MENU

第3章トップ企業の「採用」

株式会社カケハシ西村晃

目次

第3章トップ企業の「採用」

15秒サマリー文:北野唯我<何が書いてあるか?>この章では、強い採用を行う上での、①必要なコンセプトと、②その方法論が書かれています。

まず、採用する上で重要なのは、採用活動の成功を明確にすることです。

この章では、採用の成功とは「事業の成功」と「従業員の自己実現」を両立させる状態をつくることだと言います。

経営者にとって人材とは、事業リソースの1つです。

強い人材を採ることによって、スムーズに事業を運用する体制を作ることが可能になります。

そのために、人事は採用活動全体(CX:CandidateExperience)を設計しなければなりません。

CX(CandidateExperience)とは、UX(UserExperience)の採用活動版を言います。

強い人事は「面接がうまいだけ」ではなく「認知→一次接触(電話、mailなど)→二次接触(カジュアルな面談、面接など)→内定出し→承諾→入社」までを設計する必要があります。

人事とは、設計者であり、プロデューサーであるべきなのです。

<どういう人にオススメか?>このパートは「採用活動」に興味、関心のある方に推奨します。

主に以下の読者を想定しています。

・経営者→CXOポジションや、事業部長クラスの人事を採りたい経営者・人事→自社の採用力を強化したい企業人事、他の企業がどう採用しているかを知りたい人事

目的別!このページを見よ!3-1最高の仕事「採用」そして、その成功とは→92ページ3-2採用に関する経営からの問いに答える→100ページ3-3採用活動における採用担当の役割→106ページ3-4一流の採用担当になるための成長ステップ→112ページ

3-1最高の仕事「採用」そして、その成功とは

「採用強者」への誘い事業において、「売り上げを上げる」「プロダクトを開発する」という基礎的な価値を提供するのは言うまでもなく、「人」である。

優れた人材を獲得するための採用戦略については、各社が頭を悩ませていることであろう。

本パートでは、採用における原理原則と「CandidateExperience」のような概念・事例を交えながら、「採用強者」へと読者の方を誘うことを目的とする。

私はSansanという会社で採用のマネジャーを務め、3年間で150名から400名へと組織が拡大する様をリアルに経験してきた。

また、2019年1月より株式会社カケハシという創業3年のスタートアップにて採用や制度設計などの人事業務に現場の第一線で従事している。

その経験から大きな事業成長を遂げた要因の一つが「採用の成功」だと断言することができる。

ここでは、その際に経験した知見などもお伝えしていきたいと思う。

採用だけで一冊の本になってしまう程のテーマなので、本章ではメインの対象を下記の方に絞ることとした。

もちろんメインの対象でない方についても、多くの学びとなるように努めたつもりである。

・採用をこれから担当する新任担当者・採用の専任担当者をこれから置こうと考えている企業経営者・今まで自己流でなんとなく採用をやってきた担当者や企業・採用担当としての仕事にマンネリを感じている担当者や企業「採用」って辛い仕事なのかこの章をご覧になっている方は、何らかの場面で採用に携わっている方であろう。

まず冒頭に声高に下記の宣言をさせてほしい。

いきなり何だ!と思わずぜひ読んでほしい。

採用という仕事は「事業の命運を握るだけのインパクトを起こすことができ、多くの人の人生に主体的に関わることができる、この世に存在する中で最も事業貢献度が高く、最も成長のチャンスが多い、最高の仕事の一つである」と。

事業成長の鍵を握るという意味で、もはや社内のフィクサーの側面すらあると思っている。

さらには、後述する多くの要素を持っている一流のリクルーターになっていく過程にはビジネスマンとしての圧倒的な成長が約束されている。

そういった仕事なのである。

私がいきなり鼻息荒くこのように宣言をするには、もちろん根拠がある。

私はIT企業の採用責任者として働くと同時に、多くの企業様の採用コンサルティングに従事してきた。

その中で、多くの採用担当の友人やクライアントが疲弊し、日々の業務に忙殺されている姿を目にしてきた。

とあるメーカーの採用担当者の方は「現場からのオーダーに対応しているだけで、採用業務に主体的な楽しみを感じられない」と言うし、とあるITベンチャーの採用担当者は「日々のToDoをこなすのに必死で、自分が本当に事業に貢献できているのか、自分が成長できているのか不安です」と言う。

または、現場のメンバーから「採用担当って応募してきた人を面接するだけの簡単な仕事ですよね」と言われて意気消沈している方もいらっしゃった。

上記のコメントが自分のことのように感じられる人も少なくないだろう。

何を隠そう私自身が採用という仕事に携わった初期の頃は、同じような感情を感じていた。

そんな自分が「最高の仕事だ」と断言できるようになっていく過程で学んでいったこと、実践していることを本章にまとめさせて頂いた。

悩んでいらっしゃる採用担当の方に希望を提供できれば嬉しい限りである。

「採用」の成功を定義する必要性では、「最高の仕事」だと感じるために何をするべきか。

ファーストステップとして、まずは「採用の成功を定義」しよう。

なぜなら、ワクワクしながら働き、大きな成果を上げている採用担当はすべからく自分なりの成功を明確に定義しているからである。

狭義には「現場からのオーダーに応じ、人員を充足させること」が成功だと定義することも可能であるが、全然ワクワクしないじゃないか。

ここではもっとプロアクティブな成功の定義を行いたいと思う。

採用ポリシー策定の必要性採用の成功を定義する前提として、採用ポリシーについて考えたい。

採用ポリシーとは、「どのような人物を採用したいのか」を明文化したものである。

もし、あなたの会社が採用ポリシーを掲げていないのであれば、すぐに明確なものにならないとしても、作ることをお勧めしたい。

もしあなたの趣味が「料理」だった場合を考えてみて欲しい。

誰かに料理を振る舞うシチュエーションにおいては、「目的」「ジャンル」「食材」「予算」「盛り付け」などなどを明確にしていくはずだ。

何かの成功(料理の場合は「美味しいと言ってもらう」など)に向かう際には、明確にすべき項目があるということだ。

採用におけるその一つの大事な要素が「採用ポリシー」なのだ。

ひとえに採用ポリシーといっても、企業ごとに千差万別である。

ここでは、参考のために世界一有名な採用ポリシーと言っても差し支えない「Google」の採用ポリシーを例示として掲載させていただく。

非常に有名なのでご覧になったことも多いと思うが、かなり明確に採用すべき人物像を定義していることを確認いただけると思う。

天下のGoogleの採用ポリシーを見てビビらなくて大丈夫である(笑)。

実感値だが、ここまで明確な採用ポリシーを持っている企業は全体の1%もない。

まずは、採用ポリシーを策定するということが大切なのだ。

採用ポリシーを策定している企業も全体の15%程度な印象であるし、さらには明文化することができれば、上位10%に入ることができるであろう。

それほどまでに大切なことなのだが、各企業で明確にされていないのが採用ポリシーなのである。

設定のレベル感であるが、例えば下記のようなものでも構わない。

まずは設定してみよう。

・好き嫌いでの採用はしない。

事業にとって必要な人を採用すること・一部のメンバーの恣意的な判断で採用決定しない。

他職種のメンバーにもチェックに入ってもらうこと・現場のニーズに引っ張られすぎないこと。

経営戦略の整合性を考えること事業成長・自己実現・組織の活性化では、採用ポリシーが明確になっている前提で、私なりに採用の成功の要素を洗い出すと下記のようになる。

1、「採用ポリシーに則り、基準をクリアした仲間に自社にジョインしてもらうことで事業成長を実現すること」2、「ジョインした仲間が事業成長と共に自己実現を叶えること」3、「組織の多様性が増し、組織の活性化が実現されていること」図示すると下記のような図となる。

