TOPIC18なぜ店長には「頼れる右腕」が必要か?「インフォーマルリーダー」の育成論
DIALOGUE
「ドライバーはどこですか?ドアのネジがゆるんでました」「パートの山下さんに聞いてみて。オープンから勤続15年のベテランだからね」「本当に山下さんって、店長と違って頼りになりますよね!」「う…うん(ひと言余計だけど…)山下さんには本当に助けられてるよ」
店長にもいろいろなスタイルがあるが、継続的に結果を出し続けている店長に共通するのが「右腕的スタッフ」の存在だ。店長の不在時にも現場をリードしてくれるスタッフを育てられているだろうか?「マネジャー」としての店長にとって、「職場リーダー」の育成は無視できない課題である。その意外な効果も含め、見ていくことにしよう。
最初は誰でも「駆け出し店長」
人は最初からマネジャーとして生まれるわけではありません。どちらかといえば、かなりの期間にわたって現場で実務を担当したのちに、役職を与えられ、それからようやく「マネジャーとしての学び」をはじめるというケースが一般的でしょう。
しかし、多くの店長は、場合によっては入社数年ほどで、ある日突然、何人もの部下を持つマネジャーにならねばなりません。
かなり若くして職場を任された「駆け出し店長」だとしても、自分よりもはるかに年上のスタッフや職歴の長いベテランたちをリードしていくことが求められます。
「主任→係長→課長→部長…」などというふうに、少しずつマネジメントのレベルが上がっていくのではなく、いきなり中小企業の経営者になるようなものです。
最初からうまくいくという人は、ごくひと握りでしょう。だからこそ、店長とひと口に言っても、そこには段階があります。
一人前の店長になるための移行期間のことを、私が専門としている人材開発・キャリア発達理論ではトランジション(Transition/移行)と呼んだりします。店長にもやはりこのトランジションがどうしても必要なのです。
「リーダーの育成」こそが店長のラスト課題!!
では、真の意味でのマネジャーへ移行するために、最も必要なことは何でしょうか?経営学の世界で最も有名なマネジメントの定義は、〝Getting things done through others〟つまり、他者を通じて物事を成し遂げることです。
店長の仕事に置き換えてみた場合、これは職場のさまざまな仕事をアルバイトスタッフのみんなにやってもらうことだけではありません。
ここまでお伝えしてきたような「アルバイト育成」すらも、店長の代わりにやってくれるリーダーを育て上げることも、「他者を通じて物事を成し遂げる」ためには重要なことなのです。
実際、今回の調査の中でも、職場内のインフォーマルリーダーの存在が浮かび上がってきました。インフォーマルリーダー(InformalLeader)とは、店長のような公式の(フォーマルな)管理者ではなく、スタッフの中にいる「店長の右腕的人材」のことです。
結果を出し続ける店長には「頼れる右腕」がいる
右腕と言っても、決して1人だけである必要はありません。ある居酒屋チェーンで店長として圧倒的な実績を上げ、現在ではその企業で役員をしている方はこう語っていました。
「店長のタイプによると思いますが、僕は〝1人の頼れる右腕〟を育てるタイプです。機動部隊長となるNo.2が店長の下にいて、それに準ずる現場リーダーがいて…というように、組織的にお店を運営していくのが自分の肌に合っていると思いますね。
一方、当社で〝スーパー店長〟と呼んでいるようなタイプの店長は、強力なリーダーシップを発揮しながら現場でも自ら成果を出していきます。
そういう店長の下にも、5人くらい並列で〝準リーダー格〟がいるというイメージですね」たとえば、24時間営業・年中無休の外食・小売チェーンの店舗などでは、店長がずっと職場にいるわけにはいきません。
むしろ、全営業時間で見れば、「店長がいない時間」のほうが長いかもしれません。そういう職場では、右腕がいないと回らないというのが現実でしょう。
店長にもいろいろなマネジメントスタイルがありますが、いずれにしても安定的に職場で結果を出している店長は、たった1人で職場を切り盛りするようなことはしていません。
企業によっては、職場にいる社員は店長ただ1人、あとは全員アルバイトというところもあるでしょう。そこで孤立せずに仕事を回していくためには、「この人がいれば安心」という現場リーダーの存在が欠かせないのです(図表59)。
「ベテランによる育成」の比率が最も高い
さらに、店長(=社員)には「異動」がつきものです。別の職場を任されることになったり、本部勤務になったりと、いつかはいまの職場を離れるときが来るかもしれません。
