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第3章 ホメ出しの表現法

目次

ホメ言葉の「伝え方」の表現は料理の調理や盛りつけのようなもの

ここまで「なんのためにホメ出しするのか?(Why)」「何をホメ出しするのか?(What)」という話をしてきましたが、ここからは「どうやってホメ出しするのか?(How)」について話をしていきます。

「ホメ出しの伝え方」です。

まずは、発見した相手の魅力を、ストレートに伝えるのが王道です。

奇をてらわず、思ったことを、素直に伝える。

ハッとした瞬間、いいなあと思った瞬間、新鮮な言葉を相手に贈る。

でも、表現を入れることで、より「相手に伝わりやすい」「印象に残りやすい」言葉を贈ることもできます。

例えば私は過去に、このようにホメ出ししたことがあります。

「先輩は、『憑依ビリティ』が高いですよね」「ひらがな一文字でいうと、『や』だよね」「パイオニアTK」一見、なんのことかわからないですよね。

しかし相手は、この言葉をずっと覚えてくれています。

なぜなら、その方ならではの独自性ある魅力を言語化しているからです。

これは「キーワード系」のホメ出しと私は分類しているのですが、そんな話も含め、この章ではホメ出しの「伝え方」や「表現」について、コピーライターならではの目線で語っていきます。

料理で例えると、あの手この手でホメ出しするための食材を探すのが「何をホメ出しするか」。

そして、食材を切って、下味をつけて、煮て、焼いて、蒸して、お皿に盛って、最後パセリをひとつまみかけるのが「どうホメるか」なのです。

ホメ出しにおいては、「何をホメ出しするのか」に時間をかけるのが正しいです。

ただし料理と同じで、同じ素材でも調理の仕方によって、味も印象もまったく変わるので、やはり伝え方も大切です。

私の場合、3つの表現を使い分けています。

❶ストレート系❷表現系❸キーワード系

「ストレート系」という伝え方

まずは「ストレート系」から。

発見した相手の魅力をまっすぐ表現する。

ホメ出しの9割は、この伝え方で大丈夫です。

「いいなあ!」とハッとしたら、なぜそう感じたかを、そのまま言葉にします。

「どんどんアイデアが出てきて頼もしいよ」「先輩が会議をリードしてくれると、みんな安心して発言できます」「ドリブル突破するとき、よく周囲を見ているよね」これは、「ハッ!Aさんってどんなときもアイデアがわいてくるんだな!」「ハッ!先輩がいると、みんな安心して闊達に意見を言うようになる!」「ハッ!B君って、ドリブルするとき細かくあちこち見てる!」という発見を、そのままストレートに伝えています。

もう、十分伝わりますよね。

しかもそれが、「え、自分ってアイデアそんなに出しているっけ?」「私がいることでみんなが安心して発言できるなんて知らなかった」と、相手にとって新発見系のホメ出しであればなおのこと。

手の込んだ表現はいりません。

素材が美味しければ、そのまま塩もかけずに食べるのが一番の贅沢なのです。

ちなみに、ホメ出しの「伝え方」を考えるときに、・ホメ出しするまでの時間(瞬間/熟成)・ホメ出しする手段(リアル/デジタル)という2つの軸があります。

すぐにホメ出しするか、時間をかけるか。

あるいは直接言うか、LINEやメールなどデジタル上で言うか。

という軸です。

相手が目の前にいる場合(リアル)でも、LINEでやりとりしている場合(デジタル)でも、「今ハッとした!」と思ったら、その瞬間にストレート系でホメ出しするのが基本です。

一瞬で、表現に変換する時間はよほどの強者でない限りありません。

ですので、タイミング重視で、すぐに言葉を贈りましょう。

さて、例のごとく、キャッチコピーをお手本に見ていきます。

ホースの代わりって、ない。

(カクイチ)どれだけ料理が上手でも、水の味はつくれません。

(ダスキンの天然水)表現としては直球です。

何のレトリックも使っていません。

だけど、やはりそこには発見があります。

確かにホースの代わりはないし、確かに水の味はつくれません。

「確かに、◯◯さんは気配りが上手だ」のように、確信を持ってホメ出しするときには、直球で十分なのです。

ホメ出しも同じです。

発見に至った場合、それ自体にニュース性があるため、まずは直球勝負でいいのです。

「表現系」という伝え方

相手がプロジェクトメンバーや親友、家族など、「今後ホメ出しするタイミングが何回もある」場合、私はあえて言葉を寝かせたり、あるいは時間をかけて煮詰めることがあります。

