6 計画 “6計画”は“6.1リスク及び機会への取組み”と“6.2食品安全マネジメ ントシステムの目標及びそれを達成するための計画策定”と“6.3変更の計 画”の三つの箇条で構成されている。
これら三つは,マネジメントシステムを 計画する上で,それぞれが独立した要求事項となっているように見える。
しか し,6.1と6.2については, リスク及び機会への取組み方法として達成すべき 目標を設定することが, より確実な成果に結び付けることができると考える と,相互の関連が理解できる。
また,6.1と6.3については,変更に伴うリス ク評価の重要性を考えれば,変更を計画する時点で取り組む必要があるリスク 及び機会が明確になる場合もあり,両者が密接に関連していることがわかる. 6。
1 リスク及び機会への取組み 6 計画 6.1 リスク及び機会への取組み 6.1.l FSMSの計画を策定するとき,組織は,4.1に規定する課題及び4.2並びに4.3 に規定する要求事項を考慮し,次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を 決定しなければならない. a)FSMSが,その意図した結果を達成できるという確信を与える。
b)望ましい影響を増大する。
c)望ましくない影響を防止又は低減する。
d)継続的改善を達成する。
注記 この規格において, リスク及び機会という概念は,FSMSのパフォーマン ス及び有効性に関する事象及び,その結果に限定される。
公衆衛生上のリ スクに取り組む責任をもつのは規制当局である。
組織は食品安全ハザード (3.22参照)のマネジメントを要求されており,このプロセスに関する要求 事項は箇条8に規定されている. =規 格解説 序文の“0.3.3リスクに基づく考え方”において,“6.1リスク及び機会へ の取組み”でいうリスクヘの取組みとは,“ この規格の要求事項に適合するた
めに,組織のリスクヘの取組み”であると説明している(37ページ参照).こ れは,6.1の注記に記された“リスク及び機会という概念は,FSMSのパフォ ーマンス及び有効性に関する事象及び,その結果に限定される。
“という部分 と一致する。
続いて“公衆衛生上のリスクに取り組む責任をもつのは規制当局 である。
”と記載されている.つまり,FSMSで取り上げるリスク及び機会の 概念は,公衆衛生を前提とした食品安全リスクとは明確に区分されていること を理解する必要がある。
リスク及び機会に取り組む目的として次の四つが挙げられている. a)FSMSの意図した結果,すなわち“1適用範囲”のa)からg)に記載さ れた事項を達成するに足るマネジメントシステムであるという確信を利害関係 者に与える。
b)リスクの定義(3.39)にあるように,将来良い影響を与える可能性があ れば,それは望ましいものとして,その影響をより強化する。
c)逆に,将来悪い影響を与える可能性があれば,それは望ましくないもの として,その影響を防止又は低減する. d)今ある機会を捉えて,マネジメントシステムの継続的な改善につなげる。
これらの目的のために,取り組む必要があるリスク及び機会を決定すること を要求している. その際,“ 4.1組織及びその状況の理解”で明確にした,内部及び外部の課 題,“ 4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解”で決定した要求事項及び“4.3 食品安全マネジメントシステムの適用範囲の決定”で決定した適用範囲を考慮 する必要がある。
先に挙げた課題は主にリスクにつながり,後のニーズ,期待 及び適用範囲はリスクにつながる面もあるが,一方では組織にとって有利に働 く機会をもたらす面もあると考えられる. 6.1.2 組織は,次の事項を計画しなければならない。
a)上記によって決定したリスク及び機会への取組み b)次の事項を行う方法
