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第4章 さあ、始めよう 時間と場所、ツールの準備

第1部では、主にGTDの概念を説明してきた。ここからは具体的にGTDをどのように実践していくかを、さまざまな事例と共に紹介していく。

ここに書かれていることを実践したあとには、これまでに経験したことのないような解放感と充実感が待っているはずだ。

できるだけスムーズに日々の生活にGTDを取り入れ、さまざまなテクニックを最大限に活用できるよう、ステップごとに詳しく説明していこう。

ここからの詳細については、一度読んだだけではうまく飲み込めないものもあるだろう。GTDを完璧に理解して実践していくには、まるまる2日ほどはかかるだろう。

そのための手順を説明していこう。より高いレベルでGTDを実践するための情報やアイデアも提示していくので、ことあるごとに見返してみるのもいいだろう。

目次

導入編・徹底的にやるか、気楽にやるか――小ワザ″から入るもよし

GTDを徹底的に実践しようかどうかまだ迷っているという人もいるだろう。しかし、それほど大袈裟に考える必要はない。多くの人がいちばん恩恵を受けるのは、GTDのちょっとした「小ワザ」である場合もある。自分に合った小ワザが一つ見つけられるだけでも価値があるはずだ。

私が実施している2日間のセミナーでは、「2分ルールがすごいと思った」という感想をもらう。この種の小ワザは、脳のあまり賢くない部分をサポートしてくれるテクニックである。これらを駆使することで本当に頭を使うべき仕事に集中できるようになる。

もし、あなたが私と同じように、運動はしたいが毎日やるのは難しいと思っているタイプなら、自分の背中を押してくれる小ワザを使ってみるといいだろう。

私の小ワザは「まずは服を着替える」である。やる気が起きなくても、運動用の服に着替えてしまえば、それだけで運動する気になってくる。

逆に、普段着ている服のままだと、別のことをしたくなってしまう。では、生産性に関する小ワザはあるだろうか。

明日までにやらなければならない仕事を家に持ち帰った経験はあなたにもあるだろう。

夜遅くまで仕事をして、その書類を翌朝に絶対に忘れてはならない、というときにあなたはどうするだろうか。忘れないように、玄関やカギの上に置いたりしたのではないだろうか。

これはちょっとしたことではあるが、実に高度な「仕組み」である。

あなたの脳の賢い部分は、朝はあまりうまく頭が働かないことを知っているので、書類を忘れないための対策をとったのだ。

そのおかげで朝には「あれ、玄関に何かあるぞ……そうだ、こいつを会社にもっていかないと―」と気づくことができるのだ。これは実にスマートなやり方だ。「玄関に置いておく小ワザ」と命名してもいい。

GTDも同じ考え方に基づいている。

こうした「頭が自動的に反応する仕組み」をどう構築するかが重要なのだ。

カレンダーを目の前に置いて、今後2週間の予定にじっくり目を凝らしてみてほしい。おそらく一つくらいは「ああ、だつたらこれもやらないと!」というものを思いつくはずだ。

こうしたものについて自然と行動を促す「仕組み」さえ作っておけば(カレンダーにリマインダーを書いておくだけでもいい)、頭がスッキリして気分もよくなり、高い生産性を発揮できるようになる。別に難しいことではない。これもちょっとした小技の部類に入るものだ。

1枚の紙と使いなれた筆記用具を用意して、今いちばん期待をかけているプロジェクトのことを3分間考えてみてはしい。

少なくとも一つは「そうだ、これもやらないと」というものが思い浮かぶはずだ。頭に浮かんだことを紙に書き、そのアイデアが役に立ちそうな場所に置いておこう。そのときの気分はどうだろう。

おそらくすこしだけ気分がよくなったのではないだろうか。あなたは1分前と比べて賢くなったわけではない。しかし、あなたの仕事や人生は、確実に一歩前進したはずだ。

GTDの達人になる秘訣は、適切なツールをしかるべき場所に設置することで、適切なタイミングで行動をおこしやすいように仕向けることである。

これはあなたが思っているほど難しいことではないここからは、こうした仕組みづくりの詳細について具体的にアドバイスしていこう。いずれも我々の経験から生み出されたものであり、GTDの実践におおいに役立つことだろう。

