資産を売却する VS借入れをする 資金繰りが厳しくなってきたときに何をすべきか。 もちろん借入れは資金繰りの対策として非常に有効な手段ですが、実は他にもやれることはあるのです。 それは何かと言うと、アセットファイナンス、つまり資産売却という方法です。 以前、顧問先の社長が資金繰りが厳しいということで、クレジットカードで支払った経費をすべてリボ払いに変更していました。 ご存じの通り、リボ払いは一時的に支払いは楽になりますが、非常に金利が高い支払い方法です。ですから、経営改善の根本的な解決にならないケースがほとんど。私の経験上、カードの支払いをリボ払いに変更し始めたら、倒産に足を突っ込んでいる状態だと言えます。 そしてリボ払いに限界が来たのか、その社長は私に「ノンバンクで貸してくれるところを知りませんか」と相談に来ました。 通常であれば、私も社長と「どこか借りられるところがないものか……」と資金繰りについて一緒に時間をかけて考えるのですが、そのときは検討する余地もありませんでした。 なぜかと言うと、その社長が乗っていた車というのが、最新のメルセデス・ベンツ Eクラスだったのです。それなのにすごく困ったような顔をして、「どこかお金を貸してくれるところはないですか?」と聞いてくるわけですから、私も思わず笑ってしまいました。 私が「資金繰りの手段ならありますよ」と言うと、「教えてください!」とかなり乗り気でしたので、「そこの中古車店に行って、今すぐそのベンツを売ってきてください」と言ったのです。すると社長は驚いたような表情で「そんなことしたら借金しか残りませんよ!」と言うのです。 ただ私としてはこれほど資金繰りが悪いのにもかかわらず、最新の外車を購入するほうが経営として問題だと思ったので、「新車ですし、今なら 400万円くらいは手元に入ってくるので、そこから事業を立て直して返済していきましょう」と提案しました。 しかし、社長は「こいつは何を言っているんだろう」というような表情で、結局そのときは車を処分することはありませんでした。 その後もその社長とは資金繰りの件で何度もお話しさせていただき、車を売却するよう訴え続けました。その会社はスタジオを経営していたので、何度も「タクシー会社や運送会社に商売道具の車を売れという話じゃないんです。スタジオを経営するのにベンツはいらないでしょう、しっかり考えてください」と説得しました。「本当にしつこいな」と思われているんだろうなとは感じましたが、これが最適な資金繰りの提案になりますから、こちらとしても譲れませんでした。 その後「車を処分しました」と私に報告に来たときに、その社長が乗っていたのがメルセデス・ベンツ Cクラスだったので「もうダメだ」と私は苦笑いでしたけどね。 最終的にその会社は半年後に民事再生となり、倒産してしまいました。その後どうなったのか、私は知りません。資産は価値が減る前に現金化を このような経営者は一定数いらっしゃいます。基本的に、私は経営者の考え方やマインドは変わらないと思っています。だからこれは、資金繰りの問題ではなかったのかもしれません。 このケースでは最初に車の売却を提案した段階で売っていれば、まだ再起できる可能性があったと今でも思っています。しかしあの段階で、ベンツだけは維持したいという社長のマインドが、結果的に借金を増やす結果につながってしまいました。 負債が増えたとしても、資産が残るならまだいいのです。まさに借入れがそうなのですが、借入れとして負債が増えても預金が残るわけですから、まったく問題はないのです。 しかし、ベンツは固定資産ですから、持っていても価値はどんどん下がっていきます。結果的に過剰債務になり、増えた負担分も事業の収益力で返済しなければならない状況に陥ってしまった。しかもそもそも事業の収益力が落ちてきていて資金繰りが悪くなっていたので、そうなると資産を売却する選択肢しかなかったのです。 だけど、そこを無理矢理維持してしまった。結果的に借入れの返済と利息で動きがとれなくなり、最終的には倒産。そのような結末です。本当に悪循環だと言えます。 このケースの教訓として言えるのは、利息の高い借入れをして資産を残すくらいならば、まずは資産を売却して資金を作ることが先決だということでしょう。 そして売却した資金で事業を立て直し、それでも難しい場合には事業資金を借り入れる。事業資金になる資産があるならば、金利の高い借入れより、資産売却のほうを優先しましょう。
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