1)その取組みのFSMSプロセスヘの統合及び実施2)その取組みの有効性の評価
=規 格解説 a)“ 6.1.1″で決定したリスク及び機会への取組みを計画することを要求し ている.実施の計画には,取組み活動の内容,責任者,日程などが含まれる。
b)1)この取組みは,FSMSのプロセスに組み入れて実施することを計画す る必要がある。
外部の課題や利害関係者の要求事項に関連した取組みは“7.1.6 外部から提供されるプロセス,製品又はサービス”及び“7.4.2外部コミュニ ケーション”などと関連し,内部の課題に関連した取組みは“7.1.2人々” “7.1.3インフラストラクチャ”“ 7.1.4作業環境”“ 7.4.3内部コミュニケー ション”及び“8.4.2緊急事態への準備及び対応”などと関連して,組織の FSMSに取り込まれることが考えられる。
b)2)この取組みの有効性の評価方法を計画する必要がある。
これは“8.8 PRP及びハザード管理プランの検証”と“9.1モニタリング,測定,分析及 び評価”の要求事項に関連して計画することになる. 6.1.3 組織がリスク及び機会に取り組むためにとる処置は,次のものと見合ったもの でなければならない。
a)食品安全要求事項への影響 b)顧客への食品及びサービスの適合性 c)フードチェーン内の利害関係者の要求事項 注記1 リスク及び機会に取り組む処置には, リスクを回避すること,ある機会を 追求するためにそのリスクをとること, リスク源を除去すること,起こり やすさ若しくは結果を変えること, リスクを共有すること,又は情報に基 づいた意思決定によってリスクの存在を容認することが含まれ得る。
注記2 機会は,新たな慣行(製品又はプロセスの修正)の採用,新たな技術の使 用,及び組織又はその顧客の食品安全ニーズに取り組むためのその他の望 ましくかつ実行可能な可能性につながり得る.
=規 格解説 リスク及び機会への取組みを行う活動は,過大でも過小でもないバランスが 重要である。
そのバランスを判断するために,次のような検討を行うことを要 求している。
a)この活動は,食品安全に関する要求事項に与える影響に見合っているか。
b)この活動は,組織の製品である食品及びサービスの顧客要求事項への適 合と釣り合っているか. c)この活動は,フードチェーン内の利害関係者の要求事項と釣り合ってい るか。
注記1ではリスクヘの取組み方の一般的なパターンを示している。
リスク 回避は文字どおリリスクを避けて取組みを進めることであるが, リスクそのも のは存在している。
“リスクをとる”とは,好ましい方向への乖離が期待でき るとき,すなわち機会を利用するため,積極的にリスクを受けることである。
“リスク源の除去”とは,回避より積極的にリスクそのものを除去する取組み のことである。
“リスクの起こりやすさ又は結果を変更する”とは,発生頻度 を下げる,結果を軽減する処置をとることである。
“リスクの共有”とは,保 険に代表されるように,負の結果を共有して負担を分散することである。
“リ スクの容認”とは,座して結果を待つことであるが,十分な経過情報を得て, 場合によっては異なる取組みへの方向転換が必要である。
注記2にある“機会”とは,組織がもつ強みと言い換えることができる. 組織が,現在もつ強みを発揮して,食品安全のニーズに取り組むために,新技 術やその他実行可能な方策を用いて,製品や製造のプロセスに新しい方式を採 用する取組みを開始することは,機会への取組みの一つである。
また機会とは チャンスであると考えると,チャンスが巡ってきたときに,間髪を入れずにそ れを獲得する俊敏さを備えておくことも重要である。
これには,外部・内部の コミュニケーションによる情報の入手と伝達,それに伴う迅速な判断が求めら れる.“機会”については,“ 0.3.3.2組織のリスクマネジメント”を参照する とよい(37ページ).
