マニユアルでマネジメントを行なう
マネジメントをしていく多くの段階で ・マニュアルは貢献する
◎マネジメントには仕事と人の管理がある
マネジメント(管理)の対象には「仕事」と「人」 があります。
「仕事」の面には「仕事の管理」と「仕事の改善」の 2つの側面があります。
また「人」の面には「職場の人間関係」と「部下の 育成」の側面があります。
マニュアルを通した「仕事の管理」「仕事の改善」 の実施、マニュアルを通した「部下の指導。
育成」の 展開が、マネジメントを行なううえで効果的となりま す。
マネジメントとは、 「組織の目的・目標 を達成するために、 最小のリスク(コス ト)で最大の成果を 得られるように経営 資源を最適に組み合 わせ、活用する」こ と >経営資源とは、「人 物・設備、金、時間 情報」のこと
◇「仕事の管理」では設計と運用に貢献 「仕事の管理」の側面では、マニュアルは仕事の設計 と運用に貢献します。
仕事の設計とは、職場の役割と任務を洗い出して、 それを業務(例:購買業務、クレーム対応業務など) としてまとめ、整理します。
次に、その業務を行なう 担当者を定め、業務を行なう手順を決め、業務が確実 に遂行できるようにすることです。
仕事の設計とは、このように仕事の標準化を図ると いうことであり、マニュアルの作成といってよいでし ょう。
逆にいうと、マニュアル作成のプロセスを通し て仕事が設計されることになります。
仕事の運用とは、マニュアルに定めたとおりの手順 で仕事を行ない、仕事の実施状況を確認し、問題があ れば処置することです。
◇「仕事の改善」では基準を提供 「仕事の改善」の側面とは、マニュアルという仕事の 標準がベースライン(基準)にあり、それを運用して 業務などを行った結果、マニュアルに問題があれば見 直しするということです。
このプロセスを通して、仕 事の質をレベルアップしていくことといえます。
◇「部下の指導・育成」ではテキストとなる 「部下の指導。
育成」の側面とは、文書化された仕事 の標準であるマニュアルをテキストとして用い、指 導・育成を進めます。
これにより、会社のベストプラ クテイスが確実に伝承されるとともに、受け手の業務 能力の向上を図ります。
◎マニユアルでマネジメントのスキルが高まる
職場をマネジメントするうえで必要な技能(スキル) は3つあります。
企画立案技能と業務処理技能、そし て対人関係技能です。
マニュアルを通じて、これら3つのマネジメントス
マネジメントで必要な技能とマニュアル
1.企画立案技能(CONCEPTUAL SKILL) 職場のリーダーは仕事のあらゆる場面で、プランナーとして企画を練 ったり、計画を立てる必要がある。
これを自ら立案。
作成する技能であ る。
時マニュアルで業務の進め方を整理する
2.対人関係技能(H∪ MAN SKILL) 職場のリーダーは仕事のあらゆる場面で、オーガナイザーとして、職 場の内外の協力を得る必要がある。
このコミュニケーションに関して必 要な技能である。
輸マニュアルがコミュニケーシ∃ン・ツール 3.業務処理技能(丁ECHNICAL SKILL) 職場のリーダーは、自分の仕事をこなすだけでなく、 トレーナーとし て同僚や部下に仕事を教えることは必要不可欠である。
この仕事を教え、 処理能力を高める技能である。
→マニュアルを用いて仕事を教え、仕事を処理する
これらの3つの技能は、マニュアルの作成と運用のなかで高 めることができるキルを高めることができます。
◎マニユアルにも功罪がある
マニュアルの「功」の面としては、マネジメントを 展開するときのツール、仕事の標準化と改善のツール としての役割などがありますが、他方、次のような面 でマニュアルの「罪」の面もあります。
●現状のマニュアルを絶対視し、マニュアルは進化 し続けるものだとの認識がない ●マニュアルをバイブルのように考え、どのような 状況でも、杓子定規にマニュアルどおりの接遇を するなど業務、サービスが硬直的になり、状況に 応じた仕事の進め方ができない ●仕事のやり方が硬直的になった結果、お客様との コミュニケーションも取れない これらのマニュアル「罪」の面は、マニュアルその ものにあるのではなく、マニュアルの活用の仕方の誤 り、またはマニュアルヘの偏見の結果です。
このようなことに陥らないように、マニュアルを活 用した仕事のあるべき進め方、改善活動におけるマニ ュアルの活用の効用(次章参照)などを教育する必要 があります。