そして、いい伝え方にたどり着けたら、そこではじめてホメ出しします。

発見から伝えるまでの間に、熟成期間を設けるイメージです。

その場合は、リアルに伝える場合もありますが、どちらかというとデジタルツールを介して伝えることが多いです。

そのとき、「表現系」のホメ出しが効きます。

今から、「オーバー」「例える」「ポジ転」「新足し算」「リズム」「競合との比較」「心の声だだもれ」「遠回りな近道」「みんなが天才」という9つの表現法をお伝えします。

ホメ出しの表現①オーバー

まずは、「オーバー」という表現法。

こちらもキャッチコピーを参考にしてみましょう。

インド人もビックリ。

印度カレー(エスビーカレー)おおげさです。

でも、チャーミングで、ニヤッとしちゃいますよね。

ちなみに、オーバーにホメ出しすることは、ちょっと照れくさいときに有効なんです。

例えばもう何年も仲良くしている友人の「約束は必ず守る」という魅力を発見したときに今さら恥ずかしいなと思ったら、オーバーに言ってみる。

「本当にいつも約束を守ってくれるよね。

約束の守護神だよね」はたまた「後輩の面倒見がいい」という職場の後輩に対しては、「後輩の面倒見いいよね。

私も君の後輩になりたい」とオーバーに伝える。

ちょっとギャグっぽい口調でもいいです。

だけど、結果的に「私って約束を守るんだな」「私は後輩の面倒見がいいんだ」と、相手が自分のことを理解する一助になれます。

だから、「オーバー」という表現も、ときと場合と関係性によっては、強い味方になってくれるんですね。

ホメ出しの表現②例える

つづいて、「例える」。

ストレートにホメるのではなく、何かに例えて伝える手段です。

それは、小さな栄養士。

(カロリーメイト)「カロリーメイトさんって、栄養満点ですよね」とホメる代わりに、「カロリーメイトさんって、小さな栄養士ですよね」と例えているわけです。

例えることによって、一層印象的に伝わりますよね。

コピーライターって、伝えるプロだな、と改めて思います。

例えるときのコツは、「一番極端な対象物」を持ってくることです。

例えば、ホメる相手が「誰よりも優しい」というよさを持っていたとしましょう。

優しいものは何だろう?と考えるのです。

なんでもいいのですが、「Aさんって優しすぎて、ある意味平和活動家ですよね」と伝えてみる。

もちろん、直接的に「Aさんって優しいですよね」と伝えてもいいです。

しかし、「例える」とは、再発見系ホメ出しにおいて有効です。

つまり、相手がもう何度も「優しいよね」と言われているであろう場合。

その魅力が自明で、相手が言われ慣れている場合。

例えを使ってホメ出しすることで、相手の印象に残りやすくなります。

ホメ出しの表現③ポジ転

つづいて「ポジ転」。

これは、マイナスを反転させて、ポジティブに伝えるという表現法です。

口下手なのは聞き上手、落ち着きがないのは行動的、仕事に時間がかかるのは丁寧にやっているから。

など、すべてのマイナスはポジティブ転換することができます。

いくつかポジ転系のコピーを見てみましょう。

青春がないのも、青春だ。

(MATCH)間食も仕事の内。

(SOYJOY)両方とも、見事にポジ転していますよね。

で、ここでポイントなのが、「ポジ転は見方次第」ということです。

人の価値観は、ある意味では人が勝手に決めています。

茶柱が縁起がいいというのは臨済宗のお坊さんが考えたことですし、土用の丑の日は夏に売れないウナギを売るために平賀源内が考えたことです。

それぞれ、人の勝手な解釈です。

だからこそ、あなたも、価値観を上書きしていいのです。

この「ポジ転」は、相手が自分のことに悩んでいて、その思いを吐露してきたときに出番です。

「週末、家から出る気力がなくて…」とLINEで来たら、一瞬考えて、「インドアのプロになれるからいいじゃん!」と返すのです。

「昔から優柔不断でさ…」とメールで来たら、やはり一瞬考えて、「見通しの悪いVUCA時代は、先走って結論出さない方がいいから、時代に合っているよ」と返す。

相手が自分に非があると思っている、弱気になっている、自信を失っている。

そんなときに是非、ポジ転系ホメ出しをプレゼントしてください。

