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1 顧客対応でのミス防止

序章●「」企業を取り巻く環境の変化は、事務職として働く人たちにも影響を及ぼしています。強い筋肉質の会社にするためにと、企業はあらゆるムダの削減を奨励し、経営の効率化を推し進めてきました。コストダウンに始まり、人員削減に残業代カット…。残業ゼロを推進する動きは、これまで残業を当然だとしてきた働き方そのものを変えつつあります。仕事のスピードと効率を上げて残業を減らし、その分仕事とプライベートの両立を推奨。それで豊かな人生を送る人が増えるのは、歓迎すべきことです。その一方で、急激な効率化によるひずみが生じているのも、また事実です。たとえば、これまで五人でやってきた仕事を四人で、極端な例では三人で回さなくてはならなくなっています。その結果、一人あたりの業務量は格段に増え、定時に帰れるどころか一人で三人分の仕事をこなさなくてはならないため、残業がなかなか減らないという人も少なくありません。業務量が増えて忙しくなれば、当然、ミスも起こりやすくなります。ダブルチェックをすべきところを、ついおろそかにしてしまい、間違いを見逃してしまうこともあるでしょう。あるいは、自分の許容量を超える仕事を抱え、こちらの仕事をやりながらもあちらの仕事が気になって集中できない。目の前の仕事への集中力が低下すれば、ミスにつながりやすくなります。いま、仕事の現場で起こっている事務ミスには、一人あたりの業務量が増えたことによるものが少なくありません。●内部統制の強化が招いた業務の煩雑化最近は、業務が適正に行われるための手順やルールを定め、その運用を強化する企業が増えているようです。いわゆる内部統制の強化です。要所要所でのチェックを厳しくすることで、不正やミスを防いだり、業務の効率化を図ろうというのがねらいです。このように社内を統制の取れた状態にしておくことは、健全な会社運営には大切だといえます。この内部統制を強化する動きも、日頃の事務作業を増やしている一因になっています。たとえば、関係者への説明責任を果たす目的で書類が増えたり、業務処理や経理処理において複数部門の承認が必要になったりしています。業務が適正に行われているかをチェックするための作業が増えているのです。問題は、不正やミスを防ぐ目的で強化された内部統制が、業務の煩雑化を招き、かえって事務ミスを引き起こしやすくしているという事実です。物事には、「ここさえ押さえておけば大きな問題にはならない」という重要ポイントがあります。逆にいえば、「ここで間違えたらすべてに影響してしまう」というやっかいな部分でもあります。業務プロセスが煩雑になればなるほど、すべてがひとつの大きな塊のように思えてしまい、押さえるべきポイントを見逃してしまいがちです。それがミスにつながっているといえます。●相手の顔が見えない「メールが中心」のコミュニケーションいまや仕事上のやりとりの大半はメールで行われています。インターネットがつながる環境なら、相手がどこにいても連絡が取れ、しかも画像や資料も添付できます。極端な話、メールを使えば、相手と一度も顔を合わせたり話をしたりすることなく仕事をすることも可能です。メールが仕事のスピードと効率を上げる便利なツールであることは間違いありません。しかし、何でもかんでもメールに頼っていると、コミュニケーションに行き違いが生じる危険性もあります。時間や場所の確認ならメールのほうが正確だといえますが、もう少し複雑な内容になると、文章だけでは伝えきれないことも出てきます。よくあるのは、こちらが伝えたかった意図と、相手の解釈が異なってしまうというコミュニケーションギャップです。たとえば、上司が部下にメールで仕事を頼んだとします。部下が上司の意図をうまく汲み取れずに、上司の意図とは違うものを提出してしまったとしたらどうでしょう。これもミスと言えるのではないでしょうか。あるいは、相手へのお詫びをメールで伝えるのも新たなトラブルのもとです。相手に対して面と向かって言いにくいことは、できればメールで済ませてしまいたいと思うものです。しかし、誠意を伝える必要があるときこそ、相手と会って、あるいはせめて電話で気持ちを伝えるべきでしょう。それをメールで済ませてしまったら、「メールで謝ってくるなんて失礼だ」とかえって相手を怒らせてしまいかねません。仕事の効率を上げるためにメールは必要ですが、お詫びの気持ちを伝えたり、相手のことを十分に理解するには、直接会って話すことも大切です。便利さを追求するあまり、手段を間違えてしまうと、トラブルやミスのもとになります。IT化に関しては、もうひとつミスを誘発しやすい背景があります。いま、多くの企業が、業務効率化のためのシステムを導入しています。生産管理システムや在庫管理システム、営業支援システムなどです。これらの便利なシステムも、現場の人たちが使いこなせなければ無用の長物です。そればかりか、入力ミスや入力し忘れなどによるミスの原因にもなります。最近、「ミスゼロ」の研修に訪問したある会社も、二年前に基幹業務システムを導入しました。担当の方によると、システムを導入したからといって、すぐにスムーズな運用ができるわけではなく、現場に定着するまでには二年ほどかかるそうです。業務効率化を追求する反面で、システムの運用はますます煩雑に、利用者にある程度の知識やスキルを必要とする傾向があります。利用者の適正や能力以上にIT化が進むことで、ミスが引き起こされているという現実も否めません。IT化を否定するべきだというわけではありません。ただ、業務の効率化を目指すには、現場での運用がスムーズにいくようにサポートしながら行うのが望ましいでしょう。経営の効率化に伴うコストダウンや人件費削減、IT化や内部統制の強化といった流れは止めることはできません。こうした企業を取り巻く環境の変化が、事務ミスを引き起こしやすくしているという背景があります。そのうえで、いかに事務ミスをなくしていくかを考えていかなくてはなりません。たかがミス、されどミスです。ひとたびミスをしてしまえば、本人だけの問題にとどまらず、会社の信用にもかかわる大問題に発展することもしばしばです。たった一度の入力ミスや確認ミスが、何千万円や何億円という会社の取り引きを一瞬にして消滅させてしまうことも少なくありません。というと、読者のみなさんを少し脅してしまったでしょうか。単純な事務ミスが重大な問題に発展しうるという認識はもっていただきたいのですが、かといって「ミスをしてしまう自分はダメ

だ」とひどく落ち込んだり、悩んでほしくもありません。事務ミスをなくすことは誰にでもできます。なぜなら、ミスが発生しているということは、改善の余地がまだまだあるということだからです。ミスが起きる原因を探っていくと、いまの仕事のやり方がふさわしくなかったり、無理があったりすることがほとんどです。少しだけ仕事のやり方や手順を改善するだけで、ほとんどのミスは防ぐことができます。「事務ミスゼロ」は、誰にとっても達成可能な目標です。本書では、事務ミスが起こる原因をわかりやすく解説し、さらに事務ミスを防いで効率よく仕事ができるための小ワザをたくさん用意しました。ぜひ普段の業務に取り入れて、事務ミスゼロを実現するための参考にしていただければ幸いです。事務ミスをなくすということは、自分が快適に、心地良く、しかも効率よく仕事ができるようなやり方を工夫していくことです。これはすなわち、自分らしさを大切にしながら、周りにも喜ばれる仕事のやり方を見つけていくことだと私は考えています。この本を読んでくださることで、読者のみなさんがイキイキと楽しく仕事ができ、心身ともに豊かで充実した人生を送れるきっかけになればと願っています。

『「事務ミスゼロ」の仕事術』目次序章「一人で三人分の仕事」を処理する時代内部統制の強化が招いた業務の煩雑化相手の顔が見えない「メールが中心」のコミュニケーション1章なぜ、今「事務ミス」が問題なのか事例1データ管理のミスでせっかくのおもてなしが台無しに事例2確認を怠ったばかりに三年間の請求漏れ事例3情報共有のまずさで顧客を怒らせてしまった事例4伝達ミスによる機会損失事例5勝手な思い込みで他人の人生を変えてしまった事例6FAXの操作ミスが引き起こした甚大な損失2章よくある事務ミスの例とその理由凡ミスうっかりミス段取りミス顧客対応のミス情報共有ミス3章ミスのタイプを知っておこうタイプ1人の習性タイプ2道具の不備タイプ3環境の不備4章ミスを防ぎ、効率をアップさせる50の小ワザ習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ01朝ダンドリの習慣小ワザ02机上整理小ワザ03「、」小ワザ04慣れによるミスをなくそう小ワザ05忙しいときこそ、深呼吸小ワザ06定期的な声かけで注意を喚起しよう小ワザ07メモを取る習慣をつけよう小ワザ08ミス日記をつけてみよう小ワザ09「」小ワザ10ルールの無視をなくそう小ワザ11業務の全体像を把握しよう小ワザ12反省文段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ13集中タイムを作る小ワザ14重要な仕事は集中して午前中に小ワザ15一日三回は段取りを見直す時間を作ろう小ワザ16一日、一週間のリズムを考えてスケジューリングしよう小ワザ17割り込み仕事はなくす、減らす小ワザ18割り込み仕事は緊急度に応じて交渉する小ワザ19休憩で気持ちを切り替え、生産性を高めよう小ワザ20しっかり休む小ワザ21目的を考えて仕事に取りかかろう小ワザ22小さな目標を設定し、達成感を味わおう小ワザ23自分との約束を手帳に書き込もう仕組み・環境を変えてミスを防ぐ小ワザ24デスクまわりを戦略基地化小ワザ25必要な書類がすぐに取り出せるファイル管理をしよう小ワザ26ノートは一元管理しよう小ワザ27ヒヤリハットは早めに報告→改善小ワザ28ダブルチェック体制を作る小ワザ29ツールを見直そう小ワザ30集中できる場所に移動小ワザ31ミスしたら百円周囲に働きかけてミスを防ぐ小ワザ32相手のスキルに合った指示をする小ワザ33進捗管理、報告を徹底させる小ワザ34「」「」小ワザ35頻発ミスを強調し、注意する小ワザ36「」小ワザ37集中している相手にむやみに話しかけることをなくそう小ワザ38日ごろからコミュニケーションを心がける「見える化」でミスを防ぐ小ワザ39日々の仕事を見える化しよう小ワザ40周りとの仕事の関係性を見える化しよう小ワザ41顧客を見える化しよう小ワザ42仕事の出来栄え基準を見える化しよう小ワザ43仕事の進捗を見える化したボックスを作ろう小ワザ44ミスやクレームを見える化しよう小ワザ45自分の気持ちを見える化しよう小ワザ46自分へのごほうびを見える化しよう

小ワザ47投資の時間を見える化しよう小ワザ48スケジュールを見える化しよう小ワザ49仕事のつなぎ目にひそむミスを見える化しよう小ワザ50処理状況の見える化でメールの返信モレをなくそう5章ミスを防ぎ、効率をアップさせる13のフォーマット❶会議準備チェックシート❷来客応対チェックリスト❸仕事見える化シート【タスク・スケジュール】❹クレーム再発防止シート❺報告書フォーム❻日報フォーム❼電話受注ヒアリングシート❽名刺サイズのクレド❾送り間違えないためのFAX送付状❿書類のライフサイクルルール⓫マイワード・データベース⓬改善アイディア提案シート⓭報告チェックリスト

事例1データ管理のミスでせっかくのおもてなしが台無しにある会社では、周年記念パーティに、いつもお世話になっている得意先の経営者夫婦を招待しました。ご夫婦共にお世話になっていることへの感謝の気持ちを込めて。しかし、ホテルのディナーでの席上でのことです。奥様の席札に、なんとこの経営者の前妻の名前が間違えて印刷されていたのです。指摘によってミスが発覚すると、その場は一瞬にして凍りつきました。周りの人たちもどう声をかけていいかわからず、居心地の悪い空気が流れたとのこと。実際にその場に居合わせた人から聞いた話です。これは明らかに、顧客データの管理ミスです。データをきちんと更新していなかったことが原因でした。そのせいで、相手に感謝の気持ちを伝えるはずの場が、相手の心情を傷つける結果になってしまいました。なぜしっかりと確認しなかったのかと後悔ばかりが先に立ちます。ご夫妻もパーティーを楽しみにしていたはずです。それが「なんて失礼なことをするんだ」という怒りや不信に変わってしまいました。すなわち、感情的価値の低下です。感情的価値にかかわるミスは、「一個いくらの損失」のように定量的な数値で置き換えることができないので、これは計上不能の損失です。相手の感情的価値を下げるようなミスをしてしまったら、その信頼を回復するのはたやすいことではありません。それをよく表しているのが、「100-1=0」という言葉です。オリエンタルランドの加賀見俊夫会長もおっしゃっているように、九十九人がすばらしい接客をしても、たった一人がミスを起こしたり、顧客を不快な気持ちにさせてしまったら、全体の評価はゼロに落ちてしまうのです。信頼を築くには時間がかかりますが、その信頼が崩れるのは一瞬です。妻の名前を前妻と間違えるという失態のあと、この会社は、得意先からの発注を失ったそうです。

事例2確認を怠ったばかりに三年間の請求漏れある不動産管理会社では、物件の借り主への賃料を、三年間も請求し忘れていたという事実が発覚しました。三年間の請求漏れの総額は、なんと五百万円。膨大な額を一度に請求しても、相手も払えるものではありません。本来は請求すべき金額ですが、そもそも不動産管理会社が引き起こしたミスです。その会社は請求をあきらめ、社内的には損害扱いにして損失を補てんすることになりました。原因は「思い込み」。あのお客様への請求は行っているという「思い込み」が毎月のチェックを怠り、三年もの間請求し忘れていたという不備を引き起こしました。お金に関わることは担当者だけではなく、ダブルチェックさえしていれば、こんなことにはならなかったはずです。ダブルチェックの不備が、五百万円の損失という取り返しのつかない事態を引き起こしてしまいました。このケースではたまたま請求漏れが発覚しましたが、いったん漏れてしまったものに気づくことは非常に難しいことです。こうした漏れは、じつは意外に多いのかもしれません。どの段階で気づき、その後のミス防止につなげるかということも大切でしょう。支払いを二重に払い込んでしまったり、違う相手に振り込んでしまうというミスもまれにではあるものの起こっています。ある会社では、支払いの計算を間違えて、二十万円ほど多く振り込んでしまいました。これが毎回決まった金額であれば、振り込まれたほうも明らかなミスだと気づきますが、そうではなかったために気づかなかったようです。この払い過ぎのミスが発覚したのは、一年後。先方に返済を求め、無事応じてはもらえましたが、心情的な不満が残りました。間違った金額を振り込んだり、誤って別の人に振り込んでしまったら、返金の手間がかかるだけではなく、相手にも多大な迷惑をかけてしまいます。場合によっては、自社に対する信頼失墜にもつながりかねません。チェック不備による事務ミスが、このような経済的・心情的損失につながってしまうこともあるのです。

事例3情報共有のまずさで顧客を怒らせてしまったある会社に、長年のお付き合いのある得意先から電話がかかってきました。「あぁ、山口だけど」その電話を取ったのは、入社三ヵ月目の新入社員佐藤さん。どの山口さんかわからずに、「失礼ですが、どちらの山口様でいらっしゃいますか」とマニュアル通りに尋ねました。まずこれに山口さんがカチンときてしまいました。「いろは商事の山口だよ。ところで、うちのいつもの値引き率わかるだろ。A商品の見積もりを作って、すぐにFAXしてくれるかな」佐藤さんには「いつもの」がわかりません。「申し訳ありません。いつもの、と言われましてもわかりかねます」とマニュアル通りに答えてしまったのです。「君、何も聞いてないのか?」「はい、申し訳ありません」「それならもういい」その後山口さんは、営業部長に電話をし、「何ですか、あの電話での受け答えは。あれでは一見に対する対応と変わりませんね。その程度にしか思われていないのであれば、わざわざおたくと取り引きする必要もないから、取り引き中断させてもらいますわ」そうして年間でかなりの額の取り引きが中止されてしまったそうです。これは、顧客情報を共有していなかったことで客離れを引き起こしてしまったケースです。一見して電話対応が問題だったように思えますが、本質的な問題は、社内で重要な顧客情報が共有されていなかったことにありました。もし社内で情報が共有されていれば、佐藤さんは「山口だけど」と言われた時点で、山口さんが会社の上得意だということにピンときたでしょう。すぐさま「いろは商事の山口様ですね。いつもお世話になりありがとうございます」と返して、丁寧な応対ができたはずです。ロイヤルカスタマーは、わざわざ自分のことを丁寧に名乗ったりしません。自分のことは社員全員が知っていて当然だと思っています。それが違うとわかれば、「おたくの会社は、大事な顧客の情報も共有していないのか」「私のことをその程度にしか見てないのか」ということになりかねません。たった一本の電話応対で、大切な得意先を失うこともあるのです。

事例4伝達ミスによる機会損失ある貿易会社での話です。当時、その会社では、不在の営業担当者にかかってきた電話を、営業事務の人が伝言メモに書いて伝えていました。あるとき、得意先から「この商品をいつまでにいくらでいくつ確保できるか」という問い合わせがありました。担当者が不在だったため、営業事務の人が電話の内容を伝言メモに書いて、担当者のデスクの上に置いておきました。ところが、その伝言は担当者に伝わることはありませんでした。後日、営業担当者がその得意先を別件で訪問したときのことです。「あの件、連絡なかったね。もう他の会社に頼んでしまったよ」「何のことですか?」と尋ねて初めて、電話があった事実が発覚したのです。得意先が発注しようとしていたのは五千万円分相当。大きな取り引きの機会を逃してしまったことになります。なぜ、伝言は担当者に伝わらなかったのでしょうか。考えられるのは、伝言メモがデスクの上でほかの書類に紛れ込んでしまった可能性です。あるいは、目につきやすい場所に置かれていなかった、のり付きの付箋を使ってきちんと貼られていなかった、そもそもデスクの上が整理されていなかったなど、複合的な要因があったのだと思います。やはり対応として一番まずかったのは、メモを残して終わり、で済ませてしまったことです。大事な内容のメモなら、担当者が会社に戻ったときに、「そこにメモを残しました。こういう内容なので、至急確認して先方にコールバックをお願いします」と口頭で伝える必要がありました。それさえ怠らなければ、メモがどこかに紛れてしまったとしても、重要な伝言が伝わらずに、闇に葬られてしまうことはなかったでしょう。たった一枚の伝言メモが伝わらなかったために、五千万円分相当の機会損失を引き起こしてしまったのです。

事例5勝手な思い込みで他人の人生を変えてしまったある高校では、大学の推薦入試の願書を、担任教師と進路指導の教師の二人で管理していました。担任教師が生徒から願書を預かり、それを進路指導の教師に手渡してこう伝えました。「山田さんの願書をもらいましたが、申込期間が来るまで金庫に入れておいて下さいね」締め切りまでにはまだ時間があり、進路指導の教師はその願書を金庫にしまっておきました。結局、その願書は大学に郵送されることはありませんでした。問題が発覚したのは、推薦入試の書類選考のあとです。合否通知が来ないことに疑問を感じて、大学に問い合わせてみたところ、そのような願書は受け付けていないというのです。願書は金庫の奥のほうから出てきました。大学には事情を説明して、願書を受け付けてもらえるよう交渉しましたが、例外は認められませんでした。その結果、生徒は第一志望だった大学への入試をあきらめることになってしまったのです。整理整頓されていない金庫の中で願書が埋もれてしまったのが直接の原因ですが、もうひとつ、思い込みやコミュニケーション不足も大きな要因として考えられます。これは推測になりますが、締め切り期日が近づいて進路指導の先生が金庫の中を覗いたとき、「あ、願書がない。担任の先生が送ってくれたのかな」と思い込んだのかもしれません。担任教師も金庫を覗いて、「進路指導の先生が予定通り送ってくれたのだな」と思ったのでしょうか。二人とも金庫の中を隅々まで確認したり、お互いに確認することをしませんでした。「山田さんの願書、送ってくれましたか?」とひとこと尋ねていれば、このような事態は防げたはずです。経済的な損失であれば補てんもできますが、生徒の人生を変えてしまっては取り返しがつきません。生徒を指導し、その将来を応援する教師の立場でありながら、生徒に大きな迷惑をかける結果となってしまいました。