説明をしっかり読んで、すべて書かれているとおりに実践してみてはしい。全部をやったほうが効果が高いのは言うまでもない。

これまでとは違うアプローチで、やるべきことがどんどん片付いていくことに、あなたはきっと驚くことだろう。

まずは時間を確保する

GTDを始めるにあたっては、まとまった時間と作業ができる場所、さらにいくつかのツールが必要だ。作業を行う場所は快適なところを選ぼう。そうすれば心理的な抵抗が少なくなり、作業がぐっと捗るはずだ。

一般的には、2日まるまる確保するのが理想的だ。なかなか時間がとれない人は、2日空くのを待つ必要はない。

先延ばしするくらいなら短い時間でもやったほうがいいし、GTDの原理やテクニックの効果はそれで十分体感できる。

「把握する」作業を完全にやると、6時間以上かかる場合もある。

次に、把握したことのすべてを「見極める」作業を行なって「次にとるべき行動」を決定し、外部のシステムに預けるには、さらに8時間はかかるだろう。

もちろん何回かに分けて「把握する」作業と「見極める」作業を実行することもできるが、最初にやるときは一気にやってしまうほうがラクである。

私がビジネスパーソンを指導するときは、できるだけ週末や連体を利用する。外部からの邪魔が入らないからだ。

平日に行なう場合は、何の予定もないことを確認し、なるべくGTDに集中できる態勢を作ってもらう。電話を留守電にしたり、秘書に受けさせて休憩中に内容を伝えてもらつたりもする。

アフターファイブはあまりお勧めしない。気力が落ちていることが多いし、脱線しやすくなるからだ。私がよく指導する経営者たちにとって、2日という時間の確保がいちばんの難関であることが多い。

会議やら電話やらが常に入ってくる状況から自分を切り離すことが難しいのだ。週末を利用することが多いのはそのためである。ただ、必要以上に面倒だと思わないで欲しい。何も神聖な儀式を行うというわけでない。

単に大量の「気になること」を把握し、どうするかを判断するにはかなりのエネルギーがいるというだけだ。長い間放置されていたり、停滞していたりするものに取り組むならなおさらだ。

この作業の途中で邪魔が入ると、かかる時間が倍になることもあるので注意が必要となる。最初の1回がもっとも重要だ。

一定の時間を確保し、一気にこの作業を片付けられれば、大きな達成感と解放感を得ることができる。新たなアイデアと活力も湧いてくるだろう。

最初にそこさえ突破できれば、それ以降は仕事の合間などに、より短い時間でシステムを維持できるようになる。

まるまる2日使つても、生産性が高まつてストレスから解放されれば、その何倍もの時間を節約したことになる。

*1アフターファイブは通常業務中になかなか時間のとれない、こまごまとしたタスクに充てるのがよい。

溜まった書類のファイリング、デスクの引き出しの整理、休暇のための情報をネットで調べる、領収書の整理などだ。

GTDを実践するには、まずは物理的な場所が必要だ。そこがあなたの整理システムの司令塔になる。職場にデスクがある人はそこで始めよう。在宅で仕事をしているなら自宅でやるといい。

両方で仕事をしているならば、どちらにも同じような整理システムを作ることをお勧めするが、どちらか片方をメインで使うことになるだろう。

もし、そういった場所がないというのであれば、何とかして作ってほしい。モバイル環境で仕事をしていたとしても、拠点となる場所がどこかにあるはずだ。まずはメインとなる作業空間を決めてから始めていくのが望ましい。

作業をするのに最低限必要なのは、机などの筆記ができる場所と、入ってくる書類などを受ける場所である。そして、多くの人にとってはパソコンなどのデジタルツールを置く場所も必要になるはずだ。仕事によっては、もっと広い場所を確保している人もいるだろう。

主婦・主夫の場合はさほど広い場所は必要ないが、メモや郵便物、家族のさまざまな活動、家計などを処理するための専用スペースを確保することが重要だ。

たいていの場合、キッチンや廊下、食卓、本棚などに雑多なものが散らばつており、何が何だかわからなくなっていることが多いからだ。

電話、携帯電話の充電器、パソコン、積、そしてファイリングキャビネットや資料棚などが必要なら、机のサイズもそれにあわせて大きなものが必要となってくる。

ほかにも、プリンターやホワイトボード、電話会議用の機器などをそろえている人もいるだろう。完璧主義者なら、ちょっとした運動器具や趣味の道具までそろえているかもしれない。こうした機能的な作業空間は絶対に必要である。

