また、人数が増えるにつれて起こるのが、他の職種同士の「文明の衝突」です。 エンジニアと営業、製造と営業、インサイドセールスとフィールドセールスとカスタマーサクセスなど、同じ会社で、同じ顧客に向き合っていても、つくる立場の人、売る立場の人、売った後にかかわっていく立場の人では、価値観や向いているベクトルが異なります。 組織を機能別に分業すると、それぞれが部分最適に陥る、いわゆる「タコツボ化」が起こり、互いの考えが食い違ってくるのです。 それゆえに、「営業が売れないのは製品が悪いからだ」「いい製品をつくっているのに営業力がないから売れないんだ」などと衝突が起こります。 ただ、私がコンサルタントやベンチャーキャピタリストとして、多くの組織を見ていてもどかしいのは、「文明の衝突」を起こしている人たちを一人ひとり見ていくと、ほとんどの場合、悪い人はいないということです。 営業が「商品力をもっと上げてくれたら売れるのに」、製造が「営業が売ってくれたらより元手が増えるので、もっと良いものをつくれのに」と主張するのは、なにも組織を崩壊させたいからではありません。自分たちの組織を良くしたいと思っての発言であり、「全体のゴールを達成するうえで、自分たちだけでなく、他の業種も頑張ってほしい」と言いたいだけなのですね(*)。「タコツボ化」は組織が大きくなるほど起こるので、大企業でよく見られる現象ですが、スタートアップでも驚くほど多く起こります。
大企業だと衝突しながらも事業が動いていきますが、スタートアップにおける事業間のハレーション(摩擦)は、最悪の場合、船が沈むきっかけになりえますし、そもそも、そんなことに時間とエネルギーを割いている余裕はありません。 他にも、第 2章で述べたような「創業時からいるメンバーと、後から入社したメンバーの価値観のギャップがある」「中途採用メンバーの給料が高すぎると、創業時メンバーから不満が出る」といったことが理由で、入社年代による「文明の衝突」もたびたび起こります。よかれと思って組織を拡大してきた社長は、逆に拡大した組織に頭を悩ませることになるのです。 こうした組織の問題をいかに食い止めて、組織をよりよい形で回していくか。ここが、すべての社長が直面する経営の難しさと言えるでしょう。*機能を分けると、機能間でのぶつかり合いが起きるのは仕方がないこと。営業は「もっといいプロダクトをつくったら売れるのに」と愚痴をこぼす一方、開発の人は「ムチャを言うな」という構図はどの組織にも見られます。両者の意思疎通ができず、消えていったスタートアップは、成功したスタートアップの何千倍、何万倍とあるでしょう。
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