状況に合わない接遇 をする人をマニュア ル人間という。
マニ ュアル人間がいると その担当者だけでな く、会社の商品、サ ービスや業務の質も 疑われる
マニユアルで改善活動を進める
マニュアルの作成は標準化であり、標準化は改善の第一歩となる
◎マニュアルにより日常管理を行なう
職場のリーダーが担う日常管理の管理対象は、多岐 にわたります。
管理対象には担当者や作業者の配置、仕事の配分、 仕事のやり方などの教育、日程計画の作成や進度管理、 設備の管理、安全管理などがあります。
さらには、定められたサービスの実施、品質の確保、 業務に投入する許容時間(標準時間ともいう)の順守、 納期の確保などもあります。
日常管理で行なうQCD(品質、コスト、納期)の 管理では、上記のような管理対象の仕事のやり方を標 準化するのがポイントです。
標準化とは、仕事のやり方のルールを定め、そのと おりに行なうこと、すなわち、標準化とはマニュアル の設定と運用といえます。
これにより、次のような管理をします。
●業務や作業の管理の面……標準作業手順や標準業務 手順をきちんと決めて守らせる ●在庫管理の面……標準在庫量や保管方法をきちんと 決めて守らせる●安全管理の面……安全服装や安全作業、機械や装置 の取扱基準を決めて守らせる
管理の方式は通常、 日常管理と目標管理 の2つに分けられる
ロ標管理とは「目標 による管理と自己統 制」のことで、1950 年代にアメリカの経 営学者ドラッガーの 著書『現代の経営』 のなかで初めて使わ れた
◎マニュアルで仕事を標準化して改善を進める
トヨタ生産方式では、職場の管理対象のすべてを標 準化しておき、これから外れたものを「異常または間 題(悪さ)」としてとらえて、重点的に管理(異常管 理という)します。
そして、なぜ標準から外れたのか、原因を追究して 改善・解決し、結果を新しい標準として設定します。
このような改善のやり方を「標準によるマネジメン ト」といいます。
「標準によるマネジメント」を徹底 することにより、職場の管理のポイントや職場のリー ダーの行なうべきことが明確になってきます。
仕事のやり方と基準が明確でなかったり、人によっ てばらばらであっては、改善を進めるときに問題点が 明確になりません。
また、何を改善すべきかも、まち まちになってしまい、効果的な改善がスタートできま せん。
したがって、「今現在の仕事の標準はこれ」という ものを明確に設定し、それをきちんと順守するなかで、 実施した結果の問題点を解決して、新しい標準へとレ ベルアップします。
トヨタ生産方式とは 「ムダの徹底的排除 によって生産性向上 をはかり、それによ って原価を低減する ための一連の活動」 といえる
(トヨタ生産方式の 技法〉 トヨタ生産方式では、 「ジャストインタイ ム」と「自働化」に よって「少人化」を はかり、原価低減を 志向している
トヨタ生産方式とは継続的改善 トヨタ自動車が、世界一物づくりが強い企業になつたのは、 偶然ではない。
トヨタマンは「改善をしないと落ち着かない」というくら い日々の仕事のなかで、改善のウエートが高い。
この改善マ インドの高さが物づくりの強さの秘密ともなつている。
卜∃夕の強さの原点は、すべての仕事を標準化、すなわち マニュアリИヒして基準線(ベースライン)とし、その標準(マ ニュアル)を「うまず弛まず」継続的に改善していく点にあ る。
マニユアルを見る習慣をつくり上げる
マニュアルはつくるだけでなく、使い方の指導や 仕掛けも重要である
◎見られないマニユアルでは意味がない
マニュアルはルールブックです。
常にマニュアルを 参照して業務・作業・サービスを行なうことが大切で す。
せっかくマニュアルをつくったのに、それを見ない で仕事をして失敗したということのないようにしなけ ればなりません。
仕事を行なうときに、やり方がわからなかったらす ぐ見る、やり方に迷いがあったらすぐマニュアルを参 照するという習慣と仕掛けをつくり上げましょう
◎マニュアルを見てもらう工夫をする
常にマニュアルを参照して仕事を行なう習慣を築く には、見るための工夫が必要です。
見るための工夫として、次のような点を検討してく ださい。
マニュアルの保管場所は、職場内のわかりやすい場 所に、「マニュアル保管場所」などと表示して、すぐ 取り出せるようにして、保管します。
また、マニュアルのバインダーの背表紙には、タイトルとして何のマ ニュアルかをわかりやすく記入しておきます。
