準備活動
5S活動に取り組もうと決断したとき、何から手をつければよいでしょうか? 片付け? 掃除? 表示? いろいろとイメージはあるかもしれませんが、5S活動は組織全体の仕組みなので 「点」で考えてはいけません。5S活動で失敗をするのは「大掃除の巨大版」というイ メージで取り組んでしまうからです。とにかく片付けて清掃すればいいのだろうと思い込 んで、それで終わるケースです。 たいていの大掃除は3週間で元に戻ります。念入うに行ったつもうの年末の大掃除だっ たのに、年が明けてしばらくすると以前の状態に戻ってしまう、という姿を多く目にしま す。それは大掃除という視点で考えてしまい、とりあえずという「点の活動」で終わらせ てしまったからです。 何度も申し上げるよきます。「点」ではなく、手順を踏んで5S活動を始めましょう。 何事も準備は大切です。当然、5S活動でも準備が重要です。準備が不十分だと単な る大掃除の巨大版で終わります。時にはポスターを張り出しただけで終わってしまってい る組織もたくさんあります。そうならないために、きちんと準備をしましょう。うに、5S活動は仕組みづくりです。それぞれの要素を理解して、 丁寧に手順を踏んで仕組みを組み上げる必要があります。そして、 一度組み上げてしまえ ば、その時々の自社の状況や環境が最適になるように修正が可能なので継続することがで
目的なき活動の失敗事例
一5S活動を行えば組織が活性化する」というのは本当のことです。時には大きく利益 が動くこともあります。以前より仕事がやりやすくなることも間違いはありません。しか し、漠然と5S活動を行えば会社がよくなるという評価は的を射ているとは言えません。 5S活動は、世代や価値観が異なる人たちのいる組織で行う活動です。この活動がど ういう目的があるのかを決めなければ、歩調や気持ちを合わせて進むことはできません。 この部分が曖昧だと、「誰かがやるんだろう」「俺は(うちの部署は)関係ない」「そこまで やらなくてもいいだろう」という、消極的な空気を生み出してしまいます。 そして、何ようも目的が明確でなければ、誰を活動のリーダーやメンバーに選べばいいのかが決まりません。活動の目的によって人選が変わるからです。 以前、漠然と「生産性の向上」を目的に掲げながら、実際に選ばれた人たちは若手だけ だったという組織があります。請求書の作成手順も各部署のつながうも知らず、社歴や以 前の仕組みも知らない人たちだったため、「大掃除」で終わってしまいました。 また、ある組織では「全社一九」を目的にしながら、総務系、営業系の人をひとりも選 ばず、生産ラインの人たちだけに任せたため片寄った活動が続き、結果、部署間の温度差 がさらに深まってしまいました。 「コミュニケーションの向上」をテーマにしたのですが、部長クラスだけでメンバーを選 抜して失敗してしまった組織もありました。部長たちがメンバーなので、従来の業務命令 として5S活動を行ちてしまい、 一向に思ったような効果が現れませんでした。 職位の高い人たちだけで進めると「やらされ5S活動」になってしまい、組織が疲弊 する場合もあるという事例です。
目的設定とそれに応じたリーダー・メンバーを選ぶ
では、今から始める5S活動の目的は何ですか? これは組織によってさまざまです。 《5S活動の目的の例》 。生産性を上げたい(利益拡大) ・組織内のコミュニケーションをようよくしたい ・社員の意識改革を図りたい 。人材育成の機会にしたい(幹部育成) 。世代交代を促進したい 。競争力を上げたい 。品質向上を図うたい など
5S活動は全社で取り組む活動なのでどんな目的でも大文夫ですが、その目的に共感できることが大切です。社員たちが「そうだな」と感じる目的でなければ積極的に動きま せん。 目的が決まったら、その目的に応じたリーダー(活動責任者)とメンバー(活動推進者) を選びましょう。 ・リーダー(活動責任者) 5S活動の全体を統括し、絶えずメンバー間や経営者とのミュニケーションを図る人 です。活動の工程や予算に責任を持ち、全社への活動報告や進捗状況を発信します。ま た、さまざまな片付けや再配置。表示などという実際の社内イベントを主催します。 ・メンバー(活動推進者) 各部署や各世代から選ばれた活動を推進する人です。必ずしも部署のトップである必要 はありませんが、部署の特質や業務の流れをある程度理解している人がよいでしょう。 5s活動に関わるイベントの実施や部門内への周知などを行います。 リーダーは役職上位者である必要はありません。中堅や若手でもかまいませんが、責任感の強い人、組織の将来を経営者とともに考えられる人がよいと思います。実際に活動を 進めていくと、考えもしなかった組織課題が浮き上がってきたりします。そのときにメン タルが弱かったりすると、現場の声に押されてしまい、前に進めなくなってしまう可能性 があります。 メンバーは組織の全体像を考えてバランスよく選びます。各部署や各世代から選び、選 出されない部署がないようにしましょう。もし、遠方の営業所などから選出できない場合 は、各営業所の事情をわかっている人を必ず選出しましょう。
リーダーやメンバーに目的を伝える
活動の目的が決まったら、メンバーやリーダーたちに選出理由を「直接」伝えましよう。 つまり、関係者間で目的を共有するということです。全社的な活動を行うにあたって、経 営者や経営幹部の意気込みとバックアップ体制がメンバーたちに伝わっていなければ、彼 らは自信を持って組織にアプローチできません。仮に活動が行き詰まった状況になったと しても、活動の原点がはっきりしていると活動がブレません。経営者が自ら大声を上げて組織を鼓舞するのではなく、リーダーやメンバーが一つひと つのプロセスを自ら考えさせることが大切です。コンサルタントが決めたことではなく、 自社の現状やレベルを理解した人たちが考えた活動になるので、組織の他の人たちにも理 解されやすくなるのです。 5S活動では、この「目的設定」「リーダー・メンバーの選出」「目的共有」が、経営 者としてもっとも重要な仕事になります。