採用の成功において大前提となる要素は「事業成長」である。

ここのピン留めは非常に重要である。

私が所属してきた企業においても、「事業成長」という目線が抜け落ちた施策は常にNGとなっていた。

事業が成長することでより多くの顧客にベネフィットを届けることが可能になるし、より大きな影響力を持つことができる。

引いては、継続的かつ多くの雇用を生み出すことも可能になる。

事業成長のためのプレイヤーは簡略化すると「事業」と「個人」と個人の集合体である「組織」の3つ。

採用とは、事業の目線に立てば、「事業リソースを確保し、円滑またはチャレンジングに事業を運営する体制を整えること」であり、個人の目線に立てば、「自己実現(キャリア、収入基

盤、成長など)の場の提供」である。

そして、事業を支える個人の集合体である組織が「活性化」することで、マンネリ化することなく非連続な成長を実現することが可能となる。

この3つの要素のバランスをとりながら、事業成長を実現して初めて採用の成功と言えるのではないだろうか。

両立のためには双方ともに短期的な目線のみならず、中長期の目線が必要となり、そのバランスをとっていくのもHRの重要な機能であり、言い換えれば「ヒト」と「コト」の双方の目線が必要ということである。

ぶっちゃけていうと、HRの機能として上記の3つを高い次元で理解し採用を実行することが出来れば、仕事の5割は終了したと言える。

定着施策や育成施策はもちろん講じていくことになるが、採用の成功が全ての事業のスタートになると考えている。

自戒を込めて書くが、多くのHRパーソンは「ヒト」に寄り過ぎてしまい、「コト」の目線が弱いように感じている。

詳しくは後述するが、一般的な経営の知識を高めることや、事業への理解を高めることは採用の成功において圧倒的な前提になると肝に銘じるべきである。

ワクワクする成功の定義をミッションに落とし込む前段にて、成功の要素についての洗い出しを行なったが、もう一歩踏み込んでみたい。

定義を読んだだけでテンションが上がるようなミッションに仕上げることをオススメしたい。

ワーディングにこだわりたいということだ。

「ああ、自分ってこんなに素敵な仕事をやってるんだ!」と思えるだけで、仕事のクオリティは変わってくる。

ましてや、チームで採用活動をしているのであれば、それはある種の判断基準にもなってくるだろう。

あくまで参考程度だが、私自身の「ミッション」を実際に使っているワーディングで下記に記載させていただいた。

また、数社の大きな成果を出している採用担当者に聞いた、採用の成功の定義を紹介したいと思う。

是非、みなさんなりのミッション考える一助にしてほしい。

筆者自身のミッション「当社の採用チームは、採用を通じて『圧倒的な事業成長』と『仲間の幸せ』を高い次元でマッチさせることを使命とする。

また、組織の潤滑油としての役割を担い、『組織の活性化』にも大きな責任を持っていると自覚する」2000名規模の医療機器メーカーの採用担当者(採用担当者は10名)「各事業部を適切に機能させるために、採用活動は存在する。

そのために取るリスクは全て前向きなものであり、どの事業部よりも野心的で失敗の多いファクションであろう」150名規模のコンサルティング企業の採用担当者(採用担当者は1名)「採用で会社を勝たせることがミッション。

事業が成功するために仲間が必要だし、今のフェーズで入ったみんなの個人としての成功も応援したい。

〇〇(社名)の採用担当として、最もプロダクトと仲間を愛している存在でありたい」20名規模のITスタートアップの人事担当役員(採用の専門担当は無し)「採用とは、営業であり、マーケティングであり、事業活動そのものである。

採用の成功が事業の角度を決めるとし、最優先事項として取り組み、仲間集めに絶対に妥協することはしない」いかがだろうか?4者4様の「ミッション」をご紹介した。

お気づきだろうが、採用の成功の定義やミッション自体には正解など無い。

定義することに大きな価値があるし、事業の状況や会社規模によって大胆に見直すことも必要であると考えている。

何よりも大切なのは採用担当であるあなたが「ワクワク」している状態だということを感じて頂ければ幸いである。

3-2採用に関する経営からの問いに答える

経営との共通認識を持っているか?企業の採用担当として、経営からのどのような問いに答えていけばよいのか?前述の通り「事業成長」に向かって採用活動を行うにあたり、経営陣との共通認識がないことはあり得ない。

事業の目指すところを採用担当が深く理解し、伝える言葉を持つことが全てのスタートなのである。

2014年当時、200名規模の企業の採用担当の知人から「自社の事業が好きじゃないんですよね。

このご時世で伸び代もないと思うし、面接していても感情移入出来ないんです」と相談されたことがある。

若い担当者の方だったが、「社長や上司とは事業について会話してる?」「事業のどういった点や展望に同意できないの?」と聞いてみた。

するとその担当者は「いや、そこまで話せてないですねー。

自分なんかが話しても意味がないし……」とのことであった。

みなさん、この事実をどのように感じられるだろうか?上記のケースの場合は、採用担当者と人事部長の1on1の設定を促したことをきっかけに、人事部と経営陣のMTGを定期的に実施する運びとなった。

結果、採用担当者の事業理解が深まるとともに、前述の「採用の成功」についての共通認識を経営陣と人事部で持つに至った。

今ではその企業は、500人を超える規模に成長され、当時の採用担当者の方は10名を超える採用チームのマネジャーとして活躍されている。

経営との距離を感じているのであれば、直接対話すると好転に向かうという一つの事例である。

とはいえ、全てのケースで経営陣とのコミュニケーションができるわけではないし、もし深く理解しているにもかかわらず、事業の目指すところに共感できないのであれば、それはマッドサイエンティストと一緒だ。

あなたの技術や想い、熱量を正しいことに使って欲しい。

今すぐに転職すべきとまでは言わないが、そういった選択肢も検討したほうがよいのではないだろうか。

KPI採用とROI採用さて、「経営と採用において何をどうやって握るか」という議論の前提として、大胆に採用というものを二つに分けてみたい。

そう、「KPI採用」と「ROI採用」の二つである。

「KPI採用」とは、一般的にイメージされる採用活動に近く、採用の歩留まりや採用単価を意識し、採用の「量」や「数値管理」に意識の多くを向けるような採用活動である。

多くの人事が取り組んでいる、地道で大切な採用活動であると言える。

この採用への取り組みは企業のどういったフェーズでも発生しうるものであろう。

対して、「ROI採用」とは、スタートアップにおけるCXOや経営人材の採用であり、大企業などにおける役員のヘッドハンティングや重要ポジションの採用などである。

つまり、そこには「KPI採用」のように細かな数値管理は存在せず、1名の採用が会社の命運を握るような採用である。

まさに、「質」を念頭に「大きなリターンを意識しての採用活動=ROIの採用」である。

誤解なきように書くが、どちらの採用が重要であるという議論は不毛である。

経営からの問いへの答えとして、今目の前にある採用課題が「KPI」と「ROI」のどちらの採用で解決しうるものなのかを考えるということが重要であるということであり、採用担当として常に繰り出すことのできるカードとして手元に持ちたい考え方である。