事例6FAXの操作ミスが引き起こした甚大な損失実際に新聞で読んだ話です。ある建設会社が、公共事業の入札を一億円で落札しました。その後、協力会社に送ったつもりのFAXを、誤って発注元である地方自治体に送ってしまいました。小さなミスが招いたこの事態は、たかがFAXの送信ミスでは済まされませんでした。機密情報に絡む情報管理の不備を問題視された建設会社は、発注を取り止めにされ、企業としての信用も失ってしまいました。誤送信の理由は新聞には書いてありませんでした。私が推測するに、FAXの短縮ボタンの押し間違いではないかと思います。地方自治体と協力会社の短縮番号が、「地方自治体が1のボタン、協力会社が2のボタン」のように隣接していて二番を押したつもりが、一番を押してしまったというあたりではないでしょうか。たった一枚のFAXの誤送信で、一億円の業務を失注。信じられないかもしれませんが、ビジネスの世界において個人情報や企業情報の管理は、それほどシビアな問題だということは認識しておくべきでしょう。コストダウンの一環として、裏紙を再利用している会社は多いと思います。この裏紙の取り扱いも問題になっています。よくあるのが、裏紙を使用したFAX送信です。表と裏を間違えて送信してしまい、裏に書かれた企業情報や個人情報が漏えいしてしまうというパターンです。ほかにも裏紙をメモ用紙として使ったり、社内資料を印刷する際に使うこともあるでしょう。そうやって再利用した裏紙を、うっかり社外の人に渡してしまったり、どこかに置き忘れてしまうことで情報が流出するということも考えられます。以前、ある金融機関で投資の相談をしたときのことです。その会社では、顧客との打ち合わせ内容を用紙にメモし、それを改めて定型フォーマットに転記するという方法をとっていました。最初に使ったメモ用紙の裏を、再度メモ用紙として使っていたのです。私が「ちょっとこのメモ用紙をお借りしてもいいですか」といって手にした紙の裏には、顧客の氏名などの個人情報が書かれていました。部外者の私の目に触れてしまえば、これは明らかに個人情報の漏えいです。情報漏洩は会社の信用低下につながります。とくに今の時代、個人情報の保護にはどの会社も神経を使っており、情報管理に不備のある会社は信頼されません。信用が低下すれば、取り引き中断にもなりかねません。このように、事務ミスによって引き起こされたさまざまな事例を見てきましたが、どの事例でも言えることは、ちょっとした事務ミスによって「あの会社はダメだ」だと烙印を押されてしまうことです。「こんな会社に大事な仕事は任せられない」と。ひとたびミスを起こせば、会社の信頼にかかわります。事務員だから、新人だから少しのミスは許される、ではなく、一人ひとりが会社の代表である意識をもつ必要があります。

凡ミス日常業務で一番多いのは、凡ミスと言われるものです。凡ミスとは、「平凡な誤り」「軽率でつまらないミス」といったような意味です。たとえば、こんなミスです。・宛先を間違えてFAXしてしまった・金額の違う請求書を送ってしまった・伝票の記入にミスやヌケ・モレがあった・相手の役職を間違えて郵便物を送ってしまい、あとで嫌味を言われた・相手の名前を間違えてしまった・相手企業の前㈱と後㈱を反対にしてしまった・数字の入力ミス・英文のスペルミス……挙げればきりがありません。どれもちょっとした不注意が引き起こす初歩的なミスです。注意していれば防げた種類のミスといっていいでしょう。誰にでも少なからず身に覚えがあるのではないでしょうか。しかも、これらは「なぜこんな間違いをしたのだろう?」と自分でも腑に落ちない場合が多いものです。自分では相手の名前を正しく書いたつもりだったし、伝票に間違いなく記入したつもりだったと。じつは、普段から慣れている作業やルーティンワークにこそ、凡ミスが起きやすいのです。慣れている作業やルーティンワークは、とくに注意を払わなくても惰性でこなせてしまうので、注意力を保つのは容易ではありません。また、「いつもやっているから間違えるはずはない」といった過信も生まれます。相手の役職が課長から部長に変わったのに、うっかり「○○課長」と書いてしまったり、A社に送るつもりのFAXをB社に送ってしまったり。後者の例は、どちらも見慣れたFAX番号だから、相手を間違えていることに気づかなかったということもあるかもしれません。慣れによる惰性や過信に陥りやすいルーティンワークこそ、ミスが起こりやすいことを自覚して、注意力を保つ意識が必要です。また、周りに気を取られて集中力を欠くことも、凡ミスを引き起こす要因です。職場には気が散る要素がじつにたくさんあります。上司からの割り込み仕事や、後輩からの質問や相談、顧客からの電話応対、それだけでなく、乱雑にモノが散らかっていればそれだけで気が散る要因になります。作業中に周りから話しかけられることもしょっちゅうで、伝票作業中に割り込まれて、入力ミスやヌケ・モレを起こしてしまうことはよくあることです。周りから話しかけられるのは、自分では防ぎようがないことかもしれません。けれども、自分なりに改善できる余地はあるはずです。話しかけられたあとは特に意識を集中するとか、集中力が必要な作業中は話しかけないように周りに頼んでおくなど、工夫することは可能です。それでも、注意力だけでは完全に防ぎきれないのが凡ミスです。人間は完璧ではないので、不注意による間違いやヌケ・モレはどうしても起こってしまうものだと考えたほうがよいでしょう。凡ミスを防ぐための最善の方法は、最終チェックを怠らないことです。人間に凡ミスはつきものであるなら、最後にもう一度チェックし、事前にミスを発見して修正すれば問題はありません。請求書を作成したら宛名や金額の間違いがないかチェックする、伝票を作成したあとで記入内容をチェックする、FAXを送る前には宛先に間違いがないか確認するなどすれば、ミスを防ぐことができるはずです。大事なことは、作業のあとの確認作業を習慣化することです。記入したら確認する、入力したら確認するという一連の流れを普段の業務に組み込んで、ミスを未然に防ぐ仕事のやり方を身につけていくとよいでしょう。最終チェックさえきちんと機能していれば、凡ミスに悩む必要はないのです。

うっかりミスうっかりによるミスも日常業務ではよく起こります。・上司から頼まれていた仕事をうっかり忘れていた・大事な書類をうっかり紛失してしまった・大事なデータをうっかり上書きしてしまった・お客様からのメールを見落としてしまった・電話でお客様に大事な要件を伝えるのを忘れてしまった前の節で取り上げた凡ミスと似ていますが、凡ミスは数字や文字の入力・記入ミスであるのに対して、うっかりミスは「忘れる」「紛失する」「上書きする」「見落とす」といった行為自体を指すと考えることができます。気をつけたつもりでも、ついつい起こしてしまうのがうっかりミス。上司から頼まれた仕事をあとでやろうと思っていても、ほかの仕事に没頭しているうちに忘れてしまうのはよくあることです。また、電話でこれとあれを伝えなくてはと思っていても、電話を切ってから伝え忘れに気づくこともあります。また、データの上書きも手痛いミスです。よくあるのは、別名で保存するつもりだったのに、間違えて上書き保存してしまうケース。軽率な操作ミスが取り返しのつかない事態を引き起こすこともあります。こうしたうっかりミスは、仕事の量が多すぎて一つずつに集中して取り組めなかったり、ほかの仕事のことが気になってしまったり、時間に余裕がなくて丁寧に作業ができなかったなど、落ちついて作業に集中できないために起こるものです。凡ミス同様、うっかりミスをしてしまうのが人間だともいえます。「気をつけよう」と自分で注意するだけでは、完全に防ぐことは難しいものです。そうした人間の特性を理解したうえで、うっかりミスを誘発しないような仕組みや環境を整えることが、一番効果的な対処法です。たとえば、「あとでやろうと思っていた作業をすっかり忘れてしまった」のような「うっかり忘れ」を防ぐには、自分の記憶に頼らずに、メモを活用するのが得策です。上司に仕事を頼まれたら、その場で付箋に書いてデスクの見える場所に貼ったり、その日のToDoリストに書き込むようにします。電話での伝えモレを防ぐには、伝えるべきポイントを頭の中で整理するだけでなく、あらかじめポイントをメモしておきます。普段からメモを取る習慣をつけておけば、作業のヌケ・モレや伝え忘れを防ぐことができるはずです。うっかりデータを上書きしてしまう操作ミスに対しては、操作ミスをなくすにはどうすればいいかを考えるよりも、操作ミスがあっても現状回復できる仕組みを作るほうが現実的かもしれません。そもそも上書きできないようにPDF形式で保存しておく、というのもひとつの方法です。メールの見落としも、一日にたくさんのメールを受け取る人なら、見落とすなというほうが無理かもしれません。対策としては、大切なメールを見落とさない仕組みを強化するしかありません。迷惑メールの設定を強化して大事なメールが埋もれてしまわないようにしたり、迷惑メールが受信ボックスに入ってこないようにする、あるいは、大事な得意先からのメールを別のフォルダに振り分けておくのも手です。いかにしてメールの渦に巻き込まれないようにするかを考えるとよいでしょう。最後に、大事な書類をうっかり紛失してしまったというケース。デスクの上に置いたはずなのに、必要なときに見つからない。あるいは、どこに置いたのかわからなくなってしまった……。これは自分の注意不足に加えて、環境の不備も大きな要因です。書類の紛失とは、別の場所に置き忘れて紛失してしまうケースもありますが、たいていの場合は、ほかの書類に紛れてしまったり、存在自体を忘れてしまったりして、いつの間にか「どこに置いたのかわからなくなる」ことではないでしょうか。そして必ずといっていいほど、紛失するのはデスクまわりが散らかっているときです。書類の紛失を防ぐには、デスクまわりを整理整頓し、書類の定位置を決めておけば問題ありません。案件ごとに書類を保管する場所を決めておくとか、重要書類を一括管理するボックスを用意するとよいでしょう。書類のありかがすぐにわかるようにしておけば、書類の紛失を避けられますし、必要な書類を探す時間も短縮できます。

段取りミスあなたにはこんな経験はありませんか。・明日の午前中の会議に使う資料をまとめておいてほしいと上司から頼まれていたのに、納期を確認し忘れ、上司が必要な時までに渡せなかった。・午後三時までにアンケート結果をまとめるように言われていたが、ほかの作業に追われて取りかかるのが遅くなり、締め切りに間に合わなかったこうした納期遅れも、重大なミスです。ミスは書類の間違いや紛失など明らかにミスとわかるものだけでなく、納期に遅れて相手に迷惑をかけてしまったり、相手の意に沿う対応ができなかったような場合も、ミスに含まれます。納期に遅れるのは、段取りのミスが原因です。段取りとは、どの順番で仕事を片づけていくのか、それらをいつまでに終わらせるのかを事前に決めることです。段取りを組まないまま仕事に取りかかると、やりやすい仕事から手をつけたり、頼まれた順番のままに片づけることになります。優先すべき大事な仕事を見逃したり、デッドラインを意識せずにダラダラ仕事をするので、就業時間内に終わらない、締め切りに間に合わないという事態に陥ります。段取りを組むには、仕事の優先順位を決めなくてはなりません。優先順位がつけば、「この仕事はあとでいいから、あの仕事を先にやろう」といった段取りも自然に組めるようになります。あとはそれぞれの作業にかかる所要時間を見積もり、デッドラインの意識を強くもてば、納期に遅れることはなくなるはずです。しかし、段取りを組むのが苦手な人には、この優先順位をつけるのが苦手な人が多いようです。優先順位をつけるのが苦手な人は、判断基準を持つことから始めてみるとよいでしょう。優先順位の判断基準は、人それぞれです。私の場合は、次の作業工程の人の仕事を滞らせないことを最優先にしています。たとえば、社内で私の承認やアドバイスを求めるスタッフに対しては、できるだけ早くフィードバックし、滞りなく仕事を進められるようにしています。顧客対応が中心となる業務の人であれば、納期順が基本でも、クレーム処理は最優先するという考え方もあります。伝票の入力業務など事務作業が中心なら、先入れ先出しで段取りを組む人もいるでしょう。もし優先順位に迷ったら、上司に聞いてみるのが一番です。「今、この仕事とこの仕事を頼まれていますが、どちらを優先すればよろしいでしょうか」と。優先順位に関してお互いに合意しておけば、上司が先に終わらせてほしかった仕事を後回しにしてしまい、「こっちが先に必要だったのに」と不便をかけることもなくなります。「早くしてほしかった」という上司の期待を裏切れば、それもミスです。また、段取りのミスは、納期遅れだけでなく、じつは凡ミスやうっかりミスを引き起こす要因でもあります。・やるべきことが多すぎて、上司から頼まれた得意先へのFAXをすっかり忘れてしまった・いつもの伝票入力作業を隣の人と話しながらダラダラとやっていたら、入力金額に間違いが見つかったあまりに忙しいと、うっかり忘れが増えたり、入力作業のヌケ・モレや打ち間違いなどのミスが起こります。その一方で、ルーティンワークをダラダラと作業していると、集中力が欠けてしまい、その結果ミスにつながることがあります。凡ミスやうっかりミスをなくすのも、段取り次第です。たとえば、一ヵ月や一週間のうちの繁忙期が事前にわかっているなら、作業を前倒しにして、作業量をならしておきます。ピーク時の仕事量を軽減することで、注意力を働かせたり、丁寧な仕事を心がけたり、ダブルチェックをする余裕も生まれます。逆に単調なルーティンワークが続きそうなら、途中に休憩時間を入れて気分転換する、といった工夫もできます。段取り上手な人は、仕事の全体を見渡して最適な手順と方法で仕事を進められる人です。段取り上手への道は、仕事のミスをなくす第一歩です。

顧客対応のミス適切な顧客対応をしなかったために、お客様を不快にさせたり、怒らせてしまうことがあります。顧客との関係性を悪化させてしまうこともミスに含まれます。・クレーム電話への対応で、お客様のさらなる怒りをあおってしまった・必要な資料がすぐに取り出せず、お客様からの電話問い合わせの際にずいぶん待たせてしまった・得意先からの電話の内容を聞き間違えたまま、担当者に伝えてしまったお客様からのクレームの電話への対応で、相手の怒りを鎮めるはずが、逆に相手の怒りをあおってしまうケースです。クレームを申し出てくれたお客様こそ、適切に対応すればリピーターになってくれる可能性があります。そのチャンスをつぶしてしまうのは、非常にもったいないことです。お客様を怒らせてしまう原因にはいくつか考えられます。ひとつは、誠意のない対応や、相手への共感が感じられない対応をしてしまうことです。クレームの電話に対して、「嫌だなあ、対応したくないな」と思っていると、その気持ちは相手に通じてしまいます。また、お客様の言葉に対して「でも……」「それは違います」と反論するのも、お客様にとっては「この人は私の話をちゃんと聞いてくれない」「自分たちのことを正当化しようとしている」とますます不信感を募らせてしまいます。謝るばかりで解決策を提示しないのも、お客様を怒らせてしまう原因です。あるいは、お客様の要望に対して「それはできません」の一点張り。お客様にしてみれば、「この会社は本当に問題を解決しようという気があるのか」「謝ればいいと思っているのか」ということになってしまいます。もっともやってはいけないのが、クレーム電話のたらい回しです。これでは「クレームに対応しようという姿勢がまったく見えない」と非難されても仕方ありません。お客様の感情がこじれ、二次クレームやさらに大きな問題に発展する原因となるのは間違いありません。クレームの電話に関わらず、お客様からの電話にはすぐに対応するのが基本です。ですが、必要な書類がすぐに取り出せずにお客様を待たせてしまい、相手をイライラさせてしまうことがあります。この場合の根本的な問題は、書類の管理がきちんとできていないことにあります。問い合わせの多い内容に関しては、すぐに参照できるようにファイルにまとめておくとか、あるいはデスクまわりを整理整頓して、必要な書類がすぐに取り出せる状態にしておけば、相手を待たせることはありません。どうしても書類がすぐに見つからない場合は、「確認して折り返しお電話します」という対応も考えられます。正しい書類管理と、適切な対応で、顧客満足度を上げる電話対応ができるようになるはずです。電話対応では、聞き間違いによる誤解も避けたいところです。相手の声を聞き取りにくい環境だったり、相手の話し方が聞きとりにくい場合に、聞き間違いが起きてしまうのは仕方のないことだと思います。しかし、これも凡ミスと同じで、確認作業を怠らなければ防ぐことができます。日時や場所、連絡先など、数字や固有名詞を含むものは特に注意が必要です。待ち合わせや打ち合わせ、締め切りなど大事な日時を聞き間違ってしまうと、大事な情報を共有しないまま物事を進めてしまうことになります。電話対応では、必ず復唱して確認します。「十一(じゅういち)」と「十七(じゅうしち)」など聞き間違えやすい言葉は、「十七(じゅうなな)」と言い換えて確認。また、「午後八時」は、朝と思い込まないように「二十時」と言い換えるなど注意が必要です。また、「今度の火曜日に訪問します」のような曖昧な表現では、「今度」がいつのことなのか、互いの解釈にズレが生じがちです。このような場合は、「今度の火曜日、十五日ですね」と日付でも押さえておく必要があります。電話対応では、不在の担当者の代わりに受けることも多いことでしょう。間違った内容を伝言すれば、周りの人にも迷惑をかけることを認識して、ミスを防ぐよう心がけたいものです。電話の相手が自分の直接の得意先や取引先なら、電話のあとに確認のメールを送っておくのも手です。口頭で確認するだけでなく、文字の形で確認することで、より正確さを担保することができます。

