多くの事業や商品があって、やりたいことが山ほどあるというのが一番正しい。やりたいことが一つしかなければ、選択肢がゼロで、たった一つのミスで命取りとなる。
何が良いかを選ぶためには、やりたいことを五十も百も書き出す。その中から選択をする。さらに、それを細分化する。
市場が非常に大きくて選択肢が多ければ、そのなかから何をやるべきかを委細に考えていくことが大切である。
ミキハウスという会社がある。ミキハウスはそもそも、父親が家業を次男に譲り、長男に譲らなかったところからスタートした。長男は、実は現在の社長なのだが、彼はぼんやりしているから、経営者に向かないと親が判断した。
すると、長男の彼は目が覚めて、「ちきしょう」と一念発起した。奥さんが子供服をつくれるということで、それを風呂敷に背負って九州へ行き、急行停車駅すべてに降りて、くまなく行商に歩いた。ところが、小売店に「これを売ってください」と頼んだが、小売店はそれに見向きもせずに、「そんなんじゃなく、こういうのが売れるんだ。今度、こういうのを五十着うくって、もって来てくれ。それから、こういうものを十着……」と言って、全く別の注文を出す。注文を受けて、それをつくる。その間はぜんぜん儲からなかった。受注だから、当たり前である。
これを二年ぐらい続けた。 一向に儲からない。
やめようかと思っているところに、奥さんが、「子供の安全とか、あるいは子供の個性とかをテーマに服を作ったらどうでしょう」と言った。
イタリアで流行ったロベルタ・カラー、赤と緑の組み合わせとか、赤と紫の組み合わせとかを大胆に用いて、非常に派手なセーターやスウェットシャツなど、いろいろな子供服をつくり始めた。ご存じの通り、 一際目立つ大きなアルファベットで「M I K I H O U S E 」と、胸や背中の部分にプリントした子供服である。私が見ても、実にすばらしい。
「これまでのように、いくらで納めてくれと、相手に言わせないで、自分で値段を決めよう」ということにした。そして、小売店に持っていき、「おっしゃる値段ではなくて、私共の希望する値段で売ってください。これは、きれいだし、安全です。兄弟で着たらすごくかわいいし、親もペアで着たらなおさらかわいいから、 一石二鳥にも二鳥にもなります。だから、この値段でお願いします」と、こちらの主張を通した。それが爆発的に売れて、会社がどんどん大きくなっていったという経緯がある。
ミキハウスは、子供という条件で客層をくくった。つまり、細分化したわけである。人口でいうと、日本には一億二千五百八十七万人いるが、男と女という条件で区切っただけでも半分になってしまう。また、子供の或る年齢層でパッと区切れば、さらに客層は小さくなる。
東京に『H anak o』という雑誌がある。今は関西版もあるが、そもそもは「二十七歳の関東に住んでいる独身の女性」をターゲットにした雑誌だ。それ以外の人には売らないと言っている。それでも、二十七歳前後の人たちが買っていく。非常に安定した顧客層を持っている。つまり、市場のどこをターグットにするかということを明確に区切った戦略だ。細分化して、より安定したお客をつくっていくこともテーマにすべきだ。
コメント