そのホメが、相手の人生を支えることがあります。

ここでワークをやってみましょう。

自分で自分の嫌なところ、直したいところ、つまりウィークポイントを5つあげてください。

そして、それをポジ転してください。

いかがでしょうか?実はポジ転できないネガティブポイントはないのです。

100%ポジティブなものも、100%ネガティブなものもなく、すべては両方のミックスで成り立っています。

また、あなたの弱さは、たまたま今の社会構造や時代との親和性がよくないだけである可能性だってあります。

弱さとは、環境との相互作用で生まれるからです。

かつて求められた男性像が「強くてたくましい」だったのが、今では「寛容で柔軟」な方が女性から人気がある、みたいなことです。

価値観は絶対ではなく、変容していきます。

だからこそ、今たまたまネガティブだと思われている要素も、どんどんポジ転すべきなのです。

ホメ出しの表現④新足し算

つづいて「新足し算」。

これは、みんなが知っている2つの言葉を、新しい組み合わせで提示する表現法です。

細マッチョ。

(サントリープロテインウォーター)ちからこぶる。

(カップヌードル)なんてチャーミングな言葉たちなんでしょう。

当たり前と思っている言葉に新たな足し算をすると、それはもう強い言葉になります。

でも、これこそ難しいですよね。

本当に難しい。

だから、これも「言葉遊び」をする癖を日頃からつけておくといいです。

ちなみに後者の「ちからこぶる」は、応用が利きます。

名詞の動詞化ですからね。

この場合、まずは相手の魅力的な「名詞」を探します。

例えば、後輩の「眼力」が強い場合は、「すごいね、眼力ってるね。

」と足し算するだけで、一気に豊かな表現になってきます。

このように、キャッチコピーに限らず、面白い言葉の足し算を発見したら、メモをとっておくといいです。

「ちからこぶる」のように応用が利いて、新たな表現の発見につながる可能性があります。

表現のカードを手元に何枚も持っておくだけで、ホメ出しの伝え方に広がりが出ます。

また、その表現力が、相手の魅力を抽出する力を引き上げることもあります。

魅力の発見力と表現力には相互作用があるんですね。

ホメ出しの表現⑤リズム

つづいて「リズム」。

これはホメ言葉をリズミカルに表現することで、相手に強く印象を残すやり方です。

まず、ウイスキーのキャッチコピーを見てみます。

なにも足さない。

なにも引かない。

(サントリーピュアモルトウイスキー山崎)「なにも」が共通していて、なおかつ文字数も一緒なので、リズミカルです。

もうひとつ見てみましょう。

一瞬も一生も美しく(資生堂)「一瞬」と「一生」の文字数、字面、響き、が共通しています。

やっぱり記憶に留まりますよね。

一度見たら、一生忘れないかもしれないコピーです。

このリズム系ホメ出しこそ、時間をとって、じっくりと考えたいものです。

例えば「ハッ!E先輩はいつもまっすぐな人だ」と発見したら、「まっすぐ」と親和性の高いリズミカルな言葉を探してみる。

例えば「まったり」なんてどうだろう。

そういえばE先輩は、いつも穏やかだな、とリズムの揃った2つの言葉が見つかったら、「E先輩って、まっすぐ系で、まったり系ですよね」と送ってみる。

リズムを整えるのは準備がいりますが、こうした「相手のことを考える言葉遊び」の時間は、いいホメ出しに至らなくても、相手への想いが深まるのでいいものです。

ホメ出しの表現⑥競合との比較

ここまでいかがでしょうか。

王道的な手法から、ニッチな手法まで、色々あることをおわかりいただければ、大丈夫です。

つづいて「競合との比較」。

これは、相手の魅力を、広い意味での「競合」と並べて提示することで、魅力を際立たせるやり方です。

さらにいうと、この競合が強敵であればあるほどいいです。

ただし、この競合とは、「誰か」のことではありません。

人との相対的な比較じゃない。

そうではなく、「今、いいとされている価値観や観念」です。

今回もやはりキャッチコピーを参考に見ていきましょう。

モーレツからビューティフルへ(富士ゼロックス)そう。