必ず「キツクオフ」を行う
日的とメンバーが決まったら、日にちを決めて「キックオフ」を行いましょう。 キックオフとは、組織全体に5S活動を行うという「活動開始宣言」のことです。普 段の会議などでサラリと5S活動のことに触れたとしても、社員たちにはさっぱり理解 できません。その程度の通達では「この忙しいときに余計なことをさせるのか」という雰 囲気になってしまうのが関の山です。 そうした従来の意識を一新するためにキックオフを行います。
キックオフで気をつけておかなければならないのは全員を集めるということです。社員 だけではなく、嘱託。派遣・アルバイト・パートの人たちまで全員を集めましょう。でき れば、遠方の営業所の人たちも参加させましょう。社員だけを集めて行うと、その他の人 たちは「自分たちは関係ない」と思い込んでしまい、文書などで通達しても、リーダーや メンバーに選ばれた人たちだけがやるのだと誤解します。多くの組織で5S活動を全社 活動として展開できなかった理由の中に、このキックオフの意味を理解せずにスタートし てしまったことも挙げられます。 ある組織では、参加できなかった社員やパートの人のためにキックオフをDVDに収め、 DVDを見ることで活動の目的を共有しました。別の組織では、遠方の営業所のために インターネットで会場をつなぎ、共有を図りました。キックオフはそれほど大切なイベン トなのです。 自社の「全員」を一度定義してみましょう。会長や会長夫人は含まなくてもいいですか。 重要な協力会社やグループ会社のトップに5S活動を理解してもらう必要はありませんか。 どこまでが「全員」なのかを考えてキックオフに臨みましよう。

キツクオフの注意点
キックオフでは式次第を作り、司会も立てましょう。キックオフの流れは次のように行 います。 (げ)由円〈バ小旦一百 ②社長の決意表明(目的の全社共有) ③ 5S活動の概要説明(DVDなどを活用する) ④ リーダーとメンバーの紹介と各自の決意表明 ⑤専務など経営幹部の支援表明 ⑥閉会宣言 大切なことは、全員で取り組む全社的な活動であることを周知させることです。中には 「こんなことをやったって」と始めから抵抗する人がいる場合もありますが、最初に組織 的活動であることを宣言することは大切な意味を持ちます。
5S活動の工程表を作ろう
みなさんは、「会社でなぜ決められた日に給料がもらえるか」という理由を考えたこと がありますか。給料がもらえるのは、支給日が決まっているからです。 「○日に給料を支払うと組織が決めているから、○日までに給与計算を終えなければなら ない。だから、残業の集計を○日までに済ませておかなければならない。よって各部署は ○日までに……」 つまり、支給日から逆算してさまざまなイベントが決まってきます。 5S活動も同様に「完了予定日」を決める必要があります。3カ月後あるいは5カ月 後までに完了するという日にちを決めなければ活動の予定は立ちません。 「暇になったら5S活動をする」という、漠然とした工程のイメージの活動はいつの間 にか消えてしまいます。これも、5S活動に取り組みながら形にできなかった失敗の原 因のひとつです。 工期のない工事はいつまでも終わりません。納期の決まっていない製造や出荷はいつま でも完了しません。5S活動も完了予定目を定めておかないと活動が停滞します。

5S活動会議の発足
改善工程表は、リーダーやメンバーの定期的な会議で検討しましょう。活動予定の決定 や修正を行い、話し合った内容は必ずリーダーを通して経営者へ報告します。全社活動で すからこれも重要な活動ルールだと思ってください。 また、5S活動の会議の名称を決める必要があります。「5S会議」「組織活性化会議」 「5s委員会」など自社で決めればいいのですが、名称がはっきうと決まることで社内 への発信力が強ようます。事例としては『利益倍増委員会』『(組織の将来を)担う会』『こ のままで委員会』などというユーモラスなものもありました。 《準備活動のまとめ》 1 経営者が活動の目的を決定する 2 目的に沿ったリーダー・メンバーを選出する 3 リーダー・メンバーに、経営者が直接目的の意義を伝える 4 自社の「全員」を定義して「キックオフ」を行う5 活動会議の名称を決め、定期的な会議の 中で活動の工程を決める 6 会議の内容を必ず経営者へ報告し、進捗 や予定の共有を行う

5S活動は「2S+2S+lS」に分解して理解する
5s活動は「2S 十2S +lS」と分解 して仕組みを構築します。つまり「整理・整 頓」十「清掃・清潔」十「躾」となり、この 組み合わせで活動を進行させていきます。 今まで5S活動に取り組んでうまくいか なかった組織は、5つの要素をバラバラな点 の活動として捉えていた可能性があります。 5S活動は、要素をグループ分けして理解をして、段階を追って完成を目指していきます。 例えば、「整理・整頓」は目に見える形での変化を組織の人たちに知らせ、「清掃・清 潔」で日常の動きの中に組み込むことで単なる片付けではない習慣づけを行います。そし て、躾で外部に対して変化を発信し、周知させます。このような流れで5S活動の仕組 みづくりは完了します。ソーダーやメンバーには、こうした全体像の理解がまず必要です。 わかりやすく言えば、 2S 「整理・整頓」……体を使ったパワー系要素 2S 「清掃。清潔」……日常活動を見直す改善=仕組み構築要素 lS 「躾」……外部に認められるための教育・訓練要素 ということになります.
