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自己管理の基礎

これまでにも述べてきたが、物事をストレスなく、最大効率で進めていくためのキーワードは次の2つだと私は考えている。

  1. (状況の)コントロール
  2. (将来への)見通し

個人や組織の生産性に関する限り、この2つを満足できる水準に保てるようになれば、他にやることはほとんどなくなるはずだ。

そのとき、あなたの整理システムは完璧に動作しており、今、何に注意を向けるべきかを自信をもって選択できているはずだ。

目指すべきはこの状態で、あとはそのどちらかが失われた場合にどうすべきかを知っておけばよいだけだ。

「(状況の)コントロール」と「(将来への)見通し」という2つのキーワードは密接に関連しているが、それを達成するためのアプローチは異なっている。

例えば料理で考えてみよう。

キッチンがごちゃごちゃしているとき(状況がコントロールできていない状態)は、調理器具や食器類を片付けてきれいに整理する必要がある。

一方、何を作るかまだぼんやりとしか決めていないとき(将来への見通しが定まっていない状態)は、食材を何にするか、盛り付けはどうするか、を考えなくてはいけない。

言うまでもなく、素晴らしい料理を作るには状況をコントロールし、何を作るかの見通しも定めなくてはいけないが、それらを達成するためのアプローチはこのように異なっている。

しかしながら、どちらも密接に関連しているし、どちらかが欠けているようでは問題がある。

のちに詳しく述べるが、状況をコントロールしていくには5つのステップが、将来への見通しを定めていくには6つのレベルで物事を俯跛する必要がある。

これらの知識を身につけ、適切な場面で適切な方法を用いていくことで、あらゆる物事を効率的に進めていくことができるようになる。

またそれぞれの要素には、その効果を最大限に引きだすためのテクニックが存在する(あとで具体的に紹介していく)。

なお、それぞれの要素は密接に関わり合っているので、1つでも効率の悪い部分があると生産性はその水準にまで引き戻されてしまう点に注意しておいてもらいたい。

目次

自己管理の4つのエリア

「状況のコントロール」を横軸に、「将来への見通し」を縦軸にとった表は、あなたの現在の状態を理解し、事態を改善していくための方法を知るために役に立つだろう。

言うまでもなく、最も良い状態は両方が高い水準にあるときだ(右上のエリア)。私はこの状態にいる人を「キャプテン&コマンダー」と呼んでいる。

将来をしっかりと見据えつつも、手元の状況を完全にコントロールしている状態だ。

船のキャプテン、軍の司令官を想像するとよいだろう。優れた船長は地平線を遠く見渡しつつも(将来の見通し)、ゆるやかに自信を持って舵を操作(状況のコントロール)していくことができる。

ただ、これ以外のエリアにいる人がまるっきリダメだということではない。最高性能の車に乗っていても道から逸れることはある。優れたビジネスパーソンでも、コントロールや見通しがぐらつくことは珍しくない。

ただ、「キャプテン&コマンダー」ではないエリアに長くとどまりつづけている人は注意が必要だ。

前ページの表で言うところの被害者、細かすぎるマネージャ、空論家になってしまっている可能性が高いからだ。

ただ、それらのエリアにいる人でも、試行錯誤しながら前に進もうとしている場合は対応者、実践者、理想家と呼ぶこともできる。

このように「キャプテン&コマンダー」以外のエリアでは、良い面と悪い面が存在する。以下ではその違いについて詳しく見ていこう。

被害者

状況のコントロールも、将来への見通しもほとんどままならない状態が左下のエリアだ。自分では何もできずに、外的な要因に振り回されてばかりおり、いわば嵐の中にいるような状態だ。

程度の差こそあれ、効率的に物事をこなそうと思っている人にとっては、危機的な状況にある。状況を完璧にコントロールすることからは程遠く、ぱつと目についたものや、突発的に降ってきた仕事にしか対処できていない。

