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集中(重点指向)の原理による特色化をはかる

目次

商品の品種を絞り、その中で品目を多様化する●

0社

0社は小型モーターのメーカーである。0社のモーターは、直径三〇ミリ(三センチ)〜一二〇ミリ(一二センチ)の間に限定されている。したがって、オモチャ用はないし、動力用の汎用モーターもない。

そのかわりに、性能機能のヤカマシイものが多い。ベアリングの回転音のしないもの、風切音のしないもの、などはその一例である。

そのようなモーターについては、他社のマネのできない優良品をつくっている。同時にそれぞれの用途に応じた商品の占有率は高い。

※他社の真似のできない優良品を作り、同時にそれぞれの用途に応じた商品の占有率が高い。

生産の面から見ても、サイズの範囲がきまっているために、生産性が高く工場がやり易いというメリットを持っている。すべてにおいて、よく考えた品種の絞り方である。

※生産面では、サイズの範囲を決め、生産性が高い製造を行えるメリットを考え、品種を絞る。

しかし、何といっても商品の信頼性に大きな熱意をもっており、常時厳しい虐待試験を行なっている姿勢は立派である。

※品質管理のために、厳しい虐待試験を行う。

もう一つ0社長のユニークな考え方を紹介させていただくと、不採算商品はすべて捨ててるのが定石であるのに、ここでは一つだけ不採算商品を残しておく。これを採算の合うようにするための様々な工夫と努力を行なっている。そして、このための新しい工夫が成功すると、これを他の商品に応用してゆくのである。

※不採算商品を全て捨てることをせず、採算の合うようにするため、工夫と努力を行い、他の商品に結びつける。

集中の原理とは●

市場の大きさというものは、企業規模にくらべたら、べら棒に大きいのだ。べら棒に大きな市場の中のお客様の要求は、ほとんど無限といっていい。

※大きな市場の中でお客様の要求は無限に存在する。

ほとんど無限という市場の要求を、全部満たすことなど、どんなマンモス企業といえども、初めから全く不可能なのだ。ましてや中小企業においてをやである。

※無限の要求を全て満たすことは不可能。

市場のすべての要求を満たそうとすると、市場のすべての要求を満たせなくなるのだ。

※市場の全ての要求を満たそうとすると、逆に全て満たすことができなくなる。

むろん、企業、特に中小企業が、全市場を対象に考えているわけではないが、考えている市場は、企業規模に比較して、甚だしく大きい。

結果においては、市場の要求を全く満たせなくなることに変りはないのである。というのは、大きすぎる市場を対象にするために、商品の層が全く薄くなってしまうからである。

※市場が大きいため、結果、商品の層が全く薄くなってしまう。

商品の層が薄いと、お客様はその中から好みの品を選択する余地がなくなってしまう。

※商品の層が薄いと、お客様の好みの商品を選択できなくなる。

たとえば、洋服タンスを買いたいといっても、二品か三品しかなかったら、好きなものを選ぶのに困惑してしまう。二十品も二十品も見くらべて、はじめて選択できるのだ。

お客様は、見くらべてから選ぶ、という買い方をするのだ。お客様がどんな買い方をするのかを知らずに商売ができる筈がないではないか。

※お客様は見比べてから選び、買う。そういう買い方をすることを理解しなくてならない。

お客様は、見くらべてから買うのであるから、見くらべられるだけの多様の商品を揃えなければならない。当然のこととして、商品の間口を絞り、その中で多様化を図るより他に方法はないのである。

※つまり見比べられるだけの多様な商品を揃えることが必要となる。

ということは、企業規模が小さい程、売場面積が小さい程、商品の間口を絞らなければならないことを意味している。

※企業の規模、売り場面積が小さいほど、商品を絞らなければならない。

スーパーに例をとれば、小型店は食料品だけに絞って、多様な商品をおいている。

小型店でも、食料品だけに限ってみれば、大型店より甚だしく劣るということはない。ここに小型店の生きる道があるのだ。

売場面積が十分の一しかないのに、十倍の店と同じ品種を揃えたら、 一つ一つの品種は十分の一しかおけず、 一つ一つの品種は、デザイン、サイズなど多様化はできない。

これでは大型店と太刀打ちなどで売場面積が十分の一の小型店は、大型店の十分の一に品種を絞れば、一品種当りは大型店と互角になる。

※品種を絞れば、1品種あたりは大型店と互角の状態を作れる。

もしも二十分の一に絞れば、 一品種当りは大型店の三倍の規模になって、特色を発揮できるのである。いわゆる、「専門店化」である。

※さらに絞ることによって特色を発揮できる。つまり「専門化」にならなくてはならない。

この典型は、大阪の心斎橋筋にある「F社」という売場面積四〜五坪のアクセサリー専門店である。私はこの店を称して、同じ心斎橋筋にある「大丸」デパートの五十倍の超大型店という表現をとる。