整理活動
5S活動で用いる「整理」という言葉は、通常の意味とは少し異なります。 一般的に整理とは「乱れているものを揃え、整えること」と理解され、机の引き出しを 整理する、倉庫を整理するなどという使われ方をします。 しかし、5S活動では「乱れている」という意味も「整える」という動作にも「個人 差」があることを前提にしています。 整理とは「不要なものを捨てる」ことです。 さて、会社の椅子に座って、あるいは工場の中や倉庫の入う口に立って、しばし気持ち を落ち着けて風景を眺めてみてください。「整理されているかいないか」ではなく、そこ にあるものが組織の活動において「必要なものかどうか」を考えます。そこから、捨てる ものの基準を決めていきましよう。
撃捨てるものの基準を決めよう
整理は、組織内で統一した見解が必要です。部門間や支所営業所ごとで基準がバラバラ な捨て方では5S活動とは言えません。長く使用していないカタログや図面、古い事務 機器など、それぞれに廃棄基準を定める必要があります。 例えば、「3年以上前のカタログは全部捨てる」「使っていない機器機械を処分する」と いう思い切った決め方が大切です。 私がコンサルティングの現場でお伝えしている3つの基準があります。 ● 3年以上使わなかったもの ②私物 0今回でなければ捨てられないもの この3つを前提に踏まえて基準を決めてみましよう。 (注)財務関係等法定要求のあるものについては留意してください。

▼「赤札・青札。黄札」を活用しよう
組織には、さまざまな不要なものがあふれかえっています。しかし、日常の慌ただしさ の中でそれを確認する機会がありません。もう使わない資料や古いカタログなどがいたる ところに眠っています。使えない文具やoA機器もあるかもしれません。何よりも、利 益の源泉であるはずの資材などが不良在庫化してしまっていることも珍しいことではあり せん。中には帳簿上資産として記載してあるものもあるので、勝手に廃棄するわけにはい きません。それが積み重なって不要なものが蓄積されています。 5S活動の整理では、そのような漫然とした状態を見直します。そして、活動会議や 各部署で捨てるものの基準を決めたら「赤札・青札・黄札」を貼ってみましょう。「赤 札」は廃棄していいもの、「青札」は移動したいもの、「黄札」は自分たちでは判断できな いので、責任者に決めてもらうものという意味です(91ページ参照)。 札の貼付後、部門の責任者や経営者とともに、その札の意味に応じて最終決断をします。 自分の価値観では不要なものだと思っていても、立場が違えば判断が違います。原則とし ては「捨てる」という観点から活動を行いますが、その意味やプロセスも全社で共有しま しよう。


▼整理の精度が5S活動のレベルを決める
業種や事業規模の違いにかかわらず、この整理の精度が活動の成果を決めます。 事業規模にもよりますが、多くの会社でトラック何台分という不要なものが出てきます。 今までで一番大量のものを捨てた企業は大型ダンプトラック42台分でした。普段の整理や 大掃除とはスケールが違いますね。 5S活動を始める前の在庫の棚卸額が1億80oO万円であった建材会社は、現在売 上を伸ばしながら3000万円まで圧縮しています。硝子施工・販売会社は当初5ooo 万円あった在庫が現在700万円です。もちろん売上は伸びています。こうした結果も、 5S活動の最初の活動である整理の精度が高かったからです。 この整理活動の精度が、5S活動の「レベル」を決めます。
整頓活動
軍業務効率と直結する整頓活動
整頓とは、辞書によれば「物事を整った状態にすること」です。なんとなく、わかった ようなわからないような不思議な表現です。「整った状態」というものが、いったい何の ことなのかよくわかりません。整った机とは何もない状態であったり、必要なものが並べ られてすぐ使えるようになっている状態であったり、書類を広げてすぐに作業にかかれる 状態かもしれません。しかし、5S活動は組織の活動なので、この状態では整頓したこ とにはなりません。 整理により不要なものがなくなると、その分スペースができます。不要なものが消えた ことによるスペースの拡大にしたがって再配置を行います。つまり、机の位置を変えたり、 つい立てを外したり棚の位置を変えたりと、そこで働く人々がもっとも動きやすい、つま り、業務の効率を考えてレイアウトにします。工場や倉庫ならばラインを引く、あるいは 新しい棚を取り付けます。 そして、それが終わったら、誰が見てもわかるように表示をします。表示の原則は、新しくその組織に入った人でもひと日でわかることです。 では、働きやすいように再配置をして、誰もが見てわかるように表示をしましよう。 これが5S活動の「整頓」です。そしてこのプロセスで、不要なものを捨てた整理と 整頓がようやくつながってきます。
▼再配置図を作ってみる
再配置図とは、その空間の目的に合わせ、効率よく動けるように人とモノの位置関係を 図面に書き起こしたものです(96ページ参照)。 机上で動ぎや型間一や ‐動一線をシ 「レー‐日υ‐「司¨配畳図「名作引J日洲「潤」判引珊d訓「国「和 境を作るために必要なプロセスです。従来の考えでは、単に置く場所の有無だけでモノを 置いていましたが、5S活動では効率性・機能性を第一に考えて、リーダーやメンバー が事前に総合的に検討します。 新たに必要な備品(棚・書庫など)が出てきた場合は、この段階で予算化して社長の承 認を得たほうがよいでしょう。
《事務所再配置の注意点》 ・「動線」の確保が重要です。誰かが座って いても通れる環境を確保します。 ・通路にはものを置かないのが5S活動の 原則です。 ・書類は原則として横置き禁止です。 。来客者目線を持った再配置が大切です。 《工場。倉庫・資材置き場の再配置の注意点》 ・作業プロセスを考慮して工具、材料の置き 場を再考します。 。「安全通路」「作業スペース」などのライン 表示も再考します。 ・例え工場でも、来客者目線を持ったカテゴ リー分けを、再配置図の作成時に考察しま す。

