ドラッカーによる解説
- 顧客にとっての価値は何か?
- 活動対象としての顧客にとっての価値は何か?
- パートナーとしての顧客にとっての価値は何か?
- 顧客に学ぶべきことは何か?
- どのようにして顧客に学ぶか?
❖——顧客は何をもって価値とするか
顧客は何をもって価値とするか、何が彼らのニーズ、欲求、期待を満たすかとの問いは、実はあまりに複雑であって、顧客本人にしか答えられない。
ここで原則は、顧客はみな正しいとすることである。ほとんど例外なく、彼らの行動は合理的である。したがって、答えを想像してはならない。必ず、顧客から直接答えを得なければならない。私自身ずっとこれを行っている。
毎年、一〇年前の卒業生五〇人から六〇人に電話をし、「振り返ってみて、この大学院はあなたに何を貢献したか?今でも役に立っていることは何か?私たちはどうしたら改善できると思うか?私たちが止めるべきことは何か?」と聞くことにしている。
実のところ、こうして私が得た情報は、大学院の運営に非常に役立っている。
「顧客にとっての価値は何か?」という質問こそ、「5つの質問」のなかでも際立って重要である。
しかしこれは、実は最も考えられることのない質問である。しかも、ほとんどの組織が、顧客に成り代わって自ら答えようとする。
そして「顧客が価値ありとするものは、プログラムの質である」、あるいは「人間味である」と言う。
組織の多くは、あまりにミッションにコミットし、あまりに自信をもっているがゆえに、ややもすれば自らを目的視する。官僚的思考の極みと言うべきである。
その結果、「顧客に価値を提供しているか」ではなく、「規則に合っているか」を考える。こうして成果をあげるどころか、ビジョンも献身も雲散霧消させている。
❖——顧客が前提としているものを知る
私の友人であるノースウェスタン大学のフィリップ・コトラー教授は、組織の多くは、いかなる価値を提供するかについて、それなりに考えてはいると言う。
ただし、その少なからざるものが、顧客の側から見た価値ではないと言う。自分たちが勝手に考えたものだと言う。顧客が価値とするものを考えるのであれば、実際に顧客が言っていることを知らなければならない。そのうえで、自らの成果を評価しなければならない。
❖——活動対象としての顧客にとっての価値は何か
あるホームレス用施設が、活動対象としての顧客であるホームレスの人たちが価値とするものを調べ直すことによって、活動の内容を大幅に変えた。
施設側が、ホームレスの人たちにとっての価値と考えていたものは、食事と宿泊施設だった。
しかし、理事とスタッフによる聞き取り調査の結果、たしかに食事と宿泊施設は評価されていたものの、彼らの本当の望みは、ホームレス状態から抜け出すことだとわかった。
必要とされていたのは、生活を立て直す基盤としての宿泊施設だった。そこでその施設は、それまで前提としていたものを捨て、大幅に規則を変えた。
「この施設を彼らのホームにするにはどうしたらよいか」まず、出て行けと言われる心配をしないですむようにした。
かなりの日にちを過ごせるようにしたうえで、生活の立て直しについて相談にのることにした。今日では、施設を利用するホームレスの人たちに一定の自己責任を課している。
かつては、空腹をかかえて顔を出すだけでよかった。今日では、自ら生活の立て直しにコミットしなければならない。滞在を続けたいのであれば、ホームレスからの脱出に正面から取り組まなければならない。こうしてこの施設は、顧客にとっての価値を増大させ、成果を増大させた。
❖——パートナーとしての顧客にとっての価値は何か
活動対象としての顧客にとっての価値を知ることが最も重要である。
しかし現実には、パートナーとしての顧客にとっての価値を理解しないことには、組織として成果をあげることはできない。組織には数多くのパートナーがいる。
しかも、場合によっては、そのそれぞれが拒否権をもつ。校長は、自らの活動対象としての生徒に加え、教育委員会、先生、コミュニティの関係機関、市民、親など多様なパートナーとしての顧客を満足させなければならない。
これだけで顧客は六種類いる。そのそれぞれが学校を別の目で見ている。いずれも無視できない。それぞれが別の価値観をもっている。いずれをも満足させなければならない。