メールや留守電をざっとチェックするのが精一杯で、後回しにできるほとんどのものを後回しにしてしまう。

次々に発生するタスクを処理しきれず、どんどんと遅れが生じ、今まで後回しにしていたものが急に大きな問題となって目の前に立ちはだかることも多い。

このエリアにいる人はなんとか船が沈まないように必死にもがいているとも言える。

とりあえず船が転覆しないという確信が持てない限り、どちらに進んでいるのだとか、そもそもどこに行こうとしているのか、などを考える余裕もない。

身の回りの整理や将来の目標を考える時間など到底とれないために、前に進んでいるという感覚さえほとんどない。

このような状態では、切迫した状況が突如発生するとたいへんなストレスを抱えることになる。

友人たちのために夕食を作つていてソースを焦がし、使おうとしていた鍋が見つからず、指をうっかり切ってしまったときに、シャワーを浴びる時間がないと気づいてしまったようなものだ。

あなたはどうしていいかゎからずに絶望的な気分になることだろう。

または、新しい職場に移って慌ただしいときに、前任者がしくじっていた重要なプロジェクトの後始末を自分でしなくてはいけないことに気づいた場合もやはりさじを投げ出したくなるだろう。

こうした状態が長く続くと、やがてあなたはそういう危機的な状況にいること自体にも気づかなくなってしまう。

あまりに困難な状況なので、脳がそれを考えることを拒否しはじめ、心が麻痺してしまうのだ。私がこれまで出会つてきたビジネスパーソンの多くがこのような状態になってしまつている。

こうした人は、多少状況がラクな状態になつたときにはじめて、自分がいかにストレスにさらされていたかに気づくことになる。

ちょうど重力のように、なくなってみないとどれだけの負荷がかかっていたのかがわからないのだ。

対応者

状況のコントロールと将来への見通しが利かなくなつているからといつて、必ずしも悲観する必要はない。実際のところ、私たちは1日のうちに何度もこのエリアに迷い込むのがふつうだ。

私たちが日々の生活や仕事でやつていることの大半は、次々にやつてくる、処理しなければならない物事への対処だったりする。

チームで新たな目標を立てたとき、大きな変化に直面したとき、今はまだわからないが大きな可能性を感じる話が舞い込んできたとき、私たちはそれらに対応せざるをえない。

ただ、知っておくべきは、事態に対処していくということには悪い面ばかりではなく、良い面もあるということだ。

ベンチヤーを立ち上げたばかりの起業家もそうだろう。

彼らは次々と物事に対処していくうちに、予想もしなかつた成功をおさめることもある(逆に一気にどん底に突き落とされることもあるが)。

ビジネスランチで誰かと一言交わしただけで大きなチャンスをつかむこともあるのだ。

たとえすべてのことがうまくいつていたとしても、一時的に状況をコントロールできなくなったり、将来への見通しが効かなくなることはよくある。

そしてやろうとしていることが情熱を傾けていることであればあるほど、そうした一時的な状況から復帰するのには大きなエネルギーを必要とすることも覚えておくとよいだろう。

遠い彼方まで旅をするロケツトの燃料の大半は軌道修正のために使われている。大きなことをやろうとすると、思いもよらぬ問題が起こるものだ。

ロケットが軌道からずれることをあらかじめ理解したうえで、復帰するためのエネルギーも確保しておく、という仕組みをつくっておこう。

こうした状況に対して、「被害者」となるか「対応者」となるかはあなた次第である。

例えば、本書を執筆している現在、私は多少落ち着かない気分になっている。今朝のミーティングでクライアントからたいへん興味深い提案を受けたせいである。

この提案が私たちにとってどのような意味を持ちうるのか、どうすればこのチャンスをうまく活用できるか、今取り組んでいる数々のプロジエクトとどう関連づけるべきか。そうしたことが少々わからなくなってきているからだ。