そのわけは、金色のくさりである。大丸では、せいぜい二〜三十本しかおいていないが、F社では数百本くらいある感じである。その金色のくさりの前には、いつ見ても五人や七人のお客様がいて、盛んにあさっているのである。

F社

F社は、金色くさり以外の商品についても、全く同じ品揃えの方針をとっている。私が感心している店の一つである。

同じ心斎橋筋のM社というショルダーバッグ専門店も、ショルダーバッグ一本に絞っている優良店である。M社くらいの売場のバッグ店は同筋にいくつもあるが、商品を絞らずに、ショルダーバッグ、ハンドバッグ、財布、買い物袋など様々なものをならべている。

M社

だから、ショルダーバッグについては、M社が心斎橋筋一番の大型店なのである。普通、専門店のお客様は衝動買いであるが、M社は目的買いの店のような感じがする。というのは、店の前で見ていると、お客様は、わき見もせずに、用があるという感じで入ってゆくからである。

輸入の袋物問屋の、M産業は、初めは民芸品、アクセサリーなど、多種類のものを扱ってみたが、どうも思わしくない。そこで、試みに袋物一本に絞り、二〜三百種のものを揃えたところ、が然売上げが急上昇したということである。社長のY氏の言である。

スター精密

スター精密の自動盤は、棒径を六ミリ以下に絞って好成績をあげている。

モーターの専門メーカーのP製作所は、外径三十ミリから九十ミリまでの間のモーターに絞っている。そのために、大手と競合する汎用モーターや、収益性のあまりよくないマイクロモーターはやらなくてすむ。

この範囲外の要求はずいぶんあるけれども、すべて断わるのである。そして、この範囲内で徹底した品質、コストを追求し、大きな占有率の確保と、安定収益を実現しているのである。

P製作所

P製作所の例は、占有率について、次のことをわれわれに教えてくれる。

占有率の項ですでにのべたように、企業規模と市場の大きさには相関関係があることはたしかである。

しかし大きすぎる市場でも、その中のある商品またはある範囲に絞って、その中での大きな占有率を確保すれば、りっぱにやってゆけるということである。

※大きすぎる市場でも、ある商品又はある範囲に絞ることで、その中で大きな占有率を確保すれば、やっていける。

こうなると、市場選択の余地が多くなってくる、ということである。

山際電気

次に、商品を徹底的に絞って成功している例をみよう。

山際電気の照明器具は有名である。それも、ビル用や工場用は扱わず装飾的なものだけに限定して、たくさんの種類を揃えている。シャンデリアから門灯、風呂場からトイレに至るまで、全部揃っているだけでなく、その一つ一つの種類、例えばシャンデリアでも、いろいろなデザイン、いろいろな値段のものがあるから、お客様はこの中から自分の好みと予算に応じて買整えることができるのである。

家を新築する時など極めて便利である。間取図面をもっていって、これはここ、あれはここ、とメモしながら買っているお客様が多いのである。だから、店内は、いつもお客様でにぎわっているし、よく売れるのである。私が数回店をのぞいてみてそうなのである。

G社

G社は、サンドイッチ一本に絞っている。それも、風が吹けば飛ぶような薄いハムか何かはさんである一流レストランのものとは品物が全然違う。 一つが、普通にあるサンドイッチの五枚分くらいの厚さのデラックスなものである。「世界のサンドイッチ、五十五種類」というキャッチフレーズに見るように実に多様である。ショーウィンドーの見本を見るだけでも楽しくなる。

あまリデラックスで厚いので、食べにくいというお客様の声があるが、そこがいいのだ、というのがS会長の話である。食べよくしたら、デラックスさが失われてしまう、ということらしい。日本中に、三十余りのチェーン店をもっている。どの店も小型である。