校長としては、少なくとも、自分が解任されたり、ストを行われたり、騒ぎを起こされない程度には彼らの全員を満足させなければならない。
❖——顧客の声に耳を傾ける
行動のための計画を立てるには、顧客が価値とするものを知る必要がある。
多様な顧客それぞれにとっての価値を統合して一つの計画とすることは、いわば一つの建築的プロセス、構造的プロセスである。
わかってしまえば至難というわけではないが、大変な仕事であることに変わりはない。まず初めに行うべきは、いかなる情報が必要かを知ることである。
次に、顧客にとっての価値を客観的な事実として受け入れ、彼らの声をあらゆる検討と意思決定の基盤とすることである。
質問3に寄せて 惰性を拒否する勇気
ジム・クーゼス(JimKouzes)サンタクララ大学リーベイ・ビジネススクール「イノベーションと企業家精神センター」のエグゼクティブ・フェロー。
著書に一〇〇万部のベストセラー『信頼のリーダーシップ』(バリー・ポスナーとの共著)がある。
http://www.leadershipchallenge.com/home.aspx❖——惰性を正す行うべきは、顧客にとっての価値を創造することである。
❖——惰性を正す
http://www.leadershipchallenge.com/home.aspx❖——惰性を正す行うべきは、顧客にとっての価値を創造することである。
デトロイトのシナイ聖霊病院の院長に就任したパトリシア・メリーランドの考えたことが、これだった。
病院はひどい状態だった。荒廃しきっていた。必要とされていたものは、新院長という新しいリーダーだけではなかった。すべてが惰性だった。これを正すことが、まず初めに彼女が行うべきことだった。
たとえば、外来での待ち時間がそうだ。
「受付から入院まで八時間かかっていた。許されることではなかった」「地元の評判は、とにかく汚い病院というものだった。病院の隣に住みながら他の病院に行っている人もいた。院内の様子も問題だった」彼女は、直ちに行動しなければならなかった。
しかし、あまりに長く続いてきたことだけに、そのような状態が当たり前のことになっていた。根本から見直さなければならなかった。待ち時間の改善のためには、組織改革やいくつかの手立てが必要とされた。
「直ちに診ることができるよう、循環器関係の患者には別室を用意した。エキスプレス・ケア(特急治療)と名づけたゾーンを設け、プライバシーに配慮した個室をつくった」。
これらの措置で、待ち時間は七五パーセント改善された。そこへ、ある財団から一〇万ドルの補助金がついた。ペンキを塗り、カーペットを新しくし、備品を更新した。職員の志気はあがり、患者の気持ちも一新した。医師たちに働きかけて美術品を寄付してもらった。院内はあっという間にモダンなメディカルセンターの趣きを呈した。
「病院には温かさや優しさが必要だった。患者さんが信頼感と安心感をもてなければならなかった」彼女は患者への接し方も変えるよう求めた。
「自分のお母さんならどうするか、お父さんならどうするか?どう話しかけるか?あなた自身が病院に来たとき、物のように扱われたらどう感じるか?」わずかこれだけのことで、病院は変貌した。
病院ランキングの評価では、ほとんどの項目が1か2だったものが、4か5に急上昇した。
今日では病院は活気に溢れている。財政状態も改善し、「コミュニティから信頼され、コミュニティの病院として愛されている」。
❖——決意と行動が生み出すもの
これらのことのすべてが、顧客たる患者の声に耳を傾け、彼らにとっての価値を生み出すというメリーランドの決意からもたらされた。
新院長の決意と行動が、病院に活力を取り戻し、職員に志気と誇りをもたらした。それらのことがなされたのは、彼女がただ一つの目的をもっていたからだった。
それが、顧客にとっての価値を生み出すことだった。顧客にとっての価値は何か。もちろん顧客は、彼らのニーズを満たし、彼らの問題を解決してくれる組織に価値を見出す。
しかし、それ以上に彼らは、自分たちに耳を傾け、惰性を拒否する勇気をもつ組織に価値を見出す。
質問3を考えるための問い
- ■われわれの顧客は何を価値としているか?