つまり、新たなプロジエクトに関しては見通しが定まっていないのだ。こうした事態に直面したときにどう見通しを定めていくか、そのテクニツクについてはあとで述べていきたい。

細かすぎるマネージャ

状況のコントロールはできているが、将来への見通しが定まっていない人がこのタイプである(表の右下のエリア)。システムや手続き、形式などにこだわりすぎている状態だ。

彼らは必要以上に整理や管理をしすぎてしまい、結果として機能性が著しく低下してしまっている。

たとえるならば、経理担当者が細かいところまで管理しすぎて、新規事業開発や基礎研究などの費用が削られ、会社の勢いがなくなってしまうようなものだ(そうなると、そのうち経理をする必要さえなくなってしまうかもしれない)。

上場企業で言うならば、4半期の業績や株価だけにこだわるあまり、長期的な成長が見込めなくなってしまい、会社の存続そのものが危うくなっている状態である。

もう1つの典型的な例は、整理されていないものがない状態を達成することに一所懸命になりすぎて、何も生産的なことを成し遂げていない人だ。

彼らは1日中、ペーパークリップを補充するシステムの構築に時間を費やし、本来やるべきことに時間を使えずにいる。

彼らはいわば細かいコントロールをしすぎて、本来やるべきことのコントロールができていない、という皮肉な状態に陥っている。

ゴルフクラブをあまり強く握りすぎるとスイングをコントロールできなくなるし、子どもを厳しすぎるルールで縛りつければ反抗されてしまう。

手続きや形式がガチガチに固まっていると、創造性や柔軟性、勢いなどは失われてしまうのだ。

いつもこうした状態にいる人も多いが、一時的にそうした状態に陥ってしまう人も多い。

あなたも、日の前にある気の乗らないタスクをいやがるあまり、身の回りのこまごまとした整理に没頭してしまった経験があるのではないだろうか。

メモを整理したり、フオントをいじつたり、プリンタ用紙を補給したりして気を紛らわし、最後には「気分転換に」ソリティアで遊んでしまつた、という経験がある人もいるかもしれない。

どこまで形式や手続きにこだわるべきか、というのはなかなか難しい問題だ。

この半世紀で世に出てきた時間管理術のほとんどは、基本的には形式にこだわりすぎているのではないか、と私は感じている。

あるシステム手帳では15分刻みのスケジュールを管理できるが、これはそれを考案した弁護士が顧問料の計算をしやすくするためにそうしただけだったりする。

「今日のToDoリスト」が機能したのは世の中のペースがゆるやかで、朝に書いたToDoが夜になってもそれほど変わらない場合だけである。

変化の激しい現代では、もっと柔軟な仕組みが必要なのは言うまでもない。

形式にこだわるあまり、本来追求すべき機能性を忘れてしまってはならないのだ。

GTDを活用するためのさまざまなアプリケーションを作っているエンジエアたちにも同じことが言える。

たしかに機能や技術は最新鋭のものだが、それにこだわるがゆえに実用的な柔軟性を欠いている場合も多い。

ある機能を使いこなすために、ユーザーに、本来使わせるべきではない精神的なエネルギーを浪費させてしまつてはいけないのだ。

実践者

もちろん、ある程度の形式や手続きは定めておくべきである。実際、我々の生活や仕事は、他の人が決めた形式や手続きを活用することにほとんどの時間が費やされている。

ただ、それらは物事を達成するために存在しているのであって、それを作るのに没頭しすぎてしまって、本末転倒な状態にならないように気をつけたい。

ただ、形式や手続きを作ることを優先させなくてはいけない場合もある。それは自分がさらなる成果を達成するために、新しい仕組み作りをしなくてはならないときだ。

問題は、そうした仕組み作りに集中しているときには、同時に長期的な見通しについて考えることが難しいという点だ。針に糸を通しながら人生の目的について真剣に考えられる人はいない。