誰もが「モーレツ」に働いていた時代に、「そうではなくて、ビューティフルだよ!」と比較して言い切ってしまう強さ。

モノより思い出。

(日産セレナ)こちらも旧時代的な価値観を、堂々と塗り替えようとしていますね。

しかも、両方とも断言しているのがいい。

言い切っている男前さ。

例えば、仕事のスピードが遅いと悩んでいる同僚がいたとしましょう。

「ビジネスの速度は日々上がっているけど、だからこそ丁寧さが大事になるよね」と伝える。

これは一面では正しいかもしれないし、状況によっては間違っているかもしれない。

1秒をも急ぐ現場もあるでしょうから。

でも、まず大事なのは、相手が自信がなくて揺れていたら、その揺れをせき止めるための断言系言葉を贈ること。

丁寧な仕事に自信がついてきたら、しかるべき局面で「丁寧さに加えて、今回はちょっとスピードも加わると完璧」などと伝えるといいでしょう。

つまりこの手法は、相手のマイナス面をポジ転するやり方でもあるのです。

ホメ出しの表現⑦心の声だだもれ

さて、「心の声だだもれ」という表現法です。

これは、心の声が漏れてしまうぐらい、相手に圧倒的な魅力がある。

ということを強調した表現法になります。

ここでも、キャッチコピーを例に見てみましょう。

うまいんだな、これがっ。

(サントリーモルツ)90年代を代表するビールのコピーです。

これは「風呂上がりにうまい。

」という客観的なコピーではなく、このビールを飲んだ人の心の声がだだもれ

なのがいい。

「おさえられない」「溢れ出る」うまさが伝わってきますよね。

これは、言葉によるシズル感の演出です。

シズル感とは、食べ物や飲み物を撮影するときに、ハンバーグであれば肉汁が溢れる映像や、ジュウウウと鉄板で焼ける音を強調することで表現される、瑞々しさのこと。

そういう映像や音は私たちを刺激して、食欲や購買意欲を喚起します。

「心の声だだもれ」も、あなたの感情の瑞々しさがぎゅっと凝縮されます。

ですので、相手をホメるときも、例えば「バイタリティーあるよね」ではなく、まるで独り言のように「いや〜すごいなあ、バイタリティーあるんだよな〜」と言ってみる。

感情がほとばしっていますよね。

ただ、心から「相手のここがいい!すごい!」という前提がないとこの手法はうまくいきません。

むしろ白々しくなります。

ですので、あなたの胸を打つほど、魅力的な相手の一面が見つかったときの、とっておきのやり方として使ってください。

ホメ出しの表現⑧遠回りな近道

さらに「遠回りな近道」という手法もあります。

ちょっとニッチですが、面白い表現法です。

直接伝えるとありきたりになってしまうことを遠回しに伝えることで、そのもどかしさにより、言葉がチャーミングになります。

金沢に来るなら、春か夏か秋か冬がいいと思います。

(金沢市)これが直線的な表現だったら、どうなっていたでしょうか。

「金沢は、一年中おすすめ。

」などになるでしょう。

でも、遠回りをすることにより、「春」「夏」「秋」「冬」という言葉たちを拾うことができます。

結果、「金沢は年中最高!」というメッセージを、直接伝えるよりも深い伝達度で伝えています。

そう、「遠回りすることによる近道」なのです。

これも、再発見系のホメ出しにおいて有効です。

相手が言われ飽きているかもしれないホメにおいて使ってみる。

例えば後輩に対して、「面倒見がいいよね!」と近道するのではなく、「父性と母性、両方あるよね!私の両親になってほしい」と、遠回りする。

まどろっこしいんだけど、その分印象的に相手の魅力を指摘する。

ニッチですが、こういう一手も持っておくと、ホメ手が増えます。

ホメ出しの表現⑨みんなが天才

さて、いよいよ最後の表現法「みんなが天才」です。

これは、知られざる相手の天才性を見抜き、「〇〇の天才!」と伝えることです。

「相手を優しく包み込む天才!」「集中力の天才!」「読書の天才!」あなたが、相手のここは本当にすごいな、と思ったら迷わず「天才!」と言ってください。

すべての人は、何らかの天才なのです。

ちなみにこの手法をキャッチコピーに落とし込んだらこうなります。

女の子は、ふりだしに戻る名人だから。

(earthmusic&ecology)

