この章では、会計やファイナンスについて説明します。経営者として、「正しい」知識や考え方を身につけることが重要です。枝葉末節にとらわれたりすることはもちろん、誤った考え方を身につけていては元も子もありません。 さて、会社である限り、「売上高」や「利益」の目標があります。当然のことです。 ところが、若い社員のなかには、「会社は『お客さま第一』を標榜しながら、一方で、売上高や利益を上げろと言う。なぜ売上高や利益が必要なのですか?」と聞いてくる人がいるものです。あなたなら、何と答えますか? この章のテーマは「会計」ですが、会計を制度として理解する前に、ビジネスに関わる者としてまず知っておくべきことがあります。それは、そもそも、なぜ売上や利益を出すのか、ということに対する信念を持つことです(「執念」ではなくて「信念」です!)。そして、そのベースとして、売上高とは何か、利益とは何かということをしっかりと理解することが大事です。 ただ、本に書いてある定義をそらんじたところで意味はありません。「お客さま第一」や「社会への貢献」といった企業の存在の目的と同じベクトル線上、あなたが打ち出した会社のビジョンと同じベクトル線上での説明ができなければなりません。──それでは、売上高とはそもそも何でしょうか? これは、「お客さまとの接点」だと、わたしは考えます。会社は、お客さまに商品やサービスを提供しています。その対価として会社がいただいているのが「売上高」です(「対価」という言葉がありますが、モノやサービスを差し上げている対価が売上高です)。 そういう意味で、会社の「社会での存在(プレゼンス)」そのものが売上高であり、 お客さまに喜んでいただいている大きさであるといえます。いかがでしょうか。 だから、「お客さま第一」を標榜している会社は、その喜んでいただいている大きさである売上高を増加させることに、大きな意義を見いださなければならないわけです。売上高はお客さまに喜んでいただいている度合いですから、それが少なくなるということは、「お客さま第一」が十分でないともいえるのです。 次に、利益。 利益というのは、その売上高から費用を引いたものですが、これは、社内での「工夫の度合い」ともいえます。もちろん、通常、売上高が上がるほど利益も出しやすいわけですから、二義的には「お客さまから喜んでいただいている度合い」であるともいえます。 さらに、利益は「手段」でもあります。次の五つの形で社会に貢献し還元する手段です。 1 企業の延命 2 未来投資 3 働く人の福利向上 4 株主還元 5 納税 そう考えると、利益は、会社やそこで働く人、社会をよくするためのコストだともいえます。 こうした基本的な考え方を、経営者をはじめ働く人のすべてがしっかりと持っていれば、信念を持って売上高や利益を上げようという気持ちになれます。松下幸之助さんもこのような観点から、利益が出ない企業や経営は罪悪だとまでおっしゃっています。従業員や会社、社会発展のためのコストを支払っていないからです。 もしあなたが管理職なら、自分自身もそういった信念を持つとともに、社員にそれを宣教師のように伝えなければいけません。それが管理職としてのミッションです。
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