それがない人は、今すぐ確保してほしい。すべてを管理するこうした拠点がないと、GTDはうまく機能しない。

今すぐこうした空間を作れと言われたら、私ならまず板を買ってきてファイルキャビネット2台の上に渡し、その上に3段のトレイと、レポート用紙とペンを置く。

これが私のGTDの基地となる(もちろん座るならイスも必要だ)。信じられないかもしれないが、このような最低限の機能をもった作業空間すらない企業の役員に、私は何人も会ってきた。

自宅にも拠点が必要

自宅の作業空間にも手を抜かないではしい。実際にやってみるとわかってくるが、自宅にも職場と同じ整理システムが必要だ。

私が指導してきた人の多くは、自宅が職場のように機能的ではなかったので、職場と同じ状態にするだけで大きな成果を得ることができた。

あなたも同じタイプなら、週末を使って自宅の作業空間を整えたほうがいい。驚くほど整理がはかどるはずだ。

移動時の作業空間

出張が多い人やモバイルでの作業環境に慣れている人は、移動中のミニオフィスも欲しくなるはずだ。

通常は、間仕切りのあるカバンやファイル、そしてちょっとした文房具などがこの役目を果たしてくれる。

多くの人は、移動中や外出先での「隙間時間」を活用しきれていない。そのせいで、生産性を上げる機会を無駄にしてしまっている。

GTDの手法とそれにあった適切なツール、そして職場と自宅の整理システムがうまく連携していれば、こうした「隙間時間」をきわめて有効に活用できるようになる。

テクノロジーの進歩により、モバイル機器の性能が劇的に向上し、世界中どこにいても高速インターネットが利用できるようになった。このようなデジタルツールで人生を管理できるようになってきたのは間違いない。

ただし高機能なツールが登場したことによって、情報の管理が難しくなってきたという側面もある。自分にあった適切なツールを慎重に選んでいこう。

そうでなければ、現代のモバイル環境を有効活用できないどころか、生産性が低下し、さらなるストレスを抱え込んでしまう危険性もある。

空間の共有は避けよう

作業空間は自分だけのものでないといけない。少なくとも、書類や物理的なものを処理するスペースは自分専用のものを用意しよう。

私が仕事で出会った夫婦の多くは一つの机を共有していたが、机を二つにするだけで効率が飛躍的に向上した。別々にすることに不安を覚える人も多い。

しかし、実際にやってみると、机を共有していたときの細々としたストレスからすつかり解放されるようになる。

ある夫婦は、キッチンにも奥さん専用のミニスペースを作り、リビングの子どもを見ながら彼女が仕事の処理をできるようにしてしまつたぐらいだ。

会社によっては、ホテリングシステムと言って、従業員がどこでも好きな机を使って仕事ができるようにしているようだ。

この場合、「自分の机」にこだわらずに作業ができる環境になっているため、オフィスの空間を有効活用できるというメリットがある。

だがこのようなシステムが機能するには、従業員がどこかに「自分だけの場所」をもっていることが前提となる。

実際にホテリングシステムを試して失敗したケースがあるが、それはこの前提が守られていなかったせいだ。効率的な整理システムを運用していくには、自分だけの場所がなければ落ち着かないだろう。

日々舞い込んでくる「気になること」を、どこでどのように処理していくかがコロコロ変わるようでは集中できるわけがない。

「付箋紙はどこだつけ?」「あれ、ホチキスは?」となってしまうからだ。慣れてくれば、どこであろうと最小限のスペースでやるべきことを見極められるようになる。

しかしそれでも「自分だけの拠点」が必要だ。そこには使いなれたツールと、資料などを置く十分なスペースがなければならない。さまざまな資料を入れておくのに、少なくとも二つの引き出しが必要だろう。

デジタルスキャナーの普及やテクノロジーの著しい進歩を考えると、ありとあらゆる資料をクラウドに保存し、どこにいても必要なときに取り出せるようになる日がいつかは来るだろう。だがそれはまだ先の話だ。