▼表示が組織の意識を大きく変える
整頓活動を考えるとき大切なことは、モノの移動が終わったあとに必ず表示をすること ですc 表示の基本は「誰が見てもわかる」状態にすることです。「誰が見てもわかる」という ことは、ベテランや正社員だけではなく、新人・パート・アルバイトの人たちまで迷うこ とがなく目的の場所までたどう着けるということです。従来型の考え方では「私はわかっ ているから大文夫」「そこまで細かくやらなくてもいいじゃないか」と油断をしている部 分です。 実は、この仕組みがないために生産性が上がっていないのです。この表示活動は、次の 「清掃」に密接に結びつきます。決して手を抜いてはならないものであると理解してくだ さいc 次ベージはさまざまな表示事例の一部ですが、 一見してどのように感じるでしょう。事 例でわかるように整頓という活動には、先々の自分たちの「作業効率」「安全」「管理体 制」までも予測した全体的な視点が必要です. 整理によって不要なモノがなくなった段階で、再配置について再配置図などを元に考察 します。これは、単に部署だけで考えるのではなく工場長・生産本部長・管理部門や、場

合によっては経営陣を巻き込んだ考察になります。最終的に、労働環境を整え、効率を向 上させる活動なので、丁寧なプロセスが求められます。道具の置き方、材料の置き場、書 類の使用頻度、通路や安全の確保、在庫管理などを念頭にこの活動を行います。 5S活動は仕組み(システム)なので、各要素につながりがあります。この整頓の目鼻 立ちが付くことによって、次の「清掃」活動が始まります。各要素のつながりを充分に理 解してくださいc
▼組織課題が噴出する
さて、この整理・整頓というふたつの活動を行っているころに、多くの組織では「組織 課題」が顕在化してきます。元来組織が抱えていた弱点がいっぺんに噴き出します。弱点 とは、その組織が潜在的に抱えていた組織課題のことです。 組織によって、程度も内容も多様ですが、実はこの組織課題の噴出が5S活動の凄み なのです。普段の業務からだけでは見えない課題は、組織の風土や成り立ちから来る組織 の弱点です。
▼活動会議で課題を見逃さない
5S活動は、組織課題を机上に出し、解決策を練り上げる最高の機会です。そして、 その組織課題は後述するルールと教育訓練によって解決の道筋を作ります。定期的な活動 会議では、そうした問題を丁寧に記録しておきましょう。これも活動会議の重要な役割で す. 5S活動の支障になる問題は、その都度解決を目指さなければなりませんが、その 背後にある根本的な理由は活動全体を通して改善していきます。
軍問題と課題は別物である
組織でよく使われる「問題」とは現象のことです。苦情発生や部署間の対立、個人攻撃 など顕在化している現象のことです。人間の体で例えれば痛みのようなもので、頭が痛い、 歯が痛い、腰が痛いなどという症状です。 そのときに行うべきことは「対処」です。体調に関してならば適切な薬を飲んで早く寝 る、という対処を行います。組織の中の問題であれば謝る、話し合うという行動で対処し ます。 しかし、その対処だけでは物事は片付きません。なぜ、そんな問題が起きたかという理 由を理解しないと、また同じような現象や体調不良が発生します。つまり、発生原因を追求しなければ根本的な解決には至りません。その根本にある理由が「課題」です。 組織課題とは、すべての問題発生の原因となるもののことです。5S活動の凄みは、 それを実際に行おうとするときに、さまざまな問題を引き起こすことにもあります。組織 で問題が発生するのは、組織に課題があるからです。5S活動では、整理・整頓という 初期プロセスの段階で見事に組織課題を浮き彫うにするケースが多いのです。リーダーや メンバーはそのことを理解して、問題が発生しても慌てずに対処していきましよう。
清掃活動
w5S活動の「清掃」とは
全国の企業をコンサルティングしているなかできっちりと「清掃」の意味を理解してい る企業はとても少ないです。今まで日常の活動としてのみ捉えていた清掃活動を、5S の要素として認識し直す必要があります。整理で不要なものを捨て、整頓で再配置と表示 ができたあとの清掃は、単に見える部分をきれいにするという単純な行為だけではなく 「点検保守」が目的になります。清掃活動の中で、ものが表示された場所以外に置かれていたら、元に戻すという極めて 基本的な行動です。 「一度はきれいにするんだけれど、すぐ元に戻っちゃうんだよなぁ」 この発言をよく耳にしますが、これは清掃を単なる日常活動としてのみ捉えていること の証拠です。「毎日」「毎週」「月に一度」「3カ月に一度」「半年に一度」「年に一度」と、 場所によって頻度は違うものの清掃というルールに基づいた点検保守を組織で取り組むこ とによう5S活動を継続、維持することができます。そして、清掃と清潔の仕組みは連 動しています。詳細は後述の「清掃ルール」で解説します。
軍「清掃=仕組み」として捉える
整理で不要なものを捨てて必要なものだけにして、整頓で再配置と表示を行って働きや すく効率的な職場環境を構築してきました。 実際に整理・整頓が完了すると、組織内の雰囲気はずいぶん変わります。別の会社にな ったような気配すら漂うようになります。企業にはその年月にかかわらず、創業以来の垢 や錆がこびりついています。創業知年の会社なら50 年分の、5年なら5年分の垢と錆が溜 まっています。その垢と錆を取り除かない限り、今の時代にあった新しい仕組みを作り上げることはできません。清掃は、今の時代に合わせた組織の「点検保守」の仕組みをつく るものと捉えましよう。
軍組織に利益と緊張感をもたらす清掃ルール