店長が変わった瞬間、職場がダメになるようでは、本人にとっても、スタッフたちにとっても幸せなことではないですよね。その意味でも、ずっといてくれそうなベテランの存在は貴重です。
なお、どれくらいの期間働けばベテランと呼べるかについては、職場によってかなりまちまちだと思いますが、本書のこのあとの分析では、各社の調査対象スタッフのうち、就業期間が上位約50%以上(企業別に微調整)の人をベテランと定義しています。
全国チェーンを展開する外食企業で店長をしているYさんは、「社員はいつか異動するもの。だからこそ『この店長じゃなきゃダメだ』という認識がスタッフに広がりすぎるのは危険」と言っていました。
会社のルールとしては、社員がアルバイト教育を担当することになっているものの、彼はあえてベテランのパートさんにも新人教育を手伝ってもらっているそうです。
人材の育成も現場に任せられるようになれば、「職場づくり」の好循環は一気に進みます。まさに「他者を通じて物事を成し遂げること」の典型でしょう。しかも、ベテランによる育成にはそれ以上のメリットがあります。
研修やマニュアルなどの教育手段が手厚く用意されている職場もありますが、アルバイト育成のカギを握っているのは、なんといっても現場でのOJTにあるからです。
では、アルバイトは一体「誰から」最も学んでいるのでしょうか?図表60のデータをご覧ください。この調査結果を見ると、アルバイトはベテランスタッフから多くを学んでいるという実態が浮かび上がります。
店長より比率が高いのはいいとしても、教育担当者よりも数値が高く出ているのは驚きです。これもまたインフォーマルリーダーの重要性を示す証拠の1つだと言えるでしょう。スタッフ育成を促進する観点でも、やはりベテランスタッフのリーダー活用を真剣に考えるべきです。
POINT
□真のマネジャーとしての店長は「右腕」となるスタッフを育てている
□ベテランの「インフォーマルリーダー」がアルバイト育成のカギ
TOPIC19「困ったベテラン」はなぜ生まれるか?「権限委譲」による職場リーダーの育成
DIALOGUE
「おいおい、この資材は通路に置かないように言ったよね?」「あ、それはベテランの沢田さんですね。『前の店長のときはいつもここに置いてた』って…」「またいつもの『前の店長は…』か。沢田さんに『ここに置かないで』って言っといてくれる?」「ええっ、嫌ですよ〜。あの人、すぐに機嫌悪くなるし…」
人材の長期的な定着が望ましいことはたしかだが、あまりにもキャリアが長くなると、これまでのやり方に固執し、店長の言うことを聞かない「困ったベテラン」になってしまうことがある。アルバイト人材育成の要であるベテランスタッフを、みんなに頼られるリーダーへと育てるためには、何が必要なのか?
「頼れるベテラン」と「やっかいな古株」は紙一重
人手不足で困っていると、どうしてもキャリアも長く、職場のことに精通したベテランスタッフに頼りがちになります。そうしたスタッフがいてくれることはありがたいのですが、あまりにも特定の人頼みになってしまうと、職場には深刻な歪みが出てきます。
典型的なのは、新しく赴任してきた店長の指示を聞かないケースでしょう。人手不足が慢性化し、「みんなに頼られている」のが当たり前になったベテランは、職場の改革を極端に嫌がり、これまでの状態を維持しようとします。
以前に少し触れたように、新人が入ってくると「自分のシフトが減らされるのではないか」と危惧して、あえて無視するなどして新人を潰そうとする人もいます。
→TOPIC16店長より年齢もキャリアも上だったりすることがあるので、店長もスタッフも注意できないまま時間が流れると、職場の雰囲気がどんどん悪化していきます。
先ほど見たような、ネガティブな意味での「仲良しグループ」化が進むと、スタッフのモチベーションはさらに低下し、結果として離職率が高まることになります。
店長と対立するベテランは、去っても仕方がない
前項で見たとおり、ベテランスタッフはアルバイト育成の要です。とくに、新しく店長として赴任した場合などは、そうした古参のスタッフの協力を得ることは欠かせません。
新人や中堅を積極的に育ててくれるリーダー的存在がいてくれれば、職場環境は飛躍的によくなりますが、逆にベテランが〝職場のガン〟になっているときは悲惨です。
「人が足りない→慌てて採用→育成しない→すぐ辞める→また足りない…」という負のスパイラルが加速し、店長は窮地に立たされることになります。
次の図表61を見てわかるとおり、ベテランスタッフが現場に対してどのような態度をとるかによって、スタッフの継続意欲は非常に大きく左右されます。
威張り散らしている古参のスタッフがいると、現場の士気がぐっと押し下げられることがわかります。