必ずしも「天才」と言う必要はなく、「名人」「プロ」「一流」など、そのニュアンスが入っていればよいです。

ちなみに俳優で舞踏家の麿赤兒さんは自身のカンパニーで、「この世に生まれ入ったことこそ大いなる才能とする」という「天賦典式」という言葉を使っています。

そう、生まれてきたすべての人が天才なのです。

ということで、9つのホメ出し表現でした。

ストレートに伝えるのもいいですが、ちょっと時間をかけて、表現を工夫してみるのもよいものです。

まるでコーヒーをドリップするようにキーワードを抽出する

さて、最後にコピーライターならではの、そしてデジタルコミュニケーションが盛んな時代だからこその伝え方の話です。

それが、「キーワード系」のホメ出しです。

観察軸を横串に刺しながら、観察で遊んでいくと、言葉の標本ができるという話を第1章でしました。

ホメ出しするための豊かな言葉が手元に並んでいる状態です。

でも、それを全部相手に伝えるわけにもいかないですよね。

そこで私がいつもコピーライター思考で行っているのが、ホメ出しするためのキーワードを探すことです。

それはまるで、コーヒー豆にお湯を注いで、雑味の少ないコーヒーを丁寧に抽出するような作業。

観察によってもたらされた「言葉の標本」を見ながら、すべてを包括する「ある一言」とは何だろう、と探っていくのです。

いわば「言葉のドリップ」です。

ときには数ヶ月、数年かけて、言葉を探していくこともあります。

ワイン顔負けの熟成です。

ただ当たり前ですが、毎日のように、そのことを考えるのではありません。

例えば仕事相手のKさんを、キーワード系でホメ出ししたいと考えたら、打ち合わせなどでKさんと顔を合わせるたびに、ハッとすることがあればストレート系で都度伝える。

その上で言葉の標本を頭の中で充実させていく。

そして、キーワードは何だろうなとふとしたときに考える。

「いつか相手をキーワード系でホメ出しする」というゆるやかなゴールを持っておき、相手と接するたびにそのことを思い出すのです。

丁寧に探し出したキーワードは、シャワーを浴びているときや、寝る直前のまったりとした時間にふと思い浮かぶことがあります。

当然、ホメ出しする相手は目の前にいません。

だから、キーワード系のホメ出しは、ほぼLINEやメールやメッセンジャーで伝えています。

世界初の試練と向き合ってきた親友へ

では、どのようにキーワードを探していけばいいでしょうか。

過去に私が贈ったホメ言葉と共に、具体的にお伝えします。

私の友人に、TKという少年がいます。

複雑心奇形という病気で生まれ、さらに生後半年で医療事故にあい、前例がない道を歩いてきました。

ある意味「世界初」の試練と向き合ってきたともいえます。

この状況下でもTKは、お母さんと連携しながら、人生を嘆くのではなく、自分の経験を生かして、色々なチャレンジをしています。

エンタメ団体を立ち上げたり、書籍を出版したり。

彼と話すうちに、「諦めない」「挑戦を止めない」「前進力」といった言葉が次々浮かびました。

自分の経験を発信することで、同じ道を歩くかもしれない次世代の人の力になりたいと言っていました。

「次世代思い」です。

また、あらゆる経験を発信することで、経験を巧みに生かしている印象もあります。

「経験生かし上手」なのです。

このように、TKとコミュニケーションをとりながら、言葉の標本をつくりながら、それらすべてを包括するキーワードが浮かびました。

「パイオニア」です。

試練と立ち向かい、自分が通った後に道をつくる姿勢は、開拓者そのものだと思いました。

そして、「TKって、『パイオニアTKだよね』」というホメ出しを贈りました。

「前例のない試練と直面する」ということ自体、言葉に尽くせないほど深刻な出来事ではありますが、TKの姿勢を観察しているうちに、それが「パイオニア」という前向きなキーワードに集約されたのです。

もちろん、「パイオニア」はあくまで私の解釈です。

唯一の答えではない。

「突破」や「不屈」など、他にも色々なキーワードが見つかるでしょう。

その中でも、ホメ出しをするあなたが納得する言葉を選べばよいのです。

あれから3年ほどが経ちましたが、今でもTKと会うたびに「パイオニアTKと名づけてくれてありがとう」とお礼を言われます。

もしTKにとって言葉の資産となっているのであれば、とても嬉しいです。

いつも助けてくれる後輩へ

いくつもプロジェクトを一緒に進めているA君という後輩がいます。

彼の魅力は山ほどあるのですが、とにかく「物腰が柔らかい」。

そして彼がいると、その場の「空気が柔らかく」なります。

「優しい」し、「絶対怒らない」。

それでいて仕事の進め方はとても頼りがいがあります。

いつも「冷静沈着」だし、「めげない」し、「最後までやり切る」。

しかしいつも感心してしまうのが、その「やる気の高さ」です。

自分で自分をモチベートする才能があるのでしょう。

観察するうちに、言葉が溜まってきました。

では、いきなりですがここでワークを挟んでみます。

あなたなら、どんなキーワードを抽出しますか?