「掃除など毎朝やっていますよ」という話はよく聞きますが、念のため窓の桟をななって みてくれませんか。汚れていませんか? 目線より高い棚を触ってみてください。埃が溜 まっていませんか?・窓ガラスは汚れていませんか? 年に一度の大掃除だけでは追いつかない、現実がそこにはあるのです。 初めて企業訪間をして事務所の応接室に案内されたときや研修室に案内されたとき、埃 っぽさや汚れを見かけることが多くあります。ホテルや小売を商売としていながら、その 背後のバックヤードは埃だらけ。このギャップが企業の成長や発展を阻害しています。 埃だらけのホテルに泊まりたいと思いますか? 汚れたシートのタクシーに乗ります か? 大事な取引先を初めて応接室に案内したとき、雑然としたソファをすすめられます 力″?. 清掃にも当然ルールが必要です。日に一度、週に一度、月に一度は清掃をする部分や場 所を決めて、整然とした気配に満ちた企業にする必要があります。清掃ルールは、「朝一の清掃」だけではなく、企業の貴重な資産である事務所や工場、店舗、車両、機械などを 守る「保守」という意味が含まれています。中小企業の5S活動は社内に緊張感を生む ために行うものです。特に、以前のような利益が見込めなくなった時代に「資産の保全」 は、企業が勝ち抜くために必須のことなのです。 そのために担当部署や担当者を明確に定めて業務として清掃を位置づけ、同時に点検活 動を行うことが5S活動の清掃になります。点検活動が行えるようになったら、保守(保 全)まで清掃の中に組み込むことです。 タクシーの運転手が車を清掃する際に、「朝一の気楽な掃除」程度の行動ではないこと はご存知のはずです。運転手は清掃と同時に、車体の傷、タイヤの損耗、空気圧のチェッ ク、オイルの量、ラジエーターの状態、 ハンドルのあそび、バッテリー液の確認、電気系 統の異常の有無などを行っています。なぜタクシーの車両が、30 万キロも豹万キロも走れ るのかを考えてみることです。つまり、清掃活動の中に点検。保守という仕組みが組み込 まれているのです。 現場で道具がなくなるということはありませんか? よく故障するということは?・ェ 場でいざ使おうと思つたら、機械の調子が悪くて時間のロスをしたということは?・店舗 で在庫しているだろうと思っていた商品や材料がなくて慌てたということはありません「″? . この清掃活動で多大なる成果を出した企業を多く見てきました。ある建設系企業では、 これまで重機の整備や点検はすべて専門業者に外注していました。以前の仕組みのままで、 見積もりも取っていませんでした。しかし、5S活動に取り組んで重機の清掃点検につ いてルールをつくり、その意味と目的を徹底的に教育訓練したところ、自分たちでできる ものは自分たちで点検や交換をするようになり、見積もり条件もきちんと決めるようにな りました。その結果、前年2800万円かかっていた修理費が98o万円まで下がったと いうことです。この事例から、みなさんは何を学びますか?
清潔活動
「清潔」とは、3s活動(整理・整頓・清掃)の状態を維持することで、「それらの状態を 保つ」ということです。では、清潔な状態とはどういう状態でしょうか? 例えば、次のような状態は清潔な状態ではありません。・埃っぼい 。雑然としている 。空気がよどんでいる ・変なにおいがする お店がこんな状態であるとき、お客さんはどのように感じるでしょうか。工場内が、事 務所内がこんな状態だったらどうでしょうか。 清潔とは、整理ができていない、すなわち3S活動の状態が崩れた際に、すぐに元の 状態に戻すことをいいます。整頓ができていなかったらすぐに整頓する、ごみが出たり床 が汚れたりしたらすぐに清掃することを意味します。 整理・整頓・清掃がルールを定めてそれにしたがって行動するのに対して、清潔は瞬間 的な反応が要求されます。そのためには、等や雑巾などが手元にあり、いつでもそれを使 って清潔な状態を保てる環境が必要になります。 社用車がいつも埃っぽいという企業がありましたが、車内にダッシュボードやインパネ を拭く雑巾がなかったことが原因でした。 よく利用するファースト・フード店は、建物は古いのですがスタッフ教育がとてもよくされているようで、あいさつや接客の応対がすばらしいです。セルフサービスで返却され たコップや灰皿を溜めることなく置き場から洗い場へ運び、空席になったテーブルとイス を隅々まで拭いています。まさに清潔感にあふれた店です。 対照的に、その店の近所にある店では、テーブルは前のお客のこぼした水で汚れ、返却 回はいつも返却されたコップや灰皿でいっぱいです。ふと見ると、スタッフたちはカウン ターの中でプライベートな話で盛り上がっていました。前述のお店よう新しい建物なので すが、清潔感が皆無で私はほとんど利用しません。 みなさんの会社や工場や店舗は清潔ですか? 不潔ですか?・埃っぽくなってはいませ んか? 清潔というものは、整理・整頓・清掃のように目に見えるものではありません。組織の 人間やその組織に関わる取引先や顧客が「感じる」ものです。そのために、仕組み作りの 段階で丁寧に組織のあるべき姿を思い描いて活動の中に定着させる必要があります。 清潔な事務所、清潔な工場、清潔な倉庫、清潔な車両などが、清潔な服装、清潔な髪型 を導き、5S活動の最後である「躾」に密接につながっていくのです。つまり、この清 潔活動を絶えず刺激することにより、組織は階段を登るように変化していくのです。
A4‐2枚のルールが組織を変える
▼5S活動は継続が難しい
整理・整頓。清掃。清潔と4つの要素について説明をしてきましたが、いよいよ運用の お話です。 さて、何かのきっかけで5S活動に取り組んだとしましょう。セミナーで話を聞いて、 あるいは他の企業の取り組みを知って、経営者の鶴の一声や5Sを立ち上げて、5s活 動を始めたとします。仮に全社一九で取り組んだとしても、それが1カ月、3カ月、半年 と続いていくうちに当初の勢いを失ってモチベーションが下がり、いつの間にか元の状態 に戻ってしまった、という組織は少なくありません。 実は、5S活動は立ち上げることより、維持することのほうが難しい活動なのです。
シンプルなルールが重要!