パスポート、ミラノヘの旅行で残ったユーロ紙幣、一時的に保管しておきたい紙の文書など、紙が最適な媒体であるものはまだまだ存在している。

それがなんであれ、こういった資料などをすべて保管しておいて、いつでもすぐに取り出せるようにしておこう。

ツールをそろえる

GTDを完璧にやりたい人は、最初に基本的な道具をいくつかそろえておく必要がある。ツールは別に高価でなくてもかまわない。普通のものを使えばよい。

いかにも「エグゼクティブ向け」のムダに高価なものは、実際にはあまり使えないケースが多い。

G丁Dの基本ツール

一からすべてそろえるとするならば、机の上に必要なもののリストは次のような感じになるだ。

  • 書類受け(3段以上)
  • A4の紙。
  • ぺン
  • 付箋紙
  • ベーパークリップ
  • ホチキスと針。
  • テープ
  • 輪ゴム、ラベルライター
  • ファイル、バインダー
  • カレンダー・ゴミ箱、リサイクルボックス今使っているツール類。
  • モバイル機器、パソコン、システム手帳、メモ帳など

書類受け

入ってくる書類や出ていく書類の置き場所に使う。それらとは別に、作業中の仕事に関する参考資料や、「読まないといけない書類や報告書」などを入れておくトレイも用意しよう。

上に積み重ねていくことができるもので、引き出しではなくて、そのまま書類を出し入れできるものが便利だ。

A4の紙

最初の「把握する」プロセスでは紙が必要になる。ある考えが浮かんだときに、それを一つにつき1枚の紙に書き出すだけで驚くような効果がある。

ほとんどの人は1枚の紙にリストを作ってアイデアや考えをまとめがちだが、物理的に紙を分けておくと、そのあとのステップが格段に実行しやすくなる。

いずれにしても、入ってきたものをいつでも書き留められるように、A4の紙を大量に用意しておくこと。

付箋紙、クリップ、ホチキスなど

付箋紙、クリップ、ホチキス、テープ、輪ゴムなどは、紙類をまとめて保管するのに役に立つ。デジタルツールに押されがちとはいえ、アナログツールはまだまだ健在である。整理にはこれらのシンプルなツールが有効だ。

ラベルライター

整理システムにおいてはこのツールが絶大な効果を発揮する。私がこれまで指導してきた多くのプロフェツショナルたちはラベルライターが手放せなくなり、「こんなに便利だとは知らなかつた―」ともらしている。

ラベルはファイルやバインダーなど、さまざまなものに貼ることができる。単体でラベルを打てるもの、あるいはパソコンと連動してその場で簡単にラベルが作れるものがお勧めだ。うまく活用すれば整理が素早くラクにできるようになる。

ファイル、バインダー

ファイルやバインダー類も大量に用意しておくといいだろう。茶封筒をファイルがわりにしてもいい。ファイルを色分けする方法もあるが、煩雑になってしまって意外に使えない。こうしたファイリングシステムはできるだけシンプルにすることだ。

カレンダー

済んでいないことを把握するだけならカレンダーはいらないかもしれないが、カレンダーに書く必要のある行動は必ず出てくるはずだ。

のちに詳しく説明するが、カレンダーには特定の日時に″必ずやらなくてはいけないことクを記録していくことになる。現在はプロフェッショナルのほとんどが何らかのカレンダーをもっている。

ルーズリーフ式のシステム手帳、モバイル機器のスケジューラー、会社全体で使うグループウエアのカレンダーなどがある。こうしたカレンダーを整理の中心に据えている人も多い。

特定の日時に関わる情報やリマインダーを管理するうえで、カレンダーが強力な武器となることは間違いない。ただ、カレンダーに情報やリマインダーを記入すればそれで終わりというわけではない。

もっと広い視点から、GTDのシステムに組み込んでいく必要がある。どのカレンダーにするか迷っている人は、次章をごらんいただきたい。

今はとりあえず、手持ちのものでかまわない。システム全体の感覚がつかめてくれば、新しいカレンダーを選ぶ基準もわかってくる。

ゴミ箱、リサイクルボックス

GTDを始めるといろいろなものが不要になるため、ゴミ箱を用意しておこう。私が指導したエグゼクティブの中には、オフィスのすぐ外に大きなゴミ箱を置くようになった人もいる。