情報共有ミス情報がきちんと伝わっていなかったことで、仕事がスムーズに進まなかったり、顧客への対応がちぐはぐになって不信感をもたれてしまった経験はありませんか。・得意先との取引条件が変更になったことを担当営業マンから伝えられておらず、従来の条件で見積書を作成したら、得意先から「どうなっているんだ」と叱られた・電話で相手の名前を聞き取れず、何度も聞き直してムッとされてしまった・後輩からの報告を「大したことではない」と聞き流したら、のちの仕事に支障が出た最初の二つの例などは、一見すると顧客対応のミスのように思われがちです。ですが、問題の本質は情報共有の不備にあります。そもそも顧客に関わる大切な情報を知らされていなければ、適切な顧客対応はできないからです。取引条件の変更や担当者の異動、得意先のキーマンに関する情報などは、社内で共有しておくべき重要な情報だといえるでしょう。たとえば、営業の担当者が得意先と合意した新たな値引き率を、営業事務に伝えていなかったとします。営業事務が得意先と話をするなかで食い違いが生じれば、「あれ?営業の誰々さんは三%だと言ってたのに、言うことが違うじゃないの。会社として一貫性がないのは困るな」と不信感を抱かれてしまいます。また、先述しましたが、ロイヤルカスタマーになると電話でわざわざ社名を名乗らない人もいます。「○○だけど」と言われて、どこの誰だかわからずに聞き返したために、得意先を怒らせてしまったという話もよく聞きます。そんなことで腹を立てるのは大人げないと思うかもしれません。しかし、顧客にはいろんな人がいますし、基本的に顧客はわがままなものです。自分は大切にされて当然、という気持ちも強いものです。社内での情報共有を徹底することで適切な顧客対応ができ、それで顧客満足度も上がるなら、一石二鳥だと考えましょう。顧客対応だけではありません。情報共有ができていないために、業務の進行が遅れたり、作業モレやダブリなどのミスを引き起こすこともあります。たとえば、社内勉強会の講師として他部門の人を呼びたいとします。面識もないのでいきなり連絡しても断わられるかもしれないと、考えあぐねていました。たまたま同僚に相談したところ、以前仕事で付き合いがあったことがわかり、同僚を通じて連絡を取ることができました。この場合、周りと情報共有したことで仕事をスムーズに進めることができましたが、誰にも相談しなければ、ずっと一人で悩む羽目になったことでしょう。また、せっかく情報を共有しても、情報の処理を間違えば意味がありません。後輩からの報告を聞き流してしまい、のちに仕事に支障が出たというケースなどはまさにそうです。こうした情報処理のミスは、自分の勝手な思い込みから起こるものです。自分では間違いに気づかないことが多いので、上司や同僚など周りの客観的な意見を聞きながら、判断を正していくしかありません。情報の重要度や緊急度を正しく判断してこそ、情報の有効利用とミスゼロにつながるのです。

タイプ1人の習性ミスはなぜ起こるのでしょうか。私たちはミスを起こすと、「あわてんぼうな性格だから」とか、「そそっかしいから」などと個人の資質や性格のせいにしがちですが、決してそれだけではありません。ミスには、必ずそれを引き起こす要因があります。ミスが起こる根本的な要因を追求して、それに手を打っていくことが、ミスをなくしていくことにつながります。ミスの要因をつきつめて考えていくと、「人」に由来するもの、「道具」に由来するもの、「環境」に由来するものの大きく3つに分けられます。ここでは、人に由来するミスについて詳しくみていきます。まず挙げられるのが、知識やスキル不足です。これは、仕事の内容や手順をよく理解していなかったり、パソコンやアプリケーションの使い方がよくわからないなど、担当する仕事に対して充分な知識やスキルが備わっていないために起こります。不慣れな新人が業務を担当したり、能力に対してレベルの高い業務を任されたりしたときに起きやすいミスです。いまは経費削減や効率化によって一人あたりの業務量が増え、知識やスキルを身につけるための時間を投資することが難しくなっています。十分な準備のないまま、業務にあたらざるをえないというのが実情ではないでしょうか。その一方で、慣れによる過信もあります。業務に慣れればスピードも上がり、効率も良くなります。その半面、業務に精通してくると、「何度もやっているからわかっている」と考えて注意を怠ったり、惰性でこなすようになりがちです。しかし、業務には例外があったり、変更や改善が加わっていくものです。最後の手順が変更されていたり、新たな要素が加わっていても、「いつもとやり方は同じだから問題ない」などと思い込んでいると、適切な対処ができません。慣れによる慢心や思い込みが、結果的にミスを引き起こしてしまいます。集中力の低下もミスの大きな要因です。凡ミスやうっかりミスなど、集中力が散漫になるとミスが起こりやすくなります。かといって、「集中力が途切れないように気をつけよう」とか、「集中して仕事に取り組もう」などと思っても、意識的な対処法だけではうまくいきません。ミスをなくすには、もう一歩踏み込んで、なぜ集中力が低下するのかという根本的な要因まで考えてみる必要があります。集中力が低下するのは、先ほども触れたように、慣れがあります。業務に慣れると心に油断が生まれ、集中力が途切れやすくなります。ほかにも、休みなく作業を続けることによって疲労が蓄積し、集中力の低下につながることもあります。仕事を早く終わらせようとして、適度な休憩も取らずに無理をすると、かえってミスを誘発して時間がかかってしまうことにもなりかねません。一日のうちのどの時間帯に、どの作業をするのかも重要なポイントです。たとえば、ランチを済ませた午後一番は眠気が襲ってくる時間帯ですが、そこに数字の計算や請求書の発行など集中力が必要な作業を組み込んでしまうと、ミスの原因になります。また、体調が不安定なときや、気分が乗らないときなども、気持ちが散漫になりがちです。最後に、コミュニケーションの不備によるミスです。これは上司が部下に指示を出す場合や、周りの人に仕事を頼む場合などに、必要な情報が適切に相手に伝わっていないことによって起きます。よくありがちなのが、上司が部下に対して「いつものあれ、やっておいて」と指示をするケース。明らかに情報が不足しています。上司にしてみれば、部下はこれくらいわかるだろうという気持ちかもしれません。しかし、こうしたあいまい表現や省略は、誤解や解釈の違いを生じる原因となります。逆に、情報が多すぎるのもよくありません。一度に多くの指示を与えたり、思いつくままに話したり、相手には関係のない情報まで伝えてしまうと、相手は混乱してしまいます。適切な判断ができずに、ミスを起こす原因になります。コミュニケーションの不備は、指示を出す側だけの問題ではありません。指示を受ける側にもミスの原因はひそんでいます。相手の指示をよく理解しないまま作業を始めてしまったり、納期や仕様など大切なことを確認しないまま放置しておくなど、確認さえしっかりしていれば防げたミスも少なくないでしょう。

タイプ2道具の不備道具が原因となるミスには、どのようなものがあるでしょうか。道具といってすぐに思い浮かぶものには、パソコンやペン、電卓、ホチキス、メモ紙などがあります。こうした日常的に使う道具が、使いにくかったり、古かったり、壊れていたりして、本来の役割を果たしていない場合にミスが起きやすくなります。たとえば、次のようなケースが考えられます。・かすれたペンやインクのにじんだペンを使っていたところ、文字が読みにくくて誤認されてしまった・粘着剤のついていない伝言メモを置いておいたら、知らない間に床に落ちてしまい、大切な伝言が伝わらなかった・分厚い資料をホチキスで留めていたら、いつのまにか資料が抜け落ち、紛失してしまった・節約のために裏紙をメモ用紙にしていたら、それが社外の人の手に渡ってしまい、社外秘の情報が漏れてしまった・不慣れなアプリケーションで作業をしていたら、時間がかかってしまい、納期に遅れてしまった・FAXの短縮ダイヤルの操作を充分理解しておらず、間違った相手に送信してしまった・未更新の顧客データで作業を行っていたため、担当者の名前を間違えてFAXを送ってしまった道具そのものに不備があるケースもあれば、道具を使いこなせない、作業にふさわしい道具を選んでいないなど、人と道具のミスマッチが問題になるケースもあります。また、データの未更新のように、道具が最適な状態に保たれていないこともミスの原因になっています。さらに言うと、必要なときにすぐに取り出せないことも道具の不備と言えるでしょう。たとえば、ファイルや資料がすぐに取り出せずに、「たぶんこうだった」などと記憶を頼りに作業したら間違っていたということもあります。「いま必要だ」というタイミングで使えない道具は、道具とはいえませんね。日常でよく使う道具のほかにも、業務マニュアルや手順書なども、仕事をミスなく正確に進めるために必要な道具であると考えられます。業務マニュアルや手順書がないと、不慣れな新人はどのように仕事を進めていけばいいかわからず、やり方を間違えてしまいます。各人が我流で仕事を進めるようになってしまえば、職場全体で仕事の品質を一定レベルに保つことも難しくなるでしょう。実際に、業務マニュアルのない職場では、よりミスが多発しているという報告もあります。また、業務マニュアルがあっても、使いにくければ意味がありません。使えない業務マニュアルの筆頭は、情報が古いままで更新されていないマニュアルです。作業手順が変更になったり、新たな項目が追加されたりしても、マニュアルに反映されていないことがよくあります。頻繁に変更があるから、小さな変更だからといって放置しておくと、ミスにつながったり、間違った手順を習慣化させてしまうことになります。わかりにくい業務マニュアルも困りものです。手順は書かれていても、業務の目的や意図、全体像が記されていなければ、その業務について深く理解することはできません。先ほど情報不足はミスにつながると申しましたが、業務マニュアルでも同じです。業務の全体像を理解するのに必要な情報を過不足なく伝えてはじめて、例外が生じた場合でも適切に判断し、ミスを防ぐためのよりどころとして利用されるのです。そういう意味では、業務フローや留意点、よくあるケースの対応事例なども網羅されていると、よりわかりやすいマニュアルになるでしょう。業務のミスをなくし、作業効率を向上させる道具としては、ほかにもスケジュール表、チェックリスト、書類のフォーマット、テンプレートなどが挙げられます。適切に運用されれば便利な道具ですが、そのためには使いやすく、わかりやすく、常に最新の状態に更新されていることが大前提です。人が原因で起こるミスに比べて、道具にまつわることは意識しにくいかもしれません。便利なはずの道具も、選択や使い方を間違えばミスの原因になるということを、心に留めておいてください。

