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誰に委任すればいいのか

「うちは小さい企業だから、なかなか良い人材が集まらない。だから、判断を任せるなんて、ちょっと……」  これもまた、よくある社長の愚痴のひとつ。だが、この「良い人材」という言葉は極めて抽象的ではないだろうか?  一体、何をもって「良い人材」とするのか。学歴か、実績か、スキルか、それとも人格か。  社長にとっての「良い人材」とは、その会社の目的・目標を達成するために必要な人材であるはずだ。ある会社にとっては平日の昼間に働いてくれる人が「良い人材」でも、別のある会社にとっては週末の夜だけ働いてくれるのが「良い人材」かもしれない。  あるいは、何でも自分で自発的に発言して行動することを「良い人材」の要件とする場合もあれば、マニュアルに忠実に従って、それ以外のことは一切しない人を「良い人材」と考える会社もある。会社の利益よりも顧客の声に耳を傾ける従業員を「良い人材」と称える会社もあるだろう。  これは会社の在り方の違いだ。会社として目指すところの違いとも言える。言い方を変えると、会社の目的・目標が明確でないと、そもそもどんな人材が会社にとって「良い人材」なのかわからない。会社の目的・目標が明確になってはじめて、会社、そして社長にとっての「良い人材」像が明確になる。  目的・目標を明確にし、共有すると、それに合った人材が集まりやすくもなる。「目指すところが自分と似ているから働きたい」という人が現れるのだ。さらに言えば、会社の理念に共感している者同士で仕事ができるので、誰もが楽しく働ける。  反対に、会社が目指す方向に共感できない人は、「ここで働いても自分は幸せになれないな」ということがわかるため、合わない人を採用してうまくいかずに互いに嫌な思いをする、ということもなくなる。  このような素地があれば、「誰に判断を任せればいいかわからない」「判断を任せられる人がいない」といった悩みは極端になくなる。誰に任せても、会社の理念に反するような判断をすることはないと確信を持てるからだ。

そうは言っても、影響が大きい重大な判断を誰かに委任するとなれば、どうしても迷うことはあるだろう。複数の候補の中から選ぶ場合も、特定の人物に委任するかどうかを考える場合も、どんな基準で判断すればいいか悩むかもしれない(これこそ、社長が下すべき重要な判断のひとつだ)。  この場面でも、やはりフレームワークが有効だ。それが「人格と能力」だ。  人を評価する際、一般的には「能力」が重視される。具体的には、任せる職種における経歴やスキル、それまで残してきた実績、あるいは免許や資格などがあり、学歴もこれに含まれる。  だが、人材を見極めるにあたって非常に重要な基準がもうひとつある。「人格」だ。約束を守れる、信頼性がある、人を裏切らない、優しさや思いやりがある、協調性がある、嘘をつかない、といった人として根本的に大切な要素のことだ。これらが欠けている人に、会社の重要な判断を委ねてはいけないことは言うまでもない。  もちろん能力も大切だが、その前提となるのは人格だ。だから、まずは人格を見た上で、能力を見る。日頃の発言や行動の積み重ねから人格を分析し、会社が求める成果に対してどのくらいの力量があるのかを見定めるのだ。  一般的に人格よりも能力が重視されるのは、能力のほうが相対的に評価しやすいからだ。だが実際に事業を遂行し、拡大していくには、人格こそが絶対的に不可欠で重要な要素になる。なぜなら、能力が高く人格が悪い人物が会社に与えるマイナスの影響は計り知れず、組織を内側から破壊し、時には不正や不祥事で会社の存続すら危うくする存在にもなりうるからだ。  なお、委任をしたい相手に、自分が望むほどの人格や能力がない、という場合もある。その場合は、仕事は委任するが判断は委任しない、という方法もある。  ただ、能力が足りなくても人格が十分にあれば、能力には伸びしろがあると考えられる。人格の中には、「真面目」や「勤勉」「誠実」など能力を伸ばしていく際に必要となる要素も含まれるからだ。そうした人物にあえて判断を委任することは、成長を促すことにつながり、結果として、会社のヒト資源を膨らませることにもなる。

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