「うちは人件費係数がうんと低いが、社員にはびっくりするくらいの高給を出している。
その話が当てはまらない会社だ」と、ある勉強会で異議を申し立てる社長さんがいた。
「わたしのところでは、賞与なんて不安定要素だから、年四・五カ月分の賞与をやめて
一二等分して全部基本給に加えて、支給している。だから月額の給与はヨソよりうんと高く
て、社員に喜ばれているが、係数でいうとその四・五カ月がなくなるから大幅に下がってし
まう。おかしいではないか」というような疑間であった。
人件費係数は、それぞれの会社の事情によって、社長が決めればよいことである。社員構
成の違い、たとえば女性の多い会社では、ただ賞与を上げるだけではなく、お稽古事などに
会社が補助を出してあげた方が喜ばれる場合には、福利厚生の比率を高める。男ばかりであっ
たら、いっそ福利厚生はやめてしまって、とにかく給料と賞与でいく、というように、社長
がベストな行き方を決めることである。たとえ人件費係数が高くても、肝心の給料が不当に
安い、というケースも考えられるから、単純に一八は低くて、二〇なら合格ということでは
ない。世間水準の給料を前提に、あえていえば、人件費係数が二〇前後であればそこそこの
数字といってよいだろう。ここで大事なことは、係数の絶対値が高いか低いかではなくて、
給料ベースを上げ、同時に、人件費係数も上げていかなければ、社員の生活向上につながら
ないということなのだ。
そこで、まず自社のここ数年の人件費係数をはじき出してみていただきたい。
どのような傾向を示しているだろうか。給料ベースを世間並以上に上げていて、なおかつ
人件費係数も上昇していれば、社員の幸福を考えて確実に手を打っている会社といえよう。
当初の人件費係数が低くてもかまわない。そこに社長の方針を入れて、係数の経過をみるこ
とが重要なのである。
給料ベースは当然に上げていく。なおかつ、人件費係数も上げていく。社員の生活向上は
給料だけではない。給料と会社全体の人件費係数の両方を、調和よく上げていって、はじめ
て、「うちの社長はよく面倒をみてくれる。ありがたい」「わが社は、社員のことを大事にし
てくれる。やり甲斐がある」ということになるのである。
経営コストと人件費計画
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