システム手帳、デジタルの管理ツール

システム手帳やデジタルの管理ツールを使うかどうかについては、判断のポイントがいくつかある。

  • あなたがそもそもシステム手帳を使いたいと思っているかどうか。
  • 行動に関するリマインダーをどのように管理したいか。
  • ToDoリストをどこでどのぐらいの頻度で見直すか。

そうした基準で判断していくべきだろう。

前のセクションで紹介したアナログの道具類は、「把握する」「見極める」「整理する」のステップを行なうときに使うことができる。

「把握する」ステップでは、書類受けや紙を使っていく。

インボックスを「見極める」ステップでは、2分以内にできることにいくつも対応することになるが、その際に付箋紙やホチキス、クリップなどが必要になるだろう。

雑誌、記事、報告書など、2分以内で読めないさまざまな文書は別の書類受けに入れることになる。

その他にも、ファイルに分類しておきたいものがたくさんあるだろう。

あとはプロジェクトのリストを把握しつつ、カレンダーを活用したり、行動のリマインダーをまとめたり、連絡待ち事項を把握しておかなくてはならない。

それらを行なっていくには、なんらかのリストや分類のための方法が必要になってくる。

多くのシステム手帳やデジタルの管理ツールは、電話番号や住所録といった情報を管理できるだけでなく、リストの管理ツールとしても優秀だ(カレンダーもある意味リストである。時間軸に沿って項目が並んでいるというだけだ)。

20世紀の後半から現在までに発売されたシステム手帳やデジタルツールは、おそらく数千種ほどになるはずだ。どのツールでGTDを実践するかで迷っている人もいるだろう。今使っているツールがよいのか、それとも新しいツールを導入すべきだろうか。

結論から言うとどちらでもよい。

要は新しい習慣を身につけられればいいのだ。あなたにとって効率のいい方法を考えてみるとよい。デジタル情報をたくさんもっている人なら、デジタルツールのほうが便利だろう。

多忙な毎日の中でかけなければならない電話のリマインダーはどこでどう見直すのが最適か、といったことも考慮すべきだろう。また、ツールのデザインや楽しく使えるかどうかなども大事なポイントだ。

ただし覚えておいてほしいのは、ストレスフリーの整理術を実現するのはツールそのものではないということだ。

どのようなツールを用いるかは成功のために非常に重要だが、それだけでうまくいくわけではない。GTDを実践していくのはあなた自身であることをおぼえておこう。

優れたハンマーを持っているだけでは優れた大工になれない。優れた大工が優れたハンマーを使いこなしているのだ。

システム手帳やデジタルの管理ツールを選ぶときには、その目的が「リスト管理」であることを忘れないようにしよう。

リストは随時更新し、定期的に見直す必要があるので、それがラクにできるものを選ぶことだ。その条件さえ満たしていれば何を使おうとかまわない。あとはシンプルさとスピード、楽しく使えるかどうかで決めるといい。

スピーディで機能的なことに加え、「楽しい」の要素がないと使うのが面倒になる。

シンプルで手の届きやすい一般資料のファイリングシステムさえあれば、あとは好きなだけ情報を保管していくことができる。

ファイリングシステムの条件

整理システムは、シンプルかつ機能的であることが絶対条件である。ほかの人の仕事のやり方をチェックするときに私がまずやるのが、ファイリングシステムの評価だ。

第2章で述べたように、資料をたんまりとしまいこんだファイリングシステムが仕事の流れを妨げていることが多いからだ。

私が指導してきた経営者の多くも、ここを直すことで状況が驚くほど改善した。うまく機能するシステムがないと、物理的なスペースと頭のスペースがごちゃごちやになってしまう。

もしかしたら重要かもしれないと思えるあらゆる資料が、見極めも整理もされないまま残っていると、心が悲鳴をあげはじめる。

そうなると、GTDの流れが滞り、パイプが詰まるかのように仕事が停滞してしまうのだ。

私は幾度となく、クライアントと近くの事務用品店に赴いてファイリングキャビネットと大量のファイル、ラベルライターを購入し、机やサイドデスク、ひどいときには床に散らばっているこまごまとしたものを整理した。