5S活動が単なる片付けで終わってしまって継続できない理由は、本章のはじめでも 書きましたが、活動の目的が明確でないことにあります。何のために新しい行動を起こすかという目的がしっかりしていない組織では、5S活動が単なる大掃除で終わってしま います。そのほかに、5S活動がなかなか維持できない理由として「ルールが不明確」 という点にもあります。いやいや細かいル‐ ノレを決めて、壁に張り出して周知を図ってい る、という組織もあると思いますが、実際に決めたとおりにできているかは、少々疑間が 残ります。 組織の仕組み構築においてもっとも重要なことは「シンプノレ」であるということです。 複雑な仕組みはなかなか定着しません。ルールがない、または複雑で煩雑すぎるために 「何をしなければならないのか」や「何をしてはいけないのか」がよく見えていない企業 も多くあります。よく見えていないために仕組みがぼやけ、精度が悪くなったり品質やサ ービスにばらつきが生じたりして、もっと得られたはずの仕事や利益を失っているにもか かわらず、失っていることや同規模の同業者と比べて利益が確保できていないことすら自 覚できない企業もあります。 同じサービスを営みながら、なぜこれほどまでに利益やプロセスや意識が違うのかと驚 くことがあります。同じ業種なのに、なぜこれほど将来に対する取り組みが違うのかと考 え込まされることがあります。この違いは、突き詰めてゆくと「組織の中のルールの違い」ということになります。やらなければならないこと、決して行ちてはならないことが 明確になっている組織は、結論として強いのです。 「会議はいつやるのか」 「原価管理はどのように行うのか」 「人材育成はどのように行うのか」 「新規事業開発は誰がするのか」 「車両管理はどのようにするのか」 これらが明確でない企業に、内部コミュニケーションの充実や利益確保、人材確保、 マ ーケティング、機材管理などができるはずはありません。 そのためにはル‐ ノレが必要です。それは、誰が読んでも理解できる、組織の従業員が loo%守らなければならないシンプルなルールです。 シンプルなルールにするため、前述したようにA4サイズ用紙で2枚以内に収まる分 量にします。それ以上のルールは組織の全員に理解されません。理解されないルールは守

られるわけがないのです。5S活動のルールを、「A4 ‐2枚」に書き込んでください。 書き込むことにより、初めて「誰が。いつ。何を。どのようにするべきか」が定まります。 シンプルなルールが会社を変えるのです。
教育訓練の重要性
私の研修会やセミナーで、プロジェクタを使って5S活動前の姿と5S活動後の姿を お見せするのですが、いつもその瞬間、会場からどよめきが起こります。雑然とした倉庫 が一流企業の工場並みに変わった姿や、「出船」と呼んでいる整然とした駐車場を見てみ なさんが驚きます。 儲かっている会社と儲かっていない会社の違いは、根源としての仕組みの違いにありま す。同じホテル業を営みながら、次々とお客様が訪れてリピーターを確保し続けるホテル もあれば、閑古鳥が鳴いているホテルもあります。小売業でも建設業でも同じです。 最近では、病院でその差がはっきりと現れています。「行列のできる歯医者」と「いつ 見ても駐車場に車のない歯医者」が近所にありますが、両方の歯医者に通った私にはその 理由がよくわかります。電話の応対から、看護師の対応、医者の態度、待合室の清潔さ、 掲示物の内容など、すべてが違います。 一方は暗くて清潔さがなく威張っています。もう
一方は、明るく軽やかで清潔さがあり丁寧です。後者の歯医者にお客が集中するのは当然 ですc 実は、普段の私たちは、そうした基準でお店やホテルや病院を選んでいるのに、いざ 「自分の会社はどうか」と問われたときには、そのことを忘れ、「今さらそんなことをし て意味があるのか?」という言葉になって現れているのです。さらに、「景気が悪くて」 「従業員がつまらなくて」「あそこはいいスタツフがいるから」などという言い訳がもれ てくるのです。 「なぜ5S活動を行う必要があるのか」 「どうすれば企業を変えられるのか」 「5s活動を行うとどんな変化が始まるのか」 一よその会社はどのように変化しているのか」 このようなことを組織に伝えるためにもっとも必要なものは「教育訓練」です。パート やアルバイトを含めた全スタッフに、そのことを愚直なまでに伝え続ける教育訓練が不可 欠です。甲子園に出場するチームや、オリンピックに出場する選手は練習をします。俳優は映画 やテレビドラマで役を演じるために、歌手はステージやレコーディングで最高のプレイを するために練習をします。 教育訓練というと大げさに聞こえるかもしれません。しかし、練習をしないチームや選 手が満足のいく結果を残せないように、教育訓練を行わない企業が果たして結果を残せる のでしょうか。以前は、どんどん仕事が入り、その仕事をこなしさえすれば利益を確保で きていました。しかし、受注競争が激化して以前のような利益確保が難しくなってきてい るとき、企業は何をするべきなのでしょうか。 5S活動についてだけではなく、原価管理・利益管理・コミュニケーションのとり方・ コンプライアンス(法令順守)・安全管理・環境保全・マーケティングなどについて、企業 は組織的に教育訓練を行う必要があります。社長だけが知っていて、残りの人間は社長が 命ずることを忠実に守っていればいいという時代は、とうの音に終わっています。しかし、 そのことに気づいていない企業はまだまだ多く存在します。 組織で戦う仕組みのない企業に未来はありません。そして、組織で戦うためには組織的 な教育訓練が必要なのです。決して社長の思いつきなどの発表ではありません。特に5S 活動という目に見える仕組みに関する行動は、全社一九となった教育訓練の積み重ねによ
って実現されるものなのです。
躾活動
▼第三者から組織がほめられる
組織に対する最大のほめ言葉は「よく、しつけられていますね」という言葉です。個人 に対する賞賛の言葉は、決して組織に向かってかけられたものではありません。「○○君 は若いけれどよくできていますね」「受付の○○ さんはいい子ですね」などとほめられて も、組織としては諸手を挙げて喜ぶわけにはいきません。 躾とは、その文字のとおり、「身共からだ)」に「美しい」と書きます。つまり、人間が 美しく見える状態が「躾」なのです。 工場や事務所や店舗のたたずまいが整っていて不要なものがなく、清掃が行き届いた清 潔な状態の環境の中で働く人々が美しく見えることが「しつけられた状態」であり、組織 が定めたルールを全員が守っている姿であります。単純にものが片付いたされいな状態で あるだけではなく、そこで働く人々の服装や身だしなみが整い、あいさつや電話対応もすばらしく他の企業よう優れていると顧客や取引先の人たちが感じてくれます。それが、 5S活動の終着点です。