A君の魅力を、一言のキーワードで表すなら?いかがでしょうか?何かしらキーワードが抽出できたのではないでしょうか。

この本のワークすべてに当てはまるのですが、それぞれ一つだけの答えがあるわけではありません。

解く人の数だけ答えがあると言ってもいいでしょう。

ちなみに私は、このキーワードを抽出しました。

「や」です。

そう、抽出するキーワードは一文字でもいいんです。

A君のホメ言葉を見ていると「やわらかい」「やさしい」「やる気」「やり切る」など、「や」が多いなと思ったんですね。

これは、A君を表現するときの大切な核になると思いました。

そこで、「A君って、ひらがなで言うと『や』だよね」と伝えました。

どういうことですか?と返ってきたところで、「優しくて、物腰が柔らかくて、やる気があって、やり切る力があるから」とホメ出しを整えました。

そう、抽出したすべてのキーワードに囚われる必要もなく、とにかく結果的に「相手らしい」キーワードを抽出できればいいのです。

相手の気持ちになるのがうまい先輩へ

ところで、この章のはじめに示したキーワード系ホメ出しがもう一つあります。

「先輩は、『憑依ビリティ』が高いですよね」これはN先輩へのホメ出しで贈った言葉です。

では、「何をホメ出し」しようと思ったのでしょうか。

先輩を観察するうちに、ある傾向が見えてきました。

それは、「相手の気持ちになる努力をしている」「そしてその精度が恐ろしく高い」ということです。

つまり「相手の気持ちになる道」を歩んでいる。

いや、極めているのです。

私のような後輩と話すときにも、話をよく聴いてくれる。

そして、第三者に私のことを紹介してくれるときなど、驚くほど的確に、私のことを言い当ててくれる。

仕事においても、例えば取引先と打ち合わせするときも、先輩は半分取引先の目線で話を進める。

時折「あれ、先輩って向こうの会社の人だっけ」と錯覚してしまうぐらいです。

この先輩の「道」をキーワード系でホメ出ししたいと、2年ほど熟成させていました。

そしてある日、「憑依」というキーワードが降ってきたのです。

そうか、N先輩は憑依する力が高いんだな。

ただ、「憑依」自体は、多様な意味合いを含んでいるので、そのままキーワードとして伝えても誤解を招いてしまうかもしれません。

そこで表現手法「新足し算」を使って、「憑依ビリティ」という言葉をつくりました。

「ビリティ」は「アビリティ(力、能力)」という意味なので、「憑依する力(能力)」というニュアンスを込めています。

ようやく言葉が完成したので、満を持してLINEで、「先輩は、『憑依ビリティ』が高いですよね」と伝えました。

もちろん、その後に理由も添えて。

この言葉を贈ったのは5年ほど前ですが、つい先日N先輩とやり取りする中で、「憑依ビリティという言葉は色々気づきになりました」と連絡をいただきました。

自分の人生のコンセプトをつくる

私は、相手の魅力を探したり、言語化することが大好きです。

半分趣味、半分ライフワークだからこそ、もう何年もホメ出しの研究と実践をつづけています。

もちろん、私と相手の「1to1」の関係でホメ出しするのもやり甲斐があるのですが、チームで相手のホメ出しをする「WEto1」のホメ出しも、そのよさがあります。

とはいっても、「今日チーム全員で、お互いをホメ合おう!」と誘っても、唐突すぎたり、気恥ずかしかったりしますよね。

そこで私は、「結果的にホメ出しにつながる」プロジェクトをいくつか立ち上げています。

2つご紹介します。

一つめは、「自分企画書」です。

これは私が編み出した、「自分で自分に対して企画書を作成する」という手法です。

詳しくは拙著『マイノリティデザイン』(ライツ社)に書いたのですが、自分の「ライフコンセプト(人生のコンセプト)」をつくるために、いくつかの問いに答えていくフレームワークです。

・あなたの「マイ・ベスト・喜怒哀楽」は何ですか?・あなたがスーパーマンだとしたら、必殺技を8つ教えてください。

・次、地球に生まれ変わったときに、なくなっていてほしいものを3つ教えてください。

実はこの問い自体が、自分で自分を観察して、自分の記憶や魅力を発見するための工夫になっています。

基本的には、自分で自分を見つめる内省時間を後押しするためにつくったやり方なのですが、「自分企画書」ワークショップを開くこともあります。

これは、参加者の方それぞれに「自分企画書」のもとになる問いに答えてもらい、その内容をオープンにし、みんなで一緒にライフコンセプト詰めていくワークショップです。

結果的に、「みんなで、誰かひとりをホメ出しする」ことにつながるのです。

先日行われたワークショップで、Tさんという女性の方が「自分の得意技」をシェアしてくれました。

それが次ページの「セーラーTちゃんの得意技」です。

ホメ出しに役立つ材料が、豊富に揃っていると思いませんか?この情報をもとに、自分企画書ではTさんの「ライフコンセプト」をつくっていくのですが、進め方はホメ出しと同じです。