あなたが優秀なビジネスプロフェツショナルならば、ある程度までは同時に物事を考えることができるかもしれない。

しかしそうだとしても現代の複雑な社会においては、作業をしながらすべてのプロジェクトについて考えをめぐらすことなどできない。私たちの頭はそういうふうにはできていないのである。

したがって、そうした仕組み作りを終えたら、速やかにその作業から離れて将来の見通しに意識をシフトさせることが重要だ。

本来の目的を見失わずに、いつ視点を切り替えられるかが、高い生産性を発揮していくための鍵となる。

そして自分が作りあげた仕組みがさらなる成果に向けて再び整備が必要となったときには、すばやく意識を切り替えて即座にそれを見直し、新たな視点から物事をとらえられるようにしておこう。

空論家

将来への見通しがしっかりしていても、状況のコントロールができていないケースもある。

このエリア(左上に位置する)にいる人々は、その人ができることの量から考えると不釣合いに多くのアイデアを抱え込んでいる。

自分が使えるリソースを考慮せずにいろいろなものに手を出したがり、周りの人にも気まぐれな指示や要求を出して混乱させるタイプだ。

彼らは高い生産性を発揮できる仕組みやシステムをまだ構築していないため、自分が生み出した創造的なアイデアをすべて取り込んでさばいていける状態になっていない。

極端なケースでは、常に注意散漫で、まったく特定のことに集中できない人さえいる。

そこまで深刻ではないにしても、さまざまなことに手を出してしまい、自分自身や他の人に対して守れる以上の約束をしてしまう人も多い。

私はこのエリアにいる人を「新しもの好き症候群」と呼んでいる。

実際のところ、私自身がよく陥ってしまうエリアでもある。

私は目の前に魅力的で目立つものがあると、すぐに気になって目がいってしまう。

「最新―」「大流行―」といったものに目がないのだ。

ドーナツでもメールでもアイデアでもそうである。

たいていのことは我慢できるのだが、この手の誘惑にはからつきし弱い。

やっかいなのは、そうしたものが目に入ってきたり、意識に入つてきた瞬間に気になりはじめてしまう点だ。

私自身がGTDを必要としている主な理由の1つは、この誘惑に打ち勝つ道具が欲しかったからとも言える。

理想家

もちろん、将来に意識を向けることは人間にとって当たり前のことである。私たちの脳は、常に結果や目標をイメージするようにできている。

部屋を出ようと思ったその瞬間に、脳は部屋から出ている自分をイメージしている。

そしてその結果(部屋から出ている自分)と現状(部屋から出ていない自分)の矛盾を解決しようとして、立ち上がり、動き出すという指示を身体に送っているのだ。

このように、程度の差こそあれ、私たちは常に将来への見通しを定めようとしている。

今まで私たちが指導してきた経営幹部の多くは、このエリアに位置する人たちだった。

将来のビジョンを描く能力に長け、新しい分野を開拓し、人々を導くことで成功をおさめてはいるものの、周りの状況をうまくコントロールできていないことにも気づいている。

こうした人々は他の人の助けを借りてでも状況を改善しようとする意欲的なタイプであることが多い。

そう考えるとこの状況がまったく悪いというわけではない。

ときには状況のコントロールを気にせずに自由に発想すべきである。

そうすることでマンネリ化した習慣に新しい風を吹き込み、新しい場所に行ってみたり、新しいことにチャレンジしてみたくなるはずだ(もちろん、あまりに度がすぎるのは問題であるが)。

キャプテン&コマンダー

自己管理で理想的なのは、状況のコントロールが完璧にされており、なおかつ、将来への見通しも定まっている状態だ。

この境地に至ることができると、突然降つてくる物事にもスムーズに対処できるようになり、自分自身の意思で、今やっていることに集中できるようになる。

その世界では物事は流れるように進んでいく。腕のよい船長が水平線をしつかり見据え、波や風を見極めながら冷静に船を導いていくように、このエリアにいる人は物事をゆったりと効果的に進めていくことができる。