企業様の採用のサポートに入らせて頂くと採用計画が上記の区別なく立てられているケースに多く遭遇する。

個人的に痛い経験としては、例えば「採用単価」というKPI的な考え方に縛られ、大胆な「ROIの採用」をすることが出来なかったことがあった。

今思えば絶対に採用しておくべき人材であったのに……。

採用単価や待遇の考え方採用単価というのは非常に重要な考え方である。

むしろ採用担当者の熱意や行動で採用におけるミラクルが起きることもある。

後に述べることはそういった熱意を否定するものではないし、既存社員との年収バランスもあるだろうし、金満採用をするべきという主張でももちろんない。

その前提で読んでいただきたい。

一般的に経営との会話においては、採用目標の人数によって採用予算が存在し、各採用担当が採用単価を適正にすべく試行錯誤していることであろう。

一昔前の転職市場を考えると、超大手企業からベンチャー企業への転職は今ほど当たり前には行われていなかったし、スタートアップが超大手企業とバッティングすることもそこまで多くなかった。

どちらかというと、KPI採用の世界でいかに採用単価を抑えて、オペレーションをうまく回すかが重要視されていたという側面がある。

ただ、現在の採用マーケットはそうではない。

規模や業種が違う企業とも、あらゆるポジションで採用バッティングする、まさに「Warfortalent」の群雄割拠の戦国時代である。

その時にKPI採用だけをグルグル回しているだけでは、事業成長に本当に必要な仲間に自社を選んでもらうことは出来ない。

では、どうすればいいのか?以下の二つが考えられる。

1、特殊ポジションや特殊な選考ステップを用意し、候補者の意向度を上げる2、KPI採用とROI採用で予算を別にするよう経営陣と握る1の「特殊ポジションや特殊選考ステップの用意」については、ある程度イメージが湧く方も多いかと思う。

これですら難しいというケースは散見されるが、この点については経営や現場に比較的交渉しやすいのではないかと思う。

問題は2の「別予算の確保」である。

これははっきり言って一筋縄ではいかない。

相当の覚悟が必要だ。

経営陣から「おお、いいよ!予算は上限なし!」なんてなる筈がない。

実際に私は、本当に来て欲しい候補者を年収や待遇面の理由で10名近く連続で入社頂けなかった経験を持っている。

背景としては、過去に他社で役員を務めていた方が大幅な年収ダウンを受け入れて、入社し大活躍したという事例があったため、オファー金額の柔軟性を持つことが出来なかったのである。

俗に言う「(年収大幅ダウンという)踏み絵を踏ませる採用」である。

もちろん覚悟を問うという意味で、一定の必要性があることは認識している。

しかし、その方の前後の採用を分析してみると、その方以外には全く承諾者が出ていないことが明確であった。

私は「ROI採用には別予算を持つべき」と上申し続け、遂に経営者から「西村、これはいよいよオファー金額やポジションを検討しなきゃダメなのかもな」となったのだ。

他社のケースを聞くと、年収は上げることが難しいので、サインアップオプション(入社一時金)で調整する場合もあると聞く。

ROI採用における採用担当の覚悟とは「経営と一緒に採用で(全力を尽くしながらも)負け続ける覚悟」と言えるのかもしれない。

「待遇」でも戦えるように経営と握るのか、待遇の改善は行わずあくまで「企業の魅力」で勝負するのか。

その場合は、10戦して1勝もできない可能性を許容しうるのか。

などなど、議論は尽きない。

全てにリッチな状況というのは余程のことがない限りあり得ないので、どうやりくりするのかが採用担当としての仕事の醍醐味の一つであると言えるのではないだろうか。

何れにせよ、オファー金額については採用マーケットと対峙しているプロフェッショナルとして、適切なマーケットバリューを把握し、採用の意思決定者に確度の高い選択肢として下記のように提示できるといい。

これはKPI採用であってもROI採用であっても同じく重要な考え方である。

年収500万円の場合の決定確度当社:他社=4:6年収600万円の場合の決定確度当社:他社=7:3(候補者の適切なマーケットバリューを知りたい場合は、優良エージェントや同業他社の人事からの情報収集が有効である。

これについては、別途記載することとする)

3-3採用活動における採用担当の役割

IJAIC(アイジェイク)への変遷さて、ここまで「採用担当」という言葉を気軽に使ってきたが、本パートではその具体的な役割を見ていきたい。

時代によって採用担当の役割も変遷してきている。

私は旧来型の採用担当の役割は頭文字を取って、「IJC(アイジェイシー)」と呼んでいる。

I:Introduce(会社や事業、社員などを適切に紹介する機能ex会社紹介や社員紹介など)J:Judgement(面接などの候補者とのやり取りを通じて、自社とのマッチを判断する機能ex書類選考や面接での評価など)C:Coordinate(候補者の応募から入社までのフローを適切に進めていく機能ex日程調整や面接官アサインなど)ここ数年で、採用環境の激化により上記に、A:「Atrarct(候補者に対して、自社を適切かつ効果的に魅力づけする機能)」I:「Impact(候補者の人生における、自社との出会いの価値を最大化する機能)」を加えた「IJAIC(アイジェイク)」に変遷してきている。

Attractはその名の通り、自社の魅力づけをする役割である。

情報発信を実施する事で採用ブランディングの向上や中長期の関係性構築のために社内のイベントに招待したり、ミートアップを実施したりする事で候補者に訴求していく活動である。

外資系企業の中には、スポンサードしているテニスの大会に招待する例もあるのだ。

前パートで言及した待遇面での訴求や独自のポジションの提示などを含めたAttractに長けた企業がここ最近は採用マーケットを席巻してきたイメージである。

ベンチャー企業で言えば、メルカリ社などが好事例であろう。

オウンドメディアである「Mercan」などでの情報発信が採用の成功に繋がっている。

Impactの重要性Impactについては、Attractとは似て非なる役割だと認識をしている。

単に言葉で伝えたり、Web上での情報発信をするだけではなく、より生々しく、候補者に直接的に深く届くイメージだ。

Impactを言い換えると、候補者との時間(特にリアルでの面談や面接)の価値を最大化する役割だと考えている。

自社で採用活動をしている際に、候補者の方に競合する企業の印象を聞く事がよくある。

世の中的に採用が強いとされている企業の印象に必ず出てくるのが、色々な言葉に換言されるが、「面接官や人事担当者が自分に真正面から向き合ってくれた」というものである。

候補者は人生の貴重な時間を使って自社に話を聞きに来てくれているのだ、という根本的な考えから生まれるこの姿勢の徹底は、明日からでも実践できるし、後に言及する「候補者体験」として大きな差別化になる。

参考までに、私が実践している具体的な事例を1つご紹介しよう。

それは、「合格の方だけでなく、落選や辞退となる方にも本気で向き合う」という事である。

面接をしていると残念ながらポジションニーズに合わないケース、現段階で能力の観点から落選となるケースや内定を出した方に承諾頂けないケースもままある。

その際の対応を考えるという事である。

合否に関係なく、私は面接や面談を担当した方には本気のフィードバックをさせて頂いている。

お会いしている最中にお話しすることもあるし、面談後にフィードバックをお送りすることもある。

その際には失礼にならない様に「人事として当たり障りないコメントをするのではなく、感じたことを率直にフィードバックしてもいいですか?」と確認する様にしている。

もちろん応募先企業の社員であり、面接官という立場なので、フィードバックを断りづらい側面もあるだろう。

しかし、60分という面接だったとしても移動時間や会社の情報を調べる準備時間、レジュメを作成する時間などを加味すれば120分近い時間を自社に使ってくれているのだ。

もし、自社ではマッチしないとしても今後の転職活動やビジネス人生にプラスになるフィードバックをできるのであれば、その時間を使ってくれたことに感謝を伝えられるのではないかと考えている。

フィードバックの内容はポジティブなものであれ、改善点であれ自身の言葉で、感じたことを謙虚な言葉でありながら大胆に伝える事が肝要である。

「経歴を聞いてどう思ったか」「話し方にどんな印象を抱いたか」などの感想や「ご自身では話をされなかったが、人事として強みだと思う事」「現在は受けていないが、マッチすると感じた業界や会社」など人事としてのスペシャリティを発揮できるとなお良いであろう。