タイプ3環境の不備環境の不備が引き起こすミスには、大きくわけて二つあります。ひとつは、デスクまわりが雑然としている、職場環境の整理整頓が行き届いていないなど、物理的な環境の不備が引き起こすミス。もうひとつは、チームが連携しにくい体制や、コミュニケーションが取りにくい職場など、人間関係にかかわるミスです。まずは、物理的作業にかかわる環境について考えてみます。職場環境の中でミスが起きる一番の原因は、資料や道具などがきちんと整理整頓されていない状態にあることです。たとえば、デスク周りが書類や物で埋もれていて、伝言メモがどこかに紛れて大事な連絡が伝わらなかった。あるいは、自分のデスクはもちろん、共用のキャビネットや資料棚も乱雑な状態のため、必要な書類がすぐに取り出せず間に合わなかった。こういったミスは、職場環境がきちんと整理整頓されていれば防ぐことができるものです。目に見える環境だけではありません。デスクトップや共有フォルダに保存されたデータについても同様です。なんでもかんでもデスクトップ上に並べたり、わかりにくい分類やフォルダ分けを行っていると、必要なデータが見つからなかったり、探すのに時間がかかってしまいます。整理整頓が行き届いていないことによるデメリットは、必要な物がすぐに取り出せないという物理的な面だけに留まりません。探し物に時間がかかれば気分もイライラしますし、雑然とした環境に身を置いていれば、気持ちがささくれたり、集中力が途切れたりします。それが結果的にミスを招いてしまうことにもなるのです。さらにデスクに書類がうず高く積まれていれば、周りの人が快適に働ける環境を壊してしまうばかりか、周囲との壁も生まれます。環境が悪いだけで、物理的にも精神的にも負のスパイラルに陥ってしまう危険があるということです。次に、人間関係にかかわるミスについて考えます。職場における上司と部下、チームメンバー同士のコミュニケーションが減っているなかで、最近増えているのが「タコツボ化した職場」です。タコツボ化した職場とは、業務について、その人しかわからない状態、隣の人がどんな仕事をしているのかもわからない、一人で抱え込んでしまっている状況のことです。チーム内の連携がうまくできないため、業務の受け渡し時にミスやモレが生じたり、伝達ミスにより意図と解釈の違いが生まれ、目的にそぐわないレベルの低いものができあがってくることもあります。チームで協力し合うことがないため、特定の人に業務が偏る傾向があります。そのため、ある人は残業続きだけれども、ある人は定時で帰るということも起こります。誰にも手伝ってもらえずに、一人で格闘したあげくに結局は納期に遅れたり、重大なミスを引き起こしたりといった事態にも陥りかねません。また、担当者以外は誰も業務のことをわかっていない状況では、本人が不在のときに緊急事態が起こっても対応できません。それが原因で顧客の信頼を失ったり、取り返しのつかないミスに発展しないとも限りません。周囲とのコミュニケーション不足、さらには信頼関係の欠如は、仕事の成果に間違いなく影響を与えます。たとえば、上司に相談しようとしても、忙しいからとまともに取り合ってもらえないような職場では、部下は上司への相談や報告をあきらめてしまいます。部下が自分の勝手な判断で仕事を進めてしまえば、ミスにつながりやすくなります。また、何か問題が発生した場合でも、上司と部下のコミュニケーションが円滑でなく、上司に情報が十分に伝わっていなければ、上司が状況を把握することができません。適切な指示やアドバイスを与えて状況を回復することも難しいでしょう。円滑なコミュニケーションや情報の共有は、お互いの信頼関係がなければ成立しにくいものです。気兼ねなく相談できたり、困ったときは互いに助けを求められるような人間関係や職場環境が求められています。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ01朝ダンドリの習慣ミスを引き起こす要因には、忙しすぎるスケジュールや、許容範囲を超えた仕事量、集中力の低下など、仕事をうまくコントロールできないことが原因の場合が結構多いものです。たとえば、朝から晩までダラダラと同じ仕事をしていると、疲労やマンネリによる集中力の低下でミスを連発。逆にあれもこれも仕事を抱えすぎると、別の仕事に気が散って目の前の仕事に集中できず、ミスを誘発。そこで「とにかく手当たり次第に片づけよう」と行きあたりばったりで進めてしまえば、先に終わらせるべき仕事が最後まで残ってしまい、焦ってミスを連発。結局時間に間に合わず、納期遅れのミス……ということになりかねません。こうしたミスを防ぐ一番の方法は、一日の仕事を始める前に計画を立てることです。その日のうちにやるべきことをすべて書き出し、どの作業を、どの順番で、どれくらいの時間で終わらせるのかを決めます。それをToDoリストや付箋に書き出してデスクの見える場所に貼っておきます。あるいは手帳やスケジュール帳に書き込んで調整する。このように事前に段取りを組むことで、慌てず余裕をもって仕事に取り組むことができます。段取りで大切なことは、仕事の優先順位を決めることです。仕事には、すぐに取りかかるべき緊急案件や、時間をかけてじっくりと取り組むべき重要案件、納期まで時間的余裕があるもの、いつ取り組んでも問題ないものまで様々なものがあります。この優先順位を間違えて段取りを組んでしまうと、緊急案件なら納期遅れのミス、重要案件なら仕事の質が低いといったミスにつながってしまいます。優先順位をつけたら、それらを一日のスケジュールに組み込んでいきます。ここでのポイントは、一日のリズムを考えてメリハリをつけることです。一日のうちには、集中力の高まる時間帯や、眠気の襲ってくる時間帯、その日の体調によっても仕事がはかどる時間帯とはかどらない時間帯などリズムがあります。仕事の緊急度や重要度に応じて、最適な時間帯に組み込むことでメリハリをつけるのがコツです。また、単調な仕事やルーティンワークと、ミスが許されない重要な仕事とを交互に組み込むことでも、一日の仕事の流れにメリハリが生まれます。こうした段取りの立て方は、小ワザ16「一日、一週間のリズムを考えてスケジューリングしよう」でも詳しく紹介しているので参照してみてください。段取りとは、自分の仕事を効率的にマネジメントすることです。段取りを組むことで一日の仕事を俯瞰できるため、「あの仕事が今日中に終わらなかったらどうしよう」といった不安を感じなくて済みます。一つひとつの仕事を確実にクリアしながら、慌てずに目の前の仕事に集中できれば、ミスやヌケ・モレも減ります。また、目標時間を設定することで「この時間内に終わらせよう」というデッドライン意識が強くなり、集中して作業に取り組めるようにもなります。段取りを組むのは、朝がおすすめです。出社したら、仕事を始める前の十五分を段取りを組む時間にあてるだけでも違いが生まれます。忙しいときはたったの十五分の時間も惜しいと思ってしまいますが、段取りを組むことで時間だけでなく心の余裕も生まれ、ミスを確実に減らすことができるのです。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ02机上整理乱雑に散らかったデスクまわりは、それだけでミスの温床です。まず、必要な書類や道具をすぐに取り出せない、紛失してしまうといった物理的な側面から誘発されるミスがあります。たとえば、重要な書類が見つからないために、手順や項目を確認せず「だいたいこんな感じだろう」と思い込みで作業を進めてしまい、あとでミスが発覚。あるいは、顧客からの問い合わせに即答できずに、相手を待たせてしまった。大事な顧客からの伝言メモを紛失してしまい、コールバックできずに顧客の信頼を失ってしまった、なども考えられます。これらはどれも書類や物の紛失にとどまらず、会社の信頼に関わるほどのミスや失態に発展する危険性があります。また、机上の乱れは、心が乱れる、気が散るといった精神的な側面からもミスを誘発します。前項で触れた集中力にも関係してきますが、散乱したデスクでいらないものが視界に入れば、目の前の仕事に集中できません。それに、今にも崩れ落ちそうな書類の山に囲まれた状態では、落ちついて仕事をすることなどできないでしょう。集中して仕事に取り組める環境作りの基本は、机上整理です。あるべきものがあるべき場所にある、スッキリとした状態を目指します。すぐに散らかってしまうという人は、まずは書類や道具を元あった場所に戻す癖をつけてください。使った物を出しっぱなしにしておくと、デスクの上はどんどん散らかっていきます。使った物を元の場所に戻す時間は、たったの数秒。その手間を惜しまなければ、集中できる環境の維持はそれほど難しいことではありません。それでも散らかってしまう場合は、終業時にデスクの上をきれいにしてから帰ると決めておくのもひとつの方法です。会社によっては、デスク上の物をすべて引き出しにしまってから帰るというルールを徹底しているところもあります。机上整理にかかる時間はたったの五分。毎日五分をかけるだけで、翌日は気持ちよく仕事を始められるばかりか、デスクまわりをきれいな状態に保つことができます。ミスなく仕事をするには、集中力とノリが必要です。気分がノッているときは、質とスピードを両立できるような仕事ができるものです。そのノリを作るためにも、机上がスッキリ整理整頓された状態にしておくことが大切です。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ03「ま、いっか」厳禁ミスが目立つ人は、「ま、いっか」という言葉が口ぐせになっている─。これはあるセミナーの参加者がおっしゃっていたことです。たとえば、今日中に連絡するはずが忘れてしまった。「明日でもいいか」と思って放置しておいたら、相手は連絡が来ないから次の工程に進めず、迷惑をかけてしまった。あるいは、上司から頼まれた会議資料を準備する際に、上司から指示された拡大コピーではなく、等倍でコピーしてしまった。「文字はなんとか読めるから、いいか」と思ってそのまま会議室に届けたら、「大事な箇所がよく読めない」と苦情を言われた。「ま、いっか」という言葉には、あるべき手順や約束を無視してしまう自己管理力の甘さがひそんでいます。また、「ま、いっか」と思うのは自分だけで、相手はそうは思っていないことがほとんどです。守るべき手順や約束に執着せずに「ま、いっか」で流してしまうのは、明らかに判断ミスであり、間違った行動につながっていきます。先ほどの例で言えば、約束を守らずに相手に迷惑をかければ、それは重大なミスです。上司の期待にそぐわない結果を出してしまったとしたら、それもミスです。もしあなたが「ま、いっか」という言葉を頻繁に口にしているなら、その言葉がミスを引き起こしているのかもしれません。口に出しそうになったら、「ま、いっかは厳禁」とつぶやいてみる。まずは口ぐせを変えることで、手順や約束をおろそかにしがちな自分を変えていくようにします。ただし、すべてにおいて「ま、いっか」を厳禁にしてしまうと、息が詰まってしまいます。場合によっては許されるケースもあるでしょう。たとえば、「メールで連絡してください」と言われていたけれども、口頭で説明したいので電話で返事する。このように、ルールを破っても誰にも迷惑をかけない場合や、臨機応変に手段を変更することは問題ないでしょう。むしろ、「ま、いっか」で流してしまうとミスにつながってしまう最大のネックとなる部分をしっかりと押さえておくことが大事です。たとえば納期や締め切り、仕様、顧客の要望やクレームなどです。こだわるべき部分に優先順位をつけて、まずはそこから「ま、いっか」をなくしていくことを意識してみましょう。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ04慣れによるミスをなくそう慣れたときこそ、ミスに注意が必要です。仕事に限らず物事に慣れると、「これくらいわかっている」という過信やうぬぼれが生まれます。そうなることで基本や原点を忘れたり、無視することがミスにつながっていきます。私自身もこんなミスがありました。ある研修の打合わせの最後に、担当の方が「会場は、いつもの場所でお願いします」と伝えてきました。これまでに何年もお世話になっている会社だったので、私は「あ、いつものところだな」と早合点をして、確認を怠ってしまったのです。しかし当日、「いつもの会場」と思い込んだ場所には誰もいらっしゃらず、となりの別館が会場だとわかり、慌てて移動したことがありました。この例からもわかるように、慣れるとあるべき手順を無視してしまいがちです。自分はもう新人ではないから、いつもやっているから、少しくらい工程を省いても問題ないと勝手に判断してしまうのです。そうやって手順を省略したり変更したり、最終チェックを怠ってしまえば、ミスやヌケ・モレの原因になります。「見ているつもりで見ていない」というのも慣れが引き起こす危険なミスです。最終チェックをしたのになぜか間違いを見落としてしまった、ということはありませんか。それは、「自分は慣れているから、間違いは起こさない」という過信から、見るべきところをしっかり見ていないために起こっているのです。また、自己流のやり方をしてチームに迷惑をかけてしまったり、作業量やスケジュールを甘く見積もって納期に遅れるといったことも、業務に慣れた頃にありがちなミスです。自分はよく知っているからといって自己流に走ったり、「これくらい大丈夫だろう」と甘く考えてしまうことが、ミスの原因になることを認識する必要があります。こういったミスを起こさないためにも、慣れたときこそ基本を忘れないことが大切です。手順やルールには、そうあるべき理由があります。なぜこの手順が大事なのか、この仕事の役割は何かなど、折に触れて原点に戻ることで、慣れによるミスをなくすことができます。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ05忙しいときこそ、深呼吸研修時、「どんなときにミスが起きますか」と質問すると、一番多いのが「忙しいとき」です。忙しいときにはミスが起こるというのは、多くの人が感じているようです。たとえば、銀行の窓口では、月末やお昼の時間帯などには、数十人のもの順番待ちができることもあります。次から次へと顧客対応を進めても、順番待ちの数はいっこうに減りません。待つ時間が長くなれば、お客様もイライラ。「早くしてほしい」という顔で窓口を見ています。「早くしなくては」と焦れば焦るほど、ミスが頻発……。私がある銀行の窓口で手続きをするとき、こんなことがありました。窓口の女性はかなり忙しそうでした。「これで用紙に記入してください」と渡されたのが、鉛筆だったのです。「あれ?鉛筆でいいのかな?」と気になりましたが、取り急ぎ鉛筆で記入して、窓口での処理は完了。ところが後ほど、銀行から電話がありました。「鉛筆書きの書類は、認められないのです。申し訳ありませんが、ボールペンで記入していただきたいので、これからそちらに伺います」ということになり、却って手間をかけることになりました。忙しいときというのは、ミスが起こる空気になっているものです。銀行の窓口に限らず、月初や月末、支払いの締め日前などは職場が殺気立ちます。「急いで!」という暗黙のプレッシャーにのまれてしまうと、焦って作業が雑になるので、ミスが起こってしまいます。しかし、忙しいときこそ空気にのまれてはいけません。落ちついて考えることが大切です。が、そうはいっても、周りが殺気立っているときには、なかなか落ちついて考えられないものです。そこでおすすめするのは、「深呼吸」→「頭の中で整理」→「仕切り直し」の三ステップによる気持ちのリセットです。まず、深呼吸です。深呼吸くらいで落ちつけるのかと思うかもしれませんが、忙しいときこそ、深呼吸の効果は絶大です。深呼吸は、吸うことではなく吐くことを意識します。すーっと息を吐くことで、自分の中にあるイライラや焦りを体の外にすべて放出。気分が落ち着いて、状況を冷静に客観的に見られるようになります。ひと息おいたら、頭の中で整理します。いまこの作業ですべきことは何なのか、どの順番でしなければならないのか。「まずこれをして、次にあれをこうして……」と自分の動きをシミュレーションします。このとき、黙って頭の中でシミュレーションしてもいいのですが、指でさして確認すればより効果的です。指でさすという動作を加えることで、一つひとつの物事にくさびを打ちながら確認するイメージです。先ほどの銀行の例で言えば、お客様から振り込みの依頼があったときは、まずは深呼吸して気持ちを落ちつけます。次に、「処理に必要なのは、用紙と、ボールペンと、印鑑の三点セット。はい、OK!」のように指でさしながら確認します。そうやって気持ちを仕切り直すことで、忙しさに追われている感や、巻き込まれている感から抜け出すことができます。忙しさの中でも気持ちに余裕が生まれ、ミスや不備を防ぐことができるのです。忙しいときこそ、心に余裕をもって業務に臨みましょう。こうした心がけはミスをなくすだけでなく、職場のギスギス感をなくし、明るく働きやすい職場にもつながっていきます。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ06定期的な声かけで注意を喚起しよう忙しくなると周りのことが見えなくなり、自分の世界に入り込んでしまいがちです。そのようなときに突発的な出来事が起こると、とっさに適切な判断ができずに混乱をきたしてしまうことがあります。あるいは、例外的な対応を求められても、気づかずいつもと同じような手順でこなしてしまい、結果的にミスにつながってしまうこともあります。目の前の仕事に集中することはミス防止の観点からも大切ですが、あまりに自分の世界に入りすぎるのも問題です。盲目的になりすぎて自分を見失わないためにも、ときどき「冷静な自分を呼び戻す」ような工夫をするとよいでしょう。窓口業務では、「忙しいときほど声をかけ合う」ということをおっしゃいます。窓口が混み合ってくると顧客対応に忙殺され、次第に周りが見えなくなっていきます。そのようなときに、「ニコ、キビ、ハキで!(ニコニコ、キビキビ、ハキハキでの意味)」などと声をかけあって、周りのことにも気を配るように注意を喚起しているといいます。また、一日のリズムに合わせた声かけも効果的です。たとえば、午後一番の眠い時間帯は、もっともミスが多くなります。「さぁ、午後一番の眠い時間帯。ミスが多いから気をつけて!」といった声かけで気を引きしめます。また、集中力の途切れがちな午後三時から四時の間も魔の時間帯です。そこを乗り切れば、終業まではあと二時間ほど。「もうあとひとふんばり。最後まで集中!」とダラダラしがちな気持ちに喝を入れるのもいいでしょう。このように定期的に声をかけることによって、狭くなりがちな自分の視野を広げ、周りの事にも気を配った仕事ができるようになります。その結果、よりチームの連携が生まれ、ミス防止にもつながります。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ07メモを取る習慣をつけよう人間は忘れる生き物です。上司に頼まれたFAXの送信を、あとでやろうと思ってすっかり忘れてしまったり、上司に打ち合わせ場所の変更を伝えるのを忘れてしまったり。忙しいときは、特に「うっかり忘れ」が多くなります。忘れないための簡単な方法が、メモを取ることです。上司の指示を受けたとき、「あれをやらなきゃ」と思いついたとき、その場でメモを取るようにします。単純なことですが、これがうっかり忘れを防ぐ一番の方法です。思いついたときにメモするには、メモ用紙を常に携帯しておくことが大事です。しかも、いざというときにすぐに取り出せるのがポイントです。メモ用紙は、ポケットに入るサイズのメモパッドや付箋でもかまいません。営業で外回りの多い人には、ボイスメモもよく活用されているようです。私はロディアのメモパッドを活用しています。大きさがちょうどよく、いつでもサッと取り出せて、その場で気づいたことを書けるので便利です。そして、ここからが肝心なのですが、忘れないためにメモに書いた内容を行動に移すためのひと手間が必要です。一番オーソドックスな方法としては、メモパッドや付箋に書いた「やるべきこと」を、その日のToDoリストに転記します。頼まれた順番や納期、作業の難しさなどで優先順位をつけ、その日の段取りに落とし込んでいくのです。「これは緊急性が高いから、この仕事が終わったらすぐに取りかかろう」とか、「これとこれは午後一番の時間にまとめてやろう」といった具合です。段取りの組立てに手帳やスケジュール帳を活用している人であれば、手帳に書き込んでいきます。一日のうちに三回ほど、メモを整理する時間を設けるとよいでしょう。仕事を始める前の朝の時間、お昼前の時間、夕方前の時間の三回。メモを見直すことで、「せっかくメモに書いたのに、やるのを忘れてしまった」というようなヌケ・モレを防ぐことができます。また、午後から夕方に近づくにつれ、割り込み仕事などで段取り通りにいかないことも増えてきます。一日全体の段取りを見直す時間としても有効に使えます。ほかにも、メモを行動に移すために私が実践していることがあります。行動につながる動線上に付箋を貼っておくことです。たとえば、新幹線のチケットを忘れずに購入しなければならないとします。新幹線のチケットは駅構内で買いますから、IC乗車カードなど駅で必ず使うものに「新幹線のチケット購入」と書かれた付箋を貼っておくのです。そして駅でこの付箋を見たら、すぐにチケット売り場へ行けるという仕組みです。「駅についたら買おう」と気をつけているだけではつい忘れてしまいますが、動線上に付箋を貼っておけば、絶対に忘れることはありません。チケット以外でも、外出時に購入しようと思っているものを書いておくのも手です。ぜひ試してみてください。せっかくメモを取っても、メモを取るだけで安心してしまっては意味がありません。メモとは、言わば仮置きスペースのようなものです。そこから行動に移すために、段取りに組み込むという作業が大切なのです。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ08ミス日記をつけてみようミスをして上司から注意されたとします。そのときは嫌な気分になったり、なぜこんなミスをしてしまったのだろうと考えたり、もう二度と同じことは繰り返さないと決心します。しかし、時間が経つうちにその感情も薄れ、忘れた頃にまた同じミスを繰り返してしまう……。こんな経験はありませんか。ミスの再発防止には、ミス日記をつけることがおすすめです。ミス日記がいいのは、書くことで思考が整理できるだけでなく、自分の心も整理できる点です。ミスをしてしまった直後は、自己嫌悪や後悔やいろんな感情がないまぜになっています。そういった感情を紙の上に吐き出すことで、冷静な目で、客観的に状況を捉えられるようになります。ミスの本質的な原因を洗い出すことができれば、その後の再発防止にも役立つはずです。ミス日記には、次のことを意識して書いてみましょう。まずは「こんなミスがあった」という「事実」です。数字の入力を間違えた、同僚に伝えたつもりがきちんと伝わっていなかった、会議用資料の作成を間に合わせることができなかった、などです。次に、「なぜミスが起こったのか」の「原因」です。ここでは、ミスが起きたときの自分や周りの状況、心理的状況などをできるだけ客観的に振り返るようにします。とくにコミュニケーションの不備など相手がかかわっている場合は、自分の立場だけでなく、相手の立場からも検証してみる必要があります。「自分はこう思っていた」「こうしたつもりだった」が、相手にとってはそうではないことがよくあります。どこに誤解や行き違いがあったのかを突き止めなければ、また同じミスが起こってしまいます。最後に、再発防止のための「改善策」です。ミスが起こった原因を踏まえて、今後はどうするのがよいのか、再発防止の決意とともにまとめます。おまけとして、ミスをしたときの自分の感情も書き記しておくとよいかもしれません。悔しかった、恥ずかしかった、情けなかった……と書くことで、二度と同じミスをしたくないという強い動機づけにもなります。ミス日記を書いたら、定期的に読み返すようにします。ミスの原因と改善策を記憶にインプットし続ければ、きっとミスを減らすことができるはずです。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ09「聞き耳」を立てて状況を把握しよう上司の受けがいい人や気が利くと評判の人は、たいがい「空気の読める人」です。空気を読める人は、ミスが少ない人でもあったりします。あなたの会社にお客様がいらっしゃいました。定期的にお見えになるお客様で、いつもコーヒーは濃いめのブラックを好まれます。その日はお越しになるなり、「最近胃の調子が今一つでして、どうも、もたれている感があってすっきりしないんです」そんな話を応接室に案内する道すがら、同僚とお話になっていました。気が利く人は、〝だったら今日は濃いめのコーヒーではなく、薄めのコーヒーにするか、ハーブティにしよう〟と考えて行動に移し、ひと言添えて、いつもとは違う飲み物を出すでしょう。気が利かない人は、周りへの関心が薄いので、いつも通りの濃いめのコーヒーを出すでしょう。ちょっとした会話を耳にする、相手のことを思いやることで、次の行動が変わってくるはずです。「空気が読める」とは、周りの状況をよく把握しているということです。周りの状況を把握していれば、適切な判断やよりよい選択がしやすいので、仕事をミスなくスムーズに進めることができます。上司や同僚の状況を知っておくことは、周りに協力を求めたり、チームで連携するうえでも大切なことです。普段から周りで起こっていることに注意を払っていると、自分のミスを防ぐだけでなく、周りの人のミスや不備な状況を未然にフォローすることにもつながります。先日、外部の方と打ち合わせをしていたときのことです。その業界特有の専門用語が出ましたが、私はその言葉が理解できませんでした。相手もなかなかうまい説明が思いつかずに、気まずい空気が流れてしまったのです。そのとき、近くにいた女性スタッフがインターネットで調べて、プリントアウトした紙をそっと差し出してくれました。彼女の気の利いたフォローのおかげで、その後の打ち合わせをスムーズに進めることができました。こうしたことは、何も情報共有の仕組みを作るとか、コミュニケーションのルールを決めるとか大袈裟なことは必要ありません。ただ、自分の目と耳を使って周りの出来事に関心をもつだけです。それだけで、ミスのない質の高い仕事ができるようになります。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ10ルールの無視をなくそうルールを無視する若手社員が多くて困るという話をよく聞きます。遅刻や欠勤など、自己管理力不足によるルール無視もありますが、最近の若手社員に顕著なのは、勝手に自己流のやり方に変えてしまうことだそうです。「このやり方のほうが効果的」「こっちのほうが便利」などと勝手にやり方を変えてしまったり、自分の限られた知識と経験だけで「これは必要ない」と誤った判断をしてしまう。その結果、社内での作業レベルがそろわずにやり直しになったり、一貫性を失って顧客に不信感を与えたり、といったミスにつながっているようです。特に最近は、コンプライアンスや内部統制の強化から、守るべきルールが増えています。帰る前にはデスクの上の物をすべて引き出しに入れて鍵をかけるとか、仕事の資料やデータは持ち帰れないといったルールを決めている会社もあります。にもかかわらず、ルールを軽視してデータを持ち出し、情報漏えいに発展してしまったというケースもあります。自分くらい大丈夫だろう、という気持ちでルールを無視すると、あとで大事になりかねません。どのルールにも理由があるので、きちんと守る必要があります。新人の時期を過ぎ、仕事にも慣れてくると、自分なりの工夫でスピードや効率アップを図れるようになってきます。だからといって、勝手な思い込みで仕事のルールを変えてしまうのは問題です。物事を習得していく段階や心構えを表す言葉に、「守・破・離」があります。「守」は、原理原則や教えを忠実に守って、ひたすら基本を身につける段階です。「破」は、それまでの原理原則や教えを土台としながら、自分なりの工夫や改善を加えていく段階です。「離」は、これまでの原理原則に捉われることなく、自分なりのやり方で新たな価値を生み出していく段階です。これは仕事においてもあてはまります。仕事に少し慣れたからといって、いきなり「離」を目指すのでなく、まずは仕事の基礎体力を養う「守」から始めるべきです。仕事の手順やルールは、仕事の基本形を身につけるものだといえます。そう書くと、「自分のやっていることは、ルール無視ではなく改善だ」という反論も聞こえてきそうです。それでは、ルール無視と改善はどう違うのでしょうか。たとえば、資料を自分の手元に残しておくのに、節約のために二分割や四分割でコピーをするのは、改善です。一方で、社内の内部資料を、誰の断りもなく二分割や四分割でコピーするのは、ルール無視です。フォーマットを急に変えてしまうと混乱しますし、二分割や四分割では読みづらい人もいるでしょう。あるいは、社内で規定のボールペンでは使いづらいので、書きやすいペンを自腹で購入して使っている、というのは改善です。一方で、文具購入担当者が上司の承認も得ずに書きやすいけれど高価なペンに変更してしまうのは、ルール無視です。組織や会社にほころびが出るのは、こうした小さなルール無視からではないでしょうか。当然のことですが、ルールはきちんと守られるべきです。またルールを改善したほうがいいのなら、上司やチームメンバーと相談しながら、皆が納得する形で行うべきでしょう。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ11業務の全体像を把握しよう自分の担当する業務だけを見ていると、その業務の役割や重要性は見えにくいものです。入力作業などのルーティンワークなら、なおさらです。単純作業を繰り返していると、つい「一件くらいミスしても、また入力し直せばいいや」とミスに対して軽い認識になりがちです。しかし、その入力データが別の部門に送られ、それをもとに全国の販売計画が立てられているとしたらどうでしょう。自分の担当している入力作業がミスの許されない重要なもので、営業戦略のかなめとなっていることがわかれば、「ミスはしないようにしよう」と入力作業にも緊張感が生まれるのではないでしょうか。仕事は自分だけで完結するものではありません。自分の仕事は部門の一部であり、その部門は他部門との関連性の中で業務を進めています。ですから、自分がミスをすれば、それが関連部門の誰々さんの業務に影響し、最終的にはお客様にも迷惑がかかることになる。そういう意識をもつことが大切だと思います。そのためには、全体の中での関連性や業務フローを知り、全体を見渡す視点をもつことも必要です。自分の担当する業務の役割や位置づけがわからなければ、上司に尋ねてみるとよいでしょう。自分の役割や重要度が理解できれば、気を引き締めて業務にあたろうという気持ちも生まれ、ミスを減らすことにもつながります。同時に、仕事へのやりがいも生まれるでしょう。最近は、部門間のつながりが断絶されていることによるミスや不備が増えているという話もよく聞きます。ルーティンワークや単純作業を担当する事務職の人にも、自分の仕事を全体像の中で捉えられる視点が必要です。