彼らは進路をきちんと維持できており、少しでも道を外れたときには速やかに軌道修正することができる。この状態になれば、やらなければならないことに追われている感覚はなくなっていく。

プライベートも仕事も同じやり方でスムーズにこなせるようになり、ライフワークバランスといつた問題に悩むこともなくなる。平常心を保ちつつ、冷静かつ大胆に物事をこなしていけるのだ。

庭いじりをするときも、猫と遊ぶときも、座って考えごとをするときも、難しいことを上司と相談しているときも、この状態になることは可能だ。

とはいえ、誰もが簡単にこの境地に至れるわけではない(もしそうなら最高だ)。

カギとなるのは、機能性や形式、ビジョンと実行、柔軟性とルールの間のほどよいバランスを見つけ、維持していくことだ。

「空論家/理想家」タイプの人の多くは、「細かすぎるマネージャ/実践者」のやり方を嫌っている。

彼らはリスクを負ちて大きな成果をあげたいので、細かいところまで管理されてはたまらないと感じているからだ。

一方、「細かすぎるマネージャ/実践者」タイプの人も、「空論家/理想家」を敬遠しがちだ。

彼らのようにさまざまなことに手を出しては、今のような安定した状態を維持できないと感じるからだ。ただ、これはどちらか1つを選ばなくてはいけない、といった類の問題ではない。

多くの人はそのように考えているようだが、形式やルールを無視してビジョンは描けないし、日標を無視した枠組みもありえない。道路にセンターラインが引かれていなければ、運転中に自由に考えをめぐらせることはできない。

一方、車線や標識が多すぎても、車はスムーズに流れなくなる。だが、これらには適切なバランスが存在する。

形式や枠組みなどの仕組みで状況をコントロールしつつ、壮大なビジョンを描くことで未来への見通しを定めることは同時に達成可能なのだ。

そして絶妙なバランスでそれらが両立できれば、すべてが最高の状態で物事が進んでいくはずだ。

ネガティブなケース

このエリアには悪い側面などないように思えるかもしれない。実際、自己管理の観点からすれば、これ以上改善すべきことはないように思えるだろう。しかしGTDは現実に即した理論だ。

このエリアにいたとしても、GTDを機能させるために気をつけるべきことが1つある。

それは、今はすべてが機能している状態でも、その状態を維持するために必要なことを見落とさないように注意しよう、ということだ。

本書を読み進めていけばわかるが、誰でも4つのエリアを行ったり来たりする。流れに乗った車でも、突然急カーブにぶちあたることがある。もしくは前方で事故が起こればスピードを落とさざるをえない。

たとえすべてがうまくいっているようでも、将来起こりうる危機的状況を予測して今から対策を練ったり、現状に満足することなく、マンネリ化した生活や仕事を打破するために新たなビジョンを描くことが大切なのだ。

うまくいっていれば対処しなくてはならない物事は増えはじめるだろう。そうなると、いずれはそれらに対応するための新たな仕組みが必要になってくる。

私がここで言いたいのは、完全に流れに乗っていると感じている「キャプテン&コマンダー」タイプの人でも、未来に起こりうる可能性に対して十分な備えができていない人もいるということだ。

状況のコントロールと将来への見通しが今はうまくいっているからといって、いつまでもそれが維持できるわけではない、ということを知っておこう。

4つのエリアは相対的なもの

すでに述べたように、誰もが4つのエリアのどこにでも行く可能性がある。

あるときは「キャプテン&コマンダー」でも、すぐにまた「細かすぎるマネージャ/実践者」になってしまうこともしばしばである。ただ、人によつてある程度のパターンはある。