そうすると何が起きるのか。

個人的に良好な関係を築く事に至るのだ。

入社に至らなかった方からの候補者の紹介が発生することすらある。

私自身は「裏のKPI」として、「辞退者や落選者からの候補者紹介を○○件もらう」というものを設定している。

これは、紹介をもらうことを目的としたKPIではなく、そこまで候補者と向き合い、本気のコミュニケーションをすることを自身に課すために設定している目標である。

口ばっかりの採用担当者にならないための自己研鑽が必須となるこの裏KPIを私は個人的に非常に気に入っている。

ステークホルダーマネジメントここまで、社内の関係者や候補者との関係性に言及してきたが、それ以外に大切なステークホルダーが社外に存在する。

それは「人材紹介会社の担当者」「採用媒体の担当者」などの採用ベンダーの方々である。

詳しくは6章にて担当の寺口氏が言及をしているので、ここでは最も大切な考え方と具体的な手法についてのみ記すこととする。

採用ベンダーが採用の成功に占める割合は非常に大きい。

私が採用ベンダーの方々とコミュニケーションする際に気をつけている事をまとめてみた。

ステークホルダーとの関係性において私が重要視している考え方は以下の3つ。

1、彼らを「パートナー」として認識すること。

そして、こちらから認識するだけではなく、先方からもそのように感じてもらえるようにすること。

2、彼らの「成果」について認識し、行動すること。

ステークホルダーごとに、彼ら自身が重要視しているKPIが違うケースがあるので、要注意である。

3、新しい「チャレンジ」を受け入れる度量を持つこと。

彼らは親しい採用担当者には色々と提案をしてきてくれる。

可能な限りその提案を受け入れる度量を持つこと。

「パートナーと認識すること」については、当たり前と思われるかもしれないが、できていない担当者が非常に多いように思う。

先日もある打ち合わせで「〇〇の人事の方は、口ばっかりで理想論は語るものの、対応は雑で僕らを単なる業者と思ってる節があるんですよね」という辛辣なコメントを聞いた。

あくまで、自社の成果にコミットすることは大切だが、パートナーのモチベーションや心情に配慮した対応を意識することが本当に重要である。

自社の情報のスピーディーかつ適量なインストールを欠かさないのはもちろんのこと、言葉遣い、レスポンススピードやその分量などでシビアに見定められていることを自覚したい。

また、「パートナーの成果を意識すること」についても同様である。

パートナーは慈善事業として採用を手伝ってくれているわけではない、ある種ドライに言えば彼らも「ビジネス」としてお付き合いしてくださっているのだから、当然のごとく目標を追いかけているはずだ。

迎合する訳ではないが、例えば月末で数字を追っている営業マンに、無理のない範囲で助け舟を出してあげることができれば、どうしてもこちらが困っている際に一肌脱いでくれるケースも少なくない。

そんなヒューマンな関係を構築できると成果につながるだけではなく、良い人脈に繋がっていくケースもある。

最後に、「チャレンジを受け入れること」であるが、これは「新サービスの提案を受けること」や「募集要項にドンピシャではない候補者を面談すること」などが当てはまる。

もちろんリソースの問題から全ての提案を受け入れることは難しいとは思うが、こういった提案を受け入れてくれる採用担当者には、パートナーも愛着を持って接してくれるものである。

もし、さらに踏み込むことができれば、「採用決定時などに担当者と労いの会を開く」ことや「関係者を招いてのクローズドな懇親会」などで、直接的な業務外の話もできるような個人的な関係を築くことができれば尚良い。

オンとオフのコミュニケーションを繰り返していくことで、人間としての付き合いに進化することができる。

上記について「当たり前だ」と思われる方も少なくないだろう。

もし、あなたに勇気があれば懇意にしているパートナーに「自分や自社の対応で改善点があれば教えて欲しい」と聞いてみよう。

その際に、他社の良い事例などを聞くことができれば一石二鳥で成長のチャンスが到来する。

耳が痛い話をされるケースもあるだろうが、そういった対話の中で信頼関係とは構築されていくものである。

そして、そうした信頼関係の中で「現在のリアルな人材マーケット情報の収集」や「有力な候補者の優先的な紹介」などに繋がっていくのである。

実は上記に挙げた三項目は「人間としての付き合い」の中では当たり前のことではないだろうか。

ぜひ、この機会に振り返って頂きたい。

3-4一流の採用担当になるための成長ステップ

一流の採用担当が持っている要素冒頭で、採用という仕事は「事業の命運を握るだけのインパクトを起こすことができ、多くの人の人生に主体的に関わることができる、この世に存在する中で最も事業貢献度が高く、最も成長のチャンスが多い、最高の仕事の一つである」とお話しさせて頂いた。

本章では具体的にどういう要素を持っていると、上記のレベルで体現できるかをお話ししたい。

事業理解と社員理解のために自社の事業やプロダクトを知る事は言わずもがな重要であるし、自社の置かれているマーケットの現在や展望を知ることが重要だ。

1つの基準としては、社内のセールス担当と同様に営業資料を流暢に説明できるレベルでありたい。

そして、その全てを言語化し自身の言葉で語れるように編集する必要がある。

具体的には、私は入社当初に志願して営業の同行を5件行った。

社内のトップセールスと言われる方に付いていき、実際の営業の現場を体験するのだ。

訪問営業を3件、オンラインの営業を2件同行するうちに、トークの組み立てや重要な機能、そして何よりお客様がどんなベネフィットを自社の商品に求めているのかを知る事ができた。

それだけではなく、言語化のために実際にセールス担当が受ける知識研修や営業研修にも同じカリキュラムで参加し、営業デビューするためのロープレテストを受けて合格した。

実際にセールス担当として成果を上げるには、さらなる知識や経験が必要であることは重々承知であるが、ここまでやると会社や事業を自分の言葉で語る事ができるようになっていた。

もし、同行などが難しいようであれば、実際に自社のセールス担当に自分に対して営業をしてもらうのも有効かと思う。

また、事業部の会議に定期的に参加することも効果的だ。

採用担当の通常業務をしていると、どうしても事業の現場から一定の距離が開いてしまうのは仕方のないことである。

しかしながらリアルタイムの事業の進捗や目標をキャッチアップする事は社外の方とコミュニケーションする基礎でもある。

そこで、各事業部の会議に参加するのだ。

営業系の会議であれば、大型案件の受注の情報や目標の進捗などを知ることが出来るし、開発系の会議であれば重要な機能開発や場合によっては、どのような課題で顧客が困っているのかを生々しく知ることが出来るだろう。

さらには、社員との定期的なコミュニケーションの場となり、そこから元気のない社員に気づくといった副次的な効果も期待できる。

事業理解と同様に非常に重要なのは「社員を知る」ことである。

ここについては詳細を解説したいと思う。

では、何人ぐらいの社員についてどの程度知る必要があるのだろうか。

これには基準は無いが、役員、各部署の役職者や著しい成果を出しているメンバーについては、絶対に把握しておきたい。

「IJAIC(アイジェイク)」のIntroduceやCoordinateにおいて、より具体的にどのように紹介するか、誰と会ってもらうかを判断するためであり、候補者との共通点を見つけることができれば、面接フローにおいて非常に有力な面接官候補となるからだ。

例えば、現在リクルートにお勤めの方に元リクルートの社員に会ってもらうことはAttractの効果が高いことは想像が容易であろう。

私は、社員数150名のタイミングで入社したが、当時のグループリーダー職(メンバーのマネジメントを1名以上行っている)全員の20名程とランチないしは飲みをご一緒させて頂いた。