その店はどこも、いつも満員に近い。子供づれのお客様などは、長い時間テーブルを占領している。「子供さんでは回転が悪くて効率が悪いですね」

と会長に話したら、「とんでもない。有難いお客さんですよ。何しろ先が永いですからね」という御返答である。名経営者の見方は違うものである。

最近ハワイのホノルルのカラカウワ通りに、パイロット・ショップを出した。なかなか好調で、お客様の大部分が日本人以外で、その中で米本国人が多いとのことである。

これで、米本土進出の自信ができました、との便りをいただいて、私も我が事のように嬉しい。

壁の穴

東京の渋谷には、スパゲッティ専門の、「壁の穴」という店がある。ここも、数十種類のスパゲッティを揃えている。アサリスパゲッティ、納豆スパゲッティから、イカスミスパゲッティまであるのだから恐れ入る。むろん大繁盛である。

このような優れた実例は、「いろいろなものを扱わなければダメだ」という常識(?)に、再考を促しているのである。

※いろいろなものを扱わなければならないという常識は間違っている。

高級品に絞って企業イメージを高める●

F社

倒産した高級釣竿メーカーのF社の教訓をみよう。F社の釣竿といえば、釣マニアにとっては、まさに「垂ぜん」の的であった。

F社の釣竿を持っている、ということだけで、釣仲間に鼻が高かったのである。釣マニアという固定層のお客様をもち、高収益経営を誇っていたF社の破綻は、安物を発売したことであった。

※せっかく高級路線のブランドとして販売していたにも関わらず安物に手を出したことによって、破綻してしまった。

その安物に、F社の銘をバカスカ打って売ったのだからたまらない。F社の声価は一気に地に落ちてしまったのである。そのために、本命の高級品のお客様は全部逃げてしまい、バッタリと売上げがとまってしまったのである。

一方、大量生産も大量販売も経験のないF社は、低コストで生産することもできなければ、安物業界の販売競争にもなすすべがなく、売上げはサッパリ伸びなかった。高級品も売れず、安物も売れない。これで会社がもつわけがない。こうしてF社はつぶれてしまったのである。

T社は、家庭雑貨のメーカーで、商品の優秀さは定評があった。T社長はもっと売上げを伸ばそうとして、安物を発売しようとした。これをきいたある代理店の社長が、商品のイメージをこわすからやめたほうがよいと忠告をし、沙汰やみになった。T社長は、よい代理店をもっていて幸いである。

Y社は、売場面積四百坪の地方都市のスーパーであった。赤字でどうしていいか分らぬから手伝ってくれという。これは大変だ、と日程をムリにやりくりして駈けつけた。しかし、もう手遅れだった。手遅れというのは、資金が続かないということである。

私は、赤字会社にお伺いすると、真先にやることは「いつまで資金が続くか」ということである。

※赤字会社での第一確認は、いつまで資金が続くかをチェックする。

いくら超特急で手を打っても、翌日から効果がでるものではない。少なくとも四カ月程度、欲をいえば六カ月は持ちこたえるだけの資金がなければ、どうにもならないのである。

※超特急で手を打っても翌日から効果が出るものではない。4ヶ月から半年時間がかかるもの。

それを、どう工面しても、ギリギリニカ月だったのである。せめて、もう半年前に声をかけていてくれたら、といっても後の祭である。

Y社

Y社は、もと売場面積六十坪程の洋品店であった。高級品だけに絞り、金持や上流社会の固定客をガッチリとつかんで、高収益経営をしていた。その地方では、Y社の包装紙をつけた贈物なら、どこへ贈っても恥かしくなかった程なのである。

それを、金ができたので、四百坪の店を買って、スーパーにのりだしたのである。高級洋品店は一転してスーパーに変身した。従来の高級品のお得意には完全に逃げられ、スーパーの方は、経営法が分らず、スーパーの社員をスカウトしてこれに一切を任せて、ついに倒産寸前まできてしまったのである。

Y社はスーパーの建物を売っ分らぬから手伝ってくれという。これは大変だ、と日程をムリにやりくりして駈けつけた。しかし、もう手遅れだった。手遅れというのは、資金が続かないということである。

Y社はスーパーの建物を売って、危うく倒産だけはまぬかれた。せめてもの幸いであった。

以上、二つの例は、「企業イメージ」というものが如何に大切なものであるか、ということをわれわれに教えてくれる。

自らの強味―企業イメージーを自覚せず、「もっと事業を拡大したい」という単純な気持だけで、よく考えもせずに、安物に走ってしまった。

※「もっと事業を拡大したい」という単純な気持ちから、よく考えずに安物に走ってしまうことが多々ある。

そして失敗してしまったのである。「高級品では数がでない。数多く売れるのは安物である」という考え方に、私はイヤという程ぶつかる。いや、こう考えない人の方がむしろ極めて数少ないのである。