=具 体的な考え方《6.1》 “6.1リスク及び機会への取組み”では,取り組む必要があるリスク及び機 会を決定してC6.1.1″),それに取り組むための計画を策定し(“6.1.2″),組 織に見合った処置(“ 6.1.3″)を実施することが要求の骨子となっている。
取 り組む必要があるリスク及び機会を決定する手法については,特段の要求事項 はないことに注意が必要である。
組織の規模や能力に応じて, リスクマネジメ ントの手法を採用する場合もあれば,個々に取り上げたリスクの発生頻度とそ の重大性の評価を行うという手法もある。
また,直観的に決定する手法であっ てもよいと考えられる。
重要なことは,そうして決定したリスク及び機会への 取組みを計画し,実施し,有効性の評価を行うことであり,いわゆるPDCA を回すことである。
本規格の要求事項ではないが,GFSIベンチマーク要求事項にある食品防御 や食品偽装の予防を,“取り組む必要のあるリスク”とすることもできる.こ れらは,組織の状況の理解から生まれる内部及び外部の課題であり, また顧 客の要求事項として組織に提示される場合もある.いずれにしても,組織の FSMSの意図した成果を阻害する要因であり,いつそういった被害に遭うか もしれないという不確かさの影響を考慮することは意味あることと考えられ る。
6.2 食品安全マネジメントシステムの目標及びそれを達成するための計画 策定
6.2 食品安全マネジメントシステムの目標及びそれを達成するための計画策定 6.2.1 組織は,関連する機能及び階層において,FSMSの目標を確立しなければなら ない。
FSMSの目標は,次の事項を満たさなければならない. a)食品安全方針と整合している. b)(実行可能な場合)測定可能である. c)法令,規制及び顧客要求事項を含む,適用される食品安全要求事項を考慮に入れ る。
d)モニタリングし,検証する。
e)伝達する。
0 必要に応じて,維持及び更新する. 組織は,FSMSの目標に関する,文書化した情報を保持しなければならない
=規 格解説 “マネジメントシステム”(3.25)の定義に“目標及びその目標を達成するた めのプロセスを確立する”とあるように,マネジメントシステムと目標は密接 な関係にある。
FSMSの目標をマネジメントシステムの適用範囲内にある組 織の機能及び階層において確立することを要求している。
これは全ての機能及 び階層で目標を確立するという要求事項ではなく, 日標を達成するための計画 を策定する場合に,その責任を負う機能及び階層が必要であること意味してい る.ここでいう“機能及び階層”とは,一般的には組織内の部署のことである。
FSMSの目標の要件が示されている。
a)“ 5.2方針”で確立した食品安全方針と整合している。
b)取組みの進捗や結果が測定可能である。
“測定”(3.26)の結果として値 が得られることが定義からわかる.これによって目標は“パフォーマンス” (3.33)と関連していることがわかる。
ただし,これには“実行が可能な場 合”とあり,測定できない目標も容認されている。
c)組織が提供する製品に適用される食品安全要求事項を考慮に入れる。
こ れは法令・規制要求事項,顧客要求事項などである。
d)モニタリングする.これは目標の取組みの活動状況を把握することを意 味し,測定することも含まれる。
検証する。
これはモニタリング結果の正しさ を確かめることを意味する。
e)伝達する。
これは, 日標の取組みや進捗状況を関係者に伝えると同時 に,必要に応じてこれらの関係者から意見を集めることであり,双方向のコミ ュニケーションが成立していることを意味する。
0目標を維持及び更新する.これは,一旦確立した目標であってもその適 切性を見直し必要に応じて改訂することを意味する。
目標に関しては,文書化した情報として保持する必要がある。
どの程度まで 詳しい内容を文書化するかについては規定がないが,“ 6.2.2″にある事項が最 低限の文書化する内容であると考えられる. 6.2.2 組織は,FSMSの目標をどのように達成するかについて計画するとき,次の事 項を決定しなければならない。
a)実施事項 b)必要な資源 c)責任者 d)実施事項の完了時期 c)結果の評価方法 =規 格解説 FSMSの目標を達成するための計画として,あらかじめ決定しておかなけ ればならない事項は次のとおりである。
a)実施事項.目標として何を実施するかであり,これは“6.2.1″のa)か らc)と関連する。