軍しつけられた組織は武器になる
5S活動は「整理・整頓・清掃」という製造系の3S活動から出発しました。製造系 なので、まず「不良品を減らすこと」「生産効率を上げること」が最大の目的でした。し かし時代が進むと、単に生産効率だけではなく顧客のニーズの中に「安全。デザイン・環 境」という新しいものが出てきたために「清潔」という新しい概念が付け加えられました。 そして、次のステージで接する人たちの品位までが問われ始めたため、最後に「躾」とい うものが要求されました。その結果、規模や業種を問わないで実践できる5S活動がで きあがりました。 よくしつけられた組織は、効率的に動き、機能的に作動し、スピーディーに対応します。 そして何よりも、よくしつけられた組織は他の組織と違うということをアピールすること ができます。それはまさに「差別化」という企業間の競争を勝ち抜くための最大の武器に なります。5s活動は仕組みなので、躾だけを要求しても組織の人たちは対応できません。「整 理・整頓。清掃。清潔」というプロセスを一段ずつクリアして、初めて「躾」という戦う 武器を手に入れることができるのです。そしてこの躾も、先ほどの教育訓練という活動と 密接に結びついていくのです。
v業務はできても躾ができていない企業
業務はできても、躾ができていない企業は多くあります。 例えば、書類整理はできても電話の応対ができない事務員さんは、総務の仕事をしてい るとは言えません。施工はできても地元対策ができなくて苦情を抱え込む現場代理人は、 施工管理の仕事をしているとは言えません。販売はできてもアフターフォローができずリ ピーターを確保できない営業担当は、営業の仕事をしているとは言えません。 実際に直接企業を訪問して感じるアンバランスさは、このような躾の不在によるだらし なさが原因で、多くの場合その企業の業績に比例します。 「儲かっている会社と儲かっていない会社の違いは何ですか」とよく質問されますが、私 の答えはいつも決まっています。 「すべて違います1」利益確保の観点から見た場合、きちんと利益確保ができている企業は、整理・整頓・清 掃が行き届いており、清潔さも維持されています。そして、何よりもスタッフヘの躾がで きています。売上が伸びない原因の多くは、こうした仕組みが組織の中にないか、あるい は根付いていないところにあります。 「あの会社にはいい社員がいて……」と、言い訳をする経営者や経営幹部に多く会います。 ですが、それは比較する企業の仕組みに目を向けていないのが原因のひとつです。伸びて いる企業がいかに膨大なコストをかけて社員教育や訓練を行っているかを、彼らは知りま せん。 「片付けをすりゃいいんだろ。5S活動なんてたいそうなことを言うな―」と、面と向 かって言われたことがありますが、儲かっていない会社には儲かっていない理由がきちん とあるのです。 スタッフヘの躾ができていなくて、企業が生き残っていけるでしょうか,・整理・整 頓・清掃。清潔すらできない企業が利益を上げられるでしようか? 組織構成員たちの「あと一歩」という意識の違いが、今後のすべてを決定するのです。

軍躾の意味と教育訓練
3S活動に「清潔・躾」という2S活動 が加わったのは、時代の変化があります。 「作ればいいだろう」「並べればいいだろ う」「安ければいいだろう」という時代がか つてありましたが、そこから「成熟」という プロセスを経て顧客や社会は単なる製品やサ ービスだけではないものを求め始めたのです。 学校では「あいさつの仕方」を教えていま せん。「歩き方や立ち方」も「電話の応対」 も「正しい服装」も教えていません。 今まで学ぶ環境がなかったので、組織の中 できちんと対応できない人が多く存在します。 そのため、躾は接客接遇を含めた技術訓練も 必要な場合があります。 5S活動では、日に見える変化を4S活動で組織が体験して、初めて躾の意味が見えてきます。理念や言葉だけではしつけられた 組織は生まれません。
軍決めたこと(ルール)が守られる組織
「ルールを定めてそれを守らせること」実は、これが一番難しいのです。その理由は、 「なぜ5S活動を行わなければならないか」という理由を明確に組織内で周知徹底して いないからです。さまざまな企業のコンサルティングを行ちてきたうえで断言できること は、活動の必要性や目的がしっかりと周知できている企業は、5S活動がスムーズに実 行されるということです。 ある企業で、茶髪でピアスをしていた若いスタッフたちがいました。そのスタッフたち は不真面日でいい加減というわけではありません。言われたことはきちんとこなし、決し て不良ということではなく、単に今風の格好をしているだけなのです。しかし、不思議な ことに5S活動から「目に見える形」で変化を実感し、「躾」ができてきたとたん、全員 が黒髪に戻ってしまいました。これは決して強制的に禁止したわけではないのです。 「なぜ、5S活動が必要か」 「そのあとに、何をしなければならないか」「新しい時代には、君たちの新しい感性が必要だ」 と教えただけです。 この一連の変化を、ある企業の経営者はこう表現しました。 「同じ屋号で、同じ場所で、同じスタッフたちが仕事をしているのですが、別の会社にな りました」 また、別の会社の社長はこう言いました。 「私がlo年かけてもさせられなかったことが、リーダーやメンバーがわずか3カ月で実現 してしまった」 5S活動は企業変化のスタートラインです。躾とルールの関係を充分に理解すること が大切です。
絶対利益との運動で組織が飛躍する
5S活動が継続しない最大の理由
組織の究極の目的は存続と発展です。そうした大切な目的を達成するために組織が活動するときに、利益へのアプローチが欠けていると活動は早い段階で停滞します。5S活 動を行っている意味を目に見える形で示さないと、組織の構成員は活動に疑間を持ってし まいます。したがって、5S活動で日に見える変化を組織で共有し、同時に利益の確保 プロセスも共有する必要があるのです。多くの組織で5S活動が継続できない理由は、 この利益との連動性が欠けているためです。