※高級品では数がでないから、数多く売れるのは安物であるという考え方が蔓延している。こう考えない人のほうが極めて少ない。

こうして、たくさんの会社が安物に殺到し、百の需要に二百の供給という過当競争がまき起る。これが、さらに安くしなければ売れない、ということになり、「コスト・ダウンこそ企業繁栄の鍵である」というようなク定説ク(?)ができあがってゆく。

※安物に殺到し、100の需要に200の供給という過当競争が巻き起こる。やすくしなければ売れないということになり、「コスト・ダウンこそ企業繁栄の鍵である」というような「定説」ができあがってしまう。

そして、能率・合理化・設備投資という、おきまりのコースを通って、つぶれるか、つぶれないまでも、どうにもならない低収益企業になり下がってしまうのである。

※コスト・ダウンこそ企業繁栄の鍵と思っていると、能率・合理化・設備投資というおきまりのコースを経て、倒産もしくは低収益化に進んでいってしまう。

高収益、安定経営は、安物では不可能である。何の特色ももつことができないからだ。

※高収益化・安定経営は、安物では絶対に達成されない。何の特色も持つことができないから。

特色をもち、これを我社の強味として、しっかりと守りぬくことこそ、高収益、安定経営を実現するものである。その第一は、高級品であり、もう一つは一品料理または少量生産なのである。

ところが、小さな会社ほど、たくさん売れるもの、という単純な発想から、大きすぎる市場を狙うのだから、どうにも救われないのである。

御幸毛織、ユニオン製靴、牧野フライスなど、みな最高級品または高級品だけに絞って成功している。

「ハンドバッグと靴のアンサンブル」として有名な兼松は、社長自らオリジナルデザインに心魂を傾けるとともに、店舗そのもののムードも、全くのハイ・センスである。

これらの会社は、企業イメージが如何に大切かを、社長がよく認識しており、高級品一筋の方針は微動だにしないのである。

我社の事業、我社の商品は、何を特色とし、そのために何をしなければならないかをきめるのは、社長以外の誰でもないのである。

S社

S社は、軽金属製の門扉のメーカーであった。メーカー価格は三万円〜五万円という低価格で、業績は思わしくなかった。

私は「低価格の量産品をいくら作っても、価格競争に巻きこまれるだけで、事態は永久に好転しない。それに反して高価格門扉ならば競争はあまりないし、高収益が可能だ。とりあえずは一〇万円〜二〇万円の門扉を低価格品と並行生産し、売行きを見ながら低価格品を減らし、あわせて、高価格品を作ってゆくべきだ。大切なことは大工、工務店を社長が直接訪問して販売すべきである」と勧告した。

社長のお客様訪間でわかったことは、高価格品は既製品よりは注文品が圧倒的に多く、しかも作ってくれるところがなくて困っているというのである。全くの空白地帯だったのである。高価格品は多くの商品で、こうした傾向があるのだ。

S社は、たちまち注文品の生産で大多忙となり、業績は一気に好転してしまった。

価格帯は次第に上り、 一面一〇〇万円以上にもなるものさえあった。S社では、この高収益事業をふまえて外壁部品や部材に進出することができたのである。

K社

K社は、ステンレス製のシンク(流し台)の加工業であった。 一般住宅用の低価格の規格品で、低収益に苦しんでいた。

K社長の相談に対する私の返答は、

量産品では永久に会社は高収益にはならない。生産性向上と低価格化のイタチゴツコだからだ。もしも、社長に高級化の意志があるなら、高級の厨房用品セット(今でいうシステムキッチン)に取組んでみたらどうか。よく考えて決心がついたなら、社長自ら今のシンクの受注先にお伺いして話を持出してごらんなさい」と申しあげた。                                

K社長の申出をきいた先方の会社では「今までやってもらうところがなくて困っていた」とばかりに大喜びで、話は即座にまとまってしまったという。

それから一年、K社長にお目にかかった時には、 一日一セットの割合で売れるようになったという。何しろ一セット一〇〇万円以上で、収益性は低価格品より遥かに高いのだから、いうことはなかったのである。

鉄骨メーカーのN社長から、「新事業として木造住宅をやりたいが……」との相談である。私は「低価格住宅でなく、中級住宅を狙うのがよい」とアドバイスした。

N社長は低価格住宅のほうが売れ足が早いからやってみたいという意向だったが、私の説得で中級住宅に切換えた。それでも不安なので、試験的に二棟たててみた。むろん一倉思想に基づく設計とした。

