企業が必要とする最小限利益とは、
二年間売上が横追いでも、
二年目で赤字転落しない額である。
会社はどんなことがあっても絶対につぶしてはならない。それが社会的責
任である。その社会的責任とは、 一つは「社会に富を貢献する」ということ
であり、もう一つは「社員の生活を保障する」ということである。
しかし、これは容易なことではない。様々な危険が、あとからあとから押
し寄せるからである。これらの危険を、次々と乗り越えてゆくためには、利
益が必要である。したがって、「利益とは事業を存続させるための費用である」
ということになる。こう考えてくると、「最小限いくらの利益が必要か」と
いうことになる。というのは、「企業があげられる最大限利益は、企業が必
要とする最小限利益より少ない」というのが現実だからである。では「その
最小限利益とはいくらか」ということになるが、 一倉式の考え方は、「三年
間売上が横這いでも、三年目で赤字転落しない額」というものである。
「経営の思いがけないコツ」より
大切なことは、
「コスト」ではなく「帆益」である。
コスト病というのは、会社の中で最も危険な病気の一つである。
必ず製品の質が落ちるし、 一番大切なものは「コスト」になってしまい、
お客様サービスにかかるコストなど真っ先に削られて、お客様をおこらせた
り信頼をなくしたりするのだ。
極端な場合には、コスト病が会社をつぶしかねない程恐ろしいものなので
ある。いま時の中小企業では、すでに削れる費用などは殆どない。多少のム
ダはクッションとして必要なものなのである。
大切なことはコストではなくて、「収益」なのである。コスト病患者には
このことは全く分からない。 一のコストを減らせれば、それによって一〇の
収益が減っても、コストにしか関心を示さないのである。
一倉定の社長学第3巻 「販売戦略・市場戦略」より
大きな収益に対しては少しの
費用しかかからず
小さな収益には多くの費用がかかる。
費用というものは、収益に応じて発生するものでもなければ、費用に応
じて収益が発生するものでもない。 一つには、社内の人々の活動状況に応
じて発生し、二つには投下された資本に応じて発生するものである。
それなるがゆえに、大きな収益に対しては少しの費用しかかからず、小
さな収益には多くの費用がかかることになるのである。
収益性のよい部門や商品に投入されている人件費も、収益性の悪い部門
や商品に投入されている人件費も、収益とは関係なく、人数に応じて発生
する。
そのために、収益性のよい場合の人件費は割安となり、悪ければ割高と
なる。店舗の維持費は、売上高に関係なく発生するがゆえに、売上が上が
れば割安となり、上がらなければ割高となる。
一倉定の社長学第5巻「増収増益戦略」より1
「経費節減病」というのは、
多くの会社で繰り返しかかる病気であり、
不景気や業績低下時に重症となる。
無為無策の社長の関心は「経費節約」である。それらの社長は、決算書
を見てもチンプンカンプンであり、損益計算書から低業績あるいは赤字と
知っても、打つ手が分からない。そこでのめりこむのが経費節約である。
経費に焦点を合わせて、これを節減しようとしても、よほど放漫な会社
を別にすれば、経費を五%節減しようとしたら、ほとんどの会社で日常活
動に大きな支障をきたすことはまず間違いない。
「経費節減病」というのは多くの会社で繰り返しかかる病気であり、不
景気や業績低下時に重症となる。しかし経費節減で成功した会社は世の中
にないのである。だから経費節減を試みるなどやめるべきである。
事業の経営というものは、経費をおさえるという消極的な態度ではなく、
売上を積極的に上げ、利益を大きくすることこそ肝要である。
経費をおさえることは極めて難しく、利益をあげる可能性は非常に多い
からである
*
費用は、単に経費という観点から見るのでなくその特性の分析から出発
しなければならない。
そのために、費用をその投入対象にしたがって、日常の繰り返し仕事の
管理に使われる「管理的費用」、「今日の収益」をあげるために使われる「販
売促進費」、「将来の収益」をあげるために使われる「未来事業費」の三