習慣を変えてミスを防ぐ小ワザ12反省文小ワザ8「ミス日記をつけてみよう」ではミス日記を紹介しましたが、ミス日記が自分に向けたものであるのに対し、反省文は上司に提出したり、他人に見せることを前提にしています。反省文といっても、ミスを反省することが目的ではありません。自分の起こしたミスに焦点を当て、改善策を導き出すためのものです。それをチーム内で共有すれば、チームメンバーが同じようなミスを起こさないために活用することもできます。書く内容はミス日記とほぼ同じ。「こんなミスがあった」という事実、「なぜミスが起こったのか」という原因、「ミスを繰り返さないためにどうするのか」という再発防止策です。たとえば、会議に必要な書類を持っていくのを忘れてしまった、というミスがあったとします。その原因を考えてみると、書類をすべてひとつのファイルに突っ込んでいたために、必要なものをすぐに取り出せなかったからでした。つまり、書類管理の不備です。それを解決するには、書類を案件ごとにファイルして、時系列に並べる管理法に改めよう、と書いていくうちに今後の対策が明らかになっていきます。原因や改善策がわからない場合は、上司にアドバイスを求めましょう。ミスは自分の思い込みや過信から生まれるものも多いので、自分では原因に気づかないこともあります。ミスの本質的な原因を探るには、上司や周りの人の客観的な視点を取り入れることも大切です。反省文には、これらの内容が記入しやすいようにあらかじめフォーマットを作成しておきます。事実と原因、改善策を記入する欄に加えて、上司のコメント欄も設けておくとよいでしょう。フォーマット化しておけば、何がミスの原因で、何が改善策かがパッと見てすぐにわかるので、チーム内で回覧して共有する際にも便利です。ミスには、ヌケ・モレや納期遅れなど明らかにミスとわかるものもあれば、重大なミスには至っていないけれども、日常的に起こっている簡単なミス(=ヒヤリハット)もあります。ヒヤリハットの場合は、「うっかりしていたけれど、大事にならなくてよかった」と軽く考えてしまいがちですが、こうしたヒヤリハットこそが、将来の大きなミスにつながっているということを心に留めておく必要があります。ヒヤリハットや小さなミスであっても、「なぜそうなったのか?」に焦点を当てて原因を探り、二度と同じことを起こさないように改善していくことが大切です。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ13集中タイムを作るミスが起こる大きな原因のひとつが、集中力の低下です。集中力が低下して注意力が散漫になると、細かい数字の見落としや、ヌケ・モレ、入力ミスなどが起こりやすくなります。ミスをなくすには、集中できる環境をいかに作るかが大事です。しかし、普段の業務では、上司から急ぎの仕事を頼まれたり、同僚や後輩から話しかけられたりして、集中したくてもなかなかできないものです。いったん周りから割り込まれると、途切れた集中力を元に戻すのは大変です。余計なところに気が散り、目の前の仕事がおろそかになり、その結果、ミスを引き起こしてしまうのです。集中できる環境を作るには、「集中タイム」を設けるのもひとつの方法です。この時間だけは周りの誰からも邪魔されたくないという割り込み禁止の時間です。細かい数字の計算や伝票作業など集中力の必要な仕事は、この時間にやるようにします。集中タイムを設けるには、周りへの周知と協力が欠かせません。ある会社では、チームメンバーが持ち回りで集中タイムを設け、デスク上に「集中タイム」と書かれた札を立てて周りに知らせています。集中タイムの人にはできるだけ話しかけないようにするなど、職場全体で協力しているそうです。職場全体で取り組むのは難しい場合でも、集中力を保つための周りへの働きかけや工夫は可能だと思います。自分の仕事の「見える化」もそのひとつです。割り込みには、相手が集中力の必要な仕事をしているとは知らずに、悪気なく割り込んでくるケースもあります。そういう割り込みに対しては、「今は請求書を作成しているから集中したい」ということが見える化されていれば、相手も遠慮するはずです。たとえば、「請求書作成中」「伝票作業中」などと旗を立てて自分の状況の見える化を工夫している人もいます。このように、誰にも邪魔されない時間や環境を一日のうちでいくつか作り、そこにミスの許されない仕事をはめこんでいくという発想が大事です。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ14重要な仕事は集中して午前中に一日のうちで一番集中力の高い時間帯は、午前中です。睡眠を十分に取ったあとの午前中は、疲労感がなく、頭がスッキリし、頭のキレも冴えています。そういう午前中に重要な仕事を集中させることで、ミスを防ぐことができます。ここでお伺いしますが、あなたにとって重要な仕事とは何でしょうか。この質問にすぐに答えられる人は意外に少ないものです。仕事はどれも大事ですし、意味があります。しかし、その中でも絶対にミスの許されない仕事や、自分にしかできない仕事など、キモとなる仕事があるはずです。何をもって重要な仕事と位置づけるのか、改めて考えてみるとよいと思います。たとえば、ナレッジワークを重要な仕事と位置づけている人もいるでしょう。ナレッジワークとは、頭を使って新たな価値を生み出す仕事のことです。社内業務のマニュアルを作成したり、ヌケ・モレをなくすためのチェックリストを作るなど、業務効率化やミスゼロのための仕組み作りも含まれます。こうした仕組み作りは、社内の業務を平準化(※)したり、新人でもミスなく仕事ができるようにするために大切なことです。あるいは、周りの人の業務に大きな影響を与える仕事を重要だと捉えることもできます。自分の担当業務がチーム全体の要となるような場合や、チームでの仕事の進め方や役割分担を自分が決めたりするような場合などです。自分が起点となって周囲を動かす場合、その仕事にミスがあってはいけないのはもちろんのこと、正確で質の高い仕事が求められます。営業マンにとっては、顧客とのコミュニケーションが一番大事かもしれません。たとえば保険の営業マンなら、お客様がどんな悩みを抱えていて、何を望んでるのかを知らなければ最適な提案はできません。ややもすると契約書類の作成や整理などバックオフィス業務に時間を取られがちですが、お客様へのヒアリングに充分な時間を取った上で、提案書の作成は、思考がクリアな午前中に組み込んでみてはどうでしょう。自分の担当業務を手当たり次第にこなしていくのではなく、業務に優先順位をつけて効率的にマネジメントするのが段取りの基本です。重要な仕事は集中力の高まる午前中に組み込むことで、ミスをなくしていくことができるのです。※ムラをなくすこと(本文に戻る)

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ15一日三回は段取りを見直す時間を作ろうその日の段取りは朝一番に立てるのがよいのですが、時間が経つと割り込み仕事などが入ってきて、段取り通りにはなかなかいかないものです。「今日はこの段取りで仕事を進めよう」と計画しても、お昼近くになって上司から「これ、急ぎでお願い」と頼まれることもあるでしょう。割り込み仕事を見越した段取りを立てていても、それ以上に時間が取られてしまうこともあります。割り込み仕事が生じるのは仕方がありませんが、割り込まれるままに仕事をしていては、ほかの大事な仕事が後回しになって納期に遅れてしまった……ということにもなりかねません。そうしたミスを未然に防ぐためにも、段取りを節目ごとに見直し、再調整することが大切です。タイミングとしては、朝の段取りの組立てを含めて、一日三回見直すようにします。朝の次は、昼前に見直します。ここでは午前中を振り返って、段取り通りに進んでいるかの確認と、段取りからズレがある場合は、午後にどのように改善していくかを考えます。そして終業の一時間前。残り一時間でその日のうちにすべきこと、翌日に回しても問題ないものを振り分け、最後の調整を行います。このように意識的に段取りを見直す時間を取ることで、割り込み仕事でスケジュールがずれたとしても、納期に遅れたり、慌ててミスを誘発するような不測の事態を未然に回避することができます。段取りの再調整には、日報を活用する方法もあります。左側の時間割には朝に立てた段取りを記入し、右側には再調整した段取りを記入できるようにしておきます。このように段取りを検証、改善できる仕組みを作っておくと便利です。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ16一日、一週間のリズムを考えてスケジューリングしよう一日や一週間には、集中力の高まる時間帯と、逆に集中力が低下してミスが起こりやすい時間帯があります。ミスを防ぐには、こうした一日や一週間のリズムを考えて、どの仕事をどの時間帯に組み込むのがいいのかを考える必要があります。まず、一日のうちで考えてみます。もっとも集中力が高まるのは、これまでも繰り返し述べているように午前中です。この時間帯には、数字の計算や請求書発行など集中力の必要な仕事を組み込むようにします。一方で、ミスが起こりやすいのは、まだエンジンがかかっていない朝一番の時間帯です。一日を効率的に過ごすためにスタートダッシュをかけるのは大事ですが、まだ気分がノッていないうちから集中力を必要とする仕事に取りかかると、ミスのもとになります。朝一番は、自分が得意な仕事、あるいは、メールチェックなど全体像を把握できる仕事からスタートするとよいでしょう。午後一番の時間帯も、満腹後の眠気に襲われ、ミスが起こりやすくなります。この時間帯には、FAX送付などの細切れ仕事や、人に会ったり、ミーティングなど外的刺激のある仕事が向いています。また夕方は、就業時間が長引けば長引くほど集中力が低下し、これもまたミスにつながります。一日の終わりは、キリのよい仕事、たとえば書類のファイリングや机上の整理整頓などが向いています。次に、一週間のリズムからスケジュールを考えてみます。休み明けの月曜日は、どうしても外部からの電話が多くなります。集中しているときに電話が割り込んでくると、集中力がそがれ、ヌケ・モレやミスの原因になります。そうであれば、月曜日は電話対応に集中する日と割り切るのもひとつの方法です。このほうが割り込まれるストレスも減り、ミスも少なくなるでしょう。火曜日は、一週間のうちで一番作業効率が上がる日です。月曜日はまだ完全にノッていませんが、火曜日になると次第にエンジンもかかってきます。特に火曜日の午前中には、ミスが絶対に許されないような数字がらみの仕事や、新たな価値を生み出す提案資料の作成などに向いています。逆に、こういうときに報告会議などを入れてしまうのは、もったいないです。水曜日は、一週間の折り返し地点として、少し中だるみが見られる日です。週の後半に向けて仕切り直しができるような、ワクワクする仕事を入れるといいでしょう。ワクワクする仕事は人それぞれですが、自分の得意な仕事や、前向きになれる仕事などです。週の後半の仕事ぶりは、水曜日をどう過ごすかにかかっています。そして、木曜日は一番効率が落ちる日です。集中力の必要な数字計算などの仕事や、顧客への新たな価値を生み出すような仕事は、できれば避けたいものです。代わりに人に会ったり、ミーティングや打ち合わせなど目先の変わる仕事を入れることで気分を上げていきます。最後に金曜日です。週末に向けて少し気分も上がってきます。午前中は、一週間のうちに終わらせるべきルーティン作業に取り組むとよいでしょう。終業前の二、三時間は、この一週間の振り返りと、来週に向けての仕事の整理や段取りもやっておきたいところです。このように、一日や一週間にはリズムがあります。リズムに合った段取りを組むことが、結果的にミスゼロにつながっていきます。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ17割り込み仕事はなくす、減らす集中力が途切れる原因のひとつが、割り込み仕事です。割り込み仕事が入ると、せっかくの集中力がプッツリ途切れて、うっかり入力ミスや勘違いを引き起こしてしまいます。また、いったん意識が別のところに向いてしまうと、それを元に戻すのには時間がかかります。こうした割り込み仕事がなくならないのは、割り込み仕事を頼む周りの意識の問題もありますが、受ける側にも「割り込み仕事があるのは仕方がない」と思ってあきらめてしまっている人が多いからではないかと思います。割り込み仕事があって当然というのは、単なる思い込みです。工夫次第では、減らしたり、なくしていける余地はまだまだあります。たとえば、上司からの割り込み。どこそこにFAXを送っておいてほしいとか、資料をコピーしてほしいとか、こちらの状況におかまいなく仕事を頼んでくるのは、自分がどれだけの仕事を抱えているのか、今どんな状況なのかを上司に理解されていないからのことが多いものです。このような場合は、スケジュールを上司に伝え、自分の状況を理解してもらうだけで、無意味な割り込みは少なくなるはず。スケジュールボードに段取りを書き込んで共有したり、集中タイムなどの割り込み禁止の時間を設けることで対応できそうです。また、上司の割り込みを見越して段取りを組むのも防衛策になります。あるいは、周りに聞き耳を立てることで職場内の動きを把握し、「そろそろこういった頼まれ仕事をするかもしれない」と察知することも、段取りを組むうえでは有効です。同僚や後輩からの割り込みも、あまりに多い場合は悩みの種です。「これはどうやるんでしたっけ?」などと、いちいち、その都度やり方を聞かれることはありませんか?その度に仕事が中断され、集中力が途切れることで、ミスにつながることもあります。これを避けるには、手順の見える化で対応します。よく聞かれる書類の書き方などは、注釈をつけたりサンプルを作成しておきます。パソコンの使い方やシステムのオペレーションについては、簡単な手順書を用意。ほかにも業務の流れや手順のマニュアルを作成しておくのもいいでしょう。新人に対しては、勉強会を開いて教育することで、割り込みを減らすことができます。また、外からかかってくる電話も割り込みのうちのひとつ。顧客からの電話に仕事を遮られることもあります。外線電話による割り込みに対しては、電話の対応を時間ごとの当番制にするという方法もあります。時間内は担当の人が電話に出るように決めておけば、ほかの人は仕事に集中することができます。割り込み仕事など外的要因に振り回されているうちは、ミスの原因はなくせません。「割り込みは仕方がない」ではなく、「どうすれば減らせるか、なくせるか」という視点で考えていくことが大切です。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ18割り込み仕事は緊急度に応じて交渉するこれまで割り込み仕事への防衛策について述べてきました。しかし、それでも割り込まれたときは、どうすればいいのでしょうか。割り込み仕事はすぐに対応しなくてはならない、と思っている人が多いかもしれませんが、そうではありません。割り込み仕事に翻弄されてミスを誘発しないためには、緊急度に応じて優先順位をつけて対処することが必要です。割り込み仕事の緊急度が高く、しかも自分の時間に余裕があれば、すぐに取りかかります。仕事の緊急度が低ければ、空いた時間に埋め込んでいきます。一番対応が難しいのが、割り込み仕事の緊急度は高いけれども、自分がほかにも緊急の仕事を抱えていて、すぐには対処できない場合です。このようなときは、仕事を頼んできた相手との交渉が必要です。たとえば、複数の営業担当者のサポートをする営業事務の人は、あちこちから仕事を頼まれます。営業担当者からすれば、ほかの人たちからどれだけ仕事を頼まれているかわからないので、あまり悪気なく、気軽に頼んでしまうのです。そのような場合は、次のように交渉してみます。「いま、ほかの人からもこれだけの仕事を頼まれています。これを全部終えるには、これだけ時間がかかりそうです。それが済んでからの対応になりますが、大丈夫でしょうか」交渉するには、自分の仕事を見える化しておくとよいでしょう。自分が抱えている仕事の量が相手に見えないと、「本当にそれだけ抱えているの?」と疑問に感じてしまいます。付箋やToDoリスト、スケジュールボードなどで自分の仕事を見える化しておくことで交渉がやりやすくなります。このように、割り込み仕事に振り回されるのではなく、いかにコントロールするかを考えてみてください。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ19休憩で気持ちを切り替え、生産性を高めよう人の集中力は、長くは続かないものです。同じ作業をずっと続けていれば、そのうちマンネリ化し、集中力が途切れてきます。そこでミスが起こりやすくなるのです。集中力を維持するには、適度な休憩が必要です。一定時間作業を続けたら、少しの休憩を挟む。そうやって気持ちを切り替え、新鮮な気持ちで仕事に向かうことが大切です。事務業務に特化した会社では、適度な休憩を取ることを徹底して実践しています。たとえば、銀行やクレジットカード会社、通販会社の事務を集中して請け負っているような職場では、顧客の契約書類や支払い関連の書類を取り扱うため、ミスは絶対に許されません。ある程度の規模の事務センターでは、年間で取り扱う事務の量が数千万事務量にものぼります。一事務量とは、ひとつの作業の単位です。たとえば、振替を一件処理すれば、一事務量。それが数千万にものぼるのです。以前、私が職場を見せていただいたある通販会社の集中センターは、数百人規模の部隊ですが、年間に二億事務量を処理します。それに対するミスの量が、三年前は一〇〇件近く、二年前は三十数件でした。今年は十五件を目標にしているそうです。二億事務量のうち、ミスがたったの十五件!それでも多いのだといいます。「プロはミスが許されない。目指すはミスゼロ」だと担当の方はおっしゃっていました。そのセンターで実践しているのが、「五十分業務を続けたら、十分休憩する」というペース。また、午後二時からはラジオ体操を取り入れています。ラジオ体操で体を動かし、頭への血の巡りをよくし、気分も新たに午後の時間を過ごすことで、ミスをなくしているというわけです。この職場では、ほかにも業務の役割を定期的に変えるジョブローテーションなど、ミスをなくすための取り組みを複合的に実践しています。休憩時間の徹底はそのひとつですが、業務→休憩→業務→休憩のサイクルを仕組みとして整えているのはさすがだと思いました。十分間の休憩時間をどう過ごすかも重要です。ポイントは、いかにリフレッシュして過ごすかです。体を動かす、場所を変える、鏡を見る、歯を磨くなど自分が心地良いと思える過ごし方をするように心がけてみてください。人は、良い状態、前向きな気持ちで取り組むほうが時間を忘れて打ち込めるし、持てる力を最大限発揮することができるものです。これは、アメリカのミハイ・チクセントミハイという学者が提唱した「フロー理論」でも説明されています。二〇一一年のサッカーのワールドカップでのなでしこジャパンの優勝が象徴的でしょう。決勝戦で勝利へのプレッシャーで力んでしまったアメリカチームとは対照的に、日本チームは和やかな雰囲気でサッカーを楽しみました。だからこそ、持てる力以上の結果を出すことができたのです。適度な休憩を取ることで、生産性の向上にもつながります。生産性の公式は、「質×量投下時間」で表すことができますが、適度な休憩を取ることで仕事の質が格段に上がり、結果的に生産性も上がるというわけです。大切なのは、ご機嫌な状態で仕事に取り組める状況をいかに作れるかということです。適度な休憩を取り、その時間を快適に過ごすことで、ミスを減らしたり、生産性を高めてサクサク仕事ができることにもつながっていくのです。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ20しっかり休む一日のうちで適度な休憩を取るのはもちろんのこと、一日の終わりや休日にはしっかりと休むことも大切です。十分な睡眠時間を取らず、朝もギリギリまで寝ていて朝食抜き……。これでは集中力を持続させることは難しいですし、ミスも起きてしまいます。では、どのような休み方をするのがいいのでしょうか。これは人それぞれだと思います。私の場合は、睡眠時間は五時間あれば十分です。逆に四時間しか取れない日は調子がよくありません。また、休みの日は仕事を忘れてリフレッシュし、日曜日の夕方以降は、翌週の段取りを考えるなど少しずつ仕事モードに入っていくことで、一週間の良いスタートダッシュを切れるようにしています。このように、自分に必要な睡眠時間の限界値や、週末はどのように過ごすのが快適なのかなど、自分をベストな状態で保つための「自分の取扱説明書」を知ることは重要です。それを踏まえたうえで、休みの日をうまく活用して自分をメンテナンスしていくとよいでしょう。休むということは、自分の気持ちや体調を整えるなどの自己管理にもつながります。そしてこの自己管理が、仕事の質や生産性に大きく影響しています。仕事の質や生産性は、知識やスキル、経験、仕事への意欲だけで決まるものではありません。その土台となるものに、人としてのあり方や考え方、行動特性があります。自己管理力もその土台に含まれます。そもそもの考え方や行動が間違っていれば、いくら知識やスキルがあっても仕事ができるとはいえません。仕事のミスをなくし、生産性を高めるためにも、自分自身をベストな状態に整えておくことを心がけましょう。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ21目的を考えて仕事に取りかかろう入力ミスや転記ミス、納期遅れなど明らかにミスとわかるもののほかにも、期待された意図に反したアウトプットを出してしまうこともミスに含まれます。上司に頼まれた仕事を提出して「これは意図していたものと違う」と言われてしまったなら、それはミスです。たとえば、データ集計の仕事を頼まれたとします。売上金額を月別に集計して提出したところ、「各店舗ごとの数字がほしかったのに」と言われて、改めて計算し直すことになってしまいました。これがもし、指示された時点で目的や解釈が伝えられていなかったとしたら、上司の指示不備ではありますが、部下の確認不足でもあります。また、月別の集計さえあればよかったのに、各店舗ごとの細かい数字まで出そうとしたために時間がかかり、会議に間に合わなかった……。これもミスです。データが何に使われるのかといった目的を忘れて、データ集計そのものが目的になってしまうと、このようなミスが起きやすくなります。どんな業務にも目的があります。目的を考えずに仕事に取りかかれば、目的にかなったアウトプットができないというミスを引き起こすだけでなく、正しく仕事の段取りが組めないという点でも問題です。段取りに必要なのは、「目的」「納期」「優先順位」「投下時間」「質と量のバランス」の五つです。仕事に取りかかる前には、仕事の目的を明確にし、目的に沿って仕事を進めていくことが大切です。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ22小さな目標を設定し、達成感を味わおう仕事がノッているときは集中力も高まり、ミスも起きにくいものです。いかに仕事にノレる状態にもっていくかは、「キリがいいところでシメる」の「キリシメ」を意識するのがポイントです。ダラダラとマンネリ化しがちな業務に、意識的にキリシメを作ることで、ミスを減らしていく工夫をします。そのためには、大きな仕事の塊を小さな塊に分解する(=チャンクダウン)のが効果的。たとえば企画書を作成する場合、一度に全部を仕上げようとするのは大変です。途中でうんざりして、集中力が欠けてしまいます。そこで「コンセプトを考える」「概要を書く」「本文を書く」「スケジュールを作成する」のように細かく分解し、塊ごとに小さな目標を設定します。「概要は三十分で書こう」という時間設定でもいいでしょう。そうすることで、「概要は書けた。はい、次!」のようにキリシメがよくなります。ひとつの塊が終わるごとに、達成感を感じることができますし、新たな気持ちで次の塊に取りかかることができます。そんな仕掛けを作ることで、モチベーションも上がり、ミスも減らすことができるはずです。