ある種の性格の人は、他の人に比べてある特定のエリアにいることが多い。また取り組んでいることによって、自分がどのエリアに位置するかが異なることもある。

例えば、いくつかの分野やプロジェクトについてはしつかり状況をコントロールできていても、他のことに関してはまつたくコントロールできていないこともある。

机の上はきちんと整理されていても、ジムのロッカーはひどい状態だという人もいる。プライベートはうまくいっているのに、仕事に関しては目も当てられない状態になっている場合もあるだろう。

将来への見通しについても同じことが言える。来年の目標ははっきりしているが、将来やりたい仕事の内容についてはあいまいという人もいるだろう。

毎日のスケジュールとToDoリス卜がちゃんとしていても、今やっていることが最終的に目指している仕事とどうつながるのかはっきりわかっていない人もいるはずだ。

逆に、人生の目的ははっきりしているけれど、短期的にやっておきたいプロジェクトをすべて把握できていないケースもある。

自宅の庭に関しては「空論家」で、ゴルフに関しては「細かすぎるマネージャ」といつた状況がありうるだけでなく、それらの状態は簡単に別のエリアに移動しうる。

仕事を問題なくこなせている人も(キャプテン&コマンダー)、はりきりすぎて雲をつかむようなプロジェクトに手を出せば、大惨事に陥る可能性もある(空想家)。

管理できていないところをしらみつぶしに潰しているうちに(細かすぎるマネージャ)、次々と押し寄せるタスタの波に翻弄されてしまっていると感じるケースもあるかもしれない(被害者)。

けれども次の日の朝には再び現状を認識することで持ち直し(対応者)、目指している方向をしっかり意識しつつ(理想家)、プロジェクトの計画にもとづくToDoを書き出し(実践者)、再び人生が好転しつつあることを意識することで、ゆったりとパートナーを夕食に誘えるようになる可能性もある(キャプテン&コマンダー)。

私たちの人生には、ほとんど無限と言ってよいほどのさまざまな状況があり、それらのコントロールおよび見通しには常に改善の余地があるということだ。

そして現在あなたが4つのエリアのどの位置にいるかを認識することが、改善への手がかりとなる。

状況によって、コントロールを向上させないといけない場合、見通しを定めないといけない場合、あるいはその両方が必要な場合がある。

どのケースにおいてもGTDの理論の異なる部分を紐解いていかなくてはならない。

気になっていることに注意を向ける

状況をコントロールし、将来への見通しを定めつつ、効率的に物事をこなしていくには、まずどこから手をつけるべきかを見極めることだ。ただし、あまり遠くに目を向ける必要はない。

通常、最も注意を向けなければならないのは、現在最も気になっていることだ。

あなたは心の中にさまざまな「気になること」を抱えているが、それらがそこにとどまる限り、最大効率で物事を進めていくことはできない。

それらが何かを見極め、その状態から心を解放するには、コントロールや見通しの度合いを改善していかなくてはならない。重要なことであっても、あなたにとって気になるものとそうでないものがある。

では、その違いはなんだろうか。

おそらくあなたが気になっているものは、まだ意味が曖味で、それらに対してどういう行動を起こすべきか決めかねているものだ。

求めるべき結果が定まっておらず、次にとるべき行動がはっきりしていない限り、それらは心にとどまりつづけてしまう。

こうした「気になっているもの」から心を解放するには、状況をコントロールするための5つのステップが役に立つ。

最初のステップは頭の中にあることが何かを見極め、意味をはつきりさせることである(詳しくは次章で述べる)。

ここで私の言っていることを「ああ、ToDoリストを作ればよいのだな」と思う人もいるかもしれない。確かにそうなのだが、たいていの人のリストには、本来書くべきことの一部しか書かれていない。それでは状況をコントロールし、見通しを定めていくには不十分だ。