90分から120分の時間の中で、その人の経歴や人となりを自分にインストールするのである。

基本的には1対1の場をセッティングさせて頂いた。

その際に定型の質問として、実際に使っていたのは右記の表である。

全員に絶対に聞きたい事項については、このように事前にまとめていくことをオススメする。

私は「採用で成果を出すために、既存社員の方について知る必要性を感じていて、何名かの方にインタビューをさせて頂いている」と正直に伝え、事前に対象者に4つに分類した下記の質問リストをお送りした。

事前回答は必須にせず、当日こういった事を聞きたいという意思表示をしておくということだ。

これによってなんとなく盛り上がったが大切な事が聞けなかったという事態を防ぐ。

やりすぎだと思われるかもしれないが、このような徹底した姿勢を見せることは採用のプロとして当たり前に必要だと思う。

「入社動機」・当社への入社動機と意思決定のストーリー・他に選択肢として考えていた企業・前職から転職しようと思ったきっかけ(可能であれば)「業務内容とやりがい」

・担当している業務の内容・現在のミッションや目標など・今の業務の魅力「会社について」・当社の魅力・当社の事業や組織の展望・社風「価値観」・人生で大切にしている価値観・仕事で大切にしている価値観・新しく入ってくる仲間に求めるものこれに加えて、フリーのディスカッションの中で「その方の人生そのもの」や「仕事上のエピソード」を可能な限り聞かせて頂く。

可能であれば、失礼のない範囲で出身や学生時代にどんなことに熱中していたのかなども知りたい。

業務上必要という側面もあるが、純粋にその方に興味があるから知りたいというのがもちろんある。

そういった姿勢を見せれば多くの場合は、好意的に答えてくれるものである。

とはいえ、いくつかの注意点がある。

(1)自己紹介も含め、自分から自分の人生や入社動機について簡単に話してからスタートすること。

内容自体が自己開示が必要なものなので、まずは自分からさらけ出そう。

(2)自然な会話の中で聞けるようにする。

一つずつ質問をQ&Aのように潰していくと、インタビュイーは話しづらいものだ。

私の場合は「入社動機」をまず聞いてしまい、そこからの話の派生は流れに任せていた。

あまりにも脱線したら、元に戻せばいいだけだ。

(3)終了後はお時間を取ってもらった御礼をしっかりするとともに、具体的に面談や面接をお願いするケースがある事をお伝えしておく。

頂いた情報が採用力の強化につながっているのだとお伝えする意味も含まれるし、今後協力を仰ぎやすくなるという効果もある。

私の場合は、このプロセスによってエンジニアのマネジャーと関係性を築けた事が業務上特に有用であった。

採用担当の中にはエンジニアとのコミュニケーションに課題を感じていらっしゃる方も多いが、相互理解のインタビューの場を作り、一人でいいからその部署にバックグラウンドを含めて気心の知れた仲間を作るのだ。

それだけで色々な場面で力を貸してくれるようになるのでオススメである。

ビジネス理解と自己理解先ほど、入社に至らない候補者に本気でフィードバックしているとお伝えした。

はっきり言って労力はかかるし、毎回真剣勝負である。

薄っぺらいフィードバックをしようものなら、候補者の方に失礼であるし、聞きかじりの知識をひけらかす事は何よりダサすぎるではないか。

そういった場面に必要とされるのが「ビジネス理解」と「自己理解」である。

ビジネス理解とは、自社の事業を理解するというだけではなく、自身が経営者や事業責任者などに近い形の知識や経験を得るという事を指している。

業務の中で経験することが難しい側面もあるだろうが、少なくともそういった立場の方と会話がスムーズにできるレベルを目指すことが必要だろう。

最低限の財務知識や事業知識すらなく候補者に対峙している採用担当者が非常に多いのだ。

例えば、上場企業であれば、自社の中期経営計画や決算書をきちんと把握するのは当たり前であるし、未上場企業であってもPLやBSを読み解ける知識はビジネスマンの基礎の基礎として必要ではないだろうか。

入門書なども多くある分野だけにぜひ学んでほしいと考えている。

また、業界特有の知識というのもきちんと得なければならない。

3年半前にITスタートアップに転職した際は、全く専門用語が分からなかった。

そこから社員の方に書籍や有用なWebサイトを教えていただき、必死にキャッチアップした。

学生時代より勉強した気さえする程度だ。

しんどい経験だったが、あの時間があったからハイクラスの方と対峙した際にも臆することなく対等にコミュニケーションができているのだと自負している。

「自己理解」とは、「無知の知」の前提に立った自身のメタ認知であり、そこからくる継続的かつ積極的な学びの必要性を指している。

ギリシャの哲学者ソクラテスの言葉とされる「唯一の真の英知とは、自分が無知であることを知ることにある」という無知の知。

私自身完全にできていないが、「分かった気になるのではなく、自分が分かっていない前提で生きる」態度を持てているか常に自戒をするようにしている。

自分がどのように見られているのか、自分の発言がどのように伝わっているのか、そういったことに対して適切に「恐れ」を抱くためにも「無知の知」は必要な態度であるように思っている。

誰かに偉そうにアドバイスをする前に、自らを省みる事をしてみるだけで、成長の角度は上がっていくものであろう。

さらには、その前提に立つ事で「学び」も加速していく。

自身が知らない事は何も恥ずかしい事ではなく、積極的に学べばよいという前向きな諦めを得ることが出来るからだ。

この考え方を知り、私自身非常に楽になった記憶がある。

社外の人と会うと、全て知っている態度を取らねばと強がっていた時期がある事を白状したい。

かなりカッコ悪かっただろうなと振り返ると顔から火が出そうである(笑)。

継続的な学びをしている前提で、分からない事を分からないと言える素直さを一流の採用担当は持っているのである。

聴く力と語る力社外の方と数多く接触する採用担当は「聴く力」と「語る力」をどこまで向上出来るかが採用の成功において重要である。

「聴く力」については、小手先のテクニックではなく、姿勢として身に付けるべきものであると感じている。

採用活動とは、相手の人生の時間の一部に向き合うという事である。

あまりに壮大なテーマであるが、先に述べた通りフィードバック前提で面談に臨む事で聴く力は圧倒的に鍛えることが出来る。

手を挙げて先生に質問する前提で学校の授業を受けるイメージに近い。

聴く力を本質的に理解するために、『1000人の患者を看取った医師が実践している傾聴力』(著:大津秀一大和書房)という本をオススメしたい。

「聴く」とはどういう事なのかを学べる名著である。

その上でさらに実践的にレベルアップしたいという事であれば、コーチングのメソッドなどを取り入れてもいいと思う。

聴くポイントを一つ挙げるのであれば、「OneMore踏み込む」ということが挙げられる。

傾聴をした結果という前提だが、聴き切った後にそれで終わるのではなく、通常は質問しづらい深さまで踏み込んでみるということだ。

例えば、過去の職歴について「ぶっちゃけ、これは言いづらいなーという恥ずかしい失敗ってあります?」といった具合だ。

傾聴によって、関係性が築けていれば聞けるはずである。

「語る力」は前段で言語化された、会社や事業については話せるようにする事だ。

特に流暢に喋る事が苦手な方もいるかと思うが、そういう人にオススメしたいのは「キーワード」や「ストーリー」をいくつも準備しておく事だ。

自社を表す言葉を用意しておく事で、うまく話が展開しない場合やImpactを与えたい局面で主導権を握る事ができる。

私が実際に使っていた実例を挙げる。

「私は当社の社風を『サーカス』のようだなと感じています。

みんなの目指すものが明確かつ共通で、一人一人がスペシャリストでありながら、ファミリーのような暖かさを感じる社風だなと」「私たちは自分たちの事業を『プロジェクト』だと考えているんです。