さまざまな知見の蓄積があるベテランが去ってしまうのは大きな痛手ですが、店長として、時にはしっかりと注意したり、場合によっては職場を去ってもらったりせざるを得ないこともあるでしょう。
「店長とベテランの会話」に現場スタッフは敏感
巻末の店長座談会に登場いただいた店長さんたちも、この点にはとくに敏感になっていました。ここは彼らの発言を読んでいただくのがいちばんでしょう。じつに生々しいエピソードです。
「ベテランさんが話をわかってくださる方であればいいんですが、そうでないときも多々あります。その方はいままで自分が頼られてきたわけで、その地位が脅かされそうになると気分を悪くしたりするんです。でも私は、そういう人の権力を、できるだけなくしていこうという方針です。新しく採った人などに、そのベテランさんがやっていた仕事をいきなりやらせる。それが気に入らないベテランは辞めるか、こちらの言うことに耳を傾けてくれるようになります」
ここまで過激ではないにしても、「ベテランに注意するときは、あえてほかのスタッフの前で叱るようにしている」という店長さんもいました。
ただし、この店長さんは、そのベテランを公然と注意する前に呼び出し、「この件について、今日の朝礼のときに注意させていただきます。ただしこれは、ほかのスタッフにも同じミスをさせないようにするという目的があってのことですので、どうかご理解ください」と伝えているそうです。
それくらい、店長がベテランスタッフにどう向き合うかは、ほかのスタッフや職場全体の空気を大きく左右するのです。「言うべきことは毅然と言う」といった覚悟はやはり必要でしょう。
長期ビジョンを与えないと、職場のことを考えなくなる
それでは、いま中堅として活躍しているスタッフが、いずれ自分の立場を守ることしか考えない「やっかいな古株」になるのを防ぐには、どうすればいいでしょうか?職場全体をよくしようとするインフォーマルリーダーを育成するには、店長としてどこに注力していくべきでしょうか?次の図表62を見る限り、「ウチはそもそもリーダーが育つほどの余裕がない」という言い訳は通用しなさそうです。
というのも、貢献意欲の「高い/低い」でベテランスタッフを分けてみたところ、仕事の忙しさの部分ではそれほど差は見られないからです。
一方、大きな差が出たのが「成長に応じて報酬が上がる」「長期的なキャリアについて上司と話す機会がある」「上位の職階へのステップアップが推奨されている」などです。
要するに、長期的な展望が見える働き方ができている人ほど、ベテランになったときにも職場に貢献しようという気持ちを持つということです。
裏を返せば、何もビジョンを与えないまま、目の前の仕事ばかりをこなさせていると、その人材は将来的に「ガン化」する可能性が高まるとも言えるでしょう。
「大胆な権限委譲」こそがリーダー候補育成のカギ
さらに調査からわかった最もシンプルな処方箋は「思い切って責任ある役割を与えること」です。将来的にリーダーとして活躍するスタッフを育てたいのであれば、中途半端に仕事を任せるのではなく、ある程度のまとまった仕事を手渡し、権限委譲する大胆さが求められます。
これは店長としてもリスクを引き受けることになります。いくら裁量を与えるといっても、最終的な責任は職場の管理者である店長にありますから、ミスが出てもアルバイトのせいにはできません。
「もしトラブルが起きれば、いつでも支援する」という覚悟がなければ、なかなかできないことです。しかも、心配だからといって、途中で細かく口出ししたり、進捗を確認したりしては、意味がありません。
それではかえって「任されていない。信頼されていない」という想いを生んでしまい逆効果だからです。ベテランスタッフの貢献意欲を高めたければ、「店長がこの部分は自分に任せてくれている。責任感を持ってやり遂げよう」という気持ちを持たせることが何よりも肝心なのです。
ある運送業のマネジャーKさんは、リーダー候補のベテランスタッフを育成するために、毎日、何人かのベテランスタッフたちに「お互いの褒めるべきポイント」をメールで報告してもらっているそうです。
こうすることでそのベテランは、日頃からスタッフたちの働きぶりをよく観察するようになり、人材育成や職場貢献に意識が向かうようになります。
Kさんからも必ず報告メールにはコメントをつけて返信し、とくにすばらしいものについては職場全体に共有するようにしているそうです。
「店長と二人三脚で職場をつくっている」という実感をベテランスタッフに持たせ、積極的に将来の「右腕」を育てているという点で、Kさんのやり方は非常にうまいと思います。
「リーダー=重たい仕事」と思わせない工夫