つに分類し、考え方を整理することが大切であり、それぞれの活動に対す
る基本的な方針を決め、推進することこそ、成果をあげる重要な態度である。
そして中小企業の大部分では、管理的費用は過大であり、販売費と未来
事業費はおそろしく少ないのである。このことは、事業の経営は企業の内
部を管理することだと思いこんでいる証拠である。
事業の経営は内部を管理することではなくて、市場と顧客に対する活動
なのであるという、正しい認識をもってもらいたいのである。
一倉定の社長学第5巻「増収増益戦略」より
事業は逆算である。
目標を定めずに成りゆき経営を行って、懸命に努力して、結果はどうな
ったのかは、決算書でみるというのでは、正しい事業経営などできるもの
ではない。
「事業経営は逆算である」ことを、社長は肝に銘じて、経営を行わなけ
ればならないのだ。
その逆算は、利益計画から始まる。つまり、「手に入れたい利益を目標
として設定し、その利益をあげるために必要な売上高を逆算する」という
ふうにである。
ところが、このことを知らずに、「まず可能な売上高を予測し、その売
上高にもとづいて利益を計画せよ」と教える人は数多い。これは計画では
なくて「計算」にしかすぎないのだ。
一倉定の社長学第2巻 「経営計画・資金運用」よ
会社の中のすべての数字は、
必ず「傾向」で見よ。
事業経営に最も必要な情報は、「傾向」であって「断面」ではない。…
会社の数字というのは、絶対額で見ることはいうまでもないが、それだ
けでは不充分なだけでなく、時には、判定の誤りをおかすことになるから、
心しなければならない。
絶対額は大切である。しかし、傾向というのは、別の意味では絶対額よ
りも大切であるということを忘れてはならないのである。
だから、会社の中のすべての数字は、かならず「傾向で見る」という態
度をとり、事態を正しくとらえ、正しい判定とそれにもとづく正しい決定
をしなければならないのである。
一倉定の社長学第5巻 「増収増益戦略」より
不況の時に、外注品を内製に勿り換え
なけ薇ばならないようならば、
わが社の事業に何か大きな欠陥がある。
内製するか外注するかは、単なる「コスト」の問題ではなく、高い次元の
戦略的視野からの決定でなくてはならない。‥・外注比率を高めると、売上
増大にも関わらず損益分岐点の上昇がわずかなので、外部要因の変化に対す
る弾力性が大きくなり、企業の安定度が増大する。…
どの会社を見ても、外注工場に対する明確な方針などはなく、外注担当者
が「内作で間に合わない部分だけ外注する」「小型外注のほうが安い」とい
う程度のことしか考えない。…
外注利用ほど、会社の安全性と収益性を同時に向上させるものはないので
あるから、社長は自らの会社の内外作区分についての、明確な方針と目標を
持たなければならない。
一倉定の社長学第5巻 「増収増益戦略」より
設備は現事業の強みではあるが、
いったん情勢が変わったらお荷物に
なってしよう危険を常にはらんでいる。
設備投資のまず第一の不利は、設備資金の金利、減価償却、維持費などの
増加と、設備を使う人の人件費などの固定費増加による損益分岐点の上昇で
ある。第二には、設備資金の返済による資金繰りの圧迫である。不況による
売上減少時などに、本当に骨身にこたえるという経験をお持ちの方は、相当
いる筈である。第二の、そして最も重大な不利は、変化に対応する機動力と
弾力性がなくなっていくことである。
設備は、これが順調に働いてくれてこそ武器である。働かない設備ほど始
末の悪いものはない。そしてその危険は常に外部にあるのだ。市場は変化する。
お客様の好みは変わってゆく。得意先の方針が変わる場合もある。いつ、わ
が社の設備でつくられた商品が陳腐化したり、あるいは全く売れなくなるか
分かったものではない。
一倉定の社長学第1巻 「経営戦略」よ
低収益商品を捨てる場合、そ沢に代わる、
より高収益商品がなければ、そ薇によって
得ら薇ていた付加価値分だけ、
会社の収益が減ることを忘沢てはならない。
企業の利用できる資源の効率を高めるには、低収益商品を切り、それを高