段取りを変えてミスを防ぐ小ワザ23自分との約束を手帳に書き込もう他人に拘束される予定は手帳に書くけれども、自分との約束はわざわざ手帳に書かない人が多いのではないでしょうか。他人に拘束される予定とは、たとえば顧客との商談、会議、ミーティングなどです。これらは緊急度の高い仕事として、あらかじめ決められた日時がスケジュール帳に書き込まれています。しかし、自分一人で取り組む仕事、たとえば入力作業や伝票作業などのルーティンワーク、備品の購入や荷物の発送といった仕事は、スケジュール帳に日時を固定して書き込まれることはまれです。どちらかというと、ToDoリストで管理されて、会議やミーティングなどが入っていない時間に組み込まれています。ですから、ほかの緊急な仕事が入ってくると、どんどん後ろに追いやられてしまいます。その結果、残業しなくてはならなくなったり、慌ててミスにつながったりするのです。こうした一人で取り組む仕事も、時間と心の余裕をもって取り組めるように、手帳やスケジュール帳に書き込むとよいでしょう。一人で取り組む仕事のうち、ぜひともスケジュール帳に書き込む癖をつけてほしいのが、投資の時間です。ミスゼロの観点で言えば、ヌケ・モレを防ぐためのチェックリストの作成や、新人社員がミスなく仕事に取り組めるための手順書の作成、商品知識の勉強、後輩の育成などです。これらはミスをなくすための重要な取り組みですが、緊急度が低いために、いったん緊急度の高い仕事や他人に拘束される仕事に割り込まれてしまうと、なかなか時間が取れなくなってしまいます。「後輩の誰々さんにこれを教えておかないといけないな」と思っても、ほかの仕事に押されて時間が取れず、そのうち後輩の誰々さんが同じミスを繰り返してしまう、ということも多いでしょう。緊急ではないけれども重要な仕事こそ、手帳に書き込んで意図的に確保するようにしたいものです。手帳に書き込むことで、自分への約束として宣言し、必ず時間を取るようにするのです。そうすることで、ミスの根本的な原因をつぶし、ミスをなくしていくことが大切です。

仕組み・環境を変えてミスを防ぐ小ワザ24デスクまわりを戦略基地化デスクとは本来、必要なものがサクサクと取り出せ、仕事をスムーズに進めるための戦略基地です。ワンクッションで必要なものが取り出せれば、探す時間のロスがなくなり、気持ちよく効率よく仕事ができるようになります。しかし、デスクまわりが散らかっていると、必要なものが書類の山に埋もれてしまったり、必要なタイミングで取り出せないなどの不備が生じます。仕事に必要な武器を取り出すタイミングを逸してしまえば、全力で闘うことができません。こうした不備はミスを引き起こす原因になります。もし、あなたの仕事にミスが見られるなら、それは作業動線や効率を無視したデスクまわりのレイアウトや収納に問題があるのかもしれません。デスクまわりを戦略基地化することで、仕事がサクサクはかどり、しかもミスが起きにくい環境を作ることができます。デスクまわりを戦略基地化するには、まずはデスクまわりで起こるミスや、ミスにつながりそうな不備の洗い出しから始めます。ミスの原因をつきとめ、改善していくことで、仕事がはかどるデスクまわりに整えていきます。デスクまわりで起こるミスには、たとえば次のようなものが考えられます。電話対応でいつも慌ててしまい、聞き間違いのミスを引き起こすケース。電話対応で慌てるのはなぜかを考えてみると、電話機が取りにくい場所にあったり、メモやペン、必要な資料を取り出すのに手間取っているなどが考えられます。この場合の改善のポイントは、作業動線を意識した道具のレイアウトです。ペンは取り出しやすいようにペン立てに立て、メモと一緒に利き手側に配置。電話機は反対側に置くことで、電話が鳴ったらすぐに必要なものを手に取ることができます。また、書類を処理したつもりがまだだったという、うっかりミス。この場合、何でもかんでもクリアファイルに入れてしまい、未処理と処理済みの書類が混在した状態だったのかもしれません。改善策としては、書類を進捗状況によって分類し、トレイを分けて管理するのが効果的です。・これから手をつけるものや処理途中のもの=「未処理」・自分の処理は終わったけれども、上司の指示待ちや他の担当者の完成待ちのもの、お客様からの返答待ち=「保留中」・処理完了のもの=「処理済み」このように三段階に分類します。業務の進捗状況を見える化することで、うっかり忘れを防ぐことができます。そして、必要な書類がすぐに取り出せないケース。これは、同じファイルに色々な案件の書類が混ざっていて、探すのに時間がかかる、あるいは共有キャビネットのファイル管理のインデックスが不適切なために検索性が悪い、などの理由が考えられます。これに関しては、わかりやすいインデックスをつけたり、必要な書類がすぐに取り出せるファイル管理を工夫することで解決します。やり方の詳細については次項の小ワザ25で紹介します。また、チームで資料を共有している場合は、使い終わったら共有キャビネットに戻すというルールを徹底することも有効です。目指すのは、必要なものがサクサクと取り出せる機能的なデスクまわりです。機能性を高めることで、ミスゼロにつなげるという考え方でデスクまわりを整えていってください。

仕組み・環境を変えてミスを防ぐ小ワザ25必要な書類がすぐに取り出せるファイル管理をしよう問い合わせの電話に「少々お待ちください」と答えたら、お客様がストレスなく待てる時間はせいぜい三十秒。必要な資料をすぐに取り出せずに二分、三分も待たせてしまったら、お客様はイライラしてしまいます。そのイライラこそがまさにミスであり、いかにしてお待ちいただく時間を縮めていくかを考えなくてはなりません。目指すは、正しい情報を短時間で検索できるファイル管理です。ポイントは、適切な分類と、同一ファイルには同一カテゴリーの書類が入っていることです。分類には、クライアント別やプロジェクト別、年代ごとに並べる時系列などさまざまな方法があります。クライアント別やプロジェクト別のファイル管理は、顧客単位やプロジェクト単位の業務が多い人に便利です。時系列によるファイル管理では、案件ごとのファイルを時系列に並べて管理します。シンプルな管理方法でありながら、情報を探しやすいすぐれた方法です。どの分類方法がふさわしいかは業務内容にもよります。自分の仕事のスタイルに合った、適切なファイル管理を見つけてみてください。

仕組み・環境を変えてミスを防ぐ小ワザ26ノートは一元管理しよう情報の種類ごとにノートを作ると、いざ情報を探したいときにどこに書いたのかわからなくなってしまうことがあります。その結果、大事な打ち合わせメモややるべき仕事のリストを参照できずに、ヌケ・モレやミスの原因になります。また、ノートがいくつもあると、そのうちの一冊を家に置き忘れてしまった日には、「家に帰らないとわからない」という状況に。何冊も持ち歩くとカバンも重くなり、「持ち歩くのが面倒」とノートを見るのもうんざりしてしまいます。ノートはできるだけ一冊に一元化するのがおすすめです。大判のノートを使えば、一冊で十分でしょう。商談の多い人は、「社内用」「顧客対応用」のように二冊に分けたほうが使いやすい場合もあります。情報量がそれほど多くない人は、ノートは基本的に一元管理したほうが間違いがありません。一冊のノートの使い方としては、日付順に時系列に書き込んでいきます。時系列で書き込むことの良さは、ページの前から後ろへ順番に記入していくシンプルな方法であることと、あとで振り返ったときに情報を探しやすいことです。時系列に書いていくと、「あれはいつのメモだったかな」とあとで振り返るときにわからなくなるのではと思うかもしれません。しかし、「あの会議は夏の暑い日で、長引いてみんなぐったりしていた」のように、季節感は自分の記憶を呼び起こす見出しの役割を果たしているので、意外にも情報は探しやすいのです。また、日付だけでなく、情報の種類も記入しておくとより検索性が高まります。たとえば、業務の手順変更や新たな手順の追加など業務に関わることは「業務」、顧客からの問い合わせや対応など顧客に関することは「顧客」のように分類を行い、日付の横に目立つ色で記入しておきます。あとで見返すときにパッと探しやすくなります。どうしても忘れてはいけないメモや、大事な内容については、インデックス代わりに付箋をつけておくのも手です。ノートを取り出すたびに付箋が目につけば、「あれは忘れずにやらなければ」と常に意識しておくことができます。

仕組み・環境を変えてミスを防ぐ小ワザ27ヒヤリハットは早めに報告→改善重大なミスにはならなくても、その一歩手前のヒヤリハットは日常的に起きています。ハインリッヒの法則によると、一件の「重大なミス」の背後には、二十九件の「軽微なミス」、三百件の「ヒヤリハット」が起きているといいます。そのまま放置しておけば、いつか重大なミスにつながる危険性があるのがヒヤリハットです。ヒヤリハットは早めに報告→改善し、職場全体で再発防止に取り組む風土や仕組み作りが求められています。人はミスを隠したがります。なぜなら、ミスをすると責められたり、感情的に叱られたりしてきたからです。いかにしてミスを報告しやすい空気を作れるか。これがミスをなくす取り組みのカギを握ります。ある会社では、ヒヤリハットをレポートで吸い上げています。レポートといってもヒヤリハットの内容、原因、改善策が記入できる用紙です。報告を習慣づけるために、朝礼や夕礼などでも随時呼びかけます。ポイントは、そのとき責めるのではなく、「ヒヤリハット大歓迎!」といった空気を作ることです。また、レポートのおかげで、どんなに実りある改善がされたかも伝えるようにしています。決してミスを奨励するわけではありませんが、前向きな空気を作ることが、ミスゼロに限らずこうした改善活動では大切です。報告されたヒヤリハットは、職場の掲示スペースなど大勢の人の目に止まる場所に貼り出して、チーム全体で共有します。一定期間掲出されたあとは、自社サーバのデータベースで管理し、誰もが閲覧できる状態にしておきます。ヒヤリハット委員を決めておき、担当者が報告を集めたり、掲出したりする役割を担うようにすれば、取り組みが尻切れトンボに終わってしまうことは避けられます。仕組みとして回していくには、担当者や掲出期間などを決めておくことが大事です。報告するだけではミスはなくならないので、あとは日々の業務の中で改善策を繰り返し実践していきます。あるセミナーの参加者は、「自分は思い込みが強く、電話がちゃんと聞き取れない」という悩みをお持ちでした。私が「それは聞き取ろうという意識が薄いのか、自分に自信があってしっかり聞いていないのかどちらですか」と尋ねると、「相手の話を聞こうという意欲はあるものの、相手にまくしたてられると、途中からちゃんと聞けなくなってしまう」と言います。この女性の問題点は、相手の話を交通整理するスキルが不足していることです。つまりコミュニケーションスキルの不足です。改善策として考えられるのは、電話でまくしたてる相手に対しては、「ではお客様、ここまでのお話を確認させていただきます。以下、三点ですね」のように自分が会話のイニシアティブを取ることです。次に、どう実践に移すかを考えてみます。「イニシアティブを取らなきゃ」と思っているだけでは難しいので、「では、お客様……」「ところで、お客様……」と書いた紙をデスクの見える場所に貼っておき、相手からまくしたてられたらこれらの言葉を使うようにします。これなら明日からでも実践できそうだと思いませんか。また、この改善策を先ほどのヒヤリハット報告で共有すれば、同じような悩みをもつ新人社員にとっても有効なアドバイスになります。改善で大切なことは、表層的なミスの原因ではなく「真因」を掘り下げ、日々実践できる改善策に落とし込むことです。それを毎日意識して実践することで、ミス削減につながっていきます。

仕組み・環境を変えてミスを防ぐ小ワザ28ダブルチェック体制を作る最終チェックを怠らなければミスは防げた、というケースは多いものです。データ入力や重要書類への記入、請求書や契約書の作成など、絶対にミスが許されない作業のあとには、必ずチェックする習慣が必要です。自分でチェックをするのはもちろんですが、周りの協力を得てダブルチェック体制を整えておけば、より万全なミス防止策になります。確認作業を行うには、目、場所、時間を変えると効果的です。「目を変える」とは、別の人が確認するという意味です。作業者以外の人が新鮮な目でチェックすることで、ミスを見逃さなくなります。自分一人でチェックする場合でも、「場所を変える」「時間を変える」ことで客観的な視点でチェックできます。自分のデスクまわりは周囲の雑音も多く、何かと気が散ってしまいがちですが、会議室やミーティングルームなど静かな場所に移動すれば、集中できる環境を確保できます。あるいは、午前中に行った作業を午後にチェックしてみると、新鮮な気持ちで向き合えます。すべての作業についてダブルチェックを行う必要はありません。簡単な書類やそれほど重要度の高くないものは、自分一人でチェックすれば十分でしょう。しかし、これを間違えたら重大なミスにつながる、というキモになる部分にはダブルチェックが欠かせません。請求書の宛名と金額、契約書の記入事項などはしっかり確認しておきたいところです。私の場合、絶対にミスが許されないのは講演やセミナーのスケジュールです。これだけは絶対に間違いがあってはいけません。スケジュールの確認は一人の担当者だけに任せずに、必ずもう一人を補佐役につけて、ダブルチェックを行う決まりにしています。キモとなる部分のチェックには、手数をかけて行うべきです。担当者がベテランであろうと新人であろうと、人間である以上はミスは起こりえます。自分の業務におけるキモの部分は何かを押さえつつ、ダブルチェック体制を整えるなど、仕組みとして構築しておくとよいでしょう。

仕組み・環境を変えてミスを防ぐ小ワザ29ツールを見直そうパソコンやペン、電卓などの道具のほかに、マニュアルや手順書、チェックリストなども仕事をスムーズに進めるためのツールです。マニュアルなどのツール類は作った時点で万能というわけではなく、その都度変更が加えられたり、改善されていくべきものです。しかし、「今回はちょっとした変更だから反映しなくてもいいや」と軽く考えて、変更や改善が反映されないまま放置されると、ツールと実態がかけ離れていきます。古くなったマニュアルは、間違った手順ややり方を広めてしまうので、それ自体がミスのもと。次第に使われなくなり、形骸化していくという悪循環に陥ります。顧客名簿やデータベースもしかりです。担当者の異動や昇進は、その都度データに反映していかなくてはなりません。課長から部長に昇進したにもかかわらず、課長の役職のままで案内状を出してしまったり、担当者が異動になったのに元の部署に出してしまい、本人に届かないというミスも起こります。「役職の間違いなどたいしたことではない」と思うのは危険です。「なんて失礼な会社なんだろう」と相手の気分を害したり、「名簿管理もきちんとできていないのだな」と会社の危機管理能力を疑われるなどのミスにつながります。こうしたミスを防ぐためにも、ツールは定期的に見直し、データ更新を行うようにします。ツールの見直しが確実に行われるようにするには、誰が、いつ、どのように見直すのかを決めておく必要があります。得意先の担当者が異動になったとき、あるいは作業手順が変更になったとき、その情報を誰に伝えるのか。それをツールに反映させるのは誰で、どのタイミングで行うのかを決めておくのです。ツールはいつでも適切な状態で使えるよう、日頃からのメンテナンスが大切。それさえできていれば、ミスゼロに向けた強力なサポートツールになります。

仕組み・環境を変えてミスを防ぐ小ワザ30集中できる場所に移動デスクまわりには、気が散る要素がたくさんあります。顧客からの電話に作業を中断されたり、あるいは自分が電話を受けなくても、「お客様からお怒りの電話がかかってきたんだな」ということがわかる会話が聞こえてくれば、そちらが気になってしまいます。また、雑然と物が積まれている様子が目に入ってくれば、集中力がそがれてしまいます。これまでも繰り返し述べてきたように、集中力が途切れたり、気が散るのはミスを引き起こす一番の原因です。大切なのは、集中したいときに、集中できる場所に身を置けることです。必要なときに、自分のデスクから離れて、静かな場所で仕事ができる環境があると理想的です。周りの余計なものが目に入らないように、壁に向かってレイアウトされた「集中デスク」のような場所を用意したり、集中タイムには会議室や個室を使えるように解放するのも手です。