スタッフの中には「自由に働きたい」という価値観の人もいますから、こちらがよかれと思って仕事を任せても、嫌がられる場合もあるでしょう。とくにアルバイトをしている人のなかには、大きな責任を負うことを嫌う人は比較的多いと思います。
学生バイトを多く抱えるある飲食店の店長Sさんのところでも、「右腕」候補として大きな期待をかけていた1人のアルバイトから、「大変そうだし、自分にはリーダーは無理です」と言われてしまったことがあるといいます。
それ以来、Sさんは「お客さんに対しては全員で責任を取る」という雰囲気を職場につくり、リーダーをあまり際立った存在にしないように気をつけるようにしました。
リーダーの仕事のハードルを下げ、複数の人がゆるやかにリーダーを務める状況にすることで、スタッフたちも「これくらいの仕事であれば、できそうなのでやってみます」と言ってくれるようになったそうです。
POINT
- □ベテランが「やっかいな古株」になると、全体にも負の影響を与える
- □貢献意欲の高いベテランには「長期的なキャリア展望」がある
- □ベテランに対しては、思い切って責任ある役割を与える
TOPIC20結局、「優秀な店長」はどこが違うのか?マネジャーとしての3つの仕事
DIALOGUE
「駅の向こうのコンビニ、雰囲気がよくなったよね」「店長が変わったらしいですよ。やっぱり店長次第ですよね!」「ん?…何が言いたいの?」「え?何も言ってませんよ」「あの店長は優秀だ」
と言われるとき、それはどんなことを意味しているだろうか?もちろんこれに対する答え方は十人十色だ。しかし、結果を出している店長たちの考え方には、いくつか共通点がある。その根本にあるたった1つの発想と、マネジメントに関する3つのポイントを見ていこう。
店長の課題は「売上」よりも「育成」
店長が「他人を通じて物事を成し遂げるマネジャー」へと移行するうえで必要な職場リーダーの育成というテーマについてこれまで考えてきました。
本当に優秀な店長は、1人で奮闘するのではなく、自分を助けてくれる人材を育てています。ただ、「優秀な店長」とひと口に言っても、そこにはさまざまな含みがあります。社内で「××店の○○店長は優秀だ」などと言ったりする場合は、一般的に尺度とされるのは売上や利益でしょう。
しかし、私はあえて言いたいと思います。店長としての成熟の要点は人の育成にある、と。店長の仕事の核心は、どれだけ人を育てられるかなのではないか、と。
この点を強調するのは、私が人材開発を専門としているからだけではありません。店長座談会をしたり、いろいろな店長の方に直接お話を聞いてみたりするなかでも、彼らの悩みのほとんどは「人」に関わるものでした。これについて、ある店長さんはこう答えています。
「チェーン店の場合、業績を左右するメニューとか戦略って、すべて本部が決めてしまうので、店長としてできることってあんまりないんですよね。だからこそ、ちゃんと人を確保して店を回していけるかが何よりもまず大事なんです」
とても控えめな表現ですが、職場を任されている店長さんたちの等身大の感覚がにじみ出ている言葉だと思います。実際、商材やサービス内容、本社の方針、任された職場のエリアや立地にも売上は左右されるので、一店長としてはいかんともしがたい部分もあるでしょう。
だからこそ、まずは人材を揃える「職場づくり」が店長の腕の見せどころになるのです。だからと言って、売上は無視しろと言っているわけではありません。
ただ、これからますます人手不足が加速していく時代、この「職場づくり」の発想を欠いたままやっていけるのは、ひと握りのよっぽど恵まれた職場ぐらいでしょう。
まずは人を育てることにフォーカスし、与えられた環境のなかでパフォーマンスを最大化していくことが、マネジャーとしての店長の使命になっていくと考えるべきです。
優秀な店長がやっている「3つのマネジメント」
まずは次の図表63を見てください。「優秀な店長(ベテランのハイパフォーマー)」と「駆け出し店長(若手のローパフォーマー)」の違いをまとめています。
優秀な店長のもとでは継続意欲、つまり「この職場で働き続けたい」という気持ちが高く出ていることがわかります。また、スタッフの満足度が低い店長のほうは、やはり離職率が高くなっています。さらにマネジメント方針の違いも見てみましょう(図表64)。ポイントは3つあります。
①目標を共有する
まず顕著に差が出ているのが、目標共有の意識です。優秀な店長は、数字的な目標予算や実際の売上などをアルバイトたちに伝えています。逆に、駆け出し店長は、「こんな数字を現場に伝えても仕方ない」と考えて、目標をスタッフに共有することはしません。
これではスタッフたちは「自分たちの働きがいいのか、悪いのか」の判断ができません。結果として、売上などを達成できていなくても、スタッフたちには改善意識が生まれないまま、店長は孤立したまま悩むことになりがちです。