会社の拡大が目的となる事はなく、極端な話ですがプロジェクトの目的が達成されないのであれば、私たちの存在価値はないとさえ言えるかもしれません。

だからこそあらゆるメンバーに挑戦するフィールドを提供できるんです」「当社は平均年齢35歳の『大人ベンチャー』です。

受容力の高い会社なので、大手ご出身の方や役者出身の者など、幅広いメンバーが活躍していますよ」「手前味噌かつ言い過ぎかもしれませんが、当社の社長は、まるでスティーブ・ジョブズさんのようだなと感じる時があるんです。

毎日同じタートルネックを着ているという訳ではないんですが、先見の明が半端じゃないなと。

この人についていきたいと思わせるリーダーシップを感じています」などである。

こういったものを自身のメモ帳などに書き溜めていく事は、芸人の方のネタ帳のような個人の資産であり、必ず「話す力」の向上に繋がっていくだろう。

健全な喧嘩力ってなんだ?物騒なように聞こえるが、非常に重要なのがこの「健全な喧嘩力」である。

分かりやすく喧嘩と表現しているが、言い換えれば事業サイドを尊重しつつも、必要なことと感じれば現場とバトルしてでも、協力を仰ぐ姿勢を指している。

4つの理解(事業、社員、ビジネス、自己)を前提に意見をごり押しするのではなく、健全に議論をするのである。

具体的には採用の局面において、事業サイドと足並みが揃わない場面などを想定してみよう。

例えば事業責任者が採用後の配置や育成について、そこまでアテンションを張れていなかった事例がある。

その際には、事業責任者に対して事実をベースにして粘り強く会話をさせてもらった。

決して現場を責めるのではなく、一緒にやれることがないか探るスタンスだ。

その際には厳しいフィードバックをしなければならない局面もある。

そして、採用担当としての自省を含めながら、どのようにすれば仲間が安心して活躍できるかのプランを共に考えるのである。

また、前述の通りROIの採用において待遇改善を経営と議論したことも、プロフェッショナルとして必要な「健全な喧嘩力」だと思う。

感情ベースでの議論は必要なく、冷静にマーケットを把握し、過去の事例の分析をしっかりとした上で、「勝てる喧嘩」をするのである。

少し高度ではあるが、喧嘩が強い採用担当者は、負けていいポイントをうまく作っているように思う。

全戦全勝が目的なのではないのだから、「月末の営業マンの面接アサイン数に制限をかける」や「カジュアル面談は人事が厳しくみる事で、現場の面接数を適切に保つ」などである。

Give&Takeの精神で、楽しく喧嘩をしていきたいものである。

最後になるが、私が「飲み会幹事理論」と呼んでいる考え方を紹介しよう。

飲み会の幹事を担当している際にお店の選定や予算などに文句を言ったり、会の進行に非協力的な参加者がいる事がある。

十中八九その人は「過去に飲み会の幹事を経験した事がない」参加者である。

幹事がどれだけ大変で、どんな苦労の果てに飲み会当日に臨んでいるかが理解できないのだ。

過去に幹事をやって大変なことを知っている参加者は、文句を言うのではなくスムーズな運営に協力してくれるし、改善点があった場合もその改善に協力してくれるものだ。

もし採用活動に否定的な社員がいた場合には、この理論を胸に喧嘩をしてほしい。

もはや採用に巻き込む以外に彼らのアテンションを上げる方法が残されていない場面も多くあるということだ。

巻き込み方には工夫がいるが、自分事としてもらえるように粘り強くコミュニケーションしていく事で、採用の主体者となってもらおう。

構成力とは採用担当の総合力ここまで多くの事例とともに、採用担当として考えるべき事、身に付けるべき事を整理してきた。

その総合力と言えるのが、「構成力」である。

構成力とは、「選考フローをCandidateExperienceと位置づけ、候補者にどのような記憶や印象を残すかを設計し実行する力」である。

単なるCoordinateと何が違うのだろうか。

詳しく見ていこう。

CX(CandidateExperience)とは急に見慣れない横文字が出てきて何のこっちゃというお気持ちになられた方もいるかもしれない。

少し解説を加えることとしよう。

みなさんは、UX(ユーザーエクスペリエンス)という言葉は聞いたことがあるだろうか。

「製品・サービスを使用する際の印象や体験」(『小学館デジタル大辞泉』より)などと定義され、「ユーザーがある製品やシステムを使ったときに得られる経験や満足など全体を指す用語」のことである。

Webサービスやアプリなどを製作する際には特に意識が必要な視点と言われている。

UXが良くないと、ECサイトに来たユーザーが購買に繋がらないなど直接的に事業に与えるインパクトが大きい項目である。

UXはどのような流れでユーザーに影響を与えるのかというと1、ユーザーと外部(対象物や環境)との対話や接触2、ユーザーの内面で起こる心的プロセス

3、結果としてユーザーが得る記憶や印象の三段階である。

重要なことは、一定の対話が行なわれた後に、そのユーザー内に何らかの心的なプロセスが発生し、最終的な記憶や印象として定着するということである。

そんなUXを採用という場面に当てはめた考え方がCX(CandidateExperience)である。

直訳すると「候補者体験」とでも言えるだろうか。

要は自社が採用したいというターゲットの方に対して、「認知獲得」「接触(面談や面接)」「内定出し」「承諾」「入社」の各段階において、「事業や人に共感できる」「この会社で働きたい」と思ってもらえるようなシナリオを描くということである。

俗にいう「採用が強い会社」というのはすべからくこの「CandidateExperience」をどのように設計するのか、そしてどのように運用するのかの意識が高いと言えるであろう。

良いCX(CandidateExperience)とはさて、人事の役割を「CXの設計者兼プロデューサー」と定義した(次頁の図を参照)。

では、どのようなCXを作っていけばよいのか?「IJAIC(アイジェイク)」に含まれる要素を満たしながらという前提に立つが、答えはシンプルな掛け算である。

「自分自身が採用の候補者だった場合に体験したら嬉しいこと」×「その会社らしさ」ここに簡単に例を挙げよう。

【体験したら嬉しいことex:一次接触時】・事前にしっかりと自分のレジュメを読み込んでくれていて、自分の経歴や成果に興味を持って質問をしてくれる・自分が話したいなと思う内容について、しっかりと耳を傾けてくれる。

アピールがしっかりと伝わった感じがするし、会話がキャッチボールになっている・面談者のみならず、社員の方とすれ違った時にみんな気持ちよく挨拶してくれる。

待合で待っている時にも笑顔で声をかけてくれた・面談終了時に、自分への評価をコメントしてくれて、もしジョインするとなった場合の現在想定される期待役割について触れてくれたなどなど。

ここに自社の事業内容を絡めていくとよいのだ。

【会社らしさを意識したCX】1、メーカーの場合:自社商品を体験してもらう2、IT企業の場合:自社のプロダクトのデモを体験してもらう3、サービス業の場合:実際の現場に足を運んでもらったり、顧客の声を聴いてもらう現在、私が所属する株式会社カケハシにおいても、自社らしさを意識したCXが設計されている。

オープンでフラットな社風を大切にしており、スキルフィットのみならずカルチャーフィットの観点からより多様なメンバーとコミュニケーションして頂くCXとしている。

候補者の職種に近いメンバーのみならず、他の職種のメンバーにも選考に加わってもらうのである。

例えば、営業系の職種の面接にも当たり前のようにエンジニアやコーポレートのメンバーが選考官として参加するといった具合だ。

選考スピード至上主義のような現在の風潮とは逆行する部分もあるかもしれないが、候補者の方からは、「より多くの方と話すことで、多面的に会社を理解することができた」と好評を頂いている。

