もちろん、「本当にあったらいいね」と思ってくれる人もいるのですが、実際に新しいプロダクトに切り替えるとなると、「構造的に難しい」という側面もあります。 B to Bだと、すでに他の競合サービスを使っているはずなので、新しいサービスにスイッチしてもらう必要があります。切り替えにおいて生じる時間や費用を「スイッチングコスト」と言います。 しかし、スイッチングコストをかけてまで変えるべきか、となると、「現状維持で行こう」という判断になりがちです。 人事や経理のシステムのような全社的に影響が出るサービスはもちろん、影響が少ないサービスでも、なかなか変えようとはなりません。それだけスイッチングコストというものは影響が大きいものです。 担当者が良いと思っても、上司がダメと言ったらダメ。起業家やサービスをつくる側は忘れがちですが、企業にはこのような意思決定構造が存在します。 わざわざ稟議書を書き、上司を説得しなければならないし、現場にも説明が必要です。さらにその上には必ず意思決定者がいて、決裁を得るための会議もあります。これらすべての山を越えてようやく購入の意思決定が下されます。 どんなにクリティカルな課題を解決してくれる、高価値のサービスがあったとしても、その導入に至る意思決定の構造を押さえないと、決して購入してもらえないのです(* 1)。 決裁までの時間がかかるほど、導入したいと意気込んでいた担当者も「ごめん、やっぱり上司が否定的だった」「会社の方針が変わったからちょっと今は難しい」と次第に弱気なトーンに変わるケースもありがちです。 高単価なサービスやプロダクトになればなるほど、よりいっそう意思決定のハードルは上がっていきます。 また、相手が大企業の場合、看板や取引先として登録された口座がない会社とはそもそも取引しないケースもあるので、スタートアップにはだいぶ不利です。 エッグフォワードでも、初期のプロダクトに関して、多くの人が「いいね」と言ってくれましたが、創業 1年目にコストを払ってまで使ってくれるユーザーはほとんどいませんでした。担当者が「ぜひ使いたい!」と太鼓判を押してくれていても、蓋を開けてみれば「社内の稟議が通りませんでした」と言われたことは数知れません。 ただ、これは意思決定をする側の構造からすると至極当たり前のことなのです。相手方の意思決定構造を知らないなかで、自分たちの立場や価値を振りかざしても何の意味もありません(* 2)。 *1さらに厄介なことに、一般的に意思決定の構造は誰も教えてくれません。観点くらいは教えてもらえても、「会議ではこういうことが議論されるから、稟議書ではこの部分をもっと強調したほうがいい」などと具体的なポイントまでは、まず明かされないでしょう。 *2 B to Cのサービスの場合、家計の中から使えるお金は限られていますから、「あったらいいな」と思うものでも、「他の支出を切り詰めてまで使わない」と判断されることはよくあります。 B to Bの場合は、やはり組織の中の意思決定者が何を基準に決め、何を変えようとしているのか、その構造をつかむことが特に大切です。
目次
コメント