この効果は絶大で、ひとしきり整理が終わると、仕事において集中的にやるべきことがはっきりわかるようになった。

ここでとくに問題になるのは、一般資料のファイリングである(特別な資料、契約書や財務関係書類などはそれぞれ個別のファイルに保管しておけばいい)。

一般資料とは、記事、パンフレツト、紙、メモ、印刷された各種文書などをはじめ、チケットや鍵、店の会員証、USBメモリーなど「資料」以外のものも含まれる。

気になる情報や有用なものだが、専用のファイルを作るまでもないもの、もしくは、ソフトウェアの分厚いマニュアルやセミナーのバインダーのように単独で棚に置くほどでもないものがこれにあたる。

あなたがデジタルツール派ならば、紙のファイルやフォルダの類はもはや必要ないと思うかもしれない。

たしかに将来的にはすべてがデジタル化し、パスポートや出生証明書、キッチン家電の取扱説明書、診療記録、いつか使う予定の外国の紙幣などを保管しておく物理的なファイルが不要になる可能性もある。

だが実際にその日が来るまでは、こういつた資料をきちんと整理しておくことができる物理的な場所が必要だ。

資料のファイリングを任せられる秘書やアシスタントがいれば、書類に「何々にファイル」という付箋を貼って渡しておけばいい。

ただ、そうした幸運に恵まれていなかつたり、そもそも誰かに任せるようなことができなかったりする場合(機密情報などを扱っている場合)は、やはりデスクやその近くに自分だけの整理システムが必要になる。

デジタルな情報が入ってくる場合でも同様に、次々と入ってくる一般資料を入れておく場所がパソコンやモバイル機器に必要だ。

多くの人は、メールソフトの受信箱をとりあえずの置き場所として使っているが、これでは情報を管理できているとは言えない。

「息子の学校行事のことが書いてあるのでこのメールをとつておかないと」と思ったら、受信箱に放置せずに「ロバート」「学校のスケジュール」といったフォルダをさっと作って入れておこう。

便利なソフトウエアはたくさん登場してきているが、整理システムにどう組み入れていくかを考え、一般資料を無理なく適切な場所に振り分けられるやり方を確立していく必要がある。

私は、一般資料を管理するためのアプリケーションを導入する際、3ヵ月間さまざまなやり方を試してみて、自分にとって最適な整理方法を確立した。

そして、「クルーズコントロール(自動的に物事がうまくいっている状態)」の域に達するにはさらに3ヶ月かかった。今ではこのシステムのことについて深く考えることなく、ただ自然に使いこなすことができている。

ファイリングのポイント

それがアナログだろうがデジタルだろうが、手近なところに自分専用のファイリングシステムがあるのとないのとでは大きな差が出てくる。

そうしたシステムがあれば、書類受けから気になっているものを取り出したり、メールを印刷したりしてそれについて判断し、適切な箇所に分類していくのに1分もかからないだろう。

また、書類をスキヤンして保存したり、情報をあちらからこちらヘコピーしたりするようなデジタル処理についても同様だ。

アナログ、デジタル共に、ファイリングシステムを整えることを強くお勧めしたい。人によっては紙の資料よりもデジタル資料のほうが多かったり、その逆の場合もあったりするだろう。

だが、デジタル、アナログの両方において合理的なシステムを整えておけば、役立つかもしれない情報を逃したり、とっておきたい情報が誤った場所にいってしまったり、といった事態を避けることができる。

ファイリングシステムが非効率的で、整理に1分以上かかるようだと、その書類やメールは放置されてしまう。

ファイリングシステムは、迅速かつ簡単に、しかも楽しく扱えることが重要だ。また、いつでも最新かつ完全な状態にシステムを維持しておくことも同じぐらい重要である。

これらの条件が満たされていないと、ファイリングが面倒なので、そもそも書類に目を通す気が起きなくなり、システムが機能しなくなる。今、そういう状況になってしまっている人も多いだろう。

