調達資金の効率つまり「総資本回転率」は、売上高を分子に、総資本を分母に算出される。
ということは、売上を増やすか総資本を減らすことに目をつけることだ。
好況のときに売上高を増やすことは、どの会社でもそう困難なことではない。しかし売上
高が伸びるにつれて、どうしても総資本が膨張する傾向がある。資金の無駄づかいが増えて
くるものなのだ。たとえば意味のない在庫や甘い見通しの投資、必要以上の現金。預金など
の存在が、総資本を水ぶくれ状態にしてしまうのだ。
好況があれば必ず不況が続くのが、世の習いである。不況になると、売上高を伸ばすこと
が難しい。結局、総資本がスリムな会社は不況抵抗力があるが、水ぶくれ会社は大変だ。平
成のバブル崩壊にみるまでもない。かつて何度も好況の終わり、不況の始まりには、「放漫
経営による業績悪化」が言われてきたのである。大体、平成バブルの弊害だって、土地や株
式の暴騰と暴落にあるわけではない。ほかならぬ人間の頭をバブルにしてしまったことが問
題なのである。
分母の総資本が大きくなれば効率は悪くなる、分母が小さくなれば良くなる。経営とは、
たったこれだけの単純な仕組みで、良くも悪くも決まってしまうものなのである。
そこでまず、ここ五年間における自社の総資本利益率の推移を見てみることだ。
五年間の数値を並べてみて、もし売上高が増加傾向にもかかわらず、総資本利益率が下がっ
てきているようなら、残念ながら社長の頭の中が、かなリバブルに冒されていた証拠である。
必要のない無駄なお金をいかに借りたか、あるいは借りさせられたかということだ。
銀行の言うままに、いい気になってお金を借り、正しい使い方をせずに資金調達ばかり増
やしてしまったら、どういうことになるだろうか。企業の実態以上に資金の調達を増やせば、
支払利息が増加してしまい、利益率や売上高が上がらないかぎり、総資本利益率が下がるの
は当たり前なのである。
つまり総資本利益率を確実に上げるには、無駄なお金の使い道をやめることだ。分母であ
る総資本の贅肉落としをすることが一番簡単な方法なのである。
要は、バランスシートの左側、調達資金の使途をよく検討して、無駄な要素を削っていく
ことである。
もし、この五年間、銀行金利にも満たない総資本利益率が続いている会社があれば、まず、
今出ている税引前利益を、今の銀行金利で割ってみればいい。算出された数値が、銀行金利
並みの利益を出すための総資本のあるべき姿だということである。
たとえば、総資本五〇億円、税引前利益が一億円の会社があるとする。この場合、総資本
利益率は二%である。仮に銀行金利を四%とすれば、 一億円を○ ・〇四で割って得られた数
字、すなわち二五億円の総資本であれば一億円の利益で四%に回るということだ。つまり利
益造成に直接役立っていない二五億円ものお金、無駄な資本があるということになる。社長
にとって大事なことは、この実態を一刻も早く知ることである。
恐らくこの会社の社長は、自分の会社が構造的に儲からない体質になっていることを知っ
て、愕然とするに違いない。しかし、あるべき総資本のターグットが見えてくれば、社長と
しての方針も出すことができよう。
「いままで経理の担当長や顧間の会計士の先生が折にふれて、オレの金の使い方に文句を
言っていたが、こんなに大変なことだったのか」。バランスシートの左側を見て、売掛金の
回収、在庫の圧縮、効率悪い投資の整理などの資金の無駄づかいのチェックをするにしても、
切実感が違うのだ。このようにして具体的に自分の会社の実態をとらえて手を打つことが大
事なのだ。これが、社長としてのバランスシートの読み方なのである。
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