仕組み・環境を変えてミスを防ぐ小ワザ31ミスしたら百円ミスをしたら罰金を徴収─、というとネガティブなイメージですが、ミス防止の意識を高めるために、自分なりに工夫をしてみるのもいいと思います。セミナーに参加していたある女性の方からこんな話を聞きました。新人の彼女は、仕事に慣れていないこともあり、ときどきミスをしてしまうそうです。そこで、教育係の仲の良い先輩社員と一緒に、「ミスしたら百円」というルールを設けて、ミスしたら中身の見える貯金箱に百円を入れることで、百円玉の量でミスの回数を見える化し、ミス防止に努めているそうです。罰金というほどの大袈裟なものではないようですが、百円でも身銭を切ることで、ミス防止の動機づけにしているようです。この女性は、「ある程度貯まったら、先輩と行くランチの資金にする」と話していました。ミスをしない意識を高めるために楽しみながら行える工夫として面白いですね。

周囲に働きかけてミスを防ぐ小ワザ32相手のスキルに合った指示をする部下や後輩に仕事を頼んだり、指示を出したりするときに「これくらいは基本だから言わなくてもわかるだろう」と思って説明を省略したところ、出来上がりが意図したものとは違っていた─。こんな経験はありませんか。上司や先輩の立場にある人は、自分の知識や経験、スキルのレベルを基準にして、「自分がわかることは、相手もわかっているだろう」と考えがちです。しかし、経験者には当たり前のことでも、新人や若手社員にとってはわからないことも多いのです。しかも若い人たちは、わからないことに対して積極的に質問したり、アピールしたりする発信力に欠ける傾向にあります。不明点がそのまま放置されて、それが意図と解釈の違いになり、結果的にミスにつながってしまうのです。指示を出すときは、自分視点ではなく、相手視点で伝えることが大切です。この業務に対して、相手にはどれだけの知識やスキルがあるのか、経験はあるのか、やる気の度合いはどうか。このように相手のレベルを推し量りながら、相手に適した指示の出し方をする必要があります。たとえば、自分にとってはやりがいのある仕事でも、相手は魅力的に感じないこともあります。そのような場合に、「これはやりがいのある仕事だからがんばろう」と伝えるだけでは、相手の共感を得ることはできません。業務の目的や意図をしっかりと伝え、さらには新たな意味づけを与えるなど、相手のやる気を引き出すような工夫も必要です。ここで気をつけたいのは、相手をひとくくりに考えず、業務ごとに個別に対応することです。同じ相手でも、仕事によっては慣れ不慣れがあります。それぞれの業務に対して相手が最大限の成果を出せるように、適切な指示の出し方を個別で考えていくことが大切です。相手視点を得るカギは、対話です。「これはやったことある?」「これは理解できる?」といったやり取りを通じて、相手に適した伝え方を探っていくようにします。

周囲に働きかけてミスを防ぐ小ワザ33進捗管理、報告を徹底させる部下や後輩にわかりやすい指示を出したからといって、そのまま放っておくと、ミスにつながってしまうおそれがあります。経験のある人なら、間違えそうになっても暗黙知でミスを発見できるかもしれませんが、初心者はミスに気づかず作業を進めてしまいます。その結果、意図しない仕上がりになったり、取り返しのつかない重大なミスにつながらないとも限りません。途中でやり方がわからなくなって業務が中断すれば、納期遅れというミスになります。こうしたミスを未然に防ぐには、業務のプロセスで進捗状況を細かく報告してもらい、作業が正しい方向に進んでいるかを確認する必要があります。進捗管理には、あらかじめ確認すべきポイントを決めておきます。仕事を大きな塊で捉えるのではなく、いくつかの手順で区切り、その区切りごとに進捗を報告してもらうのです。もちろん、「これらの確認ポイントで必ず私に見せてください」と相手と合意しておくことも大切です。仕事の塊のほぐし方は、小ワザ22「小さな目標を設定し、達成感を味わおう」を参考にしてみてください。たとえば、顧客データ管理表を作成する場合、一、全体のフォーマットを作成、二、計算式を入れる、三、データを入力する、という三段階に分けられるとします。その各プロセスが終わった段階で、途中経過を見せてもらいながら進捗の報告を受けることで、指示した側と指示される側の意図と解釈のギャップをなくしていきます。また、進捗報告を徹底するには、報告しやすい環境を整えておくことも大切です。指示する立場の人は自分の仕事も忙しく、部下や後輩の報告や相談にじっくりと聞く時間がありません。上司や先輩が忙しそうにしていると、声をかけづらいものです。そこで、「報連相タイム」を設定しておくのもひとつの方法です。たとえば、午前十一時四十五分からお昼までの十五分を進捗報告の時間にあて、集中的に報告や相談を受け付けます。実際に報連相タイムを意図的に作っている職場もあります。進捗を細かく報告させるのは部下や後輩への干渉だとか、相手を信用していないことになる、仕事はできるだけ任せたほうがいいといった意見もあります。たしかに過度な干渉は考えものですが、適度な働きかけによる確認と修正は、ミス防止の観点からも重要です。

周囲に働きかけてミスを防ぐ小ワザ34「事実」と「意見」を区別して伝えようこれまで指示を与える立場の注意点を述べてきましたが、自分が上司や先輩に報告する際には、どのような点に気をつけるとよいのでしょうか。報連相の場面で注意すべきことは、事実と自分の意見を混同して伝えないことです。事実を歪曲して伝えてしまうと、その後の重大な判断ミスにつながるおそれがあります。報告の際に「感想はいいから、事実だけ伝えて」とよく注意される人は、要注意です。事実と意見を混同した報告の例を見てみましょう。新商品の内覧会を実施するために、あるホテルのある部屋を予約してほしいと上司から頼まれました。ホテルに電話をすると、すでに仮予約が入っていました。ホテルの担当者は、「まだ仮予約の段階なので、キャンセルになる可能性もあります。お客様は、念のため別の大きめの部屋を仮予約されておき、ご希望の部屋の仮予約がキャンセルされたら、改めて予約されるのはいかがでしょうか」と提案してくれました。先約が仮予約ならキャンセルされるかもしれない。そう考えて、上司にはこのように伝えました。「すでに仮予約が入っているようですが、ホテルの人と交渉して、なんとか押さえてもらえそうです。大丈夫だと思います」。ここで事実だけを伝えるなら、「希望する部屋は、すでに仮予約が入っていたので、少し大きめの別の部屋を仮予約しておき、希望の部屋のキャンセルを待つように勧められました」と言うべきです。そのうえで、「私の感触では、先約はキャンセルされるかもしれないので、希望する部屋は取れそうです」と伝えれば、上司も「それならいいが、念のために別の部屋も押さえておこう」と正しい判断ができます。しかし、人は物事がスムーズに進まないとき、自分をよく見せようとして、よりよく報告しがちです。「きっと大丈夫だと思います」という部分が強調されると、上司も「そうか、それならそれでいこう」と判断を誤ってしまいます。しかし、その結果、別の部屋を押さえることなく先約が本決まりになってしまったら、内覧会のための会場が押さえられないという事態に陥ってしまいます。自分に都合の悪いことは隠そうという気持ちが働きますが、事実を正しく伝えてこそ、正しい対処ができ、結果としてミス軽減につながります。

周囲に働きかけてミスを防ぐ小ワザ35頻発ミスを強調し、注意する口ぐせと同じで、ミスにも人それぞれに傾向があります。自分のミスの傾向は、普段はなかなか気づかないものです。ミスを減らしたくても、傾向がわからなければ対策の立てようがありません。自分のミスの傾向や、ミスが多くなる時間帯、曜日などの傾向がわかれば、対策も立てやすくなります。たとえば、相手に仕事を頼むときや指示を出すときに、「あれ」「これ」「それ」などの指示代名詞を多用したり、言葉を省略してしまう人がいます。「あれやっておいて」「いつもの場所を予約しておいて」など、自分は「あれ」や「いつもの」でもわかるので、相手もわかっているものだと勘違いしています。言われたほうも「あれとは何ですか」「いつもの会場とは、どの会場ですか」と確認せずに物事を進めてしまうと、意図と解釈の違いによりミスが生じかねません。また、体調や気分の波に影響される人も多いようです。体調や気分のいい日はミスも少ないけれども、その逆のときはミスも多くなるというのです。特に女性にその傾向が強いようです。体調の変化による影響かもしれませんし、一週間の曜日でも影響があるのかもしれません。女性を部下にもつ上司からは、「調子のいいときはいいが、悪いときは集中力が低下する」という声をよく聞きます。自分にはどんなバイオリズムがあるのか、一度把握してみるのもいいかもしれません。一ヵ月のうち、あるいは一週間のうちでミスが多いのはいつかを記録してみるのです。たとえば、週明けの月曜日は休日気分が抜けず、ミスが多いという人がいるかもしれません。あるいは、金曜日になると浮足立ってミスを起こしてしまうという人もいるでしょう。こうした自分のミスの傾向を知ることが、ミス削減への第一歩です。また、上司や先輩など周りの人が気づいたら、本人に教えてあげるのも一案でしょう。ただし、指摘する際には言い方に配慮が必要です。いきなりミスを突きつけると、相手の気分を害してしまい、聞く耳を持ってもらえなくなることもあります。やはりここでも対話が一番です。「あなたはどんなミスが多いと思う?」「何曜日に集中力が途切れやすい?」のように相手にも考える間を与えるようにします。そうすることで自分のミスに素直に向き合い、減らそうという意識をもちやすくなります。

周囲に働きかけてミスを防ぐ小ワザ36「聞ける環境」を作ろう最近は一人あたりの業務量も多く、しかも残業削減の傾向にあるため、職場の誰もが忙しい状態です。そのため、仕事でわからないことがあっても、周りの人に質問しづらい空気が流れているという話をよく聞きます。それがミスを引き起こす要因にもなっています。わからないまま自己流で仕事を進めてしまうと、あとでやり直しが必要になり二度手間になります。また、やり方がわからずに作業が止まってしまえば、納期遅れにもつながります。こうしたミスを未然に防ぐには、新人や若手社員が質問しやすい環境を作ることが大切です。質問しやすい環境とは、すなわち、一人ひとりが周りから「話しかけられやすい人になる」と言い換えることができます。ところで、忙しくても話しかけられやすい人とは、どのような人なのでしょうか。話しかけられやすい人は、質問すればすぐに手を止めて答えてくれます。デスクから顔を上げて、相手にきちんと正対して話を聞いてくれるのも共通した特徴です。また、「質問があればいつでも声をかけてね」とあらかじめ伝えてくれています。その一方で、どうしても手が離せないときは、「今は時間がないけれど、いつなら大丈夫」ときちんと代案を提示してくれます。このような対応をしてくれる人には、安心して話しかけることができます。話しかけられやすい人になると、周りからの割り込みが増えて、仕事がやりにくいのではないかと思うかもしれません。しかし、そんなことはありません。職場全体のミスを減らすことにつながるばかりか、自分にもメリットがあるのです。周りの人の質問に答えていると、いざ自分が助けを必要としたときに、周りの人が喜んで協力してくれるはずです。また、周りの人とのやり取りが増えれば、職場のいろんな情報も入ってきます。「誰々にはこんな特技がある」「誰々がこんな人を探している」といった職場のニーズに気づき、新たな連携を生み出すことも可能です。職場全体の動きを見渡せるようになれば、仕事の質は確実に高まります。気軽に話しかけられる人になることで、自分にも職場にもメリットがあることに気づいていただけたらと思います。

周囲に働きかけてミスを防ぐ小ワザ37集中している相手にむやみに話しかけることをなくそう職場では聞きやすい環境を作ることが大切だとはいえ、仕事に集中している相手にむやみに話しかけるのは、あまりよいことではありません。相手の状況を察しながら、話しかけてもよさそうなタイミングを見はからう配慮は必要でしょう。その解決法のひとつが、質問する、もしくは質問を受ける時間にメリハリをつけることです。話しかけてもOKな時間とNGな時間をあらかじめ決めておくのです。それを職場で共有しておけば、周りも変に気を遣うことなく質問でき、また質問されるほうも仕事を邪魔されるという意識が薄れるので、ストレスも軽減されます。これについては、すでに紹介した小ワザ13「集中タイムを作る」や小ワザ34「「事実」と「意見」を区別して伝えよう」で紹介している「報連相タイム」を活用することができます。時間の使い方にメリハリをつけ、それを仕組み化することで、「聞きやすい環境」と「むやみに話しかけない配慮」のジレンマを解消することができます。