b)必要な資源.目標の取組みを進めるに当たって必要な資源であり,これ は人,物,情報,資金の四つの面から検討が必要である。
c)責任者.目標達成に責任をもつ人である. d)実施事項の完了時期.いつまでに終わるのか,また目標達成に至る途中 段階(いわゆる,マイルストーン)を設定して,その完了時期を含めて計画す ることもある. e)結果の評価方法.取組みによって目標が達成できたかどうかの結果を判 断する必要がある。
そのためには, ① 目標によって達成すべき結果とは何か[6.2.1のb)と関連する.] ② その結果をどのように把握するか[6.2.1のd)と関連する。
] ③ 把握した結果をどのように評価するか という3段階の計画が必要である。
前項で説明したように, 日標達成に至る
途中段階を設定している場合は,いわゆる進捗管理として,それぞれの途中段 階で①,②,①の計画が必要となる。
進捗管理の段階で, 日標そのものの適切 性のレビューを行う場合もあるが, これは6.2.1の0と関連する。
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具体的な考え方《6.2》 IS0 9001における品質目標,IS0 14001における環境目標と同様の位置 付けのものであるが,“食品安全目標”と呼ばない理由については,“ 目標” (3.29)の解説を参照するとよい(61ページ). 具体的に何を目標として設定するかについて,規格からは, ① FSMSによって達成すべきもの[目標の定義(3.29)] ② 食品安全方針と整合したもの[6.2.la)] という情報しか得られない.逆にいえば,これらを満たす範囲であれば, 日標 とするテーマについての自由度は大きいといえる. 6.3 変更の計画 6.3 変更の計画 組織が,人の変更を含めてFSMSへの変更の必要性を決定した場合,その変更は計 画的な方法で行われ,伝達されなければならない。
組織は,次の事項を考慮しなければならない. a)変更の目的及びそれによって起こり得る結果 b)FSMSが継続して完全に整っている。
c)変更を効果的に実施するための資源の利用可能性 d)責任及び権限の割当て又は再割当て =規 格解説 FSMSのある部分について,変更の必要性が明らかになった段階で,変更 が計画的な方法で実施され,かつ関係者への伝達が計画的に行われることを要 求している。
変更に当たって考慮する事項は次のとおりである。
a)変更の目的及びそれによって起こり得る結果,変更の目的を明確にしな ければならないのは当然ではある。
“変更によって起こり得る結果”とは,変 更によるリスクである。
変更に伴う事故を未然防止するためには,リスクを事 前に検討し,必要な対応を計画することを考慮する必要がある。
b)FSMSが継続して完全に整っている。
これは,変更を行う際にFSMS の完全性が失われてはならないということを意味する。
その目的は,変更箇所 がFSMSの対象外となることにより,結果的に食品安全上の問題が発生する ことを防ぐことである. c)変更を効果的に実施するための資源の利用可能性。
これは,変更を実施 するに当たって必要な資源であり,人,物,情報,資金の四つの面から考慮す る必要がある. d)責任及び権限の割当て又は再割当て。
これは,変更を実施するための責 任者を割り当てること,及び適切な人に変更の実施に必要な権限を与えるこ とを意味する.上記のa)からc)を理解した人又はチームに割り当てられるよ う, また割当ての適切性に問題があるときは,再割当てを考慮することを要求 している. なお, “8.1運用の計画及び管理”に,計画した変更を管理する要求事項が ある。
=具 体的な考え方《6.3》 変更に関しては,“7.4.3内部コミュニケーション”にa)からm)に具体的 な事項が並んでいる。
また,“ 8.9.3是正処置”及び“10.1不適合及び是正処 置”において実施される是正処置もシステムの変更を伴うことがある.これら 以外にも,“ 9.3.3マネジメントレビューからのアウトプット”にある食品安 全システムの更新及び変更,“ 10.2継続的改善”にある改善,及び“10.3食 品安全マネジメントシステムの更新”, これらは全てシステムに何らかの変更 を伴うため,変更の必要性を決定した時点で“6.3変更の計画”の要求事項の 適用を受ける。
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