しかし、機能的なファイリングシステムを手に入れさえすれば、整理するのが楽しくなってきて、仕事の効率が飛躍的に向上する。

実際、私はそういうクライアントをたくさん見てきた。たった1枚の書類(あるいは走り書きのメモ)を保存するために新しいフォルダを作らなくてはいけない、といった場合でも、気楽にファイリングができなくてはならない。

フォルダの作成と整理にはエネルギーがいるため、多くの人は、フォルダを作らなかったり、キャビネットや引き出しに未整理のまま放置していたりする。

出前メニューや列車の時刻表やらが引き出しに放り込まれてごちやごちやになっている人も多いかもしれないが、これではいけない。ファイリングシステムは常時改善していこう。

気軽に使えるようにするための、ちょっとした工夫はどんどん行なうべきだ。私が作り上げたシステムは大変機能的で、ほかの人にも好評である。私が気をつけているいくつかのポイントを以下に挙げてみよう。

一般資料のファイルは手の届く範囲に

ファイリングは手早く、簡単にできないといけない。紙1枚をファイルするためにいちいち席を立たなくてはならなかったり、デジタル文書を保存するためにパソコンのあちこちをいじらなくてはならなかったりするようでは、情報が整理されないまま積み上がっていってしまう。

さらに悪いことに、整理が必要なものがそこにあるという潜在意識のせいで、書類受けそのものに手が伸びなくなる。

私が指導した多くの人は職場を見直し、今では椅子を回転させるだけで手が届く引き出しに一般資料を整理できるようにしている。

整理システムは一つにしばる

私は、アナログの一般資料を管理するために、AからZまでのラベルがついたシンプルなファイリングシステムを一つだけ使っている。

プロジェクトや分野ごとに細かくフォルダを分けて整理してしまう人も多いが、あまりに数が多くなると置き場所を忘れて見つからなくなってしまう。

このあたりはバランスが必要だ。留意すべきは十分な保存スペースがあるかどうか、そして必要なときにさっと情報を取り出せるかどうかである。あとは個々人のニーズにあわせて自由にすればいい。

たとえばフォルダをトピック、プロジェクト、人物、会社といった大きなくくりにして単一のシステムで管理すれば、保管場所は三つか四つになり、場所がわからないくなることはない。

ガーデニングなら「ガーデニングー植木鉢」「ガーデニングーアイデア」といったようにサブカテゴリーを作っておいて、それらをまとめて「トピック」のGのところに入れてもいい。

サブカテゴリーはさらに細かくすることもできる。

デジタル情報に関して言えば、技術の進歩により検索がぐっと簡単になり、キーワードによるタグ付けもできるようになって、欲しい情報がさっと取り出せるようになった。

ただし、情報を保存する方法や媒体に関する選択肢が多すぎるため、こうした利点も複雑さと混乱を招きかねない。

コンピュータの能力はたしかに素晴らしいが、その柔軟性の高さゆえ、自分にとって扱いやすい、シンプルな手法を確立することが余計に難しくなっている。

デジタル情報においても、パッと見てわかる論理的な分類(理路整然としたいくつかのフォルダに分けるなど)がなされていると効果的だ。

試行錯誤を繰り返して使いやすいシステムを構築していくべきだろう。

デジタル派の人にとっての最大の問題は、情報を保存しておくのがあまりにも簡単なために、「とりあえず保存しておこう」となってしまいがちなことだ。

情報を集めておきながら、実際には有効活用できていないのである。

膨大な情報をただ保管しておくのではなくて、常に有効活用できるようにしておくには意識的な努力が必要だ。

私の経験からすると、「検索できるんだから整理しなくたって大丈夫」と考えるのはお世辞にも最適なシステムとは言えない。

膨大な情報であっても、何らかの効果的な方法で分類し、全体をさっと俯賊できるようになっていなければならないのだ。

必要なときに新しいフォルダを作れる状態にしておく

私は新しいフォルダを大量にストックしておいて、書類受けの中身を「見極める」ときに手を伸ばすだけで使えるようにしてある。

新しい情報をファイルしたいときに手元にフォルダがないのは非効率的だからだ。

デジタル情報の場合、分類のためのフォルダがさつと作れるように、活用しているアプリケーションの操作方法を確認しておこう。

中身が詰まりすぎないようにする

引き出しは4分の3以上にならないようにしよう。これ以上になったら危険信号だ。いっぱいになってしまうと、もう入れられないという潜在意識のせいでデスクに放置しがちになる。