- ■われわれだけが満たしているニーズ、満足、便益は何か?
- ■顧客にとっての望みは何か?
- ■顧客の望みに応えることのできるわれわれの能力は何か?
- ■われわれは顧客が価値とするものを提供できるか?
- ■顧客が価値とするものについてのわれわれの能力は、さらにどのように活用することができるか?(財・サービス、採用、教育訓練、イノベーション、募金、マーケティングなど)
- ■顧客の満足度を知る手立てはあるか?
- ■パートナーとしての顧客にとっての価値は何か?
- ■寄付者は謝意の表明と貢献の意識のいずれを重視しているか?
- ■ボランティアは、学び、絆、貢献のいずれを重視しているか?
- ■活動対象としての顧客は、彼らの家族に関してわれわれに何を期待しているか?
- ■われわれの流通チャネルとなっている人たちは、彼ら自身のミッション、ゴール、利益に関してどのようなニーズをもっているか?
ミレニアル・コラム顧客革命に乗れるか否か
マイケル・ラゼロウ(MikeLazerow)カース・ラゼロウ(KassLazerow)夫妻はともにシリアル・アントレプレナー(連続起業家)であり投資家。
直近の企業ブディ・メディアは七・四五億ドルでセールスフォースに買収された。www.lazerow.com顧客革命が到来した。
主役は企業ではない。SNS、スマホ、IoT、あるいはクラウド・コンピューティングの登場は、あなたとあなたの顧客との関係を、元に戻せないほどに変えた。
顧客革命は、企業から顧客へと力を移行させる。顧客一人ひとりの力と、その力の及ぶ範囲を制約するものは、ネットワークそのものの規模と影響力だけである。
静かな革命である。無数の人々が、家族、友人、同僚などとメールやフェースブック、ツイッター、ピンタレストを使ってシームレスに影響し合っている。
生き残れるのは、この顧客革命に乗れる企業だけである。波に乗る企業は生き残る。現実から目を背ける企業は死滅する。二つに一つである。
では、あなたの会社はいかにして顧客革命に乗れるか。今、ここで必要とされるサービス簡単である。まったく新たな方法で互いにつながっていくことである。
あらゆるステップで寄り添っていくことによってである。つながることは、助け合うということである。新しい考えではない。新しいのは、顧客が助力を望むとき、望む方法で助けるというだけである。
顧客にとって、これほど心踊らされることはない。つい昨日まで、顧客はやむをえず店に出向いて買い物をした。
企業の言うがまま、朝九時から午後五時までのどこかで、足を運んで用を足さなければならなかった。
今日では、手を貸してもらいたいときに助けを期待できる。まさにそこで役に立てる企業が、産業全体に革命を起こしつつある。
ウーバーのスマホのアプリは交通事情を一変させ、現在、人口の四三%を占める自動車非保有者の足となっている。
毎月二万ともされる雇用を生み出し、ニューヨーク市内では一人当たり年九万ドル以上の所得がもたらされている。
『ビジネスワイヤ』は、全米で年間二八億ドルの所得をもたらしていると推計する。スマホとクラウドに乗ったサービスである。
どちらがなくともウーバーの存在はない。ウーバーのアプリが提供する助けはシンプルである。どこかから、どこかに行かなければならない。
まさに行かなければならないそのときに、助けが得られる。車が必要だ。スマホをタップする。車が来る。数年前には影も形もなかった。
今では目端の利く投資家たちが、一八〇億ドルの時価をつけるにいたった。
期待する「当たり前」が変わるこれまでは自動車が故障しても、ただ手をこまねくしかなかった。マニュアルを読んだところで、さして助けにはならない。
やむなくディーラーに連絡し、三〇分かけてたどり着き、一時間かけて車を預ける。さらに引き取りに一時間を要する。こうして必要な助けは得られる。