結果は、四人のお客様から「気に入った」と申込みを受けたが二棟しかない。アブレタニ人のお客様から、「何で二棟しか建てなかったのか」ときつくお叱りを受けてしまった。

N社長はスッカリ自信をつけてしまったのである。

中小企業の経営者の多くは、低価格で高く売れる商品が有利だと思って、こうしたものに乗り出すケースが多いが、実は、このこと自体が過当競争を引き起す原因になっているのである。

必然的に中級品や高価格品に取組む企業は少ない。そのために、こうした市場に乗り出した中小企業は、すべての面で有利である。需要はあるし、競争らしい競争はないのだ。

さらに市場が小さいために、大手の参入などはない、という安全地帯でもあるのだ。

高級品(中級品も含む)高価格品こそ、中小企業としての事業として最適なものの一つということができる。安全で競争は少なく、しかも高収益を期待できる。しかも大手の参入は無いという好条件までそなえているのだ。

こういう事業を「スキマ産業」というが、私にいわせたら「盲点産業」である。外食産業では、多品種と単品種の二極に分れているが、成功の確率は単品種の方が多い。

単品種によって、徹底的に味の追究をするほうが、お客様の要求する「味」を実現することの可能性が高いからである。

単品経営の方が遥かに有利であることを知っておくべきだろう。これこそ他業種と一味違う業種であろう。

ということは、他業種と違って斜陽化のないことである。過去何千年にわたり、時の節を通して生き残ったものばかりであって、しかも新規参入など全く不可能だからである。

だから、料理研究家と称する連中の研究した新商品と称するものは成功したためしがないのである。外食産業で生き残る道は、新商品などの幻想にとらわれることはやめて、長い年月を経て生き残った料理のうちから、何か一品種を選び、 一意専心「うまい味」を探求することこそ成功の只一つの道と心得て、 一途に進むことこそ成功の秘訣であることを知っていなければならない。

むろん、清潔、衛生、雰囲気、人的サービスについての配慮を忘れてはならないという条件を十分に満たした上でのことはいうまでもない。

客層を絞って●

T商事

毛糸問屋のT商事は、新事業を次々と開発して業績をあげている。その新事業の一つである婦人服の現金卸の成功をみよう。初めのうち、店長に仕入れを任せきり(実は放任)であった。

店長は、ご多分にもれず、「できるだけ多くの種類」を揃えることが販売増進の道であると思って、「何でもかでも」扱ったのである。

これは、お客様が、「これこれの品物がありますか」ときかれたときに、それを扱っていないと、「しまった、早速扱わなくては」と思って、これを仕入れる。こうして種類は際限もなく増えてゆく。

しかし、店舗の面積には限りがある。そのために、一つ一つの商品のサイズやデザインは貧弱になってゆくのだ。

お客様が望むのは、すべての品が揃っていることではなくて、自分の買いたい商品が豊富に揃っていることなのだ。たくさんの品を見くらべて、その中から自分の気に入ったものを買いたいのである。

何もかもおこうとすると、何一つとして、お客様の要求する品揃えができなくなるのである。店長の間違った考えによる「何でもかでも」主義は、当然のこととして、売上不振であった。

初めのうちは、開店当初だからという理由で見過されたが、いつまでたっても売上げは増加しなかった。

我慢しきれなくなった常務のS氏が、自ら店長となった。店へ入ってびっくりした。こんなことで売れるわけがない、と直ちに改革を行なったのである。

まず、「中年婦人向けの実用高級品」という基本方針を打ちだし、さらに商品は、スーツとセーターとスカートに限定した。そのために商品は充実し、「中年向けならT商事へゆけ」というお客様の評価が得られたのである。売上げが格段に上昇したのはいうまでもない。

S社

S社は、ヤング向けの個性化に焦点を絞った。独得のファッション性を発揮して成功している。K商店は、クイン・サイズのスーツ専門で、全国に百余りのクインサイズ専門店を特約店としてもっている。街を歩くと、メンズ・ウエアがあったり、ベビー用品専門店にぶつかったりする。

顧客の要求に焦点を合わせる

いずれの場合でも、客層を絞って、その客層の多様な要求を満たすという着想なのである。つまり、「顧客の要求」に焦点を合わせているのである。

顧客の要求は何か。顧客はどんな買い方をするのかを研究し、我社の経営のあり方をきめることこそ重要である。

顧客の立場に立たず、我社の立場に立って、ひとりよがりの経営をしていたのでは、いつまでたっても業績の向上は望めないことを銘記しなければならないのである。

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