このTさんの得意技を、ひとつのキーワードで表現するなら何でしょうか?このときみんなで考えて出したのが、「隙間」というキーワードです。

隙あらば飲み会を開くのは、「飲み会ここで開ける!」という隙間を埋めています。

見えないボトルネック探しも、「ここに課題がある!」と仕事の隙間を埋めています。

聴くのが好きということも、相手に傾聴し、適切な返答や相槌で、会話の隙間を埋めていくことといえます。

この「隙間」というキーワードを、最後に少しだけ私が整えました。

「世界の隙間を埋めるプロ」ここでは、表現方法「みんなが天才」を使っています。

「世界の隙間を埋める天才」でもよかったのですが、Tさんからは「隙間を埋める努力を重ねてきた」という跡が感じられたので、「プロ」という言葉をつけました。

主語の「世界の」はなくてもいいです。

「隙間を埋めるプロ」で成立しています。

しかしTさんの場合は、ありとあらゆるシーンで隙間を埋めているので、それを包括する言葉が欲しくなり、「世界の隙間を埋めるプロ」に落ち着きました。

この言葉はTさんのライフコンセプトとしてみんなで考えたのですが、もちろんこれは「Tさんって、世界の隙間を埋めるプロですよね」というホメ出しそのものです。

この自分企画書は、結果的に自分や相手へのホメ出しにつながるのでおすすめです。

世界に一つだけの仕事をつくる

もう一つだけ、「結果的にホメ出しにつながる」プロジェクトをご紹介します。

その名も「特業」です。

働き方はどんどん多様になってきていますよね。

本業だけではなく副業や複業をしたり、あるいは兼業をしたり。

そんな中、「もっと自分の特色が色濃く出る仕事」をつくれないか?と思い、立ち上げたのが「特業プロジェクト」です。

先ほどの「自分企画書」同様いくつかの問いがあり、それに答えながら、自分の特性や特徴や特技を見つめ直し、最終的には「世界初のオリジナル仕事」をつくるというプロジェクトです。

いくつか問いをご紹介します。

・好きなこと/夢中になれること/これって才能?と思うことは?・特性/特徴/ここが自慢!と思うところは?・今はまだできていないけれど、今後やってみたい仕事はありますか?その理由は何ですか?・名前のない趣味はありますか?・これ、自分だけ?と思うこだわりはありますか?実に多くの「その人らしさ」が溢れ出ます。

本人も忘れていた、あるいは知らなかった特色が輝き出すのです。

これまでたくさんの学校や企業、自治体でこのワークショップを開催してきましたが、「ジャッジマン」「おうまくん」など、多くの特業が発明されました。

先日もKさんという男性の方を起点に、数人で特業ワークショップを開催しました。

Kさんに、上の問いにどんどん答えてもらったのです。

「みんなが笑ってくれると嬉しい」「ムードをつくるのが好き」「好きな人と好きな人がつながる化学反応が好き」「人当たりがいい」「誰かのそばにそっと居る」「努力家」「安心感がある」多くの、Kさんの魅力が見出されました。