だが、必要なときに必要な条件で、ではなかった。サービスには違いないが、適時ではない。今日では、新車はネットワークに接続済みである。
何か不都合が生じたら、ダッシュボードにメッセージが出る。
「ハロー、前回のフィルター交換から八〇〇〇マイルも乗っているよ。そろそろアポをとろう。ボタンを押してほしい」ディーラーの担当者が車を引き取りに来て、整備後に返却される。
万事スムーズだ。すでに顧客はあらゆるオンデマンド製品やサービスの恩恵に浴しており、この程度のことは当たり前と思っている。
私たちが目にするのは、販売、サービス、マーケティングのあまりに急速な変貌である。もはや顧客接点がマーケティングそのものだ。
これまでマーケティングは、購入してもらうという一つの目的に注力していた。今やマーケティングは、顧客が歩を進める旅路にかかわる語彙として理解されている。
購入を挟む前後を含むあらゆるポイントで、顧客は助力を期待している。われわれが何かを買うのは、それが助けになるからにほかならない。
だが、今やわれわれは、われわれの状況に合わせてそれらが供されることを期待するまでになっている。
顧客革命が始まった。主役は顧客のほうである。
ミレニアル・コラムSNSを過信せず使いこなす
ナディラ・ヒラ(NadiraHira)著述家。テレビパーソナリティ。
『コスモポリタン』誌のミレニアル・アドバイザリーボードのメンバーを務めるなど、ミレニアル世代に詳しい。
www.nadhirahira.com顧客が何を価値とするかについては、今日ほど明らかになったことはないと、われわれは考えがちである。
かくも互いにつながり合う二一世紀では、瞬時に情報が飛び交う。
地上にいながらにして、しかも場合によっては他の搭乗者が気づくより先に、たとえば航空の機内で起きたトラブルについてのツイートを目にすることもできる。
組織もブランドもリーダーも、あらゆるものが常時フィードバックプロセスの中にいる。だが、私たちはそれらのフィードバックを効率的に活用できているか。幾度となく私は、経営者がこういうのを耳にした。
「ツイッターというものがわからない」あるいは、自社のフェースブックやインスタグラムに寄せられるコメントに頭を抱えていると、胸の内を明かす経営者もいた。
あるいは最もよろしくない例として、SNSのおかげで顧客と直結していると錯覚し、自己満足に浸っている者もいる。
私たちは空前ともいえる顧客接点ツールの共有された時代を生きている。もちろんツールとは、手段以上でも以下でもない。
しかし、見たくないものにふたをしてしまったら、大きな機会を過ぎ去るに任せることになる。徹底的に問いかける覚悟逆に、あまりに評価しすぎてもいけない。
そうなると、顧客の欲求、ニーズ、不満の外面しか見えてこなくなる。そこで例に引きたいのが、イノベーションである。
イノベーションにおいては、顧客本人さえ自ら何を欲するかを知らずにいるというのが定説である。だからといって、イノベーションを行う者が、顧客を軽く見るということではない。
最高の財・サービスを生み出すには、安易な答えに満足してはならないということが、プロたる者の心得である。彼らは掘り下げ、組み立て、組み立て直していく。
あらゆる角度から探求していく。
テクノロジーの力を徹底的に利用し、この顧客はと思えば、ありったけの情熱で語りかけ、ともに生きる。
まさに数十年も前にドラッカーが言ったように、徹底的に問いかけなければならない。それがリーダーたる者への挑戦である。
これを適切に行えるなら、誇りをもって事業をともにしてくれる人々のリストは、果てしないものになっていくに違いない。
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