私の場合、引き出しが窮屈になってきたら、電話で待たされている時間などを使って不要なものをどんどん捨てることにしている。

デジタルツールの場合は、ストレージの容量を確認し、必要に応じて要らないファイルを処分していこう。溜め込んだ情報を減らすことに抵抗を覚え、キャビネツトを増やそうとする人もいる。

しかし、考えてみてほしい。

これらの情報は使いたいときにさっと使えるから価値があるのであって、それができないのなら置いておく意味はない。

整理システムをより機能的にしたいなら、あまり使わない資料は別のところに保管しておいてもよい。

すでに終了したプロジェクトのメモや過去のクライアントのファイルはあとで必要になるかもしれないが、仕事場以外の場所に保管しておけば十分だ。

ラベルライターでファイルに名前をつける

物理的な資料の量がどれほど少なかったとしても、それらは意識的に扱っていくべきだ。ラベルを使うとファイルの機能性はぐんと向上する。

誰が見ても何の資料かすぐにわかるし、遠くにあってもカバンの中に入っていても簡単に判別できるからだ。

キャビネットの引き出しを開けたときに、アルファベットのラベルがついたフォルダが綺麗に並んでいれば、整理をするのが楽しくなるはずだ。

ラベルのついたファイルがなぜそれほど効果的なのかは、今世紀中にでも脳科学者が何らかの理屈で証明してくれるかもしれない。

それまでは私の言うことを信じ、ぜひともラベルライターを用意してはしい。自分専用のものを購入し、手元に置いていつでも使えるようにしておくといいだろう。

ラベルライターを人から借りようなどと考えてはいけない。もし、ファイルを作るときにラベルライターがなければ、書類は無残にも積み上がっていくはずだ。ホチキスのような定番アイテムだと思ったほうがいいだろう。

年に1回はファイルの大掃除をしよう

不要なものを定期的に処分することで、ファイルが掃き溜めになってしまう状態を防げるし、必要かもしれないと思ったものが入れやすくなる。

どうせ数ヵ月に一度は見直すことになるので、そのときにどれを残してどれを処分するかを決めるといい。デジタル情報の場合も同じだ。

前述したように、私は電話の待ち時間に不要なファイルを捨てるようにしている(電話会議で延々と長話に付き合わされたときなどにお勧めだ)。

また、私はすべての会社に「ゴミ出しの日」を設けるよう勧めている。

この日は全従業員がスニーカーとジーンズで出社し、電話を留守電にして、すべての「気になること」の大掃除を行なうのだ。

大きなゴミ箱をいくつか用意し、1日がかりで掃除をするわけだ。個人でやる日もカレンダーに書いておくといいだろう。こちらは休日や年末などがお勧めだ。

仕事の現場では、ファイル作成に60秒以上かかるようなものは積み上げられていく。

最後に必要なこと

作業時間と場所を確保し、基本的なツールもそろったはずだ。準備が整つたところで、次にやるべきことは何だろうか。

十分な準備をして最大限の効果を得たいなら、あと1つだけやるべきことがある。ほかから邪魔が入らないように、GTDだけに集中できる体勢を作ることだ。

必要な電話や秘書への指示は先に済ませておくか、いつそれをやるかを決めて目につくところにリマインダーを置いておこう。すべてのエネルギーをGTDに振り向けられるようにすることが重要だ。

私の指導に少なくないお金を払つてちやんと時間を確保したつもりの人でも、1日指導しているとほぼ例外なく別のことをやらなければならなくなる。

「そうだった、今日はこのクライアントに電話で報告しておかないと」「チヶットが買えたかどうか夫に聞かなくちゃ」といったことを思い出すのだ。

やり手の人たちでさえ、このようなことを忘れて毎日仕事をしているという事実は、私たちの社会がまだ未成熟だということを物語っているのではないだろうか。

さて、ここまではクリアできただろうか。次章では「気になること」のすべてを、実際の場所に集めてみよう。

意味が異なるものが同じ場所に積み上げられていると、その中身が何であるかを見るたびに考えなくてはいけない。それにうんざりしてあなたの頭はそれについて考えなくなってしまう。

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