収益商品に投入する以外にない。‥。「捨て去る」ことの難しさは、現実に
は想像以上である。ところで、低収益商品を捨てるといっても、「どれが低
収益商品であるか」について、伝統的な全部原価計算でやると、とんでもな
い間違いを犯すのである。せっかくの意思決定も、その根本から間違っては
大変である。‥・低収益で赤字の商品でも、付加価値を生み出しているかぎり、
それを捨てると、それによって得られていた付加価値まで失うのだ。
一方、固定費はほとんど変わらないから、会社全体としてはマイナスにな
るのだ。だから、低収益商品を捨てる場合には、それに代わる、より高収益
商品がなければ、それによって得られていた付加価値分だけ、会社の収益が
減る、と思っていれば、意思決定を誤ることはないのである。
一倉定の社長学第7巻 「社長の条件」より
在摩が危険なのではない。
在庫に対する考え方がないのが
危険なのである。
在庫恐怖症にかかると、ただ、やみくもに在庫節減をするようになってし
まう。特に、経理担当者と社長が重症になる。困ったことには、経理担当者
は在庫節減こそ、会社の利益増大法だと思いこんでいる。それ以外のことは
何も知らないからだ。ここに危険が伏在する。如何に有効な販売促進も、経
理の「それは金利が高くなります」の一言でつぶれてしまうのだ。「いくら
金利が高くなるか」ということは計算せずに、である。
これは、経理担当者が悪いのではなくて、在庫の正しい考え方を勉強しよ
うとしない社長に全責任がある。在庫の正しい認識のないままに、ただやみ
くもに在庫節減をしようとする。だから、在庫を減らすシステムが開発され
たと聞くと、無批判にこれにとびついて売上不振という大やけどをすること
になる。
一倉定の社長学第1巻 「経営戦略」より
景気下降期に入った時、
まず手をうたなけ沢ばならないのは、
資金対策である。
景気下降期に入ったことが分かった時に、まず打たなければならないのは、
資金対策である。売上が下がってゆくのに、売上の多い時に振り出した手形
を落としてゆかなければならないからである。
まず、売掛金の回収をいそぐ。資財は当用買だ。不急の支出は一切止める。
新規設備投資は無論のこと、現在進行中の設備投資でも、中止できるものは
中止し、中止できないまでも延期するか、ピッチを落とす。場合によっては、
新入社員や欠員補充の削減、中止、延期が必要かも知れないのだ。
その上さらに、いち早く銀行にかけ合って、借金またはその約束をとりつ
けるのである。ただし、約束はホゴにされるおそれがあることも事実だが。
景気が上昇に転じた時には、他社にさきがけて行動をおこす。先手必勝の
原理である。
一倉定の社長学第1巻 「経営戦略」より
資金は、会社存統という面から見kば、
損益に優先する。
「利益が出ていること」と、「資金収支のバランスがとれていること」は
全く別のことである。…
資金は、会社存続という面から見れば、損益に優先するのだ。赤字をいく
ら出しても、資金が続いている限り倒産することはない。
反対に、いくら利益をあげていても、資金がショートすれば会社はつぶれ
てしまうのである。
社長たるもの、「資金は苦手」で済ますわけにはいかない。資金の実態を
知り、わが社の事業経営に必要な資金を計画し、調達し、運用しなければな
らないのである。
一倉定の社長学第2巻 「経営計画・資金運用」より
バランスシートは事業経営の結果
としてできあがるものでなく、
社長の意思によって
作りあげるものである。
バランス・シートこそ、事業経営のすべての結果を一表にまとめたもので
ある。
社長の評価もバランス・シートによって最終的に行われるのである。
それならばこそ、バランス・シートは事業経営の結果としてできあがって
ゆくものではなく、社長の意思によって作りあげるものなのである。この、
最も基本的な認識がほとんどどこにもないのである。
一倉定の社長学第1巻 「経営戦略」より
上手な資金繰りなどない。
工しい経営と正しい資金運用こそ、
資金繰りを円滑にする道である。