他方、このCXにも固執する事なく、常に最善のCXを設計すべく人事メンバーは常にアンテナを張っていることも追記しておく。

また、どんな業種であっても「自社への愛を語る」というのはCXにおいてとても大切だと考えている。

自分の会社や担当業務のことを楽しそうに、魅力的に語ってくれるというCXはなかなか小手先では上回ることが出来ないもの。

そういう意味でも、面談者や面接官の選定は大切ということになる。

Impactを候補者に与える事ができる「Impacter」の存在は選考フローの設計にとって非常に重要である。

CX(CandidateExperience)の一例認知獲得(企業、求人)↓正確なオペレーションに基づいた一次接触(電話、mailetc.)採用アシスタントとの連携なども必須↓ハートフルかつユニークな二次接触(カジュアル面談、面接etc.)HRT※1を意識したコミュニケーション会社らしさが出るような設計↓ドラマティックな内定出し↓候補者に寄り添った結果の内定承諾↓運命の入社※1HRTとは謙虚(Humility)、尊敬(Respect)、信頼(Trust)の頭文字を取ったもので、優れたエンジニアが持ち得る価値観と言われるものだが、CXにおいても大切な考え方である

内定出しはドラマチックに選考フローの中で採用担当が最も意識すべきはここである。

内定出しはいわば「告白」であるからだ。

新卒採用においても中途採用においても、ハイレイヤーの採用においても最重要といっても過言ではない。

全てのCXはこの瞬間のためにやってきたのである。

できるだけ内定を出すというプロセスはドラマチックに行うことを意識したい。

といっても、花束を用意しておくとか、従業員が全員待っている、みたいなことを毎回するのは大変である。

そこで、簡単にできて私がおススメするのは、「リクルーター自身が、自分の事のように候補者の方の内定について喜ぶ!!」というもの。

なんだそりゃと思うだろうか。

小手先でやるとかなりの確率で白けた印象になってしまう。

本当の意味で初回接触から、候補者に寄り添いながら、時には手厳しいフィードバックを含めて実施し、候補者が面接を受けている最中や結果を聞くときには一緒にドキドキするという過去があって、初めて「内定」という瞬間を彩ることが出来るのである。

今まで一緒に伴走してくれた担当者が喜んでくれたら、こんなに嬉しいことはないじゃないか。

その場で承諾とはならないかもしれないけれど、候補者の方に強く印象付けることのできるシーンとなるはずである。

自分の20代の頃の経験だが、業界未経験の方と初回面談をして、高い志望度を持ってくれているが、実力的に次回の選考を受けるには至らないレベルであるという候補者と相対した時がある。

その時彼に「今の実績や能力では正直、当社だと選考に進めることは難しい」とフィードバックした。

すると彼は「分かりました。

半年間で営業MVPを取ってきます。

その時にもう一度受けさせてください」と言ってきたのである。

正直、半信半疑だったが、彼はやってのけたのである。

MVPは残念ながら取れなかったものの、100人を超える営業マンの中で2位の成績を残して面接の場に戻ってきてくれたのだ。

その後も実力的には未熟な部分がありながらも、一緒に面接を突破し、内定となった際には正直涙が出たし、その後彼は大きな活躍をして若手の中心メンバーとなってくれている。

ここまで伴走させてもらえて、本当に人事冥利に尽きるなと思ったエピソードである。

一例を挙げるにとどめたが、このように何か突飛なことをするのがCXではなく、当たり前のことを当たり前に、かつそこに自社らしさを掛け合わせたCXを是非設計してもらいたいと考えている。

一流の採用担当になるための10のチェックリスト□1、採用を最高の仕事だと考えられるマインドセットを持ち得ているか□2、採用ポリシーを策定し、自社の採用の成功を定義できているか□3、KPI採用とROI採用の違いを認識し、場面によって使い分けられているか□4、「IJAIC(アイジェイク)」を意識し、特に「Impact」に注意を向けられているか□5、ステークホルダーをパートナーとして強力な味方にできているか□6、「4つの理解」と「4つの力」を認識し、常に高める努力をしているか□7、4つの理解の中で、特に「社員理解」を徹底できているか□8、自社らしい「CX(CandidateExperience)」を設計できているか□9、CXの中でもドラマティックな内定出しにこだわることができているか□10、上記の項目を共に語り合い、切磋琢磨できる仲間がいるか【目安】チェックを入れた数が、1~3の方は、レベル14~7の方は、レベル28~10の方は、レベル3

コラム②日本の生産性はアメリカより低い!?

生産性経済産業省経済産業政策局産業人材政策室課長補佐堀達也政府が推進する「働き方改革」について、単なる長時間労働を是正するための労働時間規制だと捉えられることがある。

しかし、働き方改革を推進する厚生労働省のホームページによれば、それだけではない意味合いが込められていることがわかる。

-我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く人のニーズの多様化」などの状況に直面しています。

-こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題となっています。

-「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

しかし、ここで掲げられている「生産性」とは、そもそも何を指すのであろうか。

このコラムでは、多種多様な生産性の定義を確認した上で、我が国の「生産性」、特に労働生産性がどういった状況にあるのかを確認してみたい。

(1)生産性とは公益財団法人日本生産性本部では、「生産性とは、生産諸要素の有効利用の度合いである」と定義している。

つまり、何かを生産するためには、①製品の原材料・エネルギーなど、②土地・建物、機械等(資本)、③生産活動に従事する従業員(労働)が必要となるが、これらの生産要素1単位あたりで、どれくらいの産出量を生み出すことができるかを表したのが「生産性」である。

少ない生産要素で多くの産出量を生み出すことができれば効率的に生産したと考えられ、生産性は「生産の効率性」を指すと考えることができる。

生産性(Productivity)=産出量(Output)/投入量(Input)生産性は、産出量の捉え方やどの生産要素に着目するかにより、様々な定義が存在する。

(ⅰ)産出量のとらえ方産出量のとらえ方には、大きく分けて、①生産量で捉える考え方(物的生産性)、②付加価値で捉える考え方(付加価値生産性)がある。

①生産量で捉える考え方は単純に生産量をそのまま産出量とみなす方法であるのに対して、②付加価値で捉える考え方は生産量から原材料等の生産要素を差し引いた分を産出量とみなす方法という違いがある。

すなわち、一杯1,000円のラーメンを作るために300円の原材料費がかかったとすると、①の考え方では産出量は1,000円、②の考え方では700円(1,000円-300円)となる。

(ⅱ)生産要素のとらえ方生産要素には、先に挙げたように「原材料」「資本」「労働」の3種類がある。

(A)原材料1単位あたりの産出量:企業会計でいわゆる「営業利益率」にあたる概念である。

なお、物的生産性を計測する際は考慮する必要があるが、付加価値生産性を計測する際にはそもそも産出量から原材料が差し引かれることから、考慮する必要が無い。

先ほどのラーメンの例でいえば、物的生産性は1,000円÷300円=3.3円と求めることができる。

(B)資本1単位あたりの産出量:「資本生産性」である。

土地や機械設備1単位当たりの生産量を指すため、資本集約的な重厚長大型の製造業などで高い傾向にある。

先ほどの例で、一杯1,000円のラーメンを作るために、製麺機やテナント料などでおよそ100万円を投資して、年間で1万杯販売したとすれば、付加価値資本生産性は(700円×1万杯)÷100万円=7円と求めることができる。