ToDoリストに何かを書き出したとしてもまだ何かが気になっているとしたならば、その書き方にはまだ改善の余地があるのだ。

気になっていることに注意を向け、適切に対処をしていかないと、必要以上にエネルギーを浪費してしまう。

あなたの集中力を妨げるこうしたことは、電話のベルのようなものだ。対処しなければならない状況が、あなたに電話をかけているのである。あなたが出なければ電話はずっと鳴りつづける。

しかし、あなたが受話器を取って、伝えられたことに適切に対処すれば、もう電話はかかってこない。

そして電話の用件が重要であろうとそうでなかろうと、同じように電話は鳴る。無視すれば電話は鳴りつづけ、他のことにきちんと対処できなくなる。

あなたの集中を妨げるという意味においては、すべてが同じように重要で平等なのだ。それらを適切な方法で排除していく方法を身につけることが、効果的な自己管理に不可欠だ。

心の中で鳴りつづける電話のベルを無視していくこともできるが、あまり賢いやり方ではないだろう。いつかは片付けなければならないものなら、今やってしまうことだ。

すぐに片付けられないなら、あとで対処できるように、信頼できる整理システムに預けておこう。あとで紹介していくが、こうした信頼できる整理システムは絶対に必要だ。

効果的なシステムがあれば、状況をコントロールする際の努力は最小限で済む。幸いなことに、これらの気になることを頭から追い出す手順は、大きなことでも小さなことでもまったく同じだ。

それがなんであれ、意識的に気になることに注意を向け、ある決まった手順で対処していこう。

本書で解説していく原則にはそれぞれに効用があるが、それらは人生や仕事のあらゆることに平等に適用したときに最大の効果を発揮する。

気になることが出てきたときにそれに注意を向けるようにしないと、いつまでも「キヤプテン&コマンダー」の状態になることはできない。

あなたの心に負荷をかけているすべてのことを意識的に見極めていこう。そして、それらをいったん頭の外に出して効果的なシステムで管理することだ。頭の中に気になることを抱えていては、生産性を向上させることはできない。

優れたビジネスパーソンでも、「キャットフードを買う」といった、ささいではぁるが、気になることを頭の中に数十個以上抱えていることも多い。

そうした状態が続くと、そもそもそれらに対処しようと思うこと自体が面倒になり、じわじわとストレスや罪悪感を味わうようになる。

何から手をつければいいかわからないときは、まず、それらに注意を向けて、何が気になっているのかをはっきりさせるべきだ。

自分が抱えていることを、テーブルの上にすべて出してみよう。

私自身、クライアントを指導しているときに、どこから手をつけていいか皆目見当もつかない状況を幾度となく経験してきた。

だが、時が経つうちに、どんなときでもうまくいくテクニックが1つだけあることに気づいた。

そのテクニックとは、その状況について「今、確実なことは何か」と問いかけ、可能な限り思いつくことを書き出してみることだ。

GTDが常にうまくいく理由もここにある。

多くの自己管理手法は、理想的な「優先度」「戦略」「価値観」からスタートするトップダウンのアプローチを提唱しているが、GTDではその逆のアプローチをとっている。

あなたが今、気になっていることを書いてみてください、といったときに「この世で果たすべき使命を達成する」と書く人はほとんどいない。

それはそれでよいことだが、ほとんどの人は「プリンタを直す」「週末のベビーシッターを探す」といったことを最初に思い浮かべるはずだ。

まずは目の前にあることから書き出していこう。

そうすれば、やがて高いレベルの目標もはつきりしてくるはずだ。

最初に浮かんでくるのはたいてい、手をつけるのを避けてきたメールだったり、明日の夜のためにベビーシッターを探すことだつたり、キャットフードを買うことだったりする。

そうした細々としたことに対処できていなければ、より大きな問題を認識する妨げになり、認識できたとしても、それに集中するための障害になってしまうだろう。

次章では、すべてを機能させるために必要な、最初のステップを見ていこう。

あなたが最初にやらなければならないのは、気になっていることをすべて書き出して、頭の中をすつきりさせることである。

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