▼絶対利益の考え方
企業組織の利益の考え方にはいろいろなものがありますが、もっともシンプルな考え方 に「絶対利益」というものがあります。 組織には、仕事があってもなくても絶対に必要な金額があります。前章でも触れました が、人件費、地代家賃、光熱費、車両に関する車検や保険費用、毎月のリース費用などで す。 このような一般管理費の多くは、仕事の有無(売上の有無)にかかわらず組織にとって は絶対に必要な金額です。その金額に金融機関からの借入れの返済金額、予定納税の金額、 そして1年の組織活動を通して経営者が必要であると考えている利益を加えます。 その金額の総額を組織全体で集めると、企業は絶対につぶれません。企業が倒産する理

由は、売上不振や利益圧迫などさまざまな要因が重なりますが、逆に考えればこの絶対利 益を集め切れなかったからという点に帰結します。
5S活動も利益もシンプルに考える
5S活動の最大の特徴は目に見えるということです。不要なものが日の前から消え、 働きやすいように再配置を行い、誰が見てもわかるように表示することで、年齢や役職や 経験を問わず誰でもその変化を感じることができます。 同様に絶対利益も目に見えるものです。組織にとって「1年間に絶対に必要な金額」を 組織に示すことにより、全員でその金額を集めるというシンプルな動きを整えることがで きます。 多くの組織が「全社一九」をスローガンとして掲げますが、実際にはなかなか実感する ことができていません。 しかし、5S活動も絶対利益もシンプルな性質を持っているので組織に浸透しやすい 特質を持っています。また、どちらもルールとして組織に方向性を与えることができるので、5S活動と絶対利益管理は連動できるのです。
絶対利益と経営計画
第1章で5S活動と利益の関係性についてふれました(知ページ参照)。絶対利益の金額 は、残念なことに決算書の中には直接書かれていません。これは、経営者自らが自分自身 の体を点検するように、自ら支出項目や支出金額を確認することからしか把握できません。 しかし、これは経営計画の第一歩でもあるのです。 この絶対利益という言葉は会計用語ではありません。時折、会計士から費目の違うもの を並べるのはおかしいという指摘を受けることがありますが、この言葉は会計ではなく経 営としての利益概念を表しています。特に、組織の人々に利益の話をするときには必要な 言葉です。会計士が普段使う「経常利益」「営業利益」「減価償却費」「法定福利費」など という言葉を、組織の中でどれくらいの人が理解できるかを考えてみてください。 5s活動は目に見える形での組織変化を促すように、利益も目に見える形にして組織 に落とし込まなければなりません。そのために必要な言葉であるのです。
絶対利益は全社一九で集める
組織でもっとも重要な数字である絶対利益の計算をしたことがなく、それを知らずに売 上だけで会社を支えようとする社長が少なくありません。もちろん、売上は大事なのです が、絶対利益を確保することのほうがはるかに重要なことです。繰り返して言いますが、 絶対利益を集めてしまえば会社は倒産しないのです。 では、その絶対利益はどのようにして集めればよいのでしょうか。 絶対利益は、組織に所属するすべての人々によって集められなければなりません。社長 や専務が集めるのではなく、組織の人たちが全社一九となって集めるべき金額なのです。 しかし、実際に、ものを捨てて再配置を行い、表示をしてルールを全員で守っている組 織は、すでに全社一九が達成されていると言っていいのです。 「5S活動を推進することによって全社一九体制を作り上げて絶対利益を確保する」 「絶対利益を確保するために5S活動を導入する」 これはどちらも正しい考えです。 5S活動と絶対利益管理システムは密接につながっています。多くの企業が5S活動から業績を飛躍的に伸ばしているのは、このふたつの活動を運動して実践してきたからです。
利益阻害要因と利益貢献要因
5S活動と絶対利益管理が連動するようになると、会議の内容が変わります。 多くの企業組織の会議は、単なる報告会で終わっているケースが少なくありません。生 産工程、安全、改善などの会議を行っても、上からの通達や活動実績の報告で終わる例が 多いようです。組織内で共有すべき原因追求に関しての議論が進まないのは、やはり基準 となる目標が明確になっていないからです。 しかし、5S活動を構築した組織に絶対利益管理を組み合わせると、「利益阻害要因」 「利益貢献要因」という新たな視点が生まれてきます。 ・利益阻害要因 目標とした月間絶対利益が確保できなかった理由のことです。 仕事の種類、販売・製造プロセスの不備、コミュニケーションの不足、連絡体制の不備、担当者の経験不足、協力会社のミス、組織内の連携不足などがあります。 ・利益貢献要因 目標とした月間絶対利益が確保できた理由のことです。 仕事の種類、協力会社の優秀性、 コミュニケーションのよさ、担当者の能力向上、組織 内の連携体制の向上など・ (注)月間絶対利益とは、年間の絶対利益金額を12 カ月で割ったものです。 この利益阻害要因と利益貢献要因は、獲得した絶対利益金額の過不足で判断することが できます。不足していたときには阻害要因、充足していたときには貢献要因について話し 合います。その中では「伸ばすべき要素」「禁止、あるいは修正すべき行動」「すぐにでき ること」「時間をかけるべきこと」などについての話し合いが活発化します。その結果を 受けて、それらの活動を行うべき責任者定め、活動の工程などを協議します。 このように、5S活動と絶対利益管理は組織にとって車輪の両輪のような機能を果たし、 会議の内容まで大きく変える可能性を持っています。

「1円ポスター」を社員たちが作った
5S活動と絶対利益管理体制を連動させ た組織では、社員たちが自ら「1円ポスタ ー」というものを作るケースもあります。市 販のポスターではなく、自分たちの体の中を 通った言葉で作られたものなので、組織の中 に確実に浸透します。「1円を拾う」「1円を 落とさない」という新しい意識の向上がこう した活動には現れています。

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