周囲に働きかけてミスを防ぐ小ワザ38日ごろからコミュニケーションを心がける細かい数字の計算や請求書の発行作業など、ややもすると事務作業は自分だけの世界に陥りがちな仕事です。周りとのコミュニケーションが減って距離ができてしまうと、相談したいときに相談できなかったり、ミスの発見が遅れるなどの弊害が出てきてしまいます。そうならないためにも、日ごろから周りとコミュニケーションを心がけて、気軽に相談や質問ができる関係を築いておきたいものです。挨拶でも雑談でもいいので、毎日全員にひと言ずつ話しかけてみるのもいいでしょう。上司や先輩も、部下や後輩から話しかけられるのを待つのではなく、自分から積極的に話しかけるようにします。「最近どうなの?」といった雑談から、「ところであのプロジェクトはどうなってる?」のように仕事に関する話まで気軽にしてみます。そうしたやり取りを通して、仕事のミスを発見したり、修正したりすることができるのです。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ39日々の仕事を見える化しよう日々の仕事について、その細かな手順や所要時間、ほかに誰が関わっているのか、役割分担はどうなっているのかなどを、きちんと把握していますか。なんとなくわかっているつもりでは不十分です。思い込みやうっかりによるヌケ・モレが生じたり、無意識のうちに手順にムダが紛れているかもしれません。こうした不備は、「仕事の見える化」によって防ぐことができます。仕事の手順や役割分担、依頼や連携相手などを書き出してみることで、「この人への依頼はもっと早くしたほうがいいかも」など仕事全体を踏まえた上での効率化やミス削減を図ることができます。さらに、それぞれの仕事を見える化したものをチームメンバーで共有することで、業務の効率的な役割分担の検討に活用できます。たとえば、同じような作業を別々の人がやっている場合、「この作業はどちらかに統合したほうがいいね」といったやり取りが可能です。そうすることで、作業の分散やダブリによるヌケ・モレや、作業の品質のバラつきを解消することができます。一方で、ひとつの作業を複数人で分担する場合は、分担の範囲やゴールイメージをしっかりと共有しておく必要があります。意図した出来栄えとは違うものが出てきて、修正に余計な時間をかけなくて済むように、仕事の見える化をして確認しておきましょう。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ40周りとの仕事の関係性を見える化しよう自分が担当する業務は、部門やチーム全体の業務のうちの一部です。いろんな人が関わり合い、協力し合って、ひとつの業務が遂行されていきます。ところが、自分が担当する業務だけを見て、周りとの関係性を無視した仕事のやり方をしていると、周りに不要な手間を取らせたり、スケジュール通りに進まないなどの迷惑をかけることになります。全体の中で自分がどんな役割を果たしているのか、周りとの仕事の関係性を把握しておくことが大切です。周りとの関係性を見える化するには、二つの方法があります。ひとつは、業務フローの見える化です。「自分の使うデータは誰が加工しているのか」、「自分の担当した仕事は、次に誰につながっていくのか」など、自分が担当する業務も含めた前後の工程を時系列で書き出してみます。そうすることで、「私にデータを渡してくれる人は、新人でまだ仕事に慣れていないようだから、ミスがないように私のところでもフォローしよう」とか、「次の工程にはかなり時間がかかるから、私からは少しでも早めにデータを渡そう」といった具合に、自分の仕事のツボを理解しやすくなります。そして、最終ゴールに向けてミスなく業務を遂行できるための、気が利く仕事ができるようになります。もうひとつは、メンバーの連携の見える化です。業務に関わるメンバーを書き出し、お互いにどのように連携しているのかを図解で表します。「私が彼らに期待することは何か」「彼らが私に期待することは何か」を明らかにすることで、周りの人たちへの適切な働きかけを知ることができます。たとえば、後輩が担当するデータ集計をもとに、自分が報告書を作成するとします。後輩に対しては「入力ミスやヌケ・モレのない仕事」を期待しています。後輩からすると、「急に頼まれると焦ってミスをしてしまうので、余裕をもった指示をしてほしい」という期待があるでしょう。したがって後輩への適切な働きかけとは、「正確なデータ集計をやってもらうために、早めに、正しく指示を出す」ことだとわかります。ほかにも、「この人とこの人の連携を強化したほうがうまくいきそうだ」といった相関関係の見直しにもつながります。業務全体を理解することで、自分も周りの人も仕事がやりやすくなり、ミスの削減につながるはずです。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ41顧客を見える化しよう顧客対応では、ちょっとした対応の不備で顧客への礼を欠いたり、お得意様をきちんとフォローせずに客離れを引き起こしたり、会社の信用に傷をつけてしまうことがあります。こういった顧客対応ミスをなくすには、顧客の見える化が効果的です。電話で顧客の名前を聞き間違えたり、相手の名前を何度も聞き返してしまうのも、相手の印象を悪くしてしまいます。電話での対応不備をなくすのが、五十音順の顧客リストです。五十音順に会社名、電話番号、担当者名を並べてリスト化し、デスク上の見えるところに貼っておきます。このとき、A4用紙一枚にまとめるのがポイントです。何枚にも渡るとすぐに見つけることができず、結局お客様に聞き返すことになります。検索性をよくするために、「あ行」「か行」……の区切りに太い罫線を入れたり、見出しを色分けするのもいいでしょう。また、顧客の所在がひと目でわかるように、地図を使って顧客の分布を見える化している会社もあります。顧客の分布図を見やすい場所に貼っておけば、営業担当者が顧客を訪問する際に、訪問計画を立てたり、訪問ルートを効率化するのに役立ちます。また、お得意様を色の違うピンで区別しておけば、何かのついでにお得意様のもとを訪問するという予定も立てやすくなります。たとえば、営業担当者がある地域の顧客を訪問する場合、「このお客様を訪問するなら、こちらのお客様にもあいさつしてきてください」と営業事務の人がひと声かけることで、顧客訪問の段取りをヌケ・モレなく支援できます。このように顧客へのこまめなフォローや情報提供をタイミングよく行えるよう、顧客分布の見える化で支援している営業事務の人もいます。営業事務の仕事は、何かと営業担当者から仕事を頼まれたり、彼らの都合に右往左往させられるイメージがありますが、営業担当者のメリハリの利いた行動をマネジメントするくらいの支援ができれば、やりがいも倍増します。そんな風に楽しみながら営業担当者との連携を図りつつ、ミスやヌケ・モレのない顧客対応を実現していってください。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ42仕事の出来栄え基準を見える化しよう期待通りの出来栄えに仕上げることも、ミスのない仕事のうちです。しかし、期待通りの仕事をしてもらうために、上司が部下に対して「期待する仕事の出来栄え」を言葉だけで伝えるのは難しいことです。何をもってよしとするかは、人それぞれに違うからです。期待水準を明らかにするには、仕事の出来栄え基準を見える化することです。スーパーなどでは、「魚を三枚におろしたときの出来栄え基準」が見える化されている所もあります。しかも、重さや厚さの定量的な目標がきちんと明示されているといいます。視覚と数字を使って見える化することで、ムラのない標準化された仕事を実現するための工夫がなされているのです。ところが、事務の仕事では、出来栄え基準が示されることは意外に少ないようです。意図と解釈の違いを生まないためにも、事務仕事の品質をはかる指標のようなものは必要だと思います。品質をはかるには、「こういう姿を目指そう」というゴールイメージがわかる見本やサンプル、チェックリストなどを用意するとよいでしょう。たとえば、お客様に好印象を与える電話対応の品質基準であれば、「電話に出るときは『ありがとうございます。株式会社○○です』と言う」など電話対応のポイントをリストアップしたチェックリストを作ります。あるいは、何かの一覧表を作るときの出来栄え基準であれば、わかりやすく使いやすい一覧表に求められる項目やフォーマットのラフ案を作って見える化します。職場の改善提案など提案書を作成するときの品質基準であれば、「目的」「概要」「詳細」「スケジュール」など提案書に必要な項目と、それぞれの項目で読み手にどう感じてほしいのか、どのような行動をとってほしいのかが書かれた提案書のサンプルを作ります。一般的なマニュアルやサンプルでもよいですが、より質の高い仕事を目指して、気が利くポイントを盛り込んだ出来栄え基準を工夫してみてください。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ43仕事の進捗を見える化したボックスを作ろう自分の得意な仕事や好きな仕事はどんどん進めていきますが、苦手な仕事は後回しになりがちです。その結果、業務の進捗にムラができたり、結局は納期に間に合わないというミスも起こります。そんなミスを解消するのが、仕事の進捗を見える化したボックスの活用です。伝票や書類など短期間で処理するものには、小ワザ24「デスクまわりを戦略基地化」でも紹介しましたが、「未処理」「保留中」「処理済み」の三つのボックスを用意します。案件ごとにひとつのクリアファイルにひとまとめにし、これから処理する書類は「未処理」へ、自分の処理は終わっているけれども、人の返事待ちの書類は「保留中」へ、処理が終わった書類は「処理済み」へ入れておくことで、仕事の進捗を見える化するというものです。長期にわたる仕事や大きなプロジェクトでは、進捗の状況を「10%」「30%」「50%」、「80%」「100%」の五段階に分けた進捗管理BOXを活用するのも手です。ある企業のCSR担当部門では、年に一度の報告書の冊子作成のために、担当者五人でこの五段階分け進捗管理ボックスを活用していました。それぞれのボックスにデッドラインを設けて、デッドライン管理としても有効活用できるようにしました。たとえば、全プロジェクトの終了が九月三十日とするなら、「80%」のボックスの期限を八月三十一日、「50%」のボックスの期限を七月三十一日……と設定。七月三十一日が迫った段階で、「まだ半分以上が50%のボックスに残ったままだから、これらのタスクを早く進めないと」のように優先順位に基づいた正しい判断と段取りの見直しができます。チームで共同活用するだけでなく、一人で長期間のプロジェクトをマネジメントする際にも、この五段階分け進捗管理ボックスは有効です。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ44ミスやクレームを見える化しようミスやクレームが起きてしまったら、肝心なのはその後の対応です。そのまま放置しては、同じことの繰り返しです。せっかくの改善のチャンスをみすみす見逃すことのないよう、ミスの見える化と情報共有によって、本人だけでなく、ほかのチームメンバーが同じミスを繰り返さないように対策を立てることが大切です。見える化するなら、統一フォーマットの記入用紙を用い、職場の見える場所に貼り出すのが効果的です。誰もが立ち寄るコピー機のそばや、休憩室の壁など、よく目につく場所に貼るのが理想的です。用紙には、どんなミスがあり(ミスの種類)、なぜミスが起こったのか(原因)、どのように改善していくのか(対策)がパッと見てわかるように書いておきます。この場合、誰がミスをしたかは必要ないでしょう。小売店ではお客様からのクレームを店内に貼り出して、再発防止の取り組みをアピールしているケースもあります。ミスも、これと同じ要領で職場に貼り出します。これには「見せしめのようでかわいそう」「職場の雰囲気が悪化するのでは」といった懸念もあるようですが、ミスを失敗と捉えるのではなく、改善のためのヒントと考えれば取り組みやすいのではないでしょうか。失敗表彰制度を取り入れているある会社では、「よくぞこの失敗を、この段階でしてくれた!もう少しあとで同じような失敗をしていたら、大事になっていた」のように、失敗を価値あるものとして表彰しているといいます。ミスの貼り出しは見せしめが目的ではなく、あくまでミスした人に対して「改善に必要な知恵を与えてくれてありがとう」といった空気感で始めることが大切です。掲示スペースに一定期間掲示したあとは、データベース化してサーバ上で誰でも閲覧できるようにしておきます。その際に、「人」「道具」「環境」などミスが起因する原因別に分類しておけば、原因と対策の関係性が理解されやすく、再発防止に役立てやすくなります。職場の見える場所に貼り出さず、最初からグループウェア内でミスの事例を掲載している会社もあるようです。これも見える化のひとつですが、わざわざパソコンを立ち上げてミスの事例を見ようという人は少ないのではないでしょうか。誰もが目にしやすい場所に掲出し、より多くの人に再発防止に役立ててもらうような工夫が必要です。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ45自分の気持ちを見える化しよう気分がイライラしているとき、ミスを起こしやすくなります。常に落ちついた気持ちで仕事に向かえるのがベストですが、普段の生活ではどうしても気分がイライラすることもあるでしょう。そうしたイライラを断ち切って、自分をより良い状態に保つためには、自分の気持ちに向き合ってみることをおすすめします。セミナーに参加していたある女性は、イラッとした感情に向き合うための「イラッとノート」をつけていました。イライラした気分を引きずりながら仕事をしていても、質の高い仕事はできませんし、ミスも起こりやすくなります。「なぜイラッとしたのだろう?」と自分の感情に向き合うことで、イラッとする原因を明らかにしていくのだそうです。イラッとノートには、自分のイライラの傾向を把握できるというメリットがあります。たとえば、「上司の指示の意図がわかりづらいとき、イラッとした」とか、「たくさんの仕事を抱えて心に余裕がなくなると、イラッとした」とか、「自分の中でうまくアイデアが出ないとき、イラッとした」などと書いていくと、自分はどんな状況でイラッとするのかが見えてきます。イラッとした原因がわかれば、そのイライラを未然に防ぐことができるはずです。「上司の指示がわかりづらいときは、自分から確認しよう」とか、「仕事がぎゅうぎゅうに詰まらないように、スケジュールを平準化しよう」「いざというときのために、普段からアイデアをノートに書き留めておこう」のように、自分の仕事の進め方や人との接し方を変えることで、イラッとした現象は回避できます。結果、間接的にミス削減にもつながっていくというわけです。イラッとノートの書き方は、ミスの見える化メモと同様、「事実」「原因」「対策」の三ステップです。書き方は自由ですが、ノートを縦に三分割して、左から「イラッとした出来事」、「イラッとした原因」、「今後の対策」を書いていくと、あとで見直すときにわかりやすいです。負の感情と向き合うのは、最初は抵抗があるかもしれません。しかし、自分を客観視して、セルフコントロールするためには欠かせない習慣だと言えます。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ46自分へのごほうびを見える化しようコントロールできるのは、イライラだけではありません。自分のモチベーションもコントロールすることができます。モチベーションをコントロールするといってもピンと来ないかもしれませんが、要するに、自分のやる気スイッチを見つけて、それを日常生活や仕事に組み込んでいくという発想です。モチベーションの源は人によって違います。また、一人にひとつではなく、いくつもあるはずです。まずは自分にとってのモチベーションの源を見える化することから始めます。難しいことをやり遂げたという達成感や自信がモチベーションになる人もいるでしょう。「チームに貢献できた」という感情的な価値が自分への報酬になったり、周りから「ありがとう」「助かったよ」と声をかけられることに喜びを感じる人もいます。もちろん、自分へのごほうびに趣味の物を買ったり、旅行に出かけるといった物理的な報酬もあります。モチベーションの源を見える化したら、それらを日々の仕事に組み込んでいきます。たとえば、達成感が自分へのごほうびなら、頻繁に達成感を味わえるように、小刻みの目標を設定していくのも手です。大きな塊の仕事は小さな塊にほぐすことで、小刻みの目標を設定することができます。チームへの貢献が喜びにつながるのなら、まずは自分から周りの人とコミュニケーションをとり、協力を惜しまないこと。そうすれば周りの人はあなたに心を開き、お互いに協力し合える間柄になれるはずです。周りからの感謝の言葉がやる気の源だという人は、日頃からそのことを周りに伝えておくことも大事です。たとえば、周りの人から「ありがとう」と言われたときに、「そう言ってもらえてうれしいです。ありがとうございます」と言葉を返すことで、自分の気持ちを伝えることができます。こうしたモチベーションアップの仕掛けをすることで、自分自身、楽しく仕事をすることができます。仕事をイヤイヤやっていたり、意欲が低いままで仕事をしていれば、ミスにもつながります。自分へのごほうびをうまく活用することで、自分をご機嫌な状態に保ち、ミス削減につなげていってください。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ47投資の時間を見える化しよう日々の仕事に追われてつい後回しになりがちですが、自分の仕事の質や効率を高めるために大事なことがあります。たとえば、基幹業務の手順を自分なりにフローチャートにしておくこと。書類の記入に関する注意事項をまとめておくこと。お客様から電話でよく質問される内容をリストアップしておくこと。商品知識を学ぶこと。あるいは一日の始まりに段取りを立てること。その日一日の仕事を振り返ること……など。これらは急ぎの仕事ではありませんが、よりよい明日の仕事につなげたり、ミスやヌケ・モレのない仕事をするためには重要なことです。これはまた、自分のために、自分にしかできないことでもあります。つまり、自分の将来への投資です。こうした投資の時間こそ、本来は優先順位を高くして取り組むべきです。しかし、今すぐに取り組まなくても日々の仕事は流れていくので、つい緊急性の高い仕事のほうを優先してしまいがちです。投資の時間は意図的に確保していかなくては、いつまでたっても時間を取ることが難しくなります。そのためにまず、投資の時間の見える化から始めます。自分にはどんな投資の時間が必要なのかを考えてみます。ミスやヌケ・モレをなくすためのチェックリストを作成する時間、段取りを組み立てる時間、自分の仕事を振り返り、改善につなげるための時間、商品知識を勉強する時間などが考えられるでしょう。次に、それらの時間を自分のスケジュールに組み込んでいきます。緊急性の高い仕事とのバランスを考え、いつだったら投資の時間が取れそうか、一週間や一ヵ月といったスパンで段取りを組んでいきます。「月末はそれほど忙しくないので、時間が取れそうだ」と思ったら、すぐに手帳に書き込んでしまうのが得策です。小ワザ23「自分との約束を手帳に書き込もう」でも説明しましたが、自分との約束を手帳に書き込むことで、「実行に移さなければ」という決意も強まり、実行性が高まります。必要な投資の時間は人それぞれですが、事務職の人なら、業務時間の十分の一くらいは確保したいところです。一週間=一日八時間×五日=四十時間のうち、四時間程度。こうした時間の積み重ねが、仕事の質を高め、ミスをなくしていくことは間違いありません。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ48スケジュールを見える化しよう朝一番のミーティングで、チームメンバーの一日の段取りをホワイトボードに書き出し、スケジュールの見える化を行っている会社があります。スケジュールの見える化は、ミスにつながりそうな問題の洗い出しと、改善に役立ちます。たとえば、特定の人に仕事が偏っている場合、忙しさで注意力が散漫になり、ミスやトラブルのもとになります。スケジュールがぎっしり詰まっている人は、いざ緊急案件が入ってきたときの対応が難しいと予測できます。また、投下時間の見積もりが甘い人は、段取り通りに仕事が進まず納期遅れの原因になります。上司がこれらをチェックし、問題があればメンバー間の仕事量をならしたり、ピークの山を崩すなどの対策を行います。また、個々の業務のデッドライン管理も可能です。予定に比べて滞り気味の仕事があれば、上司が早めにチェックし、フォローすることができます。チームでスケジュールを見える化することで業務のタコツボ化を防ぎ、ミスの生まれにくい環境を作ることができます。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ49仕事のつなぎ目にひそむミスを見える化しよう仕事のつなぎ目でミスが起きやすいことは、多くの人が実感していることではないでしょうか。仕事のつなぎ目とは、前工程の人から後工程の人へと仕事が手渡される場面のこと。ここでは、お互いの役割分担を理解し、お互いの仕事がやりやすくなるための配慮が必要ですが、これらが欠けてしまうとミスが起こってしまうのです。たとえば、他の部署に丸投げしてしまったり、後工程の人のことを考えずに自己流で作業してしまうことが頻繁に起きています。お互いに「私の仕事の範囲はここまで」という思い込みがあるために、作業のヌケ・モレを生じさせているケースもあるようです。仕事のつなぎ目でのミスを防ぐには、まずは仕事の流れを時系列で見える化し、それぞれの仕事がどのように関連しているのかを明らかにする必要があります。ここでは、顧客へ商品を発送する仕事を例に考えてみます。仕事の流れを時系列に書き出してみると、以下のようになります。1.FAXやメールで申し込みを受け付ける2.受注データを入力する3.顧客からの入金を確認する4.発送代行会社へ発送情報を送る5.発送代行会社から顧客へ商品を発送する次に、ミスがよく起こるのはどの部分か、問題を抱えているのはどの部分かを抽出します。この場合、「受注データの入力ミス」「発送伝票の記載間違い」「発送情報の送付の遅延」などの問題が明らかになりました。さらに、それぞれのミスがどんな要因で引き起こされているのかを、「人」「道具」「環境」の側面から分析します。受注データの入力作業は、ベテラン社員が、印刷した申込書をパソコンで入力しています。ミスが多いのは、作業者の慣れや過信があったり、入力フォーマットに問題があるのかもしれません。ミスの要因が明らかになったら、改善のための対策を検討します。先ほどの「人」「道具」「環境」の観点から改善したり、作業の流れそのものを見直すなどします。このとき、「ここで間違えると全体に大きな影響を与えてしまう」というボトルネックを中心に、メリハリをつけた改善を行うのがベストです。顧客への商品発送では、商品が届かない、商品の到着が遅れるなど、お客様に迷惑がかかることが絶対にあってはいけません。受注データの入力がそのまま発送情報として使われる場合、誤発送をなくすには大元となる受注データの入力が、また、商品発送の遅延をなくすには、発送代行会社へ発送情報を送るタイミングがボトルネックになります。こうしたボトルネックでの改善策を最優先に検討します。データ入力ミスをなくすには、「慣れ合わずに業務に取り組む」「原点に戻って、丁寧な作業を心がける」など「人」の側面からの改善や、「入力しやすいフォーマットに変える」など「道具」の側面からの改善、さらには「入力後のダブルチェック体制を、トリプルチェック体制に変える」など「環境」の側面からの改善が考えられます。業務に関わる人が多くなるほど責任が分散し、ミスの所在や原因が不透明になりがちです。全体の仕事の流れと関連性を見える化することで、自分の担当範囲内だけではなく、全体を見越した仕事の受け渡しを意識するようになります。それが結果的に、ミスを減らしていくことにつながります。

「見える化」でミスを防ぐ小ワザ50処理状況の見える化でメールの返信モレをなくそう仕事上での連絡手段としてメールが重宝される一方で、増えているのが返信モレによるミスやトラブルです。毎日大量のメールを受信する中で、優先度の高いメールから処理していると、優先度の低いメールへの返信をつい忘れてしまいます。いくら優先度が低いメールでも、返信を忘れたりあまりにも遅れてしまうと、相手の信用を失ったり、トラブルに発展しかねません。大量のメールを処理しなくてはならない状況では、返信モレは気をつけるだけではなくなりません。その場で返信できるメールはすぐに返信するよう心がけるほかにも、大切なメールを見落とさない、返信モレを生まない仕組みを自分なりに構築するのが一番です。そのひとつに、メールの重要度や処理状況を見える化する方法があります。一度メールを開いてもすぐに返事ができない場合は、「未読メール」に再設定することで、「未処理」であることがわかるようにします。また、重要なメールを受け取ったら、メールタイトルに色をつけておくのも有効です。重要なメールは赤のように決めておけば、視覚的にもすぐわかります。メールソフトによっては、未読メールや色分けしたメールだけを一覧できるので、管理もしやすいでしょう。相手の返信モレをなくすために工夫できることもあります。ひとつは、同じ内容に関するメールはできるだけまとめて送り、メールの数を減らすこと。バラバラと複数のメールが送られてくると、それだけで処理作業が煩雑になります。ひとつのメールを見ればすべてが網羅されていて、それだけに返信すればいい状態にしておくのがベストです。もうひとつは、案件の異なるメールはひとつにしないこと。先ほどの「メールをひとつにする」とは逆ですが、複数の案件が混ざってしまうと、一方の案件については即答できるけれども、もう一方は熟考が必要な場合に返信モレが起きやすくなります。また、あとでメールを検索する場合にも不都合が生じます。議題が複数にわたる場合は、同じ相手に送る場合でも、複数のメールに分けて送るのが望ましいでしょう。メールを送るほうも受け取るほうも、お互いへの配慮をもってメールをマネジメントし、ミスをなくしていきたいものです。

コピーしてすぐに使える書類フォーマットを用意しました。ミスゼロのための実践ツールとしてご活用下さい。データは以下のURLからもダウンロードできますhttp://www.jbps.com/パスワード:823642※上記URLおよびパスワードは予告なく変更または終了となる場合があります。何卒ご了承下さい。

著者プロフィール藤井美保代(ふじい・みほよ)株式会社ビジネスプラスサポート代表取締役。平成14年株式会社ビジネスプラスサポート設立。「輝く人財づくりを支援する」を理念に、人と組織が豊かで幸せになることを実現するための、研修、セミナー、コンサルティングをこれまでに約1000社で展開。現在も年間150日は、事務改善や5S活動コンサルティング、資産価値の高い組織実現に向けての人財開発指導を行っている。主な著書に『オフィスの「事務改善」~残業ゼロの仕事術!ココまでできる~』(同友館)、『事務の仕事がムリなくミスなくはかどる本』(日本能率協会マネジメントセンター)など。ホームページhttp://www.jbps.com/メールアドレスfujii@jbps.com【5章フォーマット作成協力】森田圭美(もりた・たまみ)人材教育企業でITインストラクターとして13年間勤務。企業研修・個人指導・職業訓練と幅広く担当。汎用的な操作方法だけでなく、企業・ヒトにあわせた利用方法をわかりやすく指導。現在、Officeソフト活用からWebサイト制作・Webアクセシビリティ・プレゼンテーションなど広い守備範囲で、ITを活用した「仕事力向上・業務改善研修」を展開している。PCに向かう楽しさを運ぶエバンジェリスト。

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