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一口にいって、「上手な資金繰りのやり方」なるものはない。不足資金は
割引手形か、借入金か、資産の処分しかないのである。
すべては事前の計画と管理によって、事前に不足をつかみ、事前に金融機
関に申し入れ、金融機関の融資を受けることしかないのだ。そのためには、
経営計画において資金運用計画をたて、それにもとづく運用管理をする。 一方、
金融機関に対しては、メインバンクを必ず決め、経営計画書と資金繰計画書
を必ず提出しておき、毎月実績の報告を怠らないことである。あとは金融機
関の人々との人間関係を円滑にすることである。…
資金繰りに、上手な資金繰りなどなく、小手先のテクニックは通用しない。
社長の正しい姿勢にもとづく正しい経営によって利益を生みだし、正しい資
金運用を行うことによって、資金繰りは自然につくものである。
一倉定の社長学第2巻 「経営計画・資金運用」より
経営計画書は、銀行の態度を変える。
銀行は金を貸すのが商売である。その銀行が一番心配するのは、貸すこと
ではなくて、返してもらえるか、ということなのである。つまり、返済能力
である。それを知りたいために銀行はいろいると手をつくす。しかし、頼り
になるのは、銀行用に粉飾しているかも知れない決算書と毎月のように変わ
る資金繰り表だけで、その会社の社長が何を考え、どのようにしようとして
いるかは、社長の話だけではさっぱり分からないのである。そこへ、経営計
画書が提出されたということであれば、銀行としては願ってもないことである。
この瞬間から銀行の態度が変わり、金を借りるのが楽になるのである。…
さらに、実績を毎月報告したら、もういうことなしである。状況のよく分
かっている会社と、分からない会社の、どちらに銀行は融資するか、いうだ
けヤボである。
一倉定の社長学第2巻 「経営計画・資金運用」より
会社は借金ではつぶ薇ない。
支払手形のみが会社をつぶす危険のある
唯一の資金調達法である。
ある会社にお伺いした時に、決算書を見せていただいたら、支払手形が受
わず
取手形と割引手形の合計より遥かに多額で短期借入金はごく僅かしかない。
なぜ、こんなことをするのかと聞いてみたら、「コンサルタントの先生が、
支払手形は金利のつかない資金調達法だから、借入金はなるべくすくなくし
て支払手形を増やしなさい、と勧告されたので」という返事である。いまだ
にもって、こうした阿果がいる。そして、これは危険極まりないことである。
支払手形には金利がちゃんとついているのだ。それは、買入価格の中に含ま
れているくらいのことが、どうして分からないのだろうか。会社は借金では
つぶれない。支払手形のみが会社をつぶす危険のある唯一の資金調達法である。
会社の安全を計るのが社長の最も大切な役割の一つであることは、いうまで
もない。それには支払手形を減らし、できればゼロにすべきである。
一倉定の社長学第1巻 「経営戦略」より
ある決定によって、そ択がど薇だけの
増収・減益になるかを工しく計算する方法は、
直接原価計算方式による「増し分計算」である。
「単位当たりの原価」という考え方をすると、すべての場合に間違ってし
まう。会社全体で変わらない原価を、単位当たりに割り掛けるのだから、単
位当たりの割り掛け金額が、数量によって違っているからだ。だから「単位
当たり原価」という考・え方は、きれいサッパリと捨て去らなければならない。
「原価がつかめないのではどうにもならないではないか」という心配は無
用である。つかめないのは「単位当たりの原価」であって、「会社全体の原価」
はつかめるのである。そしてその原価は、設備を増やす、又は減らす、人員
を増加する、又は減らす、というような何らかの変動がない限り、売上高が
変わろうと、商品構成が変わろうと、そんなことに関係なく常に一定である。
原価が変わらないのだから、利益を増大させるためには収益を増やせばよい。
これは個人の家計でも全く同じである。
一倉定の社長学第5巻 「増収増益戦略」より
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