すぐ見ることができるよい方法としては、マニュア ルを職場の中心や作業場所に近いところに掲示するよ うにします。
このような配慮は、とくに第一線の作業 現場や事務現場で役に立ちます。
またマニュアルがあまり分厚いバインダーに入って いると取り出したり、開いたり、めくったりするとき に扱いづらく、ついつい見なくなってしまします。
1 つ1つのマニュアルは適度な厚さ(1.5cm程度)の ファイルにしましょう。
マニュアルは3段階 で表示し、探しやす くする
♭〈場所表示〉キャビ ネットなどには大き く「マニュアル置き 場」と表示する 〈位置表示〉キャビ ネット内の何段目の 棚、どの位置に置く
のかを表示する (現品表示〉マニュ アルの背表紙にマニ ュアルの分類や名称 などを記載する
掲示の意義 0常にマニュアルの 手順を意識して作 業する ●迷いなどがある場 合すぐ参照できる
◎マニュアルを用いて計画的な人材育成をする
仕事を学ぶ際のマニュアルの活用方法としては、本 人が必要に応じて1人でマニュアルを読みこなし、習 得する自己学習と、指導者によるマニュアルを用いた 計画的な人材育成があります。
ここでは後者について 述べます。
計画的な人材育成は、次の4段階で進めるとよいで しよう。
◇ 計画的な人材育成の第1段階 仕事の体系を明確にします。
このため業務。
作業・ サービスの流れを明確にして、その各段階で使用する マニュアルを明確にします。
これを明確にする方法と して、製造部門ではQC工程表、事務部門では業務体 系表などを用います。
◇計画的な人材育成の第2段階 洗い出した各段階の業務・作業・サービスについて、 どの程度習得しているかを個人別に明確にします。
明 確にする方法として、マルチスキル棚卸表などを用い ます。
◇ 計画的な人材育成の第3段階 仕事の職場での習得状況の分布を見て、職場として 補強する必要がある業務・作業・サービスを検討して、 指導・育成計画表を作成します。
具体的には、マルチスキル棚卸表を縦と横に見て、 習熟者が不足している業務。
作業・サービス、個人別 に見るともっと伸ばしてもらいたい業務。
作業・サー ビスを対象とします。
育成計画書では、誰が誰に何を、いつ、どのマニュ アルを用いて教えるのか、また習得評価はいつ、どの ように行なうのかなどを計画します。
◇ 計画的な人材育成の第4段階 作成した指導・育成計画表に従って、マニュアルを 用いて指導・育成を行ないます
(マルチスキル化〉 多能工化ともいう。
1人1人の技能や技 術の幅、こなせる仕 事の種類を増やすこ と。
仕事の柔軟性を 高めるのに重要
◎マニュアルを用いた効果的な教え方
教え方は、相手の力量に応じた次のような進め方が 大切です。
◇ 未経験者への教え方 マニュアルにある作業や業務の実施ステップに沿っ て、 1項目ずつ手取り足取り教えます。
この場合、次 のような手順で教えます。
① マニュアルを使って手順とそのポイントを説明す る ② そのとおりやって見せる ③ そのとおりやらせてみる ④ まずい点があれば、マニュアルと比較し、どこが 違うのか指摘する ⑤ どのようにすればいいのか考えさせ、修正案を説 明させる 上の手順で③~⑤を繰り返し行なうと効果的です。
◇ ある程度の経験者への教え方 説明は最小限にし、本人に考えさせます。
① マニュアルを使って、手順とポイントを説明する ② そのとおりやらせてみる C)うまくいかないところを自分で考えさせる
マニュアルの手順や 急所に沿って教えて も、なかなか習熟し ないケースも多い。
これはマニュアルに 書いてあるポイント が不足していたり、 具体的でなかったり することに要因が多 い。
このような点を マニュアルにフィー ドバックして、マニ ュアルを育てよう
納得して、行動して、成果への道へ
作成したマニュアルを仕事の成果に結びつけるには 工夫と努力が不可欠
◎マニュアルが受け入れられる工夫
マニュアルを作成さえすれば、各担当者が直ちにそ れを業務に活用してくれるとはかぎりません。
マニュアルの理解とマニュアルを守って仕事を行な おうとする意識(気持ち)の向上が欠かせません。
このため、マニュアルが完成したら、職場で説明会 を開いて、マニュアルの目的や内容について、マニュ アルを用いながら説明を行ないます。
マニュアルの内容の理解のためには、必要に応じ、 マニュアルに記載された手順などに従って、現場。
現 物で実地にやってみせます。
