会社が本当に使える節税の本二〇二〇年六月二六日電子書籍版発行著者冨田健太郎葛西安寿発行者伊藤滋発行所株式会社自由国民社〒一七一-〇〇三三東京都豊島区高田三-一〇-一一電話〇三-六二三三-〇七八一(代表)ホームページhttps://www.jiyu.co.jp/編集協力・本文DTP株式会社ループスプロダクションカバーデザイン吉村朋子製作新藤慶昌堂©2018自由国民社KentaroTomita,YasuhisaKasai○この作品は『小さな会社が本当に使える節税の本』〔二〇一九年九月四日初版第五刷発行〕に基づいて制作されました。○本書の全部または一部の無断複製(コピー、スキャン、デジタル化等)・転訳載・引用を、著作権法上での例外を除き、禁じます。ウェブページ、ブログ等の電子メディアにおける無断転載等も同様です。これらの許諾については事前に小社までお問い合わせください。○本書の内容の正誤等の情報につきましては自由国民社ウェブサイト(https://www.jiyu.co.jp/)内でご覧いただけます。○本書の内容の運用によっていかなる障害が生じても、著者、発行者、発行所のいずれも責任を負いかねます。また本書の内容に関する電話でのお問い合わせ、および本書の内容を超えたお問い合わせには応じられませんのであらかじめご了承ください。

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