結果を出している店長は「今日の売上目標は○○円だ」などと具体的な目標を共有し、アルバイト全員を巻き込んでいます。ある外食チェーンの店長Uさんが、目標共有について語っていました。
「必ず『みんなでこれだけの売上を目指そう』と共通の目標をつくるようにしています。といっても、じつはそんなにすごい目標である必要はないんです。ただ、それをちゃんと達成できたときには、心から『すごい!こんなに売れたね。みんな、ありがとう』と言って感謝するようにしています。
ここで大事なのは、スタッフたちが『頑張った甲斐があって数字も上がったし、店長も喜んでくれている』と実感できることなんですよね」ただ、このような数字目標を伝えるときには、工夫が必要です。
一方的に数字を押しつけても、「それはあなたの目標であって、私たちの目標ではない!」という反発を招きかねないからです。実際、そのような失敗談を語る店長さんもいらっしゃいました。
目標を設定するときは、スタッフそれぞれの適性や能力を見て、個人のスキルアップにもつながるような仕事を与えることも大切です。
そして、「任せたこの仕事をあなたが頑張ってくれたから、お店としても売上目標を達成できた」という具合に、個人の成長と全体の成果とを〝接続〟するような説明ができるとなおよいでしょう。
②育成を任せる
優秀な店長に共通して見られたマネジメント上の特徴の2つめが、新人教育をほかのスタッフに任せているということです。逆に言うと、新人受け入れを自分で抱え込んでしまっている店長の職場では、スタッフ満足度が低下していました。
店長がつきっきりで新人教育をしようとすると、どうしても〝穴〟が出ます。それが新人の不満につながっているようです。また、優秀な店長は、新人に関する情報を事前にしっかりとスタッフ間で共有し、現場でのOJTがスムーズに進むように配慮しています。
自分で育成しないといっても、決して「丸投げ」ではなく、入念な〝根回し〟をしているという点は特筆に値するポイントです。
③権限を委譲する
ベテランスタッフに対する向き合い方にも違いが見られます。優秀な店長は、ベテランスタッフを信頼し、思い切って権限を委譲する一方で、問題行動があるベテランには厳しく注意しています。
一方、駆け出し店長はベテランに業務を任せられないうえに、強く指導することもできないので、どうしても自分だけで仕事を抱えてしまい、身動きがとれなくなっています。
このような権限委譲をできるようになるためには、思い切りが必要ですが、そうした精神論だけでは片づけられないものも求められます。
それは「経験」です。ある程度の経験を積まない限り、他人に仕事を任せるという行動はなかなか取れないことがわかっています。
人は数々の修羅場をくぐり抜けるなかで初めて、「任せた結果としてトラブルが起きても、ここまでなら自分でなんとかカバーできる」という限界が見えてくるからです。
他方、十分な経験を積んでいない若い店長ほど、「最悪のケース」を明確にイメージできないために、まとまった仕事を任せることを躊躇してしまいがちです。
裏を返せば、単に無謀なだけの「丸投げ」と、育成効果がある「権限委譲」は似て非なるものだということ。「なんでもかんでもアルバイト任せにしろ」ということではありませんので、その点はご注意ください。
POINT
- □店長の本当の仕事は「アルバイトの育成」である
- □優秀な店長は職場に数値目標を伝えて、現場を巻き込んでいる
- □目標を伝えるときには、個人の成長との「接続」を意識する
第5章のまとめ
Q.なぜ店長には「頼れる右腕」が必要か?
▼スタッフの育成を考えた場合、すべてを店長が担うよりも、職場のことを知り尽くしたベテランスタッフに任せるのが理想的です。ただ現場を回すだけでなく、育成も含めて任せられるような「インフォーマルリーダーの育成」が、店長の究極の仕事です。
Q.「困ったベテラン」はなぜ生まれるか?
▼成長実感をしっかりと与えずに就業期間ばかりが長くなると、「困ったベテラン」が生まれてしまうことがあります。長期的なキャリアについても定期的に話し合いながら、大胆に権限を委譲するなど「信頼」を見せることが大切です。
Q.結局、「優秀な店長」はどこが違うのか?
▼ポイントは「育成」にフォーカスできるかどうかです。すべて自分でやろうと抱え込まずに、①スタッフと目標を共有しながら、②ベテランに新人育成を任せ、③まとまった仕事を積極的に任せるマネジメントスタイルが求められています。
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