(C)労働1単位あたりの産出量:「労働生産性」である。

ここでいう労働投入量は、①労働者の数、②労働時間(マンアワー)の2種類に分けることが可能である。

人間一人一人が高い付加価値を生み出すような仕事、例えば知識集約的な情報サービス産業などで高い傾向にある。

先ほどの例で、一杯1,000円のラーメンを作るために、店員が2人で2時間ずつ働くとすると、付加価値労働生産性はそれぞれ、①700円÷2人=350円/人、②700円÷(2人×2時間)=175円/時間、と求めることができる。

(D)全生産要素あたりの産出量:「全要素生産性(TotalFactorProductivity、略してTFP)」である。

全生産要素の集計量に対して産出量がどの程度かを表す概念であるが、資本や労働を集計することはできないため、直接測定することはできない。

そのため、一般的に「成長率」で見ることが多く、「付加価値成長率」から「資本生産性成長率」と「労働生産性成長率」を差し引いた残差(1)として定義される。

この「TFP成長率」の改善が意味するのは、資本や労働以外の要素によって実現される「生産性向上」である。

例えば、技術進歩、ブランド戦略、従業員の能力向上などが考えられる。

つまり、先ほどの例でいえば、製麺機の改良や店員の技術向上により倍速でラーメンを作れるようになったり、雑誌でラーメンの名店と紹介されたことで売上が向上したり、そういったケースにおいてはTFPの改善がみられると考えられよう。

(ⅲ)生産性を図る対象このように、一口に「生産性」といっても、定義によって様々なとらえ方が考えられる。

その上、更に注意すべきなのは、「何の生産性をみるか」によっても定義が異なってくる。

一国の経済全体から個人に至るまで、様々な単位で生産性を考えることができるからである(ここでは労働生産性について見てみる)。

(A)一国全体の生産性:この場合、産出量として使われるのは「GDP(一国が生み出した付加価値総額)」、労働投入量として使われるのは「総労働時間」(あるいは総労働者数)である。

いずれも内閣府「国民経済計算」で入手することが可能であり、業種毎の分析なども可能である。

一国全体の産業構造の相違・変化(2)などの影響も受けるが、政策立案の現場などで、国際比較や業種毎の水準・変化などを把握しようとする場合に使用することが多い。

(B)企業の生産性:この場合、産出量として代表的に使われるのは、「付加価値額(営業利益+減価償却費+人件費)」、労働投入量として使われるのは「従業員数」である。

統計データとしては財務省「法人企業統計調査」で入手することが可能だが、各企業の効率性を把握するために使われることが想定される。

ただし、水準比較に当たっては、業種特性(資本集約型/労働集約型/知識集約型)に留意する必要があり、同様の業種と比較するなどの配慮が必要である。

(C)個人の生産性:この場合、一国経済や企業の場合と異なり、様々な考え方がある。

一般的な考え方として、「賃金」が個人の生産性を反映しているというとらえ方がある。

すなわち、労働者はその生産性に応じた賃金を報酬として受け取っているとする考え方である。

しかしながら、我が国ではいわゆる「日本型雇用システム」を代表する仕組みである年功賃金が一般的であることから、必ずしも賃金=生産性と捉えられない可能性もある。

近年では、人間の生産性の一要因となる「集中力」を、まぶたの動きや身体の傾き等をセンサーで直接計測することによって把握するデバイスが開発されているが、これもまた、「生産性」をとらえる一つの手法と考えられるだろう。

以上見てきたように、生産性の定義はとらえ方によって多種多様であるが、一般的によく使われるのは「付加価値労働生産性(マンアワーベース)」「TFP」の2種類である(3)。

「TFP」は捉えにくい概念であることから、これより先で使う「生産性」は、特に断りが無ければ「付加価値労働生産性(マンアワー)」を使うこととしたい。

(2)日本の生産性-歴史的推移・諸外国との比較-それでは、日本経済の生産性はどのような現状なのだろうか。

ここから先は、(ⅰ)歴史的推移、(ⅱ)諸外国との比較の双方の観点から、我が国の生産性の動向を見てみよう。

(ⅰ)歴史的な推移まずは、労働生産性の歴史的な推移を見てみよう。

我が国の名目労働生産性は、1995~2017年までの約20年の間、実は増加傾向を維持してきた。

リーマンショック後の2007~2011年頃までは低下がみられるが、それ以外の期間は殆ど前年比で増加していることがわかる。

1990年代~2010年代にかけて、いわゆる「失われた20年」とされる期間の間、経済成長率と労働生産性の関係はどのように見て取れるだろうか。

「実質経済成長率」は、「実質労働生産性上昇率」と「労働者数増加率」と「労働時間増加率」に分解できるので、それぞれの推移を見てみよう。

すると、パートタイム労働者比率の増加や少子高齢化の進展なども踏まえて、労働時間や就業者数が減少に転じているケースが散見されるのに対して、労働生産性の伸び率が経済成長を下支えしていることがわかる。

今後は、少子高齢化がますます進んでいく中、女性・高齢者・外国人などの労働参加が促されたとしても労働者数の減少を食い止めることは難しい。

また、働き方改革を進めていく中で、労働時間の減少も避けられない。

こうした中で、労働生産性の向上がいかに重要かがわかるであろう。

(ⅱ)諸外国との比較それでは、次に諸外国と比べた時の我が国の労働生産性の水準はどの程度であろうか。

国単位の労働生産性を見る場合、一般的に使われるのは「一人当たりGDP」である。

上図を見ると、特に先進諸国と比べると我が国の労働生産性は中程度であり、先進国の中では比較的低位に位置していることがわかる。

これはOECD諸国平均(38,953$)よりも下回っている。

その原因としては何が考えられるのであろうか。

例えば業種別に見てみるために、日米の業種別労働生産性を比較してみよう。

上図を見ると、我が国がこれまで強みとしてきた製造業では依然として優位性がある業種も存在するが、非製造業、特にサービス業や卸・小売業などの業種については、相対的に低水準であった。

ここで読者の方の中には、いわゆる「おもてなし」に代表される高いサービス品質を加味すると結果が異なるのではないか、とお考えの方もいらっしゃるかもしれない。

しかし、次頁の図で示すとおり、サービス業において、そうした高いサービス品質を調整しても、なお米国の水準には及ばないというのが現実である。

サービス業の生産性の水準が低いかどうかは、計測や調整方法などに関する様々な意見があり、一概には言えない。

しかし、これから我が国の生産性を更に高めていくためには、例えばサービス業の生産性をいかに高めていくか、が一つの重要なポイントとなることがわかる。

これまで生産性について、様々なとらえ方を見つつ、我が国の生産性の動向について概観した。

「生産性」という言葉は、よく使われる言葉であるが、どの主体のどういう性質を捉えたものであるのかをよく見極める必要があるのではないか。

【コラム②注】(1)TFPには様々な要因が内包されており、算出上は残差で捉えられる概念であることから、計測誤差が生じやすい概念である。

そのため、長期間(5~10年程度)の平均値を取ることによって、時代毎の趨勢を把握するようにして使われるのが一般的である。

(2)一般に、資本集約的な製造業のシェアが大きい場合は労働生産性が高いが、サービス経済化が進展し、サービス業などの第三次産業のシェアが大きくなった場合は労働生産性が低下する傾向がある。

(3)なお、労働生産性は、「資本装備率(資本ストック/労働投入量)×資本生産性(付加価値/資本ストック)」と分解することができる。

「資本装備率」は、一人当たりの資本投入量を指しており、高ければ資本集約的、低ければ労働集約的と判断することができる。

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次