場合によっては、マニュアルの手順どおりにやらせ てみて、うまくいかないところを指導し、できるまで やらせて確実に理解させます。
このような説明会の場では、各担当者から質問や意 見が出てくるでしょう。
質問や意見を貴重な提案とし て受け止め、マニュアルに取り込むようにします。
このようなステップを踏むことにより、各担当者が 自分のマニュアルだという意識になり、マニュアルを 守って仕事をしようという意識も高まります。
そして、
マニュアルをつくっ てそのとおりに仕事 をやるというと社内 で反発が出る場合が ある。
とくに企画仕 事、創造仕事ではこ の傾向が強い >企画仕事、創造仕事 のアウトプットその ものは通常、マニュ アル化になじまない。
しかし、生み出すプ ロセスをマニュアル で標準化することで、 アウトプットの質や 仕事のスピードがア ップする
◎マニュアルを用いた効果的な指導・育成
マニュアルを用いて指導・育成し、確実に行動に結 びつくようにするには、相手の力量の向上に応じた段 階的な指導・育成が大切です。
このために、次のような3つの段階に指導・育成の 手順を分けて進めます。
◇ 鯉亘亘匿)「密着指導」の段階 指導者のやり方を観察させ、実地にマニュアルに従 った手順でやってみせ、手ほどきをします。
このとき に、マニュアルに書いてある手順のどこがうまく実行 できないのか、どこで悩むのかなどを聞き出して、重 点的に指導します。
◇ 「見習い」の段階 この段階ではひとまとまりの仕事(要素仕事のレベ ル)を担当としてやらせます。
その結果や実施のプロ セスを観察、チェックして不十分なところを指導しま す。
◇ 「担当」の段階 「密着指導」「見習い」の段階を経て、部下に十分な 能力があると判断したら、次は部下自身に特定の仕事 を全面的に担当させ任せます。
指導者はマニュアルど おりにきちんと実行しているか、仕事の成果はよいかなどをチェックします。
業務や作業がマニュ アル化されていない と、多くのムダが職 場や仕事で発生する。
「業務標準化運動」 というような1つの 運動の下に集結して、 全社的に展開すると 改善効果が高い )社員の指導育成を継 続的に進め、効果を 出すには、 1人1人 の指導記録や指導計 画を残すとよい
◎マニユアルで成果を出すには「見える化」
マニュアルで成果を出すということは、マニュアル を活用して高いQCD(品質、原価、納期)とCS(顧 客満足度)の向上を得ることです。
このマニュアルを活用した改善活動のPDCA(計画 ― 実施―評価―処置)を回して、確実な仕事のレベル アップを図りますが、このときPDCAの各段階を「見 える化」して進めることが大切です。
具体的にはP(Π帥:計画)では、対象の仕事の改 善目標を設定し、これを実現するためのマニュアルを 活用した具体的改善項目とスケジュールを設定し掲示 などで「見える化」します。
このとき、その仕事のKFS (Key Factorfor Success)も「見える化」します。
D(Do:実施)では、マニュアルを活用した具体 的改善項目の改善結果と達成水準を把握して掲示など に「見える化」します。
C(Check:評価)として、計画に対する改善水準 を評価し、予定どおりか否かを評価し、掲示などに「見 える化」します。
A(Act:処置)では、改善が予定どおりではない 場合は、ギャップを取り戻す方策の立案とそのフォロ ー状況を掲示などに「見える化」するとともに、必要 に応じて修正計画を作成し、次の改善活動のPDCA サイクルを回します。
レKFSとは、直訳す ると「成功のための 鍵となる要素」とい うことで、日標達成 のために注力すべき ポイント、目的、タ スクを指す
◆マニュアルの位置づけは柔軟に考える 小売販売業E社は、店頭接客マニュアルをまとめてみました。
し かし、社歴が浅いためノウハウが少なく、プアーなマニュアルになっ てしまいました。
そこで、E社のマニュアル担当者は、「マニュアルとは確立したノ ウハウを体系化したもの」という概念を変え、マニュアルを通じてノ ウハウを確立しようと試みました。
マニュアルの具体的なノウハウ部分を空白にして、販売担当者が仕 事を通して工夫したノウハウを記入してもらいました。
記入されたマ ニュアルは3カ月ごとに回収して改訂し、徐々にマニュアルを充実さ せていきました。
〈マニュアルの例〉
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