Kさんは、あるシェアハウスで、色々な理由で社会になじめない人に寄り添う日々を過ごしています。

このときも、Kさんのあらゆる特性を象徴するキーワードは何だろう?とみんなで探りました。

出てきたのは、「伴走者」という言葉です。

そう、Kさんは誰かの時間を、人生を伴走するのが得意なんだと整理できました。

その後話題の中心になったのは、ではKさんは明確に何を伴走しているんだろう?ということ。

そこで提案したのが、

「何気ない時間伴走者」という特業です。

人生を丸ごと、というよりも、何気ない日常にそっと寄り添ってくれる、あるいはそっと背中を押してくれる。

Kさん発で仕事を生み出すなら、これだね!とみんな納得しました。

そして、やはりこれもKさんに対して、「何気ない時間を伴走してくれるね」というホメ出しそのものなのです。

自分なりの伝え方を見つけていい

ホメ出しの伝え方は、以上となります。

コピーライター思考をホメるという行為に混ぜることで、幅広い伝え方に到達できることをおわかりいただけたのではないでしょうか。

ホメ出しの伝え方には「瞬間/熟成」「リアル/デジタル」など、気にかけておくべきポイントがあります。

また、伝え方には、ストレート系、表現系、キーワード系と大きく3つあるという話でした。

しかし、これはあくまで「私のホメ道」です。

ホメ出しするときに、相手を肯定的な視点で見て、観察をするという点は、おそらく誰がやっても譲れない点だと思います。

しかしそれをどう表現するかは、それぞれのカラーがあってしかるべきです。

だから私なりに「自分企画書」「特業」のようなやり方を見出しています。

是非あなたも、自分なりの伝え方を見つけてください。

一生の研究にしてもいいぐらい、やりがいがあると思いますよ。

「ホメ出し」まとめ3章ホメ出しを伝える際に、表現を入れることでより相手に伝わりやすくなったり、印象に残りやすくなる。

ポイントを押さえた上で、自分なりの伝え方を見つけよう。

●ホメ出しで使い分ける3つの表現・ストレート系:発見した相手の魅力をまっすぐ伝える・表現系:「オーバー」「例える」「ポジ転」「新足し算」「リズム」「競合との比較」「心の声だだもれ」「遠回りな近道」「みんなが天才」・キーワード系:すぐにホメ出しをするのではなく、観察によってもたらされた「言葉の標本」から、すべてを包括する「ある一言」を探っていく。

これはあくまでも澤田式。

ホメ出しの際にどう表現するかは、あなた次第。

あなたならではのやり方を見つけましょう。

COLUMN……………03コピー研究について

23歳の春。

クリエィティブ試験を突破して、念願だったコピーライターになることができました。

初めて自分の名刺に「コピーライター澤田智洋」と印字されたのを見た瞬間、全然似合わない大人のジャケットを着てしまったようなソワソワとした気持ちになったのを覚えています。

ところが、苦悩の日々が始まります。

いくら時間をかけても、いいコピーが書けないのです。

キャッチコピーは「惹句」とも呼ばれるのですが、その字のごとく、人を惹きつけないと話にならないわけです。

でも、惹きつける言葉って何だろう?その問いを提示された瞬間、頭が真っ白になりました。

私には、その術がなかったのです。

慌てて、過去の『コピー年鑑』を読み漁りました。

コピー年鑑とは、その年の優れたコピーがぎゅっと一冊にまとまったいわば「コピーの教科書」のような本で、1963年の創刊から毎年出版されています。

名作コピーの数々をスコールのように浴びるうちに、いくつか法則が見えてきました。

いいコピーとは、❶よどみない❷時代を象徴、あるいはリードしている❸忘れ難いという3つの特徴があることに気づいたのです。

❶はスラスラっと、よどみなく読めること。

❷は「そうそう!今ってこういう気分だよね!」をうまく言葉でキャッチできているもの。

❸は、その切り口や表現、あるいはリズムなんかが影響して、一度見たら忘れられないもの。

タイは、若いうちに行け。

(タイ国際航空)という、私の師匠が書いたコピーがあります。

これなんかは、もうすべてのよいコピーの条件を満たしています。

そして実際私は、このコピーを見て、まんまと大学の卒業旅行にタイに行きました。

いいコピーは、人生に影響を及ぼしますよね。

最近もコピーや言葉の研究を続けています。

SNSで流行って、拡散される言葉にはどんな法則があるんだろう?などと、常に問うようにしています。

ちなみにぜんぶ雪のせいだ。

(JRSKISKI)カメラを止めるな!というコピーと映画タイトル。

私は、一度見た瞬間、脳裏に焼きついてしまい忘れられなくなりました。

その理由を考えて、2つの共通項があることに気づきました。

1つ目はリズムです。

「ぜんぶゆきのせいだ」は「3、3、3」のリズムで、「カメラをとめるな」は「4、4」です。

音楽的なのです。

5、7、5とはまた違う、心地よいリズムを刻んでいるのが、両フレーズに共通する素晴らしさです。

音楽的な言葉なのです。

2つ目は、両方とも急にリズムが切れることです。

「せいだ」「止めるな」と、断言口調で、一気にそこでリズムを切っています。

リズミカルに進んでおいて、最後リズムを強制的に止めているのです。

音符でいうと、いきなり休符がくるイメージ。

それによって、この言葉を見た私たちは、とてつもなくだだっぴろい余白を感じます。

そこに自分の心情を投影できる。

この言葉のことを忘れられなくなる。

このように、私はコピーや言葉、表現を研究することにも没頭しています。

そして、この「言葉の研究」が第3章の「ホメ出しの伝え方」に生きています。

この本は、ホメ出しの本でもあり、言葉の本でもあります。

言葉は人生に欠かせないパートナーです。

その功罪や、傾向を研究した上で、いい言葉を一つでも多く生成したいのです。

 

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